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2026年7月30日木曜日

木質3Dプリンタ建築法の更なる改良


3Dプリンター木造建築工法3 脅威の性能とコスト

以前この提案した建築法の、更なる改良を試みる。

1.ハニカム構造(壁)の構成

前回、200℃での吐出、架橋促進剤噴霧、ヘラで押す、というのが気に入らなかったので、もっと簡単にした。

まずベース材として、リグニン粉末と上質(インク除去)古紙パルプを混合したものを保管しておく。乾燥保管であれば何ヶ月でも保管できる。

現場で、これと水、炭酸ナトリウムを混合する。炭酸ナトリウムによりアルカリ性になったリグニンは可溶化・膨潤し、ペーストを形成する。

これを3Dプリンタで常温で吐出し、直後にクエン酸を噴霧する。クエン酸によってまず数秒でゲル化し自立する。これにより上層の積層に耐えられる強度を得る。続いて2〜6時間で硬化し、人が触れても変形しない硬さになる。更に24〜48時間で完全に架橋化し、必要強度を得る。

ハニカム材の厚さは1.2mm、ハニカム径は30〜60mm、壁厚は150mmに変更した。強度がオーバースペックであることが判明した一方、断熱性と遮音性が不足していたためである。

以前ヘラで押すのを止めたことによって層間剥離が心配になるが、計算によれば断熱材がこれを抑止してくれることが判明したため、問題ない。

なお、吐出に際し、表面がギザギザになるような吐出口を使うことで、層間強度は若干増すことになる。

2.断熱剤(ハニカム充填)の構成

充填剤ではハニカム材と同じ方法は使えない(発泡するので噴霧しても全体に行き渡らない)。そこで、直前に混合する方法に変更する。

つまり、ベース材としてリグニン粉末と低質(インク残留)古紙パルプを混合したものを作っておいて、現場ではまず水と重曹を混ぜ、吐出直前にクエン酸を混合する。

直前混合がハニカム材で使えない理由は、吐出口が1.2mmと細径であるため詰まりの問題があるからだ。断熱充填剤は15mm程度は確保できるため、多少間違って硬化が早まっても詰まる心配が少ないこと、多少不均質に混ざっても問題ないことにより、断熱材限定で採用する。

また、上に書いたように、断熱材はハニカム材の層間剥離防止剤としても作用する。

3.強度他の計算

以上の変更による各種定量的データの変更は、以下の通りである。

断熱性:壁厚を150mmにしたことが大きく、HEAT20 G3レベル(壁単体 U値 0.207 W/m²K)となった。これは国内の断熱性規格の最高峰である省エネ基準地域区分5〜7における断熱等級7(U値 0.26 W/m²K)に比べて、約 1.26 倍(※熱損失が約20%少なく、国内最高峰規格を余裕で上回る)の余裕がある。

耐震性:ハニカム厚を薄くしハニカム径を大きくしたことによって以前よりは落ちたが、それでも最高の耐震等級(最高耐震等級): 耐震等級 3の仕様:存在壁高あたりの必要壁倍率 5.0 相当(せん断耐力 9.8 kN/m)に対して約 49.0 kN/m (壁倍率換算 約 25.0 相当)あり、約 5.0 倍の余裕がある。

遮音性:主に壁厚が増えたことが影響し、国内の遮音性能規格の最高峰である日本建築学会 遮音性能等級 特級(D-65 / D-60)の値:500Hz帯において 60dB以上の減衰に対して500Hz帯において 約 68.5dBの減衰があり、約 1.14 倍(音エネルギー比で約 7 割減衰)の余裕がある。

耐火性:断熱剤にもハニカム材にも難燃剤を混入するので、やはり国内最高峰規格の建築基準法 1時間耐火構造(外壁・構造耐力上主要な部分)の加熱1時間において裏面温度260℃未満維持、構造耐力維持に対して120分(2時間)加熱時で裏面上昇温度 約115℃(非加熱面)であり、約 2.0 倍(耐火時間ベースで200%達成)倍の余裕がある。

耐荷重性:ハニカムを薄く、径も大きくすることによって落ちたが、これはそもそもオーバースペックだったからだ。建築基準法の定める木造2階建て1階壁に求められる長期許容鉛直荷重 約 15 kN/mに対して約 185 kN/mと、約 12.3 倍の余裕がある。

気密性:国内最高級の超高気密住宅基準(AAA)の数値 ​0.5cm²/m²に対して 0.05cm²/m²であり、10倍の性能的余裕がある。

つまり、全ての性能において、国内で定める最上級の規格を余裕でクリアする、ということになる。

4.コスト

最後にコストである。

住宅1棟分(外壁面積 100m²相当)の躯体・断熱コスト比較をすると、

一般木造住宅(普及帯・等級4〜5) 一般木造住宅(高価格帯・等級7) 本提案
1棟 総建設コスト(税別) 約 1,515万円 約 2,360万円 約 1,197.4万円
坪単価(税別 / 30.3坪換算) 約 50万円 / 坪 約 77.9万円 / 坪 約 39.5万円 / 坪
合計現場工期 約 90 〜 120日(約3〜4ヶ月) 約 120 〜180日(約4〜6ヶ月) 約 14日(約2週間)

となった。

見ての通り、価格も凄く安いのだが、工期が短いのは特筆すべきだろう。にわかには信じられない短納期である。それこそ「ボコボコ家が建つ」レベルの驚異だ。

5.まとめ

まあ何れにしても初期の試算レベルの話であり、実際にやってみると色々問題は出てきて、その都度コスパは悪くなっていくのだろう。だが従来の木造住宅より多少高くなったとしても十分に検討に値する数字だと思う。

調べてみると、慶應義塾大学 Tanaka Labにて紙パルプとリグニンの架橋化による建築部材の研究が行われているらしい。ハニカムに関してはイタリアのWASP(World's Advanced Saving Project)というプロジェクトで3Dプリンタ建築の技術が進んでおり、ハニカムを空気層(断熱層)として使っている。だがそこに詰めているのは籾殻であり、強度には貢献しない。

つまり、もしかするとこの提案は最先端である可能性があるわけだ。どちらかのプロジェクトに拾って頂けると幸いである。

2026年2月25日水曜日

3Dプリンター木造建築工法3 脅威の性能とコスト

 3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良

の続き。

リグニンは、180~220℃でゾル状になり、3Dプリンタから射出できるようになる。この状態はまだ熱可塑性の状態にあり、いったん冷えると固まるが、再度この温度になると軟化する。そして、200℃以上で数十分~2時間程度保持すると「架橋化」し、完全に硬化する。こうなるともう熱を加えても軟化しなくなる。

これに対し、日本の住宅の耐火性能試験では、5分後に576℃、30分で842℃、60分で945℃になる。なのでリグニンは架橋化が必須である。そうしないと熱で軟化し、家が崩れてしまう。

だが、3Dプリンター印刷という特性上、200℃で2時間加熱をするのは不可能なので、触媒を用いる。触媒は低温下でも架橋化を促進するが、前回も説明した通り、3Dプリントにおける層間結合を強化するためには邪魔である(硬化した後は結合できない)ため、工夫が必要である。

そこで、架橋促進剤を、新たな層をプリントする直前に噴霧し、プリント後直ちに「ヘラの先端で押す」という操作を行う。これによって層がV字型に変形し、未硬化のリグニンの上下の層が混ざると共に架橋促進剤も混ざるため、層間結合と硬化が同時に完成する。架橋促進剤はその後、その他のところでも徐々に浸透し、硬化が完成する。これにより、前回提案した超音波過熱針及び注入ロッドは廃止する。

次に耐火性だが、20~30mmのリグニン層は廃止し、2mmの高リグニン防湿層+サイディング用の桟を3Dプリンタで形成し、サイディングは市販のものを使用する。これにより建築確認における耐火性の評価を既存の市販品のそれで代用できると共に、価格を大幅に落とすことができる。(リグニン層は高い。)

内装も、10mmのリグニン層は廃止し、防湿用高リグニン層2mmと石膏ボード用の桟までは3Dプリンタで加工し、石膏ボードは人手で貼ることにした。これでも透湿フィルムを貼る必要がないので通常より手間は減らせる。なお、外と中の高リグニン防湿層も、ヘラの先端で押して層間結合強化をする点は同じである。

なお、1層(高さ方向)の厚さは2mmとした。これはコンクリート3Dプリンタ住宅より遥かに薄いのだが、その理由は①即時(2層印刷後)で硬化が可能なのでコンクリートのように固まるのを長時間待つ必要がない、②硬化剤を層間に噴霧するので硬化剤が十分に浸透する薄さにする必要がある、という理由による。

また、断熱材は発泡剤により膨張するので、壁材のような精密な形状制御が困難である。このため、断熱材ヘッドだけはセンサで吐出先の状況を把握し、吐出量を自動調整する機能を追加する。

