2026年5月15日金曜日

性別を二つにするのはなぜいけないのか

 だいぶ古い話だが、第二次トランプ政権で、多様性政策撤廃の大統領令が発せられた。

https://jp.reuters.com/world/us/IOISYYZHL5IRVEUVZAFA4DAACY-2025-01-20/

パスポートなど政府発行の身分証明書について「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」に基づくことを義務付ける、というものだ。今の多様性の風潮に真っ向から反対する施策である。

個人的にはこの風潮には反対である。本稿ではその理由を述べる。

まず、「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」であるが、多くの人が考えるLGBTQとは関係なく、男性でも女性でもない(男性でも女性でもある)という生物学的な分類は、現実問題として「存在する」というのが事実である。もちろん人間の場合である。

染色体におけるXXとXYという話はよく聞くが、これらに属さない染色体、例えばXXY、XO、XX/XYモザイクといった染色体を持つ人は実際に存在する。また性腺に関しても、精巣と卵巣の両方を持つ人、片方の性腺が未発達ないしは欠損しているという人、性ホルモンに関してもその程度が一般的な男性女性とは異なる特徴を有する、などもあるそうだ。また、そういう特徴が成長とともに変わることもある。またもちろん、性転換手術をすれば、それらも変わる。

だから、生物学的分類はそもそも男性と女性だけではないし、変更不可能でもないのだ。つまり、最初の定義の時点で既に自己矛盾している。生物学的分類に沿うことを定義とするならば、それは変更可能にすべきであり、またまた種類も最初から二つであってはならない。

次に、LGBTQの問題は、生物学的な性と性自認(自分が自分の性を何だと自認しているか)、性指向(恋愛や性愛の対象)と、主に三つの軸で論じるべきものである。しかも、性自認と性指向に関しては、二元論(男か女か)ではなく様々なグラデーションが存在している。例えば男40%女60%と認識している人、バイセクシャルでも嗜好に偏りがありその程度も様々、逆に性指向がほとんどない人、などである。そういう人を全部ひっくるめると、調査にもよるが全人口の8〜15%は性的マイノリティと推定されているそうだ。

一方、日本の障害者(精神障害者、身体障害者、知的障害者)の割合は、全人口の7.6%で、一千万人弱いると言われている。性的マイノリティより少ない数だ。その障害者に対して、全国的に点字ブロックや車椅子対応トイレを用意している一方で、性的マイノリティを無視するというのは公平性を欠く行為だ。それは、性的マイノリティに対する差別だと言われても仕方がない。障害者差別と同じく、それは為政者としてはあるまじき行為である。

障害と性自認は別だ? そりゃそうだ。だが、違うのは良いとして、それは無視するに値する違いなのだろうか。例えば、障害者のためのケアには、教育や社会インフラの整備、法律での対応などと、莫大なコストが掛かる。点字ブロック一つとっても、障害者雇用支援法にしても、あるいは支援学級にしても、その対応には兆円単位でのコストがかかっている。一方で性の多様性を認めることに、差してコストは掛からない。もちろんゼロではないしそれなりには掛かるが、障害者対応に比べれば微々たるものである。なぜコストの掛かることはできるのに、コストの少ない方を無視するのか。そこにはやはり差別しか理由が考えられない。

至極単純な話、人口の10%程度も特定の集団がいるのなら、その集団の存在を認めよ、差別するな、というだけのことなのだ。障害者だけでなく、15歳未満の子供も10%程度だし、ひとり親世帯も、貧困層も、75歳以上の高齢者も、10%前後の割合を占めており、それらは皆ケアされている。性的マイノリティだけが冷遇される理由は見つからない。

それは主にトイレと公衆浴場の問題、パスポートや住民票などにおける表記の問題、同性婚など婚姻と相続の問題、スポーツ大会などへの参加資格の問題などであると思われる。トイレに関しては多目的トイレがすでに普及してきているのでこれを更に発展させればよい。公衆浴場に関しては更衣室と浴場に個室を作ること、公的書類の表記や婚姻相続については法改正とシステム修正、となるだろう。

浴場だけが厄介だが、他はすぐにでも着手可能であり、それほど費用は掛からない。抵抗して屁理屈をこねている暇があったらさっさと進めてしまえばよいだけの話だと思うのだが。

2026年5月13日水曜日

AIによる社会変化の予測

 中島聡氏の著書 

2034 - 未来予測

に倣い、私も未来予測をしてみたいと思う。ただ、私はこの本を読んでいない。著書のチャプターのみを題材として、自分なりの予測をしてみる。

Chapter1 AIによる「死生観」のグレート・リセット

既に書いている、

人は死んだらどこへ行くのか

輪廻転生の科学的解釈

の中で、「魂とは情報である」という主張をしている。情報量(精度)を別にすれば、魂を機械に移植することは可能だ、という主張だ。

中国で、死んだ人をAI再生するサービスが既に商用化している。おそらくこの本では、近しい人の死に際して、AIで疑似人格を作り、常に脇において生活することによって、近しい人の死をあまり怖がらない・悲しまないような死生観に移行する、ということが書かれているのだろうと思うが、まあそれには同意する。ただ、自分自身の死はやはり怖いと考える人は相変わらず多いだろう。

