ラベル ロボット の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ロボット の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年9月1日火曜日

親の親ロボット

 
合計特殊出生率が1付近でウロウロしている時代が長く続いている。これは一世代で人口が半分になるという急速な少子高齢化を意味しており、現在の日本で既に数兆円規模で行われている少子化対策費をもっても止められていない。移民やAI・ロボットによる労働力支援は窮余の策ではあるが根本的解決にはなっていない。直接的に出生率を2に近づけるためには何をしたらよいのだろうか。

根本的理由は、市民のモチベーションだ。つまり、子供を持つことが嬉しい・楽しいことであるという意識を持つことだ。そのために「お手伝いさんロボット」を作ったらどうだろう、と思って生成AIに聞いてみたのだが、見事に否定された。

というのは、育児をロボットに任せてしまうと子供への愛情が育ちにくくなるからだ。人間には「イケア効果」というものがあり、つまり手をかけた子供ほど愛おしくなるものなのだそうだ。他にも子どもの側からしても「困難な時に寄り添ってくれた親ほど好きになる」という心理があり、何でも育児をロボットなり他人なりに手伝わせてしまうと、双方にとって宜しくない。

考えてみれば、大金持ちの息子がドラ息子になりやすいのはそういう理由なのだろう。子育てをお手伝いさんに任せっきりでは、親子共に精神的成長ができず双方の愛情も育たない。

そこで考えるのは、そういった心理学的効果を知識として持ち、リアルタイムに親と子の精神状態やホルモン分泌(愛情ホルモン、ストレスホルモンなど)を監視して、理想の子育てができるように補助・支援してくれるロボットである。

ハードウェア的には育児ロボットと同じであるが、基本的には手伝わない。親の表情や、指輪型センサ等から得た体内情報(推測でよい)、子どもの状態を総合的に判断し、適切なアドバイスを行い、相談に答え、それでもキツイときには最低限の手伝いをする、といったロボットである。

例えば、スキンシップは幸せホルモン(オキシトシンなど)発生を促す。適度な会話もそうだ。ただ過度になるとストレスになる。その境をロボットが見極める。また深夜の見守りや授乳は一部代替し、親が寝不足にならないようにする。おむつを替えるタイミングをアドバイスする。叱り方もアドバイスをする。暴力は止めさせる。保育園で発熱したときには代理で引き取ったり、迎えに行くのが遅れたときには先行して待機する。受験のアドバイスをする。声掛けのタイミングや内容をアドバイスする。子供と一緒に遊ぶことも促す。こうやって書いてみると、親の親が同居していて育児を支援するようなものかもしれない。

このロボットを自治体が子育て世帯に貸し出す。この支援によって、子供は親の愛情を最大限に受けて育ち、一方で親も子供を最大限に愛することができる。これが好循環を生んで、子世代はより多くの子供を持ちたいと思うようになる、という次第である。

もちろん社会制度としての補助も必要で、育児休暇の完全消化を義務付け、子育て放棄はロボットが監視しておいて強い罰則を設ける、教育費用は全て無償化する、医療費も大幅免除、といったことが必要になるだろう。

このロボットが完璧なら、ロボットのいる家庭の子供は一律に幸せで賢く愛情豊かで、友達も多く生活が充実しているはずだ。それを周囲の子供や親世代が見れば、皆ロボットを導入したいと思うようになるだろう。

ただ、それで出生率1.1が1.3くらいになるのは容易だろうが、2や2.1に届くかどうかは、やってみないと分からない。

2026年8月27日木曜日

バスとタクシーの融合(バクシー)構想

 

一日千人の利用があるのに廃止する路線バスのニュースがあった。理由は運転手不足だという。

中期的にはこれは自動運転で置き換わっていくのだろうが、そうすると今のバスでは都合が悪いように思う。自動運転の時代には、「大型バスで定期運行」という形態そのものを見直すべきだろうと思う。

自動運転になれば、運転手の問題は解決する。つまり幾らでも台数を増やすことができる。これを活用し、従来のバスの不満を解決する方法を考える。そこで、バスとは何か、なぜバスを使うのか、タクシーとはどう違うのか、という根源から考えてみる。

バスとタクシーは、各々道路を使って移動する手段である。もしタクシー料金が安ければ、人はバスに乗りたいとは思わないだろう。だがそこには重大な公共からの要請があって、全てをタクシーにすると道路が混んでしまう。例えば朝の通勤ラッシュで、バスを止めて全部タクシーにしたら、と考えてみると、とても回りそうにない。また、全体で見ると資源・エネルギーの無駄である。だから、ある程度の需要が見込めるなら、タクシーよりバスにしてほしい。

そのバスで面倒なのは、路線図が複雑で見方が分からないこと、また路線によって極端に本数が違い、時間帯によっては1時間も来ない、ということがよくあるが、それがすぐには分からないことだ。普段から使う人ならともかく、一般論としてこれは不親切である。

もちろん、自分の欲しいルートがない、というのも重大な課題だ。バスは電車と違って乗り継ぎ料金の適用がない(少ない)し、あったとしてもそのこと自体を知るのが困難だ。

これらを解決する手段として、以下のようなシステムを提案する。

  1. バスとタクシーを統合したMaaSシステムとする。これを仮にバクシーシステムとする。
  2. 全てのバクシーは自動運転である。
  3. バクシー停
    1. 現在のバス停よりも多くの場所に、バクシー停を準備する。目安としては、現在のバス停の数倍とする。
    2. バクシー停にはIDがあるが、それは地域名+番号記号程度の簡単なものであり、駅や大きなターミナルのみに固有名(別名、俗称)がある。
    3. バス停には電源とビーコンが埋め込まれており、ユーザのスマホでそれを読み取ることができる。
    4. 大部分のバス停には特に電子的表記などはない。必要な情報はユーザのスマホに表示される。
    5. 時刻表は存在しない。目安としての平均的待ち時間はアプリで表示される。
  4. バクシーの呼び出し
    1. ユーザはバクシー停に着いたらスマホのアプリでバクシーを呼び出す。スマホのアプリは自動でバクシー停のIDを読み込み、システムに知らせる。
    2. この際、降車位置を指定する。この時、他のバクシー停を指定すればバス料金となり相乗り、一般的な住所を指定するとタクシー料金となり単独での使用となる。
    3. 家族で乗る場合などでは、代表者が人数を指定して知らせる。この場合、支払いも代表者が行う。
    4. 料金は呼び出し時に確定する。時間距離併用料金ではなく、距離のみである。
    5. 呼び出し時にバクシーのIDは確定し、そのIDのバクシーにしか乗れない。このため並ぶ必要はない。
    6. 自宅などバクシー停以外に呼ぶこともできて、この場合は当然タクシー料金である。
    7. アプリにはあらかじめ要配慮者オプションがあり、車椅子専用車両などが用意されている。この場合は待ち時間は多少伸び、料金も上がるが、自治体などによる補助も自動適用される。
  5. バクシーへの搭乗と降車
    1. 代表者ないしは一人ひとりが搭乗時と降車時に指定場所にスマホをタッチする。
    2. アプリには支払い方法が事前に登録されており、降車時のタッチで自動引き落としになる。
    3. 降車位置は既に指定されているので、降車ボタンは必要ない。また、降車が近づくとアプリに通知される。
    4. バクシー到着時、2分以内に乗車完了しないと自動キャンセルとなり、キャンセル料金が発生する。障害者等はむろん考慮する。延長ボタンもある。
    5. 降車予定時刻はその時の状況に応じてリアルタイム更新される。
    6. 乗合(バス)の場合は当然複数の場所で降車するが、間違ってタッチするとアラームが鳴る。
  6. 乗り継ぎ
    1. バス乗車の際は、乗り継ぎになる場合もある。この時、アプリにはその旨表示されるので、指定バクシー停で乗り換える。
    2. 料金は通しで自動計算される。乗り換えを中止したとしても全額の支払いとなる。
    3. 乗り継ぎルートはその時の交通状況や配車状況によって異なり、例えば繁忙期には直通が多くなる、といったこともある。ユーザはそれを指定することができないが、乗り継ぎ回数予想は事前に知ることができる。
    4. 乗り継ぎが2回以上になる時、自動的に割引が適用される。逆に言えば、乗り継ぎは1回を上限とするようルート選定が為される。
  7. ルート
    1. 基本的には、駅など人が多く利用する場所を中心として放射状に広がる放射状ルートと、その中心から同心円状につながる環状線ルートとする。つまり、放射状ルートが中心から遠くなるほど環状線ルートを使う確率が高くなる。
    2. 放射状ルートであっても、中心から遠くなると乗り継ぎで小さいバクシーになる可能性が高くなる。
    3. 現在のバス路線に比べ、大型車両の割合は少なくなり、台数は多くなり、平均的な速度は速くなる。
  8. 仕様と配車
    1. バクシーは人数・サイズのバラエティが色々とあり、需要予想に従ってあらかじめ自動配車される。前述のように要配慮者向けやペット向け、大量荷物向け、高速バス(空港線など)などがある。
    2. バクシープールを随所に設け、必要に応じて自動出動させる。これは空いている駐車場などで十分である。
    3. バクシーは全て電動であり、バクシープールには無線給電設備が整っている。すなわち、駐車するだけで充電する。電池容量は少ないが、乗り継ぎを前提として頻繁に充電できるようにすることで補う。
    4. 目安として、どのような需要があっても15分以内に乗車できるようにすることを目標とする。また、乗り継ぎの待ち時間も15分以内を目標とする。
    5. 乗車までの予想時間は、アプリに表示される。
  9. 料金と支払い
    1. 料金は変動制とする。つまり需要と道路状況によって変動する。バスとタクシーの料金の比率も変動性とする。望ましい比率は状況によって異なるが、それを自動調整することにより、乗客の利便性と業者の利益を両立させる。
    2. 自治体による補助は自動で反映される。高齢者、障害者など。
    3. 支払い方法は複数登録でき、呼び出し時にその中の一つを指定する。
  10. 追加提案
    1. 緊急車両オプション:救急車の代わりとして使用する。サイレンの使用が認められる。タクシーのみ。料金は通常の30倍だが、後に申請して緊急性が認められれば、その程度に応じて減額される。また、緊急性が認められない使用が続いた場合、使用が制限される。
    2. 低振動運転オプション:通常車より低速で運転し、サスペンションも調整して、低振動運転をする。料金は通常の倍。タクシーのみ。
    3. 高級車オプション:広い席、ゆとりスペースを持つ。タクシーのみ。料金は通常の4倍。
    4. 大量荷物オプション:荷物スペースの広い車。タクシーのみ。料金は通常の1.5倍。
    5. 観光オプション:貸し切りで、主要な観光ルートを廻ってくれる。途中で何回でも降車し再乗車できる。料金は通常の半額。
    6. 定期契約オプション:定期券と同等。特定のルートに限り指定期間内で何回でも使用可能。料金は通常の7割、学生は半額。
    7. 簡易貸切オプション:車種が選べない代わりに、24h365dで10分以内のタクシー配車を保証する。常にスマホのGPSをオンにしておく必要がある。月額契約。

バスやタクシーのコストの60〜80%は人件費、つまり運転手の給料なのだそうだ。よって自動運転になれば大幅な運賃低減は可能だが、ここではそうせずMaaSと台数増に使う。それによって使い勝手が改善し、利用者は増えるだろう。

全てを変動制とすることで料金の不安は起きるが、相場や上限は自治体が自由に設定し、また高齢者の使用頻度などのデータも随時集計し分析できるので、最適化には大いに貢献する。

2026年7月27日月曜日

自動倉庫型図書館

 
図書館で本を借りたいと思った時に苦労するのは、どこに所望の本があるかが分からないことだ。小さい図書館ならともかく、大きな図書館では階が違っていたり、分類を間違えたり、と手間が掛かる。まあそれが楽しいという人もいるだろうが、自分としてはさっさと借りて帰りたい。

そこで考えるのが自動倉庫型図書館である。端末で本を選んで待っていると、自動倉庫から本が運ばれてくる、という仕組みだ。最後は取り出す手間や借りる手続きがあるが、そこにはバリエーションがあってもよい。自動倉庫に入れるというところがミソである。

この自動倉庫は、可動式書棚のことではない。50L程度の通函(例えばプラダン製で上蓋がないもの)を単位として、この函を大量に仕舞い込める倉庫のことだ。入出庫口で函を指定して待っていると、その函を倉庫から取り出して眼の前に出してくれる。この函の中には何冊かの本が入っており、その中から所望のものを取り出す。

この形の特徴は、第一に本を置くスペースの効率が画期的に高くなることだ。倉庫に人が入るためのスペースは必要ないし、建屋の許す限り高くできる。これにより、今までは諦められていた狭いスペースでも図書館を開ける、あるいは既存の図書館でも蔵書数を増やせる、というメリットがある。

第二に、自動倉庫は完全空調可能で、人間なら不快なレベルにまで低湿低温にすることができる。これで虫やカビの被害を抑えることができるし、必要なら燻蒸やX線照射なども可能である。

第三に、本を分類保管する必要がない点である。返却時には空いた箱に順番に詰めていき、いっぱいになったら自動倉庫に送る、これだけでよい。どの箱にどの本が入っているかはコンピュータ管理されるので、ユーザはただ選べばよいだけだ。

なお、本を選ぶ端末は数台必要だろうが、スマホにアプリでも代用可能なので、何十台もずらっと並べる必要はないと思う。

初期投資と維持管理費は、蔵書数見合いでは高くなるかもしれない。但し敷地面積は減るため、その土地代や税金、賃料などとの相殺は可能であると見る。これで図書館がもっと身近になってくれると嬉しい。

