2026年7月8日水曜日

パンアーキー:複線民主主義

 

民主主義が限界に来ている、とは色々言われている。だが、ならどうすべきかについてはどうも議論百出であり、自分としても「これは」と思うものが無かった。そこで色々調べていて、「パンアーキー」という考え方を見つけた。これが自分の考えに比較的近いと思ったので、この考え方について紹介する。

パンアーキーとは、ベルギーの政治思想家 ポール・エミール・ド・ピュイ(Paul Émile de Puydt) が1860年に提唱した概念である。

https://www.panarchy.org/depuydt/1860jp.html

彼は当時の政治対立を見て、「自由主義者は自由主義政府を望み、保守派は保守政府を望み、社会主義者は社会主義政府を望む。ならばなぜ全員が同じ政府を取り合うのか?」と考えた。そして、「領土ごとに政府を分けるのではなく、人ごとに所属政府を選べばよい」と提案した。

つまり、今の民主主義では政府は一つしかない。その一つの政府はむろん投票によって選ばれるのだが、選ばれた後は、自民党に投票しなかった人でも自民党に従うしかない。だが政府が二つ三つとあり好きなところを選べるなら、その政府に投票(登録)し、その政府に従えばよい。つまり、政府Aに投票した人は政府Aの決定に従う。政府Bの決定には従わなくてよい。政府Bに投票した人は政府Bの決定に従い、政府Aの決定には従わなくてよい。

例えば消費税を1%にするという決定は、日々の買い物が楽になる一方、国債発行が増え将来の予算を圧迫する懸念がある。それをよく考えた上で、1%にする自民党政府と、10%のままのチームみらい政府のどちらかに投票する。するとその後に自民党政府の出した国債の償還義務は自民党政府支持者だけの義務になる、という具合である。

まあもちろん、このレベルではまだ考えが荒く、色々と不都合がある。まず政府はいくつ作るべきかという根本問題に加え、地域による分割ではないので国民自身に旗(フラグ)を付けなければならない。買い物一つするにも国民IDカードの提示と認証が必要になる。また財源は分ければ良いが、外交国防裁判所消防警察インフラなどは分け辛い。そういうものまで分割するのかどうか、また分割するとして今存在している警察や消防をどう動かすか。両陣営を行ったり来たりすることで漁夫の利を得ようとする国民をどう規制するか。投票しなかった者の扱いをどうするか。そういうものは一つ一つ詰めていかなければならない。

だがこうすると、国民は自分の決定に責任を持つことになるのだから、当然真剣に考えるだろう。民主主義限界論の理由の一つは正にここ、つまり国民が真剣になって考えないところにあるので、それだけでも民主主義の復権(ないしは延命)に大いに貢献できるはずだ。

一方で、政府は今までと違って票数を気にしなくてよい。票が多ければ予算は増えるが対象国民も増えるので負担も増えるから、票数は絶対的評価指標ではなくなる。国民の平均的支持率や国民満足度、国民の平均年収や平均寿命などが指標となるのだろう。特に野党にとっては、通るはずのない理想論を好き勝手に言えていた時代とは異なり、その理想論を実現できてしまう、つまり結果が見えてしまうという意味で議員にはシビアであり、今まで以上に真剣に考えてくれるはずだ。

地域による一国多制度は世界中に例がある(連邦制がそうだ)が、この思想は住居を変えずに政府を選べる点が重要である。情報化の時代、AIの時代、できるところから(例えば社会保障や介護福祉)多政府化を進めていくというのは十分に「アリ」だと思う。

2026年7月7日火曜日

シリカヒュームコンクリートの再考察

 

その後、シリカヒュームコンクリートの特性や製造法について色々検討していたのだが、当初の見込みは甘く、修正すべき点も色々と見えてきた。その改良も含め、製造法について検討していく。

ポゾラン反応の反応速度について

以前の検討では、シリカヒュームコンクリートは24時間で実用強度が出ると言っていたが、その後の調査により、これは極めて限定的な状況でしか起きないことが分かった。

もし何もしないと、通常のセメントの反応(水和反応)より遅く、数カ月掛かる。反応を早めるには、高温高圧(いわゆるオートクレーブ)を掛けるか、アルカリの混和、炭酸ガス吹付けなどが必要である。

消石灰ないしはセメントの一部を生石灰で代替することによって反応熱を引き出すという方法も考えられるが、生石灰が反応すると体積が大きく変化し、これがひび割れの原因になることもあるということだ。それを抑えるための繊維強化は有効であるが、繊維で無理に抑えている状態とも言え、あまり好ましいとは言えない。

またこのうちアルカリは、いわゆる強アルカリが必要で、扱いが難しく、現場施工は危険であり推奨できない。高温にするにしても一瞬とはいかず数時間は必要であるため、やはり現場施工は現実的ではない。

つまり、シリカヒュームコンクリートを作るには(オートクレーブを掛けられる)プレキャストにするか、現場打ちならセメント混入が現実解であり、消石灰(ポゾラン反応)ではできない。また、セメント混入の場合はシリカヒュームの割合は10%が理想で、つまりはシリカヒューム主体とはならず、シリコン発電残渣の効果的な消費にはならない。

また同じ理由により、コンクリートの梁や柱を結合するのに、平らな面同士をシリカヒュームスラリーを流し込むだけ、という方法は使えない。

ではどうするかというと、形状による嵌合、バサルトアンカーピン、シリカヒューム+セメントスラリーという組み合わせで行う。つまり、形状による篏合(凹凸を合わせる)を前提とし、更に篏合部の両側に穴を開けてアンカーピンすなわちホゾを噛ませ、スラリーで固定する。このスラリーはまずセメントの水和反応で初期強度を出し、その反応で出てくる二酸化炭素とシリカヒュームでポゾラン反応を起こして更に強度を増す、という方法になる。ホゾと篏合には溝を掘り、スラリーが流れ込む道を作る。バサルトアンカーピンは、この後で説明するバサルト筋を使用したものである。