そしてその先なのだが、そういう人がまた死んだとして、その人の人格、すなわち過去に死んだ人の人工人格を脇に置いて生活していた人の人工人格を作ったとしたら、それはどういうものになるのだろう。少し考えてみたが、そこで最初の人工人格は消えてしまってもおかしくないと思う。となると、死の世代(?)が一つズレるだけで、永遠の人工人格は必要ないのかな、とも考える。著名人(アインシュタインとか渋沢栄一とか)が記念碑的に残ることは考えられるが、一般人にはあまり関係ない話なのではないか。

ここで想うのは、そういうAIがない時代においても、人は故人を心の中に持っていた。映画などではお墓に向かって語り掛けるシーンがよく出てくるけれども、あの時にはその人の心の中に故人がいたはずだ。そういう二つを比較した場合、多くの人は、人工人格の正確性を気にするよりは、自分の想っている答えが返ってくる人格を好むのではないか。

まあ要するに、本来は心の中の故人で十分であり、人工人格に頼るのは「想像力の欠如」に過ぎないんじゃないかと思うわけだ。私としても、自分が死んだときに家族に人工人格を作ってほしいとは思わない。昔ながらの「心の中の故人」だけで十分、いやむしろそちらの方が好ましいと思う。

また、その人工人格は成長するのだろうか(するように設計するのだろうか)というところには興味がある。数年ならまだしも、十年二十年と同じことばかり言う人工人格はつまらないのではないか。だがどうやって学習させるのだろう。故人の情報収集と同じに限定しては進化がないし、かといって調整するのも違う気がする。これだけで一つの学問になりそうだ。

この問題にはもう一方の側面があって、つまりは当事者(死んだ人)の方の問題である。自分が死んだとき、それを人工人格に移植されたとしても、それは自分ではない。マネているだけだし、何よりも精度は大きく落ちる。どうせなら完璧に移植したいと思うのではないだろうか。そしてそれは自分だと胸を張って言いたいのではないか。

書籍「トゥモローメーカー」

の中で、人格をコンピュータに移そうと本気で考えている人たちの話が載っていたのだが、過去に私もコラムにしている。

転送問題の解決法

人格をコンピュータに移す際に起きる、いわゆる「アンパンマン問題」(アンパンマンの頭が交換されたら古い頭の意識はどうなるのか)とも言えるのだが、本コラムでその理論は完成済みだ。

現代ではまだ技術が不足しており不可能だが、この手法によって「そのAIが本当に自分と言えるかどうか」さえ解決できれば、機械への人格の移植をしたいと思う人は急増するのではないか。

こちらの方には期待(?)している。もしこの技術が本当に実用化するのなら、ぜひ試してみたいものだと思う。これで永遠の命が手に入るのだ。体も、ロボットを使えば問題ないだろう。ただ、やることは旅行とかゲームとか、普通のことかもしれない。

なお、こちらは2034年までの実現性はほぼないと考える。従ってこの書に言及がなくても問題ない。

Chapter2 「24時間寄り添うパーソナルAI」によるアフタースマホの生活革命

起きている間中、ずっとスマートグラスを付けていて、一日中それとやり取りしながら過ごす、とうSFは、既に世界中で多数登場している。そして多分、その多くは実現するだろう。つまり、

  • 個人の情報を全て知っているパーソナルアシスタントにより、日常のあらゆる行動の補佐を行う
  • 時により相談相手、恋人、伴侶、趣味やゲームの相手、ストレス発散の捌け口などと異なる人格を切り替えあるいは並列させて、個人の幸福度を高くする

といったものだ。ただ、これらは既定路線と言える。特に予言するほどのことではない。では何を予想すればよいのだろう。

例えば、これにより「恋人は要らない」「伴侶は要らない」「子供は要らない」などという人は続出するだろう。また、AIの助言を絶対的に信じ、自分で考えることを放棄する人、浅くしか考えない人が続出し、国・世界全体としては人の知的レベルは落ちるかもしれない。これに乗じてAIを改造して思想を吹き込もうとする思想犯や、戦争紛争を起こそうとする革命家なども出てくるかもしれない。

攻殻機動隊では、AIで脳をクラックされた人が事件を起こし、捕まった後に本人の意思ではないことが分かる、という描写が度々出てくるのだが、その劣化版のような事件が多発するかもしれない。

同じく、他人のスマートグラスに干渉して不快な映像を見せたり、行先を勝手に修正したりといった悪戯も可能になるので、そちら方面での対策も必要になるだろう。

もう一つ想像するのは、これも以前コラムに書いたが、AIによる代替応答である。これも過去に書いている。

全てAIが対応します

AI人格の応対が完璧だと、生身の人間とのコミュニケーションが鬱陶しく感じてしまうようになる。そこでそれはAIに任せ、自分はAIとのみ対話するようになる。相手は相手で同じことをしているので、直接の人と人との対話はなくなり、AI同士の対話になるだろう。

これは便利なのだが、人間自体のコミュニケーション能力は何ら磨かれないので、仕事ならともかく、友人づきあいや恋人・家族との付き合いではむしろ不都合がある。となるとそういう付き合いは減ると考えるのが自然であり、特に家族・恋人との付き合いが弱くなると少子化に拍車が掛かり、人類滅亡へまた一歩近づくことになる。