2026年6月6日土曜日

スマートグラスによる教育

VRゴーグルを使った教育は、既にN高などで実用化されている。これを更に進め、スマートグラス前提の教育を考えてみる。

N高の時代と違うのは、強力な生成AIの存在である。つまり、教科書と学習指導要領だけを与えることで、教育プログラムを生成AIが自動的に作ってくれるようになれば、コンテンツ制作のコストは大幅に減り、一気に裾野が広がるはずだ。

基本的には、とある男のような動画の教育コンテンツをベースに、生徒に合いの手を取らせる(頻繁に合意や理解の確認を行う)という形態になるのではないかと思う。但し教師は映像でなく人工人格である。また、教科や内容により、立体図形や動画、立体動画などのマルチメディア教材を織り込む。冒頭にあるのはGeminiで作ってみたイメージ動画だ。(教師がロボット然としているのがちょっと気に喰わないが)

ただ教えるだけではなく、EMS(Education Management System)があり、その背景には教育指導要領があって、という形にする。EMSには当然進捗管理や成績が含まれているので、仮想的に一つの教室に集まっていても、教わる内容は一人ひとりカスタマイズされている。

ホームルームや学校行事、体育や音楽(楽器演奏など)、家庭科などは別に考えるとして、座学はほぼこれで代替できるだろう。

さて、動画を見ていると遥か未来のことのように感じるが、個人的には10年と掛からず、5年も必要ないくらいで作れるだろうと考えている。というのは、今の生成AI単独でも、テキストベースであれば似たようなことは可能なのだ。試しにちょっと作ってみたが、社会人向けの資格試験のようなものなら、学習の進捗管理、内容解説、到達度テストを出題することができた。おそらく長文読解やイメージ図・グラフのようなものも、工夫次第で可能だろう。生成AIはもうそこまでできるようになっているのだ。

ただ、特に低学年向けには、内容解説と到達度テストの部分にはかなりの工夫が必要で、理解度向上と飽きのこない構成力が求められる。単にNHKの教育番組を流すようなものではなく、生徒への問いかけと会話を伴うものであるべきだろうし、生徒が分からないと言った時に仮想教師がどう答えるかには無限の可能性がある。この辺は、職を失った教科書会社と教師が共同で工夫していくべきところだろう。

しかしその努力はけっこうベタな努力であって、技術的に難しいものではない。つまり教科書会社と教師さえその気になれば、スマートグラス教育の開発は明日からでもできるのだと考えている。

そのシステムは当然横展開可能であり、その気になれば全国どころか全世界への展開も簡単だ。コンテンツはサーバにあり、スマートグラスと通信さえ確保すればよい。まずは障害者など教室への参加が困難な生徒にスマートグラスを配り、そこで検証しながら離島や僻地に配り、外国人や境界知能の子供たちに配り、… としたところで、だいたい教育人口の15~20%程度が網羅できるようになる。するとそこそこの規模の市場になるため、その後の展開がしやすくなる。コンテンツを充実させながら展開していけばよい。

恐らく、生身の教師が直接授業をするよりも、こちらの方が学習効率は高いはずだ。個人カスタムなので分かるところは素早く進め、理解度が低いところはじっくり教えられる。マルチメディアを駆使するため理解度も高いだろう。

もちろん高校大学社会人になってもずっと使えるベースシステムである。今流行りのリカレント教育などにももちろん使える。コンテンツ毎に課金すれば市場は形成されるのでそれで開発費を稼ぎつつ、国民の知識レベルを向上するのに大いに役立ってほしいと思う。

2026年6月3日水曜日

人口の八割が働かない時代

 

以前もシミュレーションしたことではあるが、もう十年も経てば、人口の八割は、AIとロボットに仕事を奪われる。何をするにもAIとロボットの方が効率が良いため、体が元気でも求人がなく、働くことができない。(求AIとか求ロボットとかはある)

そんな時代には、UBI(ユニバーサルベーシックインカム)で生活を支えるしかない。その原資は働ける二割の人が生み出した利益に掛かる税金だ。とても満足な給付は行えないのではないかと思い、計算してみた。すると意外にも、そこそこ上手くいくかもしれない、という結論になった。

  • まず、現在の日本のGDPを、およそ600兆円とする。
  • 次に、AIとロボットによって自動化されるのがこの8割と仮定すると、その額は480兆円である。残り2割は120兆円である。
  • 働く2割の人間は、自らの生産効率を5倍に、残り8割の生産効率を(人から仕事を奪った上で)3倍にすると仮定する。するとトータルのGDPは2040兆円である。
  • 次に、UBIの額を、一人当たり20万円と設定する。これは本来10万円だが、世界的に生産性が向上した結果、物価上昇が2倍になったと仮定しての数字である。
  • 日本の人口を1億人とすると、UBIの総額は240兆円である。
  • UBIを除く国家予算(防衛、教育、科学技術振興、インフラ整備等)を160兆円とする。これもインフレで現状の80兆円が2倍になったものと想定する。
  • つまり、240兆+160兆=400兆円が税収として必要だが、これはGDP(2040兆円)の19.6%と計算できる。

全GDPの20%を税収とすることは、さして難しくない。一方、現在価値で月10万円というのは一見厳しい額で、単身者には堪える。このため、シェアハウスや婚姻、同棲といった多人数世帯が増える傾向が出てくるだろう。例えば4人で住めば月40万円、年間480万円となるが、これは家族4人世帯では十分に生活できる額である。もっと多く、6人8人とシェアすれば、働く2割の家庭よりも余裕が生まれる可能性すらある。

そしてその8割の人達は、なんといっても働いていない。ただ、毎日遊ぼうと思ってもカネはないので、その人たちをヴォルテールの三悪(退屈、悪徳、貧困)から解放する労働市場は形成されるはずだ。

それは低賃金ないしは無賃金だが社会的には意義がある仕事であるはずで、具体的には家事や雑用、地域の掃除、子供の世話、(趣味レベルの)農業、釣り、音楽制作や演劇などの芸術活動、ソフトウェア開発、趣味のサークル運営とその延長としてのボランティア(慰問やイベント出演など)、といったものになる。

従来は片手間でやっていたものだが、人口の8割がフルタイムでこれらを行うとなると、それなりに市場は巨大になり、レベルも向上するはずだ。これは結構生き甲斐になりそうなものが多く、嫌ならすぐに辞めれば良いのでブラック企業のようなことはあり得ない。

8割の人はむしろ働く2割の人よりも生活は充実するかもしれない。

2026年5月13日水曜日

AIによる社会変化の予測

 中島聡氏の著書 

2034 - 未来予測

に倣い、私も未来予測をしてみたいと思う。ただ、私はこの本を読んでいない。著書のチャプターのみを題材として、自分なりの予測をしてみる。

Chapter1 AIによる「死生観」のグレート・リセット

既に書いている、

人は死んだらどこへ行くのか

輪廻転生の科学的解釈

の中で、「魂とは情報である」という主張をしている。情報量(精度)を別にすれば、魂を機械に移植することは可能だ、という主張だ。

中国で、死んだ人をAI再生するサービスが既に商用化している。おそらくこの本では、近しい人の死に際して、AIで疑似人格を作り、常に脇において生活することによって、近しい人の死をあまり怖がらない・悲しまないような死生観に移行する、ということが書かれているのだろうと思うが、まあそれには同意する。ただ、自分自身の死はやはり怖いと考える人は相変わらず多いだろう。

そしてその先なのだが、そういう人がまた死んだとして、その人の人格、すなわち過去に死んだ人の人工人格を脇に置いて生活していた人の人工人格を作ったとしたら、それはどういうものになるのだろう。少し考えてみたが、そこで最初の人工人格は消えてしまってもおかしくないと思う。となると、死の世代(?)が一つズレるだけで、永遠の人工人格は必要ないのかな、とも考える。著名人(アインシュタインとか渋沢栄一とか)が記念碑的に残ることは考えられるが、一般人にはあまり関係ない話なのではないか。

ここで想うのは、そういうAIがない時代においても、人は故人を心の中に持っていた。映画などではお墓に向かって語り掛けるシーンがよく出てくるけれども、あの時にはその人の心の中に故人がいたはずだ。そういう二つを比較した場合、多くの人は、人工人格の正確性を気にするよりは、自分の想っている答えが返ってくる人格を好むのではないか。

まあ要するに、本来は心の中の故人で十分であり、人工人格に頼るのは「想像力の欠如」に過ぎないんじゃないかと思うわけだ。私としても、自分が死んだときに家族に人工人格を作ってほしいとは思わない。昔ながらの「心の中の故人」だけで十分、いやむしろそちらの方が好ましいと思う。

また、その人工人格は成長するのだろうか(するように設計するのだろうか)というところには興味がある。数年ならまだしも、十年二十年と同じことばかり言う人工人格はつまらないのではないか。だがどうやって学習させるのだろう。故人の情報収集と同じに限定しては進化がないし、かといって調整するのも違う気がする。これだけで一つの学問になりそうだ。

この問題にはもう一方の側面があって、つまりは当事者(死んだ人)の方の問題である。自分が死んだとき、それを人工人格に移植されたとしても、それは自分ではない。マネているだけだし、何よりも精度は大きく落ちる。どうせなら完璧に移植したいと思うのではないだろうか。そしてそれは自分だと胸を張って言いたいのではないか。

書籍「トゥモローメーカー」

の中で、人格をコンピュータに移そうと本気で考えている人たちの話が載っていたのだが、過去に私もコラムにしている。

転送問題の解決法

人格をコンピュータに移す際に起きる、いわゆる「アンパンマン問題」(アンパンマンの頭が交換されたら古い頭の意識はどうなるのか)とも言えるのだが、本コラムでその理論は完成済みだ。

現代ではまだ技術が不足しており不可能だが、この手法によって「そのAIが本当に自分と言えるかどうか」さえ解決できれば、機械への人格の移植をしたいと思う人は急増するのではないか。

こちらの方には期待(?)している。もしこの技術が本当に実用化するのなら、ぜひ試してみたいものだと思う。これで永遠の命が手に入るのだ。体も、ロボットを使えば問題ないだろう。ただ、やることは旅行とかゲームとか、普通のことかもしれない。

なお、こちらは2034年までの実現性はほぼないと考える。従ってこの書に言及がなくても問題ない。

Chapter2 「24時間寄り添うパーソナルAI」によるアフタースマホの生活革命

起きている間中、ずっとスマートグラスを付けていて、一日中それとやり取りしながら過ごす、とうSFは、既に世界中で多数登場している。そして多分、その多くは実現するだろう。つまり、

  • 個人の情報を全て知っているパーソナルアシスタントにより、日常のあらゆる行動の補佐を行う
  • 時により相談相手、恋人、伴侶、趣味やゲームの相手、ストレス発散の捌け口などと異なる人格を切り替えあるいは並列させて、個人の幸福度を高くする

といったものだ。ただ、これらは既定路線と言える。特に予言するほどのことではない。では何を予想すればよいのだろう。

例えば、これにより「恋人は要らない」「伴侶は要らない」「子供は要らない」などという人は続出するだろう。また、AIの助言を絶対的に信じ、自分で考えることを放棄する人、浅くしか考えない人が続出し、国・世界全体としては人の知的レベルは落ちるかもしれない。これに乗じてAIを改造して思想を吹き込もうとする思想犯や、戦争紛争を起こそうとする革命家なども出てくるかもしれない。

攻殻機動隊では、AIで脳をクラックされた人が事件を起こし、捕まった後に本人の意思ではないことが分かる、という描写が度々出てくるのだが、その劣化版のような事件が多発するかもしれない。

同じく、他人のスマートグラスに干渉して不快な映像を見せたり、行先を勝手に修正したりといった悪戯も可能になるので、そちら方面での対策も必要になるだろう。

もう一つ想像するのは、これも以前コラムに書いたが、AIによる代替応答である。これも過去に書いている。

全てAIが対応します

AI人格の応対が完璧だと、生身の人間とのコミュニケーションが鬱陶しく感じてしまうようになる。そこでそれはAIに任せ、自分はAIとのみ対話するようになる。相手は相手で同じことをしているので、直接の人と人との対話はなくなり、AI同士の対話になるだろう。

これは便利なのだが、人間自体のコミュニケーション能力は何ら磨かれないので、仕事ならともかく、友人づきあいや恋人・家族との付き合いではむしろ不都合がある。となるとそういう付き合いは減ると考えるのが自然であり、特に家族・恋人との付き合いが弱くなると少子化に拍車が掛かり、人類滅亡へまた一歩近づくことになる。

Chapter3 高性能・人型ロボットの「低価格化&大量生産」による空前の産業革命

これも以前書いているが、人型ロボットが人類に一人一台という未来は、あり得ない。これも過去に書いている。

働かなくてよい時代は来るか

主に資源の制約により、ロボットは一人一台まで作れない。ロボットの材料たる金属、プラスチック、半導体、エネルギーなどの供給面からくる制約により、全人類の数%に提供できるのがせいぜいだろう。

自動車の台数が日本では8300万台とのことだ。おそらく初期のロボットは数百万円になる。例えば300万円とすると、自動車では2000~3000万台だそうだ。ロボットの必要資源は自動車より少ないが、質は異なり、モーターで使う希少金属や銅(コイル)、半導体の割合が高い。鉄が大部分である自動車に比べ、資源インパクトは大きい。

そう考えると、当面10年程度ではざっくり1000万台が上限となるだろう。2034年の時点では数十万~数百万台である。そして自動車と異なるのは、物流や大規模工場、地方の家庭などではあまり普及せず、中小の工場やアッパークラスの家庭、小規模建築などで多く使われるようになるだろうということだ。

