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2026年7月13日月曜日

AIエージェント調停アーキテクチャ



はじめに

生成AI同士が話し合って問題を解決する、というのが次の生成AIのテーマだと思う。

今の生成AIエージェントの使い方は、あくまでも一個人が自分の代理人として使っているだけだ。外部とのやり取りはMCPで行っているケースが多いと思うが、これは生成AIと(生成AIではない)他のシステムとの接続プロトコルであり、つまりは相手方は決定論的回答を返すことが前提になっている。要するに仕事の依頼先であり、主従関係がある。AIエージェント側が主で、接続先が従だ。しかしこの先、相手側が生成AIであるというパターンは当然想定すべきである。つまり生成AI同士の会話が前提になる。

そしてここからが厄介な話で、相手が生成AIだとすると、自分と同じく、(自分とは違う)目的を持って能動的に行動しているかもしれない。すると、従来のような単純な情報提供や指示を実行させるだけではなく、時にはそれを拒否されたり、逆提案されたりすることも想像できる。つまり従来は主従だった関係が対等になるわけだ。

そこで問題になるのが、以下の2つである。

  1. その相手と自分の目的が相反している可能性があること。更に言うと、複数の相手との協調や競争が起きる可能性があること。
  2. その相手が悪意を持っている可能性があること。

人間の場合には人格があり、法律や商慣習がある。だが生成AIエージェント同士の会話の場(ネットワーク)にはこのどちらもない。エージェントは目的のたびに新たに作り出されるものだし、偽の(悪意を持った)エージェントの作成はボタン一つで可能なのだから、現実のように身を潜めて行動するという必要もない。つまり悪意のあるエージェントの割合は、現実世界に比べて極めて高いと考えるべきだ。

例えば、SNSの投稿の6割はボットによるものだとの研究がある。Web全体における悪意のあるボットの割合は、トラフィックの4割に達する。現実世界ではあり得ない比率だ。生成AIは更に能動的になれるから、少なくともこの割合よりは大きいと考えるのが妥当だろう。そういう「ウソの海」の中を泳いでいくのは、現実社会より遥かに難しい。

そういう中にあっても人間はうまくそれを排除して生きているのだが、生成AIエージェントが同じように賢く生きられるかは未知数である。そして使う人間側としても不安があるので、アーキテクチャでこれを補完(保証)してやる必要がある、と考えるのが妥当だ。

本稿の主旨は、「そのためのアーキテクチャが必要である」と訴えることだ。で、その主旨はここまででもう語った。だがそれだけでは心許ないので、そのためのアーキテクチャの一例も合わせて提示したいと思う。

AIエージェントと現実人格の紐づけ

人間社会の場合、悪意のある人間、悪意のある組織などは、表舞台にはなかなか出てこない。その理由は、一義的には法律があるからだが、電子の世界と比較した場合、実は決定的な違いがある。それは、その「悪意的存在」の寿命である。

つまり、あるところで犯罪を犯した人間は、その後の操作により誰かを突き止められて、逮捕され、罪を償わされる可能性を負うことになる。組織による犯罪であっても、その組織を構成している人間には同じ可能性がある。だがこれは、人間は概ね何十年と生き続ける、という暗黙の仮定に基づいているのだ。だから後から追って、捕まえることができる。

しかしAIエージェントは違う。一瞬の後に作られ、仕事が終われば消滅する。AIエージェントがどんなに罪を犯そうが、消えてしまえば罪に問うことはできない。

SNSの場合も同様で、ボット自体に罪を問うことはできない。だからそういうボットの作者は自分の存在を隠蔽する。それが簡単なら、悪意的存在の比率は高くなる。今のSNSがそうなっているのは、それが一つの原因である。

だから、AIエージェントが悪意的存在でないことを確認するためには、そのAIエージェントが誰のものであるかを明らかにする必要がある。

つまり、現実の人間のIDから派生するAIエージェントのIDを定義し、そのIDを確認すると、誰のエージェントかが分かるようにする、というのが提案の第一である。

このIDは、マイナンバーのような国民IDか、GビズIDのような企業IDを使うのが良いと思われる。そのIDによる電子証明書を持つAIエージェントしか相手にしない、また相手は毎回確認する、というのが、最初のスクリーニングである。

エスクローアーキテクチャ

そしてもう一つ、今のサイバー犯罪では結局警察が動いて人に罪を問うのだが、今後のAIエージェントの発展を考えれば、間違いなく物量的に足りなくなる。つまり犯罪の追跡は困難であり、また大量であるため、警察も追いつけないと考えられる。だから、法律の前に技術的仕掛けで大部分は抑制する必要がある。

そのための提案が、エスクローである。つまり、何かを依頼する時には相手に報酬を提供する必要があるが、直接渡すのではなく、双方(売り手と買い手)が信頼する第三者に報酬を預け、取引が完了すればその第三者から報酬を受け取る、という仕組みである。

その取引自体にもスマートコントラクトが採用され、望まない結果に対しては支払いが発動しないようにする。また、悪意が確認されると報酬は没収される。

他、報酬以外にも保証金を積むような仕掛けはあってよいだろう。リスクの高い取引ほど保証金が高くなるような仕掛けも良いと思われる。

調停者アーキテクチャ

多数のエージェントが各々要求を出しており、その要求が相反しているような場合、AIエージェント同士が話し合うのではなく、公平公正な第三者である調停者(アービトレーター)に委託する、というアーキテクチャである。

調停者は、いわば裁判所における調停案、和解案の提示のようなものだ。双方の主張の理由、法律や社会慣習などを総合して双方妥協が可能と思われる案を提示する。それに双方が合意すればよし、合意がなければ決裂となる。

調停者自身も、過去の合意・決裂事例から学習し、より良い調停案を提示できるようになる。もちろん悪意の交渉についても学習し、それを防ぐ案を提示する。

実行はエスクローとスマートコントラクトを使うので、その後も安心して取引ができる。

調停者はカスケード(階層化)しても良い。例えば個人対個人から国対国まで、調停にはレベルが多数ある。ある調停が別の調停の枝葉になることはいくらでも考えられる。

両者の運営

エスクローはある程度民間でもできるだろうが、調停者にはそれなりの資格が必要だろうと思う。国、ないしは地方自治体による許認可と定期審査が必要だろう。まあ国対国だとさすがに政府運用となるだろう。またエスクローにしても、認可と定期審査は必要と思われる。

両者のために新たな国の機関を作る必要があると思われる。

まとめ

IDの詐称や会社のポリシーの豹変など、それでも悪意を完全に排除することができない。そうであっても、このアーキテクチャが進むことによって、いわゆる表社会の人たちがある程度安心して過ごすことは可能になると思う。残りは警察の仕事である。

そして鍵となるのはその割合だ。このアーキテクチャによって、既存の社会よりも犯罪率がずっと低く抑えられる可能性はあると思う。そうすれば警察や軍隊の必要性も低下し、世の中は平和になる。そういう意味でも、このアーキテクチャの重要性は高いと考える。

2024年10月18日金曜日

DAPPSサーバレスと省電力

 


ここで言うサーバレスとは、Amazon AWS Lambdaのようなファンクションサービスである。つまり、オンラインサービスに関数を登録しておいて、使いたい時に呼び出すというものだ。ここで、その関数はいくら呼び出しても構わない。つまり、サーバ資源の容量を気にする必要はない。故に「サーバレス」という訳だ。(もちろん課金は掛かる。)

このサーバレスをDAPPSの上に載せてやる。当然ながら、実際にファンクションを実行するのはDAPPSを搭載したコンピュータ群だ。各々が別の思惑でサーバレスを使っていれば、使うタイミングはズレるはずだから、俯瞰して見れば計算機資源の平準化ができる。