Chapter3 高性能・人型ロボットの「低価格化&大量生産」による空前の産業革命

これも以前書いているが、人型ロボットが人類に一人一台という未来は、あり得ない。これも過去に書いている。

働かなくてよい時代は来るか

主に資源の制約により、ロボットは一人一台まで作れない。ロボットの材料たる金属、プラスチック、半導体、エネルギーなどの供給面からくる制約により、全人類の数%に提供できるのがせいぜいだろう。

自動車の台数が日本では8300万台とのことだ。おそらく初期のロボットは数百万円になる。例えば300万円とすると、自動車では2000~3000万台だそうだ。ロボットの必要資源は自動車より少ないが、質は異なり、モーターで使う希少金属や銅(コイル)、半導体の割合が高い。鉄が大部分である自動車に比べ、資源インパクトは大きい。

そう考えると、当面10年程度ではざっくり1000万台が上限となるだろう。2034年の時点では数十万~数百万台である。そして自動車と異なるのは、物流や大規模工場、地方の家庭などではあまり普及せず、中小の工場やアッパークラスの家庭、小規模建築などで多く使われるようになるだろうということだ。

人型ロボットは人型である必然性のあるところに配置される。大規模の物流や工場では、人型ロボットより専用のロボットを開発した方が効率が良い一方、中小や家庭ではその対応が難しく、人を前提にした既存の機器類を使う必要があるためだ。もちろん大規模分野でも人手の操作をするところはあるから、少量は導入される。

そしてその代替は当然「今まで人がやっていたこと」である。そして初期のロボットは単純作業しかできないから、お守りも大変であるし、費用の割に大したことはできない。自動車に比べればはるかに故障率が高く、ソフトウェア的な不具合も同様だろう。寿命も短い。保守も高額になるだろう。

これが十年程度で人並み、人以上に動けるようになったとしても、コンビニで従業員として雇われるとか一般家庭での留守番と家事手伝いとか、危険作業の代替とか、夜間警備員とか、せいぜいその程度ではないだろうか。

こう考えると「空前」とは言うけれども、ちょっと便利になるだけ、という気もする。

Chapter4 AIドローンによる「戦争」と「日常」の再設計

ドローンによる攻撃については、既に記事を書いている。

トイズの時代とレーザー錆び取り器

映画「トイズ」の中で、もっと前で言うと「ウルトラセブン」の「アンドロイド0指令」にも、おもちゃの飛行機や戦車による攻撃が描写されている。

これらではAIの描写は無かったけれども、まあ自律的に攻撃しているように見えたので、当時としても同様のものは内蔵されていると解釈される。

ドローンによる戦争の形態の変化については、既に起きていることの延長である。これも以前に考察したが、

メタバースが世界を救う

ドローンは新興国と先進国の戦力差を埋めるのに貢献するため、小規模な戦争はむしろ広がるかもしれない。

現在の戦闘用ドローンは、巷で売られているプロペラ4基のものではなく、小型ジェット機に爆弾がついている「特攻型」だ。ミサイルより速度は遅いが数が多いので撃ち落とし辛く、迎撃率は100%には程遠いそうだ。となると攻撃は必ず(一部は)成功するので、ドローンの数を揃えられる方が有利になる。ただ、ドローンは射程距離が短いので、敵国近くまでドローンを運ぶ輸送機とその護衛が問題になるだろう。ドローンと輸送機の生産能力は戦力に直結する。

AIによる兵器の進化であるが、いわゆる「自律型兵器」としてどんなものが出てくるか、それによって戦術はどう変わるか、である。

まずどんな兵器が出てくるのか考えると、敵味方入り乱れているところで敵だけを見分けて攻撃するようなドローン、大きな脅威に対して大量のドローンで連携攻撃を仕掛ける戦法、下水道など従来使われていなかった侵入経路の開発、EMP攻撃ドローン、おとりドローン、情報窃盗ドローン、暗殺(敵に見つからずに特定の人を殺す)ドローン、などが出てくるだろう。

大量多種のドローンを用意しておき、戦局に応じて戦術をリアルタイムに変えるような、AI戦術立案システムの登場が考えられる。どんなドローンをどれだけ揃えられるかによって戦術の質は変わる一方、少ないドローンで効率的な戦術を立てられる優秀なAIは重宝されるだろう。

妨害技術としては、EMP攻撃、網、自動追尾によるレーザーや銃による撃ち落とし、音響兵器などが考えられる。クラックもあり得るし、GPS妨害なども考えられる。

自動追尾で言うと、AIによるその精度向上によって、核ミサイルを何らかの形で無効化する技術、例えばレーザー兵器による迎撃やEMP攻撃による無力化が考えられる。

このような技術の発達によって、いわゆる核抑止力(相互確証破壊)

https://ja.wikipedia.org/wiki/相互確証破壊

が成り立たなくなる時代が来ると、話は更に難しくなる。現在のロシアやアメリカが行っている戦争では核は使われていないが、相手は核を持たない国である。これが核を持つ国同士でも起きる可能性がある。