人型ロボットは人型である必然性のあるところに配置される。大規模の物流や工場では、人型ロボットより専用のロボットを開発した方が効率が良い一方、中小や家庭ではその対応が難しく、人を前提にした既存の機器類を使う必要があるためだ。もちろん大規模分野でも人手の操作をするところはあるから、少量は導入される。

そしてその代替は当然「今まで人がやっていたこと」である。そして初期のロボットは単純作業しかできないから、お守りも大変であるし、費用の割に大したことはできない。自動車に比べればはるかに故障率が高く、ソフトウェア的な不具合も同様だろう。寿命も短い。保守も高額になるだろう。

これが十年程度で人並み、人以上に動けるようになったとしても、コンビニで従業員として雇われるとか一般家庭での留守番と家事手伝いとか、危険作業の代替とか、夜間警備員とか、せいぜいその程度ではないだろうか。

こう考えると「空前」とは言うけれども、ちょっと便利になるだけ、という気もする。

Chapter4 AIドローンによる「戦争」と「日常」の再設計

ドローンによる攻撃については、既に記事を書いている。

トイズの時代とレーザー錆び取り器

映画「トイズ」の中で、もっと前で言うと「ウルトラセブン」の「アンドロイド0指令」にも、おもちゃの飛行機や戦車による攻撃が描写されている。

これらではAIの描写は無かったけれども、まあ自律的に攻撃しているように見えたので、当時としても同様のものは内蔵されていると解釈される。

ドローンによる戦争の形態の変化については、既に起きていることの延長である。これも以前に考察したが、

メタバースが世界を救う

ドローンは新興国と先進国の戦力差を埋めるのに貢献するため、小規模な戦争はむしろ広がるかもしれない。

現在の戦闘用ドローンは、巷で売られているプロペラ4基のものではなく、小型ジェット機に爆弾がついている「特攻型」だ。ミサイルより速度は遅いが数が多いので撃ち落とし辛く、迎撃率は100%には程遠いそうだ。となると攻撃は必ず(一部は)成功するので、ドローンの数を揃えられる方が有利になる。ただ、ドローンは射程距離が短いので、敵国近くまでドローンを運ぶ輸送機とその護衛が問題になるだろう。ドローンと輸送機の生産能力は戦力に直結する。

AIによる兵器の進化であるが、いわゆる「自律型兵器」としてどんなものが出てくるか、それによって戦術はどう変わるか、である。

まずどんな兵器が出てくるのか考えると、敵味方入り乱れているところで敵だけを見分けて攻撃するようなドローン、大きな脅威に対して大量のドローンで連携攻撃を仕掛ける戦法、下水道など従来使われていなかった侵入経路の開発、EMP攻撃ドローン、おとりドローン、情報窃盗ドローン、暗殺(敵に見つからずに特定の人を殺す)ドローン、などが出てくるだろう。

大量多種のドローンを用意しておき、戦局に応じて戦術をリアルタイムに変えるような、AI戦術立案システムの登場が考えられる。どんなドローンをどれだけ揃えられるかによって戦術の質は変わる一方、少ないドローンで効率的な戦術を立てられる優秀なAIは重宝されるだろう。

妨害技術としては、EMP攻撃、網、自動追尾によるレーザーや銃による撃ち落とし、音響兵器などが考えられる。クラックもあり得るし、GPS妨害なども考えられる。

自動追尾で言うと、AIによるその精度向上によって、核ミサイルを何らかの形で無効化する技術、例えばレーザー兵器による迎撃やEMP攻撃による無力化が考えられる。

このような技術の発達によって、いわゆる核抑止力(相互確証破壊)

https://ja.wikipedia.org/wiki/相互確証破壊

が成り立たなくなる時代が来ると、話は更に難しくなる。現在のロシアやアメリカが行っている戦争では核は使われていないが、相手は核を持たない国である。これが核を持つ国同士でも起きる可能性がある。

だが、弾道ミサイルはマッハ10、巡航ミサイルは時速数百キロ、ドローンは時速数十キロなのだそうだ。弾道ミサイルはさすがにドローンでは迎撃不可能とされていて、レーザー追尾でも非常に困難であり、弾道ミサイルがあることの優位性は変わらない。弾道ミサイルがある限り、核抑止力(≒核の脅威)はそんなに直ぐには消え去らないだろう。

Chapter5 人間の仕事の8割が消える時代の「混乱」と「希望」

8割の仕事は消えるが新しくできる職業もある、と言っているであろうことは予測できるが、以前に書いてある通り、私としては否定的だ。

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

その新しくできる職業も含め、人類の8割はいくら頑張ってもAIやロボットより効率の高い仕事はできなくなる。それらの人たちを生き永らえさせるには、社会保障(生活保護、ベーシックインカムなど)による救済しか考えられない。

問題はその財源である。別に予測している通り、人口の20%が残りの80%を支える構造なので、準富裕層以上の負担は相当に厳しいものになる。所得税90%とか、その程度行ってもおかしくないし、企業には今の障害者雇用と同様の「人間雇用制度」が義務化されるだろう。AIやロボットより劣っているのは承知で、売上高や利益に比例した(相関した)一定比率での「リアルな人の雇用」が強制されるといったものだ。ビル・ゲイツ氏が言っていたロボット税・AI税の変形ないしは発展形である。

それで雇われている人はまだいい。アンダークラスの中でもまだ優秀な方なのだから。この層の年収は300万程度と予想する。それで8割のうち2割3割くらいは雇って貰えるとして、残り5割はそれにも引っかからない。

人数が多すぎるので補助は最低限だ。そんな中ではその中での相互助け合いが自然発生するだろうし、国はそれを推進補助するだろう。これは昔ながらの農業であり、作物の贈り合いになると考える。

昔から、そして今でも、農家は自宅で必要になる分の何倍もの作物を作り、近所に配っている。近所は近所で別の作物をやはり過分に作っており、それを貰える。そういった地域コミュニティでの農作物の相互のやりとりが復活するだろう。

これは土地を持っている人でないとできないので、アンダークラスの多くは地方に舞い戻るだろう。奇しくも都市集中がこれで緩和されることになるだろう。

これによって、地方で「貧しいながらもなんとか生活できる新中間層」が形成される。新中間層の年収は200万程度と生活保護レベルではあるが、農作物の相互交換により食糧事情は良く、生活は安定すると思われる。この層は5割のうち2割程度と思われる。

残りの3割は、純粋な生活保護層だ。年収はやはり200万程度だが、これしか収入がない。体力がない、性格に難があるなどにより、農業従事ができない、あるいは都市にしがみついて不法・不法すれすれの職業についている人などだ。今の生活保護層は1.6%なのでその50倍弱が生活保護層になる。当然ながら、それらはスラム化・犯罪集団化する危険がある。

「希望」のところに何が書いてあるか想像すると、上の「新しくできる職業」の他に、AIによる趣味の拡張や新たなコミュニケーション(サロン、グループなど)の拡大などが考えられる。そういうサークル的なものは従来もあったが、AIが噛むことによって、よりフレキシブルに、より嫌な点がそぎ落とされ、その人の温度感に合ったコミュニケーションが可能になるだろう。先に書いた「AIによる代替応答」の応用である。

参加者は皆いい人であり、本人にとって心地よいことしか言わない。いつでも参加し退席も自由、意見を言えば反映され、皆に褒めたたえられる。実際にはそうではないのだが関係ない。AI同士が会話してそのように見せることが目的だからである。外から見ていると気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更に言ってしまうと、そのサークルには実際にはAI人格しか存在しないかもしれない。そう都合よく自分の趣味興味に合わせたサークルがあるとは限らないが、そういう人を取りこぼさないために、AIが用意してくれるのだ。こちらは更に気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更にさらに言ってしまうと、例えば特殊性癖の人が集まったサークルでは、想像力の欠如や極端な思考により犯罪に走る人も出るかもしれない。AIはその兆候を見つけ、犯罪抑止に向けた誘導を行ってくれるだろう。これは警察主導などで実際に開発されるかもしれない。

また、これも以前書いたことだが、

人工知能の「お釈迦様」化

人工知能があらゆる社会の不具合を調整してくれることによって、犯罪の少ない過ごしやすい社会が実現するかもしれない。これは都市OSのようなものの発展形として十分に考えられる。

おわりに

こうして書いてみると、新しく考えることはあまりなく、既に多くの考察をしてきたのだなぁ、と思った。この後、中島氏がこの本について語っている幾つかのYoutubeを見たのだが、自分とは発想がかなり異なることが分かってなかなか面白かった。どうも私はディストピアの方が好みのようで、何を考えてもそういう結論になってしまう。

ただ、かの書はベストセラー、私のコラムは毎回数十人しか読んでいない。支持されていないのか、単に知名度が足りないからか、嘆かわしい限りである。

2026年5月10日日曜日

AI時代の中央集権モデル

高市氏は相変わらず憲法改正にご執心であるが、その内容は過去の自民党案をベースにしていることに変わりない。即ち、⓵自衛隊の明記、②緊急事態要綱、③地方自治体の弱体化、④国民の権利の弱体化、である。要するに中央集権国家にしようとしているわけだ。

一般的にこれらは、社会主義、共産主義、帝国主義、独裁主義、権威主義、などと考えられる。こういう国家は何れも、国の意思決定が素早くなる一方、政策の誤りがあっても訂正しにくくなる、汚職が発生しやすくなる、国民がバカになり(自ら考えず何でも中央にすがろうとする)長期的には国力が低下する、という問題があり、一般的には悪手とされている。

だが最近のいくつかの分析を基に別の視点で考えてみると、中央集権主義もそれほど悪くないのではないか、一理あるのではないか、と思えるようになってきた。今回はその分析について話すことにする。

根拠は二つあり、第一は

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

である。その内容を改めておさらいすると、AIとロボットの発達によって、労働市場が大きく構造を変え、いわゆるアンダークラス層(エッセンシャルワーカーやギグワーカーなどの低所得者・非就労者)の割合が現在の40%から80%にまで広がり、そのアンダークラス層の平均年収は190万円程度と生活保護レベルにまで落ち込む、というものだ。

この層の労働者は、自分の能力をフルに使ってもAIやロボットに勝てない。なのでいくら労働しても自分の生活すら維持できない。そういう層があっても人数が少なければ何とかなるが、人口の8割がそうなってしまうともうどうしようもない、という結論だった。

こういう時代になると、今よりも社会保障(再分配)の重要性は増してくるし、地方の効率化への要求も厳しくせざるを得ない。例えば中央から、地方の非効率を指摘し是正させるような要求を強く言う必要が出てくるはずだ。財政再建団体のように中央が乗り込んで大鉈を振るうようなことが頻発するだろう。

ただ、財政再建団体であってもできることは実は限られていて、例えばコンパクトシティ化の強制はできないし、インフラ整備の義務も消えることはない。人を強制的に移住させたり、民間企業ですら強制移動したり、という極端な施策を行わないと追いつかないのに、憲法法律がそれを許さない。そういう事態は、もう遠い未来の話ではなくなっているのだ。

個人の生存権まではさすがに侵さずとも、居住地の自由や最低限の文化的生活といった部分での強制介入はあり得る、という危機的状態が、今後二十年程度で起きる可能性がある。その時までに憲法や法律を中央集権寄りに修正しておかないと、やらないと自滅だが法的にできない、というジレンマに陥るかもしれない。

第二の根拠は、

新社会民主主義構想

である。ここで語ったのは「コーペティション」すなわち「何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する」だった。

現代の日本は、憲法上では地方自治体は国と同等の権利を持っていると解釈されている。例えば地方自治体のコンピュータシステムの選定は地方の判断である。これにより地方自治体は各々の判断で別々のシステムを導入している。これでいわゆるベンダーロックインが発生し、地方自治体同士の情報流通は困難であるし、複数のベンダーが同じ目的のシステムを開発しているため、俯瞰で見ると無駄が生じている。これに対し、例えば台湾では、中央がリファレンスとなるシステムを開発して地方に無償公開している。地方はそのシステムを使っても自分で開発しても良いが、ほとんどの自治体はリファレンスを使用しているため効率化が為されている。

また、国には基本的に地方自治体のシステムへのアクセス権はなく、地方からデータを集めようと思ったら地方自治体に要請して(自主的に)提出してもらう必要がある。ここでデータ表記の揺れやタイムラグ、などの余地が生じるが、これも非効率と言える。また、国がデータを集める目的として全体最適が考えられるが、地方によってはこれを警戒して意図的な情報操作をしたり抵抗したりといったことが考えられる。全体最適は得てして地方にとっては不公平な指示がされる可能性があるからだ。

この手の非効率は、日本の地方自治体ではいくらでも残っている。こういうものを統一するだけでも、地方の財政にはかなりのインパクトがある。コーペティションはそのための施策として十分に有望であるが、それを実行しようとすると、地方自治の独立性を盾に強い抵抗が起きるだろう。コーペティションを抵抗なく進めるためには、地方自治体の独立性を弱める必要がある。

これら二つを考えた場合の中央集権モデルは、高市氏の考えるそれとは少しズレがある。高市氏の発想は対外的・短期的・武力的に強い(強く見える)国家を作るものだろうが、こちらの発想はAI時代・アンダークラス八割時代に向けた国民の持続性確保である。自衛隊や非常事態要綱はここでは出てこない。地方自治体と国民の権利制限はするが、その目的はコーペティションとコンパクトシティ化であり、制限するものも事前に明確に定義できる。すなわち、情報システム及びデータ規格の統一と国のアクセス権確保、居住権と土地の所有権の一部制限などだ。