クラウドサービスと何が違うのかと言えば、いわゆるDAPPSの強みとして、特定のメーカーや国に依存しなくなる点、ゼロ知識で使える点、大規模災害などのアクシデントに強い点が挙げられる。DAPPSでクラウドサービスを構成するというのも考えられなくはないが、そこまで計算機資源を空けておくというのは考えづらい。もしそれがあるなら、どちらかというと計算機資源の提供で儲けようとする輩だろう。それはそれであって良いサービスだが、ここで狙うものとは違う。

さて、単にDAPPSで実現するだけでなく、その実行マシンをある程度制御できたとしたら、面白いことが起きる。

以前Googleが考えていたシステムがあって、それは実行マシンを常に夜の地域で動かすような制御を行うというものだ。つまり、日中にデータセンタを動かすと、需要も多いし放熱も大変だが、地球の裏側で実行すれば計算機資源に余裕が生まれるし、冷却もやりやすくなる、というものだ。

この考えを応用する。DAPPSの仕組みとして、現地時計を基に、夜間に割当優先度を上げてやることで、これは簡単に実現できる。そうすると、これだけで二酸化炭素排出量の削減に貢献できる。

ファンクションというベーシックなサービスに特化すれば、複雑になりがちなDAPPSも作りやすいだろうし、軽量にできるだろう。その上にDBなりミドルなりをファンクションベースで構築してやれば、複雑なシステムもそのうち搭載できるようになるはずだ。

2024年10月8日火曜日

電子契約の保管


 今後電子契約が増えていくと、その電子契約書の保管場所は問題になってくると思われる。というのは、今のコンピュータストレージはけっこう壊れやすいものであり、長期間そのデータを保持するのは意外に困難だからだ。

例えば、Google Driveに入れていれば良いだろう、などと考えているのでいれば甘い。Googleアカウントはある日突然BANされる危険があるし、操作ミスでうっかり消してしまう可能性もある。1年アクセスがないとアカウントが凍結され、更には消滅してしまうかもしれない。自宅のPCなどは更に危険である。ストレージが吹っ飛ぶ事故は日常茶飯事に起きているからだ。

基本的には個人の責任とはいえ、電子契約の保管は、実は紙の書類を保管するよりよほど考えてやらないといけないモノなのだ。

必要なのは以下のようなものだ。

  1. オンラインストレージであること。
  2. IDは国が管理する法的な根拠を持つものであり、作成も消去も行政手続きが必要なものであること。
  3. 無料であること。
  4. アクセス制御や署名手続きのUIを持つこと。
  5. 法的根拠のある書類の保管に限ること。
  6. 一度アップロードしたら容易に消去できないこと。
  7. クラウド側で多重化やバックアップなどを行い、数十年単位で消えないことを保証すること。
  8. 国際的な互換性を持つこと。
  9. プライバシー、セキュリティを十分に保てること。
  10. 最上級のサイバー攻撃耐性を持つこと。

こう考えると、マイナポータルを拡張するのが最適なのだが、どうもこの議論は全然進んでいないようだ。こういうインフラを国が用意してくれないと、電子契約もなかなか進まない。早急に検討してもらいたい。

一方、ブロックチェーンを使うというアイデアもある。DAPPSでストレージを作っているものは幾つかあるので、ここに保存するというものだ。

ただ、現在自分が知っているDAPPSの中では、自分の希望に叶うものはない。その条件とは、

  1. どこまでも無料であること。
  2. オープンソースであること。
  3. 既に稼働しており、ある程度の人数が使っていること。
  4. IDが汎用であること(特定の企業に依存しないものであること)。
などである。大抵のDAPPSストレージは、容量見合いで金銭を要求するものばかりだが、これはダメだ。容量見合いで計算機資源を要求するものであれば理に適う。こういうものが出現してくれれば良いのだが、誰か作ってくれないだろうか。

2024年9月24日火曜日

汎用分散ID


国民IDや、それに近いIDは、各国が既に多数出している。日本ではマイナンバーがこれに当たる。しかしそういうIDを出していない国もある。例えばイギリス、オーストラリア等がそうだ。こういう国はプライバシーに関する意識が高く、国が用意するIDに乗ることを良しとしない。しかしそういう国でも各々のサービス用のIDは存在し、Googleアカウント等の汎用IDと連動させることはできる。

こういった汎用のIDとして、GoogleやApple、Yahoo!等のアカウントが使われているのが現状であるが、企業依存というのは倒産危機や政府の介入といった不安がある。OpenIDという規格もあるが、これはID連携の話であってオリジナルのIDはどこかに必要である。

このため、企業に依存しない分散IDが最低一つ必要である。このIDにOpenIDで連携させるようにすればよい。

分散IDとは、分散IDアプリをインストールしたスマホ等がネットワークで相互接続して計算機資源を確保することで、中央集権的なサーバを設置することなく認証を行うことができるシステムである。分散IDの特徴は、その性質故に、特定の国や組織の干渉を受けないこと、またシステム全体に影響を与える深刻な不具合は発生しづらいということである。

分散IDに認証レベルを導入しておけば、本人確認をそれでやってから連動するサービスにログインできる。つまり、最高レベルの認証を行えば、マイナポータルにも入れるようにするのである。

分散IDへのログインは、まずアプリをインストールし、IDパスワードを設定する。これは第一段階である。次に、このIDに必要な認証レベルを割り付ける。これには生体認証を複数割り当てるのが良いと思われる。指紋と虹彩などが適当である。そして必要な認証レベルに達した他のIDと紐づければ良い。例えばマイナポータルと連携するには生体認証一つを必須とする。

こうすることで得られるベネフィットは、次のとおりである。

  1. 戸籍や国籍がない者、潜伏している犯罪者、住所不定者、その他国や自治体他あらゆる組織が把握できない人間に対し、その人が望む限りにおいて、IDを付与することができる。
  2. 国や組織の(恣意的な)意向によってIDを停止されたり、妨害など干渉されたりする恐れがない。
  3. 発行主体の倒産や国体の喪失等、地震等の自然災害、相当の大事件があっても、IDの運用には滞りがない。

また、分散ID固有のベネフィットではないが、

  1. あらゆるサービス向けIDと直接的なつながりがないため、ID連携に対する抵抗感が少ないと考えられ、ID纏めに有利である。
  2. 同じ理由により、ID連携への抵抗感が薄れる。これによって例えば複数の課金と複数の支払い手段の連携や、複数のSNSへの一斉投稿等といった、ID連携が実用的に行えるようになる。

というものがある。

このID連携は、従来考えるよりも遥かに広いものだ。例えば、AndroidとiPhoneとWindowsに同じIDでログインできる。これと連携してオンラインサービス全てとID連携すれば、つまりはローカルのマシンにログインできれば銀行にもマイナポータルにもログインできる。それもOSレベルで行われるので、IDマネージャーのようなものも必要ない。

この分散IDは、国も作ろうとしているのだが、これは民間がOSSとして作るべきであろうと思う。特定の国が作ってしまうと、海外の国がそれを使うのに抵抗を感じるだろうし、ライセンス等で抑えられてしまうのも良くないからだ。少なくとも規格はオープンにして、同じ規格に沿った複数の分散IDアプリは相互接続すべきである。

この分散ID自体は完全に匿名であるべきで、例えば氏名住所などとこのIDは直接連携してはならない。これをマイナンバーと連携することができたとしても、住所氏名等を保管するのはマイナンバー側である。マイナンバーから住所氏名を持ってきて銀行と連携させることは任意で可能であるにしても、それを強制すべきではない。

2024年9月17日火曜日

メタバース霊園はDAPPSで

 


メタバース霊園という新しい概念が、デジタル世界に登場し始めている。これは、現実世界の霊園をバーチャル空間に再現したものであり、故人を偲ぶ新たな方法として注目を集めている。

距離も天候も時刻も関係なく、思い立ったらいつでも訪れることができるし、故人の写真などデータも一緒に保存できる。花も幾らでも添えられるし、故人の好きなものを置いて帰っても誰にも迷惑は掛からない。