だが、弾道ミサイルはマッハ10、巡航ミサイルは時速数百キロ、ドローンは時速数十キロなのだそうだ。弾道ミサイルはさすがにドローンでは迎撃不可能とされていて、レーザー追尾でも非常に困難であり、弾道ミサイルがあることの優位性は変わらない。弾道ミサイルがある限り、核抑止力(≒核の脅威)はそんなに直ぐには消え去らないだろう。

Chapter5 人間の仕事の8割が消える時代の「混乱」と「希望」

8割の仕事は消えるが新しくできる職業もある、と言っているであろうことは予測できるが、以前に書いてある通り、私としては否定的だ。

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

その新しくできる職業も含め、人類の8割はいくら頑張ってもAIやロボットより効率の高い仕事はできなくなるそれらの人たちを生き永らえさせるには、社会保障(生活保護、ベーシックインカムなど)による救済しか考えられない

問題はその財源である。別に予測している通り、人口の20%が残りの80%を支える構造なので、準富裕層以上の負担は相当に厳しいものになる。所得税90%とか、その程度行ってもおかしくないし、企業には今の障害者雇用と同様の「人間雇用制度」が義務化されるだろう。AIやロボットより劣っているのは承知で、売上高や利益に比例した(相関した)一定比率での「リアルな人の雇用」が強制されるといったものだ。ビル・ゲイツ氏が言っていたロボット税・AI税の変形ないしは発展形である。

それで雇われている人はまだいい。アンダークラスの中でもまだ優秀な方なのだから。この層の年収は300万程度と予想する。それで8割のうち2割3割くらいは雇って貰えるとして、残り5割はそれにも引っかからない。

人数が多すぎるので補助は最低限だ。そんな中ではその中での相互助け合いが自然発生するだろうし、国はそれを推進補助するだろう。これは昔ながらの農業であり、作物の贈り合いになると考える。

昔から、そして今でも、農家は自宅で必要になる分の何倍もの作物を作り、近所に配っている。近所は近所で別の作物をやはり過分に作っており、それを貰える。そういった地域コミュニティでの農作物の相互のやりとりが復活するだろう。

これは土地を持っている人でないとできないので、アンダークラスの多くは地方に舞い戻るだろう。奇しくも都市集中がこれで緩和されることになるだろう。

これによって、地方で「貧しいながらもなんとか生活できる新中間層」が形成される。新中間層の年収は200万程度と生活保護レベルではあるが、農作物の相互交換により食糧事情は良く、生活は安定すると思われる。この層は5割のうち2割程度と思われる。

残りの3割は、純粋な生活保護層だ。年収はやはり200万程度だが、これしか収入がない。体力がない、性格に難があるなどにより、農業従事ができない、あるいは都市にしがみついて不法・不法すれすれの職業についている人などだ。今の生活保護層は1.6%なのでその50倍弱が生活保護層になる。当然ながら、それらはスラム化・犯罪集団化する危険がある。

「希望」のところに何が書いてあるか想像すると、上の「新しくできる職業」の他に、AIによる趣味の拡張や新たなコミュニケーション(サロン、グループなど)の拡大などが考えられる。そういうサークル的なものは従来もあったが、AIが噛むことによって、よりフレキシブルに、より嫌な点がそぎ落とされ、その人の温度感に合ったコミュニケーションが可能になるだろう。先に書いた「AIによる代替応答」の応用である。

参加者は皆いい人であり、本人にとって心地よいことしか言わない。いつでも参加し退席も自由、意見を言えば反映され、皆に褒めたたえられる。実際にはそうではないのだが関係ない。AI同士が会話してそのように見せることが目的だからである。外から見ていると気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更に言ってしまうと、そのサークルには実際にはAI人格しか存在しないかもしれない。そう都合よく自分の趣味興味に合わせたサークルがあるとは限らないが、そういう人を取りこぼさないために、AIが用意してくれるのだ。こちらは更に気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更にさらに言ってしまうと、例えば特殊性癖の人が集まったサークルでは、想像力の欠如や極端な思考により犯罪に走る人も出るかもしれない。AIはその兆候を見つけ、犯罪抑止に向けた誘導を行ってくれるだろう。これは警察主導などで実際に開発されるかもしれない。

また、これも以前書いたことだが、

人工知能の「お釈迦様」化

人工知能があらゆる社会の不具合を調整してくれることによって、犯罪の少ない過ごしやすい社会が実現するかもしれない。これは都市OSのようなものの発展形として十分に考えられる。

おわりに

こうして書いてみると、新しく考えることはあまりなく、既に多くの考察をしてきたのだなぁ、と思った。この後、中島氏がこの本について語っている幾つかのYoutubeを見たのだが、自分とは発想がかなり異なることが分かってなかなか面白かった。どうも私はディストピアの方が好みのようで、何を考えてもそういう結論になってしまう。

ただ、かの書はベストセラー、私のコラムは毎回数十人しか読んでいない。支持されていないのか、単に知名度が足りないからか、嘆かわしい限りである。

2026年5月10日日曜日

AI時代の中央集権モデル

高市氏は相変わらず憲法改正にご執心であるが、その内容は過去の自民党案をベースにしていることに変わりない。即ち、⓵自衛隊の明記、②緊急事態要綱、③地方自治体の弱体化、④国民の権利の弱体化、である。要するに中央集権国家にしようとしているわけだ。

