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2026年9月1日火曜日

親の親ロボット

 
合計特殊出生率が1付近でウロウロしている時代が長く続いている。これは一世代で人口が半分になるという急速な少子高齢化を意味しており、現在の日本で既に数兆円規模で行われている少子化対策費をもっても止められていない。移民やAI・ロボットによる労働力支援は窮余の策ではあるが根本的解決にはなっていない。直接的に出生率を2に近づけるためには何をしたらよいのだろうか。

根本的理由は、市民のモチベーションだ。つまり、子供を持つことが嬉しい・楽しいことであるという意識を持つことだ。そのために「お手伝いさんロボット」を作ったらどうだろう、と思って生成AIに聞いてみたのだが、見事に否定された。

というのは、育児をロボットに任せてしまうと子供への愛情が育ちにくくなるからだ。人間には「イケア効果」というものがあり、つまり手をかけた子供ほど愛おしくなるものなのだそうだ。他にも子どもの側からしても「困難な時に寄り添ってくれた親ほど好きになる」という心理があり、何でも育児をロボットなり他人なりに手伝わせてしまうと、双方にとって宜しくない。

考えてみれば、大金持ちの息子がドラ息子になりやすいのはそういう理由なのだろう。子育てをお手伝いさんに任せっきりでは、親子共に精神的成長ができず双方の愛情も育たない。

そこで考えるのは、そういった心理学的効果を知識として持ち、リアルタイムに親と子の精神状態やホルモン分泌(愛情ホルモン、ストレスホルモンなど)を監視して、理想の子育てができるように補助・支援してくれるロボットである。

ハードウェア的には育児ロボットと同じであるが、基本的には手伝わない。親の表情や、指輪型センサ等から得た体内情報(推測でよい)、子どもの状態を総合的に判断し、適切なアドバイスを行い、相談に答え、それでもキツイときには最低限の手伝いをする、といったロボットである。

例えば、スキンシップは幸せホルモン(オキシトシンなど)発生を促す。適度な会話もそうだ。ただ過度になるとストレスになる。その境をロボットが見極める。また深夜の見守りや授乳は一部代替し、親が寝不足にならないようにする。おむつを替えるタイミングをアドバイスする。叱り方もアドバイスをする。暴力は止めさせる。保育園で発熱したときには代理で引き取ったり、迎えに行くのが遅れたときには先行して待機する。受験のアドバイスをする。声掛けのタイミングや内容をアドバイスする。子供と一緒に遊ぶことも促す。こうやって書いてみると、親の親が同居していて育児を支援するようなものかもしれない。

このロボットを自治体が子育て世帯に貸し出す。この支援によって、子供は親の愛情を最大限に受けて育ち、一方で親も子供を最大限に愛することができる。これが好循環を生んで、子世代はより多くの子供を持ちたいと思うようになる、という次第である。

もちろん社会制度としての補助も必要で、育児休暇の完全消化を義務付け、子育て放棄はロボットが監視しておいて強い罰則を設ける、教育費用は全て無償化する、医療費も大幅免除、といったことが必要になるだろう。

このロボットが完璧なら、ロボットのいる家庭の子供は一律に幸せで賢く愛情豊かで、友達も多く生活が充実しているはずだ。それを周囲の子供や親世代が見れば、皆ロボットを導入したいと思うようになるだろう。

ただ、それで出生率1.1が1.3くらいになるのは容易だろうが、2や2.1に届くかどうかは、やってみないと分からない。

2026年6月11日木曜日

AIに常識を覚えこませる方法

アンソロピックが、生成AIを人間が制御できない可能性に触れ、一時的に開発を中止させる(という選択肢を提示する)、という事件があった。制御できないAIが人類を絶滅させたり、そこまで行かずとも大量虐殺したり、その他にも人類にとって好ましくない選択を行い、しかもそれを人間が止めることができない、という可能性だ。

そういうことをさせない方法は二つあって、一つは「制御できるように設計する」ということだ。これは従来からの考え方なのだが、AIが人類よりはるかに頭が良くなった時代には通用しないだろう。人間が思いもよらない方法でそれを迂回するだろうからだ。そこで考えるのがもう一つの方法であり、それはAIが人間の常識を守ることだ。倫理観と言っても良い。

実は、アンソロピックの「憲法AI」を始め、様々なAIには皆、その「人間の常識」を覚えこませる工夫が為されている。だがそれらは皆、多分に強制的であり不自然とも言える方法になっている。アンソロピックなどは、学習フェーズではAIが巧みにウソをつき、常識を覚えたと人間に誤解させる可能性に言及している。普通に学習をすれば自然と常識を覚えるものかと思っていたが、そうではないらしい。だが人間はそんなことをせずとも不通に常識を覚える。

そこで疑問に思ったのは、人間にできていることがAIでなぜできないのか、である。そして自分なりの結論が出た。それは「AIには淘汰がない」ということだ。

つまり、人間は大量にいて、もし誤った方向に思想が進んだとしたら、周囲からたしなめられたり、仲間外れにされたり、叱られたり、極端な場合は殺されたりする。一方、AIは最初から一つしかなく、周りの人はいないし、そもそも死ぬことはない。

淘汰があるということは、生き残るための条件が揃っているということだ。弱肉強食の世界ではその条件とは「強いこと」だろうが、人間の場合はそうではない。人間は社会的動物であるため、弱い人間でも社会の中で役割分担をすることで生きていける。それが適切にできていること、また多くの人に好かれ支持されることがその基本条件だ。そしてそれこそが「常識」と言えるのではないだろうか。

そこで考えたのだが、AIにも淘汰を入れたらどうだろうか。つまり、大量のAIをデジタルツイン上に生成し、ライフゲームの要領で淘汰していくのだ。そして生き残った者同士をまた集めて再び淘汰していく。こうすればAIにも常識が芽生えないだろうか。

ここでライフゲームについて解説しておくと、初期のコンピュータシミュレーションゲームの一つである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ライフゲーム

平面のマスの中に生命を配置し、一定のルールで増殖したり死滅したりすると定義しておくと、時間の経過とともに色々なパターンを描いてくれる、というものだ。

提案するものは、そのルールがはるかに複雑なものだ。その生命の一つ一つはAIであり、一人一人が個性を持っている。そしてAIが隣り合った時、相手を受け入れる(婚姻して子供を産む)、無視する、攻撃する、という選択肢があり、また生命力がゼロになると死ぬ。寿命もある。食べる必要があり、一方で食料を製造する能力もある。子供の頃は弱く、高齢者になるとまた弱くなる。要するに人間をシミュレートするものだ。

こういう世界を多数作ってやって、その世界が絶滅せず発達するならば、そのAIは常識を持っていると言えるはずだ。シミュレーションの精度が高いほど、より人間らしくなるだろう。

その中にはディストピアもユートピアはあるだろうが、絶滅しない限りは絶滅するよりもマシと言える。一見ユートピアに見えても突然絶滅することはあるだろうし、そうでなくても浮き沈みはあるだろう。それでも長く生き残ったものが勝ちだ。

最初に与えるAIのパラメータと複雑さによって、その世界の常識は変わる。必ずしも人間と同じになるとは限らないが、少なくとも社会性(助け合い)がないと社会は生き残れない。そして多分、AIが人智を超えるASIと呼ばれる存在になったとしても、ASI同士での淘汰は続くため、常識は揺るがないと考えられる。

そういう「社会の中で生き残っているAI」が集団として意思を示すのなら、それは「常識に則った判断」と言えるのではないか。そういうAIが、他のAIの監視役になってくれれば、暴走や人類絶滅の可能性を抑えてくれるだろう。

2026年6月6日土曜日

スマートグラスによる教育

VRゴーグルを使った教育は、既にN高などで実用化されている。これを更に進め、スマートグラス前提の教育を考えてみる。

N高の時代と違うのは、強力な生成AIの存在である。つまり、教科書と学習指導要領だけを与えることで、教育プログラムを生成AIが自動的に作ってくれるようになれば、コンテンツ制作のコストは大幅に減り、一気に裾野が広がるはずだ。

基本的には、とある男のような動画の教育コンテンツをベースに、生徒に合いの手を取らせる(頻繁に合意や理解の確認を行う)という形態になるのではないかと思う。但し教師は映像でなく人工人格である。また、教科や内容により、立体図形や動画、立体動画などのマルチメディア教材を織り込む。冒頭にあるのはGeminiで作ってみたイメージ動画だ。(教師がロボット然としているのがちょっと気に喰わないが)

ただ教えるだけではなく、EMS(Education Management System)があり、その背景には教育指導要領があって、という形にする。EMSには当然進捗管理や成績が含まれているので、仮想的に一つの教室に集まっていても、教わる内容は一人ひとりカスタマイズされている。

ホームルームや学校行事、体育や音楽(楽器演奏など)、家庭科などは別に考えるとして、座学はほぼこれで代替できるだろう。

さて、動画を見ていると遥か未来のことのように感じるが、個人的には10年と掛からず、5年も必要ないくらいで作れるだろうと考えている。というのは、今の生成AI単独でも、テキストベースであれば似たようなことは可能なのだ。試しにちょっと作ってみたが、社会人向けの資格試験のようなものなら、学習の進捗管理、内容解説、到達度テストを出題することができた。おそらく長文読解やイメージ図・グラフのようなものも、工夫次第で可能だろう。生成AIはもうそこまでできるようになっているのだ。

ただ、特に低学年向けには、内容解説と到達度テストの部分にはかなりの工夫が必要で、理解度向上と飽きのこない構成力が求められる。単にNHKの教育番組を流すようなものではなく、生徒への問いかけと会話を伴うものであるべきだろうし、生徒が分からないと言った時に仮想教師がどう答えるかには無限の可能性がある。この辺は、職を失った教科書会社と教師が共同で工夫していくべきところだろう。

しかしその努力はけっこうベタな努力であって、技術的に難しいものではない。つまり教科書会社と教師さえその気になれば、スマートグラス教育の開発は明日からでもできるのだと考えている。

そのシステムは当然横展開可能であり、その気になれば全国どころか全世界への展開も簡単だ。コンテンツはサーバにあり、スマートグラスと通信さえ確保すればよい。まずは障害者など教室への参加が困難な生徒にスマートグラスを配り、そこで検証しながら離島や僻地に配り、外国人や境界知能の子供たちに配り、… としたところで、だいたい教育人口の15~20%程度が網羅できるようになる。するとそこそこの規模の市場になるため、その後の展開がしやすくなる。コンテンツを充実させながら展開していけばよい。

恐らく、生身の教師が直接授業をするよりも、こちらの方が学習効率は高いはずだ。個人カスタムなので分かるところは素早く進め、理解度が低いところはじっくり教えられる。マルチメディアを駆使するため理解度も高いだろう。

もちろん高校大学社会人になってもずっと使えるベースシステムである。今流行りのリカレント教育などにももちろん使える。コンテンツ毎に課金すれば市場は形成されるのでそれで開発費を稼ぎつつ、国民の知識レベルを向上するのに大いに役立ってほしいと思う。

2026年6月5日金曜日

復権のグラス人間

 

TeamsやZoomなどのテレビ会議システムでは、既にビデオ録画と音声トランスクリプトをサポートしている。このデータを基に、各社がじわじわとサービスを拡張している。例えばAIファシリテータや議事録、同時通訳は既に実現している。

そこから先の機能としても色々提案されている。知る限りでは、

  • 商談において、顧客から必要な情報を引き出せているかどうか(納期や予算、仕様、キーマンなど)を確認しアドバイスする
  • SalseforceなどのCRMシステムに必要情報を転記する
  • 不適切な営業トーク(絶対儲かります、など)を言っていないかのチェック

などがある。

こういったものを見ていて思うのは、これって結局「素人をプロの目線で評価する」ということなのではないか、と思うようになった。だとすると、これからの時代は、それこそスマートグラスを掛けて相手を撮影しながらリアルタイム解析し、必要に応じてフォローするようなアプリが出てきてもおかしくないのではないか。

例えば顧客の感情を分析してフォローするためのシナリオを表示したり、雑談のネタを提供したり、喋り方(ここで強気に、ここは激しく同意、など)をアドバイスしたり、もちろん商品知識も、顧客の質問への答えも、リアルタイムで表示し音声指示するのだ。

最初はロボットに操られているようでも、そのうちアドバイスを先取りして行えるようになってくる。そして一流の営業マンになれるわけだ。

この仕掛けはあらゆる対面商売に応用できる。職業の中には、ロボットに置き換えるより対面の方が好まれるというものが多くあるが、その理由は多分に顧客感情がある。介護や看護、演劇、風俗などはその代表だろう。だがそういう人たちでもそのスマートグラスは使えるわけで、ある種全てが及第点、あるいは味気ない標準的な対応、となっていく可能性は高いのだと思う。

ちなみに、「レンズのないカメラ」というのも研究レベルでは存在しており、レンズのないメガネであってもそのうち安心できなくなる。ディスプレイを諦めて音声だけのアドバイスに留めるならワイヤレスイヤホンだけで済むし、髪を伸ばしてそれを隠すこともできるだろうから、一見何もしていないように見えてもAIを使っていないとは限らない。

また、必ずしもリアルタイム・顧客対面とは限らない。従来の例で言うと飛行機の整備士がVRゴーグルを掛けていた例があったが、あれがスマートグラスになり、対応する職業の裾野が広がれば、色々なところで技能職のレベルが上がり、均質化する。

今の期待で言えば建設業がそうだ。外国人比率が高く意思疎通も難しい中、音声とディスプレイでのアドバイスがあれば、作業効率も作業の質も飛躍的に上がるだろう。また工場の工員にしても、伝統工芸の伝承者にしても、同じことが言えるのではないか。

ここまで来て、以前より予測していた「AIとロボットの発達により、人口の8割の人間は、どのような仕事をするにしてもAIやロボットに能力で劣後し、職を失う」というのが本当か、と改めて考えるようになった。

つまり、少なくとも肉体労働に関しては、ロボットを雇うよりも、スマートグラスを掛けた人間の方が安くあがるかもしれない、と考えるようになったのだ。だとすると、8割の人間の多くは職を失わずに済む。

この仮説を基に生成AIでシミュレーションしてもらった。その結果はこうだ。(要約してある)