無発泡酸化チタンスキンについて

前の説明では吹き付けとしていたが、もう少し厚さがあった方が良さそうだ。実際に光が届くのは0.1mm程度だが、物理的摩耗は100年で2〜3mmだそうなので、倍のマージンを見込んで7mmとする。またこのスキンには骨材は不要であり、酸化チタン混入率は重量比で1%とする。

プレキャストコンクリート製造時に、スキンの型を先に取っておいて、それを組み合わせて中に発泡コンクリートを流し込むというのが良いと思われる。

スキンと内部は同じシリカヒューム+消石灰で混合比率も合わせる。これによってスキンと内部もポゾラン反応で強固に接着し、容易に剥がれることは無くなる。

この表面スキンは酸化チタンによる光触媒効果と十分な耐水性があるため、外壁側にトップコートなどは必要なく、そのまま外壁として使える。またその性質より、色は塗るのではなく、あらかじめ練り込んでおく必要がある。この際、有機塗料は光触媒効果により色褪せてしまうので、無機顔料限定となる。また、表面加工(ツルツル以外の凹凸やザラザラ感など)は、あらかじめ最初から作り込んでおく必要がある。もちろん最薄部で7mmの確保が必要だ。

屋根材については、同じく無発泡酸化チタンスキンとなる。7mmの酸化チタン層と20mmの繊維強化無発泡のコアを使用する。スキンもコアも繊維強化は行う。この場合の混入率は2%とする。

形状としてはスレートと同じ感じになるが、結合はスラリー注入によるポゾラン反応で完全に一体化するため、水漏れの心配は無用となる。つまりはアスファルトシーリングが不要になる。

また、スレートや瓦など従来の屋根材では、雨漏りが発生したときにその水路が複雑になり特定しづらいという問題があった。これは、小さな屋根材が少しづつ重なる構成だったために起きるのだが、本手法では屋根は一体になっており、複雑な水路は存在しない。割れている箇所があればそこを直すだけで完了する。それも、割れた隙間にスラリーを注入するだけである。

繊維と発泡、配筋について

発泡比率はアルミニウム粉末の添加率で自在に変えられるが、当然ながら発泡率を高くするほど強度は弱くなる。また比重は軽くなる。繊維については最大2%ほどが限界で、発泡で梁にするには強度が足りず、無発泡にする必要がある。そうでない(発泡させる)なら鉄筋が必要になる。

ただ、必ずしも鉄筋でなくともよく、例えばバサルト筋は有用である。バサルト筋とは、玄武岩(バサルト)を溶解して線維化し、樹脂で固めたものだ。鉄筋は爆裂の危険があるが、バサルト筋はサビないためこの危険はない。また、鉄筋の二倍の引張強度があるため、更に元々超高強度コンクリートであるため、繊維強化も併用することで、筋数をかなり少なくすることができる。

以前、(表面無発泡・内部)発泡繊維コンクリートのみで梁を作れると言ったが、強度的には不足である。これも訂正する。

また、発泡による断熱効果についても盛り過ぎのようだ。比重0.6程度ではALCや木材、グラスウール並みの0.12W/(m・K)となる。ただこれでも、150mm程度の厚さがあれば十分な断熱性があり、断熱材が不要という点では同じである。配筋が鉄ではなくバサルトであることは、断熱に一役買っている。

先ほどの表面スキンのすぐ内側にバサルト筋を配置し、内部は繊維強化発泡コンクリートを充填する。この場合、繊維は0.5%で十分であり、曲げ・引張強度はバサルト筋が主に活躍する。通常のコンクリートと異なり被り厚は不要(スキンの7mmだけでよい)である。なぜならスキンは超高強度コンクリートであるため強固で、筋も鉄筋ではないので、ひび割れによる水によるサビの心配は不要だからだ。中性化も関係ない。このため配筋を従来よりかなり外側にできるので、配筋の数や太さを抑制できる。

シリカヒューム粒の製造について

次に、骨材としてのシリカヒューム粒について考える。

生成AIと色々議論した結果、シリカヒューム粒はセメントで結合するのではなく、消石灰でつなげるべきとの結論に達した。シリカヒュームと消石灰を75%:25%で混合し、これをパンペレンタイザ(転動造粒機)で水を吹き付けながら球状に太らせ、粒にする。その粒を、180℃・10気圧で数時間処理する(オートクレーブ)ことで完成する。

セメントの水和反応の副産物としての二酸化炭素ではなく、最初から消石灰の二酸化炭素を利用したポゾラン反応を主たる結合要素とする、という判断である。このためセメントは不要となる。強度はセメントよりこちらの方が高い。ただ引張強度と曲げ強度が相対的に弱いことに変わりはない。

無発泡・繊維なしの場合、比重は2.2、材料費(シリカヒュームはゼロとする)と製造費トータルで6.8円/kgとなる。粒のサイズは、0.15mm〜20mm程度で、段階的に製造する。これらを混合することで隙間を減らし、効率よくコンクリートを製造することができる。

アルミニウム粉末をごく少量添加してやると発泡し、発泡粒となる。発泡の度合いは自由に調整できる。発泡させることで強度は落ちるが、体積は増えるため、体積当りの材料費は下がり、断熱性が上がる。

繊維を混入することで引張強度や曲げ強度が向上するが、繊維はキロ単価が高い(1000円/kgなど)。混入は0.5〜2%ほどの間で用途に応じ行う。発泡と繊維の組み合わせは色々できる。