断熱材もリグニンを含んでいるので、充填すると壁(ハニカム材)に密着する。このハニカム材は構造材、即ち家の重さを支える材料である。一般的なウレタン吹付けでは断熱材は壁に張り付いているだけだが、この場合は六角柱の中に充填される。このため、断熱材はこのハニカム材の構造材としての性能を強化する。圧力耐性はさほど変わらないが、曲げ耐性が強まる。これを計算に入れた上で、ハニカムの厚さを薄くして材料費を節約することは可能になるだろう。結果として、ハニカム層の壁の厚さは2mmにした。ハニカム層全体としての(壁の)厚さは100mmにした。なお、断熱材にはホウ酸を添加して火災に備えるものとする。断熱材はハニカム構造の中に閉じ込められるため空気が動かず、つまり対流が起こらない。またビスや柱などの熱橋が原理的に存在しないため、壁の厚さが薄くても断熱性能は高くなる。

次に、全体として、木粉は止め、古紙パルプを使用することにした。こちらは価格が大幅に安く、繊維も長いためである。また、パルプの入手先(製紙工場など)は大量のリグニンを産業廃棄物として排出するので、リグニンの入手先としても有用と考えた。他、インクを除去していない低品質のパルプを断熱材用に使用し、ハニカム材と防湿層用には高品質のインク除去パルプを使用する。リグニンとインクの食いつきが違うそうだ。

リグニン自体も、無精製の安価なものを断熱用に、精製した高品質なものを防湿層とハニカム材に使用する。パルプと同様、適材適所にすることで価格を低減した。

溶剤を使わないので、いわゆるシックハウス症候群とは無縁になる。壁紙も塗装も当然対応可能である。ただ壁紙の場合、表面を均す必要はあるかもしれない。2mmとはいえヘラで押すこともあり、1mm以下の凹凸は多少あると思われる。

次に、基礎周りのプリントについて考える。通常、基礎には締結用のボルトが飛び出しているが、現在提案しているライン状のプリンタヘッドではボルトを避けられない。そこで、まず基礎にはボルトを埋め込むのではなく、ボルトを埋め込むための穴(ネジ切り)を埋めておく。そしてプリンタは、そのボルト穴の周りを避けるようにプリントするのだが、この際、C字型にしてプリントする。壁の内側に開口部を向ける形となる。もちろんその穴には断熱材は充填しない。そしてプリントが進んで想定ボルト高さを十分に超えたら、横に空いた穴からボルトを入れ、その隙間に高リグニン材(ハニカム材と同じモノ)を注入する。これは手動でも良いだろう。この方法での締結は、木造のホールダウン金物による締結と比べ、引き抜き耐力で倍以上の強度を出せると計算できた。

屋根周りであるが、最上部の防水層を高リグニン、その上の屋根材固定の桟までを3Dプリントで作り、屋根材はガルバリウム鋼板とし、人手で貼るものとする。防水層の下は当然ハニカム断熱層であり、ガルバリウム屋根固有の雨音を減衰することができる。屋根周りの強度設計も自在であり、必要なら太陽光発電パネルや太陽光温水器の設置も可能であり、配線用の穴やくぼみも3Dプリントできる。雨樋や排水路なども同様、一体成型可能だ。

これら変更を加えた後で、再度性能と坪単価を計算した結果が以下だ。

まず断熱性は、一条工務店の0.25W/(m2K)に対し0.20W/(m2K)と一条工務店超えを達成した。これは小さなエアコン1個で家中の冷暖房が可能なレベルである。またリグニンは保温性が高いので、深夜電力でそのエアコンを動かし、昼間は停止させる、といった使い方が可能である。

耐震性も鉄筋コンクリート(RC造)を上回り、耐震等級3を余裕でクリアする。RCは重量があるのでその分更にこちらが有利という結果が出た。これより、制震装置などは必要ない。むしろ家が丈夫すぎて地震のエネルギーを全て受け止め、家は壊れないが家具が飛ぶ可能性が高くなる。必要に応じ免震装置はつけるべきかもしれない。だとすると、免震装置の上に家をプリントすれば良いので、ここで建築を標準化できるかもしれない。耐風性もRC構造並みの剛性を持ち、気密維持も最高、飛来物耐性も高いことが確認できた。

防音性も完璧だ。壁も床もハニカム+断熱材で埋まっており、更に厚みも十分、隙間もないので、音が漏れない。計算によると、通常の木造の家がD-25~D-30、市販の防音室(ヤマハのアビテックスなど)がD-35~D-45なのに対し、D-45~D-55になるとの試算を得た。つまり家中が防音室と同じということだ。深夜に大音量で映画を見ていても、隣家には全く影響ない。(但し窓からは漏れるので要注意)

最後に経年劣化だが、これも木造や鉄筋コンクリート造を上回る性能が出るとの予想が出た。元々木材が持つ糖分・デンプン類が、3Dプリンタからの射出時の高熱で変性しているため、シロアリの好む餌ではなくなっていることに加え、防蟻材を「練り込む」ことが可能である。また、リグニンは架橋化するともうそれ以上劣化しない。木の化石を想像してもらうと良いのだそうだ。むしろ時間と共に未架橋の部分が徐々に架橋化し、強度は増すのだそうだ。

そして坪単価は、なんと25~35万円である。一般的な木造軸組み構造が60~80万円、一条工務店が80~100万円、RCが100~150万円、安さが売りのコンクリート3Dプリンタ住宅でも60~90万円とのことなので、あらゆる建築方式の中で最も安いという凄い結果が出た。

これは価格を追求した結果なのだが、当初の構想通り内壁層と外壁層をリグニンで作ることも可能だ。価格はRC並み(120万)になるが、圧倒的な速さで建築できる。養生と内装外装が大幅に減るためである。坪単価と自分の求める住宅性能を、それこそ指先一つで自在にコントロールできるのが、3Dプリンタ住宅の特徴とも言える。

何回も言っている気がするが、建築会社にこの案を拾ってもらい、具体的検証してほしいものだ。

2026年2月24日火曜日

3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良


 参考:前回 SpockのHighTech夢想: 3Dプリンター木造建築工法

前回の続き。更に色々考え、実用に近づけた。

  1. 構造材の変更
    1. 前は柱材として玄武岩(バサルト)ファイバーと言っていたが、これを廃止し、壁全体をハニカム構造とする。柱材は無くす。
      1. 目的は、①コストの低減、②廃材の再利用性向上(マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクル)、③繊維棒ロボットの廃止、④資源の有効活用(全部木で作る)、である。
      2. 材料として、リグニン、木粉(100~500μm)、長繊維木粉(500μm~2mm)を使用する。
        1. リグニンの配合を多くするほど硬くなり、その代わりに脆性が高くなる(割れ、ヒビ)。脆性を補うために長繊維木粉を配合する。木粉はフィラー(価格調整、かさ増し)で使用する。
        2. 壁全体をハニカム構造とすることで、壁全体で重量を支えることができる。
        3. 力が掛かる要所(角や玄関枠など)ではハニカム径を調整して強度を増す。壁材部分は40mm、要所は10mm、などだ。
        4. 横方向(根太、梁)にもハニカム構造を適用する。下側ほどハニカム径を小さくする。
      3. 単純にハニカムを積み上げ方向に形成すると層間結合が弱いため、これを補強する施策を追加する。
        1. ハニカム層は数層分の硬化遅延が起きる仕掛けを施しておく。(遅延剤添加など)
        2. ハニカムが1層をプリントする度に、上から超音波過熱針を差し込む。するとまず縦方向に繊維が通過し、更にその周囲が先に硬化し、縦方向の結合強度が高まる。
        3. あるいは数層分を貫通する細い射出ヘッドを差し込み、引き抜きながら長繊維木粉混合リグニンを射出する。
      4. ハニカムの中は断熱材(後述)で埋め、断熱する。但し要所で中空のハニカムを作り、これを配管用とする。
  2. 断熱材の変更
    1. 木質ファイバーを止め、木粉+リグニン+発泡剤とする。
      1. 木質ファイバーは3Dプリンタから吐出するのが困難で、また事前混合も困難であることより、素材の統一を優先する。
      2. これにより断熱性能は低下するので、壁の厚みを増すことで調整する。
        1. 壁材の想定は200mmである。外装面30mm(高リグニン 防湿・耐候)、ハニカム断熱層140mm、内装面30mm(高リグニン防湿・気密・難燃)となる。この厚さで十分、スウェーデンハウスに迫るくらいの断熱性能は確保できる。
        2. 合わせて気密性も極めて高く作れるので、高気密高断熱が実現する。
  3. これで素材は4種類で完結する。
    1. 外壁材:高リグニン+木粉+UV剤+耐候剤+難燃剤
    2. 構造材:高リグニン+長繊維木粉
    3. 断熱材:標準リグニン+木粉+発泡剤
    4. 内壁剤:高リグニン+木粉+難燃剤
    5. これらをペレットで供給し、3Dプリンタヘッドで加熱して吐出する。
  4. 専用の3Dプリンタとして、これら4種類のヘッドを合わせたマルチヘッドを設計する。
    1. 外壁用1、構造材用20、断熱材用1、内壁用1。構造材用だけ細く、紙にプリントするプリンタのように、マルチヘッドでハニカムを一度に形成する。
      1. 縦方向のハニカム結合強化用施策(2種)は、どちらかないしは両方のヘッドを追加する。
    2. これにより、200mmの外壁が一度で形成できる。