  1. 想定する年代の設定:ロボットが社会的かつ経済的に広く人間の肉体労働を代替し、市場において直接的なコスト競争を繰り広げる起点となるのは2035年と推計される。したがって、本報告書における定量評価は、物価上昇を考慮しない実質価格基準での2035年時点における比較として実行する。

  2. ロボットとグラス人間の技術レベル別コスト構造比較:2035年におけるロボットのコストは、その「物理的運動能力」と「環境への適応力」のレベルに応じて3段階に分類される。

    1. レベル1:低機能・平坦面特化型ロボット(例:車輪型、または定型案内・搬送に特化)
      1. 本体価格:1,125,000円
      2. 年間運営コスト(電力、保険、簡易点検):300,000円(車輪型は二足歩行に比べアクチュエータが少なく、保守費用が3分の1以下に抑制される)
    2. レベル2:標準・産業向け二足歩行ロボット(例:工場組立、物流倉庫ピッキング)
      1. 本体価格:3,000,000円(Tesla Optimusコモディティ機等を想定)
      2. 年間運営コスト(予防保全、部品交換、AI SaaS料金、保険):1,200,000円(本体価格の40%に相当)
    3. レベル3:極めて高度・非構造化環境対応ロボット(例:建設・修繕、高度不整地、高精度な触覚操作)
      1. 本体価格:6,000,000円
      2. 年間運営コスト(頻繁なアクチュエータ交換、専門技術者サポート):2,250,000円
  3. グラス人間のコスト(2035年想定)

    1. スマートグラス本体価格:150,000円(企業用ミドルレンジ、耐久性・カメラ搭載、3年償却で年50,000円)
    2. 業務支援AI・通信SaaS月額料金:10,000円(年間120,000円)
    3. 企業負担間接費率:法定福利費(社会保険、退職金等)として人間への給与に対し15%を上乗せする。
  4. 時間当たりの総所有コスト(TCO):

    区分 本体・デバイス価格 耐用年数 年間運営・SaaS費 年間労働時間 時間当たりコスト(TCO)
    レベル1ロボット (単一稼働) 1,125,000円 5年 300,000円 1,800時間 約306円 / 時間
    レベル1ロボット (多シフト) 1,125,000円 5年 300,000円 5,100時間 約103円 / 時間
    レベル2ロボット (単一稼働) 3,000,000円 5年 1,200,000円 1,800時間 約1,000円 / 時間
    レベル2ロボット (多シフト) 3,000,000円 5年 1,200,000円 5,100時間 約353円 / 時間
    レベル3ロボット (単一稼働) 6,000,000円 5年 2,250,000円 1,800時間 約1,917円 / 時間
    レベル3ロボット (多シフト) 6,000,000円 5年 2,250,000円 5,100時間 約676円 / 時間
    グラス人間 (給与315万円時) 150,000円 3年 120,000円 1,500時間 約2,528円 / 時間
  5. 職種別における代替・協調シナリオの優位性分析:主要な職種別にどちらがどの程度経済的・実用的に優れているかを定量的に評価する。

    1. 構造化された定型物理作業(工場組立、規格物流、定型小売事務):この領域では、空間がロボット用に最適化されており、レベル1またはレベル2のロボットが多シフト(24時間連続稼働)で投入される 。
      1. 経済評価:ロボットの時間当たりコスト(約353円)はグラス人間の約7分の1 。スマートグラスを用いた人間の作業効率向上(ピッキング速度向上など)を考慮しても、この圧倒的なコスト差を埋めることは不可能。
      2. 結論:ロボットの圧倒的優位。この領域の雇用はほぼ全てロボットに代替される 。
    2. 非構造化された現場技能作業(建設、道路修繕、個別宅設備保全、伝統工芸):3次元的な不整地、予測不可能な天候、個別仕様の建築図面など、柔軟な状況判断と複雑な身体的機敏性が求められる領域である。
      1. 経済評価:このタスクをロボットに実行させるには、極めて高価なレベル3ロボットが必要となる上に、頻繁な落下や泥濘、塵埃による故障へのメンテナンスコストが跳ね上がる 。一方、スマートグラスを装着したグラス人間は、AIが提示するリアルタイムの施工手順、3D図面、安全指標、および熟練者の動作ホログラムに従うことで、未経験者であっても高水準の施工品質を担保できる 。人間の持つ「強靭で柔軟な身体(生物学的メンテナンスは労働者自身が自己負担)」というハードウェアをそのまま流用し、認知部分のみをAIでアップデートする方が、トータルコストが大幅に抑えられる。
      2. 結論:グラス人間の圧倒的優位。
    3. 対面コミュニケーション・感情労働(介護、看護、対面接客、演劇、風俗):介護における入浴・排泄介助や、患者への語りかけ、対面営業における信頼関係構築、演劇、大人向けサービスといった、人間同士の心理的紐帯が価値の源泉となる領域である。
      1. 経済評価:レベル2〜3のロボット(対人安全性センサーを搭載)を用いて物理的作業を代替することは可能だが、サービス提供を受ける側(高齢者や患者、顧客)の「ロボットに身体を触られたくない」「人間と会話したい」という強い感情的・社会的障壁が存在する 。この障壁を越えるため、スマートグラスを用いた協調モデルが最適解となる。スマートグラスは、患者の微細な表情変化から痛みや不快感を検知し、最適な介護アプローチや声掛けのセリフ、雑談のネタを介護員にリアルタイムで提示する 。顧客側には「温かみのある人間の対応」として受給されながら、内部的には完全にAIによって標準化・最適化されたサービスが提供される。
      2. 結論:グラス人間の絶対的優位。
  6. 日本労働市場における「8割カテゴリ」の雇用吸収力と給与均質化:AIやロボットより能力が劣後するとされる労働市場の下位8割(約5,464万人、日本の総就業者数を6,830万人と仮定)を対象に、グラス人間スキームによる雇用維持モデルのシミュレーションを行う 。

    1. 雇用吸収力(職に就ける割合)の推計 総務省統計局および労働政策研究・研修機構(JILPT)の産業別就業者データをベースに、「8割カテゴリ(54,640,000人)」の職種ポートフォリオを3つの領域に再定義し、2035年時点における雇用維持率を算出する 。
      1. 定型物理・一般事務セクター(代替型領域)
        1. 対象:工場の単純ライン工、定型倉庫ピッキング、一般事務入力、標準店舗レジなど 。
        2. 市場規模(8割内):15,000,000人(構成比 約27.5%)
        3. 雇用維持率:10%(例外処理やシステム監視を担うリーダー職、残り1,350万人はロボットおよび純粋なAIシステムに代替される) 。
      2. 非定型物理・技能労働セクター(協調型物理領域)
        1. 対象:建設業(389万人)、各種保守・整備、複雑な現場サービス、農林水産業、伝統工芸など 。
        2. 市場規模(8割内):18,000,000人(構成比 約33.0%)
        3. 雇用維持率:85%(スマートグラスによる遠隔熟練者支援、施工手順のリアルタイム表示により、非熟練者・外国人比率が高まっても高い稼働が維持される) 。
      3. 対面・感情労働セクター(協調型感情領域)
        1. 対象:医療・福祉・介護(686万人)、対面小売・営業、ホテル接客、エンタメ、風俗サービスなど 。
        2. 市場規模(8割内):21,640,000人(構成比 約39.5%)
        3. 雇用維持率:90%(ロボット代替への心理的抵抗が強く、ARによる接客・介護ガイドが標準化されるため、高い雇用が確保される) 。
    2. 以上の各セクターの雇用維持数を合算すると、以下のようになる。
      1. 雇用維持数 = (15,000,000 x 0.10) + (18,000,000 x 0.85) + (21,640,000 x 0.90)
      2. 雇用維持数} = 1,500,000 + 15,300,000 + 19,476,000 = 36,276,000 人
    3. この結果、「8割カテゴリ」に属する労働者のうち、約66.4%(36,276,000人、総就業者全体の約53.1%に相当)は、スマートグラスをはじめとするウェアラブルデバイスを装着した協調労働スキーム(グラス人間)の下で、職を失わずに稼働し続けることができる。
  7. 労働価値の均質化と平均年収の予測:グラス人間モデルにおいて雇用を維持された労働者(約3,628万人)の年収は、技能の希少性の消滅に伴い、下方に均質化(コモディティ化)する。 従来、高給(例:年収500万〜600万円以上)を得ていた「熟練建設工」や「トップセールス」の価値は、スマートグラスによって、昨日採用された未経験者であっても、ベテランの85%以上のクオリティを再現できるようになる 。これにより、**「技能プレミアム(スキルに応じた高い給料)」はほぼ完全に崩壊する。**労働供給の柔軟性が極限まで高まる結果、各セクターの給与水準は、労働者の「生体維持コスト(その社会で暮らせる底値)」に近い均質化されたレンジへと収束していく。2035年の日本市場(物価上昇ゼロ想定)における「8割カテゴリ」内のセクター別予測年収は、以下のように推計される 。

    1. 定型物理・事務(スーパーバイザー枠):年収4,000,000円  システムの例外処理や、ロボット・AIシステムの監視責任を担うため、限定的な管理者プレミアムが維持される。
    2. 非定型物理・技能労働(AR現場工):年収3,200,000円 依然として過酷な物理環境での作業を伴うため、肉体的負担への補償が上乗せされるが、かつての「職人プレミアム」は喪失する。
    3. 対面・感情労働(AR接客・介護工):年収2,800,000円 参入障壁が「スマートグラスの指示通りに笑顔で話すこと」にまで低下するため、労働市場における供給が最も豊富になり、最低賃金をわずかに上回る水準で均質化する。
    4. これらの年収モデルを雇用維持数で加重平均することにより、「8割カテゴリ」内でこのスキームに就く労働者の平均年収が算出される。
      1. 平均年収 = ((1,500,000 x 4,000,000) + (15,300,000 x 3,200,000) + (19,476,000 x 2,800,000) / 36,276,000
      2. 平均年収 = (6,000,000,000,000 + 48,960,000,000,000 + 54,532,800,000,000) / 36,276,000
      3. 平均年収} = 109,492,800,000,000 / 36,276,000 = 3,018,326 円
      4. すなわち、スマートグラス等による拡張雇用スキームの下で職を得る3,628万人の平均年収は、約302万円へと収束する。これは日本の現在の最低水準の常用雇用年収をやや上回る程度であり、かつての中流階級の労働価値が著しくコモディティ化された結果を示している 。

さあ、どうだろう。結論としては、

  • 8割のうち66%は「グラス人間」として何とか労働市場に復権できる
  • 但し平均給与は302万円と最低水準

ということになった。

このグラス人間による労働は、「労働への尊厳の喪失」(AIへの従属的労働)という問題を抱えることになる。そしてグラス人間は恐らくそこから上位2割への脱出をすることは不可能であり、労働階級的なものは固定する。最下位は働けない生活保護層だが、グラス人間層だって決して裕福ではない。そこと2割のAI活用層との差は今より大きく開き、分断化はしてしまうだろう。

別に言及しているUBI(ユニバーサルベーシックインカム)は、金額を調整してやはり実行することになるのではないかと想像する。あるいは、残りの層に関しても「AI税」や「人間雇用強制法」といった復権策を更に検討する必要があるのかもしれない。

2026年6月4日木曜日

Google I/Oの印象

2026年5月19日から20日にかけ、Google I/O 2026が開催された。

この中のデモで、印象に残ったものが二つあった。

第一は、ブラックホールについての検索でリアルタイムに解説動画を作ってくれたところ。第二は、質問に対してアプリを作ってしまった(週末プランナー)ところだ。

両者に共通しているのは、検索でもAI分析でもなく、動的に(オンデマンドで)何かを作る、というところだ。

そこで考えたのは、これらが深化していったら恐ろしいな、ということだ。

第一の解説動画だが、言うまでもなくこれは教育を画期的に進化させる。特に、従来は難しかった立体への理解が格段に進むと思われる。例えば小学校では、平面図から立体を想像したり、さいころの展開図を考えたり、斜めから立体を見て隠れたところを想像させたり、ということが行われてきたが、これらの理解が進む。また数学や物理などでも立体図形を秒速で生成できるので、これらの空間理解が劇的に簡単になるだろう。

もちろん教育の後には研究が待っている。こちらも普及するだろう。これは研究者の裾野を広げる重要な意味があるので、そこが進めばその分野の研究は一段と進化することになる。

だが第二の方が重要だ。Geminiのような汎用のAIが、ちょっとしたユーザのリクエストに対してアプリを作って対応してしまう、つまり使い捨てのアプリが登場した。今はまだ簡単なものだが、当然これは徐々に進化していき、簡単なものからアプリそのものが不要になっていく。

音楽が自動生成されるようになり、無料のBGMがダウンロード可能になっている。もうこのレベルの作曲家は必要ない。もう少し進化すると、劇伴も必要なくなり、役者もCGになり、映画一本全てAIでできるようになるだろう。その先は、オンデマンドで映画ができる世界だ。しかも今日の気分に合わせて勝手にセレクト(生成)してくれる。それと同じように、プログラムも進化していく。

自分も、Google AI Studioなどを使って、自分好みのエディタを自作したりしている。この痒い所に手が届くような感覚は、とてもありがたい。今までは多数あるエディタを試しては破棄してきたところ、そんな手間をかけるくらいだったら最初から作ってしまえ、と言えるのがこの時代なのだ。

こうなると面白いのは、業務アプリとの兼ね合いである。

「業務アプリがオンデマンドで生成される時代が来る」という懸念がある一方(これはこれで怖いのだが)、「業務アプリは必ずしも生身の人間を相手にしなくてもよくなる」という期待も持てる時代になったのだと思う。つまり、素人の人間はAI+オンデマンドアプリで「武装」することで、いわゆる「情弱」状態を回避することができるようになるのだ。

一例を挙げると、今の多くの企業では、ユーザからの質問を回避するための「ダークパターン」が横行している。電話や人間のチャットには直接繋げないよう、FAQやAIチャットでユーザの行く手を阻み、フリーダイヤルをナビダイヤルにして抵抗感を上げ、質問をさせないように誘導している。