しかしながら、このメタバース霊園には重大な問題が存在する。それは、その存続性に関する懸念だ。通常の企業と同様に、メタバース霊園を運営する会社にも寿命がある。つまり、会社が倒産や解散した場合、そのメタバース霊園も消滅してしまう可能性が高い。これは、そもそも霊園に求められる「半永久的な存在」という本質的な要件を満たしていない。

この問題を解決する一つの方法として、DAPPS(分散型アプリケーション)上にメタバース霊園を構築することを提案する。

DAPPSはブロックチェーン技術を基盤としており、中央集権的な管理者を必要としない。霊園を支えるストレージやソフトウェアは、ユーザが使うハードウェアに分散して配置される。このため、利用者が一定数以上いる限り、霊園が無くなることはない。霊園運営会社は、初期立ち上げ時のみ最低限のサーバを立ち上げ、ここにDAPPSを動かしていれば良い。利用者がある程度増えれば、このサーバも必要なくなる。

DAPPSを利用することで、運営会社の存続に関わらず、ユーザーが存在する限りメタバース霊園を維持することが可能となる。

ただし、この方法にも課題がある。それは、急速に進化するテクノロジーに追随し続ける必要性だ。メタバース技術やブロックチェーン技術は日々進歩しており、これらの最新技術を取り入れ、常にアップデートを行うことが求められる。開発が止まってしまえば、ある日新しい脆弱性をつけ込まれて破壊や改ざんを受ける恐れがある。

こう考えると、そのDAPPSの管理は国など公的機関の管理下に置くのが良いかもしれない。公共サービスの一つとして動かすのだ。日本で言えばマイナポータルのようなところに置く。こうすれば半永久的なメンテナンスが受けられるだろう。

2019年11月5日火曜日

スマートコントラクトとエッジコンピューティング


エッジコンピューティング。多数のセンサや監視カメラなどのデバイスがばらまかれている現代において、そのエッジ、即ち正にそのデバイス内で、ある程度高度な計算を行う。例えば監視カメラなら、画像をそのままネットに流すのではなく、AIで顔解析をするなどして、監視対象が来た時のみアラームを上げる。これがエッジコンピューティングだ。

近年のエッジコンピューティングで大いに懸念があるのは、マルウェアの混入である。というのは、エッジと言えども相当にコンピューティングパワーがあるのに、セキュリティが甘いと指摘されているからだ。

また、エッジと言えどもソフトのアップデートはあるため、ROMに焼いて固定というわけにもいかない。通常のPCやサーバと違ってファイアウォールがない、個々のデバイスに直接触れるなど、むしろ危険がいっぱいだ。

この問題に対処する方法はもちろんあるのだが、むしろその仕掛けを標準化、定型化、そして何よりも簡素化することが重要である。その一つとして挙げられるのが、Chromebookのようなシンクライアント化である。OSをシンプルにすること、また上のアプリケーションをサンドボックス化するというのがその基本だ。ただ、ChromeOSを直接使うのは多少問題がある。Chromebookに遠隔ログインするという、ちょっと意味不明のシーケンスを辿ってしまうからだ。やはりエッジコンピューティング用のOSを作るべきだろう。

そのための仕掛けとして、スマートコントラクトを提案したいと思う。但し、このこのスマートコントラクトは通常のそれと違う。まず、実行するエッジを指定できる。次に、ここでのスマートコントラクトには報酬の概念はなく、トークンとしての役割のみを与えるのみとする。第三に、実行された上でエッジに溜まったトークンは、定期的に回収される。つまりネット内でぐるぐる回るだけだ。

そうする理由は二つある。まず、実行コードは作成者のIDを種に暗号化されているので、横から覗き見することはできず、作成者も必ず特定できるという点。怪しいソフトが侵入してくる余地がない。そして、エッジにいくら計算能力があっても、トークンを与えなければ実行してくれない点だ。万一怪しいソフトが紛れ込んでも、トークンを与えなければ実行できない。ブロックチェーンにはマイニングができない種類のモノもあるので、管理者が管理しているトークンのみがそのネット上に存在でき、実行のたびにトークンを配布してその後回収すれば、どのノードも好き勝手なプログラム実行はできない、という次第である。

こういう仕掛けをベースにすることによって、それがセンサであろうが監視カメラであろうが信号機であろうがドローンであろうが、共通のOSを使うことができる。管理はWebコンソールでできる。また、そのOSはスマートコントラクト実行のみしかできない専用のOSであるから、軽く、バグも少なく、更新も自動化できる。

更に、IDとトークンを管理すれば、ファイアウォールやらIDSやらを一切使わずにエッジを安全に管理できる。実行の記録も、自動的にブロックチェーンに溜まるので、不具合の監視もしやすいだろう。他にも、ローカルに溜まるものがないので、万一デバイスを盗難されても情報は盗まれないし、怪しいものと交換されてもそのデバイスは機能しない、といったメリットもある。

個人的にはブロックチェーンという仕掛けには懐疑的なのだが、こういう使い方もできる、という事例だ。

2019年9月4日水曜日

ランサムウェアとスマートコントラクト


システムデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェアに屈した団体が幾つか出てきているようだ。だが、身代金を払っても復号キーが入手できる保証はない。そんな中で、その復号をスマートコントラクトとして実現したらどうなるだろう、と考えてみた。

スマートコントラクトは、相手の信用情報を必要としない。従って、ランサムウェアがこれに結びつくと、身代金の支払いは必ず復号化を伴うことになる。これはランサムウェア側にとっては「信用を得る」良い使い方だ。

病院のようにリアルタイムで命を預かっているところでは、そこで「犯人を信用できるのか」といった余計な議論が長引くことがないのは、被害者側にも良いことだ。払うか払わないかの判断だけすれば良いからだ。

もちろん、ランサムウェア自体は犯罪であるのでダメなことではあるのだが、これを合法な用途に活用することは考えられる。

例えば、完成し納品したシステムにおいて、受け入れ側がテストし合格したにも関わらず支払いがない。そういった場合に、システムの一部を暗号化して機能不全状態にした上で、スマートコントラクトで支払いを解除のキーとする、といったことはどうだろうか。

あるいは、単なるシェアウェアであって、使用開始から一定期間が経つと自動的にこの機構が働く、というものも考えられるだろう。これならベンダ側の作業がゼロで済むし、ユーザとしても即時使用開始ができる利点がある。

こう考えると、スマートコントラクトの応用はもっと広がりそうに思える。色々と考えるのも面白そうだ。

2019年7月9日火曜日

ブロックチェーンは必要ない


以前から指摘していることであるが、ブロックチェーンは、取引履歴が際限なく溜まっていくという根本的な欠点がある。また、分岐が結構起こるのでそこで使用者が減ると、51%攻撃を受けやすくなる。

これ以前から、電子証明書による書類の真贋確認の技術はあった。これなら一度作った書類の改ざんは不可能だし、要らなくなったファイルは捨てるなりアーカイブできる。紛失の問題は、単純に複製分散すればよい。これをもっと活用すべきである。

欧州のeIDASにあるような仕掛けを使えば、個々の書類をコントラクトとすることは可能だ。即ち、ある書類を受け取り、受領証を返信した時点で、その書類の内容は確実に相手に伝わったことを証明できる。通貨の取引一つに大げさと思うかもしれないが、レシートと思えば問題なかろう。

一度使った書類を保管するかどうかはお互いの任意だが、自分が捨てても相手が保存していれば、改ざんは不可能なのだから信頼できる。また、暗号強度やキーの流出などの懸念があれば、定期的に暗号化し直せばよい。この場合、もし相手がまだ存在していればお互いに合意して更新すればよいし、拒否ないしは音信不通だったらその旨を証明の上、公平な第三者が代行することができる。その後相手が復活すれば三社が協調して修正する。何世代か保管しておけば、古いものは捨ててよい。