この構造について、やはり費用面や建築スピードの面などから検討してみたのだが、結果としては恐ろしく高効率低価格である。

コンクリート3Dプリンタ住宅は壁材しか作れないので、内外壁の作業が更に必要になる。内壁は断熱、防湿材、壁紙など、外壁は塗装などだが、こちらは一体で作ってしまうので必要ない。また壁を作る速度も圧倒的に早い。マルチヘッドを抜きにしても、即時に硬化するのでコンクリートのように固まるのを待つ必要がないからだ。

また床や梁も作ることができる。床の場合は、コンクリートベタ基礎の上にまずサポート材をプリントし、その上に根太に相当する横方向ハニカム構造をプリントする。根太の間には充填剤を入れ、最上部はまた壁材でプリントしてやる。天井の場合はサポート材を使うよりは人手で板を渡してやった方が良いだろう。その上にまた3Dプリンターで梁をプリントすれば良い。

コンクリート3Dプリンタ住宅の場合は、天井は別に作って運んで設置する必要があった。これに対し、こちらは支持材としての薄い板(例えばプラダン)を置くだけで、後はプリンタが作ってくれる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では不可能な、配管の穴を自在に空けることも可能で、電装や水回りの工程も大いに短縮できる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では、窓枠部分はあらかじめ空けておいて、枠の上までプリントしたら人間が手で横長の棒を置き、またプリントを再開するのだが、木造3Dプリンタは窓の穴を空けず壁材を薄く積み上げることで印刷を続けることができる。木質なので完成後に穴を空けることは簡単で、薄く作っておけばそれこそパンチで空けられる。後はカッターで仕上げれば良い。そしてこの方法だと削り出しができる(コンクリートだとこれは難しい)ので、精度高く窓をはめ込むことができる。充填材も、通常ならシリコンシーラントを使うのだが、枠ぴったりにハメられるのならその量はごく少量でよい。ネジ止めも木ネジが使える。ドアも同様である。

他にも、室内壁を一緒にプリントできる、棚や押し入れなど簡単な造作も一緒に作れる、将来的には高精度プリンタを併用することで屋内ドアや窓枠(後はガラスをはめるだけ)のような可動部も一体でプリントできるだろう。これは後工程を大幅に短縮する。

屋根材も、最後にガルバリウムを貼る直前まではプリントできるはずだ。高リグニン材で形成すれば防水シートは不要だし、通気用の横木なども一体成型できる。その下の防音には断熱材が使える。

材質も全て木質系にしたし、高価なCNFなどは使わずに済んだので、坪40万円はやはり十分に狙えるとの試算が出た。

但し、建築確認の壁があるのはコンクリート3Dプリンタ住宅と同じである。ここまで考えるとさっさと試作したい(してほしい)」のだが、どこかの建築会社さん、拾ってくれないかなぁ。

2026年2月20日金曜日

3Dフードプリンタ応用デリバリー

前回、3Dフードプリンタの具体的設計を試みた際、カートリッジの数が多くなり過ぎること、また食材カートリッジの多くが冷蔵となり、都度のプリントで使われるカートリッジは少数であることより、賞味期限管理が問題となることを指摘した。これに対し出せる一つの回答は、「プリントする料理を限定する」ということになる。また、そうなると家庭用ではなく業務用、例えば和食専門店とか洋食デリバリー用とかへの展開が考えられる。

そこで、「洋食デリバリー用」のような形態を考えてみた。ハンバーガーとかラーメンとかで考える筋もあるのだが、これらは3Dフードプリンタのメリットが出にくいと考えられる。つまり、例えばハンバーガーならバンズと挟むもののバリエーションしかないから、それを個別に用意した方が簡単なのだ。ある程度メニューのバラエティ(特に形状のバラエティ)が必要である。

食材カートリッジとして肉系しか使わない、フレーバーも洋食系のみ、とすれば、一つ一つのカートリッジを大きくしても耐えられる。プリントする時間はせいぜい10分とか15分とかなので、作っている間にケータリング業者を呼び、渡せばよい。そして作成網を薄く広く募集する。極端な話、一般家庭に置いてもらってバイト感覚で運用する、なども考えられる。家庭では自分用にプリントする傍ら、注文が来ればそれをプリントして業者に渡すことで小遣いが貰える、という次第だ。もちろん保守はその家で行う。

和食デリバリーでも同じ展開をして、相互に融通できるようにしてやると、更にメニューは広がる。つまり和食用プリンタと洋食用プリンタは別の家にあり、和食が多い家では和食プリンタを、洋食が多い家では洋食プリンタを置く。双方を総合メニューとするチェーンにすれば、外からはバラエティ豊かなフードデリバリーに見える。

このデリバリーには従来と違う特徴が一つあって、それは冷蔵のまま配達するということだ。着いてから電子レンジで温める。そうすることで配達時間が短縮できるし、衛生上も好ましい状態にできる。すぐに食べないときは冷蔵ないしは冷凍することも可能だ。これであらかじめ注文しておいて食べたいときに食べる、という新しいデリバリーの形態を作ることができる。

2026年2月19日木曜日

3Dフードプリンタの具体的設計



もうずいぶん前だが、寿司を3Dプリンタで出力する、という試みが行われた。

https://www.open-meals.com/

その後音沙汰を聞かない。クッキーやチョコのようなものの3Dプリンタフードはたまに見かけるが、これを常食とすることはないだろうから、寿司には期待していたのだが。

ここで言う3Dプリンタフードとは、常食を前提としたものだ。寿司はその一つだが、例えば肉や魚、野菜、コメ、麺、などの日常で食べるものを、素材の投入とボタン一つだけで生成するというものになる。そしてその素材は、3Dプリンタのフィラメントのように、常温で保存ができる粉ないしは固体・半固体(ゾル状)などであって、複数の素材を混ぜることで汎用的な食材に変貌するものを意味する。

これを生成AIの助けで具体化してみたものがこちらだ。


  • 基本スペック
    • 料理のバラエティは家庭級(50~100)和洋中その他織り交ぜ
  • 3Dフードプリンタ概要
    • 1人用冷蔵庫と同程度の大きさ
    • 上段がカートリッジ格納ゾーン、中段が3Dフードプリンタ、下段が取り出し口
      • カートリッジ投入扉、清掃扉(ノズル等の洗浄)、取り出し扉(完成した食品の取り出し)
    • 出力後、水カートリッジでフラッシュ、エアブロー、乾燥 (半自動、排出した水の回収)
    • ノズル・インナーの清掃は週1回(清掃扉を開け、外して洗い、元に戻す)
    • カートリッジは必要に応じ補充(1個を使用、1個を交換用として保持、必要に応じアラームが出るので指示に従って交換)
    • スマホにて操作、レシピを選択して実行 完了するとスマホに通知
    • 完成品は冷たいので必要に応じてレンジ加熱
  • 食材カートリッジとフレーバーカートリッジ
    • 食材カートリッジは大容量、フレーバーカートリッジは小容量
    • 食材カートリッジの多くは冷蔵となる(補充用のカートリッジは別に冷蔵庫保管)
  • 食感カートリッジとして「方向性繊維」「水分保持ゲル」を備える
    • サラダやごぼう・根菜の食感を出せる

1) カートリッジ体系

  • 食材カートリッジ(12本):栄養・食感・主菜/主食の「骨格」を作る
  • フレーバーカートリッジ(14本+任意2本):料理カテゴリ(和/洋/中/その他)を確実に切り替える「世界線スイッチ」

2) 食材カートリッジ(12本)一覧

目的:“系列バレ”を防ぐため、タンパク・脂質は最低3系統、炭水化物は物性3系統に分ける

形式:家庭級の現実解として「冷蔵カートリッジ中心」(常温は粉末系・油系)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 主な役割(何を作るか) 推奨保管
タンパク P1 肉系(チキン/ビーフ系) 鶏/牛由来ペースト、または同等の肉様基材 肉の“密度・余韻”の土台(主菜) 冷蔵/冷凍
P2 魚系 白身魚/練り物様基材 魚の“軽さ・ほぐれ”の土台(主菜・和中) 冷蔵/冷凍
P3 植物系(大豆/エンドウ) 大豆/豆系ペースト 汎用・低コスト・副菜/つなぎ(主菜も可) 冷蔵
脂質 F1 高融点脂(肉・揚げ物) 牛脂/固形脂に相当 コク・揚げ物/肉の満足感 冷蔵
F2 低融点脂(魚・あっさり) 魚油/低融点油に相当 軽さ・魚介/冷菜のリアリティ 冷暗所
F3 中性脂(汎用) 植物油 和洋中のベース・乳化基材 冷暗所
炭水化物(物性) C1 粒状・崩壊型(ご飯系) 米粒様ゲル/粒状デンプン構造 “ご飯”カテゴリを成立 冷蔵
C2 連続体・弾性(麺/パン) グルテン/ゲル弾性生地 麺・パン・生地系 冷蔵
C3 マッシュ・粘性(芋/副菜) 芋・かぼちゃ等のピューレ 付け合わせ・和惣菜 冷蔵
食感/状態 T1 水分保持ゲル(サラダ基材) 高含水ゲル(葉物感) “サラダ/冷菜”の土台(生っぽさ) 冷蔵
T2 方向性繊維(ごぼう/根菜繊維) 繊維束構造基材 ごぼう等「裂ける食感」担当 冷蔵
栄養/繊維 N1 食物繊維・ミネラル 可溶/不溶繊維+ミネラル 腸・栄養の底上げ(常設) 常温/冷蔵
K1 色(ナチュラル) 野菜色素など 見た目のカテゴリ分け(和洋中) 常温

