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2026年6月20日土曜日

安価な広視野角VRゴーグルの設計

Meta Quest 3の視野角は110°(横方向)らしい。だが人間の視野角は180~220°くらいはあるそうで、実際に見てみると周辺視野は確かに限られており、潜望鏡を覗いているような気分になる。

これは何とかならないものかと調べてみると、市販の相当高いモデルでは120~140°程度のものはあるのだそうだ。だがこれらは高いだけでなく超巨大で重量も重く、相当に使いづらい。

高視野角が難しい理由はレンズとディスプレイにある。特にレンズが問題で、目の前に置く以上、180°のレンズなんてものは存在し得ない。先に紹介した高いモデルでは、左右の目で各々角度をつけているが、片目で見ればやはり110°程度が限度で、人間の片目視野角である150〜160°には及ばない。

そうしないためにはディスプレイとレンズを複数(正面、左右、上下)配置する必要があるが、そうすると境目の映像処理が大変で、頭の向きと目の向きと合わせた計算を超高速で行う必要があり、計算機負荷が高く困難である。この計算が完璧でないと、空間に境目ができたり画像が歪んだり、またいわゆるVR酔いが起きてしまう。

これを何とかしようと色々考えてみた結果、あるアイデアを思い付いた。

まず第一に、視野角220°まで作る。とは言っても周辺視野は同じ解像度でなくてよい。つまり中央の110°は従来通り高解像度だが、周辺の左右上下はぼやけていてよい。

これに従い、中央は従来通りのパンケーキレンズと高解像度ディスプレイを使うのだが、周辺視野には「フレキシブル基板に搭載したマイクロLED等の自己発光素子を並べたもの」を使う。これを筒状に丸め、周辺視野を覆うようにする。

ここでのポイントは二つある。第一は、この周辺視野用ディスプレイにはレンズを搭載しない。従って超近距離のため必然的にボケるのだが、それはそのままで良しとする。そもそも周辺視野はボケていてよいという前提だからだ。

第二のポイントは、このゴーグルを被っている状態は「メガネを掛けている状態と同じ」と定義し、メガネのフチも実際に作ることだ。メガネのフチはユーザに見えており、そのフチを境にして高解像度部分と低解像度部分を分けるのである。

なぜこんなことをするのかというと、先程の周辺視野部分と中央視野部分の境目の問題を解決するためだ。フチの中と外で映像が違うことにはそもそも違和感がなく、境界を自然に見せる計算が不要になる。レンズが不要であることで薄く作れ、光学的な調整も至極楽になる。

つまり、周辺視野と中央視野の境目の不自然さを、高度な計算なしに無くすと共に、光学系が簡素化されて低価格で実現できるというわけだ。また軽く作ることもできるだろう。

まあ低価格とは言ってもMeta Quest 3よりは遥かに高くなるのだろうが、それでも周辺視野をサポートすることの意義は大きい。座って、あるいは限られた安全なエリアでのみ短時間使うという従来の使い方から大きく羽ばたき、4時間以上の長時間に渡って使え、特にVRゲームなどで周辺の状況をいち早く知ることができる、外で使っても危険は少なくなる、といったメリットがある。

これらのアイデアは、既存の技術の延長で直ぐにでも可能である。機器メーカ殿にはぜひチャレンジしていただきたいと思う。

2026年6月6日土曜日

スマートグラスによる教育

VRゴーグルを使った教育は、既にN高などで実用化されている。これを更に進め、スマートグラス前提の教育を考えてみる。

N高の時代と違うのは、強力な生成AIの存在である。つまり、教科書と学習指導要領だけを与えることで、教育プログラムを生成AIが自動的に作ってくれるようになれば、コンテンツ制作のコストは大幅に減り、一気に裾野が広がるはずだ。

基本的には、とある男のような動画の教育コンテンツをベースに、生徒に合いの手を取らせる(頻繁に合意や理解の確認を行う)という形態になるのではないかと思う。但し教師は映像でなく人工人格である。また、教科や内容により、立体図形や動画、立体動画などのマルチメディア教材を織り込む。冒頭にあるのはGeminiで作ってみたイメージ動画だ。(教師がロボット然としているのがちょっと気に喰わないが)

ただ教えるだけではなく、EMS(Education Management System)があり、その背景には教育指導要領があって、という形にする。EMSには当然進捗管理や成績が含まれているので、仮想的に一つの教室に集まっていても、教わる内容は一人ひとりカスタマイズされている。

ホームルームや学校行事、体育や音楽(楽器演奏など)、家庭科などは別に考えるとして、座学はほぼこれで代替できるだろう。

さて、動画を見ていると遥か未来のことのように感じるが、個人的には10年と掛からず、5年も必要ないくらいで作れるだろうと考えている。というのは、今の生成AI単独でも、テキストベースであれば似たようなことは可能なのだ。試しにちょっと作ってみたが、社会人向けの資格試験のようなものなら、学習の進捗管理、内容解説、到達度テストを出題することができた。おそらく長文読解やイメージ図・グラフのようなものも、工夫次第で可能だろう。生成AIはもうそこまでできるようになっているのだ。

ただ、特に低学年向けには、内容解説と到達度テストの部分にはかなりの工夫が必要で、理解度向上と飽きのこない構成力が求められる。単にNHKの教育番組を流すようなものではなく、生徒への問いかけと会話を伴うものであるべきだろうし、生徒が分からないと言った時に仮想教師がどう答えるかには無限の可能性がある。この辺は、職を失った教科書会社と教師が共同で工夫していくべきところだろう。

しかしその努力はけっこうベタな努力であって、技術的に難しいものではない。つまり教科書会社と教師さえその気になれば、スマートグラス教育の開発は明日からでもできるのだと考えている。

そのシステムは当然横展開可能であり、その気になれば全国どころか全世界への展開も簡単だ。コンテンツはサーバにあり、スマートグラスと通信さえ確保すればよい。まずは障害者など教室への参加が困難な生徒にスマートグラスを配り、そこで検証しながら離島や僻地に配り、外国人や境界知能の子供たちに配り、… としたところで、だいたい教育人口の15~20%程度が網羅できるようになる。するとそこそこの規模の市場になるため、その後の展開がしやすくなる。コンテンツを充実させながら展開していけばよい。

恐らく、生身の教師が直接授業をするよりも、こちらの方が学習効率は高いはずだ。個人カスタムなので分かるところは素早く進め、理解度が低いところはじっくり教えられる。マルチメディアを駆使するため理解度も高いだろう。

もちろん高校大学社会人になってもずっと使えるベースシステムである。今流行りのリカレント教育などにももちろん使える。コンテンツ毎に課金すれば市場は形成されるのでそれで開発費を稼ぎつつ、国民の知識レベルを向上するのに大いに役立ってほしいと思う。

2026年6月5日金曜日

復権のグラス人間

 

TeamsやZoomなどのテレビ会議システムでは、既にビデオ録画と音声トランスクリプトをサポートしている。このデータを基に、各社がじわじわとサービスを拡張している。例えばAIファシリテータや議事録、同時通訳は既に実現している。

そこから先の機能としても色々提案されている。知る限りでは、

  • 商談において、顧客から必要な情報を引き出せているかどうか(納期や予算、仕様、キーマンなど)を確認しアドバイスする
  • SalseforceなどのCRMシステムに必要情報を転記する
  • 不適切な営業トーク(絶対儲かります、など)を言っていないかのチェック

などがある。

こういったものを見ていて思うのは、これって結局「素人をプロの目線で評価する」ということなのではないか、と思うようになった。だとすると、これからの時代は、それこそスマートグラスを掛けて相手を撮影しながらリアルタイム解析し、必要に応じてフォローするようなアプリが出てきてもおかしくないのではないか。

例えば顧客の感情を分析してフォローするためのシナリオを表示したり、雑談のネタを提供したり、喋り方(ここで強気に、ここは激しく同意、など)をアドバイスしたり、もちろん商品知識も、顧客の質問への答えも、リアルタイムで表示し音声指示するのだ。