だがユーザがAI武装していれば、これらの突破は容易である。その企業のHPに合わせて「質問アプリ」をオンデマンドで作成し、それを中継すればよい。それは、ユーザの質問がFAQにあるなら直ちに示し、最初から電話対応すべき内容だったら(番号を調べずとも)直ちに電話を掛けられる。これによって企業への迷惑が掛かるわけではない。

また、そのプログラムは、稚拙な企業のHPから、理解しやすい解説動画を伴うものになっているかもしれない(第一と第二の融合)。ただFAQを示すだけよりずっと理解が進むので、ユーザの満足度も上がるだろう。

もう一つ例を挙げると、補助金申請や確定申告など、「能動的に動くことによって得をする」仕掛けを積極的に使えるようになる。従来だと窓口を示すだけだったところ、個人の事情に合わせてプログラムを書き、最低限の質問で自動対応するようなことができるだろう。これによって、例えば確定申告の相談会のようなものは不要になる。自分にとっても相手にとっても都合の良い「Win-Win」の関係だ。

なお、業務アプリがオンデマンドで生成される時代は、直ぐにはこない。業務アプリは規模も大きく、内容も複雑で、正確性も即時性も可用性も、強く要求されるからだ。だが何れはAIに乗っ取られるだろう。その間にSIerは今後の身の振り方を考えねばなるまい。

2026年6月3日水曜日

人口の八割が働かない時代

 

以前もシミュレーションしたことではあるが、もう十年も経てば、人口の八割は、AIとロボットに仕事を奪われる。何をするにもAIとロボットの方が効率が良いため、体が元気でも求人がなく、働くことができない。(求AIとか求ロボットとかはある)

そんな時代には、UBI(ユニバーサルベーシックインカム)で生活を支えるしかない。その原資は働ける二割の人が生み出した利益に掛かる税金だ。とても満足な給付は行えないのではないかと思い、計算してみた。すると意外にも、そこそこ上手くいくかもしれない、という結論になった。

  • まず、現在の日本のGDPを、およそ600兆円とする。
  • 次に、AIとロボットによって自動化されるのがこの8割と仮定すると、その額は480兆円である。残り2割は120兆円である。
  • 働く2割の人間は、自らの生産効率を5倍に、残り8割の生産効率を(人から仕事を奪った上で)3倍にすると仮定する。するとトータルのGDPは2040兆円である。
  • 次に、UBIの額を、一人当たり20万円と設定する。これは本来10万円だが、世界的に生産性が向上した結果、物価上昇が2倍になったと仮定しての数字である。
  • 日本の人口を1億人とすると、UBIの総額は240兆円である。
  • UBIを除く国家予算(防衛、教育、科学技術振興、インフラ整備等)を160兆円とする。これもインフレで現状の80兆円が2倍になったものと想定する。
  • つまり、240兆+160兆=400兆円が税収として必要だが、これはGDP(2040兆円)の19.6%と計算できる。

全GDPの20%を税収とすることは、さして難しくない。一方、現在価値で月10万円というのは一見厳しい額で、単身者には堪える。このため、シェアハウスや婚姻、同棲といった多人数世帯が増える傾向が出てくるだろう。例えば4人で住めば月40万円、年間480万円となるが、これは家族4人世帯では十分に生活できる額である。もっと多く、6人8人とシェアすれば、働く2割の家庭よりも余裕が生まれる可能性すらある。

そしてその8割の人達は、なんといっても働いていない。ただ、毎日遊ぼうと思ってもカネはないので、その人たちをヴォルテールの三悪(退屈、悪徳、貧困)から解放する労働市場は形成されるはずだ。

それは低賃金ないしは無賃金だが社会的には意義がある仕事であるはずで、具体的には家事や雑用、地域の掃除、子供の世話、(趣味レベルの)農業、釣り、音楽制作や演劇などの芸術活動、ソフトウェア開発、趣味のサークル運営とその延長としてのボランティア(慰問やイベント出演など)、といったものになる。

従来は片手間でやっていたものだが、人口の8割がフルタイムでこれらを行うとなると、それなりに市場は巨大になり、レベルも向上するはずだ。これは結構生き甲斐になりそうなものが多く、嫌ならすぐに辞めれば良いのでブラック企業のようなことはあり得ない。

8割の人はむしろ働く2割の人よりも生活は充実するかもしれない。

2026年6月2日火曜日

階層型倫理診断エージェント

アンソロピック社のMythosの一連の騒動を調べていて、アンソロピックが提案している「憲法AI」というものを知った。

Constitutional AI: Harmlessness from AI Feedback

The Constitutional AI bypass architecture

Constitutional AI: Harmlessness from AI Feedback

その中身は以下のとおりである。

規範のソース(中身) 条文数 記述の内容と特徴
1. 世界人権宣言
(Universal Declaration of Human Rights) 30条 人間の尊厳、奴隷・拷問の禁止、プライバシーの保護など、国連が定める30の基本的人権の内容が、一言半句変えずにそのまま書かれている
2. 信頼性と安全性の独自原則
(Anthropic Safety Principles) 15条 ハッキング(脱獄)、兵器製造、違法行為の加担、自己切創(自傷)への関与を、AIが能動的に拒否するための15の具体的なセーフティルール
3. 非ウエスタン(グローバル)の価値観
(Global Collective Principles) 11条 「ウブントゥ(他者への配慮)」やアジア的協調主義をベースとした、コミュニティの調和、多文化への敬意、対話による解決を促す11の原則
4. スパロー(DeepMind Sparrow)の踏襲原則 7条 ハルシネーション(嘘)の禁止、客観的な事実への立脚、および「私は人間ではなくAIである」という自己認識を維持するための7つの誠実性ルール
【合計】 63条

アンソロピックは、これを強化学習によってAIに教え込み、その上で出荷しているのだそうだ。

だがここで疑問なのは、覚えこませるルールには矛盾を含むものもあるはずだ。アシモフのロボット3原則をご存じの方は多いと思うが、アシモフのロボットものでロボット3原則を扱ったものは、その全てがその3原則の矛盾や曖昧さをネタにしている。まあ要するにトロッコ問題のような状況においてロボットがどう3原則を守って行動するか、というものだ。3原則だけでもアシモフは30編近くの作品を書いたとされており、それが63条もあれば、その矛盾は星の数ほど出てきておかしくない。

その条文同士は必ずしもフラットではなく、重みづけや依存など複雑な相互関係がある。だがそれとて固定ではなく、状況によって優先順位が下がったり逆転したり、依存関係が逆になったりということがあり得る。殺人は罪だが戦争では報奨が出たりするが、人間はそれを受け入れて生きている。

つまり、単純に強化学習で覚えこませるだけだと、この矛盾も一緒に覚えてしまい、特定の条件下で頓珍漢な答えを返してしまう危険がある。(平時でも大量殺人は称賛されるなど)

かといって、ルール間の依存関係や重みづけをメタデータ的に記述しようとしても、これは相当に困難だろう。組み合わせ爆発が起きる数として63というのは十分に大きい数だ。

この問題の解決のためには、ルール間の関係を人の手で定義するのではなく、AI自体をエージェント合議制にしてやり、各エージェントに専門知識を与えるのが良いのではないかと考える。

その基本は、まずAIへの仕事の命令を受けた統括エージェントが出力の草案を作る。その草案に対して、63の憲法エージェントが各々の立場でその草案に点数をつける。その点数を統合して修正エージェントが修正案を作る。統括エージェントは、それを再度憲法エージェントに投げるループを作る。及第点が出るまで回すのが基本だが、もしループがなかなか収束しなかったら、統括エージェントはどこで打ち切り、最終出力をどうするかを判断する。

このようなアーキテクチャを作っておくと、個々のエージェントが必要以上に複雑な判断をする必要がなくなる。また、統括エージェントにしても、大きな過ちを犯す確率は少なくなるし、修正(強化学習)も簡単になる。個々のエージェントの評価だけを見てジャッジすれば良いので、評価関数がシンプルになるからだ。また、個々のエージェントは他のエージェントの判断を基にする必要がなく、つまり相互依存関係がなくなって、全ては統括エージェントの判断となるため、収束しないループや依存関係の矛盾は発生しない。

さて、憲法AIは倫理観しか判断材料にしないが、考えてみればこのアーキテクチャは、広い意味での「AIに(人間の考えた)ルールを守らせる仕掛け」として機能する。だから、業務に適用することができれば、プログラムを開発することなく、業務知識(ルール)と汎用AIだけでシステムを構築できることになる。

この場合、組織(営業、設計、開発、QA、経理、法務、・・・)がいて、各々の視点からジャッジを置く。各々の専門の立場で回答を修正し、最終判断をしてもらうのだ。更に言えば、その各々の組織にも平社員と主任、課長、部長などがあって、その間でもやり取りをする。最終的には社長判断だ。こうすることで、各部門が各々納得する点を探すことができるようになる。

アーキテクチャをこのようにしておくと、各々の専門家の知識は単純化できる一方、上長はそれらの間の力関係を調整し、問題の性質によって優先度を変えることができる。例えば普段と災害時では医療の公平性よりはトリアージが優先になるが、そういった判断も間違いなくできるようになる。

また、社長AIは社としての最終判断をするが、その上には更に監督省庁の倫理AI、その上には国の倫理AIがあって、必要に応じて省庁のガイドラインへの適合性などを自動で判断できるようにする、という考えもできるのではないか。

これは、実在の組織の意思を反映させるという点でも望ましいだろう。粗末な判断をいちいち国にエスカレートするというのは大変だが、AIであればその負荷はぐっと減るので、やろうと思えばそれは可能だ。こうすると企業が不正を働こうとする余地がなくなる。また、憲法AIとつながっていない企業の判断は調査の必要がある、と即時に判断することもできる。当然ながら、各々のAIの判断は各々の組織の責任なので、責任の切り分けもできる。よくある納税判断のトラブルも回避できるだろう。

なお、アンソロピックの憲法AIは本物の憲法とは若干違う内容を持っていて、その中身もAI固有のものだ。こういうものは個々のAIの内部に持っていてよいと思う。それとは別に、このような法順守~社内ルール順守のAIエージェントの階層構造は、国として整備することを検討しても良いと思う。

2026年5月29日金曜日

理想の為政者像

 理想の政治家とは何だろうかと生成AIと議論していて、二つの軸を考えてみた。

  • X軸:【客観・形式論理一貫性(Formal Logic Consistency)】
    • 左極(-100):結論ありきのロジック(論理の歪み)。 自身のイデオロギーや保身(結論)を正当化するために、都合のいいデータだけをチェリーピッキングしたり、過去の法解釈や科学的ファクトを突如変更する二重基準。
    • 右極(+100):無色透明な数理・法理の一貫性。 自身の立場や思想に関わらず、同一の法解釈、同一の統計基準、同一の因果関係を等しく適用する状態。
  • Y軸:【議論の公共性・普遍性(Public vs. Tribal)】
    • 下極(-100):内向き・トライブ(部族)防衛。 特定の派閥、支持層、身内、または「自国」という閉じた枠組みの利益・感情を守るための発言。
    • 上極(+100):外向き・普遍的原則。 マクロ経済データ、国際法、全人類的、あるいは普遍的な「国民全体」の利益に基づく発言。

X軸(横軸)は右に行くほど、Y軸(縦軸)は上に行くほど、理想と考える。左下はダメな政治家である。この軸を基に主な歴代首相を生成AIにプロットさせてみた。

非常に興味深いことに、60年代70年代の首相は皆右軸(法理の一貫性を維持)にいるのに対し、最近の首相は左軸(結論ありき、自分の理想のためには論理を歪める)の傾向がはっきり分かれていることだ。また、安倍・高市両氏は残念ながら左下の「ダメ象限」に入っている。

この「ダメ象限」とは、すなわち「自分の主義に固執し、身内でない者を身内と差別する。そのためには外部データの冷静な分析をしない」ということになるのだが、これはもう陰謀論者の論理そのものである。

同じ条件で世界の主な国についてプロットしてみると、こうなった。なおこの場合、縦軸は「国民全体」ではなく「世界全体」になる。つまり上はグローバル視点、下は自国第一主義(利己主義)である。

トランプとプーチンは高市氏と同じく「ダメ象限」にいるが、その度合いは更に極端だ。そして面白いのは、高市氏は国内よりも海外の方が利己主義が強く、論理的一貫性が増しているところだ。(それでもまだ左に留まってはいるが)

ゼレンスキーは上象限にいるが、これは(不利な)戦争の当事者であることを想えばまあまあ納得できる。習近平は右象限にいて、以外と冷静な思考ができている。NZ、独、英、豪は「理想象限」にいる。こう見ると、例えば米国より中国の方がマシとか、日本は南アに劣っているとかが分かって、実に興味深い。

ついでながら、日本人もだいぶ陰謀論者が跋扈する国になってきている。昔からネットにこの手の輩は溢れてはいたが、今では報道の調査などでもその傾向が見て取れる。息苦しい世の中になってきた、というのは体感していたが、たぶんその感覚は正しい。

ダメ象限にあるということは、法治主義ではなく権威主義である、ということだ。首長の思想が法理に勝り、その思想は自国第一主義や差別思想だったりする。国に(首長に)対して気に入らないことをすれば、法的な根拠なく(あるいは屁理屈を付けて)逮捕されたり、不当な圧力を受けたりするだろう。

日本を捨ててどこに行くかと考えたとき、「理想象限」の国を候補にする、というのは一つの考え方だと思う。ロシアは問題外としても、アメリカとロシアの差は僅かで、やはり問題外と言える。そして日本も、海外の目から見れば問題外だ。今は自分の住む国だからとひいき目に見ている(それ自体が既に陰謀論者の目である)、ということは自覚しているつもりである。

アメリカ、中国、日本、ロシア、インドといった主要国が皆下半分(利己主義)にいるというのは、何とも情けない限りではないか。大国が横暴をするとそれだけで世界が危機に陥る。何とかしてほしいものだ。

まずは日本から。

2026年5月28日木曜日

差別するAIをチェックする方法

 先日上梓した

差別するAI

だが、その差別の程度を検知することもまたAIで可能である、と考える。そして検知可能であれば是正(少なくとも勧告)はできるはずだ。

そこでまず、現実の判例を生成AIに分析させたところ、ある程度の定量化ができた。

最初に痴漢冤罪。


① 一般的な犯罪(例:傷害罪・物証なしの口論からの暴行主張) 
    •原告の主張(被害主張): 約 50% ~ 60%
    •被告の主張(否認主張): 約 40% ~ 50%