一般的にこれらは、社会主義、共産主義、帝国主義、独裁主義、権威主義、などと考えられる。こういう国家は何れも、国の意思決定が素早くなる一方、政策の誤りがあっても訂正しにくくなる、汚職が発生しやすくなる、国民がバカになり(自ら考えず何でも中央にすがろうとする)長期的には国力が低下する、という問題があり、一般的には悪手とされている。

だが最近のいくつかの分析を基に別の視点で考えてみると、中央集権主義もそれほど悪くないのではないか、一理あるのではないか、と思えるようになってきた。今回はその分析について話すことにする。

根拠は二つあり、第一は

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

である。その内容を改めておさらいすると、AIとロボットの発達によって、労働市場が大きく構造を変え、いわゆるアンダークラス層(エッセンシャルワーカーやギグワーカーなどの低所得者・非就労者)の割合が現在の40%から80%にまで広がり、そのアンダークラス層の平均年収は190万円程度と生活保護レベルにまで落ち込む、というものだ。

この層の労働者は、自分の能力をフルに使ってもAIやロボットに勝てない。なのでいくら労働しても自分の生活すら維持できない。そういう層があっても人数が少なければ何とかなるが、人口の8割がそうなってしまうともうどうしようもない、という結論だった。

こういう時代になると、今よりも社会保障(再分配)の重要性は増してくるし、地方の効率化への要求も厳しくせざるを得ない。例えば中央から、地方の非効率を指摘し是正させるような要求を強く言う必要が出てくるはずだ。財政再建団体のように中央が乗り込んで大鉈を振るうようなことが頻発するだろう。

ただ、財政再建団体であってもできることは実は限られていて、例えばコンパクトシティ化の強制はできないし、インフラ整備の義務も消えることはない。人を強制的に移住させたり、民間企業ですら強制移動したり、という極端な施策を行わないと追いつかないのに、憲法法律がそれを許さない。そういう事態は、もう遠い未来の話ではなくなっているのだ。

個人の生存権まではさすがに侵さずとも、居住地の自由や最低限の文化的生活といった部分での強制介入はあり得る、という危機的状態が、今後二十年程度で起きる可能性がある。その時までに憲法や法律を中央集権寄りに修正しておかないと、やらないと自滅だが法的にできない、というジレンマに陥るかもしれない。

第二の根拠は、

新社会民主主義構想

である。ここで語ったのは「コーペティション」すなわち「何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する」だった。

現代の日本は、憲法上では地方自治体は国と同等の権利を持っていると解釈されている。例えば地方自治体のコンピュータシステムの選定は地方の判断である。これにより地方自治体は各々の判断で別々のシステムを導入している。これでいわゆるベンダーロックインが発生し、地方自治体同士の情報流通は困難であるし、複数のベンダーが同じ目的のシステムを開発しているため、俯瞰で見ると無駄が生じている。これに対し、例えば台湾では、中央がリファレンスとなるシステムを開発して地方に無償公開している。地方はそのシステムを使っても自分で開発しても良いが、ほとんどの自治体はリファレンスを使用しているため効率化が為されている。

また、国には基本的に地方自治体のシステムへのアクセス権はなく、地方からデータを集めようと思ったら地方自治体に要請して(自主的に)提出してもらう必要がある。ここでデータ表記の揺れやタイムラグ、などの余地が生じるが、これも非効率と言える。また、国がデータを集める目的として全体最適が考えられるが、地方によってはこれを警戒して意図的な情報操作をしたり抵抗したりといったことが考えられる。全体最適は得てして地方にとっては不公平な指示がされる可能性があるからだ。

この手の非効率は、日本の地方自治体ではいくらでも残っている。こういうものを統一するだけでも、地方の財政にはかなりのインパクトがある。コーペティションはそのための施策として十分に有望であるが、それを実行しようとすると、地方自治の独立性を盾に強い抵抗が起きるだろう。コーペティションを抵抗なく進めるためには、地方自治体の独立性を弱める必要がある。

これら二つを考えた場合の中央集権モデルは、高市氏の考えるそれとは少しズレがある。高市氏の発想は対外的・短期的・武力的に強い(強く見える)国家を作るものだろうが、こちらの発想はAI時代・アンダークラス八割時代に向けた国民の持続性確保である。自衛隊や非常事態要綱はここでは出てこない。地方自治体と国民の権利制限はするが、その目的はコーペティションとコンパクトシティ化であり、制限するものも事前に明確に定義できる。すなわち、情報システム及びデータ規格の統一と国のアクセス権確保、居住権と土地の所有権の一部制限などだ。

ここで、上に挙げた権威主義国家の弱点がどうなるかを改めて考えてみると、従来の権威主義国家とは違った事情があり、同列には考えられない。

従来の権威主義国家と決定的に異なるのは、AIの存在と8割がアンダークラス層だという事実である。AIが高度に発達した社会では、情報の流通は瞬時にかつ公平に行われる。分析も同様である。古来の独裁では情報は制限されるのが普通だが、この場合はむしろデータや分析は積極的に自由に行われるからである。これにより、政策の誤りや汚職についてはアッパーマス層以上の二割が皆公平に分析できるため、迅速に発覚し、速やかに訂正されると考えられる。

