2026年5月26日火曜日

差別するAI

 

法曹界がIT化する、というのをニュースでやっていた。これは証拠のDB化や手続き等のオンライン化を含むもので、まあ真っ当な進化と言えるのだが、そもそも法律がデジタル化していないのは何なんだろう、さっさとプログラム化してしまえばよいのに、と思っていた。これは以前に、

法のプログラム化

としてまとめている。

だが、最近の国旗毀損罪の審議過程を見ていると、とても無理のような気がしてきた。つまり、法律は本質的に矛盾と恣意を含んでいるのが当然の状態であり、無理にプログラム(論理構造)に落とすとかえっておかしいことになってしまうのではないか、と思うのだ。

従来、法律は法学者が研究してきたが、これをAIが研究し出すと、Mythosよろしく数千のバグが2時間で発見されるだろう。このバグとは、以下のようなものだ。

  • 用語定義の不統一。名詞(自動車の定義が法によって異なるなど)はまだマシだ。形容詞(著しく、軽微な、)や動詞(みなす、努める、有する、など)
  • 適用の条件(XXとXXとXXをもって総合的に判断、など)があいまい
  • 論理構造の矛盾(参照循環や優先順位など)、あいまいさ(IF-THEN構造の解釈など)

理系の頭からすると、これは法律を直すべき(定義は明確にすべき、矛盾は無くすべき、など)なのだが、現在有効な法律は二千本、その他政令府省令などを合わせると1万近くもある法を全て矛盾なく記述するのは不可能だろう。現状の法律家(裁判官、検事など)はその矛盾(や隠れた恣意等)を清濁併せ飲んで、妥協して、法解釈をしているわけだ。

AIに法律を覚えこませる際、当然ながら現実を優先し、そのためには矛盾を(わざと)見過ごす必要が出てくるわけだが、それはつまり法に隠された恣意も肯定する、ということである。

有名な例だが、精神保健福祉法という法律がある。この中に、「措置入院」と「医療保護入院」という制度がある。

措置入院とは、自傷他害の恐れがある精神疾患患者を、都道府県知事の権限で強制的に入院させる仕組みでである。一方の医療保護入院は、指定医が認め、家族の誰か一人が合意すれば、無期限で強制入院させることができるというものだ。

現実問題として、この法律はかなり恣意的な運用が続いている。

日本の精神病床数は約30万床に上り、これは世界全体の精神病床の約2割を日本一国が占めている計算になる。さらに、その入院患者の約半数(約13万〜14万人)が本人の同意のない「強制入院(主に医療保護入院)」なのだそうだ。また、日本の精神科病院における平均在院日数は260日を超えており、OECD加盟国平均(十数日〜数十日程度)と比較して突出している。しかも、1年以上入院している患者が約13万人、そのうち10年以上閉じ込められている人が数万人規模で存在する。

国際的な目で見ればこれは明確な人権侵害である。実際、2022年9月、ジュネーブの国連障害者権利委員会は、日本政府に対して「総括所見(Concluding Observations)」を公表した。その中で、

  • 非自発的入院(強制入院)を可能にしているすべての法的規定の廃止
  • 医療保護入院の即時廃止
  • 精神科病院における「身体拘束・隔離」の即時停止

を要求している。だが日本政府はこれを無視している。

類似の問題としては、難民認定法がある。

国名 難民認定率(近年の平均値) システムの思想(仕様)
ドイツ 約30% 〜 40% 人道主義・EUの国際協調プロトコル
アメリカ 約20% 〜 30% 多文化主義・移民国家としてのインフラ
日本 1% 未満(約0.1% 〜 0.4%) 実質的な「ゼロ受け入れ」・国境防衛

他にも痴漢冤罪問題(悪魔の証明、被害者証言の偏重など)、上級国民問題(同じ犯罪をしても扱いが異なるなど)、選挙における一票の格差問題(いわゆる違憲状態)もそうだ。こういう事実を法律AIが学習すると、そのAIはこれらの問題を容認する判断をするようになるはずだ。

また、裁判ではしばしば憲法解釈が恣意的に避けられるが、これは世間では「司法消極主義」「司法の忌避」などと呼ばれて非難されている。しかし判例を学習したAIは、この司法消極主義こそが正しいと考え、憲法解釈を避け続けるだろう。

放っておけば、あなたはこういうAIに裁かれることになる。AIが登場したからと言って、歪みは簡単にはなくならない。無くすためにはAIではなく、人間側の努力が必要である。

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