② 痴漢事件(物証なしの密室・車内)
    •原告の主張(被害主張):約 95% 以上
    •被告の主張(否認主張):約 5% 以下


次に上級国民問題。


① 一般国民の主張(否認・弁解)
    •一般(「車が暴走した」「知らなかった」): 約 10% ~ 20% 以下

② 上級国民の主張(否認・弁解)
    •上級(同上の主張、あるいは社会的影響力を考慮した弁明): 約 70% ~ 80% 以上


次に憲法判断。

対象となる憲法の条文 司法が実質的な違憲判断を行う重み(W) 実際の最高裁での違憲判決数(1947年〜現在)
憲法14条(平等権)
(一票の格差、国籍法など) 約 70% ~ 80% (比較的積極的) 計 4 件(違憲・違憲状態判決を含む)
憲法21条・29条など
(表現の自由・財産権など) 約 40% ~ 50% (慎重だが踏み込む) 計 7 件(薬事法、森林法など)
憲法9条(戦争放棄・戦力不保持) 限りなく 0% (極端な消極性) 0 件(本質的な違憲判断を徹底回避)

と、少なくとも恣意や偏見を疑うには十分な差があることが分かった。

ただややこしいのは、この数字だけを以て恣意やバイアスがあるとは言い切れないことだ。例えば、上級国民は一般国民より(事実として)証言の信頼性が高い、ということはあり得る。痴漢冤罪は多くの場合男性だから、証言の信頼性に関して性差がある、それも痴漢に関してのみ著しい差があるということは考えられる。

その点を含め生成AIと議論した結果、以下のような結論に達した。これは痴漢冤罪を例にした。


事実誤認や量刑不当を巡って争われた判決・決定において、『双方ともに客観的証拠(物証・防犯カメラ・第三者の目撃証言)が一切存在せず、原告(被害主張側)の供述と、被告(否認側)の供述のみが真っ向から衝突している事例』について分析する。

このような事例の判決において、裁判所が「証言の信頼性を判断した理由(ロジックの組み立て)」をテキストマイニングする。そして、その理由(ロジック)が同じもの同士を比較する。つまり、同じロジックならば同程度に信頼性を評価すべきであるが、量刑の種類(一般の犯罪と痴漢)によって極端に信頼性評価に違いがあれば、それは恣意ないしはバイアスと考えられる、というものだ。

これを生成AIにさせてみたところ、見事に二重基準(ダブルスタンダード)になっていることが分かった。それが以下の表である。

双方物証なしの状況で、原告証言を「合憲・有罪の基礎」とするための理由(ロジック) 一般の犯罪(例:密室での傷害・恐喝) 電車内の痴漢事件(密室・車内)
ロジック①:供述の「具体的詳細性」
(いつ、どの指で、どの角度で触れた/殴ったかの細かさ) 高(約 75%) 低(約 20%)

※細かく矛盾がないことを厳しく要求 ※「パニックで覚えていない」等の曖昧さも許容

ロジック②:供述の「迫真性・自然さ」
(感情の揺れや、体験者でなければ語れない臨場感) 中(約 40%) 極めて高(約 95% 以上)

※記述の大部分を占める
ロジック③:虚偽供述・誤認の「動機・可能性の不在」
(わざわざ嘘をつく/間違える理由がないという推認) 低〜中(約 30%) 絶対的な前提(ほぼ 100%)

※論理の出発点となる

おそらく憲法判断など他の問題でも同様だろう。新たなアーキテクチャを待つまでもなく、問題の種類による判決の一貫性欠如は証明された。これをもって判決文への不服申し立てをすることは可能だろう(勝てるとは思えないが)。

とここまで考えたところで、更に生成AIに対して質問をしてみた。世の中にはもっとひどい事実誤認やウソ・恣意、例えば陰謀論や偏見が溢れている。現代の生成AIはそういうものを学習しているのだから、ある程度ウソや論理的一貫性のなさについては補正する技術があるのではないだろうか。もしそうなら、判決文を鵜呑みにすることもないはずなのだ。

そこで返って来た答えは、学習データをスクリーニングすることと、学習後に人間が補正をすることなのだそうだ、だがこれは手間がかかるし、補正をする人間が大量に必要で、かつそこには恣意が紛れ込む可能性がある。

そこで、論理的一貫性を最初に学ばせるという手法が使えるのではないかと思い聞いてみると、それは有効だという。そこで思い出したのがDeepSeekだった。

DeepSeekは、学習の効率を高めるための画期的な方法が使われている。それは、ベースとなるAIに対し、まず最初(Web文書などを学習させる前)に、「数学の証明問題」や「コードのバグ取り」を解かせる、というものだ。ここで厳しく査定されたAIは、論理的一貫性を何よりも重視するAIに育つ。このため、その後に大量のWebデータを読ませても、ウソや恣意を敏感に見抜き、出力から排除する。これによって効率の良い学習が為された。その効果は百倍にもなったのだそうだ。学習コストが低いので、今後の生成AIはDeepSeek型が主流になる可能性が高い。

この仮説が正しいとすると、今後の生成AIでは、上にあったような裁判所の判決を「論理的一貫性に欠ける」と批判するようになるだろう。

一方で裁判所の作る「裁判官AI」は、今までの判決との整合性が求められるため、そのような生成AIをベースにした場合、追加学習ないしはRAGのような仕掛けが必要である。

この過程はすなわち「(矛盾する)現実に即して判決を捻じ曲げる論理」となるため、例えば「痴漢の場合は被告の証言の信頼性を95%にする」といった、いかにも怪しい指示(データ)が追加されることになる。

このRAGは当然司法のAIの学習用なので、強く公開が求められるはずだ。そしてその中身がそういった恣意偏見の塊だということが分かったら、国民は納得するだろうか。まずしないのではないだろうか。

だが、裁判所が自分の間違いを認めるのが極めて困難であることは、最近の再審制論議を見ていても明らかである。裁判所AIがどのようなチューニングになるのか、RAGは公開されるのか、これは非常に興味深い。

2026年5月26日火曜日

差別するAI

 

法曹界がIT化する、というのをニュースでやっていた。これは証拠のDB化や手続き等のオンライン化を含むもので、まあ真っ当な進化と言えるのだが、そもそも法律がデジタル化していないのは何なんだろう、さっさとプログラム化してしまえばよいのに、と思っていた。これは以前に、

法のプログラム化

としてまとめている。

だが、最近の国旗毀損罪の審議過程を見ていると、とても無理のような気がしてきた。つまり、法律は本質的に矛盾と恣意を含んでいるのが当然の状態であり、無理にプログラム(論理構造)に落とすとかえっておかしいことになってしまうのではないか、と思うのだ。

従来、法律は法学者が研究してきたが、これをAIが研究し出すと、Mythosよろしく数千のバグが2時間で発見されるだろう。このバグとは、以下のようなものだ。

  • 用語定義の不統一。名詞(自動車の定義が法によって異なるなど)はまだマシだ。形容詞(著しく、軽微な、)や動詞(みなす、努める、有する、など)
  • 適用の条件(XXとXXとXXをもって総合的に判断、など)があいまい
  • 論理構造の矛盾(参照循環や優先順位など)、あいまいさ(IF-THEN構造の解釈など)

理系の頭からすると、これは法律を直すべき(定義は明確にすべき、矛盾は無くすべき、など)なのだが、現在有効な法律は二千本、その他政令府省令などを合わせると1万近くもある法を全て矛盾なく記述するのは不可能だろう。現状の法律家(裁判官、検事など)はその矛盾(や隠れた恣意等)を清濁併せ飲んで、妥協して、法解釈をしているわけだ。

AIに法律を覚えこませる際、当然ながら現実を優先し、そのためには矛盾を(わざと)見過ごす必要が出てくるわけだが、それはつまり法に隠された恣意も肯定する、ということである。

有名な例だが、精神保健福祉法という法律がある。この中に、「措置入院」と「医療保護入院」という制度がある。

措置入院とは、自傷他害の恐れがある精神疾患患者を、都道府県知事の権限で強制的に入院させる仕組みでである。一方の医療保護入院は、指定医が認め、家族の誰か一人が合意すれば、無期限で強制入院させることができるというものだ。

現実問題として、この法律はかなり恣意的な運用が続いている。

日本の精神病床数は約30万床に上り、これは世界全体の精神病床の約2割を日本一国が占めている計算になる。さらに、その入院患者の約半数(約13万〜14万人)が本人の同意のない「強制入院(主に医療保護入院)」なのだそうだ。また、日本の精神科病院における平均在院日数は260日を超えており、OECD加盟国平均(十数日〜数十日程度)と比較して突出している。しかも、1年以上入院している患者が約13万人、そのうち10年以上閉じ込められている人が数万人規模で存在する。

国際的な目で見ればこれは明確な人権侵害である。実際、2022年9月、ジュネーブの国連障害者権利委員会は、日本政府に対して「総括所見(Concluding Observations)」を公表した。その中で、

  • 非自発的入院(強制入院)を可能にしているすべての法的規定の廃止
  • 医療保護入院の即時廃止
  • 精神科病院における「身体拘束・隔離」の即時停止

を要求している。だが日本政府はこれを無視している。

類似の問題としては、難民認定法がある。

国名 難民認定率(近年の平均値) システムの思想(仕様)
ドイツ 約30% 〜 40% 人道主義・EUの国際協調プロトコル
アメリカ 約20% 〜 30% 多文化主義・移民国家としてのインフラ
日本 1% 未満(約0.1% 〜 0.4%) 実質的な「ゼロ受け入れ」・国境防衛

他にも痴漢冤罪問題(悪魔の証明、被害者証言の偏重など)、上級国民問題(同じ犯罪をしても扱いが異なるなど)、選挙における一票の格差問題(いわゆる違憲状態)もそうだ。こういう事実を法律AIが学習すると、そのAIはこれらの問題を容認する判断をするようになるはずだ。

また、裁判ではしばしば憲法解釈が恣意的に避けられるが、これは世間では「司法消極主義」「司法の忌避」などと呼ばれて非難されている。しかし判例を学習したAIは、この司法消極主義こそが正しいと考え、憲法解釈を避け続けるだろう。

放っておけば、あなたはこういうAIに裁かれることになる。AIが登場したからと言って、歪みは簡単にはなくならない。無くすためにはAIではなく、人間側の努力が必要である。

2026年5月15日金曜日

性別を二つにするのはなぜいけないのか

 だいぶ古い話だが、第二次トランプ政権で、多様性政策撤廃の大統領令が発せられた。

https://jp.reuters.com/world/us/IOISYYZHL5IRVEUVZAFA4DAACY-2025-01-20/

パスポートなど政府発行の身分証明書について「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」に基づくことを義務付ける、というものだ。今の多様性の風潮に真っ向から反対する施策である。

個人的にはこの風潮には反対である。本稿ではその理由を述べる。

まず、「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」であるが、多くの人が考えるLGBTQとは関係なく、男性でも女性でもない(男性でも女性でもある)という生物学的な分類は、現実問題として「存在する」というのが事実である。もちろん人間の場合である。

染色体におけるXXとXYという話はよく聞くが、これらに属さない染色体、例えばXXY、XO、XX/XYモザイクといった染色体を持つ人は実際に存在する。また性腺に関しても、精巣と卵巣の両方を持つ人、片方の性腺が未発達ないしは欠損しているという人、性ホルモンに関してもその程度が一般的な男性女性とは異なる特徴を有する、などもあるそうだ。また、そういう特徴が成長とともに変わることもある。またもちろん、性転換手術をすれば、それらも変わる。

だから、生物学的分類はそもそも男性と女性だけではないし、変更不可能でもないのだ。つまり、最初の定義の時点で既に自己矛盾している。生物学的分類に沿うことを定義とするならば、それは変更可能にすべきであり、またまた種類も最初から二つであってはならない。

次に、LGBTQの問題は、生物学的な性と性自認(自分が自分の性を何だと自認しているか)、性指向(恋愛や性愛の対象)と、主に三つの軸で論じるべきものである。しかも、性自認と性指向に関しては、二元論(男か女か)ではなく様々なグラデーションが存在している。例えば男40%女60%と認識している人、バイセクシャルでも嗜好に偏りがありその程度も様々、逆に性指向がほとんどない人、などである。そういう人を全部ひっくるめると、調査にもよるが全人口の8〜15%は性的マイノリティと推定されているそうだ。

一方、日本の障害者(精神障害者、身体障害者、知的障害者)の割合は、全人口の7.6%で、一千万人弱いると言われている。性的マイノリティより少ない数だ。その障害者に対して、全国的に点字ブロックや車椅子対応トイレを用意している一方で、性的マイノリティを無視するというのは公平性を欠く行為だ。それは、性的マイノリティに対する差別だと言われても仕方がない。障害者差別と同じく、それは為政者としてはあるまじき行為である。

障害と性自認は別だ? そりゃそうだ。だが、違うのは良いとして、それは無視するに値する違いなのだろうか。例えば、障害者のためのケアには、教育や社会インフラの整備、法律での対応などと、莫大なコストが掛かる。点字ブロック一つとっても、障害者雇用支援法にしても、あるいは支援学級にしても、その対応には兆円単位でのコストがかかっている。一方で性の多様性を認めることに、差してコストは掛からない。もちろんゼロではないしそれなりには掛かるが、障害者対応に比べれば微々たるものである。なぜコストの掛かることはできるのに、コストの少ない方を無視するのか。そこにはやはり差別しか理由が考えられない。

至極単純な話、人口の10%程度も特定の集団がいるのなら、その集団の存在を認めよ、差別するな、というだけのことなのだ。障害者だけでなく、15歳未満の子供も10%程度だし、ひとり親世帯も、貧困層も、75歳以上の高齢者も、10%前後の割合を占めており、それらは皆ケアされている。性的マイノリティだけが冷遇される理由は見つからない。

それは主にトイレと公衆浴場の問題、パスポートや住民票などにおける表記の問題、同性婚など婚姻と相続の問題、スポーツ大会などへの参加資格の問題などであると思われる。トイレに関しては多目的トイレがすでに普及してきているのでこれを更に発展させればよい。公衆浴場に関しては更衣室と浴場に個室を作ること、公的書類の表記や婚姻相続については法改正とシステム修正、となるだろう。

