年金の制度を調べていて、なんと複雑で面倒なことかと辟易した。今ちょうど年金改革がされているけれども、現行のシステムを複雑にしているだけだ。年金に限らず、様々な社会保障制度が別の名前で呼ばれ、申請方法も異なり、審査も給付も別。ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士などが必要な届け出というのは、国民を馬鹿にしている。
給付の条件を細かく決めるのは構わないのだが、そういうものは一覧で見られるようにすべきだし、届け出は一箇所にしてほしい。
そこで、以下のような改革を提案する。
- 全ての社会保障制度は一つに統合する。新た制度の名称は、とりあえず「国民生活補償制度」(生補)とする。
- 生補の財源は、税金とする。即ち、この制度によって既存の社会保険料は廃止され、税金が増額される。
- 過去、各々の特性について個別支給していた制度は廃止し、生補ではその事情を「点数制」にて加算する形式とする。
- 支給額は点数のみに依存する。たとえば既存の年金では、支払い済み年数に支給額が依存するが、新制度では財源が税金になるのでこの制度は廃止になる。(その代わり、税金滞納や税金支払い免除の状況などを点数に入れるというのはアリだろう。)
- 支給方法は、定期払い方式と一時金方式、控除方式の三種類とする。
- 定期払い方式は、マイナポータルに登録された公金受取口座への毎月の支払いを受ける形式であり、これは主に生活費補助目的に使う。
- 一時金方式は、イベントに合わせて支払いを受ける方式であり、これは主に出産などの一時的に発生する高額な費用の補助目的に使う。
- 控除方式は、掛かる費用を一定の割合で控除し、医療機関に残りの費用をこの制度から直接支給するものである。健康保険のように、不定期に使うが金額が高いものに適用する。
- 控除方式のバリエーションとして、疑似免税が考えられる。つまり、生活困窮者などで設定されていた免税の制度は、免税ではなく相殺的な支給として点数換算する。
- 自治体は、国の点数に加え、自治体独自の点数を付与できる。
- 点数表(元帳)は国と自治体が各々の部分を管理し、毎年更新する。
- 点数は、支払い方式毎に加算され、それを標準額にかけ合わせて算出される。またその標準額は、国が全国標準を決め、都道府県が各県の事情に合わせて調整する。
- 当然ながら、標準額は物価指数に合わせるのが妥当である。
- マイナポータルから自分の「点数」「標準額」「結果としての支払い額」が確認でき、異議がある場合はそこから問い合わせができる。
この仕掛けの特徴は、以下の通りである。
- この仕掛けを作ってしまえば、後は点数をどう配分するかの問題に集約できる。新たな視点で補助をすることを思いついたとしても、いちいち個別に法律を作る必要はない。
- 点数に年齢を入れれば年金、障害を入れれば障害年金、死別した家族を入れると遺族年金、医療を受けたことを入れれば健康保険、生活困窮の程度を入れれば生活保護、就学状況を入れれば児童手当・学業手当、リカレント教育を入れれば教育訓練給付制度、妊娠や出産の履歴を入れれば出産一時金、等など。
- 点数を弄ることによってベーシックインカムにもなる。直ぐに始める必要はないが、その布石としてシステムを作っておくことができる。
- 臨時の給付金(コロナや自然災害など)でも使える。
- 点数に年収や資産状況を含めれば、そのまま確定申告の情報として使える。
- 所得だけでなく現有資産の把握により点数計算できるため、高額所得者だけでなく資産家(不労所得者)を配慮した点数計算ができ、不公平感をなくすことができる。
- 会社負担の概念がなくなるため、特に中小企業には有利に働く。これは金額というよりは、手間が無くなる点が大きい。
- 制度がシンプルになることは、国民にとっても監督省庁にとっても自治体にとっても、省資源省コストになる。
- 特に自治体の恩恵は大きいと思われる。新たに定額給付金を作って配布事務は自治体に任せるといったような、いわゆる「末端への丸投げ」が無くなるからである。
- 給付の形式に控除式を加えることによって、たとえば生活保護世帯において水道光熱費を事実上無償にするといった施策が可能になる。従来は年金を貰ってそこから水道光熱費を払っていたが、先に控除することで確実に支払いができる。これは、水道光熱費の分までギャンブルに使ってしまう、あるいは借金返済を優先してしまう、といったトラブルを未然に防ぐものになる。
社会保険料28兆円がそのまま税金になるため、これには消費税と所得税・法人税に割り振って増やすのが良いだろう。これは結構大幅な上げ幅になる。消費税10%を15%にする、所得税法人税も5%づつ上げる、くらいの勢いである。だが社会保険料はゼロになるので、受け入れられるだろう。
また、公金受取口座への振込ではなく、マイナポイントとして振り込むことも考えられる。これはそこから電子マネー(SuicaやPayPayなど)に移行できるので、銀行口座を持っていない人でも使える便がある他、食料限定とするとフードチケットに早変わりするし、期限を付けることで消費を促すことも可能になる。これらは将来の拡張の布石として使える。
この用に処するためには、マイナンバーの概念は多少拡張しなければならない。つまり、マイナンバーは「日本に住民票がある人」が対象なので、ホームレスや無国籍者、違法滞在者などには支給されない。違法滞在者はまあ除くとしても、ホームレスを救えないのでは生活保護の代わりにはならないし、無国籍者も自分で望んだ人はほぼいないだろうから、対象から外すのは好ましいとは言えない。そういう人にとりあえずでも発行できるように、制度を改善する必要があるだろう。また日本国籍の海外滞在者にも現状では支給されないが、これも不公平感があるので発行すべきだろう。
また、これは膨大なシステムなので、一気に入れ替えることはできないだろう。まずは年金から始めて少しづつ移行するのが良いと思われる。
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