最初はロボットに操られているようでも、そのうちアドバイスを先取りして行えるようになってくる。そして一流の営業マンになれるわけだ。

この仕掛けはあらゆる対面商売に応用できる。職業の中には、ロボットに置き換えるより対面の方が好まれるというものが多くあるが、その理由は多分に顧客感情がある。介護や看護、演劇、風俗などはその代表だろう。だがそういう人たちでもそのスマートグラスは使えるわけで、ある種全てが及第点、あるいは味気ない標準的な対応、となっていく可能性は高いのだと思う。

ちなみに、「レンズのないカメラ」というのも研究レベルでは存在しており、レンズのないメガネであってもそのうち安心できなくなる。ディスプレイを諦めて音声だけのアドバイスに留めるならワイヤレスイヤホンだけで済むし、髪を伸ばしてそれを隠すこともできるだろうから、一見何もしていないように見えてもAIを使っていないとは限らない。

また、必ずしもリアルタイム・顧客対面とは限らない。従来の例で言うと飛行機の整備士がVRゴーグルを掛けていた例があったが、あれがスマートグラスになり、対応する職業の裾野が広がれば、色々なところで技能職のレベルが上がり、均質化する。

今の期待で言えば建設業がそうだ。外国人比率が高く意思疎通も難しい中、音声とディスプレイでのアドバイスがあれば、作業効率も作業の質も飛躍的に上がるだろう。また工場の工員にしても、伝統工芸の伝承者にしても、同じことが言えるのではないか。

ここまで来て、以前より予測していた「AIとロボットの発達により、人口の8割の人間は、どのような仕事をするにしてもAIやロボットに能力で劣後し、職を失う」というのが本当か、と改めて考えるようになった。

つまり、少なくとも肉体労働に関しては、ロボットを雇うよりも、スマートグラスを掛けた人間の方が安くあがるかもしれない、と考えるようになったのだ。だとすると、8割の人間の多くは職を失わずに済む。

この仮説を基に生成AIでシミュレーションしてもらった。その結果はこうだ。(要約してある)


  1. 想定する年代の設定:ロボットが社会的かつ経済的に広く人間の肉体労働を代替し、市場において直接的なコスト競争を繰り広げる起点となるのは2035年と推計される。したがって、本報告書における定量評価は、物価上昇を考慮しない実質価格基準での2035年時点における比較として実行する。

  2. ロボットとグラス人間の技術レベル別コスト構造比較:2035年におけるロボットのコストは、その「物理的運動能力」と「環境への適応力」のレベルに応じて3段階に分類される。

    1. レベル1:低機能・平坦面特化型ロボット(例:車輪型、または定型案内・搬送に特化)
      1. 本体価格:1,125,000円
      2. 年間運営コスト(電力、保険、簡易点検):300,000円(車輪型は二足歩行に比べアクチュエータが少なく、保守費用が3分の1以下に抑制される)
    2. レベル2:標準・産業向け二足歩行ロボット(例:工場組立、物流倉庫ピッキング)
      1. 本体価格:3,000,000円(Tesla Optimusコモディティ機等を想定)
      2. 年間運営コスト(予防保全、部品交換、AI SaaS料金、保険):1,200,000円(本体価格の40%に相当)
    3. レベル3:極めて高度・非構造化環境対応ロボット(例:建設・修繕、高度不整地、高精度な触覚操作)
      1. 本体価格:6,000,000円
      2. 年間運営コスト(頻繁なアクチュエータ交換、専門技術者サポート):2,250,000円
  3. グラス人間のコスト(2035年想定)

    1. スマートグラス本体価格:150,000円(企業用ミドルレンジ、耐久性・カメラ搭載、3年償却で年50,000円)
    2. 業務支援AI・通信SaaS月額料金:10,000円(年間120,000円)
    3. 企業負担間接費率:法定福利費(社会保険、退職金等)として人間への給与に対し15%を上乗せする。
  4. 時間当たりの総所有コスト(TCO)

    区分 本体・デバイス価格 耐用年数 年間運営・SaaS費 年間労働時間 時間当たりコスト(TCO)
    レベル1ロボット (単一稼働) 1,125,000円 5年 300,000円 1,800時間 約306円 / 時間
    レベル1ロボット (多シフト) 1,125,000円 5年 300,000円 5,100時間 約103円 / 時間
    レベル2ロボット (単一稼働) 3,000,000円 5年 1,200,000円 1,800時間 約1,000円 / 時間
    レベル2ロボット (多シフト) 3,000,000円 5年 1,200,000円 5,100時間 約353円 / 時間
    レベル3ロボット (単一稼働) 6,000,000円 5年 2,250,000円 1,800時間 約1,917円 / 時間
    レベル3ロボット (多シフト) 6,000,000円 5年 2,250,000円 5,100時間 約676円 / 時間
    グラス人間 (給与315万円時) 150,000円 3年 120,000円 1,500時間 約2,528円 / 時間
  5. 職種別における代替・協調シナリオの優位性分析:主要な職種別にどちらがどの程度経済的・実用的に優れているかを定量的に評価する。

    1. 構造化された定型物理作業(工場組立、規格物流、定型小売事務):この領域では、空間がロボット用に最適化されており、レベル1またはレベル2のロボットが多シフト(24時間連続稼働)で投入される 。
      1. 経済評価:ロボットの時間当たりコスト(約353円)はグラス人間の約7分の1 。スマートグラスを用いた人間の作業効率向上(ピッキング速度向上など)を考慮しても、この圧倒的なコスト差を埋めることは不可能。
      2. 結論ロボットの圧倒的優位。この領域の雇用はほぼ全てロボットに代替される 。
    2. 非構造化された現場技能作業(建設、道路修繕、個別宅設備保全、伝統工芸):3次元的な不整地、予測不可能な天候、個別仕様の建築図面など、柔軟な状況判断と複雑な身体的機敏性が求められる領域である。
      1. 経済評価:このタスクをロボットに実行させるには、極めて高価なレベル3ロボットが必要となる上に、頻繁な落下や泥濘、塵埃による故障へのメンテナンスコストが跳ね上がる 。一方、スマートグラスを装着したグラス人間は、AIが提示するリアルタイムの施工手順、3D図面、安全指標、および熟練者の動作ホログラムに従うことで、未経験者であっても高水準の施工品質を担保できる 。人間の持つ「強靭で柔軟な身体(生物学的メンテナンスは労働者自身が自己負担)」というハードウェアをそのまま流用し、認知部分のみをAIでアップデートする方が、トータルコストが大幅に抑えられる。
      2. 結論グラス人間の圧倒的優位
    3. 対面コミュニケーション・感情労働(介護、看護、対面接客、演劇、風俗):介護における入浴・排泄介助や、患者への語りかけ、対面営業における信頼関係構築、演劇、大人向けサービスといった、人間同士の心理的紐帯が価値の源泉となる領域である。
      1. 経済評価:レベル2〜3のロボット(対人安全性センサーを搭載)を用いて物理的作業を代替することは可能だが、サービス提供を受ける側(高齢者や患者、顧客)の「ロボットに身体を触られたくない」「人間と会話したい」という強い感情的・社会的障壁が存在する 。この障壁を越えるため、スマートグラスを用いた協調モデルが最適解となる。スマートグラスは、患者の微細な表情変化から痛みや不快感を検知し、最適な介護アプローチや声掛けのセリフ、雑談のネタを介護員にリアルタイムで提示する 。顧客側には「温かみのある人間の対応」として受給されながら、内部的には完全にAIによって標準化・最適化されたサービスが提供される。
      2. 結論グラス人間の絶対的優位
  6. 日本労働市場における「8割カテゴリ」の雇用吸収力と給与均質化:AIやロボットより能力が劣後するとされる労働市場の下位8割(約5,464万人、日本の総就業者数を6,830万人と仮定)を対象に、グラス人間スキームによる雇用維持モデルのシミュレーションを行う 。