3) フレーバーカートリッジ(14本+任意2本)一覧

目的:家庭級のバラエティは “料理カテゴリ(世界線)” が切り替わることが最重要

3-1) 基本14本(家庭級50〜100の標準)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 世界線への効き方 使い方(配置)
味(Taste) T-S SALT 塩味溶液 和/中の輪郭・洋の下支え 全体に薄く
T-A ACID 酢/酸味 サラダ/酢の物/中華のキレ 表面〜浅層
T-W SWEET 甘味 照り焼き/煮物/洋ソース たれ層
T-B BITTER/AST 苦味/渋み ごぼう/山菜/緑系のリアルさ 局所(微量)
T-H HEAT 辛味 麻辣/エスニックの決め手 点在(微量)
旨味/発酵 U-G UMAMI-G 昆布/野菜旨味 和の基盤、洋の下地 中層
U-N UMAMI-N 核酸系旨味 肉/魚の“厚み”寄せ 中心〜奥
U-F FERMENT 味噌/麹/酵母 和の奥行き・デミ方向 中層
U-R ROAST 焼き/炒め香 洋の焼き香・中華の炒め 表面〜脂相
香り(Aroma) A-F AROMA-FRESH 青/柑橘 和の爽やか・冷菜 表面ミスト
A-L AROMA-ALLIUM 葱/生姜/にんにく 中華/和の炒め煮の核 中層
A-H AROMA-HERB/SP ハーブ/スパイス香 洋/エスニックの核 表面+中層
粒/刺激 P-P PEPPER/SANSHO 胡椒/山椒 和中の締まり・別物感 表面点在
P-C CURRY BASE カレー核 「その他1割」を確実化 全体

3-2) 任意追加2本(おすすめ)

ID カートリッジ名 中身(例) 追加すると増えるメニュー
A-M MARINE(海) 海苔/磯/魚介香 魚介・和の幅が増える
A-D DAIRY(乳) バター/クリーム香 洋(クリーム系/チーズ系)が増える

4)これで作れる「具体メニュー50個」案

和食(20)

  1. だし醤油チキン(照りは弱め)
  2. だし白身魚(煮付け風)
  3. 味噌つくね(鶏)
  4. 味噌豆腐ハンバーグ(植物)
  5. 照り焼きチキン
  6. 照り焼き魚風パテ
  7. 生姜焼き(豚風)
  8. 肉じゃが風(肉+芋マッシュ)
  9. 鯖味噌風(魚系)
  10. きんぴらごぼう
  11. ごぼうサラダ(マヨ風)
  12. 酢の物(きゅうり・わかめ風)
  13. 南蛮漬け風(酸甘)チキン
  14. 和風おろし(さっぱり)ハンバーグ
  15. 塩焼き(焼き魚風)
  16. 鶏そぼろ丼風
  17. だし巻き卵風
  18. 茶漬け風(だし+塩)
  19. 和風カレーうどん風
  20. 胡麻和え風(青菜)(胡麻は“その他粒”で代替可)

洋食(15)

  1. トマトハーブチキン
  2. ミートソース風(肉パテ+トマト)
  3. デミ風ハンバーグ
  4. ハーブグリル(魚)
  5. ガーリックバター風チキン
  6. クリームシチュー風(拡張)
  7. チーズ風リゾット(拡張)
  8. オムレツ風(拡張すると強い)
  9. バジルジェノベーゼ風(緑)
  10. ローストオニオンスープ風
  11. ビターカカオ風(デザート寄り)
  12. フィッシュ&チップス風
  13. ハーブレモン風サラダ
  14. ミネストローネ風
  15. ペッパーステーキ風

中華(10)

  1. 生姜葱チキン(中華蒸し鶏風)
  2. 回鍋肉風(甘辛炒め)
  3. 麻婆“豆腐”風(植物)
  4. 麻辣チキン(花椒風)
  5. 青椒肉絲風(歯ごたえ寄せ)
  6. エビチリ風(魚系+酸甘)
  7. 酢豚風(酸甘)
  8. 担々麺風(ごま無でも成立する版)
  9. 中華スープ(葱・生姜)
  10. 炒飯風(香り重視)

その他(5)

  1. カレー(基本)
  2. グリーンカレー風(ハーブ強)
  3. タコライス風(酸+香草)
  4. ナンプラー系エスニック“風”(海があると強い)
  5. スパイス焼き(BBQ寄せ)

どうだろう。ここまで設計すると具体的に想像ができる。これなら少々不味いものしかできないとしても一定の需要はあるはずだ。例えば自炊が困難だが外食やコンビニ弁当を毎回買いに出るのが辛いという層、また極端な面倒くさがり層などである。例えば一人暮らし、乳幼児の多い家庭、足が悪い高齢者、暑がり寒がり、精神疾患・未病不具合の人、などだ。

また、レシピを調整することによって、離乳食や糖質制限食など、様々な食のニーズに対応できる可能性がある。ここには菓子類が書いていないが当然それも検討の遡上に載る。宇宙船や船舶、離島などでの需要もあるだろう。

細かいところでは色々ツッコミはある。例えばカートリッジ数が予想を超えて多くなり、管理が大変そうだ。フレーバー系はともかく、メイン(食材)カートリッジはもう少し減らしたいところだ。

メインカートリッジの容量は、初期設計では300mLだったのだが、これが12本+予備12本と考えると24本、合計で7.2Lになる。これだけでも結構な重量で、筐体の上部にこれがくるため、重量バランスが悪い。

しかも例えばハンバーグ一つに100mLの肉系カートリッジを使えば、3人前で交換しなければならない。プリント途中での人手によるカートリッジ交換は使い勝手を損ねるし、全自動にするとしたらこのサイズには収まらないだろう。

また、カートリッジのほとんどはその1回では使われないので、計画的に食材のローテーションをしてやらないと賞味期限が来て廃棄するカートリッジが多くなってしまうだろう。冷蔵ではなく常温保存可能なカートリッジの模索が必要かもしれない。

だが、これをベースに追加で設計していけば、本当に何かができそうな気がする。

2024年10月5日土曜日

アルミガラス外枠の家

 

次のような建築を考えてみた。話は非常に単純で、

  • ガラスとアルミだけで作った、外枠だけの建物を建てる。
  • その内側に改めて家を建てる。

というものだ。

いったいこれが何になるのかというと、まず外枠をアルミとガラスだけで作ることで、半永久的にノーメンテで環境を整えることができる。どちらも錆びず朽ちない素材だからだ。そのためにも、例えばシリコンシーラントやゴムパッキン、(アルミではない)バネ座金のようなものすら使ってはいけない。あくまでもアルミとガラス、これだけしか絶対に使わないで済むよう、工夫をする。これに伴って、ガラスとガラスの間などに多少の隙間ができるのは許容する。

その中に家を建てるのなら、寒暖差と風雨の大幅な緩和が為されるので、家自体の耐候性が弱くても良いのだ。例えば屋根のシーリングがいい加減でも、あるいはなくても問題ない。殆どの雨は外枠が遮ってくれるからだ。断熱性も弱くていい。家と外枠の間に(あまり動かない)空気があるからだ。つまり、家の作りを簡素化できるのだ。例えば壁がなく殆ど窓の家を作れる。

現代の家は、透湿フィルムや断熱材など複数の層が重なった複雑な構造になっている。これは建築費を上昇させ、解体時の廃棄物の分別を難しくする。これは設計の難易度も上げるし、地球環境にも宜しくない。特に、屋根が大幅に軽くできることは、耐震性の向上にも貢献する。簡単に作れ簡単に壊せる家は、これからは望まれるものだ。

また、家の外壁や屋根は10年ごとに保守が必要だが、アルミガラス外枠の家には必要ない。外枠は水洗いだけで良いし、内側の家の外壁や屋根は風雨にさらされないので、従来よりもずっと長く保つだろう。これらは保守費の低減に貢献する。