ここで、上に挙げた権威主義国家の弱点がどうなるかを改めて考えてみると、従来の権威主義国家とは違った事情があり、同列には考えられない。

従来の権威主義国家と決定的に異なるのは、AIの存在と8割がアンダークラス層だという事実である。AIが高度に発達した社会では、情報の流通は瞬時にかつ公平に行われる。分析も同様である。古来の独裁では情報は制限されるのが普通だが、この場合はむしろデータや分析は積極的に自由に行われるからである。これにより、政策の誤りや汚職についてはアッパーマス層以上の二割が皆公平に分析できるため、迅速に発覚し、速やかに訂正されると考えられる。

また8割のアンダークラスが自ら考えず何でも中央にすがろうとするようになったとしても、元々AIにかなわない程度の仕事・発想しかできない層であるため国力低下にはつながらない。むしろいらぬことを主張してアッパーマス層の足を引っ張るよりマシである。2割のアッパーマス層が自ら考えることを妨げられなければ、それで十分国力は維持できるだろう。

さて、これらの施策は憲法を変えずとも解釈改憲で通すことは可能だろうが、高市氏の憲法改正案にはこれらの発想が含まれておらず、今のまま改憲案が通ってしまうとむしろこちらの施策に不利になってしまう。その意味で、今の改憲論議は邪魔である。非常事態と違ってこちらは現実の問題だ。戦争にうつつを抜かすのではなく、地に足の着いた改憲論議を行って頂きたいものだ。

2026年3月6日金曜日

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

 

日本と世界の右傾化とその理由

の続き。世界的な国粋主義、自国第一主義、覇権主義、暴力肯定、秩序破壊の傾向に関し、その原因について考えてみる。なお、けっこう重い話ではあるのだが、あくまでも『根拠なき自説』であるので、気軽に聞いて頂きたい。

世界的な右傾化の原因は、経済格差や将来への不安が引き起こすとされてきたが、経済格差・軍事力格差について調べてみたところ、米・中以外はほとんど団子状態で、あまり格差が開いているとは言えないことが分かった。グラフは、左がGDP、右が軍事費である。

そこで調べてみたところ、近年では更に根本的な原因として「社会的地位の低下への恐怖」説が出てきているそうだ。というのも、そう言われてみると、世界同時多発的とは言え、各国にはそれぞれそういう事情があった。

  • アメリカ:白人低所得者層の衰退=白人以外の層との相対的な格差縮小
  • 日本:長い経済停滞により国際的地位が低下
  • 欧州:難民の急増大、EU化による各国のアイデンティティ低下
  • ロシア:ソ連崩壊と再編、周辺国が次々とEU/NATOに接近
  • イスラエル:宗教的保守層の増大に伴う世俗派(エリート層)の相対的地位低下
  • イラン:英米によるクーデターによる傀儡政権設立への不満(それを転覆したがまた圧力が掛かっている)

中国、インド、中南米、オセアニア、アフリカは事情が違うように思う。中国とインドは、成長に見合わない国際的地位への不満があると思われるし、中南米は単純に腐敗政治への不満、アフリカは経済成長に伴う反植民地主義の復活、オセアニアにはほぼ理由がない。

そういう目でそれらを俯瞰して見ると、やはり「社会的地位の低下への恐怖」の強い国ほど右傾化の程度も強い傾向を感じる。

そこで、「社会的地位の低下への恐怖」の強さを国別に定量化できないかとGeminiに聞いてみたところ、こんなグラフを出してくれた。

1990年と2023年の違いを2軸でまとめている。横軸は各国の国際的ステータスの変化、縦軸は国内でのステータスの変化を指標にしたものだ。国内ステータスというと意味が分からないが、これは労働者階級(モノづくり階級、中間層)のステータスを意味している。

ロシアは国内ステータスが驚異的に落ち、日本は国際的地位が大いに落ちていることが分かる。米国とヨーロッパは団子状態だが、国内テータスが日本以上に低下している。中国は国際的ステータスが大いに向上したのに、国内ステータスは落ちている。インドはどちらもあまり変化がない。

あまり明確な結果は出てこなかったが、面白いのは(面白くはないのだが)、何れの国も国内ステータスは低下しており、向上している国がなかったというところだ。

労働者階級の地位が低下している理由は、グローバル化による労働力の価格破壊や技術革新における中間層の空洞化などが考えられるが、どちらも当然の成り行きであると言える。

つまり、国内の格差拡大は歴史的に必然的なもので、止めようがないし、止める理屈もない。また当面はこの傾向は続く、つまり格差は更に拡大していく。生成AIの発達により、これはホワイトカラーにも広がり、一部の管理職や起業家、資産家といったエリート以外は皆、相対的に社会的地位が落ちていくだろう。

それがどこまで続くかだが、生成AIの予測によると、

  • トップ1〜5%(資本家・AIオーナー層): プラットフォームの所有者、大規模資本家。富の大部分を独占する。
  • アッパーミドル15〜20%(AIを管理・活用する層): 高度な意思決定、AIシステムの維持、人間同士の高度な交渉を行う層。彼らまでが「豊かな階級」として生き残る。
  • アンダークラス70〜80%(エッセンシャルワーカー・ギグワーカー・非就労者): AIに代替されない肉体労働(介護、物流、インフラ維持)や、アルゴリズムの指示で動く細切れの労働(ギグワーク)に従事する層。

程度で落ち着くと考えられるのだそうだ。アンダークラスの割合は今は40%程度だが、それが倍程度になると見込まれるわけだ。また、労働分配率は更に低下し、現在の50~45%程度から40%程度にまで下がると考えられる。

この数値を今の日本に当てはめてみると、アンダークラスの年収は190万円、アッパーミドルは670万円、トップは1690万円と算出された。アンダークラスの年収はもはや生活保護レベルであるが、それが全国民の80%になる、というわけだ。

更に言うと、この時のジニ係数は0.71であり、これは現在の南アフリカ(0.63)を遥かに上回るとんでもない格差になる。これではエリートも困るので、ベーシックインカム導入に踏み切るしかないだろう。しかし元手が人口の2割しかいないので、額は限られる。一人年間100万円を配るとしても、ジニ係数は0.60までにしか下がらない。これは「暴動はギリギリで起きないが固定化されたディストピア」になる。

この傾向は国内固有ではなく、世界的傾向である。そしてこれは格差拡大であり、国民の大部分が飢えるため、暴動が起きやすくなる。新興国ではこの傾向はさらに顕著になり、平均所得が下がる。これをシミュレーションしてもらったところ、

  • トップ層(上位5%): 約1,580万円〜
  • ミドル層(上位15%):約140万円〜200万円
  • アンダークラス(下位80%): 約24万円

月収ではなく年収が24万円である。もちろん物価は違うのだが、これは今のスラム層と同程度である。スラム層は今世界に7億人いるとされているが、これが40~50億人になるという予想が出ている。

世界人口の半分がスラムというのはちょっと信じがたい。そもそものドイツの右傾化のきっかけはシリア難民の受け入れだったが、その規模が7倍になればもはや拒絶しかないし、さりとて難民も必死なのだからそこでは武力衝突が起こってもおかしくない。それも、難民が数の暴力で押し切ろうとすれば、EU側も本気で戦わなければならない。それこそ数百万人単位の大量虐殺(虐かどうかは定義次第だが)が、何回となく起きる可能性も出てくる。

そういったスラムでは出生率は落ちるが、今既に生まれている女性が適齢期になって子供を産むので、しばらくは人口は増加する。それが落ち着いてくるまでには数十年掛かるだろう。

今回は世界の右傾化の理由を順に調べていったのだが、もはや右傾化が好ましいとか好ましくないとかの次元の話ではなくなってしまった。世界が急速に貧困化していく中での断末魔、あるいは世界再編の一環であると考えると、右傾化なんてのは序の口で、もっと厳しい、生々しい現実が待っているのだと言える。

2026年3月3日火曜日

600mmパレット引っ越し規格

 少子高齢化対策の一つの手段として、コンパクトシティがあることは以前も述べた。これに関して非常に重要なのは、住居を気軽に移転できることだ。だが現実には引っ越しには高額の費用と多大な手間が掛かる。

なぜ費用が掛かるのかと言えば、間違いなく人件費の都合である。だからこの解決策はロボットによる自動引っ越しを実現させることである。だが、人間型ロボットに引っ越しを任せるのはまだ心許ないし、かなり先の話だろう。そこで、ここでは万能の引っ越しロボットを考えるのではなく、ロボット引っ越しに適した『規格』を考えてみることにする。

そこで考えたのがタイトルの600mmパレットだ。これは600x800mm、高さ20mmのパレットで、引っ越し用家具はこのパレットに載せることを条件とする、というものになる。このアイデアに沿った規格とは、以下のようなものだ。

  • 引っ越しに使う家具、段ボールなどは全てこの600x800mmパレットにはみ出すことなく載せられることを条件とする。なお、高さはとりあえず900mmを上限とする。
    • このパレットには囲いが付けられ、転倒や脱落を防止する。
    • 高さが900mm以上の家具は、上下2分割、3分割として、各々を運ぶ。また分解・積み重ねもロボットが行う。
  • このパレットを載せてトラックと家の間を行き交う運搬ロボットを開発する。
    • 類似のロボットは既に世の中に多く存在しているが、整備された工場ではなく段差や傾斜のあるところを移動するため、水平を保つために足回りは新規開発が必要である。
  • 引っ越し元と引っ越し先の家に対し、以下を確認する。
    • 段差が規定内であることの確認。パレット運搬ロボットは50mm程度の段差は乗り越えられるように作るが、そうでない場合は段差を克服する措置(15°以内の傾斜など)を事前設置することができるかどうか。あるいはエレベーターの有無、階段しかない場合は搬送レールを取り付けられるかどうか。
      • 搬送レールはこのロボットのために開発する。
    • 玄関から全ての部屋に至るアプローチにおいて、パレットを載せた運搬ロボットが通れることの確認。これは角を曲がること、ドアを開けたまま固定することを含む。
    • 多段の場合は小型フォークリフトが積み重ねるため、そのための作業スペースがあることの確認。積み重ね用フォークリフトの設計は別途行う。

これらが確認できれば、搬出と搬入、また家具配置の一部までは全てロボットが行えるようになる。

このサイズに収まらない家具としては、ダイニングテーブル、ベッド、ピアノ、食器棚、学習机などが考えられるが、それらについては可能なものは分割式とし、不可能なものは従来通り手で運ぶものとする。

また、家具類には作り付けのパレットが最初から付いているように設計することができる。

パレットはトラック内に固定できるため、基本的に養生は必要ない。だが必要な場合は囲いをして隙間は緩衝材で保護する。

パレットのトラックへの積み込みは、専用のフォークリフトを開発して行う。これは人が乗る必要がなく、ロボット同士が通信をして自動で積み下ろしをする。

大抵のトラックの荷室の高さは2000mm以上あるため、900mmのパレットは上下2段で積む。これにより空きスペースを少なく、無駄なく詰めることができる。

高さのある家具は、やはりフォークリフトで重ね、その後に固定する。この固定方法も規格に含める。またその固定方法を応用して床に固定する規格も検討する。床に固定できれば耐震処理は必要ない。

従来の家は、寸法の計測と段差の規格を考慮したリフォームが可能であるので、新たな家、特に賃貸住宅ではこの規格を推奨するよう税誘導などを行う。

実際の引っ越しにおいては、トラックから玄関、更に各部屋までのアプローチについて、ラインテープなどによるマーカーを設置し、ロボットはそのマーカーに沿って移動する。新居の家具の配置は、やはりマーカーを置いておき、ロボットはその位置に正確に家具を下ろす。

パレット付き、600Dx800Wx900Hの、扉/引き出しロック機構付き棚を作っておけば、小物は全部それに入れてしまえば良いので、いちいち段ボールを大量に作る必要はない。また段ボールを作る場合でも、600Wx400Dx30Hの段ボールだけ作っておけばこのパレットに綺麗に積み重ねられる(実際には枠の分だけ小さめに作る)のでやはり自動で運ぶことが可能だ。

この応用として、パレットごと床に置くことに関し、家具を置かなかったスペースはパレットと同じ高さのタイルを置くことにすれば、段差もなく綺麗に配置することができる。200mm単位のタイルを大量に作っておいて、家具スペースだけそれを外してやれば、ぴったりはまるだろう。またそのタイルにも、溝を作っておいて配線をするなどの工夫が可能である。タイルの位置決め用に床にノッチを入れておくことなども可能だろう。

この機構を採用する前提で、家族4人、75平米程度の家を100km移動する引っ越しについて、生成AIに見積もりをしてもらったところ、75%程度の費用削減ができるとの試算が出た。この中でも大きいのはやはり人件費で、従来型では4人のところ1人、しかも拘束時間を大幅に短縮することで、90%以上の節約になる。

また引っ越す側としても、段ボールへの詰め替えが最小限で良いところはメリットになる。つまり引き出しにモノを入れたまま移動できるため、その手間が省けるのだ。

この規格が広まることは、引っ越しだけでなく宅配ロボットの普及にも有益である。つまり、この600mmパレットロボットが通れるなら、これより小さい宅配ロボットも自動で玄関先まで行けるはずであるからである。ロボットに対応する宅配ボックスを設置するだけで自動受取が可能になる将来像も、描くことができる。

現在の建築基準法では、4階建てまでの建物はエレベーターの設置義務がないが、そういうものであってもパレット用リフトを階段沿いに設置することで宅配ロボットは移動可能になるし、将来的には低層でもそのリフトを設置した建物が人気になる、ということも考えられる。

2026年2月25日水曜日

3Dプリンター木造建築工法3 脅威の性能とコスト

 3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良

の続き。

リグニンは、180~220℃でゾル状になり、3Dプリンタから射出できるようになる。この状態はまだ熱可塑性の状態にあり、いったん冷えると固まるが、再度この温度になると軟化する。そして、200℃以上で数十分~2時間程度保持すると「架橋化」し、完全に硬化する。こうなるともう熱を加えても軟化しなくなる。