これがブロックチェーンの暗号通貨と根本的に違うのは、大きくは2つある。まず、それはお互いの間に契約があったことだけを証明するものであり、例えば受け取ってもいない金銭を受け取ったというような、偽の受領証を発行することは、合意さえあれば可能だ。ただ、これはエスクローの仕掛けを使って、ある程度回避することができる。

第二が匿名性だ。ビットコインの場合は、匿名口座を幾らでも生み出すことができる。また、法人格だけだと同様の問題があるので、eIDAS同様、個人まで特定できる証明が必要である。そうなれば契約も、当然に匿名性が損なわれる。少なくともエスクロー業者に素性を知られることは避けられない。

例えば、そのエスクロー業者が信頼できる金融機関だった場合、金銭の実際の授受を証明することはできて、そのエスクロー業者が秘匿する限り、その取引の事実は匿名でできる。一定期間の後証明書を廃棄すれば、その事実をなかったことにするのは可能だ。一方で、直接取引や闇のエスクロー業者に頼むような怪しい取引は、少々エラーや詐欺等の不具合があっても仕方がないだろう。

双方とエスクロー業者以外が閲覧不可能なように証明書を暗号化することは可能だから、国の盗聴は不可能である。必要なら法に基づいて開示請求をするしか手段はないが、そのこと自体は問題ないはずだ。

必要な役者として、タイムスタンプ発行業者、公的個人認証(JPKI等)はいる。情報保存業者は、タダのストレージサービスでも構わない。証明書の付与はソフトでできるから、特定のサーバは不要で、お互いがやり取りすればよい。エスクローとしても似たような業者はいる。後は、法的な根拠の整備と、それに合わせた各々の業者のちょっとした修正と協調さえあれば、技術的な問題はほぼなく、直ぐにでもサービスを開始できるはずだ。

2019年7月1日月曜日

新しいDAPPSのカタチ


以前も考えたことがあるのだが、今ネットで使っているようなオンラインサービスは、今後完全分散型に移行する可能性がある。その心は、国や宗教その他のイデオロギーによる規制を回避すること、また単一故障点を無くして可用性を高めることだ。このために必要なのはスマートコントラクトであるが、このためには仮想通貨のやり取りが必要になる。これが今、悪いイメージがついてしまっていて、敬遠のモトになっている

この仮想通貨を排除し、また広告モデルでもロングテールモデルでもない、完全ではないが無料のモデルとして提案したいのが、以前もちらっと話した「計算機資源提供モデル」である。

そのソフトウェアはスマートコントラクトとして実行される。つまりネットワークに仕事を投げ、他人にやってもらう。そのための報酬は仮想通貨ではなく、資源提供だ。即ち、ストレージや計算といった資源消費を通貨のように使う。単純に言うならば、自分の計算機資源でできる分だけの計算を行う、ということだ。

例えば検索をしたいとすると、スマホからの検索とサーバーからの検索では、後者が有意に速くなる。実際に消費しているのは他人のストレージや計算機資源であるが、その代わりに自分の知らぬところで勝手に他人の検索にも資源が使われている。

もし出先でも快適に検索したければ、自宅に高性能サーバーを設置しておいて、そのサーバーとスマホをペアリングしておく。すると、それらを併せた計算能力を評価して、速く検索ができる、というわけだ。

このサーバーは、広告業者も使っている。自分の家にサーバーを設置することができないユーザーは、広告を見ることを条件として、それに見合った広告業者サーバーの計算能力を借りることができる。見ないなら単に遅くなるだけで、仕事自体はできる。あるいは、個人情報の提供を承諾する代わりに計算機能力を買う。

これらが嫌だが自宅にサーバーを設置するのも嫌だ、という人は、パブリッククラウドに専用サーバーを月額で買うことができる。もちろんこれは専用のサーバーであり、ただカネを払うだけで、ここに個人の情報が入ることはない。スマートコントラクトに計算機能力を提供するだけだ。

このモデルの素晴らしい所は、個人情報を売る危険や、広告を見る際に紛れ込むマルウェアなどの危険と、自らがサーバーを設置することや月額レンタルすることの選択ができる点だろう。

必ずしもブロックチェーンを使わなければならない、とも限らない。だが何らかのゼロトラスト計算ができないと心配ではある。ここは検証が必要だろう。

問題なのは、このままではソフトウェアを作った業者が儲ける手段がないというところだ。これに対応するには、ソフトウェアが何らかの情報収集をするとか、計算機資源を報酬として受け取り、それをクラウド会社に売る、などが考えられる。

2019年6月19日水曜日

国際ID


住基カードが失敗し、政府はマイナンバーカードの普及に躍起になっている。資料によると既に1700万枚が発行されているようで、意外と普及しているなあ、というのが正直な感想だ。マイナンバーそのものは既に役所や会社で使われているのだろうが、カードとなると確定申告くらいしか利用シーンが思いつかない。コンビニ交付にも使えるのかもしれないが、住民票や戸籍謄本が必要になるシーンなんてそれこそ何年かに一回だろうから、カードを作る方が手間が掛かる。

そこで、健康保険証などに使えるようにと普及策を図っているのだけれども、そもそもマイナンバーカードって国民IDじゃないんだよね、というのがどうも引っ掛かる。海外在住の日本人は持てず、逆に定住外国人は持てるわけだ。住んでなくても健康保険証は一時帰国時に必要だし、その時に戸籍謄本が欲しいことだってあるだろうに。

転じて外国を見てみると、国民IDカードなるものを発行している国は、そんなに多くない。先進国でもだ。そこで考えるのだけれども、この国際化社会の時代、サービスの電子化に当たり、国民かどうか、その国に住んでいるかどうかというのは、昔よりも重要性が低下してきているのではないだろうか。IDカードを発行する云々の前に、ID自体の設計はこれで良いのだろうか、考え直す時期ではないだろうか。

この参考となるのが、イギリスやオーストラリア等のIDである。オーストラリアを例にすると、まずIDは誰でも取得できる。それこそGmailのメールアドレスがあれば、パスワードと複数の認証フレーズ(最初に飼ったペットの名前等)だけで登録できてしまう。

しかし、IDとパスワードだけでは、使えるサービスはInbox(郵便受け)、求職、家探しなど、基本的なことだけだ。そのIDと本格的なサービス(例えば年金など)を結び付けるには、あらかじめ年金サービス側でサービスに加入しておいて、そのIDを登録する必要がある。更に、パスワード認証だけではダメで2要素認証を必要とする、など、IDとの紐付けにはセキュリティ的な条件がある。

しっかりした認証を通ったIDを通じて既存のサービスを登録する、その登録段階にも認証があれば、文句はないだろう。基本的にはこういう考えだ。色々なネットワークサービスには自社IDではなくGoogle IDを使えるようなものがあるが、あれをもう少し厳格にしたような感じである。

この例が意味しているのは、本人認証のためのIDと、特定のサービスに加入していること(国民であること、住民であることも含め)を示すIDとは別だ、ということである。更に言うなら、IDは重要だがIDカードは重要ではない。カードの所持は認証の一手法であり、近年ではスマホ認証なども進化してきている。将来的に生体認証の精度が上がってそれだけでOKになる可能性すらある。本人認証のためのID、IDの認証手段、特定のサービスへの加入証明は、全部独立して考えられるべきだ。

そう考えると、オーストラリアの手法は非常に合理的だ。だがもう一歩足りないのは、それがオーストラリア人のことしか考えていない、ということだ。先に話した通り、もう国際化の時代なのだから、世界中のあらゆる市民に開放すべきなのだ。

これに最も近い位置にあるのがGoogleだから、これを基にして考えてみる。まず、AndroidはFIDO2認定を受けたので、これを最高のセキュリティとみなす。今でもGoogleは多数のオンラインサービスにID登録を許していて、それは一覧で見ることができる。ここを少々改造する。