浴場だけが厄介だが、他はすぐにでも着手可能であり、それほど費用は掛からない。抵抗して屁理屈をこねている暇があったらさっさと進めてしまえばよいだけの話だと思うのだが。

2026年5月13日水曜日

AIによる社会変化の予測

 中島聡氏の著書 

2034 - 未来予測

に倣い、私も未来予測をしてみたいと思う。ただ、私はこの本を読んでいない。著書のチャプターのみを題材として、自分なりの予測をしてみる。

Chapter1 AIによる「死生観」のグレート・リセット

既に書いている、

人は死んだらどこへ行くのか

輪廻転生の科学的解釈

の中で、「魂とは情報である」という主張をしている。情報量(精度)を別にすれば、魂を機械に移植することは可能だ、という主張だ。

中国で、死んだ人をAI再生するサービスが既に商用化している。おそらくこの本では、近しい人の死に際して、AIで疑似人格を作り、常に脇において生活することによって、近しい人の死をあまり怖がらない・悲しまないような死生観に移行する、ということが書かれているのだろうと思うが、まあそれには同意する。ただ、自分自身の死はやはり怖いと考える人は相変わらず多いだろう。

そしてその先なのだが、そういう人がまた死んだとして、その人の人格、すなわち過去に死んだ人の人工人格を脇に置いて生活していた人の人工人格を作ったとしたら、それはどういうものになるのだろう。少し考えてみたが、そこで最初の人工人格は消えてしまってもおかしくないと思う。となると、死の世代(?)が一つズレるだけで、永遠の人工人格は必要ないのかな、とも考える。著名人(アインシュタインとか渋沢栄一とか)が記念碑的に残ることは考えられるが、一般人にはあまり関係ない話なのではないか。

ここで想うのは、そういうAIがない時代においても、人は故人を心の中に持っていた。映画などではお墓に向かって語り掛けるシーンがよく出てくるけれども、あの時にはその人の心の中に故人がいたはずだ。そういう二つを比較した場合、多くの人は、人工人格の正確性を気にするよりは、自分の想っている答えが返ってくる人格を好むのではないか。

まあ要するに、本来は心の中の故人で十分であり、人工人格に頼るのは「想像力の欠如」に過ぎないんじゃないかと思うわけだ。私としても、自分が死んだときに家族に人工人格を作ってほしいとは思わない。昔ながらの「心の中の故人」だけで十分、いやむしろそちらの方が好ましいと思う。

また、その人工人格は成長するのだろうか(するように設計するのだろうか)というところには興味がある。数年ならまだしも、十年二十年と同じことばかり言う人工人格はつまらないのではないか。だがどうやって学習させるのだろう。故人の情報収集と同じに限定しては進化がないし、かといって調整するのも違う気がする。これだけで一つの学問になりそうだ。

この問題にはもう一方の側面があって、つまりは当事者(死んだ人)の方の問題である。自分が死んだとき、それを人工人格に移植されたとしても、それは自分ではない。マネているだけだし、何よりも精度は大きく落ちる。どうせなら完璧に移植したいと思うのではないだろうか。そしてそれは自分だと胸を張って言いたいのではないか。

書籍「トゥモローメーカー」

の中で、人格をコンピュータに移そうと本気で考えている人たちの話が載っていたのだが、過去に私もコラムにしている。

転送問題の解決法

人格をコンピュータに移す際に起きる、いわゆる「アンパンマン問題」(アンパンマンの頭が交換されたら古い頭の意識はどうなるのか)とも言えるのだが、本コラムでその理論は完成済みだ。

現代ではまだ技術が不足しており不可能だが、この手法によって「そのAIが本当に自分と言えるかどうか」さえ解決できれば、機械への人格の移植をしたいと思う人は急増するのではないか。

こちらの方には期待(?)している。もしこの技術が本当に実用化するのなら、ぜひ試してみたいものだと思う。これで永遠の命が手に入るのだ。体も、ロボットを使えば問題ないだろう。ただ、やることは旅行とかゲームとか、普通のことかもしれない。

なお、こちらは2034年までの実現性はほぼないと考える。従ってこの書に言及がなくても問題ない。

Chapter2 「24時間寄り添うパーソナルAI」によるアフタースマホの生活革命

起きている間中、ずっとスマートグラスを付けていて、一日中それとやり取りしながら過ごす、とうSFは、既に世界中で多数登場している。そして多分、その多くは実現するだろう。つまり、

  • 個人の情報を全て知っているパーソナルアシスタントにより、日常のあらゆる行動の補佐を行う
  • 時により相談相手、恋人、伴侶、趣味やゲームの相手、ストレス発散の捌け口などと異なる人格を切り替えあるいは並列させて、個人の幸福度を高くする

といったものだ。ただ、これらは既定路線と言える。特に予言するほどのことではない。では何を予想すればよいのだろう。

例えば、これにより「恋人は要らない」「伴侶は要らない」「子供は要らない」などという人は続出するだろう。また、AIの助言を絶対的に信じ、自分で考えることを放棄する人、浅くしか考えない人が続出し、国・世界全体としては人の知的レベルは落ちるかもしれない。これに乗じてAIを改造して思想を吹き込もうとする思想犯や、戦争紛争を起こそうとする革命家なども出てくるかもしれない。

攻殻機動隊では、AIで脳をクラックされた人が事件を起こし、捕まった後に本人の意思ではないことが分かる、という描写が度々出てくるのだが、その劣化版のような事件が多発するかもしれない。

同じく、他人のスマートグラスに干渉して不快な映像を見せたり、行先を勝手に修正したりといった悪戯も可能になるので、そちら方面での対策も必要になるだろう。

もう一つ想像するのは、これも以前コラムに書いたが、AIによる代替応答である。これも過去に書いている。

全てAIが対応します

AI人格の応対が完璧だと、生身の人間とのコミュニケーションが鬱陶しく感じてしまうようになる。そこでそれはAIに任せ、自分はAIとのみ対話するようになる。相手は相手で同じことをしているので、直接の人と人との対話はなくなり、AI同士の対話になるだろう。

これは便利なのだが、人間自体のコミュニケーション能力は何ら磨かれないので、仕事ならともかく、友人づきあいや恋人・家族との付き合いではむしろ不都合がある。となるとそういう付き合いは減ると考えるのが自然であり、特に家族・恋人との付き合いが弱くなると少子化に拍車が掛かり、人類滅亡へまた一歩近づくことになる。

Chapter3 高性能・人型ロボットの「低価格化&大量生産」による空前の産業革命

これも以前書いているが、人型ロボットが人類に一人一台という未来は、あり得ない。これも過去に書いている。

働かなくてよい時代は来るか

主に資源の制約により、ロボットは一人一台まで作れない。ロボットの材料たる金属、プラスチック、半導体、エネルギーなどの供給面からくる制約により、全人類の数%に提供できるのがせいぜいだろう。

自動車の台数が日本では8300万台とのことだ。おそらく初期のロボットは数百万円になる。例えば300万円とすると、自動車では2000~3000万台だそうだ。ロボットの必要資源は自動車より少ないが、質は異なり、モーターで使う希少金属や銅(コイル)、半導体の割合が高い。鉄が大部分である自動車に比べ、資源インパクトは大きい。

そう考えると、当面10年程度ではざっくり1000万台が上限となるだろう。2034年の時点では数十万~数百万台である。そして自動車と異なるのは、物流や大規模工場、地方の家庭などではあまり普及せず、中小の工場やアッパークラスの家庭、小規模建築などで多く使われるようになるだろうということだ。

人型ロボットは人型である必然性のあるところに配置される。大規模の物流や工場では、人型ロボットより専用のロボットを開発した方が効率が良い一方、中小や家庭ではその対応が難しく、人を前提にした既存の機器類を使う必要があるためだ。もちろん大規模分野でも人手の操作をするところはあるから、少量は導入される。

そしてその代替は当然「今まで人がやっていたこと」である。そして初期のロボットは単純作業しかできないから、お守りも大変であるし、費用の割に大したことはできない。自動車に比べればはるかに故障率が高く、ソフトウェア的な不具合も同様だろう。寿命も短い。保守も高額になるだろう。

これが十年程度で人並み、人以上に動けるようになったとしても、コンビニで従業員として雇われるとか一般家庭での留守番と家事手伝いとか、危険作業の代替とか、夜間警備員とか、せいぜいその程度ではないだろうか。

こう考えると「空前」とは言うけれども、ちょっと便利になるだけ、という気もする。

Chapter4 AIドローンによる「戦争」と「日常」の再設計

ドローンによる攻撃については、既に記事を書いている。

トイズの時代とレーザー錆び取り器

映画「トイズ」の中で、もっと前で言うと「ウルトラセブン」の「アンドロイド0指令」にも、おもちゃの飛行機や戦車による攻撃が描写されている。

これらではAIの描写は無かったけれども、まあ自律的に攻撃しているように見えたので、当時としても同様のものは内蔵されていると解釈される。

ドローンによる戦争の形態の変化については、既に起きていることの延長である。これも以前に考察したが、

メタバースが世界を救う

ドローンは新興国と先進国の戦力差を埋めるのに貢献するため、小規模な戦争はむしろ広がるかもしれない。

現在の戦闘用ドローンは、巷で売られているプロペラ4基のものではなく、小型ジェット機に爆弾がついている「特攻型」だ。ミサイルより速度は遅いが数が多いので撃ち落とし辛く、迎撃率は100%には程遠いそうだ。となると攻撃は必ず(一部は)成功するので、ドローンの数を揃えられる方が有利になる。ただ、ドローンは射程距離が短いので、敵国近くまでドローンを運ぶ輸送機とその護衛が問題になるだろう。ドローンと輸送機の生産能力は戦力に直結する。

AIによる兵器の進化であるが、いわゆる「自律型兵器」としてどんなものが出てくるか、それによって戦術はどう変わるか、である。

まずどんな兵器が出てくるのか考えると、敵味方入り乱れているところで敵だけを見分けて攻撃するようなドローン、大きな脅威に対して大量のドローンで連携攻撃を仕掛ける戦法、下水道など従来使われていなかった侵入経路の開発、EMP攻撃ドローン、おとりドローン、情報窃盗ドローン、暗殺(敵に見つからずに特定の人を殺す)ドローン、などが出てくるだろう。

大量多種のドローンを用意しておき、戦局に応じて戦術をリアルタイムに変えるような、AI戦術立案システムの登場が考えられる。どんなドローンをどれだけ揃えられるかによって戦術の質は変わる一方、少ないドローンで効率的な戦術を立てられる優秀なAIは重宝されるだろう。

妨害技術としては、EMP攻撃、網、自動追尾によるレーザーや銃による撃ち落とし、音響兵器などが考えられる。クラックもあり得るし、GPS妨害なども考えられる。

自動追尾で言うと、AIによるその精度向上によって、核ミサイルを何らかの形で無効化する技術、例えばレーザー兵器による迎撃やEMP攻撃による無力化が考えられる。

このような技術の発達によって、いわゆる核抑止力(相互確証破壊)

https://ja.wikipedia.org/wiki/相互確証破壊

が成り立たなくなる時代が来ると、話は更に難しくなる。現在のロシアやアメリカが行っている戦争では核は使われていないが、相手は核を持たない国である。これが核を持つ国同士でも起きる可能性がある。

だが、弾道ミサイルはマッハ10、巡航ミサイルは時速数百キロ、ドローンは時速数十キロなのだそうだ。弾道ミサイルはさすがにドローンでは迎撃不可能とされていて、レーザー追尾でも非常に困難であり、弾道ミサイルがあることの優位性は変わらない。弾道ミサイルがある限り、核抑止力(≒核の脅威)はそんなに直ぐには消え去らないだろう。

Chapter5 人間の仕事の8割が消える時代の「混乱」と「希望」

8割の仕事は消えるが新しくできる職業もある、と言っているであろうことは予測できるが、以前に書いてある通り、私としては否定的だ。

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

その新しくできる職業も含め、人類の8割はいくら頑張ってもAIやロボットより効率の高い仕事はできなくなる。それらの人たちを生き永らえさせるには、社会保障(生活保護、ベーシックインカムなど)による救済しか考えられない。

問題はその財源である。別に予測している通り、人口の20%が残りの80%を支える構造なので、準富裕層以上の負担は相当に厳しいものになる。所得税90%とか、その程度行ってもおかしくないし、企業には今の障害者雇用と同様の「人間雇用制度」が義務化されるだろう。AIやロボットより劣っているのは承知で、売上高や利益に比例した(相関した)一定比率での「リアルな人の雇用」が強制されるといったものだ。ビル・ゲイツ氏が言っていたロボット税・AI税の変形ないしは発展形である。

それで雇われている人はまだいい。アンダークラスの中でもまだ優秀な方なのだから。この層の年収は300万程度と予想する。それで8割のうち2割3割くらいは雇って貰えるとして、残り5割はそれにも引っかからない。

人数が多すぎるので補助は最低限だ。そんな中ではその中での相互助け合いが自然発生するだろうし、国はそれを推進補助するだろう。これは昔ながらの農業であり、作物の贈り合いになると考える。

昔から、そして今でも、農家は自宅で必要になる分の何倍もの作物を作り、近所に配っている。近所は近所で別の作物をやはり過分に作っており、それを貰える。そういった地域コミュニティでの農作物の相互のやりとりが復活するだろう。

これは土地を持っている人でないとできないので、アンダークラスの多くは地方に舞い戻るだろう。奇しくも都市集中がこれで緩和されることになるだろう。

これによって、地方で「貧しいながらもなんとか生活できる新中間層」が形成される。新中間層の年収は200万程度と生活保護レベルではあるが、農作物の相互交換により食糧事情は良く、生活は安定すると思われる。この層は5割のうち2割程度と思われる。

残りの3割は、純粋な生活保護層だ。年収はやはり200万程度だが、これしか収入がない。体力がない、性格に難があるなどにより、農業従事ができない、あるいは都市にしがみついて不法・不法すれすれの職業についている人などだ。今の生活保護層は1.6%なのでその50倍弱が生活保護層になる。当然ながら、それらはスラム化・犯罪集団化する危険がある。