また8割のアンダークラスが自ら考えず何でも中央にすがろうとするようになったとしても、元々AIにかなわない程度の仕事・発想しかできない層であるため国力低下にはつながらない。むしろいらぬことを主張してアッパーマス層の足を引っ張るよりマシである。2割のアッパーマス層が自ら考えることを妨げられなければ、それで十分国力は維持できるだろう。

さて、これらの施策は憲法を変えずとも解釈改憲で通すことは可能だろうが、高市氏の憲法改正案にはこれらの発想が含まれておらず、今のまま改憲案が通ってしまうとむしろこちらの施策に不利になってしまう。その意味で、今の改憲論議は邪魔である。非常事態と違ってこちらは現実の問題だ。戦争にうつつを抜かすのではなく、地に足の着いた改憲論議を行って頂きたいものだ。

2026年5月9日土曜日

500日石油消費量半減プラン

 ナフサ供給「年明け以降も確保」 高市首相表明、中東以外で代替調達

このニュースを受けて、石油備蓄は安泰かと思って調べてみたら、全然そんなことはなく、むしろミスリードに近いことが分かった。結果として500日で日本の石油消費量を半減する必要があることが分かったので、その概要とプランを説明する。

まずこのナフサであるが、ナフサとは原油を一次精製した最初の石油である。ここから更に精製してガソリンや軽油を作っていくことになる。

そしてこの「ナフサ供給」だが、実際には輸入分と国内生産分があり、供給を確保というのは輸入分の話なのだそうだ。国内生産分は原油から精製するのだが、こちらは今回変わらない。

その比率は、国内生産40%、輸入が60%である。そしてその輸入のうち中東分が40%、20%がその他地域からの調達になっている。今回、中東分が止まったので、それを代替する量が年末まで確保できた、というのがその実態である。つまり国内生産40%、代替調達40%、その他20%、となる。つまり輸入の総量は変わらず、国内生産も変わらない。

その国内生産40%は当然原油から精製するので、現在では備蓄から精製するしかない。ここがミスリードである。原油が入ってこないと備蓄を食いつぶすことに変わりはないだけでなく、そのペースにも影響は(良い意味でも悪い意味でも)ないのだ。

では原油はどうかというと、元々90%は中東でその他が10%だったところ、その90%がほぼ無くなった。細々と再開や外部調達が行われているが、現状ではせいぜい25%というところである。政府はこれを今後数か月で50%にまで戻そうとしてる。だが、世界中で供給が不足していることや他経路からの供給能力などから考えると、50%以上は望めないというのが大方の見方なのだそうだ。

現在の備蓄量から計算すると、調達が(50%)回復するまでのタイムラグまで考慮し、およそ500日程度で備蓄在庫が切れる計算になる。

戦争はいつ終わるか分からない。当事者のアメリカは石油生産国であるので、この手の心配は少ない。他国が噛みついてきてもあのトランプのこと、そう簡単に折れるとは思わない。ウクライナの戦争も、1週間とか2週間とか言われていたが、未だに続いている。今回も年単位で戦争が終わらない可能性は否定できない。そして500日はあっという間である。

だからその間に需要、つまり石油消費量を現状の50%にまで削減しなければ、社会は持続できない。もし無策ないしは対策が不十分なら、(いずれにせよ備蓄は尽きるのだから)500日後には50%の供給以上は物理的にできなくなり、社会は大混乱に陥る。混乱と一言に言うがその規模は甚大であり、それこそ大量の(万単位での)死人が出るだろう。例えば(物流が半分になるために)食料供給量が50%に減ったら。(ガソリン供給が不十分で)救急や消防が満足に出動できなくなったら。社会不安から暴動が起きたら。危険は幾らでもある。

他国では既に制限に入っているところもある中、日本の備蓄は例外的に多く、500日の余裕があることは幸いと思うべきだろう。これを生かして段階的に緩やかに需要を減らしてやろう、というのが今回の提案「500日プラン」である。

プランは100日ごとに区切って行う。これはマイルストーンとして分かりやすくするためでもある。

  • まず最初の100日でマイナス15%を目標とする。これは緊急節約的なものが主流になる。官公庁や大企業で在宅勤務を義務化したり、運輸での共同配送ガイドラインを作成、あるいは重要インフラへの燃料確保の優先順位を発表したりする。
  • 次のフェーズは価格調整である。燃料補助を削減、様々な種類のサーチャージの追加、都市部の混雑課金などでマイナス25%を目指す。
  • 第三段階ではいよいよ配給制を一部導入する。大口需要家の使用枠を設定したり、燃料クーポンを試験導入する。ここでマイナス33%を目指す。
  • 第四段階では配給の全面適用を行う。また物流の共同配送を義務化、休日の不要不急移動を抑制する。ここでマイナス42%。
  • 第五段階ではいよいよマイナス50%にする。これらの施策をさらに強化し、配給上限を厳しくする。

もし戦争が終わったり更なる調達が確保できるようなら、途中から段階的に元に戻すようにする。例えば供給が60%になったら第四段階に戻す、75%になったら第二段階まで戻す、などだ。戻す速度は各々50日で良いだろう。いきなり戻してはダメだが100日かける必要はない。