    1. 雇用吸収力(職に就ける割合)の推計 総務省統計局および労働政策研究・研修機構(JILPT)の産業別就業者データをベースに、「8割カテゴリ(54,640,000人)」の職種ポートフォリオを3つの領域に再定義し、2035年時点における雇用維持率を算出する 。
      1. 定型物理・一般事務セクター(代替型領域)
        1. 対象:工場の単純ライン工、定型倉庫ピッキング、一般事務入力、標準店舗レジなど 。
        2. 市場規模(8割内):15,000,000人(構成比 約27.5%)
        3. 雇用維持率10%(例外処理やシステム監視を担うリーダー職、残り1,350万人はロボットおよび純粋なAIシステムに代替される) 。
      2. 非定型物理・技能労働セクター(協調型物理領域)
        1. 対象:建設業(389万人)、各種保守・整備、複雑な現場サービス、農林水産業、伝統工芸など 。
        2. 市場規模(8割内):18,000,000人(構成比 約33.0%)
        3. 雇用維持率85%(スマートグラスによる遠隔熟練者支援、施工手順のリアルタイム表示により、非熟練者・外国人比率が高まっても高い稼働が維持される) 。
      3. 対面・感情労働セクター(協調型感情領域)
        1. 対象:医療・福祉・介護(686万人)、対面小売・営業、ホテル接客、エンタメ、風俗サービスなど 。
        2. 市場規模(8割内):21,640,000人(構成比 約39.5%)
        3. 雇用維持率90%(ロボット代替への心理的抵抗が強く、ARによる接客・介護ガイドが標準化されるため、高い雇用が確保される) 。
    2. 以上の各セクターの雇用維持数を合算すると、以下のようになる。
      1. 雇用維持数 = (15,000,000 x 0.10) + (18,000,000 x 0.85) + (21,640,000 x 0.90)
      2. 雇用維持数} = 1,500,000 + 15,300,000 + 19,476,000 = 36,276,000 人
    3. この結果、「8割カテゴリ」に属する労働者のうち、約66.4%(36,276,000人、総就業者全体の約53.1%に相当)は、スマートグラスをはじめとするウェアラブルデバイスを装着した協調労働スキーム(グラス人間)の下で、職を失わずに稼働し続けることができる。
  7. 労働価値の均質化と平均年収の予測:グラス人間モデルにおいて雇用を維持された労働者(約3,628万人)の年収は、技能の希少性の消滅に伴い、下方に均質化(コモディティ化)する。 従来、高給(例:年収500万〜600万円以上)を得ていた「熟練建設工」や「トップセールス」の価値は、スマートグラスによって、昨日採用された未経験者であっても、ベテランの85%以上のクオリティを再現できるようになる 。これにより、**「技能プレミアム(スキルに応じた高い給料)」はほぼ完全に崩壊する。**労働供給の柔軟性が極限まで高まる結果、各セクターの給与水準は、労働者の「生体維持コスト(その社会で暮らせる底値)」に近い均質化されたレンジへと収束していく。2035年の日本市場(物価上昇ゼロ想定)における「8割カテゴリ」内のセクター別予測年収は、以下のように推計される 。

    1. 定型物理・事務(スーパーバイザー枠):年収4,000,000円  システムの例外処理や、ロボット・AIシステムの監視責任を担うため、限定的な管理者プレミアムが維持される。
    2. 非定型物理・技能労働(AR現場工):年収3,200,000円 依然として過酷な物理環境での作業を伴うため、肉体的負担への補償が上乗せされるが、かつての「職人プレミアム」は喪失する。
    3. 対面・感情労働(AR接客・介護工):年収2,800,000円 参入障壁が「スマートグラスの指示通りに笑顔で話すこと」にまで低下するため、労働市場における供給が最も豊富になり、最低賃金をわずかに上回る水準で均質化する。
    4. これらの年収モデルを雇用維持数で加重平均することにより、「8割カテゴリ」内でこのスキームに就く労働者の平均年収が算出される。
      1. 平均年収 = ((1,500,000 x 4,000,000) + (15,300,000 x 3,200,000) + (19,476,000 x 2,800,000) / 36,276,000
      2. 平均年収 = (6,000,000,000,000 + 48,960,000,000,000 + 54,532,800,000,000) / 36,276,000
      3. 平均年収} = 109,492,800,000,000 / 36,276,000 = 3,018,326 円
      4. すなわち、スマートグラス等による拡張雇用スキームの下で職を得る3,628万人の平均年収は、約302万円へと収束する。これは日本の現在の最低水準の常用雇用年収をやや上回る程度であり、かつての中流階級の労働価値が著しくコモディティ化された結果を示している 。

さあ、どうだろう。結論としては、

  • 8割のうち66%は「グラス人間」として何とか労働市場に復権できる
  • 但し平均給与は302万円と最低水準

ということになった。

このグラス人間による労働は、「労働への尊厳の喪失」(AIへの従属的労働)という問題を抱えることになる。そしてグラス人間は恐らくそこから上位2割への脱出をすることは不可能であり、労働階級的なものは固定する。最下位は働けない生活保護層だが、グラス人間層だって決して裕福ではない。そこと2割のAI活用層との差は今より大きく開き、分断化はしてしまうだろう。

別に言及しているUBI(ユニバーサルベーシックインカム)は、金額を調整してやはり実行することになるのではないかと想像する。あるいは、残りの層に関しても「AI税」や「人間雇用強制法」といった復権策を更に検討する必要があるのかもしれない。

2026年2月16日月曜日

メタバースが世界を救う

非常に大雑把な一般論だが、ハイテクは上手く使えば格差是正になる

その良い例は音楽制作だ。かつて音楽は大金持ちや貴族のたしなみで、庶民は縁遠かったが、今やYouTubeでボカロ曲が普通にヒットする時代になった。これは作曲家や演奏家の大衆化と言える。裾野が広がったことで大量の音楽家ができ、世の中には音楽が溢れるようになった。高度な学習も高価な楽器も必要ない。パソコン一つでプロ並みの音楽を作れるようになった。

もっと生臭い例を言うと、ロシア・ウクライナ戦争においてドローンが大活躍している。ロシアとウクライナの戦力差は本来なら致命的なもののはずだが、ウクライナがドローンを上手く活用しており、その戦力差は縮まっている。鳥取県と同程度の経済規模しかない北朝鮮が米国と渡り合っているのは、核兵器があるからだ。

これに準じて、もし全ての国でメタバースが本格的に普及したら、どんな格差が是正されて世界は平和になるのだろうか、と考えてみた。

単なるインターネットとメタバースが異なるのは、視覚情報をフルに使って、また体を使って表現ができることだ。プログラミングなどの技巧的なものがなくとも、例えば幼児でも、簡単に国際交流ができる。この、より直感的な交流は、一つの重要な鍵になるだろう。自動翻訳がこれを更に助長する。

そしてもう一つは、ワールドの設計である。お互いがお互いを無視するワールドも、共存するワールドも、敵対するワールドも作ることができ、それらは独立に動かせる。つまり無視したい人は無視ワールドに、共存したい人は共存ワールドに、と棲み分けができるのだ。これは、例えば宗教対立のような問題に、一定の切り分けをすることが可能になる。例えば、キリスト教用とイスラム教用と共存用の三種のワールドに各々総本山(メッカ)を作り、どれが正でどれが副ということはない、と定義できる。(もちろん対立用ワールドを作って中でつかみ合いの喧嘩をすることも可能だが、バーチャルである限り無害である。)

ただ、メタバースによる格差是正は、あくまでもオンラインに乗るものだけだ。人はメタバースだけで生きるに非ず。現実には毎日食事をしなければならないし、風呂やトイレも必要だ。物価も住んでいる所によって違う。電気ガス水道通信、医療もリアルな世界では必要だ。

現実の生活において、バーチャルに移行できるものが何割あるかによって、その格差是正の程度は変わってくる。概ね、今のインターネットで出来ていることはそのままメタバースでも使えるだろが、メタバースでプラスアルファでできるようになること、メタバースで使い勝手が良くなり利用者が増えるであろうこと、がどのくらいあるか。