天然の砕石の単価はキロ10〜40円なので、これより十分に安い。また形状が全て球で安定している点、ポゾラン反応により砕石より強固に固着する点、性能を自在に設計できる点などがあり、全てにおいて天然砕石に勝っている。

価格については、シリコン発電の残渣たるシリコンヒュームの材料費がゼロである前提による。実際には、高炉スラグ微粉末(製鉄炉残渣)やフライアッシュ(石炭発電残渣)のように、キロ数円を積むのが現実的だと思うが、その程度であれば天然砕石と価格で逆転することはない。

また、シリカヒューム粒を骨材とした繊維強化コンクリートの製造においては、混入する側のみ繊維強化するので十分であり、シリカヒューム粒自体を繊維強化する必要はないそうだ。

安いこと以外に、セメント(ポルトランドセメント)に使う場合であっても、骨材とセメントとの間にポゾラン反応が起きて強固に接着する点、形状や素材特性が安定している点、必要に応じ機能性(発泡、繊維強化)を持たせられる点でも通常の骨材に比べて有利であり、こうなると通常の骨材を使う意味がほぼ無くなる。シリカヒュームの初期の用途として極めて有望と考える。

建築方法

プレキャストコンクリート建築において、基礎をプレキャストコンクリートで作ることは引き続き可能である。但しバサルト筋+形状篏合+アンカーピンは必要となる。これは柱、梁についても同様である。壁については強度は必要ないため、バサルト筋とアンカーピンは必要ないだろう。また壁だけは発泡率を最大にして断熱を確保する。

また、その結合の基礎強度は水和反応によるため、翌々日の施工は無理で、3日~1週間程度の間隔は必要となる。とは言っても、基礎、1階、2階、屋根の4段階程度で済むので、各々1週間としても1か月で建つことになる。しかもその間は放置で良いし、施工の1日で使うコンクリートは結合部に使う分だけなのでごく少量で良い。

スラリーを使った結合であることに変わりはないので、気密性については前回と同評価である。結合部からの空気漏れはゼロにできるし、もし穴が見つかればスラリーで塞げばよい。

この場合、ラーメン工法であるので壁は更に簡素化が可能である。厚さ150mm、無背筋、高発泡化(比重0.35)が可能となる。但し繊維は2%の混合が必要となる。

また、壁の4辺全てをスラリーで完全に固めてしまうと、気密性は問題ないが地震の際の変形で割れる恐れがある。この辺は既存の方法(カーテンウォール、隙間の弾性体による充填など)が使えるだろう。

また、前の検討では柱式(ラーメン構造)で考えていたが、工法としては壁式もあったのを忘れていた。超高強度コンクリートと発泡、ポゾラン反応によるコンクリート同士の強固な接続を考えると、壁式の方が有利な場面はある。2階建て程度の一般住宅なら壁式の方がよい。

これも一応計算してもらったが、壁式でも150mm+バサルト筋で対応できそうである。

コスト再計算

材料費については、バサルト筋・バサルトアンカーピンが登場したことと比率が変わった。また建築費については日数が増えたこと等を含め、再計算が必要である。

まとめて生成AIに算出してもらったところ、以下のような結果が出た。なお、今回はシリカヒュームは6円/kgで算出している。

建物規模 既存RC造(平米単価目安) 本システム(平米単価目安) 削減率 主な要因
2階建て住宅 約 350,000円 約 297,500円 15% 内装仕上げ・断熱工事の全廃
10階建てビル 約 500,000円 約 375,000円 25% 工場生産による工期短縮と現場労務費の削減

また、性能比較は次のとおりである。

性能指標 既存RC造(従来工法) 本システム(シリカ・モノリス) 評価
断熱性能 (U値) 約 0.40 W/m²K 約 0.20 W/m²K 2倍の断熱性能
気密性能 (C値) 1.0 〜 5.0 cm²/m² 0.1 〜 0.3 cm²/m² 極めて高い気密性
耐震性 (靭性) 鉄筋依存(腐食リスクあり) バサルト筋・繊維混入で永続性大 圧倒的優位
メンテナンス性 10-15年毎の塗り替え・補修 不要(100年無機質維持) メンテナンスフリー

心配したが、一般的なRCよりは安く仕上げることができた。また性能にも満足できる。

まとめ

こういうものは計算を細かく詰めていくとだんだん現実に近づいていくものだが、今回もそうなった。だが結論としては、有用性を強く主張できるレベルに留まってくれた。

本検討は遠い将来まで見込んで考えたが、1~100MW程度の実証レベルで出てくるシリコンヒュームの量なら全数はける程度の需要はあるので、さっさと試してみたら良いと思う。

2026年7月4日土曜日

シリカヒューム応用プレキャストコンクリートによる超高速建築

 

シリコン発電シリーズの続きで、シリカヒューム応用コンクリートのプレキャスト適用について考えてみる。プレキャストとは、要するに型枠で作ったコンクリートである。板や柱となる。

結論からすると、国内最高峰の断熱性・高気密性を持ち、基礎を含め2週間で2階建ての筐体が完成し、坪単価は52万円を切るという、バケモノ級の建築が可能である。

1.プレキャスト素材の特性

シリカヒューム応用コンクリートはプレキャストに向いている。流動性が高いため型枠の隅々までコンクリートが行き渡るからだ。また、発泡化も可能である。発泡化しても元々が超高強度繊維強化コンクリートなので、強度は十分である。すると、壁だけでなく柱も発泡にできる。つまり、柱も壁も断熱にできる。すなわち熱橋がないということだ。まずはこれだけでもすごい。