これを政府が発表するだけで、世間はパニックになるだろう。まずは買い占めであっという間に食料や燃料が市場から消える。だが「その日」が来るまで無策であれば、そのパニックの規模は何十倍になるか計り知れない。情報を小出しにでもしながらでも、国民に少しづつ覚悟を決めさせる必要はあるのではないか。

2026年4月24日金曜日

超・貧乏人向け非常食


2026/05/04訂正:この打粉はアルファ化されていない可能性があることがわかりました。アルファ化されていないデンプンをそのまま大量に食べると消化不良を起こす可能性があります。以下のレシピは撤回します。加熱済みの炭水化物として、春雨以外ではパン粉が推奨されます。



以前紹介した

 貧乏人向け非常食

を更に改良し、一食当たり100円を切る超低価格非常食を開発したのでここに披露する。

前回の非常食で最もかさばり金額も高かったのは春雨だった。これは主に糖質(炭水化物)を担当するのだが、これをもっと安価にできないかと色々調べてみた。金額だけ見るとパスタが安いのだが、パスタは茹でる前提であり、非常時には難しい。水で戻すこともできるのだが、いわゆるアルファ化ができないと消化が悪い。非常時に腹を壊しては元も子もない。

そこで、加熱済みであることを前提に安い糖質を探したところ、ついに見つけたのが「打粉」である。

打粉 エースSD 業務用 (加工でん粉)

打粉は、うどんをこねる時にくっつき防止のためにつかうものだが、その正体はでんぷんであり、更にはあらかじめ加熱してあるのでそのまま食べられる。しかも100g当たり37円と春雨より圧倒的に安い(春雨は100g当たり100円)。

打粉のエネルギーは春雨とほぼ同等であるので、以前の

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)ケンミン 業務用はるさめ400g約400円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約530円

を春雨のところだけ置き換えてやると、

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)打粉 エースSD 業務用400g約111円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約241円

となり、あっという間に半額以下となった。

打粉は粉なので春雨より体積効率が高く、保存がより簡単になる。これら全材料を一斗缶二つ三つに分けて入れ、乾燥剤と脱酸素剤を入れてふたをし、ビニールテープで密閉すれば、2、3年の保存は可能である。

また、春雨と違って水で戻す必要はない一方、主要部が粉ばかりなので、団子にするとよいだろう。打粉、おから、油、塩、コンソメを混ぜ、水を足しながらこねてやると団子になる。これをそのまま食べる。ピーナッツとサプリは別に飲む。

家族4人が1か月食べられる量(120食)を用意しても3万円を切る計算であり、保存スペースも極めて少ないこの非常食、なんだかそのままセットにしても売れそうな気がする。どうだろう、おひとつ。

2026年4月23日木曜日

ポジティブ無敵の人

 
何もかも失ってしまいもう失うものがない人、という文脈で使われる「無敵の人」という表現だが、別の意味で無敵な人というのを考えてみた。それは、社会からのあらゆるしがらみからいつでも脱却できるために誰にも媚びる必要のない人、というものだ。これを「ポジティブ無敵の人」と命名してみた。

この人たちには、大きく四種類いると考えられる。第一は、いわゆる世捨て人、あるいは高度な悟りを得た宗教家である。第二は田舎で自給自足の生活をしている人だ。第一、第二の人の多くは貧乏で、例えば高齢になって動けなくなるともう死ぬしかないという意味ではあまりポジティブとは言えない。

第三はいわゆるFIREを達成した人で、自己資金を十分に持ち、それを運用して、いわゆる不労所得だけで生活できる人だ。こちらは必要な自己資金が多すぎてあまり現実的ではない。そして第四が、ここで語ろうとしている種類の人だ。

それは、ハイテクやIT知識を駆使して自給自足をする人である。この種類の人は恐らく今はいないと思われるが、将来的な技術進歩によって出現する可能性がある。

それは、自前の植物工場で食料の多くを高効率生産し、太陽光発電でエネルギーを賄い、AIプログラミングなどによる収入で現金を必要とする支払いに対応する、というような人々だ。

植物工場については以前も言及したが、例えば3LDKの部屋の一つを潰せば、家族3、4人を何とか食べさせていくだけの量は生産可能である。だがまあそこまで気張らなくても、家賃はどうせ払わなければならないのだから、現金収入を一部割り当てれば良い。

AIによるプログラミングはどんどん精度が上がっており、プログラミングの敷居は低くなりつつある。敷居が下がれば、単価は下がるが需要は増えるというのは世の常である。今までは望むべくもなかったような詰まらない用途や、個人で異なるきめ細かな用途にもプログラミングが適用され、それに対応するプログラミング需要が増えていく。

そういう中で、安価にプログラミングを受注し短納期で納品するような「ご近所さんプログラマ」が多数出没し、日銭を稼ぐという未来は考えられる。

これはプログラミングに限らず、電子コンテンツであれば何でもよい。VR内の服や小物を作ってほしい、という需要は既に存在しており、結構稼いでいる人もいる。そういうものを丹念に拾っていけば結構な収入になるし、需要を拾うのもAIに任せられる。