まず教育。移行できないのは走り回るスポーツ、柔道のように相手と接触するスポーツ、水泳、などが考えられる。卓球は既にできるし、体操や太極拳などもアプリがある。だがホームルームや学園祭など、バーチャルでも可能ではあるがリアルでやりたい、という需要も一定量あるはずで、特にその傾向は低学年ほど多いだろう。

次に仕事だが、リアルな生活に関わるところは不可能だ。例えば配達・運送、クリーニング、販売、農業漁業工業、食堂、インフラ(水道など)の保守、建設、介護・看護・医療、消防警察軍事、ゴミ回収や清掃などが考えられる。その各々の事務処理など部分的にはバーチャル移行が可能だが、その割合は多くないはずだ。プロスポーツを除くエンタテイメントの多くはバーチャルに移行可能だろうが、リアルに見たいという需要も一定数あるはずだ。

事務作業やプログラミング等は、国際的に分散する方が有利である。いわゆるIPであるが、メタバースにより従来より敷居は低くなるだろう。世界中が休みなくつながりAIアバターも使える状況においては、仕事のチームはむしろ世界に分散している方が有利である。つまり時間差で仕事を引き継いで行う形態が日常化するため、時間帯ごとにメンバーを募集するようなことが起きるだろう。

また、メタバースで完結する仕事については国際的なコスト(賃金)格差が縮小するだろう。端的な話、日本のような先進国では海外に仕事を持っていかれる率が高くなり、相対的に単価は下がる。ただ、持っていかれる先である海外(インド、フィリピン、ベトナムなど)でメタバース上の仕事を請け負う人たちは、安い給料の中でメタバース機材を揃え先進国並みの仕事ができるエリートである。

こういったものを経て、人生の何%がメタバース上に移行することになるのだろう、と色々計算を続けてみた結果、先進国の中間~上位層では30~60%が(低所得者層・新興国では10~30%が)メタバース上に移行する、との結論を得た。これは今後10~20年で起きる。分野によって移行化度は異なる。日本の場合、今の電子化率と比較して解説すると、以下のようになる。

領域 現状の電子化率 メタバース化の将来推計 根拠
行政 30〜40% 60〜80% 窓口業務の大半がオンライン化可能(高齢化で対面維持困難)
教育 20〜30% 40〜70% 教員不足・地域格差、XR授業の普及
医療 10〜20% 30〜50% 遠隔診療の拡大、医師不足
仕事 20〜30% 30〜50% 例外処理は残るが、会議・研修・一部作業がXR化
消費・娯楽 30〜40% 40〜60% EC+XRショッピング、XRライブ

ただこれは日本の平均であり、上位所得車窓では当然割合が上がり、低所得者層では低くなる。

また、これはここ10~20年の数字であり、遠い将来には80~90%がメタバース化可能になる。実用的には、先進国で70~85%程度がメタバース上で過ごすことになると予想する。

ここまで調べた上で考えると、結論としては


メタバースの普及は国際格差(国同士の富の差)を減らす


ということが言える。但し「先進国では国内格差が縮小するが、新興国では広がる」ことになる。

なぜかというと、新興国の上位10~20%の層は、先進国の事務作業をIPで奪うことになるだろうからだ。従来だと大規模開発の特定モジュールといったやり方しかなかったが、メタバース普及後はちょっとした例外処理を含む事務作業のレベルで発注が可能になる。すると結果としては先進国から仕事を奪うことになる。

一方、下位80%の層はこの恩恵に預かれない。従来より仕事が減る訳ではないが、上位層がリッチになるので結果として格差は広がってしまうのだ。だから新興国は、その上位層からの納税増を基に教育を充実させ、インターネットを普及させ、先進国から仕事を奪う層を広げていく必要があるだろう。

また、メタバースの普及は必然的に人の移動を減らす。オンライン会議がより普及するからだ。一方で物流は増えるだろう。ケータリングや宅配などだ。そして後者は前者より環境負荷が小さくなると考えられ、これは燃料たる石油消費を抑える方向に動くだろう。つまり環境変動(地球温暖化)阻止にも貢献する。

また先に示したように宗教紛争は抑える方向に動く。これをもっと広く捉えると、


メタバースの普及は戦争紛争テロといった暴力を減らす方向にも働く


のではないか。

ここには大きく二つの根拠がある。第一は、メタバース空間はインターネット以上に統制が取りづらく、またアバターがデフォルトなので、市民レベルでの国際交流は増えるのではないかと考えるからだ。紛争は相互理解が増えると減る傾向にある、というのは心理学上からも実績からも誰もが認めるところだろう。

第二は、メタバース空間で過ごす時間が大部分になれば、戦争紛争の大きな争点である民族対立や領土問題の価値は相対的に低減するからだ。従来のイメージでは

領土=生活空間+文化空間+経済空間+資源空間

だったのに対し、メタバースが普及することでその意識が

領土=資源空間

だけになる(他の要素がゼロになるわけではないが、重要度が下がる)。石油や稲作は必要だから完全にはなくならないものの、その価値が低下すれば争う意味も低下するだろう、と考えるのだ。

そして、第一第二をあわせて考えると、いわゆるナショナリズムは低下するし、国のプロパガンダの効力も低下する。そうなれば恣意的な戦争は国としても起こしにくいだろうし、大義名分があってもその支持率は相対的に低下する。

エストニアは積極的に電子政府化を進め、これが世界的知名度と地位を上げる結果となった。メタバースでも同じだ。メタバースに積極的に展開する国は、世界から知名度を集め、交流が広がり、結果として国を守ることにもつながる。

日本ではあまり効かないかもしれないが、小国はこの方向性を積極的に取り入れてはどうかと考える。

2025年4月30日水曜日

3Dサテライト

 
駅ナカなどに、15分幾らで借りられる、サテライトというかパーソナルオフィススペースが多く登場してきた。個人的にはちょっと息が詰まるのでもう少し広く作ってほしいとは思うが、外から見ればそれなりのスペースを割いていることは分かるので、設置させる側の気持ちも分からんではない。

今のサテライトには、目立ったICT設備はない。PCを持ち込んでそこで仕事をする、それだけを想定しているのだろうと思う。その一方、VRゴーグルで仕事をしている人は現実に存在する。

https://www.zdnet.com/home-and-office/work-life/inside-an-infinite-workspace-what-its-like-to-do-your-job-completely-in-vr/

例えばこの人は、3年前に既に週40時間もメタバース上で仕事をしている。VRゴーグルならサテライトは必要ないと思うのだが、それでも一日8時間もゴーグルを装着しているのは不快だろう。そこで思い出すのが、Googleが開発している、極めて臨場感の高いテレビ電話システム、Project Starlineだ。

https://starline.google/

これは、ユーザの目の位置を検知して追従する、ゴーグルやメガネが不要な立体映像表示装置である。このディスプレイをこのパーソナルオフィススペースの全面に広く貼り付けることができれば、と考えてみれば、私の意図は直ぐに分かるだろう。つまり、そのパーソナルオフィススペースに入って電源を入れたら、もはやそこは狭いスペースではなく、ディスプレイの向こうに広がる広大な空間を覗くことが可能になるわけだ。

ディスプレイに映すのは話し相手ではなく、メタバース空間である。広大なオフィス空間、会議室、大自然、何でもよい。VRでオフィス空間を提供している会社は既に存在するが、そういったオフィス空間を会社として借りておけば、皆そこに「出社」して、会議もそこですることができる。映っている同僚はアバターだが、相当にリアルに作ることもできる。今までのサテライトだと、狭い空間に押し込められているという心理的圧迫感があるが、このサテライトならそこが大いに緩和されるはずだ。

自宅ではこのような高級ディスプレイは用意できないので、サテライトの存在意義はある。逆に言えば、自宅でこのディスプレイが設置できるのなら、そこは立派なサテライトになりうる。感覚的には、眼の前1mに40インチ、左右に同じ高さで長さが半分のディスプレイがU字上に囲う空間があれば、かなりの開放感をもって仕事ができるはずだ。