これに対し、日本の住宅の耐火性能試験では、5分後に576℃、30分で842℃、60分で945℃になる。なのでリグニンは架橋化が必須である。そうしないと熱で軟化し、家が崩れてしまう。

だが、3Dプリンター印刷という特性上、200℃で2時間加熱をするのは不可能なので、触媒を用いる。触媒は低温下でも架橋化を促進するが、前回も説明した通り、3Dプリントにおける層間結合を強化するためには邪魔である(硬化した後は結合できない)ため、工夫が必要である。

そこで、架橋促進剤を、新たな層をプリントする直前に噴霧し、プリント後直ちに「ヘラの先端で押す」という操作を行う。これによって層がV字型に変形し、未硬化のリグニンの上下の層が混ざると共に架橋促進剤も混ざるため、層間結合と硬化が同時に完成する。架橋促進剤はその後、その他のところでも徐々に浸透し、硬化が完成する。これにより、前回提案した超音波過熱針及び注入ロッドは廃止する。

次に耐火性だが、20~30mmのリグニン層は廃止し、2mmの高リグニン防湿層+サイディング用の桟を3Dプリンタで形成し、サイディングは市販のものを使用する。これにより建築確認における耐火性の評価を既存の市販品のそれで代用できると共に、価格を大幅に落とすことができる。(リグニン層は高い。)

内装も、10mmのリグニン層は廃止し、防湿用高リグニン層2mmと石膏ボード用の桟までは3Dプリンタで加工し、石膏ボードは人手で貼ることにした。これでも透湿フィルムを貼る必要がないので通常より手間は減らせる。なお、外と中の高リグニン防湿層も、ヘラの先端で押して層間結合強化をする点は同じである。

なお、1層(高さ方向)の厚さは2mmとした。これはコンクリート3Dプリンタ住宅より遥かに薄いのだが、その理由は①即時(2層印刷後)で硬化が可能なのでコンクリートのように固まるのを長時間待つ必要がない、②硬化剤を層間に噴霧するので硬化剤が十分に浸透する薄さにする必要がある、という理由による。

また、断熱材は発泡剤により膨張するので、壁材のような精密な形状制御が困難である。このため、断熱材ヘッドだけはセンサで吐出先の状況を把握し、吐出量を自動調整する機能を追加する。

断熱材もリグニンを含んでいるので、充填すると壁(ハニカム材)に密着する。このハニカム材は構造材、即ち家の重さを支える材料である。一般的なウレタン吹付けでは断熱材は壁に張り付いているだけだが、この場合は六角柱の中に充填される。このため、断熱材はこのハニカム材の構造材としての性能を強化する。圧力耐性はさほど変わらないが、曲げ耐性が強まる。これを計算に入れた上で、ハニカムの厚さを薄くして材料費を節約することは可能になるだろう。結果として、ハニカム層の壁の厚さは2mmにした。ハニカム層全体としての(壁の)厚さは100mmにした。なお、断熱材にはホウ酸を添加して火災に備えるものとする。断熱材はハニカム構造の中に閉じ込められるため空気が動かず、つまり対流が起こらない。またビスや柱などの熱橋が原理的に存在しないため、壁の厚さが薄くても断熱性能は高くなる。

次に、全体として、木粉は止め、古紙パルプを使用することにした。こちらは価格が大幅に安く、繊維も長いためである。また、パルプの入手先(製紙工場など)は大量のリグニンを産業廃棄物として排出するので、リグニンの入手先としても有用と考えた。他、インクを除去していない低品質のパルプを断熱材用に使用し、ハニカム材と防湿層用には高品質のインク除去パルプを使用する。リグニンとインクの食いつきが違うそうだ。

リグニン自体も、無精製の安価なものを断熱用に、精製した高品質なものを防湿層とハニカム材に使用する。パルプと同様、適材適所にすることで価格を低減した。

溶剤を使わないので、いわゆるシックハウス症候群とは無縁になる。壁紙も塗装も当然対応可能である。ただ壁紙の場合、表面を均す必要はあるかもしれない。2mmとはいえヘラで押すこともあり、1mm以下の凹凸は多少あると思われる。

次に、基礎周りのプリントについて考える。通常、基礎には締結用のボルトが飛び出しているが、現在提案しているライン状のプリンタヘッドではボルトを避けられない。そこで、まず基礎にはボルトを埋め込むのではなく、ボルトを埋め込むための穴(ネジ切り)を埋めておく。そしてプリンタは、そのボルト穴の周りを避けるようにプリントするのだが、この際、C字型にしてプリントする。壁の内側に開口部を向ける形となる。もちろんその穴には断熱材は充填しない。そしてプリントが進んで想定ボルト高さを十分に超えたら、横に空いた穴からボルトを入れ、その隙間に高リグニン材(ハニカム材と同じモノ)を注入する。これは手動でも良いだろう。この方法での締結は、木造のホールダウン金物による締結と比べ、引き抜き耐力で倍以上の強度を出せると計算できた。

屋根周りであるが、最上部の防水層を高リグニン、その上の屋根材固定の桟までを3Dプリントで作り、屋根材はガルバリウム鋼板とし、人手で貼るものとする。防水層の下は当然ハニカム断熱層であり、ガルバリウム屋根固有の雨音を減衰することができる。屋根周りの強度設計も自在であり、必要なら太陽光発電パネルや太陽光温水器の設置も可能であり、配線用の穴やくぼみも3Dプリントできる。雨樋や排水路なども同様、一体成型可能だ。

これら変更を加えた後で、再度性能と坪単価を計算した結果が以下だ。

まず断熱性は、一条工務店の0.25W/(m2K)に対し0.20W/(m2K)と一条工務店超えを達成した。これは小さなエアコン1個で家中の冷暖房が可能なレベルである。またリグニンは保温性が高いので、深夜電力でそのエアコンを動かし、昼間は停止させる、といった使い方が可能である。

耐震性も鉄筋コンクリート(RC造)を上回り、耐震等級3を余裕でクリアする。RCは重量があるのでその分更にこちらが有利という結果が出た。これより、制震装置などは必要ない。むしろ家が丈夫すぎて地震のエネルギーを全て受け止め、家は壊れないが家具が飛ぶ可能性が高くなる。必要に応じ免震装置はつけるべきかもしれない。だとすると、免震装置の上に家をプリントすれば良いので、ここで建築を標準化できるかもしれない。耐風性もRC構造並みの剛性を持ち、気密維持も最高、飛来物耐性も高いことが確認できた。

防音性も完璧だ。壁も床もハニカム+断熱材で埋まっており、更に厚みも十分、隙間もないので、音が漏れない。計算によると、通常の木造の家がD-25~D-30、市販の防音室(ヤマハのアビテックスなど)がD-35~D-45なのに対し、D-45~D-55になるとの試算を得た。つまり家中が防音室と同じということだ。深夜に大音量で映画を見ていても、隣家には全く影響ない。(但し窓からは漏れるので要注意)

最後に経年劣化だが、これも木造や鉄筋コンクリート造を上回る性能が出るとの予想が出た。元々木材が持つ糖分・デンプン類が、3Dプリンタからの射出時の高熱で変性しているため、シロアリの好む餌ではなくなっていることに加え、防蟻材を「練り込む」ことが可能である。また、リグニンは架橋化するともうそれ以上劣化しない。木の化石を想像してもらうと良いのだそうだ。むしろ時間と共に未架橋の部分が徐々に架橋化し、強度は増すのだそうだ。

そして坪単価は、なんと25~35万円である。一般的な木造軸組み構造が60~80万円、一条工務店が80~100万円、RCが100~150万円、安さが売りのコンクリート3Dプリンタ住宅でも60~90万円とのことなので、あらゆる建築方式の中で最も安いという凄い結果が出た。

これは価格を追求した結果なのだが、当初の構想通り内壁層と外壁層をリグニンで作ることも可能だ。価格はRC並み(120万)になるが、圧倒的な速さで建築できる。養生と内装外装が大幅に減るためである。坪単価と自分の求める住宅性能を、それこそ指先一つで自在にコントロールできるのが、3Dプリンタ住宅の特徴とも言える。

何回も言っている気がするが、建築会社にこの案を拾ってもらい、具体的検証してほしいものだ。

2026年2月24日火曜日

3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良


 参考:前回 SpockのHighTech夢想: 3Dプリンター木造建築工法

前回の続き。更に色々考え、実用に近づけた。

  1. 構造材の変更
    1. 前は柱材として玄武岩(バサルト)ファイバーと言っていたが、これを廃止し、壁全体をハニカム構造とする。柱材は無くす。
      1. 目的は、①コストの低減、②廃材の再利用性向上(マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクル)、③繊維棒ロボットの廃止、④資源の有効活用(全部木で作る)、である。
      2. 材料として、リグニン、木粉(100~500μm)、長繊維木粉(500μm~2mm)を使用する。
        1. リグニンの配合を多くするほど硬くなり、その代わりに脆性が高くなる(割れ、ヒビ)。脆性を補うために長繊維木粉を配合する。木粉はフィラー(価格調整、かさ増し)で使用する。
        2. 壁全体をハニカム構造とすることで、壁全体で重量を支えることができる。
        3. 力が掛かる要所(角や玄関枠など)ではハニカム径を調整して強度を増す。壁材部分は40mm、要所は10mm、などだ。
        4. 横方向(根太、梁)にもハニカム構造を適用する。下側ほどハニカム径を小さくする。
      3. 単純にハニカムを積み上げ方向に形成すると層間結合が弱いため、これを補強する施策を追加する。
        1. ハニカム層は数層分の硬化遅延が起きる仕掛けを施しておく。(遅延剤添加など)
        2. ハニカムが1層をプリントする度に、上から超音波過熱針を差し込む。するとまず縦方向に繊維が通過し、更にその周囲が先に硬化し、縦方向の結合強度が高まる。
        3. あるいは数層分を貫通する細い射出ヘッドを差し込み、引き抜きながら長繊維木粉混合リグニンを射出する。
      4. ハニカムの中は断熱材(後述)で埋め、断熱する。但し要所で中空のハニカムを作り、これを配管用とする。
  2. 断熱材の変更
    1. 木質ファイバーを止め、木粉+リグニン+発泡剤とする。
      1. 木質ファイバーは3Dプリンタから吐出するのが困難で、また事前混合も困難であることより、素材の統一を優先する。
      2. これにより断熱性能は低下するので、壁の厚みを増すことで調整する。
        1. 壁材の想定は200mmである。外装面30mm(高リグニン 防湿・耐候)、ハニカム断熱層140mm、内装面30mm(高リグニン防湿・気密・難燃)となる。この厚さで十分、スウェーデンハウスに迫るくらいの断熱性能は確保できる。
        2. 合わせて気密性も極めて高く作れるので、高気密高断熱が実現する。
  3. これで素材は4種類で完結する。
    1. 外壁材:高リグニン+木粉+UV剤+耐候剤+難燃剤
    2. 構造材:高リグニン+長繊維木粉
    3. 断熱材:標準リグニン+木粉+発泡剤
    4. 内壁剤:高リグニン+木粉+難燃剤
    5. これらをペレットで供給し、3Dプリンタヘッドで加熱して吐出する。
  4. 専用の3Dプリンタとして、これら4種類のヘッドを合わせたマルチヘッドを設計する。
    1. 外壁用1、構造材用20、断熱材用1、内壁用1。構造材用だけ細く、紙にプリントするプリンタのように、マルチヘッドでハニカムを一度に形成する。
      1. 縦方向のハニカム結合強化用施策(2種)は、どちらかないしは両方のヘッドを追加する。
    2. これにより、200mmの外壁が一度で形成できる。

この構造について、やはり費用面や建築スピードの面などから検討してみたのだが、結果としては恐ろしく高効率低価格である。

コンクリート3Dプリンタ住宅は壁材しか作れないので、内外壁の作業が更に必要になる。内壁は断熱、防湿材、壁紙など、外壁は塗装などだが、こちらは一体で作ってしまうので必要ない。また壁を作る速度も圧倒的に早い。マルチヘッドを抜きにしても、即時に硬化するのでコンクリートのように固まるのを待つ必要がないからだ。

また床や梁も作ることができる。床の場合は、コンクリートベタ基礎の上にまずサポート材をプリントし、その上に根太に相当する横方向ハニカム構造をプリントする。根太の間には充填剤を入れ、最上部はまた壁材でプリントしてやる。天井の場合はサポート材を使うよりは人手で板を渡してやった方が良いだろう。その上にまた3Dプリンターで梁をプリントすれば良い。

コンクリート3Dプリンタ住宅の場合は、天井は別に作って運んで設置する必要があった。これに対し、こちらは支持材としての薄い板(例えばプラダン)を置くだけで、後はプリンタが作ってくれる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では不可能な、配管の穴を自在に空けることも可能で、電装や水回りの工程も大いに短縮できる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では、窓枠部分はあらかじめ空けておいて、枠の上までプリントしたら人間が手で横長の棒を置き、またプリントを再開するのだが、木造3Dプリンタは窓の穴を空けず壁材を薄く積み上げることで印刷を続けることができる。木質なので完成後に穴を空けることは簡単で、薄く作っておけばそれこそパンチで空けられる。後はカッターで仕上げれば良い。そしてこの方法だと削り出しができる(コンクリートだとこれは難しい)ので、精度高く窓をはめ込むことができる。充填材も、通常ならシリコンシーラントを使うのだが、枠ぴったりにハメられるのならその量はごく少量でよい。ネジ止めも木ネジが使える。ドアも同様である。