家の外壁をアルミ・ガラスで作ってしまえば同じではないか、と思われるかもしれないが、少し違う。今回想定している外枠と家の間の空間は、庭になる。その庭も風雨に晒されないので快適に過ごせる。台風の日でも庭弄りができるし、洗濯物干しもできる。その干渉空間は十分に広く、家の中に匹敵する快適さがある。また、家の外壁をガラスで作ってしまうと、どうしても風雨は完璧に凌ぐ必要があるため、コーキング材は必須になる。このコーキング材の寿命は短く、保守間隔は5年になってしまう。これは一般的な外壁の保守間隔よりもかなり短い。一方本提案では、外枠と割り切ることでコーキング材を省略し、保守間隔を数十年単位に伸ばすことができる。

ガラス壁のメンテナンスは、美観を維持するという意味では面倒である。しかし近年ではロボット掃除機が発達しており、むしろこういった割り切った外壁のほうがロボットを使いやすいだろう。

2019年5月25日土曜日

ジャストサイズ家電


以前も議論したが、簡単な家電は、コアユニットと3Dプリンタにより、好きなデザインで作れるようにできるようになると思われる。これを考えると、家や家具の都合によって生じる隙間にぴったりの家電をつくれるのではないか、と考える。

家具に限らず、あらゆるモノがジャストサイズになれば、隙間を無くすことができる。隙間がなくなれば、細かい隙間にホコリが溜まることもないし、ついモノを突っ込んでしまこともなくなる。これはカビやGの侵入を阻止することにもつながる。

小物はフィーリングで買ってしまうものだから、後でサイズが合わずに悩んでしまうことも多い。新しいものが増えればレイアウトも変えたくなる。それを毎回最適にできるのは、気持ちのいいことだ。

家電や小物だけでなく、食器や棚そのものにも応用できるだろう。

2019年5月1日水曜日

半3Dプリンタ住宅


3Dプリンタで住宅を作る試みは、幾つか行われている。軍事用のトーチを作ろうというような物騒なものから、

https://techable.jp/archives/95328

のようにボランティア的なものまで様々だ。

だがどうも、その出来栄えについては不満がある。ノズルが大き過ぎる=解像度が大き過ぎて凸凹が酷い、要は綺麗じゃないのだ。もっと綺麗にしたいし、何も全てを一から作らなくても良いのではないか。以下、システムを考えてみる。

まず、「壁ブロック」を作る。これは、コンクリートブロック程度の大きさだが中身は詰まっておらず、2枚の木質樹脂製の板がナイロン糸で繋がっているだけのものだ。重ねて保管できるが、板同士を離すとナイロン糸の間隔で止まる(位置決め)。この隙間にコンクリートを充填すると、コンクリートブロック相当になる。板の素材は、外壁材を兼ねるものと内装用のバリエーションを揃える。

3Dプリンタにはこの壁ブロックを並べるロボットが併設されていて、並べる度に充填する。板だけだと位置決めができないが、広げて並べながらアームで固定し、端からコンクリートを充填していく。

こうして壁を作っていくが、ブロックのサイズに合わない半端なサイズや角の部分では、木質樹脂を吐き出す第二の3Dプリンタが壁を作る。この第二のノズルはコンクリート用ノズルより細かく、精度が高い。また樹脂なので、吐き出すと直ぐに固化する。これによって、壁ブロックと同等の空間ができるので、またその隙間にコンクリートを充填する。

更に、充填が終わったコンクリートには、樹脂の棒を突き刺す。これで横方向の引っ張り耐性を出す(鉄筋の代わり)。これを繰り返す。

壁は勿論、コンクリートの粘度を調整することで、切妻屋根までを一体で作ることが可能になるはずだ。但し二階の床はできないので平屋向きだ。コンクリートに発泡ガラスを混ぜ込むなどで、断熱性と軽量化を図ることもできるだろう。

従来のプレハブと比べると、大型の材料がないため、運搬への制約が少なくなる。最初の3Dプリンタの設置だけが大仕事だが、それさえ済めば後は材料の補充だけで最後まで全自動でできる。騒音もそんなにしないだろうから、条件さえ合えば夜通し作ることも可能になるだろう。

これで、コンクリート住宅が木造住宅並みに安く早く作れるようになれば、また生活事情も変わってくるのではないだろうか。

2019年3月28日木曜日

木質トラスハウスを3Dプリンタで作る


コンクリート住宅を3Dプリンタで作る、という試みは、世界中で行われている。しかし日本では、鉄筋なしのコンクリートだけの住宅は認可されない。地震が多い日本では、揺れで簡単に壊れてしまうからだ。コンクリートは圧縮に強いが引っ張りに弱い。鉄筋はその逆だ。鉄筋コンクリートが使われるのはこのためである。

鉄筋コンクリートを一体成型しようとすれば、鉄筋とコンクリートを同時に吐出する必要がある。3Dプリンタでも、金属を成型できるものは存在するが、引っ張り強度を出すためには、作成後に焼成するか、最初から(高温の)液体で吐出する必要がある。どちらも、一体成形は不可能だ。

では木材はどうかと考えてみれば、やはり不可能である。木材を吐出する3Dプリンタなど存在しない。しかし、エンジニアリングウッドならどうだろう。合成樹脂と木粉を混ぜたものを吐出することは可能なはずだ。

但し、エンジニアリングウッドは構造材として認められていない。実は、従来のエンジニアリングウッドの多くは中空で作られていて、同じ太さでも本物の木材よりずっと弱いのだ。中までみっちり詰めたエンジニアリングウッドもあるにはあるが、本物と同じ太さにするのは困難であり、且つ高価だ。ツーバイフォーにも構造材としての柱が必要な点は同じであるため、作ることができない。

そこで考えるのが、エンジニアリングウッドによるトラス構造を構造体とする案である。これには様々な利点がある。
  1. 軽く作れる。
  2. 家の形状の自由度が高い。
  3. 他の素材との一体成形ができる。代表的には断熱材、壁材だ。
  4. 断熱材の隙間を、ほぼゼロにすることができる。断熱材以外の家の隙間も同様に、ほぼゼロにできる。
  5. 色も一緒に塗れる。
  6. 最初から、(空調・上下水道・配電などの)配管が可能である。
  7. 設計した通りに仕上がる。業者の流儀や連絡不足などによる現場での施工ミスや勘違いは、ほぼ起こらない。
  8. 構造体たる家以外にも、フローリング、キッチン、風呂場など、個々のパーツの多くが一体成形できる。当然、価格低減やトラブル防止に貢献する。
  9. ノコギリや釘などの危険な工具が殆ど必要ない。重量物を運ぶ必要も殆どない。
  10. 基礎、3Dプリンタ据付と撤収では多少人が必要だが、平時は3Dプリンタへの材料の補充、進捗管理とトラブル対応のみ。後は内装工事までほぼ一人でよい。
逆に欠点として考えられるのが、
  1. 最初の設計の難易度が膨大になる。
  2. 最初に大規模な3Dプリンタ用の足場が必要。敷地ギリギリに建てる場合は困難。
  3. 大量の「足場材」(何も無い空間を埋めるための物質で、完成後に取り除く)が必要。これは工夫により減らせるが、設計施工の難易度は更に上がる。
  4. 印刷の進捗に合わせて大量の材料を投入してやる必要があるが、これもタイミングがあって、あまり融通は効かない。
  5. 屋根の防水だけはそのままでは不安あり。
  6. 壁の必要精度に応じ、印刷には膨大な時間が必要になる。例えば1層が1mmだとすれば、1階分3mとして3000層、2階なら6000層必要になるが、1層10分として60000分=1000時間=42日必要。0.1mmなら420日。
  7. 解体時には、全てが複合材料となってしまうので、リサイクルは困難だ。燃やすしかない。
  8. 一体成形のため、破損など不具合の際の補修には、従来と別の技術が必要である。
等だ。これらは技術が進むにつれ工夫できるようになるだろう。例えば、全部3Dプリンタで作るのが良いのかどうかは議論があるはずだ。躯体だけこれで作って後は従来通り、とする方が早いかもしれないし、安く上がるかもしれない。

こうやってできた家が従来の家に比べて安くなるのかどうかはまだ分からない。材料費は一見下がりそうだが、従来と同じ材料になるかどうか分からないし、人件費は減るにしてもその質は異なる。ただ、上に挙げた多くの優位点に魅力を感じる人が多ければ、多少高くても受け入れてくれるだろう。

2019年2月24日日曜日

組み立て工場コンテナ


世の中に大規模な物流が発生する大きな理由は、完成品を運ぼうとするからではないか。部品と組み立てレシピを配送するだけなら、物流はもっと簡単になるのではないか。そう考えてみた。

例えば、世の中の家具が全てIKEA方式になり、組み立てロボット工場が各地にあればどうだろうか。更には材料は現地で、CADで切り出し、塗装までがレシピとして流通すれば。

この結果得られるのは、輸送コストが大きく減ること。また、無駄に作るもの(見込み生産)が減り、そのコストも低減できる。カスタム生産も容易になる。これも見込み生産の減少に貢献する他、品切れもしにくくなる。

服や靴もそうだ。気に入るデザインがあっても足に、体に合わなくて悔しい思いをする、欲しい色がなくて別の色で我慢する、売り切れに落胆することがなくなる。(その代わりバーゲンや福袋の楽しみは減るだろうが)