開放感だけではなく、コミュニケーションもバッチリだ。本人映像の修正は可能だから、起き抜けのパジャマに寝癖頭でも、とりあえず仕事を開始することはできる。立体映像だし、物理的な距離感の演出も可能だから、その点でも臨場感は高い。

このサテライトであれば、全員が在宅勤務でも問題なくコミュニケーションできるだろう。なお、この空間での移動はやはり車椅子式である。車椅子メタバースについては以前から紹介している通りだが、ここにも話は繋がってくる。

このサテライトでは、大画面ディスプレイを何台も表示できるなどのVR空間としてのメリットもあるし、RPGに出てくるステータスウィンドウのようなことも可能なので、アイボールだけでなくメールや音声でのコミュニケーションも未来的な使い方が可能になる。またもちろんプライベートでも活用可能で、今のVRChatのコミュニケーションに準ずるような空間での使用も楽にできるだろう。

このサテライトの実現性だが、視線追跡3Dディスプレイの技術は既にあるので、後はひたすらメタバースの作り込みだけで良い。技術的困難というよりは手間の問題で、後は採算性が悪そうだというのが不安材料になる。だから最初はエグゼクティブ向けに作るのが良いと思う。相当に高いものになるとは思うが、米国の大企業なら使いこなすだろう。

2025年4月7日月曜日

車椅子VRとロボット

 https://www.1x.tech/neo

このロボットは、家庭における雑用を補佐するロボットとして有望である。人から手渡しで荷物を受け取ったり、人の手で操作する掃除機が扱えたり、窓を拭けたりする。こういうロボットが一台いれば、人はかなり便利になる。

更に、これとVR・MRを組み合わせた世界では、画期的な体験ができるはずだ。以前から提案している車いすメタバースとの組み合わせで、どんなことが可能になるのかを考えてみる。

車いすメタバースの中では、人は電動車いすで移動する。移動先は全て車いす対応なので、例えば道幅は充分に広く、段差はなく、階段ではなくて専用エスカレーターやエレベーターが標準で装備されている。飛行機や車も車いす前提だ。もちろん店舗やレストランも車いす対応である。

ここではレストランでの体験を考えてみる。車いすレストランで席につくと、給仕が食事を運んでくれるわけであるが、現実世界ではこのNEO Gammaが実際に食事を運んできてくれるのだ。もちろん調理全般は難しいだろうから、ケータリングの受け取りないしは弁当の温めくらいに留まるだろうが、それでも人はVRから出ずとも食事の準備ができるわけだ。そしてテーブルの上だけがシースルーになって実際に食事を摂り、後片付けはやはりNEOにさせる。NEOは皿洗いはできないだろうが、食器洗浄機に皿を入れるくらいはできるだろう。

また、メタバース空間で買い物をすると、それは宅配になるわけだが、この宅配受け取りもNEOがしてくれる。荷物を棚に入れるくらいはすぐできるだろうし、開梱して仕分けしてものを仕舞うくらいまではもう10年以内くらいにはできるだろう。

トイレや風呂をメタバースで行うことは不可能だからこれは除外するとしても、食事ができるのは大きい。これなら休日に朝から繁華街に出かけて買い物をして映画を見て夕方に帰る、といったことがメタバース内で完結する。家族4人が同じメタバース空間で話をしながら歩き回るということも問題ないし、現実と違って迷子や誘拐の恐れもない。メタバースのデパートなり繁華街なりがそれなりに充実していれば、現実とさほど変わらない満足が得られるはずだ。

店側にも大きなメリットがある。まず市場は世界中になる。翻訳が噛ませられれるから外国人でも問題ない。但し当然送料は現実のものだ。として店舗の維持費は圧倒的に少ない。在庫を抱える必要もないし、場所代も掛からない。新製品でも直ぐに店頭に並べられる。従業員もAIエージェントが使えるだろう。そうなれば24時間営業も可能だ。イベントなども考えてから実行までの労力は現実店舗よりずっと少なくて済む。配送も実質は通販だから、指先一つないしは全自動で可能である。商品説明はメーカが作れば良いので、店は品揃えや見せ方、価格などを工夫するだけだ。

ユーザ体験を、全体を通じて考えてみると、こんな感じになる。

まず、数日前に昼食を決め、ケータリングないしは事前宅配の予約をしておく。いつもの近所のケータリングで良いならこれはしなくて良いが、せっかくの「外出」なのだから普段とは違うものが食べたいだろう。

当日は家族全員でテーブルに座り、VRゴーグルを被って「出発」する。いきなり現地に飛ぶのでも良いが、自宅前から仮想タクシーに乗り込んで雰囲気づくりをするのも良いだろう。

到着したらあれこれ見て回る。これは通常の観光やウインドウショッピングと同じだ。もちろん現地での体験や実際の買い物も可能だが、買い食いはできない。もししたいなら、先に調べておく必要がある。

昼食は、ケータリングをした店の仮想店舗に入る。時間に合わせてロボットが温めて配膳してくれる。もちろん待たずに入れるし、いくら長居をしても良い。偶然に居合わせる迷惑客もいない。

食事が終われば午後はまた別のところに行っても良いし、同じところで続きをしても良い。夕方に帰るも良し、夜もまたケータリングで食事をしても良い。もちろん片付けはロボットがしてくれる。後日、買ったものを受け取るのもロボットだ。

平日の仕事の間の食事でも、同じようなことは可能だ。この場合、会社の同僚と一緒に食べるということも多いだろうが、食べるもの自体は揃えられないだろう。それでもお喋りをしながら食事の時間を楽しむことはできる。

さて、今のメタバースの主流であるVRChatやHorizon Worldには、この体験に値する観光地やショッピングモール、レストランなどは、残念ながらゼロと言っても良いレベルである。どのワールドもコンテンツは少なく、造作物の解像度やリアリティは低い。はっきり言って、何時間も滞在できるほどの魅力はない。今の十倍百倍といったレベルでの作り込みは必要だし、それに伴ってVRゴーグルの性能ももっと上げなければならないだろう。

2025年2月6日木曜日

車椅子社会の実現

 以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2020/12/vr_23.html

という投稿をしたことがある。メタバース空間を、全て車椅子前提で設計してしまおう、というものだ。こうすることによって、人は机に椅子、キーボードとマウス、という状態で、メタバース上で一日中過ごすことが可能である。その上で、メタバース上の広大な空間を行き来することが可能だ。

これをもっと進めると、実社会も全て車椅子で移動するようにできないだろうか。今の社会は歩きがデフォルトで車椅子が例外だが、これを逆転するのである。これについて少し考えてみる。

この場合の車椅子は、机とノートタイプPC、移動のためのジョイスティックを備えた、電動のインテリジェントタイプである。これでどこへでも行けなければならないので、当然ながら坂道は極力無くし、階段は廃止、トイレも広いものしか赦されない。電車や飛行機、自動車などの乗り物は設計のし直し必至、更には道路や家なども設計し直しになる。

というわけで、これはさすがに無理だ。だが、大規模なショッピングモールとそれに併設するマンション、といった形なら可能だろう。これは以前

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/blog-post_31.html

として紹介した街を、更に車椅子前提で設計するようなものになる。この場合、家や教室、事務室などのサイズは更に広くなるが、天井は若干低くて良い。それ以外に大きな変更は必要ない。

この世界で実現できることは、フレキシブルシティ構想で提案したような「完璧な人流・物流の自動化」「完璧なラストワンマイルの実現」と考えてもらって問題ない。これに加え、「車椅子前提メタバースとのシームレスな接続」もできるようになる。

例えば、普段は普通に学校に通うのだが、感染症が流行した際には、全く同じような教室メタバースに「登校」することで、支障なく授業を続けることができる。先生や友達の顔がアバターになってしまうが、視線や移動の仕方が全く同じなので、違和感を低減することができる。

