2023年4月24日月曜日

超音波モーターの原理によるVR用トレッドミル

 


VRにおけるリアリティ問題の一つに、その場で動くのではなく移動する場合、つまり歩いたり走ったりすることが挙げられる。実際にはその場にいるので、歩いたかのように足場を調節してやる必要がある。

これを実現する方法として、すり鉢状の滑りやすい足場を作っておく方法と、トレッドミルを使う方法がある。トレッドミルは縦横に動かす必要があるので、ランニングマシンのようには行かず、細い大量のベルトを縦横に這わせるため、構造が複雑で、ゴミを挟むなど故障の確率も高くなる。また、ベアリング(金属球)を多数使う方法も考えられるが、これにも故障やゴミの問題があるのと、足裏がゴツゴツする。そしてこれらはモーターを使うため、騒音が発生する。

これを解決する方法として提案するのが、超音波モーターの原理を利用するものである。これを解説する。

  1. まず、薄い伸縮性のある膜を用意する。人はこの上に立つ。一般的にはゴム等だ。
  2. この裏に、多数の硬い板を貼り付ける。板と板の間には若干の隙間を開ける。形状は三角、四角、六角など、あまり隙間を空けないようなものなら何でも良いが、とりあえず正方形を考える。大きさは、可能な限り小さくする。
  3. 板の裏に振動装置を取り付ける。この振動は、XYZ各軸に対して正弦波振動をする。これは、立方体のXYZ軸各々に圧電スピーカーを貼り付けることで実現可能なはずだ。
  4. そのスピードと位相は各々制御され、複数の立方体が波のように連動して動く。これをコンピュータ制御する。振動装置は超音波領域で動くものが良いだろう。
  5. また、超音波振動装置は圧力センサの上に配置するものとし、その圧力パターンもリアルタイム検知できる。上のキューブのZ軸のものが兼用可能かどうかは検討に値する。

まず、この装置の上にモノを置くと、平面は一見変化がないのに、蛇が鱗を波打たせて進むように、移動させることができる。その角度、速度は自在に制御できる。

次に、圧力センサにより、足裏の位置・角度が分かる。つまり踏み出そうとした時に、その方向と強さが分かるわけだ。

圧力センサからの情報を基に超音波振動装置を制御することで、この板はトレッドミルとして機能し、実際にはその場にいるのに、あたかも歩いているかのような感覚を得ることができる。

この装置の特徴は、まず完全にゴムで覆われているため、ゴミを挟み込む心配がないことだ。また機械的可動部分はないため故障の可能性も低い。音も静かだ。恐らく費用も安く抑えられるだろう。

これによって安価にトレッドミルが作れれば、VRの可用性は大いに向上するだろう。

2022年10月15日土曜日

バイオトイレのアイデア


バイオトイレ、すなわち微生物で糞便を分解することで下水に頼らないトイレについて、アイデアを提供する。

従来のバイオトイレには、比較的大きな問題がある。それは、おがくずタンクのおがくずを定期的に交換しなければならないことだ。

バイオトイレで用を足すと、撹拌機により、糞便はおがくずタンク内に満遍なく混ざってしまう。つまり、交換の直前に用を足した場合、まだ分解が終わっていないものを交換することになってしまう。これを避けるためには、交換の直前半日から一日程度は排便しないようにする必要がある。交換する量も、一回100L以上とかなりのものになる。年に数回とはいえ、まず計画的にトイレを我慢し、それだけの量のおがくずを一度に買い、保管し、交換し、捨てるのは大変だ。近年ではゴミ袋も有料であるが、一度に大量に捨てると自治体に目を付けられるという話もある。そういうものは心理的抵抗にもなる。

バイオトイレが普及しているオーストラリアでは、トイレは2つあって、交互に使うのだそうだ。まあこの方法でも良いのだが、土地の狭い日本としては参考程度にしかならない。