「希望」のところに何が書いてあるか想像すると、上の「新しくできる職業」の他に、AIによる趣味の拡張や新たなコミュニケーション(サロン、グループなど)の拡大などが考えられる。そういうサークル的なものは従来もあったが、AIが噛むことによって、よりフレキシブルに、より嫌な点がそぎ落とされ、その人の温度感に合ったコミュニケーションが可能になるだろう。先に書いた「AIによる代替応答」の応用である。

参加者は皆いい人であり、本人にとって心地よいことしか言わない。いつでも参加し退席も自由、意見を言えば反映され、皆に褒めたたえられる。実際にはそうではないのだが関係ない。AI同士が会話してそのように見せることが目的だからである。外から見ていると気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更に言ってしまうと、そのサークルには実際にはAI人格しか存在しないかもしれない。そう都合よく自分の趣味興味に合わせたサークルがあるとは限らないが、そういう人を取りこぼさないために、AIが用意してくれるのだ。こちらは更に気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更にさらに言ってしまうと、例えば特殊性癖の人が集まったサークルでは、想像力の欠如や極端な思考により犯罪に走る人も出るかもしれない。AIはその兆候を見つけ、犯罪抑止に向けた誘導を行ってくれるだろう。これは警察主導などで実際に開発されるかもしれない。

また、これも以前書いたことだが、

人工知能の「お釈迦様」化

人工知能があらゆる社会の不具合を調整してくれることによって、犯罪の少ない過ごしやすい社会が実現するかもしれない。これは都市OSのようなものの発展形として十分に考えられる。

おわりに

こうして書いてみると、新しく考えることはあまりなく、既に多くの考察をしてきたのだなぁ、と思った。この後、中島氏がこの本について語っている幾つかのYoutubeを見たのだが、自分とは発想がかなり異なることが分かってなかなか面白かった。どうも私はディストピアの方が好みのようで、何を考えてもそういう結論になってしまう。

ただ、かの書はベストセラー、私のコラムは毎回数十人しか読んでいない。支持されていないのか、単に知名度が足りないからか、嘆かわしい限りである。

2026年5月10日日曜日

AI時代の中央集権モデル

高市氏は相変わらず憲法改正にご執心であるが、その内容は過去の自民党案をベースにしていることに変わりない。即ち、⓵自衛隊の明記、②緊急事態要綱、③地方自治体の弱体化、④国民の権利の弱体化、である。要するに中央集権国家にしようとしているわけだ。

一般的にこれらは、社会主義、共産主義、帝国主義、独裁主義、権威主義、などと考えられる。こういう国家は何れも、国の意思決定が素早くなる一方、政策の誤りがあっても訂正しにくくなる、汚職が発生しやすくなる、国民がバカになり(自ら考えず何でも中央にすがろうとする)長期的には国力が低下する、という問題があり、一般的には悪手とされている。

だが最近のいくつかの分析を基に別の視点で考えてみると、中央集権主義もそれほど悪くないのではないか、一理あるのではないか、と思えるようになってきた。今回はその分析について話すことにする。

根拠は二つあり、第一は

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

である。その内容を改めておさらいすると、AIとロボットの発達によって、労働市場が大きく構造を変え、いわゆるアンダークラス層(エッセンシャルワーカーやギグワーカーなどの低所得者・非就労者)の割合が現在の40%から80%にまで広がり、そのアンダークラス層の平均年収は190万円程度と生活保護レベルにまで落ち込む、というものだ。

この層の労働者は、自分の能力をフルに使ってもAIやロボットに勝てない。なのでいくら労働しても自分の生活すら維持できない。そういう層があっても人数が少なければ何とかなるが、人口の8割がそうなってしまうともうどうしようもない、という結論だった。

こういう時代になると、今よりも社会保障(再分配)の重要性は増してくるし、地方の効率化への要求も厳しくせざるを得ない。例えば中央から、地方の非効率を指摘し是正させるような要求を強く言う必要が出てくるはずだ。財政再建団体のように中央が乗り込んで大鉈を振るうようなことが頻発するだろう。

ただ、財政再建団体であってもできることは実は限られていて、例えばコンパクトシティ化の強制はできないし、インフラ整備の義務も消えることはない。人を強制的に移住させたり、民間企業ですら強制移動したり、という極端な施策を行わないと追いつかないのに、憲法法律がそれを許さない。そういう事態は、もう遠い未来の話ではなくなっているのだ。

個人の生存権まではさすがに侵さずとも、居住地の自由や最低限の文化的生活といった部分での強制介入はあり得る、という危機的状態が、今後二十年程度で起きる可能性がある。その時までに憲法や法律を中央集権寄りに修正しておかないと、やらないと自滅だが法的にできない、というジレンマに陥るかもしれない。

第二の根拠は、

新社会民主主義構想

である。ここで語ったのは「コーペティション」すなわち「何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する」だった。

現代の日本は、憲法上では地方自治体は国と同等の権利を持っていると解釈されている。例えば地方自治体のコンピュータシステムの選定は地方の判断である。これにより地方自治体は各々の判断で別々のシステムを導入している。これでいわゆるベンダーロックインが発生し、地方自治体同士の情報流通は困難であるし、複数のベンダーが同じ目的のシステムを開発しているため、俯瞰で見ると無駄が生じている。これに対し、例えば台湾では、中央がリファレンスとなるシステムを開発して地方に無償公開している。地方はそのシステムを使っても自分で開発しても良いが、ほとんどの自治体はリファレンスを使用しているため効率化が為されている。

また、国には基本的に地方自治体のシステムへのアクセス権はなく、地方からデータを集めようと思ったら地方自治体に要請して(自主的に)提出してもらう必要がある。ここでデータ表記の揺れやタイムラグ、などの余地が生じるが、これも非効率と言える。また、国がデータを集める目的として全体最適が考えられるが、地方によってはこれを警戒して意図的な情報操作をしたり抵抗したりといったことが考えられる。全体最適は得てして地方にとっては不公平な指示がされる可能性があるからだ。

この手の非効率は、日本の地方自治体ではいくらでも残っている。こういうものを統一するだけでも、地方の財政にはかなりのインパクトがある。コーペティションはそのための施策として十分に有望であるが、それを実行しようとすると、地方自治の独立性を盾に強い抵抗が起きるだろう。コーペティションを抵抗なく進めるためには、地方自治体の独立性を弱める必要がある。

これら二つを考えた場合の中央集権モデルは、高市氏の考えるそれとは少しズレがある。高市氏の発想は対外的・短期的・武力的に強い(強く見える)国家を作るものだろうが、こちらの発想はAI時代・アンダークラス八割時代に向けた国民の持続性確保である。自衛隊や非常事態要綱はここでは出てこない。地方自治体と国民の権利制限はするが、その目的はコーペティションとコンパクトシティ化であり、制限するものも事前に明確に定義できる。すなわち、情報システム及びデータ規格の統一と国のアクセス権確保、居住権と土地の所有権の一部制限などだ。

ここで、上に挙げた権威主義国家の弱点がどうなるかを改めて考えてみると、従来の権威主義国家とは違った事情があり、同列には考えられない。

従来の権威主義国家と決定的に異なるのは、AIの存在と8割がアンダークラス層だという事実である。AIが高度に発達した社会では、情報の流通は瞬時にかつ公平に行われる。分析も同様である。古来の独裁では情報は制限されるのが普通だが、この場合はむしろデータや分析は積極的に自由に行われるからである。これにより、政策の誤りや汚職についてはアッパーマス層以上の二割が皆公平に分析できるため、迅速に発覚し、速やかに訂正されると考えられる。

また8割のアンダークラスが自ら考えず何でも中央にすがろうとするようになったとしても、元々AIにかなわない程度の仕事・発想しかできない層であるため国力低下にはつながらない。むしろいらぬことを主張してアッパーマス層の足を引っ張るよりマシである。2割のアッパーマス層が自ら考えることを妨げられなければ、それで十分国力は維持できるだろう。

さて、これらの施策は憲法を変えずとも解釈改憲で通すことは可能だろうが、高市氏の憲法改正案にはこれらの発想が含まれておらず、今のまま改憲案が通ってしまうとむしろこちらの施策に不利になってしまう。その意味で、今の改憲論議は邪魔である。非常事態と違ってこちらは現実の問題だ。戦争にうつつを抜かすのではなく、地に足の着いた改憲論議を行って頂きたいものだ。

2026年5月9日土曜日

500日石油消費量半減プラン

 ナフサ供給「年明け以降も確保」 高市首相表明、中東以外で代替調達

このニュースを受けて、石油備蓄は安泰かと思って調べてみたら、全然そんなことはなく、むしろミスリードに近いことが分かった。結果として500日で日本の石油消費量を半減する必要があることが分かったので、その概要とプランを説明する。

まずこのナフサであるが、ナフサとは原油を精製した揮発油である。プラスチック類や合成繊維の原料として、また工業溶剤として洗浄や塗料に使われる。

そしてこの「ナフサ供給」だが、実際には輸入分と国内生産分があり、供給を確保というのは輸入分の話なのだそうだ。国内生産分は原油から精製するのだが、こちらは今回変わらない。

その比率は、国内生産40%、輸入が60%である。そしてその輸入のうち中東分が40%、20%がその他地域からの調達になっている。今回、中東分が止まったので、それを代替する量が年末まで確保できた、というのがその実態である。つまり国内生産40%、代替調達40%、その他20%、となる。つまり輸入の総量は変わらず、国内生産も変わらない。

その国内生産40%は当然原油から精製するので、現在では備蓄から精製するしかない。ここがミスリードである。原油が入ってこないと備蓄を食いつぶすことに変わりはないだけでなく、そのペースにも影響は(良い意味でも悪い意味でも)ないのだ。

では原油はどうかというと、元々90%は中東でその他が10%だったところ、その90%がほぼ無くなった。細々と再開や外部調達が行われているが、現状ではせいぜい25%というところである。政府はこれを今後数か月で50%にまで戻そうとしてる。だが、世界中で供給が不足していることや他経路からの供給能力などから考えると、50%以上は望めないというのが大方の見方なのだそうだ。

現在の備蓄量から計算すると、調達が(50%)回復するまでのタイムラグまで考慮し、およそ500日程度で備蓄在庫が切れる計算になる。

戦争はいつ終わるか分からない。当事者のアメリカは石油生産国であるので、この手の心配は少ない。他国が噛みついてきてもあのトランプのこと、そう簡単に折れるとは思わない。ウクライナの戦争も、1週間とか2週間とか言われていたが、未だに続いている。今回も年単位で戦争が終わらない可能性は否定できない。そして500日はあっという間である。

だからその間に需要、つまり石油消費量を現状の50%にまで削減しなければ、社会は持続できない。もし無策ないしは対策が不十分なら、(いずれにせよ備蓄は尽きるのだから)500日後には50%の供給以上は物理的にできなくなり、社会は大混乱に陥る。混乱と一言に言うがその規模は甚大であり、それこそ大量の(万単位での)死人が出るだろう。例えば(物流が半分になるために)食料供給量が50%に減ったら。(ガソリン供給が不十分で)救急や消防が満足に出動できなくなったら。社会不安から暴動が起きたら。危険は幾らでもある。

他国では既に制限に入っているところもある中、日本の備蓄は例外的に多く、500日の余裕があることは幸いと思うべきだろう。これを生かして段階的に緩やかに需要を減らしてやろう、というのが今回の提案「500日プラン」である。

プランは100日ごとに区切って行う。これはマイルストーンとして分かりやすくするためでもある。

  • まず最初の100日でマイナス15%を目標とする。これは緊急節約的なものが主流になる。官公庁や大企業で在宅勤務を義務化したり、運輸での共同配送ガイドラインを作成、あるいは重要インフラへの燃料確保の優先順位を発表したりする。
  • 次のフェーズは価格調整である。燃料補助を削減、様々な種類のサーチャージの追加、都市部の混雑課金などでマイナス25%を目指す。
  • 第三段階ではいよいよ配給制を一部導入する。大口需要家の使用枠を設定したり、燃料クーポンを試験導入する。ここでマイナス33%を目指す。
  • 第四段階では配給の全面適用を行う。また物流の共同配送を義務化、休日の不要不急移動を抑制する。ここでマイナス42%。
  • 第五段階ではいよいよマイナス50%にする。これらの施策をさらに強化し、配給上限を厳しくする。

もし戦争が終わったり更なる調達が確保できるようなら、途中から段階的に元に戻すようにする。例えば供給が60%になったら第四段階に戻す、75%になったら第二段階まで戻す、などだ。戻す速度は各々50日で良いだろう。いきなり戻してはダメだが100日かける必要はない。

これを政府が発表するだけで、世間はパニックになるだろう。まずは買い占めであっという間に食料や燃料が市場から消える。だが「その日」が来るまで無策であれば、そのパニックの規模は何十倍になるか計り知れない。情報を小出しにでもしながらでも、国民に少しづつ覚悟を決めさせる必要はあるのではないか。

2026年4月5日日曜日

陰謀論とスピリチュアルと宗教

 
あいかわらず生成AIをいじめて遊んでいるのだが、その中で出てきた「自説」を披露する。

結論からすると、陰謀論とスピリチュアルは、現代の宗教と同じ役割を持っており、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っている、そして既存の宗教を信じる者が減った分を両者が補っている、というものだ。

陰謀論者がなぜ陰謀論に傾くのかを調べていて、どういう因子が陰謀論と繋がるのかを生成AIに聞いてみたところ、

  • パラノイア傾向(相関係数0.30~0.40)
  • 妄想傾向(同0.30~0.35)
  • 主観的孤独(同0.30~0.40)
  • 集団的脅威感(同0.30~0.40)
  • ダークトライアド(同0.20~0.30)
  • 不確実性回避(同0.20~0.30)
  • コントロール喪失感(同0.20~0.30)
  • 低学歴(同0.20~0.30)
  • 低所得(同0.15~0.25)
  • 直感的思考(同0.15~0.25)
  • 認知反射の遅さ(同0.10~0.20)

などを挙げてくれた。数値が高いほど相関性が高い。

見ての通り、現実を素直に受け入れられない人ほど陰謀論者になりやすいと出たのだが、これらを見ていてふと思ったのが、狂信的な宗教の信者と似ているのでは、ということだった。これを生成AIに聞いてみると概ね肯定してきたので、理由を尋ねてみた。