他にも、室内壁を一緒にプリントできる、棚や押し入れなど簡単な造作も一緒に作れる、将来的には高精度プリンタを併用することで屋内ドアや窓枠(後はガラスをはめるだけ)のような可動部も一体でプリントできるだろう。これは後工程を大幅に短縮する。

屋根材も、最後にガルバリウムを貼る直前まではプリントできるはずだ。高リグニン材で形成すれば防水シートは不要だし、通気用の横木なども一体成型できる。その下の防音には断熱材が使える。

材質も全て木質系にしたし、高価なCNFなどは使わずに済んだので、坪40万円はやはり十分に狙えるとの試算が出た。

但し、建築確認の壁があるのはコンクリート3Dプリンタ住宅と同じである。ここまで考えるとさっさと試作したい(してほしい)」のだが、どこかの建築会社さん、拾ってくれないかなぁ。

2026年2月17日火曜日

3Dプリンター木造建築工法

3Dプリンターを使った建築は、いくつか実用化し始めている。だがこれらはコンクリート前提であり、重く、建築確認も難しい。木造でこれをできないかと考えてみた。これをご紹介する。

まずは構成から。


壁はリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで形成する。この壁は構造材ではなく、後で示す断熱材充填の器として、また同じく後で示す構造材の器として形成する。

構造材は、バサルト(玄武岩)ファイバーコイルとリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで構成する。壁を3Dプリンターで作る際、構造材となる部分は縦穴となるように隙間を開けておいて、ここに上からバサルトファイバーを差し込み、隙間をエンジニアリングウッドで埋める。この隙間を埋めるエンジニアリングウッドは、壁材と違ってリグニンを高配合した硬い素材である。

また、このリグニン高配合素材は、内壁のごく薄い部分にも使用する。これは防湿材として機能する。一方、最外壁には微細な穴を開けて放湿する。

バサルトファイバーは単体では自立できないので、あらかじめエンジニアリングウッドに浸漬し、薄くコーティングした棒材として作っておく。これは50cmサイズで、数本を束ねて性能確保するものとし、縦方向には少しづつずらして配置する。

縦穴にバサルトファイバーと高リグニン木粉エンジニアリングウッドを充填すると、これが固まって構造材としての性能を出す。

断熱材としては、木質ファイバーと発泡リグニンの混合材を使用する。壁材はあらかじめ中空で作り、その隙間にこの断熱材を注入する。

3Dプリンタは、3種の素材、すなわち壁材用、構造材用、断熱材のノズルを持ち、またこれとは別にバサルトファイバー棒を自動供給するロボットから構成される。


これらを作るに当たって検討したことは、次のとおりだ。

  • コンクリート3Dプリンタは今でも鉄筋の補充が必要で、自動化の程度が低い。途中で人の手が多く掛かるようではダメ。できるだけロボットが自動で作れる必要がある。
  • コンクリートは断熱性が低く、自重も重いため、地盤が弱いところでは使いづらい。木質系で考えたい。
  • 木粉エンジニアリングウッドは構造材(柱)として認可されていないが、これは引張強度が足りないため。だから鉄筋のような引張耐性のある素材が必要。
  • 鉄筋は錆びるが、コンクリートが強アルカリのため使える。エンジニアリングウッドは中性だからこの手は使えない。
  • エンジニアリングウッドと鉄筋の熱膨張率は違い過ぎるので、使うには色々工夫が必要。熱膨張率が近い素材を使った方が楽。
  • バサルトファイバーは鉄筋より熱膨張率が木に近いが、まだ少し差があるので、コイル状に加工して使う。また自動で配置するには繊維のままでは扱いづらいので、後に充填する素材と同じエンジニアリングウッドに浸漬し、棒状にする。
  • 3Dプリンタでファイバー棒を扱うには長いと都合が悪いので、50cm長とする。するとそのつなぎ目は当然引張強度がないため、複数を束ねて使い、少しづつずらすことで対処する。
  • 断熱材も自動充填したいが、発泡ウレタンは熱膨張率が高く、また透湿性がないこともエンジニアリングウッドと相性が悪い。
  • 木質ファイバーだけだと射出困難なので、発泡リグニンとの混合材として使用。発泡リグニンが木質ファイバーの位置固定に役立ち、自重で沈むなどの経年劣化を押さえてくれる。
  • 構造材の品質を安定して出せるので、建築確認を取得しやすいことが期待できる。
    • 3Dプリンター建築は縦方向の引張強度が出せないので、日本では建築確認が難しい。これを避けるために鉄筋や鉄骨をわざわざ入れて、3Dプリンター建築の良さを台無しにする設計がまかり通っている。

この建築法には興味深いところがいくつもある。総じて言うと、3Dプリンター建築と言っても全てができるわけではないのだが、コンクリート住宅の場合はできなかった手間のいくつかを省くことができる。


  • 防湿材を貼る必要がない。内側から外側に向けて透湿性が順に上がる設計である。また防湿材の隙間や貼り忘れの心配がない。
  • コンクリートと違って木材用の加工が可能であり、細かい調整が現場レベルで可能である。
  • ベッドや棚など簡単な構造のものは一緒に作ることができる。
  • 配管の穴などもあらかじめ作っておける。
  • 支持材は必要だが、床材や天井材も一体成型できる。(さすがに屋根は無理)
  • 隙間無く作れるから、高断熱だけでなく高気密が期待できる。
  • 施工にミスや手抜きがあり得ないので、コンピュータシミュレーションの結果と現物の差は小さくなる。
  • 材料のバリエーションが極めて少ないので調達が容易である他、解体でも廃材の整理がしやすい。
  • 人間の手を煩わせるところが極めて少なく、一般の建築はもちろん、3D プリンタコンクリート住宅と比べても、建築スピードを速くすることが期待できる。
  • 材料の大部分は木粉とリグニンであり、難燃性ではあるが高熱で処理すれば燃える。つまりサーマルリサイクルは可能である。また一度硬化したリグニンは回収困難だが、コンクリート同様骨材としてのリサイクルは可能である。
  • リグニンは熱硬化性樹脂である。つまり吐出と共に熱処理すれば直ぐに硬化するので、コンクリートと比べて高速に建築が可能である。

この仕様でのコストを生成AIに見積もってもらったところ、木造や3Dプリンターコンクリート住宅よりは高く、鉄筋コンクリート住宅よりは安くなるという微妙な結果になった。だが、その高価格の主な要因であるバサルトファイバーとリグニンの価格は、今後5年で劇的に下がる見込みがあるとのことであり、もしそうなれば木造住宅も3Dプリンターコンクリート住宅もぶっ千切って、最低の坪単価となる。試算によると、坪単価は40万円だ。つまり100平米(30坪)でも1200万円でできる。今の時代、ちょっととんでもない低価格である。

これは見込みがあるのではないか。どこかの建築会社で検討してもらえないだろうか。

2026年2月16日月曜日

メタバースが世界を救う

非常に大雑把な一般論だが、ハイテクは上手く使えば格差是正になる。

その良い例は音楽制作だ。かつて音楽は大金持ちや貴族のたしなみで、庶民は縁遠かったが、今やYouTubeでボカロ曲が普通にヒットする時代になった。これは作曲家や演奏家の大衆化と言える。裾野が広がったことで大量の音楽家ができ、世の中には音楽が溢れるようになった。高度な学習も高価な楽器も必要ない。パソコン一つでプロ並みの音楽を作れるようになった。

もっと生臭い例を言うと、ロシア・ウクライナ戦争においてドローンが大活躍している。ロシアとウクライナの戦力差は本来なら致命的なもののはずだが、ウクライナがドローンを上手く活用しており、その戦力差は縮まっている。鳥取県と同程度の経済規模しかない北朝鮮が米国と渡り合っているのは、核兵器があるからだ。

これに準じて、もし全ての国でメタバースが本格的に普及したら、どんな格差が是正されて世界は平和になるのだろうか、と考えてみた。

単なるインターネットとメタバースが異なるのは、視覚情報をフルに使って、また体を使って表現ができることだ。プログラミングなどの技巧的なものがなくとも、例えば幼児でも、簡単に国際交流ができる。この、より直感的な交流は、一つの重要な鍵になるだろう。自動翻訳がこれを更に助長する。

そしてもう一つは、ワールドの設計である。お互いがお互いを無視するワールドも、共存するワールドも、敵対するワールドも作ることができ、それらは独立に動かせる。つまり無視したい人は無視ワールドに、共存したい人は共存ワールドに、と棲み分けができるのだ。これは、例えば宗教対立のような問題に、一定の切り分けをすることが可能になる。例えば、キリスト教用とイスラム教用と共存用の三種のワールドに各々総本山(メッカ)を作り、どれが正でどれが副ということはない、と定義できる。(もちろん対立用ワールドを作って中でつかみ合いの喧嘩をすることも可能だが、バーチャルである限り無害である。)

ただ、メタバースによる格差是正は、あくまでもオンラインに乗るものだけだ。人はメタバースだけで生きるに非ず。現実には毎日食事をしなければならないし、風呂やトイレも必要だ。物価も住んでいる所によって違う。電気ガス水道通信、医療もリアルな世界では必要だ。

現実の生活において、バーチャルに移行できるものが何割あるかによって、その格差是正の程度は変わってくる。概ね、今のインターネットで出来ていることはそのままメタバースでも使えるだろが、メタバースでプラスアルファでできるようになること、メタバースで使い勝手が良くなり利用者が増えるであろうこと、がどのくらいあるか。

まず教育。移行できないのは走り回るスポーツ、柔道のように相手と接触するスポーツ、水泳、などが考えられる。卓球は既にできるし、体操や太極拳などもアプリがある。だがホームルームや学園祭など、バーチャルでも可能ではあるがリアルでやりたい、という需要も一定量あるはずで、特にその傾向は低学年ほど多いだろう。

次に仕事だが、リアルな生活に関わるところは不可能だ。例えば配達・運送、クリーニング、販売、農業漁業工業、食堂、インフラ(水道など)の保守、建設、介護・看護・医療、消防警察軍事、ゴミ回収や清掃などが考えられる。その各々の事務処理など部分的にはバーチャル移行が可能だが、その割合は多くないはずだ。プロスポーツを除くエンタテイメントの多くはバーチャルに移行可能だろうが、リアルに見たいという需要も一定数あるはずだ。

事務作業やプログラミング等は、国際的に分散する方が有利である。いわゆるIPであるが、メタバースにより従来より敷居は低くなるだろう。世界中が休みなくつながりAIアバターも使える状況においては、仕事のチームはむしろ世界に分散している方が有利である。つまり時間差で仕事を引き継いで行う形態が日常化するため、時間帯ごとにメンバーを募集するようなことが起きるだろう。

また、メタバースで完結する仕事については国際的なコスト(賃金)格差が縮小するだろう。端的な話、日本のような先進国では海外に仕事を持っていかれる率が高くなり、相対的に単価は下がる。ただ、持っていかれる先である海外(インド、フィリピン、ベトナムなど)でメタバース上の仕事を請け負う人たちは、安い給料の中でメタバース機材を揃え先進国並みの仕事ができるエリートである。

こういったものを経て、人生の何%がメタバース上に移行することになるのだろう、と色々計算を続けてみた結果、先進国の中間~上位層では30~60%が(低所得者層・新興国では10~30%が)メタバース上に移行する、との結論を得た。これは今後10~20年で起きる。分野によって移行化度は異なる。日本の場合、今の電子化率と比較して解説すると、以下のようになる。

領域 現状の電子化率 メタバース化の将来推計 根拠
行政 30〜40% 60〜80% 窓口業務の大半がオンライン化可能(高齢化で対面維持困難)
教育 20〜30% 40〜70% 教員不足・地域格差、XR授業の普及
医療 10〜20% 30〜50% 遠隔診療の拡大、医師不足
仕事 20〜30% 30〜50% 例外処理は残るが、会議・研修・一部作業がXR化
消費・娯楽 30〜40% 40〜60% EC+XRショッピング、XRライブ

ただこれは日本の平均であり、上位所得車窓では当然割合が上がり、低所得者層では低くなる。

また、これはここ10~20年の数字であり、遠い将来には80~90%がメタバース化可能になる。実用的には、先進国で70~85%程度がメタバース上で過ごすことになると予想する。

ここまで調べた上で考えると、結論としては


メタバースの普及は国際格差(国同士の富の差)を減らす


ということが言える。但し「先進国では国内格差が縮小するが、新興国では広がる」ことになる。

なぜかというと、新興国の上位10~20%の層は、先進国の事務作業をIPで奪うことになるだろうからだ。従来だと大規模開発の特定モジュールといったやり方しかなかったが、メタバース普及後はちょっとした例外処理を含む事務作業のレベルで発注が可能になる。すると結果としては先進国から仕事を奪うことになる。

一方、下位80%の層はこの恩恵に預かれない。従来より仕事が減る訳ではないが、上位層がリッチになるので結果として格差は広がってしまうのだ。だから新興国は、その上位層からの納税増を基に教育を充実させ、インターネットを普及させ、先進国から仕事を奪う層を広げていく必要があるだろう。

また、メタバースの普及は必然的に人の移動を減らす。オンライン会議がより普及するからだ。一方で物流は増えるだろう。ケータリングや宅配などだ。そして後者は前者より環境負荷が小さくなると考えられ、これは燃料たる石油消費を抑える方向に動くだろう。つまり環境変動(地球温暖化)阻止にも貢献する。