この前提で、一般的な2階建て住宅を想定し、柱のサイズは20cm角、壁の厚みは15cmと設定する。もちろん発泡による強度低下は考慮して計算している。繊維強化かつ超高強度コンクリートなので、このサイズで良いのだ。

発泡コンクリートの断熱性能だが、試算によると以下の通りである。

一般的なコンクリート: 1.6 W/m・K
一般的なALC(軽量気泡コンクリート): 0.13W/m・K
グラスウール(一般的な断熱材): 0.038W/m・K

に対し、

発泡超高強度シリカ: 0.040〜0.045W/m・K

である。(数字が小さいほど性能が良い。)つまり通常のコンクリートの約40倍の断熱性を誇り、グラスウールとほぼ同等の性能である。

次に壁の熱貫流率(U値)について考えてみると、

  • 断熱等級4(一昔前の最高基準): 壁の推奨U値 0.53W/(m^2・K)
  • HEAT20 G2(断熱等級6:ZEHを超える): 壁の推奨U値 0.34W/(m^2・K)
  • HEAT20 G3(断熱等級7:国内最高峰・欧州並み): 壁の推奨U値 0.28W/(m^2・K)

に対し、この素材で厚さ15cmの壁を作ったと想定すると、その壁の熱貫流率(U値)は

  • 0.28W/(m^2・K)

である。(これも数字が小さいほど性能が良い。)つまり、日本の最高峰の基準である「G3(冬場に暖房を消しても室温が15℃以下に下がらないレベル)」になるわけだ。

2.接合方法

このプレキャストコンクリート同士を接合する方法だが、凹凸を作っておいて組み合わせた後、隙間にシリカヒュームスラリーを流し込むことで行う。

この接合には2つの特徴がある。第一は、いわゆる剛接合になることだ。柱同士を剛接合できるということは、ラーメン構造が可能になるということである。また、基礎のコンクリートとも強力に接合するため、アンカーボルトが不要である。(位置決めの凹凸位は必要だろう)

第二に、隙間がゼロになるということだ。これはすなわち、いわゆるC値がゼロ、ということになる。(実際にはドアの隙間などがあるので完全にはゼロにならない)

3.爆速建築

基礎もプレキャストコンクリートで可能である。

初日に地面を掘り返して必要な深さを確保し、そこに捨てコンを打って終わり。翌々日の朝(硬化には1日掛かるので)にはレベリングをしたプレキャストコンクリートの基礎を並べ、シリカヒューム粒を敷き詰めて、スラリーを打って終わり、となる。

翌々日には1階の造作が可能となる。これは単に柱と壁を立て、隙間にスラリーを打って終わり、である。

その翌々日には2階床を並べ、やはり隙間にスラリーを打って終了。

その翌々日には2階の柱と壁、その翌々日には2階の天井、その翌々日には屋根を打って終わり、となる。

というように、爆速で組み立てができてしまうことになる。全てはスラリーが1日で固まるがゆえの恩恵である。

4.外壁の工夫

発泡コンクリートなので、それをそのまま外壁に晒すのは良くない。そこで、プレキャストの段階で、外壁部分には「無発泡・強化繊維なし・酸化チタン混・シリカヒューム・セメント・水スラリー」を塗っておく。厚さは2、3mmで良いだろう。

これによって発泡部がスラリーで埋まり、また酸化チタンによるセルフクリーニングとUVカット機能を持たせる。好みにより色をつけるのも良いだろう。

また、屋根も同様の措置で対応可能である。スラリー接合により隙間ゼロにできる点も含め、塗装を含む全ての仕上げ工程が不要となる。

5.内壁の仕上げ

プレキャストコンクリートであることを考えると、電気ガス水道の配管用の溝も最初に作っておくことが可能だ。すると配管も爆速でできる。

更に断熱が完璧なので、断熱材や防湿フィルム、石膏ボードは一切不要である。直接壁紙を貼れば良い。(溝はパテで埋める)

6.その他様々な驚異

気づいた人もいると思うが、筐体工事において釘や金具が全く登場しない。これも驚異と言えるだろう。鉄筋がないので、クラックから鉄筋が錆びてコンクリートが剥がれる(爆裂)現象が原理的に生じない。また、鉄筋が電波を遮断するため、鉄筋コンクリート住宅は携帯電話やWiFiの電波が通りにくかったが、この現象も起きない。

コンクリート打ちっぱなしと同程度の内装材しかないので、万一火事になっても燃えるものが殆どない。

また、繊維強化発泡コンクリートであることにより、耐火性も抜群に良い。コンクリート内の水が気化膨張して爆裂(ポップアウト)するという現象があるのだが、この危険がほぼゼロである。発泡していることと繊維が先に溶けることが効くのだそうだ。

7.コスト

最後にコスト比較をしておく。

費用項目 従来の木造(G3仕様) 従来のRC造(一般ビル並み) Spock式(オールシリカPCa)
基礎工事費 約 150万円 約 350万円 約 80万円(PCa配置+スラリー)
構造・外壁・屋根費 約 900万円 約 1,500万円 約 700万円(工場量産パネル)
断熱・気密・下地費 約 300万円(多層施工) 約 400万円(内断熱) ¥ 0 円(15cm壁が兼任)
内装・外装仕上げ費 約 250万円(サイディング等) 約 350万円(塗装・ボード) 約 80万円(直接壁紙・光触媒スキン)
現場人件費・重機代 約 400万円(大工・工期4ヶ月) 約 700万円(型枠工・工期6ヶ月) 約 90万円(建方数日・足場最小)
合計金額(30坪) 約 2,000万円 約 3,350万円 約 1,550万円
【坪単価】 約 66.6 万円/坪 約 111.6 万円/坪 約 51.6 万円/坪