また、観光旅行を計画していて、それが何らかの不具合で中止になってしまったとすると、旅行会社はVR体験で次善策を打つことができる。天候不順などのときでも同じような対処が可能である。

逆に、旅行や出張などの出先で、自宅や会社に用事ができてしまったとしたら、現地でXRグラスを装着してVR空間に入り、仮想的に自宅に戻ることもできる。現実を反映した空間にしておくことで、例えば忘れ物の位置まで把握できるだろうし、書類がどこにあるかも探せるだろう。

また、街に出ていて道に迷った時、一時的に仮想空間の同じ街の同じ位置にジャンプして、そこで検索を掛けたりAR表示をしてもらったりして場所を確認した後、現実空間に戻って移動する、といった芸当もできるようになるだろう。

だが、隠れた真のメリットとでも言うべきことがあって、それは「車椅子使用者の真に公平な扱い」である。現代社会は歩行がデフォルト、車椅子は例外の扱いだが、この社会では車椅子がデフォルトなので、既存の車椅子使用者は例外からデフォルトに変わる。トイレや移動の不便が無くなり公平になるので、逆に不慣れな新米を尻目に活躍できるだろう。

フレキシブルシティのような街を作って、そこに車椅子ネイティブな人を誘致する。その街は車椅子の人でも普通に生活でき、普通に仕事ができ、普通に勉強ができ、普通に医者に掛かることができる。車椅子生活をしている人は、日本の人口の1.6%ほどいるという。その多くは、普段の移動に苦労しているはずだ。そういう人が普通に活躍できるだけで、日本のGDPの1%くらいは追加で稼ぎ出してくれるのではないかと期待できる。投資対効果としては十分である。

2025年1月27日月曜日

軸性近視とVR


近年の若年層からの近視の増加傾向は、生活スタイルの変化と関係があると言われている。つまり、外を出歩かず、窓も締め切り、外出してもスマホばかり見ているという、要するに近くばかり見ている生活がその一因である。これは学術的にも証明されていて、外に出歩く機会が多い人ほど軸性近視の確率は少ないという結果が出ている。

今後また、遠くを見る機会が多い生活に戻ることはないと思われるので、禁止の割合も増えていくだろう。そして近視も進み過ぎると矯正不可能になったり頭痛の原因になったりするので、ここは何とかしたいところだ。

そこで考えることなのだが、生まれてからずっとVRゴーグルを着けて生活すれば、この傾向は低減できるのではないだろうか。

VRゴーグルのピント調整は、無限遠が基準になっている。つまり、VRゴーグルで近くのものを見ても、ピントは無限遠のままなのだ。だから、窓を閉め切ってカーテンを閉めていてもピントは無限遠、スマホを見ても無限遠なので、軸性近視の低減にはなるのではないかと思うわけだ。

一日中というのは大げさと思うかもしれないが、近い将来、大人でも一日の大半をVRゴーグルを着けて過ごす時代は来るかもしれない。VRゴーグルが十分に小型軽量化し、無線給電が確立するという条件は必要だが、そうなればゴーグル内で仮想PCや仮想スマホを使えるから、ピントの問題は解決してしまう。

特に現代の子供は、昔のように野原を駆け回って遊ぶことは無く、むしろ塾通いで夜遅くまで近くを見続ける生活をしている。教科書や参考書なども仮想空間に持っていけば、ピントの問題は解決する。もちろん他のメリット(在宅で参加できる、荷物が少なくなる等)も出てくる。

少なくとも勉強を全てVRでやるようにすれば、軸性近視はかなり抑えられるのではないかと考える。この視点からも、教育のメタバースへの移行は推奨できる。

2024年11月11日月曜日

メタバースアプリの価格

Meta Questのアプリを見ていると、安いものでも900円辺り、多くのアプリは2千円台である。ゲームアプリなら安いと言えるのかもしれないが、PCやスマホでアプリを使ってきた感覚で言うと、かなり高い印象を受ける。しかも無料のアプリは殆どない。試用できるものも少ない。これでは気軽に試せない。

なぜこうなっているのかと考えてみると、大きくは2つの理由が考えられる。第一は開発コストが高いこと。第二は広告がないことだ。

第一の理由は、従来は画面設計で良かったところ、三次元でワールドを設計しなければならないところが高い理由の一つであると考えられる。多くのアプリはUnityなどのツールで作られていると思われるが、この開発環境は重く、従来のようにプログラミング言語ができるだけでは使い物にならない。絵やデザインのセンスが同時に求められるので、人材はより少なくなるだろう。これは仕方がない。時代が進んでツールが発達することに期待するしかない。

問題は第二の理由である。広告を表示させることで無料化を実現しているアプリは、スマホでは多く見かけられるが、これがメタバースでは全く見当たらないのである。

メタバース内でうまく広告を出す手段がない、あるいはそのためのAPIが整備されていない、というのがその実態なのだろう。確かに立体空間内に従来の広告を表示させるのは難しいだろうし、もし表示させてもそこだけ違和感が生じることは避けられない。スマホと違って画面全部を乗っ取ってしまうわけにはいかないし、中で人が動くのに広告が着いて回るのも変だ。広告を見せる、クリックさせる、クリックしたらどうなる、というメタファが、まだ完成していないのだろう。

Metaはこれを放置しているようにも見える。だがこれではアプリにいちいちカネを落とすことになり、普及を阻むことにもなる。ソーシャルワールド(Meta Horizon World)への誘導策なのかもしれないが、こちらの方にも有用な広告枠は見当たらない(広告はあるが、ただ見せるだけなので表示単価は低いだろう)。Metaは広告についてもっと真剣に考えるべきだと思う。

2024年11月8日金曜日

生成AIを使った教育システムの生成


 座学での教育について理想的なことを言うと、全てがコンピュータで帰結するようなものが想像できる。その概要は以下のようなものだ。

  1. あらかじめ体系は与えられていて、それは全人類共通である。あらゆる学問、趣味や雑学、宗教まで含め、同じEMS(Education Management System)からアクセスできる。但しそれは初期的なもので、個人の学習の進捗や学習コンテンツ自体の進歩によりダイナミックに変化していく。
  2. 学習者は、EMSにログインして、自分がどのような分野でどの程度の知識を持っているかを俯瞰的に把握できる。ここで成績は、学習済みコンテンツの数と、各コンテンツの理解度の相関係数である。
  3. EMSのリコメンドはあるが、基本的に学習者は自分の学習したいコンテンツを選んで学習を開始する。EMSのリコメンドは、前提知識と学習遷移(この学習をした人が次に学習したがる傾向)に拠るが、前提知識は生成AIが自動生成する。
  4. 学習コンテンツは基本的に映像である。再生スピードは0.25倍から4倍まで加速できる。また、学習コンテンツのボリューム目安は標準速で15分程度である。
  5. 映像再生中、学習者は任意の位置で一時停止し、音声ないしはチャットにより質問をすることができる。
    1. 質問に対する回答は、コンテンツから学習した生成AIが回答する。
    2. その回答に対し、学習者は追加で質問をすることができるし、回答に対する評価もすることができる。
    3. どこで質問が出たか、どのような回答をしたか、それがどう評価されたかは、後にコンテンツ制作者がコンテンツの改良の参考にすることができる。
  6. 映像終了後に確認度テストが必要なものは多いと思われるが、それも自動で生成され、また更新も自動でされるため、カンニングはしにくくなっている。
  7. 演習が必要なものも多いと思われる。コンテンツによるが、これも自動で生成されるのが望ましい。例えば発音などは定型でも良いだろうが、計算問題は都度変化させる方がよい。
  8. フィードバックをベースとして、学習コンテンツ(映像)自体も進化する。これも生成AIを利用する。ある程度賢くなったら更新は自動化する。その学習コンテンツも、関連する教科書や論文等を自分で探し、更新し続ける。
  9. ただ学習コンテンツを表示するだけでなく、学習者の表情や学習所要時間などを読み取って、得意不得意や飽きを検知し、適切な対処を行うAIを取り入れる。
  10. 忘却曲線や教育の偏りなど、ある程度分かっている既存の学識を取り込み、個人の学習指向を修正する機能がある。