登録をする時と実際に使う時の各々で、必要な認証のレベルを設定できるようにする、というのが改造の内容である。例えば確定申告のIDとして使いたい時、まずマイナンバーのサイトから「Google IDを使う」ボタンを押すと、Googleのサイトが開き、「登録しますか?」と出る。ここで「はい」と押すと、確定申告の場合は生体認証が必須とされているので、スマホで指紋認証すると登録できる。実際に使用するときも、同じく指タッチする。

サービス側は、Googleのセキュリティ管理体制を審査し、信用に足ると思えば「認定」を行う。もちろんセキュリティ段階に応じた使用制限付きだ。この場合は指紋認証を登録と使用各々で使うこと、であるが、こういった具体的なものではなく、セキュリティレベルXの認証を登録と使用で使うこと、といった抽象的な表現になる。例えば指紋でなく虹彩認証が開発されたとして、それが指紋より劣っていると思えば、それは認定の対象にならない、というわけだ。もちろんこの審査は随時可能であり、必要とあらば認定を取り下げることもできる。しかし各々のサイトには既に登録しておいてからGoogleと接続するため、IDが切り離されるだけで、使えなくなるわけではない。

こういったサイトはGoogleだけでなく、多くの民間・公的な企業・機関が設立可能であり、相互接続もできるようにする。こうすると、国が直接認定せずとも、相互信頼性が確保できれば接続できることになる。例えばマイナンバーでオーストラリアのMyGovにログインできる、というような体験ができることになる。

また、不正使用の危険が国際的になるため、証跡管理は必要になる。これは、単純にはID連携をした者(自治体等)が、どのIDを信頼してどんな手続きをしたのかのログを取ることである。電子署名等は当然であるが、ID連携者が加害者である場合もあり得るので、ブロックチェーンのようなゼロトラストの概念を導入することが望ましいと考えられる。

このIDは、本人が希望しない限りID連携を行わない。マイナンバーカードで問題になった基本4情報(名前、住所、生年月日、性別)すら、デフォルトでは提示しない。ID業者自体はID同士の連携は行うが、自らは情報をもたない(持ってもよいが)。こういうサービスであれば、国民も納得するのではないか。

2019年6月4日火曜日

NewDapps


先日、米国がファーウェイへの制裁措置の一つとしてGoogleサービスの停止がアナウンスされたが、あれを聞いて怖いなと思った。ファーウェイを持っていなくて良かった、ではなく、アメリカの身勝手に、だ。

製品の禁輸ならともかく、サービスを停止するというのはとんでもない話だ。その理由もまるで根拠が無い。イラク戦争の「大量破壊兵器」と同じく、幻に終わるかもしれない。そして今回は中国だが、その牙が日本に向かないという保証はない。やはりエネルギーにしても食料にしても、(防衛にしても、) 単独の国に頼るべきではない。情報システムも然りだ。

このためには、ゼロ知識ベースの完全分散アプリケーションプラットフォームが必要である。つまり、多数の参加者の中に悪意のある者が少々紛れ込んでいても、大部分がマトモであれば改ざんやシステム停止がされない、というシステムである。

こう書くと、ブロックチェーン、スマートコントラクト、DAPPS、という言葉が思いつく。しかしこれらは今のところ実力不足である。第一に、永遠にチェーンが溜まり続ける、何時まで経っても計算結果が確定しない、という仕様。トランザクション処理速度が遅すぎること。匿名性が中途半端であることなどだ。

これに適するのは、SETI@home的なシステムだろう。即ち、計算を細かく区切って各々を別のノード(全ノードではなく)に分散して計算させ多数決を取る、ということを繰り返すものだ。もし結果が違ったノードがあれば都度弾き、また分散する数を増やしてやることで、不審者の排除ができる。

SETIと異なるのは、アプリケーションを実行したい主体が全データ・アプリケーション実体を持っているのではなく、それらが細分化・暗号化・分散されて、ネットにあらかじめばら撒かれているところである。そうしないと、自分のノードが故障した時のリカバリができないからだ。

また、そのためには、データの暗号化と共に、暗号化したまま計算ができるような工夫が必要である。ここの理論が十分でないと情報が漏れてしまうが、既にこの技術は幾つか存在しており、今すぐには不十分でも将来的には十分期待できる。

アプリケーションの細分化は別の課題で、データのように単純にはいかないだろう。この分野の研究の話は聞いたことがないから、当分は開発側が工夫するしかない。しかしこれも学問的なアプローチが取られ、自動化ツールも出てくることだろう。

一方、スマホだけでは計算能力が足りないから、ちょっと工夫をしよう。家庭内や企業内にサーバ(計算機資源)を置き、ネットに繋げて常に稼動させておく、という条件をつける。それとスマホをペアリングして、計算機資源を多く提供している人ほど速く計算ができる、というようにしてやる。これなら企業は大量に、家庭では小さいものを、公平に使うことができる。

このシステムは、ディザスタリカバリと特定権力からの独立の両方を保障する。完全にネットワークを遮断しない限り、このシステムを止めることはできない。また、特定の企業が個人情報を蓄積しているなどということもなく、知っているのはネットのみで、コントロールできるのは自分だけであることも保障できる。

こういった完全分散システムの研究が、もう少し進んでも良いものではないか、と思う。

2019年4月3日水曜日

GAFAの「イノベーションのジレンマ」


既に持っている技術が仇になって、新しい技術への対応が遅れ、後発に追い抜かれる。これがイノベーションのジレンマだ。近年ではコダックのデジカメ対応の遅れなんてのは有名だ。一時期絶好調だったマイクロソフトもGAFAに抜かれたが、これもクラウドやモバイルへの対応が甘かったのが一因である。

ではそのGAFAがイノベーションのジレンマに陥る危険はあるのだろうか。
  • Google
  • Amazon
  • Facebook
  • Apple
こう書くと、Facebookが一番危険だ。この中で一本足打法なのはFacebookだけだからだ。次の新しいソーシャルサービスに乗っ取られる、という危険は十分にあるだろう。

Appleは、新製品が継続的に出ないとしぼんでいく。Apple Musicのようなクラウドサービスはあまり順調に見えず、個人情報ビジネスを否定しているため、基本は機器の売上に依存している。

Amazonは、そろそろ殿様商売に法的な規制が忍び寄りつつある。それでもAWSは安泰で、直ぐに萎むことはないだろう。Googleも同じだ。しかし、これらが警戒すべきなのは、新しいコンピューティングプラットフォームだろう。

AWSやGoogle Cloudのベースとなっているのは、世界中にある大量のサーバ群だ。これが負の資産に転じたとき、世界はひっくり返る。そのキーとなるのは何かと考えると、二つ考え付いた。①IoT、②オンプレミスコンピューティング、③強力な法による統制、である。最後はまあ良いとして、前二つはなぜそうなるのか。

膨大な計算が今後も必要になるということは、今後も変わりない。問題はそれを誰がするのか、である。今はサーバ集約型だが、これがまたユーザや現地に分散したときに、イノベーションが起こる。分散する理由として考えられるのは二つ。ひとつは分散コンピューティング、もうひとつはセキュリティである。

一つの例がブロックチェーンである。この真の脅威とは、中央のない完全分散コンピューティングである、というところだ。要はサーバが要らないのである。ユーザがどうしても持たなければならないスマホやタブレットの、あるいはセンサなどIoT機器の、ほんの少しの領域をそれに使う。例えばこれで検索機能を作ったとすると、その制御はGoogleにもできないし、業務システムならAWSに頼らなくても良い、ということになるのだ。

あれ、後者は正しいのかな、と気付いた読者は賢い。AWSの利点は、気軽に借り、直ぐに止められる点にもある。しかし世の中のAWSの使い方はポケモンGoのようなものばかりではない。例えば納税管理や住民情報システムなどは、負荷の急変動はないし、求められるセキュリティは高い。可用性(決して止まらない)も重要だ。AWSがフォーナインやシックスナインクラスの可用性を提供するとしても、分散コンピューティングの方が上、ということはあり得ることだ。