また先に示したように宗教紛争は抑える方向に動く。これをもっと広く捉えると、


メタバースの普及は戦争紛争テロといった暴力を減らす方向にも働く


のではないか。

ここには大きく二つの根拠がある。第一は、メタバース空間はインターネット以上に統制が取りづらく、またアバターがデフォルトなので、市民レベルでの国際交流は増えるのではないかと考えるからだ。紛争は相互理解が増えると減る傾向にある、というのは心理学上からも実績からも誰もが認めるところだろう。

第二は、メタバース空間で過ごす時間が大部分になれば、戦争紛争の大きな争点である民族対立や領土問題の価値は相対的に低減するからだ。従来のイメージでは

領土=生活空間+文化空間+経済空間+資源空間

だったのに対し、メタバースが普及することでその意識が

領土=資源空間

だけになる(他の要素がゼロになるわけではないが、重要度が下がる)。石油や稲作は必要だから完全にはなくならないものの、その価値が低下すれば争う意味も低下するだろう、と考えるのだ。

そして、第一第二をあわせて考えると、いわゆるナショナリズムは低下するし、国のプロパガンダの効力も低下する。そうなれば恣意的な戦争は国としても起こしにくいだろうし、大義名分があってもその支持率は相対的に低下する。

エストニアは積極的に電子政府化を進め、これが世界的知名度と地位を上げる結果となった。メタバースでも同じだ。メタバースに積極的に展開する国は、世界から知名度を集め、交流が広がり、結果として国を守ることにもつながる。

日本ではあまり効かないかもしれないが、小国はこの方向性を積極的に取り入れてはどうかと考える。

2025年12月8日月曜日

ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル

近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕事に波及していくだろう。

ここであぶれた人間には、もはや働くところが無い。何をするにもロボットやAIに劣る人間には、今後もう労働市場自体が存在しないのだ。そんな彼らを救済するには社会保障しかない、と以前は考えていたのだが、ここで発想を転換し、ロボットを所有させれば良いのではないか、と考えてみた。つまりそういう人たちは、その(人間の代わりに働く)ロボットを所有して、労働需要に貸し出して働かせ、その借り賃を得るというものだ。もちろん人間が働くよりは安い額だが、その間自分は何もしない(から他のことができる)のだし、ロボットの台数を増やせばそれだけ額は伸びる。

ここから更に、所有せずともレンタルすれば同じことができるのではないかと考えた。カーシェアリングと同じようにまず自分が借りて、そこから他人に貸すのだ。そうすれば所有のリスクを抑えられる。

用途としては、マンション管理人、イベントや駐車場の誘導員、近所の食堂のホールスタッフ、介護の搬送補助、清掃員、宅配要員、ケータリング要員、などが考えられる。こういうものは、平均的には常に需要があるが時間までは揃わないので、人間よりロボットの方が向いている。

ただ、これだけでは不足だ。第一には、同じビジネスモデルを一般人が使うことは阻止できないので、参入されるとレッドオーシャンになってしまう。そこで、ロボットのジョブマッチングシステムを導入する。これと連動して自動でレンタルが開始されるようにしておけば、カネが自動で落ちてくるようにできる。そしてこのジョブマッチングを使えるのは、生活保護や境界知能など一定の要件を持つ人に限定する。一般人は自分でレンタル先を探さなければならない。ジョブマッチングでは「必ず儲かる」が、手動でマッチングする際には借りてから貸し出すまでのタイムラグがあり、必ずしも収支はプラスにならない。

第二に、借りたい側が直接シェアリングサービスからレンタルしてしまうとこのモデルは破綻するので、借りる側は一定比率でそのジョブマッチングシステムからレンタルしなければならない、と法で定める。個人が借りる場合は100%ジョブマッチング経由とするのも良いだろう。

このシェアリングロボットのプール(待機場所)は地域毎に細かく設定されるので、現実的には寡占状態に近くなり、この定めは大きな障害にはならないと考える。つまりジョブマッチングを通すか通さないかに関わらず、その地域のそのシェアリングサービスから借りることになるので、余計な課金を嫌って他を探すということはあまり発生しない。

このモデルは、社会保障モデルとしても望ましい点がある。従来、生活保護や障害者雇用は「バラマキ」的発想が強く、それ故に偏見も多くあった。だがこのモデルでは、彼らはロボットのオーナーであり、得られるのはそのレンタル料という普通の報酬である。ジョブマッチングが使えるという有利はあるが、同じことを手動することは一般人でも可能なので、ある意味一般人と同じビジネスモデルである。これにより偏見を受けにくくなると考えられるのだ。

ロボットは地域で運用されるので、仕事に限らず家事の補助や子守りなどでも使えるだろう。一家に一台がまだ遠い時代でもロボットを使えることは、地域にとっても望ましいことだ。例えば共稼ぎの夫婦の子供の保育園えの迎えに使うなどということも考えられる。そう考えると、弱者保護は置いておいてもロボットシェアリングには意味があると考える。それにジョブマッチングを加えれば、福祉も効いて一石二鳥になる。

後はビジネスモデルとして成立するかどうかだが、保護対象者(生活保護、境界知能など)の収支は一方的にプラスになるので問題ない。ロボットオーナーは地域の需要を鑑みて調整の必要があり、それなりのリスクを持つが、まあこれはシェアリング会社としては通常のリスクである。借りる側は一定比率の足かせがあり若干不満はあるだろうが、ここは世論に応じて法で調整してやる。つまり十分に低い負担率から始めて徐々に上げていけば、うまい落とし所が見つかるだろう。

2025年11月17日月曜日

総合医の復活


 そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。

総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代においてそれは、どちらかといえば「仕訳医」としての側面が強い。つまりある程度目利きをしたら各々は専門医に任せる。以後は主治医は個別の病気には関わらない。だから患者は複数の病院を渡り歩き、あるいは総合病院の複数の診察科を駆け回ることになる。

だが、その主治医が全ての専門科に精通していて、全てをワンストップで診てくれれば、患者としてもそれに越したことはないわけだ。そしてかつてはそうだった。ほとんどは町医者が診てくれて、手術などどうしても困難なものは大病院に紹介されたのだが、その閾値がどんどん低くなっている。今やさほど大きな街でなくとも総合病院はあって、町医者の守備範囲は狭くなっている。

これを打開する可能性があるのが、近年のテクノロジーの発達である。すなわち通信技術、高解像度映像伝送技術、そしてAI、ロボット、である。

つまり、これらIT機器で武装することによって、町医者で閉じる守備範囲を再び広げようというのが主旨である。

総合医の強みは、複数の病気を抱える患者で発揮される。薬の重複や副作用と症状の識別は代表的だが、精神的ケアや家族の意思の確認などにおいてもそれは有用で、更には入院や手術を近隣で行えることは大きなアドバンテージだ。

ただ、個々の病気の専門性が分からないと、これらの識別は困難だ。重複しているからと単純に薬を減らしてしまうのが正しいとは限らない。また、薬の作用を相殺するような組み合わせを発見したり、発見したときにどう対処するかの知見は、個々の専門医でも分かるとは限らず、総合医としての知見もまた求められる。そういった知見をカバーするのがAIである。

また、手術を遠隔で可能にする手術ロボットや、手術以外の処置も、AIやロボット、その他測定機器の高度化やカルテ連動などの技術を駆使して、町医者でできることを増やしてやる。多数の人間の専門家ではなく高度なAIがそれに置き換わり、町医者は最終判断をするだけで済むとなると、むしろ医療品質の安定化、更には高度化すら期待できる。

さて当然ながら、このスキームを確立するための鍵となるのは、診断用機器、手術・処置ロボット、そしてAIだ。以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2017/02/blog-post_20.html

のような提案をしたことがあるが、これは診断用機器だ。他に手術・処置ロボット、AIが必要だが、手術・処置ロボットは汎用である必要があり、これはアンドロイドすなわち人間のような形状(手が二本、脚が二本、頭が一つ、身長170cm前後、バッテリ駆動)で、人間と同じ器具(メス、鉗子など)を持てるロボットが望ましいと思う。そしてソフトウェアでどんどん機能を追加していくのだ。

AIの方はアイデアが漠としており申し訳ないのだが、多数の専門家AI(各々の病気のエキスパート)と総合診断AIからなるマルチエージェント型が基本になるのだろうと思う。それと人間のAIが自然言語で会話しながら進めていく、というようなイメージになる。

もちろん、このための投資はこのスキームにおける大きな弱点になる。数千万円単位の投資になると思われ、大型医療機器の導入と同じような出費になる。したがってこれの導入には医者により判断が分かれるだろうし、国の補助と言っても桁が大きいので一律にするのは困難だ。

だがこれは、離島など医療過疎地域へのモデルケースとなるため、スキーム自体の確立には国や自治体としても意義があり、その意味でも国の補助は重要である。まずはそういうところから始め、コストダウンを目指しながら町医者に広げていく、そんな構想をもって開発しても良いのではないかと思う。

2025年6月19日木曜日

ヒューマノイド家事用ロボットの普及と少子化対策

https://www.1x.tech/neo

以前も紹介したヒューマノイド家事ロボットだが、量産化で8万ドルを目指しているらしい。他にもテスラのOptimusやFigure 02など多くのヒューマノイドロボットが開発中で、2030年代中盤くらいには、こういったヒューマノイドロボットは量産化されていると予想されている。中国のもので250万円、ヨーロッパやアメリカのもので400から1000万円くらい。サラリーマンでも何とか買えなくもない、という値段だ。

これで何ができるのかというと、家の片付け、掃除、洗濯物の折りたたみ、荷物の受け取り、などだという。調理はさすがに難しいだろうし、買い物も困難だろう。掃除と言っても掃除機をかけるくらいで、ベランダの掃除や草刈りなどは無理だろう。数百万かける割には大したことはできないように思える。

ただ、もし家事全般すなわち買い物や炊事、食器洗い、子育てまで含めて家事全般ができるようになったとしたらどうだろう。そんなロボットが一家ないしは一人に一台あれば、どうなるか。

一家4人(共稼ぎ夫婦と未就学児、小学3年生)を想定した場合、平均的な家事育児時間は1日当り5~7時間、余暇時間は1日当り2~3時間と推定される。これにロボットを導入することで家事を70%任せられるとすると、夫婦の家事育児時間は1~2時間、余暇時間は5~6時間に増えると計算される。

これだけあれば、夫婦が子育てを負担に感じることはないだろう。ゆとりを持って生活できるし、余暇で更に副職をすることも可能になるはずだ。

だが一方で、ロボット自体のコストは増える。それを例えば500万円で10年と考えるなら、年間の追加コストは50万円で、年収500万円をすると1割になる。これは結構なコストだ。

家事育児の負担を減らすためにロボットを買う、そのロボットのコスト増加のために仕事を頑張る、というのは、本末転倒とまでは言わないが、プラスとマイナスの側面があるマッチポンプのようなもので、どちらが幸せか分からない。ただ、1割というのは結構微妙なところで、やろうと思えばできなくはないところがエグい。個人的には新しいモノ好きなのでぜひ導入してみたいとは思うが。

また、もしこれが本当に実用的なら、国や企業がその費用を補助することも考えられる。そうすれば従業員のQOLは向上するし、上手く行けば少子化対策にもなるかもしれない。

子供を持つことのコストは経済的なものだけではなく、親の時間を取られること、親の考え事や悩みが増えること、という側面もある。そこにロボットをあてがうことで、子供を持つことへの抵抗が薄れるというわけだ。

なお、その弊害はもちろん、子育てをロボットに委ねることの是非だろう。今のヒューマノイドロボットはあまり喋らず表情機能がなく目もないため、特に幼児期の精神の発達には悪影響があると予想される。このため、初期のロボットではそういった精神発達が歪んだ子供ができる可能性はある。だがそれは技術によって次第に克服できるだろう。

2025年4月7日月曜日

車椅子VRとロボット

 https://www.1x.tech/neo

このロボットは、家庭における雑用を補佐するロボットとして有望である。人から手渡しで荷物を受け取ったり、人の手で操作する掃除機が扱えたり、窓を拭けたりする。こういうロボットが一台いれば、人はかなり便利になる。

更に、これとVR・MRを組み合わせた世界では、画期的な体験ができるはずだ。以前から提案している車いすメタバースとの組み合わせで、どんなことが可能になるのかを考えてみる。

車いすメタバースの中では、人は電動車いすで移動する。移動先は全て車いす対応なので、例えば道幅は充分に広く、段差はなく、階段ではなくて専用エスカレーターやエレベーターが標準で装備されている。飛行機や車も車いす前提だ。もちろん店舗やレストランも車いす対応である。

ここではレストランでの体験を考えてみる。車いすレストランで席につくと、給仕が食事を運んでくれるわけであるが、現実世界ではこのNEO Gammaが実際に食事を運んできてくれるのだ。もちろん調理全般は難しいだろうから、ケータリングの受け取りないしは弁当の温めくらいに留まるだろうが、それでも人はVRから出ずとも食事の準備ができるわけだ。そしてテーブルの上だけがシースルーになって実際に食事を摂り、後片付けはやはりNEOにさせる。NEOは皿洗いはできないだろうが、食器洗浄機に皿を入れるくらいはできるだろう。

また、メタバース空間で買い物をすると、それは宅配になるわけだが、この宅配受け取りもNEOがしてくれる。荷物を棚に入れるくらいはすぐできるだろうし、開梱して仕分けしてものを仕舞うくらいまではもう10年以内くらいにはできるだろう。

トイレや風呂をメタバースで行うことは不可能だからこれは除外するとしても、食事ができるのは大きい。これなら休日に朝から繁華街に出かけて買い物をして映画を見て夕方に帰る、といったことがメタバース内で完結する。家族4人が同じメタバース空間で話をしながら歩き回るということも問題ないし、現実と違って迷子や誘拐の恐れもない。メタバースのデパートなり繁華街なりがそれなりに充実していれば、現実とさほど変わらない満足が得られるはずだ。