システムのあちこちに、目的の異なるAIが多数絡んでいるのが特徴であり、極端な話、人間が具体的に作り込むものは無くても良い。逆に言えばAIの精度評価は重要であり、チューニングが狂うとウソを教えることになってしまうため、十分な注意が必要である。

このシステムが完成してしまうと、座学に関しては殆ど何もしなくても良くなる(アドバイスすら不要になる)ため、極端な話をすると教師は不要になる。座学以外でも、軽量のXRゴーグルが開発されれば実技(音楽、図工、体育、社会見学、HR、クラブ活動まで)がAI化出来てしまうため、学校すら不要になってしまう。(同級生は本物の同級生の所作を学習したAIアバターが演じれば良い)

まあそこまでの道のりは遠いのではあるが、実はコンテンツ自体はYoutubeなど世の中に溢れているので、EMS周りが出来てしまえば一気に進化する可能性は秘めているわけだ。そういう発想で研究をして頂けたらありがたい。

2024年11月1日金曜日

Apple Vision Proの大き過ぎる弱点

 


欠点、と言いたかったのだが、あえて弱点と言わせてもらおう。

Apple Vision Proが出た時、Metaシンパは二番煎じだと笑い、Appleマニアは相変わらず無批判で褒め称えた。そして案の定、売れていない。

まあそうだろう。品質はいいらしいが、とても値段相応とは思わないし、値段の絶対値としても高すぎる。これは大方の評価だろう。

Apple Vision Proの角解像度は34PPDと推測されている。Meta Quest3は25PPDで、確かに解像度は良い。しかし視力1.0の角解像度は60PPDだそうだから、Appleでも全然足りていない。また視野角はApple Vision Proで90°、Meta Quest3で110°なので、こちらでは負けている。視野角を狭めれば角解像度は上げられるから、これは選択の問題であり、先の優位性も霞んでしまう。

だが、Apple Vision Proの最大の弱点は、そのコンセプトである「空間コンピューティング」である。これを掲げてしまったばっかりに、AppleはVRを捨てたと言っても過言ではなくなっている。

Meta Quest3で空間コンピューティングができないわけではない。Appleに比べて重視していないとは言えるが、それもApple Vision Proの登場で強化されつつあり、その差はほとんどない。一方でApple Vision Proはメタバースに入れない。入らないのではなく、入れない。

いいや、入れる、といいたいApple信者もいるだろうが、少し考えてほしいことがある。Apple Vision Proはそのコンセプトに基づき、コントローラを採用しなかった。これがメタバースには致命的なのだ。

Meta Questでは、メタバース内の移動にジョイスティックを使う。左が移動、右が向きを変えるのがデフォルトだ。これで空間内を自由に歩き回ることができる。一方Apple Vision Proはどうだろう。コントローラがないということはジョイスティックもないということだ。だから空間を動き回るのにジェスチャーで対応しなければならない。まあ不可能ではないが、きわめて使い勝手は悪く、ゲームなども含め使い物にはならないだろう。そして現に、Apple Vision Proのアプリには、その手の(メタバース内を縦横無尽に動き回る)アプリは全く見当たらない。業を煮やしたサードパーティがコントローラーを出したが、純正は未だに動きがない。

この手の動作が必要なのはアドベンチャーゲームだけだろう、と高をくくっていると足元をすくわれる。今後、メタバース内に街ができて、そこを歩き回って楽しんだり用事を進めたりする、つまり日常で実用でメタバースを使う時代は遠からず来る。今のネットスーパーのUIは醜悪だが、メタバース内の仮想スーパーで売り場を歩き回り、買い物カートを押しながら買っていくという形のほうが分かりやすいし、役所の何とか課のURLを探すよりは、受付に尋ねて、右手奥に見える③番窓口だ、と言ってもらうほうが自然だろう。こうなると、「歩く」という行為ができないのは極めて不利だ。

いやジャンプだジェスチャーだといくら言ったところで、使い勝手で圧倒的に劣るのでは意味がない。Apple Vision Proは、ゴーグル型デバイスの魅力の半分を捨てたとも言っても過言ではない。

遠い将来の理想を掲げるのも良いが、今の時点でコントローラを捨てる決断は早過ぎたのではないか。

2024年10月29日火曜日

電脳メガネの普及とメタバース


Metaが発表したOrion。メガネタイプでありながら広視野角と無線接続を実現している点、非常に興味深い。当分製品化の予定はないそうだが、これがあったらMR・ARは飛躍的に使いやすくなる。正に「電脳メガネ」の世界の到来だ。