今の生産方式がこうなっていない理由は、人だ。モノの輸送費は、もう大したことがないというレベルになってきているが、生産にはどうしても人が大量に必要になる。それも、モノによってそのスキルは異なり、高度なものも求められる。優秀な人材が安く手に入るよう、企業は世界中を探し回るわけだ。

だが、今後AIが進歩してロボットの制御が自在にできるようになれば、複雑な組み立てが自動で、同じ品質で、低コストでできるようになる可能性は高い。更にオンデマンドに近い生産ができれば、材料の無駄、作り過ぎ、不足による機会損失を避けられ、原価は大きく削減できる。

このためには、現地の人間に必要なスキルを最小化することだ。生産計画、調達、配送まで全てをロボットが行うものとして、現地の人間は基本的に監視、トラブル対応だけにする。これも全世界共通で教育できる。世界中どこに派遣しても同じ仕事ができるし、それこそVRで遠隔教育することもできるだろう。

その代わり、工場のコストは並みの工場よりずっと高くなる。そのほとんどは設備費で、後は電気代だ。生産量当たりの減価償却費は、通常で作る場合の何倍も高くなる。ただそれは従来の人件費を含んでいることには注意が必要だ。

また、工場の設計は皆同じでよい。もしそれなりに小さければ、海運コンテナにしつらえてしまえば、工場を工場で生産できる。設置も撤去も簡単なので、流行に合わせて数を増減させたり、撤退することも簡単だ。海外進出も難しくない。バージョンアップも、新しいのを送り込んで古いのを回収することでできる。従来の固定費の概念を大きく覆すものだ。

ここでの懸念は、まず工場自身のスペックだ。製品自体はどんどん新しくしていかなければならないが、その新しい設計にロボットが耐えられなければならない。このためには柔軟なロボットが必要だ。

次の懸念は、現地で調達できる原材料の品質である。受け入れ検査をロボットでやり、ダメなら弾くというような仕掛けが必要だが、この分野はまだ殆ど研究されていないように思う。

後は高度な設計技術であるが、ま、これは企業自体の魅力と言えよう。

2019年1月19日土曜日

今後建築業界で危険が増える可能性


建築業界は、長年の改善の結果として、安全の確保はかなり進化し定着している。IT業界の方がよほど危険・不健康だよねぇ、なんて冗談で会話したりするほどだ。

例えば、作業時間は厳守だ。長時間働かせることで注意力が落ちれば事故になる。建築現場ではそれは文字通り命取りになる。一方でIT業界では、徹夜した位では人は死なないから、残業し放題だ。休憩時間、重量物の運搬制限、安全帯の設置等、様々な工夫があってこそ、今日では人が殆ど人が死なない職場が成り立っている。

ここに、ロボットや遠隔操作の技術が徐々に入り込んできている。遠隔操作の重機や自動運転のトラック、六本足の作業ロボット等が実用化すると、これらの安全基準はそれに合わせて変化するはずだ。それは当然、人間の安全のために行われていた様々なマージンが削られる方向に進む。

例えば、24時間連続稼動であったり、人間の通行空間の省略であったり、天候や粉塵、騒音、高温等への配慮であったりするはずだ。この結果として、作業空間は人間が立ち入れない危険な空間になる。また、例えば安全な水食料がない、伝染病が蔓延しているなどの地域でも、作業が可能になる。

結果として、低価格で、作業時間が短く、といったように、建築の条件は緩くなっていくはずだ。だが、もしそこで機械に対応できない事故があったらどうするのだろう、と不安になる。そこに人が入っていくのに宇宙服が必要だとか強化アーマーが必要だとかいうことになっていくのだろうか。

これこそがサンダーバードの世界なのだろうか、あるいはそういったことも考慮して作業が設定されるのかは知らないが、拙速は禁物。安全に進めて欲しいものだと思う。上手くいけばバラ色、下手を打てばまた建築業界はIT業界に遅れを取ることになるだろう。

2019年1月14日月曜日

パルプブロックでDIY


以前、「紙パルプ3Dプリンタ」という投稿をしたことがあるのだが、印刷精度が悪いことはその課題として提示した。一方で、MDFボードのような成型板は、加熱圧縮しているので寸法精度が良い。

3Dプリンタというと一気に作るイメージがあるが、部品を作って組み立てることも当然考えてよいはずだ。となると、ブロックのような定型であれば、加熱圧縮の機構も組み込んだ上で、丈夫且つ精度の良い部品ができるのではないだろうか。

紙パルプ生成機、すなわち使用済みの紙を投入すると水と共に攪拌して紙液を作ってくれるマシンと、紙パルプブロック成型機、すなわちその紙液を型に流し込んで圧縮加熱成型してくれる機械を考えてみる。また、ミリングマシン(削るマシン)も想定する。

ブロックのサイズを、例えば100×50×50(mm)としてみる。レゴブロックと同様、上下に凹凸があり、はめ込むことができる。レゴブロックは中に空隙があるが、こちらは凹凸以外はパルプで詰まっている。

小さいものは、ブロックを作った上で、ミリングマシンで削って完成させる。大きいものは、個々のブロックを必要に応じてミリングマシンで削った上で組み立てる。ここでは凹凸と横の接触部は接着剤(市販のボンドでよい)でくっつける。

更に大きいものや、長い柱、平らで薄い板が必要なものは、市販のMDF版やツーバイフォーなどとの組み合わせを前提として、その繋ぎをブロックで作る。もちろんボンドで接着する。いずれにしても、完成後は必要に応じて塗装する。

新聞雑誌包装紙梱包材など、捨てる紙は無限にあるから、材料には事欠かない。おもちゃはもちろん、食器や棚引き出し椅子机など、かなりのものがDIY可能になる。今まで耐久性を重視していたものでも、どんどん作って古いものは捨てられるから、モノの見方、使い方も変わるだろう。消耗品でも、これで作れるストックは不要になるから、その分のスペースが有効に使える。

どんな型があれば何が作れるのか、レシピはデータとして売り物になる。3Dプリンタとは異なるが、新しいDIYの可能性として検討してみても良いのではないかと思う。

2018年12月6日木曜日

紙パルプ3Dプリンタ


https://jp.techcrunch.com/2018/11/07/2018-11-06-this-3d-printer-squirts-out-wet-paper-pulp/

3Dプリンタの材料として、プラスチックでなく紙パルプを使った事例だ。

これは面白い。紙は日常空間に溢れているし、何よりも自作が可能だからだ。シュレッダーには湿式シュレッダーというものがあって、裁断するのではなく湿らせてどろどろにする。モノによってはその場で新たに紙に再生するものがある。この技術を応用すれば、自宅の余った紙で作ることができる。

この事例の作品の見た目は美しくないが、乾けば市販の塗料で幾らでも化粧が可能だ。工作精度も悪そうだが、これは将来的には改善が期待できるだろう。そうした上で何ができるか、何を作りたいか、色々と想像ができて面白い。

日常に発生する紙と言えば、包装紙や梱包箱(ダンボール)、雑誌新聞といったところだろう。量的には結構なものだ。従って、ペン立てなどの文具、小物ものも可能だろうが、消耗品ではないものを作ることに意義は薄く、それなりの消費があることが望ましい。そこで考えてみると、
  • 買い物袋(バッグ)。麻紐や市販の紙紐と組み合わせた強度強化が望ましい。
  • 皿、コップ、カトラリー(箸、フォーク、スプーン)。
  • 梱包箱(リユースではなく最適なサイズに作り直すリサイクル)。
  • 封筒。
  • ぞうきん、給水材。
  • 紙おむつ。子供の下着。
  • 紙粘土。
  • 子供のおもちゃ。積み木など。
  • クッション材、断熱材。
  • キッチンペーパー、メモ用紙、トイレットペーパーなどの薄いものが作れるかどうかが不明だが、もし可能ならこれらも考えられる。
こういったものが日常的に作れるなら、一家に一台3Dプリンタを置く意義も出ようというものだ。紙パルプ3Dプリンタは、もっと研究されるべきだと思う。

2018年10月1日月曜日

液滴化技術応用


https://japanese.engadget.com/2018/09/04/sound-based-liquid-printing/

久々に面白い研究を見つけた。超音波を使って、高粘度の液体でも液滴化して射出できる装置が開発されたそうだ。

高粘度というと直ぐに思いつくのが蜂蜜だが、これが例えば0.1mmの滴になるわけだ。これは想像力をくすぐられる。大きくは、以下のような応用が可能なはずだ。
  1. 微細な液滴にしてそれをコーティングすることで、粉状に作ることができることに関する応用
  2. 正確な計量ができることに関する応用
  3. 薄く散布ないしは噴霧することができることに関する応用
  4. 液溜まりを破砕することができることに関する応用
  5. 新しい物性の発見とその応用
1.として考えられることは、取り扱いが便利になることだ。例えば容器での保存やパイプでの輸送が簡単になる。サラサラの顆粒のような蜂蜜ができれば、塩のように食卓に並べて置くことができる。砂糖の代わりにこれを使う人は増えてくるのではないか。