この問題を解決するには、おがくず交換を連続的に(量を少なく回数を多く)行えるようにする必要がある。そのためには、糞便を全てのおがくずに均等に混ぜるのではなく、一部のみで混ぜ、それを順次入れ替えていくような仕掛けが必要だ。

もう一つの大きな問題点は、バイオトイレの本体はトイレの下部に、かなりの体積をもって設置しなければならないということだ。これにより、端的には一軒家でしか使えない。マンションの10階で使おうと思えば、介護用のいす型やポータブル型しか選択肢が無くなる。

例えば、正和電工のKBT-15は家具調の椅子形状をしており、座面を外すとバイオトイレになる。これは一日16~20回の使用が可能で、おがくず量は0.15㎥(150L)。重さは150㎏にもなる。重い原因は、全体が頑丈な鉄でできているからだ。攪拌を150Lのおがくず全体で行うため、モーターも大きく重くなり、筐体にも強度が求められるのだろう。

便座直下におがくずがあるタイプは、通常の便器とは形状がかなり異なり、足回りに余裕がない。筐体の金属もむき出しである。正直、実用一本やりで美しくない。別荘ならともかく、都会の自宅で毎日使おうという気にはならない。

つまり、運用や形状が市場を狭くしているのである。一般のトイレに近い形状と簡単な保守が実現できれば、市場はぐんと広がるはずだ。

ここで考えるのは、既存の(つまり一般家庭の)トイレを置き換えることが可能な、デザイン的にも既存のトイレに近いトイレである。そのための基本方針は次の通りである。①便器の外形は通常便器に近いものにする、②おがくずタンクは座面直下ではなく背後に置く、③おがくずは年2回100Lではなく、毎週5Lといった少しづつの交換とする、④(床下に余裕のない)既存のマンションのトイレをリフォームで代替できるようにする。

ここで肝になるのは「粉体輸送」である。形状を自由にするためには、便器内でおがくずと攪拌した後、別の場所にあるおがくずタンクにその混合物を輸送する必要がある。また、おがくずタンクから便器におがくずを補充することも必要だ。このための技術が粉体輸送で、代表的にはスクリューコンベア、バケットコンベア、吸引、圧送(圧搾空気で送る)等がある。

この中で注目すべきはスクリューコンベアだ。スクリューコンベアには、チューブ状になっていてある程度経路を曲げることのできる「フレキシブルスクリューコンベア」というものがあり、これを使えば便器から背後のおがくずタンクにおがくずを送ることが可能になる。

これを基本にして、以下のようなものを考えてみた。

まず便器だが、形状は既存の物を踏襲しつつ、大容量のおがくずを貯められ、また便器の中で撹拌ができるようなものを作る。例えば5Lくらい入るものにする。撹拌機は、既存のバイオトイレで使っているものの小型版でよい。

ここでおがくずタンクを先に説明しておくと、従来はトイレの下(地下、便座下)に水平に設置していたものだが、ここでは便器の背後に縦型に設置する。水洗トイレの水タンクをもっと巨大にしたようなものになる。ここではとりあえず、奥行250、幅900、高さ1000mmを想定する。このサイズは、単純計算では225Lとなる。なお、既存の水洗トイレに対しての違いとしては、コンセントと排気パイプは必要である他、手洗いは完全に別系統になる。

排便したら便器内でおがくずと撹拌する。十分に撹拌ができたら、それをフレキシブルスクリューコンベアで便器下部からタンクの上部に送り、おがくず溜まりに落とす。

これが終わったら、おがくずタンクの下部から同じく粉体輸送でおがくずを汲み上げて、便器に投入する。これがワンサイクルである。

大と小ではおがくずの状態が大きく違うだろうから、おがくずタンクの上部四分の一程度は投入都度撹拌が必要であろうと考える。またこの部分は、微生物の活動を促進するためヒーターで保温をする。この部分は排泄後間もないため水分量も多く、ヒーターは効果的に水分を蒸発させてくれる。