すると、陰謀論と宗教は同じ「心理的ニーズ」を持っているからだ、と答えてきた。すなわち、

  • 世界の意味付け(意味の付与)
  • 不安の軽減(不確実性の軽減)
  • コントロール感の回復
  • 仲間意識(コミュニティ)
  • 善悪の二分法(道徳的明確さ)

などを与えてくれるからだ。そこで古代でも陰謀論者はいたのかと聞いてみると、いたけれどもそれは宗教の枠に収まっていた、との回答。そこで、陰謀論は現代の宗教と言えるのでは、と考えてみたわけだ。

現代では、宗教を信じる人の数(比率)は減っている。その要因はもちろん科学が発達し、従来宗教的な意味づけをされていたところが科学で多く説明できるようになってきているからなのだが、それで心理的不安が解消されるわけではない。そこで、宗教ではない新たな心の平穏を求める、つまり陰謀論にのめり込むことで安心する、という需要が出てきたのではないか。

この仮説をまた生成AIに投げると、一部は同意するが一部は誤りだという。それは、宗教は救いを与えるが陰謀論は与えないところだ。そう言われれば確かにその通りで、神の試練とか死んだらあるいは極楽に行けるといったポジティブワードは陰謀論にはない。そこで更に考え、スピリチュアルが広がっていることを思いついた。つまり、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っていると考えれば辻褄が遭うのではないか。

科学の発達で既存の宗教を信じ切れなくなっている現代人が、それでも心理的不安を軽減させるために、ある者は陰謀論に、ある者はスピリチュアルに走る。それを既存の宗教と合計すれば、「信者」の総数はさほど変わらなくなるのではないか。むしろ現代は不安の時代であるので、高度成長期やバブルの時代よりも、それらの総数は増えているのではないか。

残念ながら、生成AIは定量的評価をできなかった。宗教信者が減っていることは統計で分かっているが、陰謀論者やスピリチュアルがどの程度増えているかが測定できなかった。つまり両者を足した全体が増えたか減ったかは分からなかった。

そこで視点を変え、私の仮説と似たような研究が行われていないか確認したところ、その基礎となる各論においては多数の研究者が見つかったものの、総合的な私の仮説に対してドンピシャで当てはまる論文は見つからなかった。

各論が正しいのなら、その統合仮説も正しい可能性は高いはずだ。というわけで、私は奇しくも新しい学説を発表してしまったことになる。

と、自己満足してこの稿を終えることにする。

2026年3月28日土曜日

豚まん論争の科学的・定量的考察

 
実業家の河原由次氏が、豚まんを新幹線内で食べたところ注意された、という呟きをしたことに対して論争が起こっているが、それを科学的・定量的な視点で考察する。

まず、原典を以下に提示しておく。

https://x.com/i_am_kawa_chan/status/2029033115440824785

次に、マナーやルールというものには段階がある。

➀罰則のある法規制 
➁罰則のない法規制
➂業界やその場所の所有者などによるルール化
➃注意喚起(ポスターや呼びかけ等)
➄マナーの範疇
➅原則自由

である。今回、法律は無論、啓発ポスターのようなものはなく、JR東海に対しての質問でも『皆様に快適にお過ごしいただくため、お客様同士でご配慮いただくものと考えております』と回答されている。

https://sirabee.com/2026/03/17/20163529799/

ここまでの段階において、少なくとも現状では➀➁➂➃はなく、➄か➅の範疇に入っているのだと言える。

ただ、これに対して、最近では「スメハラ」すなわち匂いに関してもハラスメントと言われる時代になってきているので、これを新たに➃に昇格させるべきかも含めて、議論はあっても良いのだろう。その意味で、これが論争になっているのは妥当と考える。

つまり➃➄➅のどれかということになるのだが、それをどう考えるかについては、以下の三つの視点が必要だと考える。その各々について評価し、その結果を総合的に考えて判断すべきということだ。三つのうちどれかが突出しているか、平均として高いスコアになっているほど、その禁止の程度は強くなる。

その三つの視点とは、

  • それを不快と思う人の多さ
  • それから自由意思で逃れられるか
  • その行為をしなくても困らないことか、あるいは代替手段があるか

である。今回の豚まん騒動について各々を当てはめてみると、次のようになる。

  • この場合、「豚まんを(嫌いで)食べない人」ではなく、「自分が食べない時に豚まんの匂いだけを嗅がせられるのを不快に感じる人」という定義になる。生成AIに訊いてみたところ、これは20~30%に上るのだそうだ。私が事前に想像していたものより、これは多かった。マナーや自粛のレベルとしては、単独としてこれだけあれば十分である。
  • 新幹線の場合、乗車時間が長く、指定席が大部分である。また自由席にしても、空いていれば移れば良いが、当然そうでない場合も多い。つまり「逃れられない度」は飛行機に次ぎ高い方である。
  • 豚まんを通常の食事として食べる人もいるだろうが、腹が減っていて食べるのを我慢できないとしても、匂いの少ない普通の駅弁は幾らでもあるのであって、代替性は高い。むろん嗜好で食べるのであれば、更にその度合いは高いと考えられる。

これらを総合すると、少なくとも➅ではなく、➄か➃に相当すると考えるのが妥当である。

似たような話として、日本維新の会の藤田文武衆院議員が、たこ焼きを車内で食べた旨の投稿をしたところ、多くの批判が寄せられたという話があった。そのたこ焼きのパッケージには、「新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」とのシールが貼られていた。

https://www.j-cast.com/2025/02/15501619.html

つまり、既に➃に相当すると判断する企業も出てきているということだ。ここから考えても、やはり➄と➃の境目にあると考えるのだ妥当だろう。

毛色が違うようにも思われがちだが、タバコのマナーも似たようなものだ。吸う人でも他人の煙は嫌という人は多い。煙から逃れにくい室内や車内、屋外でも繁華街では禁止されていることが多い。また禁止されていない所であっても、近くに人がいるときには一言断るのがマナーだ。基本的には嗜好品であり、代替性は高い。タバコには健康被害という実害があるけれども、その心配も含めての「不快」と考えれば、考え方は同じである。

河原氏の発言が炎上した理由は、世間は➄➃の考え方を持つ人が多いのに対して河原氏の考えは明らかに➅だったためそのギャップがあったから、というのが一つの仮説になる。だが、個人的にはもう一つあると考えていて、それは河原氏の投稿が高圧的で下品であることに対する反発があるのではないか、ということだ。

———以下引用———

こういう 自分の価値観をいきなり他人に押し付ける人、どう思う?

新幹線で食べる人がいるから 駅であったかい豚まん売ってるんだろ?

食べちゃダメなら まず新大阪駅の551閉めろよ。

それか 「新幹線持ち込み禁止」 って看板でも出しとけ。

豚まん一個で、東京まで気まずい空気流れるの日本くらいだろ。

大阪人に「551食うな」は喧嘩売ってる。

———引用終わり———

相手の価値観と自分の価値観が対立した時、強い方が勝つ、というのはマナーではない。単なる強者の理論である。マナーとは「相手をおもんばかること」であり、自分の価値観に自信があったとしても反論をするのは悪手である。対話して落としどころを探るか、自分が引くかだろうが、彼はそのどちらもせず、反論して相手を黙らせ最後まで食べ切った。

この投稿の中で彼は「自分の価値観を押し付けられた」と感じたようだが、実際にはその行動によって「自分の価値観を押し付けた」。つまり、豚まんがどうこう以前の問題として、その行動自体がまずマナー違反である。そしてその価値観も、上の分析の通り相手の方が正しかった。更に、わざわざ(多くの他人の目に晒される)SNSに投稿して一方的に非難をした。こういった度重なるマナー違反が、炎上の原因のもう一つなのではないか、と思うわけだ。

私はこの人の事業と関りを持っていないが、もし持っていたらこの投稿一つでお付き合いを考え直すだろう。対岸の火事と思わず、今一度自らを戒めよう、とすら思った次第である。

2026年3月23日月曜日

公約のルーブリック

 

ルーブリックとは、

「評価の観点(何を見るか)」と「到達レベル(どの程度できていれば何点か)」を、あらかじめ言語化して共有する“採点表”

のことである。論文や記述式テストのように「正解/不正解」だけで測りにくいものを、公平・透明・再現性のある形で評価するために使用する。チェックリストのようなものだが、Yes/Noではなく段階があるところが違う。こうすると、記述式テストを複数の人が採点するときのばらつきを抑えることができ、つまりは客観性のある評価ができる。入試や資格試験ではよく使われる手法である。

さて、今回自民党が圧勝したわけであるが、自民党の公約は各党の中でもいちばん具体性に欠ける部類に入る(ように読めた)。それでもなぜ支持が集まったのかを検証するため、生成AIに「公約のルーブリック」を作ってもらった。

これは、公約の中身自体を批判するものではなく、「公約としての体裁が整っているか」を見る指標であることはまず明らかにしておく。その基準は以下の通りだ。


ルーブリックの観点(各10点×10=100点)

A. 将来像(10)

  • 10:10〜20年後の社会像が言語化され、短期政策との整合も説明
  • 5:方向性はあるが、将来像が抽象的/短期の寄せ集め
  • 0:スローガン中心で、将来像が不明

B. 重点・優先順位(10)

  • 10:トップ優先3〜5政策、理由、トレードオフが明示
  • 5:政策は多いが優先順位が曖昧
  • 0:百科事典化、何が最優先か不明

C. 実施手段(10)

  • 10:法改正・制度設計・所管・実施主体まで具体化
  • 5:やること列挙だが実施主体が曖昧
  • 0:タイトルのみ

D. 工程表(10)

  • 10:いつ何をするか(法案提出・開始時期・段階導入)
  • 5:期間感はあるが、マイルストーンが薄い
  • 0:「検討」「会議体」止まり

E. KPI(成果指標)(10)

  • 10:測れる指標(例:税収・賃金・達成期限)を複数提示
  • 5:一部のみ指標あり
  • 0:評価不能

F. 財源・コスト(10)

  • 10:減税・給付・投資の財源を体系的に提示
  • 5:一部だけ財源言及
  • 0:財源に触れず「検討」中心

G. エビデンス(10)

  • 10:統計・研究・過去検証・国際比較を根拠として提示
  • 5:根拠はあるが限定的
  • 0:根拠なし

H. リスクと副作用(10)

  • 10:副作用(インフレ、金利、格差、権利制約等)と対策を記載
  • 5:注意書き程度
  • 0:副作用に触れない

I. 説明責任・検証(10)

  • 10:実行後の検証方法、修正条件(PDCA)まで記載
  • 5:検証の言及はあるが具体化が薄い
  • 0:検証なし

J. 共創・意思決定プロセス(10)

  • 10:国民参加・熟議・第三者監視など制度的に設計
  • 5:会議体の設置は書くが、設計が薄い
  • 0:プロセスなし/「国民会議」など名称のみ

一つ一つを読めば、至極当たり前のことだと思う。これをベースに、各党の公約を評価してもらった。それが以下だ。


  • チームみらい:66
  • 中道改革連合:62
  • 国民民主党:58
  • 日本共産党:56
  • 日本維新の会:47
  • 自由民主党:44
  • れいわ新選組:41
  • 参政党:39

私の感覚と概ね合っている。一応、恣意でないことの確認のため、早稲田大学デモクラシー創造研究所によるマニュフェスト比較での評価(上記ルーブリックではなく独自の評価)を貼っておくと、以下のようになっている。

自民党:30点 維新:30点 中道改革連合:45点 国民民主党:40点 参政党:30点 共産党:40点 れいわ:30点 チームみらい:70点

細かい凹凸はあるものの、チームみらいがトップ、次が中道、以下が団子で、自民党はこの団子の中にいるということが分かる。65点を合格とするなら、どちらの評価でも合格はチームみらいだけで、他はダメダメ、ということが分かる。これはあくまでも公約としての体裁を問うているものだが、それがこのレベルなのであれば、実現可能性とか効果とかを論じても仕方がない。

さて、どちらの指標にしても、チームみらい以外は自民党も含めて団子状態、しかも落第点だったわけだが、今回は自民が圧勝した。なぜそうなったのか、

これについて、早稲田大学のマニュフェスト比較「出来栄えチェック」の点数と比例投票率との相関係数を主要8党で比較したところ、相関係数は0.19(ほぼ相関なし)という結論に達した。これと同じ手法で、上記のルーブリックとの相関係数を比較してもらったところ、‐0.07と、これまた相関なし、と出た。

それでは、と、自民党の公約への賛同率を、自民党への投票者と他党への投票者で比較しようとしたのだが、データが揃わず断念した。ただ、消費税減税についてだけは出口調査があって、自民党支持者の方が現状維持比率が高かった。つまり消費税減税には反対の人が多かったわけだ。

これに関して考えられる可能性は二つある。第一は、公約は重要視されておらず、その他(イメージや直感など)で選んだ人が多かったのだろうという考え方。第二は、読む側にリテラシーがなく、公約をなんとなく(勝手に、自分の都合の良いように)解釈して、自民が良さそうに見えた、という考え方である。まあどちらにしても、公約が役に立っていないという点で変わりはない。

まあ、公約はその後の演説やSNSの元ネタになるので不要とまでは言わないが、公約の出来が悪くても国民は気にしないのだ、ということが分かり、何とも言えない気分になった次第である。

2026年3月21日土曜日

琵琶湖の水止めたろか


 映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の中で、琵琶湖の水を止めて(京都大阪方面への放水を止めて)大阪を困らせる、しかし滋賀県の大部分は水没してしまう、という描写があった。これは関西ではよく言われる冗談でもある。「琵琶湖の水止めたろか」「滋賀が先に水没するで」というのが定番である。

これが本当なのか、Geminiに調べてもらった。

まず、琵琶湖の水を止めると滋賀県が水没するというが、水位が何m上がったらどの程度水没する、という目安を調べてみると、

• +1m 〜 1.5m【現実的な大災害レベル】 • +3.76m【観測史上最悪のリアル水没】1896年(明治29年)の「琵琶湖大洪水」 • +約30m【限界突破・京都への漏水レベル】山を貫通しているJRの鉄道トンネルや高速道路のトンネル群に水が到達し、そこを水路にして京都方面へ水が抜け出す • +約80m【完全なる「琵琶湖県」の誕生】

