3Dプリンターを使った建築は、いくつか実用化し始めている。だがこれらはコンクリート前提であり、重く、建築確認も難しい。木造でこれをできないかと考えてみた。これをご紹介する。
まずは構成から。
壁はリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで形成する。この壁は構造材ではなく、後で示す断熱材充填の器として、また同じく後で示す構造材の器として形成する。
構造材は、バサルト(玄武岩)ファイバーコイルとリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで構成する。壁を3Dプリンターで作る際、構造材となる部分は縦穴となるように隙間を開けておいて、ここに上からバサルトファイバーを差し込み、隙間をエンジニアリングウッドで埋める。この隙間を埋めるエンジニアリングウッドは、壁材と違ってリグニンを高配合した硬い素材である。
また、このリグニン高配合素材は、内壁のごく薄い部分にも使用する。これは防湿材として機能する。一方、最外壁には微細な穴を開けて放湿する。
バサルトファイバーは単体では自立できないので、あらかじめエンジニアリングウッドに浸漬し、薄くコーティングした棒材として作っておく。これは50cmサイズで、数本を束ねて性能確保するものとし、縦方向には少しづつずらして配置する。
縦穴にバサルトファイバーと高リグニン木粉エンジニアリングウッドを充填すると、これが固まって構造材としての性能を出す。
断熱材としては、木質ファイバーと発泡リグニンの混合材を使用する。壁材はあらかじめ中空で作り、その隙間にこの断熱材を注入する。
3Dプリンタは、3種の素材、すなわち壁材用、構造材用、断熱材のノズルを持ち、またこれとは別にバサルトファイバー棒を自動供給するロボットから構成される。
これらを作るに当たって検討したことは、次のとおりだ。
- コンクリート3Dプリンタは今でも鉄筋の補充が必要で、自動化の程度が低い。途中で人の手が多く掛かるようではダメ。できるだけロボットが自動で作れる必要がある。
- コンクリートは断熱性が低く、自重も重いため、地盤が弱いところでは使いづらい。木質系で考えたい。
- 木粉エンジニアリングウッドは構造材(柱)として認可されていないが、これは引張強度が足りないため。だから鉄筋のような引張耐性のある素材が必要。
- 鉄筋は錆びるが、コンクリートが強アルカリのため使える。エンジニアリングウッドは中性だからこの手は使えない。
- エンジニアリングウッドと鉄筋の熱膨張率は違い過ぎるので、使うには色々工夫が必要。熱膨張率が近い素材を使った方が楽。
- バサルトファイバーは鉄筋より熱膨張率が木に近いが、まだ少し差があるので、コイル状に加工して使う。また自動で配置するには繊維のままでは扱いづらいので、後に充填する素材と同じエンジニアリングウッドに浸漬し、棒状にする。
- 3Dプリンタでファイバー棒を扱うには長いと都合が悪いので、50cm長とする。するとそのつなぎ目は当然引張強度がないため、複数を束ねて使い、少しづつずらすことで対処する。
- 断熱材も自動充填したいが、発泡ウレタンは熱膨張率が高く、また透湿性がないこともエンジニアリングウッドと相性が悪い。
- 木質ファイバーだけだと射出困難なので、発泡リグニンとの混合材として使用。発泡リグニンが木質ファイバーの位置固定に役立ち、自重で沈むなどの経年劣化を押さえてくれる。
- 構造材の品質を安定して出せるので、建築確認を取得しやすいことが期待できる。
- 3Dプリンター建築は縦方向の引張強度が出せないので、日本では建築確認が難しい。これを避けるために鉄筋や鉄骨をわざわざ入れて、3Dプリンター建築の良さを台無しにする設計がまかり通っている。
この建築法には興味深いところがいくつもある。総じて言うと、3Dプリンター建築と言っても全てができるわけではないのだが、コンクリート住宅の場合はできなかった手間のいくつかを省くことができる。
- 防湿材を貼る必要がない。内側から外側に向けて透湿性が順に上がる設計である。また防湿材の隙間や貼り忘れの心配がない。
- コンクリートと違って木材用の加工が可能であり、細かい調整が現場レベルで可能である。
- ベッドや棚など簡単な構造のものは一緒に作ることができる。
- 配管の穴などもあらかじめ作っておける。
- 支持材は必要だが、床材や天井材も一体成型できる。(さすがに屋根は無理)
- 隙間無く作れるから、高断熱だけでなく高気密が期待できる。
- 施工にミスや手抜きがあり得ないので、コンピュータシミュレーションの結果と現物の差は小さくなる。
- 材料のバリエーションが極めて少ないので調達が容易である他、解体でも廃材の整理がしやすい。
- 人間の手を煩わせるところが極めて少なく、一般の建築はもちろん、3D プリンタコンクリート住宅と比べても、建築スピードを速くすることが期待できる。
- 材料の大部分は木粉とリグニンであり、難燃性ではあるが高熱で処理すれば燃える。つまりサーマルリサイクルは可能である。また一度硬化したリグニンは回収困難だが、コンクリート同様骨材としてのリサイクルは可能である。
- リグニンは熱硬化性樹脂である。つまり吐出と共に熱処理すれば直ぐに硬化するので、コンクリートと比べて高速に建築が可能である。
この仕様でのコストを生成AIに見積もってもらったところ、木造や3Dプリンターコンクリート住宅よりは高く、鉄筋コンクリート住宅よりは安くなるという微妙な結果になった。だが、その高価格の主な要因であるバサルトファイバーとリグニンの価格は、今後5年で劇的に下がる見込みがあるとのことであり、もしそうなれば木造住宅も3Dプリンターコンクリート住宅もぶっ千切って、最低の坪単価となる。試算によると、坪単価は40万円だ。つまり100平米(30坪)でも1200万円でできる。今の時代、ちょっととんでもない低価格である。
これは見込みがあるのではないか。どこかの建築会社で検討してもらえないだろうか。

0 件のコメント:
コメントを投稿