坪単価は木造(但しG3の高級仕様)より安い。その理由は、徹底的な人件費の削減が可能な点にある。建方が圧倒的に短期間であること、外壁仕上げなど様々な工程が最初から不要であるものが多いことなどによる。また材料もほぼシリカコンクリートだけ、鉄筋やアンカーボルトなど一切の金属が不要であることなども効いている。

また30年間の維持費はゼロ。外壁の汚れは水洗いで落ちる。屋根の補修も外壁材の塗り直しも不要である。

断熱性能が高いため、光熱費も安い。6畳用エアコン一つで全館冷房できる。太陽光パネルを載せておけば電気代はマイナスにすらなりうる。

8.まとめ

以前、木質3Dプリント住宅のときにも十分に驚いたのだが、こちらは更に驚きだ。前と比べて細かい工夫が殆ど必要ない。

また、やはりこの住宅も200年の耐久性がある。最近は建築費が高騰しているが、その一因は少子高齢化による人材不足である。高耐久性住宅の建設は、これに対応する意味でも大いに推進されるべきだと思う。

まあそれもこれも、シリコン発電が軌道に乗ってくれないと始まらない。まずは実証が必要だ。どこかが名乗り出てくれないかなぁ。

2026年7月3日金曜日

シリカヒューム道路の考察


 太陽炉プラン、その定量的評価超高性能コンクリート建築の考察太陽炉と発電所の設計プレパックドコンクリート工法に続き、道路での応用について考えてみる。

以前の提案で、余ったシリカヒュームは道路のアスファルトしたの路盤材にすることを提案したが、これも家の基礎と同じ方法で全てシリカヒューム由来のコンクリート道路にしてしまってはどうかと考えた。

まず一から作る場合だが、

  1. まず道を浅く掘る。
  2. 最下層にシリカヒューム+セメント+水のスラリーを撒いて地盤との固着を確保する。
  3. その上にシリカヒューム粒(シリカヒューム+水+セメントで造粒機に掛けたもの)を必要な高さまで敷く。粒径は20〜40mmとする。
  4. その上にシリカヒューム+強化用繊維+セメント+水のスラリーを流し込んで隙間を埋める。
    1. 繊維はポリプロピレンとビニロンの二種類を混合する。前者は主に施工直後のひび割れ防止、後者は重い車が通過する際の日常的な靭性確保を目的とする。
    2. 上まで完全に埋めるのではなく、8割程度の高さに留める。上位1、2割を露出させる理由は、凹凸をわざと作ってタイヤとの摩擦確保と雨の排水を促すためである。
    3. スラリーには、微量のバイオポリマー系増粘剤(ウェランガムやキサンタンガムなど)を添加する。これによってスラリーに「チキソトロピー(Thixotropy)」という物理的特性を持たせ、坂道や横断勾配(道路の排水用につける傾斜)に」対してスラリーが流れすぎないようにする。

なお、チキソトロピー(Thixotropy)とは、「力を加えている(混ぜている・流している)間はサラサラと動き、動きを止めて静置すると瞬時にゲル化して動かなくなる(高粘度になる)」という性質のことである。

この加工をすると、ポンプで圧力をかけてノズルから散布している間は、シリカヒュームと高性能減水剤のベアリング効果が勝り、サラサラと造粒粒の間隙を滑り落ちるように埋め尽くす。しかし隙間を埋めて流れが止まった瞬間(せん断力がゼロになった瞬間)、増粘剤の分子ネットワークが瞬時に結合し、スラリーが「ゼリー状(あるいはマヨネーズ状)」に変化する。これにより、勾配があっても低い方へ流れ落ちるのを防ぐことができる。

さて、コンクリートが超高強度コンクリートである関係上、道路の厚さは薄くできるはずだ。それを試算してみると、以下のようになった。

舗装構成(層) ① 一般的なアスファルト道路 ② Spock案(シリカ薄層仕様) 構造的な違いと評価
表層(スキン層) 50〜100mm
(アスファルト合材)
50〜80mm
(大粒シリカ+スラリー)
Spock案の方が薄い
アスファルトは薄すぎると自重と熱でペロッと剥がれたり割れたりするため、最低でもこれだけの厚みが必要です。
路盤(クッション層) 300〜450mm
(上層路盤・下層路盤の砕石)
100〜150mm
(または既設路盤をそのまま利用)
Spock案の圧倒的な薄さ
アスファルトは「ふにゃふにゃ(可とう性)」なので、下に分厚い砂利の層を設けて荷重を逃がす必要があります。
総厚(合計) 約 350〜550mm 約 150〜230mm Spock案はアスファルトの半分以下の厚さ

この案によるコストを計算してみると、次のようになる。

項目 ① 一般的なアスファルト道路 ② Spock案(シリカ薄層・総厚20cm仕様) 評価・再計算のポイント
初期建設費
(CAPEX)
約 7,000円約 7,800円 ほぼ互角(差額わずか800円)
総厚がアスファルトの半分以下になったため、穴掘り(掘削)と砂利の量が激減し、大幅にコストが浮きました。
50年間の修繕費
(OPEX)
約 22,000円約 1,000円 Spock案の圧勝(不変)
50年間わだち掘れや陥没が起きないため、修繕費はほぼゼロです。
50年トータル 約 29,000円 約 8,800円 Spock案が全体の約 70%のコストを削減

次に、既存のアスファルト道路の補修であるが、上で示した上層用の施工をそのまま使う。アスファルトの表面50mm程を切削し、その厚さだけシリカヒューム粒を敷いてスラリーを流し込むだけだ。こちらのコスト計算は、以下のようになる。