店側にも大きなメリットがある。まず市場は世界中になる。翻訳が噛ませられれるから外国人でも問題ない。但し当然送料は現実のものだ。として店舗の維持費は圧倒的に少ない。在庫を抱える必要もないし、場所代も掛からない。新製品でも直ぐに店頭に並べられる。従業員もAIエージェントが使えるだろう。そうなれば24時間営業も可能だ。イベントなども考えてから実行までの労力は現実店舗よりずっと少なくて済む。配送も実質は通販だから、指先一つないしは全自動で可能である。商品説明はメーカが作れば良いので、店は品揃えや見せ方、価格などを工夫するだけだ。

ユーザ体験を、全体を通じて考えてみると、こんな感じになる。

まず、数日前に昼食を決め、ケータリングないしは事前宅配の予約をしておく。いつもの近所のケータリングで良いならこれはしなくて良いが、せっかくの「外出」なのだから普段とは違うものが食べたいだろう。

当日は家族全員でテーブルに座り、VRゴーグルを被って「出発」する。いきなり現地に飛ぶのでも良いが、自宅前から仮想タクシーに乗り込んで雰囲気づくりをするのも良いだろう。

到着したらあれこれ見て回る。これは通常の観光やウインドウショッピングと同じだ。もちろん現地での体験や実際の買い物も可能だが、買い食いはできない。もししたいなら、先に調べておく必要がある。

昼食は、ケータリングをした店の仮想店舗に入る。時間に合わせてロボットが温めて配膳してくれる。もちろん待たずに入れるし、いくら長居をしても良い。偶然に居合わせる迷惑客もいない。

食事が終われば午後はまた別のところに行っても良いし、同じところで続きをしても良い。夕方に帰るも良し、夜もまたケータリングで食事をしても良い。もちろん片付けはロボットがしてくれる。後日、買ったものを受け取るのもロボットだ。

平日の仕事の間の食事でも、同じようなことは可能だ。この場合、会社の同僚と一緒に食べるということも多いだろうが、食べるもの自体は揃えられないだろう。それでもお喋りをしながら食事の時間を楽しむことはできる。

さて、今のメタバースの主流であるVRChatやHorizon Worldには、この体験に値する観光地やショッピングモール、レストランなどは、残念ながらゼロと言っても良いレベルである。どのワールドもコンテンツは少なく、造作物の解像度やリアリティは低い。はっきり言って、何時間も滞在できるほどの魅力はない。今の十倍百倍といったレベルでの作り込みは必要だし、それに伴ってVRゴーグルの性能ももっと上げなければならないだろう。

2025年2月21日金曜日

マニュアルエージェント


生成AIの話題が盛んであるが、最近はエージェントの方に話題が移ってきているように思う。このエージェントというのは、生成AIを少し加工して、特定の目的に向けてカスタマイズをしたようなものだ。エージェント開発ツールの例としては、ChatGPTのOperatorやMicrosoft Copilot Studioなどがある。

これを大雑把に説明するならば、三つの種類がある。第一は、検索型とでも言うべきもので、(深津式プロンプトのような)前段の命令をあらかじめ与えておくものである。指定する知識(要するにオンラインドキュメント)を前提として答えること、あるいは特定のキーワードに対して特定の返し方をする、というものだ。例えば「怪しいメールを受信したのだがどうしたらよい?」という質問に対し、生の生成AIなら「見ずに捨てる」などと返すだろうが、これが企業のヘルプデスクだったら「特定の部署に通報する、報告書を書く」などとルールがある場合があり、そう返すべきだ。それを行うには社内規則を読んでおく必要があるが、そういうものを指す。

第二は、ノーコードツール型とでも言うべきもので、単に受けて応えて終わりではなくて、ワークフローを起動する機能があるものだ。曖昧な言葉から変数となるキーワードを抜き出し、あらかじめ定めておいたルーチンを実行する。怪しいメールの例で言えば、話を聞いたら通報すべきと判断し、そのメールをドロップしてもらった上で、通報を自動実行してくれるようなものだ。

第三は自律型とでも言うべきもので、第二のワークフローを特定の条件で自動実行するものだ。上の例で言えば、怪しいメールが来た時点でそれを識別して、通報を自動実行するワークフローを起動する。

こういったものは、今後数年で急速に普及し、世の中を便利にしてくれるだろう。特にヘルプデスクの類は大いに重宝するはずだ。

これの応用で、各社が今すぐ対応してほしいと思うのが、マニュアルエージェントだ。

すでにいろいろなところで言われている通り、日本の家電は機能が豊富でマニュアルも分厚い。UIもあまり賢くない。このためマニュアルを読まずに使おうとする人は多く、読めと言われても読まない。これで身近なちょっと詳しい人が呼び出されて説明したり対応したりする、という事態が全国で起きている。

だが、上のようなエージェントがあれば、質問すれば音声で返ってくるし、故障なら手続きをある程度自動実行してくれるから、豊富な機能が無駄になることもないし、故障時や不具合時の対応時間を大いに低減できる。更に言えば、その機器の使い方についてのアドバイスも受けられるだろう。もったいない使い方をしているユーザに、機能の説明をすることができる。

いっそ、紙のマニュアルは廃止し、マニュアルエージェントへのURLをQRコードで本体に貼ってくれていれば良い、あるいは機械にスピーカとマイクを付けてネットに繋げばOKとしてほしい。

これは例えば、消耗品の手配を大いに促進するので、機器の寿命も伸びるし、ユーザも機器を放置することなく使い続けられる。高機能の機器を積極的に買おうとするモチベーションにもなる。

2025年2月6日木曜日

車椅子社会の実現

 以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2020/12/vr_23.html

という投稿をしたことがある。メタバース空間を、全て車椅子前提で設計してしまおう、というものだ。こうすることによって、人は机に椅子、キーボードとマウス、という状態で、メタバース上で一日中過ごすことが可能である。その上で、メタバース上の広大な空間を行き来することが可能だ。

これをもっと進めると、実社会も全て車椅子で移動するようにできないだろうか。今の社会は歩きがデフォルトで車椅子が例外だが、これを逆転するのである。これについて少し考えてみる。

この場合の車椅子は、机とノートタイプPC、移動のためのジョイスティックを備えた、電動のインテリジェントタイプである。これでどこへでも行けなければならないので、当然ながら坂道は極力無くし、階段は廃止、トイレも広いものしか赦されない。電車や飛行機、自動車などの乗り物は設計のし直し必至、更には道路や家なども設計し直しになる。

というわけで、これはさすがに無理だ。だが、大規模なショッピングモールとそれに併設するマンション、といった形なら可能だろう。これは以前

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/blog-post_31.html

として紹介した街を、更に車椅子前提で設計するようなものになる。この場合、家や教室、事務室などのサイズは更に広くなるが、天井は若干低くて良い。それ以外に大きな変更は必要ない。

この世界で実現できることは、フレキシブルシティ構想で提案したような「完璧な人流・物流の自動化」「完璧なラストワンマイルの実現」と考えてもらって問題ない。これに加え、「車椅子前提メタバースとのシームレスな接続」もできるようになる。

例えば、普段は普通に学校に通うのだが、感染症が流行した際には、全く同じような教室メタバースに「登校」することで、支障なく授業を続けることができる。先生や友達の顔がアバターになってしまうが、視線や移動の仕方が全く同じなので、違和感を低減することができる。

また、観光旅行を計画していて、それが何らかの不具合で中止になってしまったとすると、旅行会社はVR体験で次善策を打つことができる。天候不順などのときでも同じような対処が可能である。

逆に、旅行や出張などの出先で、自宅や会社に用事ができてしまったとしたら、現地でXRグラスを装着してVR空間に入り、仮想的に自宅に戻ることもできる。現実を反映した空間にしておくことで、例えば忘れ物の位置まで把握できるだろうし、書類がどこにあるかも探せるだろう。

また、街に出ていて道に迷った時、一時的に仮想空間の同じ街の同じ位置にジャンプして、そこで検索を掛けたりAR表示をしてもらったりして場所を確認した後、現実空間に戻って移動する、といった芸当もできるようになるだろう。

だが、隠れた真のメリットとでも言うべきことがあって、それは「車椅子使用者の真に公平な扱い」である。現代社会は歩行がデフォルト、車椅子は例外の扱いだが、この社会では車椅子がデフォルトなので、既存の車椅子使用者は例外からデフォルトに変わる。トイレや移動の不便が無くなり公平になるので、逆に不慣れな新米を尻目に活躍できるだろう。

フレキシブルシティのような街を作って、そこに車椅子ネイティブな人を誘致する。その街は車椅子の人でも普通に生活でき、普通に仕事ができ、普通に勉強ができ、普通に医者に掛かることができる。車椅子生活をしている人は、日本の人口の1.6%ほどいるという。その多くは、普段の移動に苦労しているはずだ。そういう人が普通に活躍できるだけで、日本のGDPの1%くらいは追加で稼ぎ出してくれるのではないかと期待できる。投資対効果としては十分である。

2024年12月11日水曜日

境界知能の人の教育と仕事

 知能指数にしてIQ70未満の人が知的障害、IQ70以上85未満人を境界知能と呼ぶ。知的障害者が2%、境界知能が14%で、合わせて人口の16%に当たる。

こういった人たちのための教育には、特別支援学級や特別支援学校が存在する。だが、これは知的障害だけでなく肉体的障害の子供も含まれる。これを統計的に見てみると、

  • 境界知能: 約14%
  • 知的障害: 約1~2%
  • 視覚障害: 約0.1%
  • 聴覚障害: 約0.1~0.2%
  • 肢体不自由: 約0.2%
  • 病弱・虚弱: 約1%

となるそうなので、境界知能が圧倒的に多いことが分かる。そして境界知能は立場的に中途半端なため、普通学級で劣等生として扱われ、自信をなくしてしまうようなことも多いと考えられる。障害者保護などにおいても、検討の対象から外れてしまうことが多い。だが彼らは人口の14%もいる。彼らが無視されるのは社会の損失である。

ここから考えるのは、特別支援学級や特別支援学校の対象として、境界知能はふさわしくないのではないか、独立させた方が良いのではないか、ということだ。14%の境界知能者向けの教育機関を新たに設け、特別支援学級や特別支援学校はその他の障害の子供に専念する方が効率が良いのではないだろうか。

境界知能の人は肉体的問題はないので、将来的には主に肉体労働(ないしは芸術的労働)についてもらうことを前提として、知能の部分をAIなどで補完するように社会を構成する。もちろん知的部分で騙されないように、信頼できるアドバイザとしてのAIである。騙そうとする輩から彼らを保護するための社会的仕掛けさえあれば、彼らは社会で活躍できる。

肉体労働とは言っても、筋肉が必要な訳ではない。現代では機械がサポートしてくれる。知的な部分で迷ったら、(AIの)指示通り動けば良い。そしてそういった系統の職業では境界知能を優先させ、健常者の就業を制限するようにする。例えば建築業界なら建築業界が全てそのようなAIをデフォルトとする。こうすると、平均知能以上の人は建築業界にはいなくなる(厳密には監督など指示系統には必要)。そういう人は知的労働に廻ってもらう。

こうなると、少ない人口の中で各々得意分野に棲み分けができるので、社会全体の効率は良くなるし、今まで活用できていなかった境界知能の人が生き生きと働けるようになる。効率化の程度は10〜20%くらいは行けるのではないかと思う。今でも境界知能の人は社会に出ているが、この仕掛けが回ればもっと活躍できるだろうし、所得も上がるだろう。AIを用意するコストは、当初は大きいだろうが、これは国が補助をしてやればよい。

社会的仕掛けとしては、境界知能認定を行う必要がある。免許のようなものだ。この認定を受けると上記のような職業に優先的に就業できるようになる。また法律で、認定者に対して直接あらゆる契約をすることは禁止として、AIないしは担当カウンセラー経由で行うことが義務付けられる。

これは買い物のようなものも同じで、例えばコンビニで買い物をするにもAIの確認が必要である。ただ、その内容をいちいちチェックするのではなく、金額や頻度などから怪しいと思えば分析する、くらいの介入になる。一方で高額な契約や継続的な契約は一切認められない。このためにも、当人の現金やクレジットカード・電子マネー等は全てAIが把握するようにする。AIの手に余るものは、担当カウンセラーないしは専用コールセンターが24h365dで待機しており、音声での相談が受けられる。

雇う企業の側にはライセンスが必要であり、定期的な審査もある。認定者への作業要求が過大でないこと、適切な支払いがあることの確認が必要である。その代わり、対応のための費用は国の補助が出る。

このようなAIが出てくるのはまだ数年掛かるだろうし、その信頼性が確認されるのにも更に数年掛かるだろう。5〜10年後くらいを目処に、こういった社会制度の整備を検討してはどうかと思う。

また、これは知的障害以外にも同様のことが考えられる。例えば四肢障害において、ロボット義手やBMIのサポートを前提とした知的労働への参加を補助するようなものだ。外国人なら自動翻訳など、事情に応じた機械やAIの補助とその資格認定、国の補助を組み合わせる。

境界知能の人は人口の14%もいる。この数は無視できない。彼らの有効活用は、社会の効率化になっているし、彼らの尊厳も維持向上できる。少子高齢化への対策としても有効である。

注目の投稿:

USB-C充電式単3電池の危険性について

 気になったので少し調べてみたら、あまり好ましい結果ではなかったことをご報告する。結論として、USB-C充電式単3電池を使うのは、現時点では推奨できない。自分としても使う積もりはない。 今回も生成AIを分析に使用した。使用したのはCopilotである。なお、Copilotの出力...

人気の投稿: