VRにおけるリアリティ問題の一つに、その場で動くのではなく移動する場合、つまり歩いたり走ったりすることが挙げられる。実際にはその場にいるので、歩いたかのように足場を調節してやる必要がある。
これを実現する方法として、すり鉢状の滑りやすい足場を作っておく方法と、トレッドミルを使う方法がある。トレッドミルは縦横に動かす必要があるので、ランニングマシンのようには行かず、細い大量のベルトを縦横に這わせるため、構造が複雑で、ゴミを挟むなど故障の確率も高くなる。また、ベアリング(金属球)を多数使う方法も考えられるが、これにも故障やゴミの問題があるのと、足裏がゴツゴツする。そしてこれらはモーターを使うため、騒音が発生する。
これを解決する方法として提案するのが、超音波モーターの原理を利用するものである。これを解説する。
- まず、薄い伸縮性のある膜を用意する。人はこの上に立つ。一般的にはゴム等だ。
- この裏に、多数の硬い板を貼り付ける。板と板の間には若干の隙間を開ける。形状は三角、四角、六角など、あまり隙間を空けないようなものなら何でも良いが、とりあえず正方形を考える。大きさは、可能な限り小さくする。
- 板の裏に振動装置を取り付ける。この振動は、XYZ各軸に対して正弦波振動をする。これは、立方体のXYZ軸各々に圧電スピーカーを貼り付けることで実現可能なはずだ。
- そのスピードと位相は各々制御され、複数の立方体が波のように連動して動く。これをコンピュータ制御する。振動装置は超音波領域で動くものが良いだろう。
- また、超音波振動装置は圧力センサの上に配置するものとし、その圧力パターンもリアルタイム検知できる。上のキューブのZ軸のものが兼用可能かどうかは検討に値する。
まず、この装置の上にモノを置くと、平面は一見変化がないのに、蛇が鱗を波打たせて進むように、移動させることができる。その角度、速度は自在に制御できる。
次に、圧力センサにより、足裏の位置・角度が分かる。つまり踏み出そうとした時に、その方向と強さが分かるわけだ。
圧力センサからの情報を基に超音波振動装置を制御することで、この板はトレッドミルとして機能し、実際にはその場にいるのに、あたかも歩いているかのような感覚を得ることができる。
この装置の特徴は、まず完全にゴムで覆われているため、ゴミを挟み込む心配がないことだ。また機械的可動部分はないため故障の可能性も低い。音も静かだ。恐らく費用も安く抑えられるだろう。
これによって安価にトレッドミルが作れれば、VRの可用性は大いに向上するだろう。
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