路盤・土工事:500円(表面を5cm削るだけのカッター費用)
大粒・スラリー(50mm厚仕様):2,200円(体積が4分の1になるため、材料・施工費が激減)
諸経費:1,500円
合計:約 4,200円 / m^2

これは、通常のアスファルトの傷んだ表面を削ってアスファルトを上塗りするだけの標準的な補修(約 4,000円)と、コスト的にほぼ同等である。もちろん50年トータルコストでは圧倒的に安くなる。

何れの工法においても、シリカヒューム粒を敷くところまでは時間的制約はなく、最後のスラリーを流してから硬化が始まるまでの時間だけ注意する必要がある。

何も工夫をしないスラリーは、混合から最短30分(夏場)で固まり始めてしまう。しかし硬化遅延剤を混入することでこの時間は調整できる。気温に応じた遅延剤の投入割合はあらかじめ計算できるので、必要に応じて添加剤の量を調整して施工すれば良い。

なお、この道路は繊維強化コンクリートであるため、最近話題になる道路の陥没にも強い。試算によれば、直径数mの空洞ができてもたわむだけで陥没しない。もちろん100%安全ではないが、さすがにたわめば気づくので、その時点で補修が可能だろう。

しかも、補修も簡単である。家の傾きを補修する方法として使われるウレタン注入法が使えるからだ。発泡ウレタンを隙間に注入して充填する方法なのだが、従来のアスファルトではこの方法は使えなかった。アスファルトはふにゃふにゃなため、下からウレタンで押し上げるとそこだけが盛り上がってしまい、道路全体がフラットに持ち上がらない。一方この道路は繊維強化コンクリートであり、いわば強固な板であるため、全体として均等に持ち上がるのだ。

従来、コンクリート道路があまり存在していない理由は、価格もそうだが、固まるまでの時間、必要な強度が出るまでの時間が長過ぎる(10日間など)ところにあった。しかしシリカヒュームスラリーは6時間で必要強度が確保できるため、一晩で交通規制を解除できる。

コンクリート道路は、アスファルト道路に比べて補修がほぼ不要であるところが大きなメリットである。上の計算でも示した通り、50年スパンではトータルコストは半額以下になるのだ。シリカヒューム活用コンクリートの適用により、コンクリート道路がもっと増えてくれたら幸いである。

2026年7月2日木曜日

カビプラスチックの生産

 地球温暖化防止の要は石油の使用量節約である。そして石油の用途は燃料と材料である。以前の提案では燃料の代替を考えたが、こちらでは材料の代替を考えてみた。

石油とは、結局は炭素と水素の重合したものであり、重合度が様々なものが混じり合っているだけだ。つまり炭素と水素を重合させれば良いのだが、その代表的なものがバイオプラスチックである。バイオプラスチックは、とうもろこしなどの糖を加工して油に変えるのであるが、その糖が曲者で、人間の食べ物と競合する。だからバイオプラスチックを増やすと人間の食料が減る、という矛盾を抱えている。また現状では、バイオプラスチックの価格は石油由来に遠く及ばない。ちなみに、石油由来だと200〜350円/kg、バイオプラスチックは500〜1000円/kg程度だそうだ。

炭素と水素の重合体でその他のものはないかというと、植物自体の葉や茎、木などがそうだ。実際、これらはよく燃える。だがその大部分は結合がしっかりし過ぎていて、ここから油を取り出すのは困難である。微生物による加工はできなくはないが、コストでは石油に遠く及ばない。

と、ここまで話したところで表題に戻るのだが、カビが形成するバイオフィルムは使えないか、と考えてみた。カビのヌルヌルの正体は多糖類に水分が含まれたもので、つまりは糖だ。だからバイオフィルムを材料とすれば、カビは勝手に増えてくれるのだから安価に製造できるのではないかと考えた。

バイオフィルムからバイオプラスチックへの変換も微生物を使うので、これを一緒に容器に入れて、材料(カビの餌)の投入と環境管理だけしてやれば、まず餌から糖ができ、その糖から油(バイオプラスチック)を作ってくれるのではないか。こう考えて生成AIに調べてもらったところ、まずは可能だという。ただ、通常の発想では石油由来よりコストが掛かってしまう点で、他のバイオプラスチックと変わりがない。

そこで更に考え、特定の条件下では石油由来プラスチックと同等のコストで生産できるという試算が出た。

その条件とは、徹底して電気を使わないことだ。まず材料としてはカビの好物である人間の食料残渣や木くずなどを投入するが、タンクに入れて撹拌するのではなく、多段の棚に入れて放置する。温度管理も、建物の構造を利用したパッシブ型にする。つまり建物を断熱し、風の通り道を制御(窓の開け閉め)するに留める。こうすることによって、石油由来より安い150〜200円/kgを実現できる。

必要な工場の規模感としては、

  • 年間1000トンのバイオプラスチックを生産することを想定
  • 必要な床面積は2200平米、工場全体としては5500〜6600平米(1700〜2000坪)
  • 想定売価300円/kgとして年間売上高3億円
  • 4名で運営
  • 人件費や固定資産税も含めた最終的な年間総費用:1億5500万円
  • 初期投資:1億円
  • 営業利益率:48%

となった。ビジネスとしてとんでもなく優秀である。ちなみに2千坪は東京ドームでいうと1.4個分に当たる。また年間千トンというのは、バイオプラスチック市場は年間数万トンなのでかなりの量である。

また、生成されるのは、「PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)」と呼ばれる高分子の油であり、原料(木くずの種類など)や品種改良された微生物の種類によって、「硬いプラスチック」から「ポリ袋のような柔らかいフィルム」、さらには「ゴムのような伸縮性のある素材」まで、自由自在に作り分けることができる。