こういう人は、昔の農家と同じく、自給自足ができているので、社会の誰にも媚を売る必要がない。その意味で無敵の人と言えるのだ。だが第一や第二のタイプと異なり、生活には余裕がある。稼ごうと思って頑張れば多く稼げるし、のんびりやろうと思えばそうもできる。その意味でもまた無敵と言える。

第四のポジティブ無敵な人は、第三の人と同じく、都心でも生活可能である。不便を我慢しなくても良いという点、第一や第二のタイプと異なる余裕を持っている人たちだ。

さて、そんな人になりたいかというと、個人的には正直あまり魅力を感じない。第三の生き方には少し魅力を感じるが、もしFIRE可能になったとしても仕事は続けるだろうと思う。というわけで当分、私は無敵の人にはなれそうにない。

2026年4月20日月曜日

贈与税率を下げよう

 
有名な金持ち本「DIE WITH ZERO」における著者の主張について生成AIと議論していたら、いつの間にかそういう結論に達してしまった、というお話。

著者の主張は、必ずしも財産ゼロで死ぬようにしよう、というものではない。多くの人は使い切れずに溜め込んだまま死んでしまう、これはもったいない、もっと計画的に資産を減らしながら死に備えるべきだ、というものだ。

これに対し、当然反論はあった。その第一は「人はいつ死ぬか分からない」というものだ。これに対しての著者の反論は、「ほとんどの人は資産を増やしながら死んでいる」である。つまり、世界最高の長寿の人であっても122歳が限度であり、99%の人は102歳(日本の場合)までに亡くなるのだから、そこに向けて計画的に資産を減らしながら(自分のために使いながら)生きるべき、というものだ。これは確かに理に適っている。

もう一つの反論は「いつ病気になるか分からない、特に高額医療」というものだが、これに対し著者は「それは保険で賄うべき」というものだ。こちらも理に適っている。

だが、その次の反論から様子が変わってきた。それは「相続させることは有意義」というものだったが、著者はそれを否定している。「相続を目的にすることは間違っている」というのだ。これは価値観の問題だと思うのだが、著者はそれに加えて「子供に渡すなら、十分に若い20~40代の頃に渡すべき。この時期が一番カネが掛かる時期であるが、相続は60代に発生するので既にピークは過ぎており、タイミングとして最悪だ」というのだ。

だが、相続税には大きな控除がある一方、贈与税は控除もほとんどなく税率は極端に高い。だから贈与より相続にしたほうが有利だ。それを指摘したところ、どうも著作にはその辺が触れられていないことが分かった。

そこで改めて、日米の相続税・贈与税に関する制度や運用の実態を調べてみたところ、そもそも米国では相続税と贈与税の制度が一体であり、税率も低く、控除額も極めて大きい事がわかった。結果として、**日本では相続税贈与税が税収に占める割合は8~9%なのに対し、アメリカでは0.1~0.2%**なのだそうだ。ほとんどの米国民にとって相続税や贈与税は関係ない世界なのだ。

DIE WITH ZEROの主張は日本では通用しない、ということで、ここで議論はいったん切れるのだが、その時に分かったことでもう一つ気になったのが、日本はアメリカに比べて世代間格差が大きいということだ。日本では家計金融資産の70%以上を65歳以上が保有しているが、アメリカでは40%に留まる

その理由は主に年功序列や社会不安からの溜め込みなどということなのだったが、まあそれは分かるとして、日本では今、高齢者バッシングが起こっている。その理由は若者が貧困だからなのだが、この結果を見ると、高齢者から若者への資産移転として「相続税率を増やして贈与税率を減らす」という方法が有用であることが容易に想像できる。

先にも言ったが、日本は贈与税率が相続税に比べて極端に高いから、高齢者は贈与をせず相続させようとする。その税率が逆転すれば、贈与=若いうちの資産移転が進むはず、というわけだ。

現在の相続税と贈与税の税率は以下のとおりである。

相続税

課税取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜2億円以下 40% 1,700万円
2億円超〜3億円以下 45% 2,700万円
3億円超〜6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

贈与税(一般:兄弟・夫婦間、未成年の子への贈与など)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0
200万円超〜300万円以下 15% 10万円
300万円超〜400万円以下 20% 25万円
400万円超〜600万円以下 30% 65万円
600万円超〜1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超〜1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超〜3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税(特例:父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0
200万円超〜400万円以下 15% 10万円
400万円超〜600万円以下 20% 30万円
600万円超〜1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超〜1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超〜3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超〜4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

どうだろう。まさに桁違いの税率だ。今の税率なら、贈与なんてバカバカしい、相続一択、と考えるのが自然である。だからこそ、これを変えることの意味は大きい。

このアイデアを生成AIに聞いてもらったところ、珍しくしつこく否定してきたのだが、どの反論も稚拙で簡単に論破できた。ただ一点、若者はマネーリテラシーが低いはずだから、ただ渡してしまえば無駄遣いに終わるだろう。それは贈与する側がしっかり見てやれるような制度を作ってやればよいと思う。例えば信託のように、権利を完全には与えず一部で手綱を握れるような制度だ。

もちろん若者の所得を上げる政策は別に行うべきだが、この提案は十分に検討に値すると思う。

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