また、負荷変動があるとしても、スマートコントラクトでは余剰の計算力を収入に活かせる利点もある。むしろゆとりを持って揃え、そちらで稼ぐということも考えられるわけだ。総額で考えても、SIもUPSや非常用発電機も不要だから、こちらの方が安くなる可能性もある。

もう一つの、オンプレミスコンピューティングも、似たような考え方だ。AWSはAWS Outpostsを、GoogleはGKE On-Premを発表しているが、結局これはKubernetesがあれば下は何でも良いというモデルなので、OpenStack辺りがアプライアンスを設定するかもしれない。そうなれば使い勝手はAWSだし、余剰計算力は貸し出せばよいし、何よりセキュリティが高い。

更には、ある日量子コンピュータが実用化したとして、それがクラウドに乗ったままだと、既存の認証系は全滅になる。AIの急速な発達も、不安要素だろう。これが現実になったとき、これを防ぐにはオンプレミスで入り口を遮断し、とりあえずは乗っ取りを防がなければならないし、対策をするにしても入り口で行うことが検討可能だ。そういった「未知の恐怖への不安」は、オンプレミスへの指向を加速させる。

まあそれでも、いきなり死ぬということはないし、GAFAと言えどもバカではないから対策はするだろう。しかし今のような巨大ではいられなくなる可能性は、まだ考えられる。

2019年3月27日水曜日

セキュリティのためのマルチクラウド


http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1902/06/news099.html

マルチクラウド、すなわちAWSとAzureを同時に使う、といった企業が増えているそうだ。

どう使っているかまでは調べられていないが、想像するにデイザスタリカバリかバックアップだろう。AWSが大々的に停止した時にはAzureを使う、あるいは復帰してからAzureのバックアップを戻す、といった使い方だ。これは理に適っている。同じサービスよりも違うサービスの方が、同時に停止する確率が低いというのは自明だからだ。

これを更に一歩進めて、情報を暗号化して分散するような仕掛けを考えられないだろうか。つまり、どちらかのクラウドが恣意を持って顧客のデータを覗きに行っても見れない、国の命令があっても復元できない、とするのだ。

データだけなら簡単だろう。いわゆる割符を使って、アメリカのAmazonとアイスランドのGCPと中国のAzureに分散する。コンピューティングはローカルで復元してキャッシュとして使う。もしアメリカが開示命令を出したとしても、復元は原理的に不可能である。

他にも、各国には各国の人・企業のデータだけ入れるものとして、その国の企業は開示するが他国のものは開示しない、といった考え方も可能だろうし、k-匿名化のような技術を使って計算そのものを匿名のまま計算することもできるだろう。

ブロックチェーンのようなところまで行くと、さすがに企業の基幹システムとしては心許ないが、似たような技術で「強制されても他社への開示ができない・どんな災害にも負けない」システムができるのなら、これに載せたいシステムはいっぱい考えられる。

2019年3月17日日曜日

ブロックチェーン遺書


遺書のデジタル化に関しては、意見は色々とあるものの、日本としてはまだ具体的な動きはない。遺書情報そのものに関しては動きがあるようだが、遺書そのものがデジタル化されるわけではない。

日本ほど遺書の運用が厳重でないところでは、この動きがあるようだ。遺書そのものというよりは、死をトリガーとしたスマートコントラクトで仮想通貨を送金する、といった応用が考えられているようだ。仕掛けとしては面白いが、法が絡んでいないために正式なものとは認めがたい。ここはやはり国が制定すべきであろう。

ブロックチェーンには欠点も色々あって、必ずしも未来の技術とは言い切れない。しかし、こと「遺書」に関しては適切だと考える。その理由は以下の通りだ。
  1. 遺書は、一生のうちそう何回も作り直すものではない。せいぜい数十回が上限であり、平均すれば数回というところだろう。分量だってせいぜい数枚から数十枚で納まる。また、人口も平均余命も大きくは変化しないから、データが増える速度は予測可能且つ大変動しない。ブロックチェーンの大きな欠点の一つである、「台帳の容量が永遠に増え続ける」「計算速度が遅い」といった問題は、問題にならない。
  2. 保管が重要であって、システムは大して複雑ではない。極端な話、PDFで保存すればよいだけだ。高度な計算を必要としない点は、ノードの単価に有利に働く。
  3. 改ざんの可能性は、ブロックチェーンへの参加者の信頼性で決定される。遺書であれば官庁自治体のチェーンにすべきだろうから、51%攻撃などということはあり得ない。
  4. 一方で通常のコンピュータシステムでは、クライアントサーバやバックアップ等、複雑なSIをしなければならない。同質のクライアントをインストールするだけでよいブロックチェーンは、システム構成上有利だ。特に自治体で構成すれば数千に分散するので、DR(ディジャスタリカバリ)は完璧だ。保守もほぼ必要ない。
ここで、遺書の性質を改めて考えてみる。病気が重くなって気が変わって云々、という時に、PCを立ち上げてパスワードを入れて、…といった操作を強要するような制度では人に優しくないと言える。紙に書いた自筆、署名入りの遺書が最後には有効である、という原則は外せないだろう。かといって、全部紙のままでスキャンするだけ、というのであれば、あましシステム化する意味が無い。

この折衷案として考えられるのは、次の通りだ。
  1. 紙による遺書とデジタル遺書の両方を認め、検認の手続きも行う前提とする。例えば、デジタル遺書と紙の遺書が両方発見されたとして、どちらが後に作られたものかをもって最終的に有効な遺書を決定する作業は残す。検認が完了した時点で、有効な遺書が決定するが、これが紙だった場合には、改めてその内容をスキャンし、デジタルで入力するものとする。
  2. デジタル遺書は、単純にマイナンバーポータルから入れば良いというものではなく、いわゆる遺言信託の一形態として設定する。
  3. デジタルにするからには、事前にその有効性は自動で確認しておきたい。抜け漏れ、無効になる、慰留が発生する全ての可能性は、作成時点で検証可能にする。もちろんそのための前提(相続人の特定や年齢、犯罪歴など)も入力が必要だ。
  4. 財産は、項目をいれておけばその時点での価値を自動計算できるようにしておく。例えば通帳の残高や土地の時価などだ。
  5. 死亡通知と共に、相続人への通知が行くように、全相続人のマイナンバーを設定しておく。このために、遺言信託の執行者にはマイナンバーへのアクセスを許可する。
  6. 次に、相続人全員の合意を得て、執行が一部修正される。最終結果がまたこのシステムに載るようにする。
  7. 執行の大部分がオンラインで行えるよう、デジタルになっているものはできるだけマイナンバーに繋げて執行する。
こんなところだろうか。こう書いてみると、まだまだアナログな部分は多く、人手も時間も掛かることが分かる。世の中はまだまだデジタル化の余地がある。

2019年3月9日土曜日

取引疑義調停改革


組織からサービスを受け、対価を支払う。その対価の支払いに、代行サービスを使う。代行サービスは更に代行サービスを使っている。これが、今の金融取引の実態なのだが、上手く回っているときは良いとして、そうでないときには困ったことになる。

クレジットカード会社の引き落としで疑問が出たとき、その会社が代行サービスだったときがそうだ。手軽に問い合わせることができず、また引き落とされたことに対して停止したり疑義を申し立てる機能が弱いと感じることが多々ある。

これには、契約と支払いが電子的に一対一対応していないことに一因がある。もちろん定期購読のようなものはあるのだが、これにしても個々の支払いは包括契約に基づくものであって、それが「包括契約である、どんな契約である」というのが分かっていれば問題は無い。これが今は曖昧だ。

ブロックチェーンのようなものでも、まだ包括契約はカバーしていないし、そもそも支払い行為しか追っていない。スマートコントラクトにしても、電子取引のみに閉じていては完璧ではない。ここを完璧にすることは可能だし、それほど難しいわけでもない。