更に、この素材加工までを内製とする(ペレット加工など)ことで利益率は更に上がり、76.6%という脅威の額になった。

欠点もあるにはあって、それは当然ながらカビの匂いである。作業者はこれから逃れられないし、換気に適切な消臭がないと周囲も臭くなる。だがそれも、生成AIに言わせれば軽微な費用なのだそうだ。また工場の敷地面積もそれなりに必要である。石油由来・バイオプラスチックの工場はこれよりかなり小さい。

とはいえ、材料から考えても環境負荷から考えても、石油の代替としてかなり期待はできるのではないかと思う。検討する価値は十分にあると考える。

2026年7月1日水曜日

シリカヒューム粒によるプレパックドコンクリート工法


 太陽炉プラン、その定量的評価超高性能コンクリート建築の考察太陽炉と発電所の設計に続き、再びコンクリート建築の工法について新たに考えてみたことを披露する。

シリカヒュームの用途について、既に建築基礎や液状化防止用などを提案してきたのだが、このシリカヒュームスラリーは流動性が高く、どんな隙間にも入ってくれる。そしてシリカヒューム粒との相性も良い。

実は以前からローマンコンクリートには興味を持っており、本ブログでも取り上げたことがあるのだが、そのローマンコンクリートというのは今と作り方が違うのだ。つまり、型枠を作るところまでは同じだが、できた型枠には先に礫(石、砂利)や火山灰を詰めてしまう。そしてその後にコンクリートを流し込むのだ。

この方法を取ると、先に礫同士ががっちり重なっているため、硬化に伴うコンクリート収縮が起きても建物の寸法が狂わない。ひび割れもしにくい。また、コンクリートにおける礫の割合が大きくなるため、使用するコンクリートの量は少なくなり、結果的に二酸化炭素排出量の削減につながる。

まず、シリカ粒の比率は、従来の60%から80%にまで上げることが可能である。ここから逆算すると、コンクリートの使用量は40%から20%に、つまり半減することが可能である。もちろんここにはシリカヒュームを添加するので、高強度であり、200年の耐性がある。

この工法は、プレパックド工法と呼ぶそうで、世の中には既に存在している。従来と違うのは、後から充填するコンクリート・シリカヒュームスラリーの粘度が低いことで、つまりは礫の充填率を上げてもバイブレーターが必要ないことだ。ただ、繊維強化は必要とのことで、これが流動性を少し下げるかもしれない。

標準的なコンクリート 1m^3 あたりの CO2排出量が約 250kg であるのに対し、この「シリカ・プレパックドコンクリート」では、セメント削減+シリカヒューム(産業副産物のリサイクル扱い)の効果により、120kg 以下(50% 以上の削減)を達成可能である。

またもちろん、以前も説明した通り、超高強度コンクリートにすることでコンクリート自体の量も削減できるから、現状のコンクリートに比べるとその削減量は80%程度にはなると試算できる。

数日前から色々試算しているのだが、どれを見てもとんでもない好成績であり、自分ごとながら少々ビビっている。本提案を建設業界の人が見て、少しでも検討をしてくれたなら幸いである。

2026年6月30日火曜日

太陽炉とシリコン発電所の設計

 

前回の太陽炉プラン、その定量的評価超高性能コンクリート建築の考察に続き、太陽炉と発電所の設計について考察してみた。

1.太陽炉の設計

1.1.経路の設計

シリカ(SiO2)から酸素を完全に引き剥がすには、3000℃の高温が必要である。しかしこの3000℃の高温に耐え、かつO2、Si、SiO、SiO2のガスに反応しない配管材料はこの世に存在しない。このため、この3000℃の部分のガスの流路は、いわゆるガスカーテンにより制御される。つまり、物理的な配管の内壁に沿って窒素ガスを噴射し、螺旋状に回すことによって、「ガスの壁」を作る。

3000℃の高温においては、不純物を含め全ての物質はガス化している。これをフィルタで分離することは不可能(その温度に耐えられるフィルタは存在しない)だが、酸素だけはどうしても分離する必要がある。というのは、酸素をシリコン(Si)をそのままにしておくと、再び酸化してSiOないしはSiO2に戻ってしまうからだ。

このためには、この空間に強力な電場を掛け、流路を「帯電する気体」と「帯電しない気体」に分離する。酸素は帯電するがシリコンは帯電しないため、ここで酸素を遊離する。酸素のない空間であれば、酸化しやすいSiと言えども酸化することはできない。

酸素を分離した後の気体は、窒素ガス下で冷却して液体に戻す。

1.2.不純物の除去

砂漠の砂の70〜90%は酸化ケイ素(SiO2)であるが、それ以外の不純物は邪魔であるので、ある程度取り除く必要がある。但し半導体シリコンを作るのとは異なり、シリコン純度は98〜99%程度でよい。

このためには、まず鉄分を取り除くために強磁力セパレーターで分離する。それ以外のものは比重の差を使って分離する。これには風圧などを使う。SiO2は軽く、その他の不純物(酸化アルミなど)は重い。この2つでシリコン純度を95%まで高める。

この材料を太陽炉に投入し、上のプロセスを経ると、全てが液体になっている。これを同じ槽の中に投入すると、比重の軽い金属ケイ素の液体が上に浮き、不純物は重いので下に溜まる。この下の部分5%程を捨ててしまう。この不純物は酸化アルミなどを多く含み、他に活用可能である。