2.で直ぐに思いつくのは創薬だ。従来扱いづらかった薬剤が新たに使えるようになれば、応用も広がるだろう。単に素材だけでなく、従来はカプセルだったものを粉剤にしたり錠剤にしたりすることもできる。粉にするだけで、コーティングを工夫することにより、胃で溶けず腸で溶けるようにするなどが可能になる。

3.で言えば、溶剤を減らした医薬や塗料、コーティングなどが考えられる。これも応用が広そうだ。単純に運搬の負荷が減るし、薄く均一に塗れるなら有効成分の量も節約できる。

また、食品でも応用が可能だろう。薄いバイオポリマーで食品を覆うことで、食感を損なわずに肉汁の流出を減らしたり、保存性を高めたり、極端な味や匂いを抑えた栄養補助食品を作ったりできる。サプリメントの作り方も、薬と同様バリエーションが増えるはずだ。

4.で言えば、代表的なのはバイオフィルムだ。超音波歯ブラシの原理はこれだったのかもしれない。となると、風呂や洗面所などのバイオフィルムは、超音波で剥がすことが可能なのではないか。単に超音波を当てるのではなく、引き剥がすような当て方になるから、その効率も高いだろう。

5.はまだ何とも言えないが、例えば新しい粘着剤や滑り止めができたり、光触媒のような抗菌消臭ができたり、光学特性の優れたコーティング剤ができたりする可能性がある。空中に噴霧することで抗菌できる、といったことも考えられるだろう。

研究はまだ初期のものだそうだから、長い目で期待しようと思う。

2018年7月23日月曜日

1/8計画


東武ワールドスクウェアには、世界の有名な建築物のミニチュアが多数展示されている。そこには同縮尺の人形も多数置いてある。あれを見ていて思ったのだが、あの人形がをロボットで、目のところにカメラがあって、それをVRで見ることができたら楽しいだろうな、ということだ。

しかし、ただ楽しいだけかというとそうでもない。有名なウルトラQの「1/8計画」は、人間を縮小して1/8サイズの町を作ろうという話なのだが、その理由は土地不足・食糧難の解消だった。もしVRであっても1/8の町で日中大部分を過ごせるなら、食糧難はともかく土地不足は解消できるのではないか、と思ったからだ。

映画「サロゲート」のように、朝起きたら椅子かベッドのような接続装置に入り、以後はトイレと風呂と睡眠以外はそこで過ごす。ゴーグルが嫌ならマルチスクリーンの部屋でも良い。映るのはミニチュアの町だ。

まあ完全にソフトウェアの町でも良いのだが、それはそれ。ミニチュア+ロボットの方が、何となく安心できないだろうか。それに、ソフトウェア的にはその方がずっと簡単にできるのだ。なにせ物理的に作りこんでしまえば良いのだから。人間(ロボット)同士の干渉や個々の位置からの見え方などは物理の法則に任せ、映像の配信とロボットの操作だけに専念すればよい。

例えばスケールを1/8にすると考えると、身長180cmの人は22.5cmになる。ロボットとしてはちょうどよい大きさだ。細かい模型も作りやすいだろう。人間並みの動き(例えば手指)は今すぐには無理だが、需要が出れば技術は発達していくだろう。

最初は町ではなく、イベント会場ないしは遊び場(遊園地)が良いだろう。例えばバンジージャンプが気兼ねなくできるが、物理法則が異なる(スケールする)ので、実際のそれとはまた違った体験ができる。

一つ面白いのは、実物とロボットとが絡むことだ。コンサートに行くと、生身の場合は席から遠くて歌手が見えない、双眼鏡必須、などということはあるが、これなら8倍の大きさだから、誰でも間近に且つ大きく見える。むしろ通常のコンサートよりウケるかもしれない。

1/8に限らず、更に小さいサイズのものも作ってよいかもしれない。例えば1/32なら5cm足らずだ。1/8では狭い家も、1/32なら広大な家になる。貧乏人は1/32、普通の人は1/8、金持ちは1/1、などというすみわけもできるだろう。

2018年6月2日土曜日

3Dプリンタモーター


https://fabcross.jp/news/2018/20180420_tuchemnitz_3dprinted_electricmotor.html

3Dプリンタで印刷できるモーターが登場した。ただ単に「できた」というだけでなく、セラミックで絶縁することで耐熱温度を飛躍的に高める可能性があるそうだ。

ここでは耐熱温度に関する議論はしない。もう一つの特徴である、「機構部品と機能部品の一体成形」のメリットについて考えてみる。

これは、材料と設計図さえあれば、機能部品を作ることができる、ということを意味している。この例ではモーターだけだが、それでも応用範囲は一気に広がる。モーターだけで成り立つ部品や製品を考えてみれば、それが分かる。

例えば時計。掃除機。洗濯機。換気扇。扇風機。エレベーター。ドライヤー。エアコン。冷蔵庫。チェーンソー。バリカン。電動ドライバー。髭剃り。電動歯ブラシ。義手・義足。自動ドア。電動自転車。厳密に言えばインジケーターランプなど他の機構部品も配慮する必要があるにせよ、こういったものが製造可能になるわけだ。

モーターだけではない。電磁調理器や電気ポットのような電熱器も、原理的に考えればこれで作れるはずだ。また、既成の部品を探す必要はなく、必要な部品は設計すればよいから、例えば幾らでも小さく、変形も自在なモーターを作ることもできる。配線も一体でできるし、ケーシングすら必要ない。これは、小ささや形状の自由度に貢献する。密閉も簡単だ。

なんでもないものにモーターを入れて付加価値を高める、ということもできるだろう。自動開閉するケースやノートPC、取りやすい位置に移動する電話台などだ。

また、上の記事では、最終的にできたパーツは焼結していたそうだ。これを考えると、刃やバネの焼入れもできそうだ。物凄く小さいバネ、鋏などもこれで作れるだろう。

問題は、3Dプリンターで作る価値があるのかどうか、というところだが、条件として二つ考えられる。第一は、アクセスが限られている状況において、必要機材の故障や、新たな道具が必要になった場合に備えることだ。宇宙船はその代表だが、そこまで極端でなくても、油田、離島、僻地、船舶などで一台設置しておくと、何かと便利だろう。

もう一つは、3Dプリンターで作らないとできない、あるいは経済的にマッチしない場合だ。特殊な形状の部品を使いたい、小さくしたい、といった要望の他に、カスタマイズしたいという要望が考えられる。これらの代表は身体障害者用の生活道具や義手などだろう。需要の主流はこちらになるはずだ。

病院で計測して設計図を作ってもらい、それをファブラボに持ち込めば翌日には完成して持って帰ることができる、なんてことも、もはや夢ではない。

2018年4月24日火曜日

食の3Dプリンタ


http://idarts.co.jp/3dp/open-meals-sushi-teleportation/

発想は面白いが、今のところ実現性は低い。問題となるのはボクセル要素の解像度、結合方法、素材、そして製造方法だ。小さく分割すること自体はまあ良いとして、個々のボクセルの味、栄養素、食感をどう再現するのか、何も具体的なアイデアが示されていないし、スキャンの方法も勿論書いていない。

最初は、スキャンは諦めて、素材そのものを指定して考えるのが良いだろう。例えば米一粒を3Dプリンタで作るにはどうするか、を考える。これを更に細分化して、味、食感、栄養素について各々考える。まずは食感と栄養素を外して、味について考える。

味については、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味を出す調味料を混ぜ合わせる、という手法が使えるだろう。ただ、ブドウ糖と果糖の比率を変えるような高度な技ができるのかどうかは不明だ。

次に栄養素を加える。調味料自体にも栄養素があるので、それを差し引いた上で足りない栄養素を加えるのだが、栄養素自体にも味があるため、調味料をそれで加減しなければならない。この栄養素と調味料の組み合わせは、いわばゴールシークで作ることになる。
栄養素には三大栄養素(脂肪、たんぱく質、炭水化物)とミネラル・ビタミンがあるが、例えば脂肪ひとつとってもさまざまな種類があり、上の甘味と同じような問題がある。また、ミネラルやビタミンは多種少量であるので、その制御が問題になるだろう。

最後は食感だ。この再現にはコラーゲンの合成が必要になる。コラーゲン以外で食感を出す方法もあるだろうが、まずはコラーゲンとその形状、結合強度などを調整するのが有力だろう。

素材の多様性の問題に目をつぶれば、似たような味、似たような栄養素、似たような食感のボクセルを作ることは、まあ可能だろう。ただその「似具合」は相当に酷いだろう。これを本物に近づけるには、食材をできるだけ本物と同じにしなければならないが、そうすると保存性の良い粉末や液体にしてパイプを何本も繋いで… という方法は採り辛くなってしまう。

そして極め付けがスキャンだ。これをリアルタイムで行う方法はとても思いつかない。例えば凍らせるなどして固定した後にカッターでさいの目に切り、各々の栄養素分析をすることはできるだろうが、この時点で食感の測定ができなくなるからだ。