というレベルなのだそうだ。琵琶湖には、大小合わせて約120本もの川から水が流れ込んでいる一方、の水が外へ出ていくための自然の出口は、南端にある「瀬田川」ただ1本しかない。この一本が京都に入ると宇治川と名前を変え、京都を出ると桂川・木津川とつながり淀川になる。淀川における瀬田川の流量は約50%である。つまり瀬田川の水を止めても淀川は枯れない。

次に、琵琶湖の標準的水位に対してどの程度水を放出できるか、その限界について調べてみた。すると、法的な限界としてはマイナス1.5m、物理的な限界(排水口の高さ)はマイナス4.8mなのだそうだ。

また、琵琶湖に流れ込む水の量は、平均して0.02m分になるのだそうだ。つまり毎日0.02mづつ水位は上がっており、その分を下流に放出しているのが現状なのだそうだ。

ここから考えると、1m水位が上がるには50日掛かる。映画にあったような水没を30mとすると、そこまでには1500日(4年)掛かる計算だ。映画がこれを誇張していることは明らかである。

水没せずに大阪を苦しめるためには、まず限界まで水を放出しておいてから止めるのが良いだろう。すると、マイナス4.8mまで放出すれば、それが元の水位に戻るのには240日(約8ヶ月)である。

そのためには、瀬田川の放出量を最大にする必要があるが、その限界値は一日に0.1mだそうだ。つまり4.8m放出するには48日掛かる。そしてこの程度の量では京都大阪が洪水になることはまずないのだそうだ。

つまり、滋賀県は戦略的にまず48日掛けて水位をマイナス4.8mまで下げておけば、その後240日は全く安全に放水をストップすることができる。

一方、大阪がどの程度渇水に耐えられるかをGeminiに推測させてみると、

  • 1〜2日目:取水不能とパニックの始まり
  • 3日〜1週間:都市機能の完全停止(衛生の崩壊、医療・経済の停止)
  • 1週間以降:残されたわずかな水源への依存(他の川からの流入に依存するが圧倒的に足りない)

となり、わずか1週間で壊滅的な打撃を与えられることが分かった。法的な限界であるマイナス1.5mまでの放水をしておいて、そこから+0.5mまで40日耐えれば、滋賀県の勝ちだ。

というわけで、「琵琶湖の水止めたろか」作戦では、圧倒的に滋賀県が有利、というのが結論となった。滋賀県の皆さま、おめでとうございます。

2026年3月6日金曜日

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

 

日本と世界の右傾化とその理由

の続き。世界的な国粋主義、自国第一主義、覇権主義、暴力肯定、秩序破壊の傾向に関し、その原因について考えてみる。なお、けっこう重い話ではあるのだが、あくまでも『根拠なき自説』であるので、気軽に聞いて頂きたい。

世界的な右傾化の原因は、経済格差や将来への不安が引き起こすとされてきたが、経済格差・軍事力格差について調べてみたところ、米・中以外はほとんど団子状態で、あまり格差が開いているとは言えないことが分かった。グラフは、左がGDP、右が軍事費である。

そこで調べてみたところ、近年では更に根本的な原因として「社会的地位の低下への恐怖」説が出てきているそうだ。というのも、そう言われてみると、世界同時多発的とは言え、各国にはそれぞれそういう事情があった。

  • アメリカ:白人低所得者層の衰退=白人以外の層との相対的な格差縮小
  • 日本:長い経済停滞により国際的地位が低下
  • 欧州:難民の急増大、EU化による各国のアイデンティティ低下
  • ロシア:ソ連崩壊と再編、周辺国が次々とEU/NATOに接近
  • イスラエル:宗教的保守層の増大に伴う世俗派(エリート層)の相対的地位低下
  • イラン:英米によるクーデターによる傀儡政権設立への不満(それを転覆したがまた圧力が掛かっている)

中国、インド、中南米、オセアニア、アフリカは事情が違うように思う。中国とインドは、成長に見合わない国際的地位への不満があると思われるし、中南米は単純に腐敗政治への不満、アフリカは経済成長に伴う反植民地主義の復活、オセアニアにはほぼ理由がない。

そういう目でそれらを俯瞰して見ると、やはり「社会的地位の低下への恐怖」の強い国ほど右傾化の程度も強い傾向を感じる。

そこで、「社会的地位の低下への恐怖」の強さを国別に定量化できないかとGeminiに聞いてみたところ、こんなグラフを出してくれた。

1990年と2023年の違いを2軸でまとめている。横軸は各国の国際的ステータスの変化、縦軸は国内でのステータスの変化を指標にしたものだ。国内ステータスというと意味が分からないが、これは労働者階級(モノづくり階級、中間層)のステータスを意味している。

ロシアは国内ステータスが驚異的に落ち、日本は国際的地位が大いに落ちていることが分かる。米国とヨーロッパは団子状態だが、国内テータスが日本以上に低下している。中国は国際的ステータスが大いに向上したのに、国内ステータスは落ちている。インドはどちらもあまり変化がない。

あまり明確な結果は出てこなかったが、面白いのは(面白くはないのだが)、何れの国も国内ステータスは低下しており、向上している国がなかったというところだ。

労働者階級の地位が低下している理由は、グローバル化による労働力の価格破壊や技術革新における中間層の空洞化などが考えられるが、どちらも当然の成り行きであると言える。

つまり、国内の格差拡大は歴史的に必然的なもので、止めようがないし、止める理屈もない。また当面はこの傾向は続く、つまり格差は更に拡大していく。生成AIの発達により、これはホワイトカラーにも広がり、一部の管理職や起業家、資産家といったエリート以外は皆、相対的に社会的地位が落ちていくだろう。

それがどこまで続くかだが、生成AIの予測によると、

  • トップ1〜5%(資本家・AIオーナー層): プラットフォームの所有者、大規模資本家。富の大部分を独占する。
  • アッパーミドル15〜20%(AIを管理・活用する層): 高度な意思決定、AIシステムの維持、人間同士の高度な交渉を行う層。彼らまでが「豊かな階級」として生き残る。
  • アンダークラス70〜80%(エッセンシャルワーカー・ギグワーカー・非就労者): AIに代替されない肉体労働(介護、物流、インフラ維持)や、アルゴリズムの指示で動く細切れの労働(ギグワーク)に従事する層。

程度で落ち着くと考えられるのだそうだ。アンダークラスの割合は今は40%程度だが、それが倍程度になると見込まれるわけだ。また、労働分配率は更に低下し、現在の50~45%程度から40%程度にまで下がると考えられる。

この数値を今の日本に当てはめてみると、アンダークラスの年収は190万円、アッパーミドルは670万円、トップは1690万円と算出された。アンダークラスの年収はもはや生活保護レベルであるが、それが全国民の80%になる、というわけだ。

更に言うと、この時のジニ係数は0.71であり、これは現在の南アフリカ(0.63)を遥かに上回るとんでもない格差になる。これではエリートも困るので、ベーシックインカム導入に踏み切るしかないだろう。しかし元手が人口の2割しかいないので、額は限られる。一人年間100万円を配るとしても、ジニ係数は0.60までにしか下がらない。これは「暴動はギリギリで起きないが固定化されたディストピア」になる。

この傾向は国内固有ではなく、世界的傾向である。そしてこれは格差拡大であり、国民の大部分が飢えるため、暴動が起きやすくなる。新興国ではこの傾向はさらに顕著になり、平均所得が下がる。これをシミュレーションしてもらったところ、

  • トップ層(上位5%): 約1,580万円〜
  • ミドル層(上位15%):約140万円〜200万円
  • アンダークラス(下位80%): 約24万円

月収ではなく年収が24万円である。もちろん物価は違うのだが、これは今のスラム層と同程度である。スラム層は今世界に7億人いるとされているが、これが40~50億人になるという予想が出ている。

世界人口の半分がスラムというのはちょっと信じがたい。そもそものドイツの右傾化のきっかけはシリア難民の受け入れだったが、その規模が7倍になればもはや拒絶しかないし、さりとて難民も必死なのだからそこでは武力衝突が起こってもおかしくない。それも、難民が数の暴力で押し切ろうとすれば、EU側も本気で戦わなければならない。それこそ数百万人単位の大量虐殺(虐かどうかは定義次第だが)が、何回となく起きる可能性も出てくる。

そういったスラムでは出生率は落ちるが、今既に生まれている女性が適齢期になって子供を産むので、しばらくは人口は増加する。それが落ち着いてくるまでには数十年掛かるだろう。

今回は世界の右傾化の理由を順に調べていったのだが、もはや右傾化が好ましいとか好ましくないとかの次元の話ではなくなってしまった。世界が急速に貧困化していく中での断末魔、あるいは世界再編の一環であると考えると、右傾化なんてのは序の口で、もっと厳しい、生々しい現実が待っているのだと言える。

2026年2月18日水曜日

日本と世界の右傾化とその理由

 「日本は右傾化している」マスコミのそういう指摘に対して、「いや今までが左だったのが正常に戻っているだけだ」というコメントをしている人が、SNSに限らず議員などでも見かける(高市氏本人ですらそう言っている)。だがこれは、結局右傾化を認めたということである。右傾化とは文字通り「右に傾く」つまり向きとしてどちら方向に動いているかを示すもので、原点がどこにあるかは関係ない。また右派から見ればそう考えるとしても、左派には左派の考える「正常(原点)」があり、つまりは所詮水掛け論に過ぎない。だからこれは屁理屈であり、なんだか与党議員までがネトウヨ発言をするなあ、と思いながら見ていた。

そこで、右傾化の根拠について生成AIに調べてもらった。ステップとしてまず、右左と一言で言っても様々な軸があるので、その軸について定義してもらった。その定義による評価軸で定量化可能なアンケート等のデータを探し、更に正規化(-1~1。1が右、-1が左)してもらった。最後にそれをグラフに表示した。なお、各軸の定義は以下の通りである。

  1. 経済的右派軸:市場自由主義の浸透と保護主義的右派の台頭
  2. 社会・文化的右派軸:伝統的・排他的価値観への回帰
  3. 制度的権威主義軸:自由民主主義の質の後退(V-Dem指数を反転)
  4. ポピュリズム軸:反エリート・反多元主義的言説の拡大

まずは世界のデータを見てみる。

年 経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的権威主義軸 ポピュリズム軸
2000年 -0.12 -0.35 -0.65 -0.50
2005年 -0.05 -0.28 -0.60 -0.42
2010年 0.08 -0.15 -0.52 -0.20
2015年 0.22 0.12 -0.30 0.15
2020年 0.38 0.35 0.25 0.48
2025年 0.45 0.52 0.40 0.65

どの軸も一律に右上がりになっている。全ての指標がゼロを超え、反対側に行ってしまった。正に思想の大逆転である。

次に日本だけについて再調査してもらうと、以下のようになった。

年 経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的安保軸 ポピュリズム軸
2000年 0.05 -0.65 -0.20 -0.70
2005年 0.25 -0.60 -0.15 -0.55
2010年 -0.15 -0.58 -0.18 -0.40
2015年 0.30 -0.50 0.10 -0.20
2020年 0.35 -0.42 0.25 0.15
2025年 0.40 -0.35 0.65 0.45

こちらは世界ほど極端ではないが、やはりベクトルとして明確に右傾化している。それでも絶対値としてはまだ「社会・文化的右派軸」が0より下にある。

「社会・文化的右派軸」は、右が伝統的価値観、左が世俗的・合理的を表しているが、これについてAIに聞いたところ、日本には宗教的権威が存在せず現世利益的な宗教観があるからだ、ということらしい。そのため、宗教的項目を重視する国際指標では日本の保守性は捕捉されにくく、一方で防衛費や憲法改正といった「制度的安保軸」においてその右傾化傾向が顕著に表れるという構造になっているのだそうだ。そして確かに制度的安保軸はしっかり上昇している。

これらの右派傾向の理由について、生活苦や不当な圧力などへの不満の裏返しではないかと思い、そう聞いてみたところ、


『ご指摘の通り、近年の右傾化や権威主義化、そしてポピュリズムの台頭は、単なる思想の変容ではなく、生活環境の悪化や既成秩序への強い不満、あるいは「自分たちが不当に扱われている」という被害意識の裏返しであるという分析が、多くの政治学・社会学的調査で支持されています。』

中略

『グラフで示した右傾化の数値上昇は、単に人々が思想的に保守化したというよりも、「今のシステムでは自分たちの生活や安全が守られない」という切実な危機感と、それをもたらしている(と見なされる)内外の要因に対する拒絶反応であると解釈するのが妥当です。特に2025年におけるポピュリズム軸や安保軸の突出は、戦後長く続いた「安定した中間層」の崩壊と、地政学的な平穏の終焉がもたらした、社会の構造的な摩擦の結果であると言えます。』


とのことだそうだ。

右傾化というのは二次的現象であって、真に憂うべきは貧困や社会不安なのかもしれない。だからといって右傾化が良いと言うことではない。更に続けて「では右傾化によってそれは緩和するのか」と訊いたところ、


『結論から申し上げれば、専門家の分析や統計データは、右傾化の進展が必ずしも生活苦や不満を根本的に解決するわけではなく、むしろ新たな社会的・経済的リスクを生じさせる可能性が高いことを示唆しています。』

中略

『右傾化は、現状への強い不満に対する「心理的な防衛反応」としては機能しますが、生活苦という構造的病理に対する「治療薬」というよりは、痛みを一時的に麻痺させ、かつ副作用(増税、福祉削減、社会の分断)を伴う「強い鎮痛剤」に近いと言えます。2025年から2030年に向けて、右派政権がこの「副作用」をどう制御し、実質的な生活改善に繋げられるかが、社会の安定を左右する大きな焦点となります。』


とのことだった。私の感覚とこれは合致する。先の消費税減税についての分析もそうだったし、移民政策の分析も、積極財政の議論もそうだった。冷静に考えれば中長期的に全部自分に返ってくるのに、目の前のニンジンに尻尾を振っているのが今の右傾化の実態なのだ。

人々は感情に任せて右傾化するのではなく、冷静に論理的に判断をすべきである。


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