1.3.細粒化

こうして残った液体ケイ素は純度98%以上になっており、これで十分に燃料になる。最後にこれを滴下しながら冷却用の乾燥窒素ガスを吹き付け、固体に戻す。この際、多少塊ができたとしても、急冷によりヒビが入っているので、その後ミルによって簡単に砕き、細粒化することができる。

細粒化した金属ケイ素は、湿気のある空気中でも安定しており、長期保管可能である。但し、細かすぎるとハンドリングが難しくなり、粉塵爆発の危険もあるので、0.1〜1mm程度に加工するのが良いと考えられる。

2.発電所の設計

2.1.燃料ボイラー前段での燃料微粉化

粗粒サイズのシリコンをそのまま燃やすのは効率が悪いので、燃料ボイラー前段で微粉化する。

このためには、窒素を充填したミルを使用し、そこから取り出した粉塵を酸素混合ガスでボイラーに吹き出す。

2.2.ボイラー設計

Siのエネルギーは石炭より高く、ボイラーは2000〜2200℃に達する。シリコンの燃焼速度を最大化するため、ボイラーは「バーナー(上から下へ噴霧)」に対し、「燃焼空気(下から上への上昇気流)」をぶつける対向流(カウンターフロー)型を採用する。

これにより、噴霧されたシリコン微粒子は空間内で激しく攪拌・浮遊(流動化)し、約2〜3秒間の十分な滞留時間を確保されることで、燃え残りゼロ(完全燃焼)を達成する。この凄まじい熱を利用して水管を温め、現代の最高効率である「超臨界・超々臨界圧(USC)蒸気タービン」を回してクリーンな電力を生み出す。

2.3.シリカヒュームの回収

シリコンが燃え尽きると二酸化ケイ素(砂の成分)に戻るが、これは元の粗い砂ではなく、「シリカヒューム」と呼ばれる、粒径が 0.1〜0.5μmの超微粉としてボイラーの排気ガスの中に漂うことになる。

これを回収するために、排気経路に以下のキャプチャシステムを配置する。

第1段は廃熱回収・予熱器である。ガスの温度を1,000°Cから200°Cまで冷却する。その熱は回収し、燃焼前のシリコン粉末を吹き出す酸素混合気の予熱に使用する。

第2段は多段サイクロン、要するに遠心分離機である。これによって、シリカヒュームのの70%を物理的に叩き落とす。

第3段はセラミック膜である。耐熱温度400℃以上の多孔質セラミックバグフィルターを使い、ミクロな煙を 99.9% 物理的にキャッチする。

最終段は電気集塵機である。最後の数ナノメートルの超極小粒子を、静電気の力(電界)でプレートに吸着・全量回収する。

最終的に排出されるのは窒素と(余剰の)酸素だけで、水蒸気すら出ない、極めてクリーンな排気となる。

回収したシリカヒュームは、コンクリート添加剤などとしてそのまま使うものを除き、直ちにシリカヒューム粒に加工しておくのが良い。粉塵だと細かすぎて扱い辛いからだ。

2.4.発電所としての特性

シリコン発電所の特徴は、石炭発電所並みの火力の強さと効率の高さ、また火力発電所に匹敵ないしは凌駕する立ち上がりの速さである。つまりピーク能力用として十分に使い物になる。

熱効率は45%以上と、最新の微粉炭火力発電所と同等である。それ以外の性能予測は以下の通りだ。

運用項目 最新鋭微粉炭火力 (USC) 本システム (シリコン微粉) 特性・優位性の理由
負荷変化速度
(出力を変える速さ) 毎分 ±3〜5% 毎分 ±4〜6% シリコンの高速燃焼性と、有害ガス不発生による環境装置の制約解除による。夕方の急激な需要増に追従可能。
最低負荷(DSS特性)
(火を消さずに絞れる限界) 定格の 25〜35% 定格の 15〜20% 対向流バーナーの気流制御により、燃料を極限まで絞っても「立ち消え」しにくく、深い待機(低出力運用)が可能。
ホット起動時間
(夜間停止から朝の全開まで) 約 1〜2 時間 約 1〜1.5 時間 ボイラーの金属水管が温まっている状態(ホットスタンバイ)なら、化石サン火力と同等以上のスピードで全開にできる。
コールド起動時間
(定期点検後の完全冷温状態から) 約 4〜6 時間 約 4〜5 時間 タービンや厚肉ボイラー配管が熱で歪まないようにゆっくり温める物理的限界(熱応力制限)があるため、ここだけは従来火力と同じ。

3.まとめ

これは火力発電ではあるのだが、元が太陽熱であることや環境負荷が極めて小さいことなどから見て、これは「再生エネルギー発電」に位置付けられる。しかも、太陽光発電や風力発電など他の再生エネルギー発電と違い、好きな時間に好きなだけ発電できるという特徴がある。

自然エネルギー発電ではどうしても「ダックカーブ現象」(昼間は太陽光で電気が余るが、夕方に太陽が沈んだ瞬間に発電力が急激に喪失し、猛烈な勢いでバックアップ火力を立ち上げなければならない現象)が起きたり、大量の蓄電施設(NAS電池や揚水発電所など)が必要になるという問題がある。またこれがあるがゆえに発電コストはあまり安くない。

だが本システムがあれば、最新鋭の火力発電所と同じ立ち上がりで太陽光発電などを補完できるし、主力の発電所としても二酸化炭素排出がないなど極めて有利である。石油備蓄と同様にシリコン備蓄が可能であり、それは産油国ではなく砂漠国であれば良いため、ホルムズ海峡のような致命的なネックは存在しない。OPECのような価格調整の影響も受けにくい。

なお欠点があるとすれば、それは交通手段の燃料としては使えないところだろう。シリカヒュームの回収は必須だが、そのためにはどうしても規模が大きくなってしまうからだ。

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