クレジットカード決済、銀行送金、PayPal、仮想通貨、電子マネー、これら全てにおいて、ここは完璧ではない。これを行うために、次のような仕掛けを考えてみる。

まず、改ざん不可能な契約書と送金証明書が必要である。これを見れるのは、原則として契約当事者と送金者(送り側、受け側)である。契約・送金各々に代行者がいた場合、その代行者も閲覧可能とする。もちろん、係った全ての国の捜査機関は、疑義があればこれを閲覧できる。

この契約書と送金証明書は、改ざん不可能、消去も不可能でなければならない。ブロックチェーンはこの保管には適しているが、必ずしも必須ではない。ここではその方法については問わないことにする。

スマートコントラクトと異なるのは、実世界が絡む契約では、どうしてもその契約実行を電子空間だけで完結できないところだ。つまり、契約と送金が証明されても、契約の履行は証明されない。例えば紛い物を送り付けられたり、そもそも何も届かない、建築契約なら途中で放棄される、よく調べてみれば買ったはずのものに別の抵当権が付いている、などだ。逆に、難癖を付けられる可能性だってある。

契約履行証明は、契約先が契約書と送金証明書に紐付けて発行するのが望ましいが、それでも疑義がある場合は第三者調停が必要となる。つまり、契約書、送金証明書、契約履行証明書の三点にIDを付けて改ざん不能な形で保管しておき、調停第三者がどちらかの申請により閲覧できるようにする、というのが良いことになる。

調停第三者は、そういった調停を多く記録しておいて、統計的にどちらが正しいかについて判断し、見解を提示する。例えば過去に多くの調停が発生した者(トラブルが多い者)の方が疑わしいと考えるし、証明書以外の証拠を多く提示した者なら信頼できるだろう。もちろんそれには拘束力はないので、見解に従わないと分かれば即裁判に持ち込めるようにする。

具体的に例を挙げると、契約書はAmazonの購入手続き、支払いはクレジットカード明細、契約履行は宅配業者の配達証明、となるわけだが、この各々が紐付けられているというのがミソだ。各々に単純に番号が振ってあって、その相互接続ができている、というだけでもよい。それならシステムをそれほど弄らずに対応できる。このレベルではまだ「改ざん不能」とまでは言えないが、少なくとも直ちに追跡ができることにはなる。

調停第三者は、まだ日本では本格的に稼動していないが、例えば弁護士が組織化して新しいビジネスとして立ち上げることもできるはずだ。これは例えばAmazonなど複数の通販業者と連携する(単独だと逆に疑義が起こりかねない)ことで、広く薄く経費を徴収すればよい。これは広く言えばAmazonマーケットプレイスの信用調査を兼ねることにもなる。ここが優秀ならトラブルは減り、信用もまた上がるというものだ。

ここまで手続きを簡単にすれば、決着が素早くなり、社会の効率化ができる。またこれは、契約の良質化に繋がるはずだ。即ち、契約不履行や詐欺の類は減少するだろう。

2019年1月31日木曜日

ブロックチェーンバックアップPC


PCが壊れた際、新しいPCを買ってきて、それに古いPCを同じ使い勝手をするべく、ソフトや設定を調整する作業は、いつも大変だ。

単にバックアップ・リストアをすれば戻るよ、ということも多いだろうが、そもそもバックアップなんて意識してしていないし、リストアって何?という人も多いだろう。これは自動で行って欲しい。

また、バックアップをいったい何処に取るのだろう。設定程度であればクラウドに逃がせば良いだろうが、大容量データとなるとクラウドでは有料、それも結構な額になる。当然契約も必要だ。ここは無料且つ何も設定なしにして欲しい。特定ベンダに依存するのも不安になる。そこで、こんなことを考えてみる。

既に、ブロックチェーンを使ったオンラインストレージサービスは存在している。storjなどは代表的だ。これを使う。

そのPCのストレージは、全容量の3/4がこのストレージサービスに割り当てられている。このサービスは、同じサービスをインストールしているPCと相互バックアップをしている。ネットに繋いだ途端、そのサービスはブロックチェーンに参加し、整合性を確認する。

このバックアップは、通常のそれではない。ローカルの1/4のストレージを、細かく分断し、暗号化し、ネットの海に広く浅く、更に冗長化してばら撒くのだ。逆に、自分の持っている3/4のストレージには、そういう断片が詰まっている。

個々の断片が何処から来た誰のデータかは無論わからない。自分のデータが何処にあるかも分からないが、冗長度は分かる。コピー先のPCが電源オフになったり、ネットから切断したり、故障して廃棄になった場合は冗長度が落ちるので、規定の冗長度になるまで再度配布される。

こういうシステムが動いていて、ある日自分のPCがお亡くなりになったとする。新しいPCを買ってきてネットと繋ぎログインする、後は放っておくだけでリストアが成立するわけだ。

廃棄されたり故障したりしたPCからデータを抜き取っても、ローカルの1/4に関しては盗まれるだろうが、残り3/4に誰のどんなデータがあるかはわからないし、わかっても断片しかないので復元できない。

このときのログインIDはストレージサービスのIDであって、OSやGoogleのIDである必要はない。中身は暗号化されているので、世界中どこにあっても問題ない。特定の国や企業に依存するわけではない(そのサービスには依存するが)し、巨大なサーバも必要ない。もちろん情報が漏れる心配もない。相互依存なので、費用も発生しない。クレジットカードの番号を晒す必要もない。

これはどんなOSであっても原理的には対応できる。OS起動前のプレOS、仮想化ソフトのような位置付けでよい。ぜひ検討してもらいたいと思う。

2019年1月6日日曜日

新ブロックチェーン


ブロックチェーンの欠点である、過剰な冗長性を排除するための方策として、以前から幾つか考えている。二重ブロックチェーンなどがそうだ。それとはまた異なる形式の方法を考えている。それは、完全に重複した台帳を持つのではなく、部分的な台帳を持つ、というアプローチだ。
  1. 台帳は、その大きさ(容量)と参加者(ノード)の数に応じて、適当な大きさに分割される。
  2. ノードの数が少ないときは分割数も少なく、冗長性は高くなる。ノードの数が多くなると、数も多くなる。
  3. 分割は、時系列で行われる。
  4. ノードには、分割された台帳のうち一つないしは複数が置かれる。ノード数が少ないときは全てが置かれるが、数が増えればその一部のみとなる。但し最新のものは全員が持つ。
  5. 分割の切り口は、例えば承認率と時刻の複合計算によるのが良いだろう。最新のものは全員で持ち、承認が安定した古いものは容量を決めて分割する。
  6. 古いデータを保管するノードの数は、古いほど少なくなるようにする。また、ノードの信頼性(稼動期間や安定度など)や余裕(空き容量)、地理的・論理空間的分散等についても評価し、適切に配置する。
  7. 特定のノードに注目すると、最新の台帳と、古い台帳の一部が保管されていることになる。古い台帳にさかのぼって検証をする機会は滅多に来ないが、もし来たら他のノードから取り寄せることはできる。もちろんランダムに複数のノードから取り寄せ、一致することを確認する。台帳同士の接続も、当然確認する。
  8. 古い台帳の配置や改ざん検証は、バックグラウンドで常に行われるものとする。配置の変更も同様に行われる。
  9. トランザクションの全員検証については、従来のブロックチェーンと同じとする。
BitCoinでは、特定のノードは新しいもののみを持つようなアプローチになっているものもあるが、これではノードはフラットにならない。他にも分割保管の方法は考えられるが、今のところ一番しっくり来るのがこの方法だ。

有識者の検証を望む。

2018年11月24日土曜日

匿名労組


労働組合が廃れた原因のひとつは、労組で活躍をすると、その後の会社生活で何かと目を付けられることを恐れるようになったからだ。実際、そうなってしまった人も多いだろう。しかしこのために、労働者の待遇は悪くなる一方だ。