そしてサンプルを複数用意するにしても、食感をどう測定してよいのか見当もつかない。例えば「口」ロボットと圧力センサ、ということは考えられるが、食感は測定できても、その原因がサンプルのどこのどういう構造からくるものかは測定できたことになっていない。

ここを解決できなければ、このプロジェクトの実現性は低いままで終わってしまう。何とか良いアイデアはないものだろうか。

2017年9月20日水曜日

骨梁構造人工木


骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う。

従来の鉄骨構造では、H鋼かパイプ、ないしは角型鋼管などが使われてきた。骨梁と類似の構造は今まで無かった。あえて言うならトラス構造がこれの超簡略化したものと言えなくもない。なぜ無かったのかと言えば、作れなかったからだ。充填剤として発泡ウレタンなどを入れることはできたとしても、それでは構造材の役目は果たせないから強度は変わらなかった。

しかし、今の技術なら可能だ。3Dプリンタがそれだ。鋼管と(ほぼ)同じ材質で骨梁を作ることができれば、それを角型・丸型鋼管で覆うことによって、従来の何倍もの強度を実現できるはずだ。

また、鉄に限らず樹脂や人工木でこれを行えば、もっと面白いことが起こる。というのは、骨梁をそのまま真似るのではなく、独立気泡のように成形することができる。これは断熱の効果もあるのだ。(鉄は素材自体が低断熱なのでやってもあまり意味がない) 鉄骨構造やRC造は丈夫だが、断熱性が悪い。木造はその逆だ。そこに骨梁人工木が乱入する。丈夫で断熱性の良い構造材の誕生、というわけだ。

骨梁構造によって断熱性能が木材の3倍程度になれば、充分にグラスウールに匹敵するので、断熱材なしで柱・壁を作ることができる。同じ素材で吹き込み式の断熱材を作ることも、充填剤や補修剤を作ることも可能だ。すると、完全単一素材の家を作ることが可能ではないか。

これには様々なメリットがある。例えば気密性の確保や補修に、木工パテが使える。透湿シートや断熱材などと壁床を何重にも加工する必要がなく、一発で作れる。窓枠、システムキッチン、ドア、家具類までも同じ素材で作ることができる。これにより、解体でのリサイクルが簡単にできる。建築用・加工用の道具類もシンプルになる。壁に直接塗装することも、モノを接着することも簡単だ。穴を空けたり溝を掘ったりして、電気やガスの配線配管を埋め込むことも、後付けでできる。

もちろん外壁材としては強度不足だろうから、塗装やシート加工、屋根には別素材(瓦など)が必要になるかもしれない。それでもこのメリットは色褪せない。ぜひ検討して欲しいものだ。

2017年9月1日金曜日

非焼成セラミックス


http://techon.nikkeibp.co.jp/real/project/025.html

水と混ぜるだけでできるセラミックスで、圧縮強度、曲げ強度、引っ張り強度、接着強度、耐食性、とあらゆる面で優れているのだそうだ。また、混ぜ物ができるので、その特性をさらに変化させることもできるらしい。塗料としても使えるようだ。これは夢想の材料としてうってつけだ。

考え方の方向性としては、大きくは四つある。一つは、焼成が必要なセラミックスは、高温に耐えられない他の部品や冶具とは別に成形する必要があったのだが、水と混ぜるだけならその制約が無くなる。つまり、他の材料と密接に結合した部品が作れることになる。

代表的には、鉄筋セラミックスが考えられる。このセラミックスにアルカリ剤を混ぜ合わせて、通常の鉄筋コンクリートと同じように型枠に流して形成する。アルカリを混ぜるのは、鉄筋の錆びを抑えるためだ。曲げ強度や引っ張り強度に優れるのなら、割れることなく、永遠に鉄骨を隙間なく覆うことができるので、建物の寿命を飛躍的に向上させることが期待できる。

もし全部をセラミックスで作るのが困難(高額など)なのであれば、鉄筋廻りのみをこれにして、後はコンクリートにするのもよい。中性化の影響を鉄筋周りで防ぐことができれば、類似の効果は期待できる。配筋の後、スプレーしてやればよい。

また、セラミックスの内部に導線や磁石を埋め込むことで、露出部分がセラミックスだけのモーターなどを作ることが可能になる。腐食性の液体・気体を扱うポンプやエンジン、発電機などが作れる。

コンピュータの基板は部品で凸凹しているが、ここにセラミックスを流し込んで埋めると、回路の保護と放熱(セラミックスは熱伝導性がよいことが多い)が効率よくできる。ファンレスコンピュータ、水冷・油冷コンピュータなどに道が開ける。もっとミクロなことを言うと、半導体自体のパッケージングでもこれが使える。すると高温に耐え、耐衝撃性能の高い半導体を作れる。これは宇宙、原発、深海、火山、地中、兵器などでの使用に向く。

二つ目は、塗料として使えるのであれば、様々な(耐熱性の無い)ものに塗ることで、セラミックスの持つ耐久性や高強度などの恩恵を受けることができる、というもの。例えば、自動車・船・海運コンテナなどの外壁材(塗料)として使えるのであれば、これらの錆びを抑え、長期使用に耐えられるようになるのではないか。同じくアルカリ剤を混ぜておけば、多少錆び付いたコンテナでもリユースに耐えられるかもしれない。

この応用として、従来はまるまる陶磁器として作られてきたものを、表面だけを塗装によるセラミックスにして、基材を別のものにするというものが考えられる。例えばトイレや洗面台をプラスチックなど軽い素材で作り、表面だけ塗装する。同じ原理で、食器や壷、琺瑯、屋根瓦などを軽く、大量生産可能なように作ることが考えられる。

防水が必要な用途では有効性は高い。風呂釜やユニットバスの表面をセラミックスにできるなら、ガシガシたわしで擦っても塩素剤を撒いても耐えられるだろう。パッキンもこれにしてしまえば(四番目の利点)、塩素や強アルカリ洗剤を心置きなく使えるし、それこそガスバーナーであぶってカビを殺すことも可能だ。

屋根材としても有効だ。トタンにこれを塗るだけ、あるいは合板にこれを塗るだけで屋根の防水をする、ということも考えられる。

高温に耐える、耐腐食性、耐ガス性能などを期待して、内側が全てセラミックスのエンジンを作ったり、配管の内側にこれを塗ったりすることも考えられる。また、高熱になる機器、代表的にはコンロやコンロ台に表裏くまなく塗ってやれば、ベースが木や紙であっても燃え広がらない。

三つ目は、3Dプリンタでの成形が可能になることで、極端に細かい、工作精度の高い、あるいは型抜きではできない複雑な形状のものが可能になることだ。ボルトナット、時計の歯車、歯の詰め物、宝石の台座、文房具などはどうか。水槽のフィルタは半永久的に持ちそうだ。詰まったら塩素に浸せば元通りになる。小さなものであっても電気機器のケースをこれで作ると、発煙発火の危険性が減る。コンセント、ローゼット、分電板、ブレーカーなどだ。

四つ目は、シーラントないしはパテとして使うことが可能になることだ。柔軟剤を混ぜれば用途も広がる。例えば窓枠の固定や、外壁材としてのセラミックスの隙間を埋めるパテとして使用する。シリコンシーラントはカビに侵されやすいが、セラミックスなら耐久性は高いだろう。

何れにしても、オリジナルのセラミックスの組成や各種数値を見ないで発想しているので、どれだけ実現できるのかは分からない。だが、将来的にはこれらの多くが可能になることを期待している。

2017年8月24日木曜日

バリアフリーの衰退


最近のショッピングモールは、道幅も広く、多目的トイレも豊富で、階段の横にはスロープがあり、車椅子の貸し出しもあるなど、バリアフリーを考慮している。もちろん法的な側面もあるのだろうけれども、高齢者の割合が増えてきたことも手伝って、良い循環になっている。

一方で、スマホによる3D空間把握や歩行補助ロボットなどの市場が立ち上がりつつある。これは逆に、障害者が健常者のように振舞えることを目指しているとも言える。もしこちらの方が急速に発達すると、従来のアプローチとは逆行する結果を生むことになる。つまり、バリアフリー設計が必要なくなるかも知れない。

サイバーダイン社のHALシリーズは、歩行支援と重量物持ち上げ(腰)支援、単関節(肘、膝)のタイプがある。健常者でも、例えば歩行なら素早く、あるいは長時間歩けるなど、メリットはある。音声による歩行支援があれば、目をつむる理由が単なる怠慢であっても問題なく歩けるわけだ。

もちろん、それを前提として社会が更にアンチバリアフリーになる可能性はある。狭くて急な階段しかなくても障害者が住めるとか、用意があった車椅子がなくなるとか。が、その代わりにそういった補助具を貸し出せるなら、それも良しとなるのかもしれない。

もちろん、セニアカー一つとってもろくに普及していない現状を見れば、この可能性は低い。だが、サイバーダインを付けた高齢者が多数、街中をかくしゃくと歩き回る姿を想像すると、少し楽しい。

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