2018年3月12日月曜日

転送問題の解決法


スタートレックに出てくる転送装置の問題とは、「転送とは複製&削除のことではないのか?」、つまり、まず複製が作られオリジナルが削除されるのだとしたら、外からは同じに見えても実際には別人で、オリジナルは殺されたことになるのではないか、というものだ。

これと類似の問題は多数ある。アンパンマンの頭は交換されると消えてしまうが、元の頭にあった意識はどうなるのか。コンピュータに意識を移したらどうなるのか。銀河鉄道999に出てくる「機械の体」の人たちの機械の頭や新造人間キャシャーンの意識は、など等。何れも「移動」と「コピー&削除」の問題だ。

有名な「テセウスの船」という問題がある。船を少しづつ補修し部品を替えていって、すっかり交換されてしまったら、その船は元の船と同じと言えるのか、という問題だ。これになぞらえ、例えば脳細胞を少しづつナノマシンなどと入れ替えていって、すっかり入れ替わるまで意識が途切れなかったとしたら、同じ人格と見てよいのではないか、という議論がある。

しかし、その速度が一瞬で終わったとしたらどうだとか、寝ている間に終わってしまったら、など、色々と抜け道が考えられなくはない。更には、それが済んだ後にコンピュータに意識をコピーしたらどうなるか、という問題も出てくる。

ここで考えるのは、意識が途切れなければ同じ人格として「自分は」認めるのか、というところで、恐らく人によって答えが違うだろう。その行為が完璧なら、自分はそれを認めるだろう。しかしコピー問題は別だ。そこで考えるのが、脳細胞とナノマシン間の意識のやり取りと、そのナノマシン脳とコンピュータの間の意識のやり取りの違いだ。

後者は明らかにコンピュータ間通信のコピーをイメージしている。コンピュータ間のデータの移動は「コピー&削除」に過ぎないことが分かっているからダメなのだが、そこに「クラウド」という、更にこの問題を複雑にしかねないシステムが入り込んでくる。

つまり、脳細胞のときと同じように、両者が稼動を維持しながら少しづつ情報を移動することは可能だ、ということだ。このようにしてオリジナルから機能を少しづつ奪い、コンピュータ上に意識を構築することができれば、意識が途切れることなく、オリジナルが明確に死を意識することもなく、記憶・意識がコンピュータ上に移ることが可能なのではないか。

こうすることにより、倫理的・宗教的・生物学的その他多数の問題を孕みつつも、転送問題は、ひとつの解決策を得ることができるのではないか、と思う。

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