そこで考えられるのが、交渉を全て電子化し、匿名で行えるようにする制度である。誰が活動しているのかが分からなければ、圧力も制裁もやりようがない。但し、関係ない第三者が紛れ込まないようにするには、労働組合員であることの証明も必要である。このバランスを、技術で担保する必要がある。

この仕掛けとして、ブロックチェーンを使うというのは直ぐに思いつくだろう。それにどう味付けをするかだが、まず会社には何かしらのIDがあるはずだから、それに証明書を付ける必要がある。スマホか、PCか、ICカードかは分からないが、それを認証に使用する。その上でソフトは、個人を特定できないような暗号化をして、会社との交渉空間と、組合員同士での会話のための空間を準備する。

会話がリアルタイムで行われると個人の特定に繋がるので、基本的には時間を指定しての双方の主張交換のような形になると思われる。これは組合員同士でも同様で、いわゆる裏切り者や内通者を作らないために必要だ。例えば半日毎にしか更新しないチャットのような形が良いのではないか。

もちろん、こんなソフトを素直に会社が認めるとも思えないが、それでも時代の流れが来れば、可能性はあるように思う。そうなれば、多少なりとも健全な労使関係ができるのではないだろうか。

2018年10月6日土曜日

DApps考


中央サーバがない分散アプリケーションというのは、あるようでなかなか無かったのだが、DAppsはそういうものなのだそうだ。一時期流行ったWinnyのようなファイル共有ソフトは中央サーバがないから似たようなものだが、DAppsの場合はブロックチェーンを使用していて、暗号通貨(暗号トークン)による報酬のやり取りが発生する。仕掛けとしては複雑だが、なかなか面白い。

Winnyは非合法的匂いが漂っていたが、アプリはファイル共有だけではなく合法で有益なものもある。例えばSNSなら、世界中どの国に行っても封鎖されることなく使えるし、サーバダウンで使えなくなることもない。送金なら銀行より速く確実にできる。ただ、中央による監視がないことは、例えばSNSならアカウント封鎖ができないとか、送金なら誤送金しても返してもらえない、というリスクもあるので注意は必要だ。

さて、そんなDAppsは、まだ企業内で大々的に使おうという雰囲気にまではなっていない。DAppsでは中央サーバが無いため、ノードのデータ領域と計算能力の負荷が大きくなる。中央サーバの全能力と、各ノードの全能力の合計は、後者の方が圧倒的に膨大となる。つまり、総額としてみれば、企業の負担はかえって重くなってしまう。

この問題を解決しないと、DAppsは企業に普及しない。すなわち、サーバに、しかも複数のサーバに分散した上で何とか動くような巨大なプログラムとデータを、如何にして非中央集権の各ノードに置くか、である。

多重化を目指す以上は、一つのアプリケーションやデータを複数に配置することは避けられない。だが、単純なブロックチェーンのように全ノードに配置するのはやり過ぎだ。だとすればこの中間、すなわち全部ではないが十分に有意な分散をする、しかもそれで信頼できるようにする、ということになる。

このためには、従来とは違ったノード情報が必要になる。分散が十分であるかどうかを確認するための指標だ。例えば地理的に分散しているかどうか、同じないしは類似の組織に所属していたり似たようなソフトをインストールしていないか、通信の相手先が偏っていたり、同じ人と通信していないか、など。要するにお互いが独立しているかどうかだ。

アプリやデータは、この指標を基に分散しなければならない。独立度が高ければ分散数は少なくてよいし、低ければ多数のコピーが必要、ということになる。また、アプリに関しては当然計算機負荷の軽重が問題になる。貧弱なアプリは貧弱なノードに、重いアプリは重いノードに、というわけだ。

このアプリは単独で閉じるものとは限らないから、例えばミドルとUIで各々グループを作るような動きになる。そして、そのグループ間が通信をする。負荷が増えればグループ内でノードを複製し負荷分散する。そういったバックグラウンドが必要だ。

これら、すなわち個々のアプリ(モジュール、ミドル、ブロックと言っても良い)の分散度やリアルタイム負荷分散、当然故障検知や代替などが全て自動で行え、そのためのパラメータはアプリ作者が調節できるような仕掛けが必要である。

ここまで来ると、従来のDAppsやWinnyレベルではなく、業務用の監視ツールにも匹敵するソフトが必要になる。それがアプリにとってはバックグラウンドソフトになるわけだが、ここまででも相当に高度であり、計算機負荷も高く、容量も必要だ。

そんな仕掛けが開発可能なものなのかどうか、合理的な計算機負荷で納まるものなのかどうか、分からない。だがもしこれが出てくれば、従来のサーバビジネスが吹っ飛ぶような重要な可能性を秘めている。ここまで考えて作ってくれる人がいるものなのかどうか、注目している。

2018年9月11日火曜日

電子エスクロー


ブロックチェーンの応用技術の一つに、スマートコントラクトがある。仕事(コードの実行)と課金(コード実行に対する対価)が同時に交換される、というもので、言わば踏み倒しの心配がなくなるための仕掛けだ。

従来のソフトウェアにも、ライセンスという考え方はある。ライセンス回避防止のため、各社は様々な仕掛けを考案しているが、これを簡単に実現する仕掛けとも言えるだろう。
ただ、ブロックチェーンの場合はもう少し事情が複雑で、コードを実行して欲しい人は当然カネを払うわけだが、実際にコードを実行して対価を受け取る人は、コードベンダではない。ブロックチェーン上にいる匿名の誰かだ。

つまり、本質的に、スマートコントラクトとは、実行コードは大したものではなく、その数(実行回数)が膨大であって、実行そのものに価値を置き、不特定第三者が地道に儲けるための仕掛けである。

これは、逆に言えば、高度なプログラミングを付加価値とするような既存のSaaS業者には馴染まない、ということを意味している。そういう業者がSaaSをどう進化させるかに関してスマートコントラクトから何を見い出すか、と考えると、その根本たる「信頼性調査不要」(実行=課金)というところだろう。

従来でも、課金しなければ実行しない、とすることはできたのだが、これはSaaS側に一方的に有利な仕様だ。つまり課金後仕事をせずにバックレることが可能な訳だ。自分を信用してもらうためにあれこれ手を尽くすのが面倒だと思えば、この考えを取り入れてしまえば話が早い。

つまり、プログラムの実行(結果引渡し)と課金の両方が成立するか、両方とも成立しないかのどちらかしかステータスが存在しない、という状態を作り出せればよいことになる。
通販ではエスクローという制度があるが、これと同様、信頼できる第三者(認証期間のようなもの)があれば、この実現は簡単である。それを国や自治体(ないしはそこからの委託期間)が運営し、ベンダはそこにIDとコード(スマートコントラクト)を登録するだけでよい。

認証機関の背後には、登録した多数のベンダと繋がるチェック機構がある。ベンダが実行したコードが確かにユーザの指定したコードなのか、実行が正しくできたのかを監視し、正しくできればベンダに支払いを行う。ベンダとの間は仮想通貨を使うが、その発行元は認証機関であり、新規通貨の発行権を持っている。また、現金(法定通貨)との換金もここが行う。

ベンダは、コードの実行毎に課金で仮想通貨を得るが、それを現金に戻すには認証機関に頼むしかない。これによってネットワーク内の仮想通貨量は調節される。
もう少し詰めていけば、実用に耐えるようになるだろう。

さて、これを作る目的だが、従来のスマートコントラクトでは、コードの価値はゼロだ。実行にのみ対価が発生する。しかしこの仕掛けでは、コードにも価値が発生する。

そうすれば、従来は躊躇したであろう高度な(大容量の)コードや、特許など知的所有権のある(価値のある)コードがこのプラットフォームに乗る。これはある意味公平性があるわけだ。小さい企業、技術力はあるが営業力が弱い企業なども、ここで勝負ができるようになる。

これは、業界の活性化に繋がるものと信じる。

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