タンクの大部分は力が掛からないので、丈夫に作る必要はない。上部四分の一程度の部分だけは可動部があるので注意が必要だが、そこを含め基本的にはプラスチックで十分だろう。これで軽量化が実現できる。

容易に想像できる通り、このおがくずタンクでは、上部は排泄攪拌から時間が経っておらず、下の方ほど時間が経っているため、分解の程度が進んでいる。このため、おがくずを下から取り出して廃棄し、新しいおがくずを上から投入すれば、連続的な交換が可能になるわけだ。

おがくずは全部でなく一部のみ撹拌するため、攪拌機構及びモーターの小型化に貢献する。また、おがくずを循環させること自体も一種の攪拌になっており、好気性微生物の活性化に有利である。

保温をタンク上部に限ること、タンクをプラスチックにすることは、軽量化の他、金属より断熱性があるために節電に効果がある。

おがくずの交換は、便器の横に排出口を作っておいて、便器へのおがくず補充とレバー等で切り替えて出せるようにしておけばよい。そこには取り外し可能なタンクをつけておく。一方で補充は、おがくずタンクの上から蓋を開けて、減った分だけおがくずを投入する。

便器は、おがくずタンクと直結するように作る。まずおがくずタンクを奥に設置し、便器を前からはめ込む仕掛けである。おがくず排出口も投入口も斜めになっていて、便器にはフレキシブルスクリューコンベアは届かない(穴だけ)ようになっている。便器内攪拌器は機構だけが入っており、モーターはおがくずタンク内にあって、ギアで動きを伝達する。はめ込むことでギアがはまる。

おがくずの必要量だが、既存品だと0.5立方メートルで1日当たり80-100回という目安がある。ここから、5Lで1回という計算になる。1日の使用回数を20回(4人家族で1人5回)、おがくず使用量を5L/回とすると、100Lで1日分になる。上に想定したタンクであれば、150L程度は入るものと考える。これは、上で事例を示した介護用トイレと同じである。これにより、交換するおがくずは1日半経過したものとみなすことができる。

このサイズのモデルの場合、毎週5Lづつ交換することで、年間240Lのおがくずを交換できる。

なお、ジャストアイデアであるが、ここでおがくずではなく、木質ペレットを投入することは考えられる。木質ペレットはおがくずを5倍程度に圧縮したもので、猫砂として市販されており、全国どこでも簡単に手に入る。投入後は上部四分の一の攪拌によって水分を吸収し、膨らんで元のおがくずに戻る。おがくずの入手を不安視する向きへの対策になる他、かさばらないので保管に便利である。

保守モードとして、便器からおがくずを排出するだけのモード、及び便器におがくずを補充するだけのモードが考えられる。前者は点検や修理で便座を外す場合、後者はおがくず交換及び修理完了後の補充に使われる。ヒーターやタンク上部・便器内攪拌についても各々自動の他にオン、オフのモードが設定される。

このトイレは、既存のバイオトイレの市場とは大幅に異なる、新築市場やリフォーム市場に広く入り込むことができる。即ち普段使いのトイレとして使用できる。これで下水と独立するため、地震等で下水が不調の時にも、普段と同じトイレを使い続けられる。但し停電中は使えないので、ポータブルバッテリー等の準備が推薦される。

また停電時には、ビニール袋を便座に被せ、補充用のおがくずを振りかけて縛って保存する、という使い方もできる。これは市販の非常用トイレキットとほぼ同じ方法だが、おがくずのストックが常にあるが故に、一般家庭のように特別な準備が必要ない。

また、従来のトイレ以上に便利なところもあり、それは段差が必要ないことだ。廊下と段差のないトイレが実現できるので、高齢者や要介護者でも別にトイレを設置する必要がないことは注目に値する。

このトイレの欠点は、コストと故障率だろう。フレキシブルスクリューコンベアが二つ入るため、水洗はもちろん従来型バイオトイレに対してもかなり故障率は上がるだろう。このため、この部分を保守しやすいように設計する必要がある。例えばフレキシブルスクリューコンベアのみの交換が容易にできるようにする工夫が考えられる。

初期導入コストはやはり機構が複雑になる分高くなるが、一方で市場が広がることによる量産効果が出る可能性も期待できる。ランニングコストは、おがくずは100Lで5千円程度と予測する。ヒーターの電力は20W程度と見積もる。合わせて年間で数万円程度だろう。水洗では水道料がかかるから、その分を差し引けば、結構良い勝負になるのではないか。そして合併浄化槽よりは大幅に安く上がると考える。

また、既存のトイレの中では、背後に上下水が来ているものもあると思われる。これは便器には必要ないが手洗いには使われる。それがこの巨大なおがくずタンクを設置する際に邪魔になる。リフォーム前提なら大改造も可能だろうが、そうでない向きに対してはう回が必要となる。このためには、もっと縦長で幅の狭いおがくずタンクの設計が必要になるかもしれない。例えば幅を600mmにして高さと厚さを増やす、等だ。これは便器右側タイプと左側タイプが必要になるかもしれない。

もう一つの欠点として、一回排便したらおがくずが入れ替わるまで数十秒待たなければならない。この問題の回避方法はない。

2021年4月15日木曜日

万科事典


中学高校ではもうスマホは当たり前だと思っていたのだが、意外にもスマホは授業中は禁止で、電子辞書なら許される、というところは結構あるらしい。なぜかというと、スマホだと勉強以外でも使えてしまうから、なんだそうな。まあそれには一理ある。あまり理性が強く効かない子供の場合、そういうことは仕方のないことなのだろう。一方で電子辞書は強力だ。百冊以上の本に相当する情報が、あの大きさに収まるのだから。

電子辞書について改めて調べてみると、WiFiで辞書を追加できる、等もあるらしい。そう考えると、スマホとの違いは僅かだ。だが、ストック型の情報を備えるという意味では、スマホとは少し違う使い方ができそうに思える。

電子辞書がKindleと決定的に違うのが、検索性、または閲覧方式である。単語の検索は殆どの場合辞書横断で、まず単語を入力してから辞書を選ぶ。つまり、英訳したい場合と意味を調べたい場合、百科的な知識、あるいは数学や物理の定理公理、それらのどれを知りたいのかは、まず単語を入れ、その後に選ぶ。

スマホで検索する場合、ここは曖昧だ。とにかくその言葉に引っ掛かれば何でも良いので、時事や人気ブロガーのブログやつぶやきなど、上位に来るページは玉石混交だ。さすがに学校で使うにはこれでは不味いと思うが、一般人が使うと仮定したとしても、やはりあまり好ましくないような気がする。やはりある程度統制された検索結果が出てきて欲しい。

スマホのアプリに似たようなものがないか調べてみたのだが、コトバンクとLogoVistaが引っ掛かった。コトバンクは語学と百科のみで拡張はできない。LogoVistaは辞書が豊富に入れ替えられるが、市販のハードウェアの電子辞書に比べると辞書単体毎の価格が高く、同じように揃えると遥かに高額になる。一長一短といったところだ。

ここで考えるのは、百科事典とは何なのか、である。かつての金持ちの本の定番と言えば、書棚にずらっと並んだ百科事典だった。その名の通り、それさえ読めば何でも分かるはずが、実際にはそうでもない。辞書横断検索なども、本来は百科事典があれば事足りるはずのものではないか。でもやはり少し違うようだ。

国語辞典と百科事典では記述量が違う。一つの言葉をどこまで掘り下げて知りたいかは人それぞれだ。それどころか、百科事典ではまだもの足らず、その先が知りたいということもあるだろう。例えば「量子力学」と検索して、量子力学が何なのかが分かったら、量子力学自体を勉強したいと思う人もいるだろう。今の百科事典には、その先がない。しかし実際には、量子力学の教科書や最新のトピックなど、知ろうと思えばWebで調べられることは山ほどある。

そう考えると、単なる辞書横断検索だけではなく、スマホ検索のように自由奔放すぎるのでもなく、その中間的な検索ができる機能が求められているのではないか、と思う。

それを仮に「万科事典」と呼ぶことにしよう。これは、ある単語を検索した時、言葉の意味は国語辞典で、詳細は百科事典で、専門用語は専門語時点で、各々表示した後、「更に詳細を知りたい場合はこちら」のボタンがあるものだ。そのボタンを押すとオンラインにつながり、AIがその時点での詳細に繋がる情報をリンク形式で示してくれる。

それは単なるGoogle検索結果ではダメで、専門家がある程度納得できるような、ゴミやウソの情報を排し、正しい、詳しい、分かりやすい情報が提供される必要がある。そしてリンクまでは示せても、その先は有料で良い。例えば本を買え、でも良いし、イントロだけ示して後半は課金、でも良い。

恐らくその中心は、論文や白書、市販の本等が中心であり、一部はWebだろうが、ある程度権威のある組織が編集・発行しているものになる。それを選ぶのは、専門辞書や百科事典の編纂者だろう。リンク先で更に操作が必要なものはなるべく外し、検索まではした状態で手渡すようにする。

そういう電子辞書が、ハードでもスマホアプリでも良いが一つあれば、この世のあらゆる知識は簡単に我が手にできる、という状態になる。Google検索で四苦八苦する必要はない。そうなれば、それがサブスクリプションだったとしても、結構重宝するのではないかと思う。


2020年12月23日水曜日

VR空間では車椅子で移動しよう

 


別の投稿でも書いているが、VR普及の条件はビジネスに使えることだ。即ち、①会議・打ち合わせ、②プレゼン、③コラボレーション(共同作業)、④PC作業(大画面、多画面)、これらが「使い勝手よく」できる必要がある。

これらに適合するVRアプリとしては、EngageBigscreenImmersed等があるが、このうちEngageだけが下半身までを表示するようになっている。また、等身大のリアルなアバターになっているのもEngageだけだ。だがアバターの動きは不自然で、不気味の谷以前の問題になっている。

ビジネスでは歩き回ったりしないし、周りを広くすることもない。むしろ机に座り、机にはキーボードとマウスがあるはずだ。もしコラボしたくなったら、歩いていくのではなく操作で近づくことになる。これはリアルなアバターよりも、下半身のないBigscreenやImmersedの方が自然だ。しかしこれらのアバターはかなりアニメっぽく、ビジネスには向いていない。

そもそも、Oculusのスタート時には、周りを片付けて、動くエリアを決める、といった操作が必要だが、そんなものはUIとしての使い勝手を大いに損なうものだ。気軽にさっと被って終わったらさっさと取る、そんな気軽さがないとビジネス用には不適格だ。

そこで提案するのは、Engageのようなリアルアバターで、且つ車椅子で移動することを前提とするUIである。

事務机の前で椅子に座っている状態でVRゴーグルを被ると、VR空間でもやはり自分は電動車椅子に座っている。小型のテーブルもついていて、そこにはキーボードとマウスも見える。車椅子の移動用に、小さなジョイスティックも別に用意する。キーボード、マウス、ジョイスティックは、現実のUIとしても存在する。あるいはキーボードを中心として一体化したUIを作っておくのも良い。

これを前提としたVR空間は、下半身のスキャンやトレースが必要ないので、上半身しかない不自然なアバターでもなく、等身大だが歩き方が不自然な不気味の谷を作ることもなく、容易に構築できる。また、移動速度をかなり速くしても違和感なく表現できる。立ったり座ったりといった運動はできないが、ビジネスにはその程度で充分だ。

VRゴーグルではよく出てくる、両手に握るコントローラは、この世界では不要だ。キーボードとマウス、ジョイスティックがあれば良い。指はカメラでトレースできるから、大画面を立ちして選び、マウスで操作すれば良い。

事務机、会議室、映画館などでは、小型テーブル車椅子を考慮した作りが必要になる。即ち道幅は広く、席の間隔も広く、部屋備え付けテーブルは小さめになる。

また、VRであることを活用して、会議など業務を自然にスムーズに進めるためのメタファを取り込むことをお願いしたい。例えば会議なら資料が不可欠だが、席につくと自動で資料がテーブルに揃うとか、スケジューラから拾ってその日前後1日分の資料フォルダが小型テーブルに準備されるとかがあれば嬉しいし、フォルダから出した資料はPC画面のように前面に出るのではなく、テーブルに置かれるように表示されるのが望ましい。全員が見る資料は投影されるようにする。手元と全員の資料は切り替えるのではなく、視点を変えることで複数見ることができる。

主催者の方も、準備には会議室に行って資料を置いてくる、というようなメタファがあると良い。会議室には資料を置くフォルダがあって、置くところによって開示レベルが変わるなどといったことも可能だろう。また、議事録が自動で作成されるとか、 類似タイトルの会議で資料が通して閲覧できるような機能があると嬉しい。

更には、オフィスのように皆が集まっている場において、相手に気軽に声を掛けて打ち合わせをスタートしたい場合に、音声アシスタントにそれをお願いするような機能があると嬉しい。

2020年12月22日火曜日

水素ガスヒーター


 ガスファンヒーター、石油ストーブなどは、北国では多く使われている。これらは換気が必要だが、その主な理由は一酸化炭素中毒の危険だ。燃焼不良が起きると一酸化炭素が大量に発生するが、一酸化炭素中毒は死に至る危険なものだが、人はこれを吸っても気付かない。それが危険である理由でもあるのだが、もしガスに炭素がなければどうか、と考えてみた。

原理的に、水素ガスだけであれば、幾ら燃えても一酸化炭素は出ない。炭素がないからだ。一酸化炭素中毒の危険は、ほぼゼロになるはずだ。

もちろん、酸素は消費されるので酸欠の危険は相変わらず残る。だがこちらは換気をすれば直ちに回復するし、息苦しくなるので分かりやすいはずであり、一酸化炭素中毒に比べればリスクは低いだろう。

都市ガスを改質して水素だけを取り出す技術は既に存在するが、都市ガスレベルでの普及は無理なので、最初はガスコンロ用のガス缶のような形で普及させる。これなら1本交換する度に換気、等と目安を付けられるので、更に危険は減るだろう。

また、水素が燃えればそれは水蒸気になるから、加湿にもなる。冬は乾燥するので、こちらも有利ではないだろうか。

2020年12月15日火曜日

一日中VR


 ブルース・ウィルス主演の映画で「サロゲート」というものがあった。現実世界では人間そっくりのロボットを動かし、自分は部屋の中でそれを操作している、というものだ。今見てみると、あまり現実的ではないな、と思うようになった。あの操縦法が許されるのなら、普通にVR空間にしてしまった方が遥かに簡単だからだ。自分も相手もVR、それで良いではないか。

別項でも示している通り、VRでの生活が長くなってくると、今のようなVRゴーグルでは都合が悪い。まず目の周りが蒸れるし、遠くの人は良いとしても目の前の家族と縁遠くなってしまう。電池も一日は保たない。これを解決する方法を考えてみる。

個人的に注目していたのは、Focals 2020だった。これは黒縁メガネとほとんど変わらない外観を持つ、MRグラスだ。しかしGoogleに買収された後音沙汰がない。

また、このFocalsとて一日中は動かせない。大きさを取ればバッテリや画面の質が落ちる、これは必然だ。これを何とかしなければならない。

そこで考えるのは、室内にいることを前提として、電源や映像を外部から供給することだ。そこで、こんなものを考えてみる。

Focalsと同じく、大きめのメガネ、あるいはサングラス程度の大きさの端末を想定する。基本的にはMRであり、つまりはグラスは透明で、向こうが見える。ディスプレイの形式もFocalsと同じである。但し解像度と視野角は改良してほしい。

また、普段はMR、アタッチメントでメガネを覆うことでVR兼用にしたい。これは他のVRグラスでも例があるので難しくないだろう。それがかなわないのであれば、VR用とMR用は別のグラスになる。この場合でも、従来よりは薄く軽くできるだろう。

基本的には、テレビと同じように映像を受信して垂れ流すだけとする。Miracastのような技術を使えば良い。電源も無線供給とする。ドコモが研究しているWi-Chargeは、4mの給電が可能だそうなので、これを使用する。ツルの部分には骨伝導スピーカを付けておく。後で述べるがマイクは不要である。

このシステムに置けるもう一つの主役は、天井シーリングに付けるコントローラである。このシーリングには、もちろん照明は兼用するが、その他にグラスのコントローラとしての機能が備わっている。

その一つは、言うまでもなく上の無線給電と画像データの送信である。天井からはせいぜい3mなので、Wi-ChargeもMiracastも能力としては充分だ。また外部との接続にはWiFiを使い、WiFiルータと接続する。

もう一つの機能は、グラス装着者の顔の向きや手の動きを解析することである。グラスにセンサを付けるとそれだけ複雑になり、電力も消費するため、その機能を移すわけだ。グラスに付けるのは再帰性赤外線反射材のような簡単なものに留め、カメラでその向きや位置を検知する。その解析結果はそのままシーリング内のコントローラが使うため、タイムラグは最低限に抑えられる。

カメラは2、3台を位置を変えて設置すれば、立体的に検知できる。また指先や手首にも反射材入の手袋ないしは腕輪や指輪などを付けておけば容易に検知できるので、CPU負荷を軽減することができる。これにより、コントローラを手に持たなくても操作ができるようになる。

室内で使う前提であるため、マイクをグラスに仕込む必要はない。シーリングに仕込んでおけば良い。一方で音声は一人ひとりに送る必要があるため、上のようにグラスを仕込んだ骨伝導を使用する。マイクがないことは、通信が一方向で良い(シーリングからグラスへ)ことを意味しており、グラスの構造の簡略化に貢献する。

Focalsクラスの軽量、また目の周りを厳密には覆わないものであれば、一日中掛けていても疲れず、また蒸れないで済む。初期にはここまで軽快なものは望めないだろうが、それでもグラスが大きめになる程度であり、シーリング側は変わらない。シーリングの能力が十分にあれば、部屋に4、5人いても同時に使える。グラスは端末なので安価に作れるから、この点でも合理性がある。

シーリングは新しい鍵になる、というのは以前も投稿したが、こうなるとホームサーバ機能も含め、シーリングに集約した方が良い気がする。例えばワイヤレスキーボードを机の上に置いて、ディスプレイはグラスに表示する、というような使い方をすれば、普通のPCと同様のことができるだろう。壁に仮想的なテレビを置くことで、テレビやビデオを見ようと思えば、そのための情報もシーリングに集中する必要がある。

ここまでくれば、以前提案したように「全てがVRで表現され、何もない部屋」が現実味を増してくることになる。固定電話、FAX、本、テレビ、カレンダー、掛け時計、置物、BDプレイヤー、スマホ、音楽プレイヤー、PC、タブレット、腕時計、等は全てバーチャルになり、棚に仕舞うべきものはどんどん仮想世界に逃げていく。朝起きたらまずグラスを付け、会社や学校もバーチャル世界で済ませ、趣味も雑用も全て同様にバーチャルで行い、一日中リビングから出ない。そんな社会が、あと十年もすれば来るのではないか。

2020年12月14日月曜日

VRの普及で現実のモノの価値が落ちるかも知れない


Oculus Quest 2が登場したことで、VRには新しいステージが開けている。価格が画期的に安くなり、また単独で使えることで、ユーザ層がぐっと増えているため、今まではアーリーアダプタのおもちゃだったものが実用に向けて進みつつある。

例えば、VR会議は、それほど難しくなくなってきている。無料のVRルームソフトが幾つも出現しており、資料は従来のPowerPointやExcelを使えば良い。後はユーザ毎にVRゴーグルを配るだけだが、ここが簡単になってきたのだ。

電話会議やZoomがようやく普及してきたところだが、これがVR会議になれば、本人はアバターになるため、Zoomのように化粧や服を気にする必要はないし、他の参加者との物理的な距離感が復活するため、むしろやりやすくなる。

こんな感じでVRが普及していくと、むしろVRががデフォルトになり、現実世界での行動が廃れていくことになるのではないか。そしてそれに伴い、実物としての「モノ」の価値は減っていき、相対的に仮想世界でのモノに価値が出てくるのではないだろうか。

例えば、既にVRアプリストアには、仮想オフィスとか仮想デスクトップとかいうアプリケーションが存在している。これを使うと、デスクトップ画面が幾つも、また幾らでも大きく表示できる。そうなれば、高価な大画面ディスプレイを買わずとも、VRゴーグルを支給してしまえば良い、となってしまう。CADのような用途は言うに及ばず、Excelファイルを多数開く経理の業務などでも有用だ。

また、本を読みたいと思った時、Kindleより物理的な本が良い、と考える人は多い。あの小さな画面、遅い反応が気に入らない、大きな雑誌やグラビアがきれいに見えない、等、iPadでも不満になる場面は多い。しかしこれもVRなら、幾らでも見やすくできるし、反応速度もクラウドで改良すれば幾らでも良くなる。iPadを持ち続けるのは肩が凝るが、VRなら空中に浮かせておけば良い。更には、静かな海岸、雑踏のカフェ等、好きな場所で読むことができる。紙の本からKindleを経由せずに一気にVR本に移行する、という人も、一定数いるはずだ。

VR空間で生活する時間が長くなれば、外出の時間は相対的に減っていく。学校も仕事も買い物もレジャーもVRで済ませられるようになれば、服や靴、アクセサリ、髪型、化粧、等といったファッションは、相対的にカネを掛ける価値が減っていくだろう。代わりに、VRの中で着る服等のファッションに気を使うようになる。そこへの投資(支払い)も増えていくだろう。

また、観光というものの価値が根本的に考え直されることになるかもしれない。まずはVRで現実の観光スポットに行けるようになる。次に、現実を模した仮想環境への観光になる。そこでは現実には存在するトラブル、例えば天候不順で景色が見えないとか、手違いやダブルブッキングでホテルがとれていないとか、詐欺ボッタクリに遭うといったことがなくなる。更にその次は、現実には行けないところ、例えば宇宙旅行等が出てくる。そして最後には、現実には存在しない場所が観光スポットになる、という段取りだ。

現実には存在しない場所。それはクリエイターのイマジネーションの限りを尽くした特殊空間だ。現実の景色を遥かに超える体験ができることになる。その頃には、現実世界で観光なんてとんでもない、汚いし怖いしカネも時間も無駄に掛かる、という価値観になっているかもしれない。

いや、現実に存在する観光スポットの価値は変わらない、と考える人もいるだろうが、価値とは相対的なものだ。音楽を聞くのに楽器を演奏するしかなかった時代と、スマホで幾らでも無料で再生できる時代の違い、とでも言うべきものだ。生演奏には今でも一定の価値があるけれども、日常の大部分はスマホで聞いていて、人によっては生演奏は全く不要と考えている、というのが今の状態だ。現物と仮想化したモノの関係は、今後そうなっていく可能性を秘めている。それは景色も同じである。

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超音波モーターの原理によるVR用トレッドミル

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