従来のVRゴーグルと違うのは、普段から掛けていて必要な時にすぐ使える点だろう。こうなるとそのニーズも変わってくる。そういうものを考えてみたい。

  1. 何といってもメッセージや電話・テレビ電話の概念が変わってくるはずだ。つまり、視界の正面で不透明になるテレビ電話は使い勝手が悪いので、視線左ないしは右に避け、また半透明で背景はデフォルトで消してしまうものになる。こちらの映像もカメラはないので全てアバター、つまり相手の映像も最初からアバターだ。つまりアバターがデフォルトになる。
  2. 多対多の会議では、既にMicrosoft Meshが実現しているような形態が進化するのだろう。VR世界にアバターが集まり仮想テーブルを囲むような形式だ。この場合でも完全なVRではなくMRになるので、現実のテーブルをある程度反映するようなものになるだろう。
  3. MRよりはARが主体になる。マンナビはその最たるもので、行き先を指定すると曲がり角で曲がる方向に矢印が出る。また知人と会ったらその情報を引き出し、顧客との相対では顧客感情を常にAIが検知し適切なアドバイスが出る。
  4. コントローラを握ることはあり得ないので、音声操作とジェスチャーが主体になる。Orionでは手首に筋電センサが付いていたが、これもデフォルトになるだろう。常に着けておいて、必要になったら使うのだ。視線追跡もデフォルトになるだろう。
  5. また、ジェスチャーはある程度標準化してもらわないと困る。今のところ汎用のOSと言えるものはMetaのHorizon OSしかないが、ここでの標準は皆準拠して欲しい。Appleのようなゴリ押しは止めて欲しい。
  6. 電脳メガネで出てくる情報は、スマホで言えばアプリよりは通知、ウィジェットに近いものである。ゲームは殆ど無いだろうし、アプリの機能もそれほど多くはないはずだ。
  7. また、天気予報、ニュース、スケジュール、店舗の割引クーポンやポイント、地図やマンナビ、電子書籍といったカテゴリ毎に、表記はある程度取りまとめる必要があると思われる。
  8. 歩いている時にキーボードを使うことはあり得ないが、座っていれば可能性はある。折りたたんでスマホ程度のサイズになるBluetoothキーボードは既に存在しているが、これが広く普及するだろう。またこの時には正面にスクリーンが出ることができる。会議も、座って行う場合には、従来のように正面に4分割画面が出て、というようなUIは可能と考える。
  9. 遠い将来ならともかく、例えばこれが5年後に製品化したとしたら、バッテリの保ちはせいぜい2時間だろう。屋外で長時間使う前提のため、無線給電も不可だ。ということは、バッテリ交換式ないしはポケットに入る急速充電器のようなものは必要だろう。
  10. 電脳メガネで出てくるような仮想ペットや、呼べば現れる仮想執事のようなメタファで、AIエージェントを呼び出すようになるだろう。
  11. 一部のVRアプリでは既に実現しているが、手元にステータスウィンドウとメニューを表すような仕掛けが定着するだろう。
  12. スマホやスマートウォッチを持ち歩く理由がほぼ無くなる。これらは衰退すると考えられる。
  13. 表示に通知が多すぎると鬱陶しいので、メタファによる通知は増えてくるはずだ。これは以前にもhttps://spockshightech.blogspot.com/2017/08/mr.htmlで紹介した。そこには広告もさりげなく入ってくるだろう
  14. 殆どの人が電脳メガネを掛けている時代には、逆に言えば看板や表札、交通標識のようなものは不要になる。全てをMR、ARで表示すれば良いからだ。これらは景観以外にも費用や耐震性の問題があるので、実物は無い方が良い。特に観光地では、余計な広告は排除して景色をじっくり楽しむのに適している。逆に必要なのはWiFiなどの通信機構だろう。
  15. もっと言えば、掛け時計やカレンダー、テレビといったものも不要になる。更には書籍の類も電子化してしまえば良いので不要。チケットのようなものも不要。リモコンの類も不要。ペンやホチキスなどの文具も多くは不要になる。世の中はかなりスッキリする。ただ、これはその周りの職業が無くなることも意味しており、手放しで喜べるものではない。
  16. 子供の装着がどれだけ可能かにも依るのだが、本が電子化されることで教科書・ノート・参考書などを持ち歩く必要が無くなり、タブレットもノートPCも不要になる。持ち歩くべきは雨具や運動着などだけになるため、学校の行き帰りはずいぶん楽になるだろう。ランドセルは衰退するかもしれない。
  17. MRによる教育コンテンツのリッチ化が期待できるため、学問全体で底上げが図れ、特に子供の知的レベルは大きく向上する。人類がより賢くなれる。
  18. メガネにどんな生体認証が付くのかだが、ツルに仕込む指紋認証、虹彩認証、網膜認証が考えられる。となると、メガネを掛けていれば本人認証はできるので、会員証や鍵が無くても自由に出入りできるドアができたり、支払いも契約もメガネで完結するようになるだろう。
  19. お互いがお互いを直ぐに知ることができるため、例えばクルマでスピード違反で捕まって、その場で免許証を見せろとか車検証を見せろとかを言われることは無くなる。もっと言えば捕まるとか止めるとかも不要だ。スピード違反を検知した時点で点数が引かれ、逃げ続ければ免停になり、更に放っておけばどんどん罪が重なっていく。初対面でも秒速で名刺を交わすことが可能だ。受付における用紙記入や会員証の提示なども必要ない。どんどん用件に入っていける。
  20. ウソがつけない点も重要だ。消防署の方から来ました、と言ってもすぐにバレるし、オレオレ詐欺も不可能。それでも犯罪は無くならないだろうが、難しくはなるだろう。
  21. VR前提の世界だと、部屋から一歩も出ずに世界旅行すらできるイメージだが、MR/ARの場合は現実世界が主で、仮想世界は従になる。今まで通り出歩いて、ウインドウショッピングをすることもできるはずだ。ただ、家に帰れば(今のものより更に優れた)VRゴーグルがあるとも考えられる。MR対VRは、どちらか一方が完全に勝つのではなく、使い分けるものになるはずだ。つまり普段は電脳メガネで、家や会社でしっかりやりたい時にはVRゴーグルを掛ける、といったものである。
  22. VRゴーグルと電脳メガネを両方、家族の人数分だけ揃えるのは大変なはずだ。値段にもよるが、多くの人は電脳メガネを優先するだろう。VRは金持ちの趣味、MRは実用、という棲み分けが起きるかもしれない。
  23. 電脳メガネが普及している時代、(視力補正のための)メガネは使い勝手が悪い。必然的にコンタクトレンズの普及度合いが増えると考えられる。眼内レンズも安くなるのではないか。
  24. スマホと比べると電脳メガネはUIとして優れている。電子機器の普及度としては、スマホ超えが期待できるように思う。これは障害者や高齢者の普及度が上がることを意味しており、国民総電子化を目指すことができる。
  25. Orionのフレームには、大量の電子機器が埋め込まれている。Orionはウエリントン型だが、今後もフレームレスタイプは原理的にもあり得ないし、(視力補正のための)メガネのような形のバリエーションはハナから期待できない。これはファッション重視の人には耐え難いはずだ。とすると、誰もが電脳メガネを常に掛けているという世界ではなく、人によって掛け外しをする世界になっていると想像する。となると、気軽に掛け外しができるような機構、例えばメガネチェーンとかウェストバッグのようなものが普及するかもしれない。

さあ、10年後にどれだけ当たっているだろうか。結果が楽しみである。

2024年10月22日火曜日

メタバース内でマトモに本を読む方法


 自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っているのだが、現実はなかなか難しいようだ。

何が難しいのだろうと考えてみると、①UIの問題、②画面の解像度の問題、③権利(著作権など)と互換性、くらいに分けられるのだろうと思う。これを順番に考えてみる。

まずUIの問題だ。Meta Quest 3など、殆どのVRゴーグルは、コントローラを両手に持つ方式だが、これだと握るトリガーが2つしかなく、細かい操作ができない。また、コントローラの位置を把握する精度も不十分で、ジェスチャーでのページめくりのような細かいことはできないので、ポインターとボタンでめくっているのが現状だ。このため、本の途中から開くとか、パラパラめくるとかいう操作ができない。もしやるならそれに専用のジェスチャーなりボタンなりを割り当てる必要があり、それは自然なメタファーではない。

画面の解像度について考えると、Meta Quest 3では、視野角が110°、角解像度(1°当たりの画素数)が25PPDだそうだ。一般人の視野角は180°、また視力1.0に相当するのが55PPDだそうなので、全然足りていない。25PPDを50PPDにするには、単純計算で画素数が4倍必要だが、流石にそれは難しいだろう。さっさとレーザー式にするべきだ。だがレーザー式はまだ研究段階で、市販されているものはたぶん殆ど無い。

権利問題は、例えばAmazonで買った電子書籍をMetaのHorizon Worldsで読めるか、あるいはそれとKoboで買った電子書籍を両方持ち歩けるか、同じ操作で読めるか、というものだ。電子書籍をメタバースに持ち込むこと自体にまた新たな許諾が必要だし、ましてや他社の書籍となれば同じには扱えないだろうというのは、素人でも想像がつく。スマホやタブレットでもAmazonとKoboは別アプリだ。ちょっと大人げないとは思う。

これらの問題は、一気に解決することはない。このため、最終形態としての理想は語るにしても、その中間形態を考える必要がある。例えばコントローラの完全撤廃は今後数年では実現しないだろうから、コントローラ前提にするならUIを統一すべきである。また画像の解像度が上がらないなら本の方を大きくすべきだろう。

権利問題に関しては、複数のVRリーダーを搭載する方向になるだろう。だがもう一つ裏技はあって、Webブラウザで読むようにすれば、ある程度は解決できるはずだ。今でもWebブラウザはあるのだが、本のように手で持ってというレベルにはなく、視界を防ぐ巨大スクリーンになっている。壁の掲示板を読むようなもので、またURLを指定するなど決して使い勝手は良くないが、まあ当面はこれで凌ぐことになるのかもしれない。

2024年10月21日月曜日

メタバースの不満:パスワード

様々なメタバースアプリをインストールしては試しているのだが、大きな不満がある。パスワードの扱いだ。

新しいアプリを入れるごとに新しいIDを作成する必要があることが多いのだが、そこでパスワードを入力するというのが頂けない。VRゴーグルを被っているので、その新たなパスワードがメモできない。あるいはメモしておいてそれを入力しょうと思っても見えないのだ。多くのアプリは新規登録画面でパススルーを使えないし、パスワードマネージャーも無いので、覚えておいて入れるか、鼻の隙間から覗き見するなどをしなければならない。これは酷い。

あらかじめスマホで登録して、VRゴーグルでのログインを連動させるとか、パスキーにしておいて認証を飛ばすような方式にすべきである。また、

また、キーボードは基本的にソフトキーボードになるのだが、これをどうやらアプリ毎に独自に作っているようだ。となると、そのアプリのIDとパスワードならまだ許せるのだが、Googleアカウント連携でログインしたい時、あるいはWebブラウザからAmazonにログインするときなど、そのアプリがキーボードを用意しているので、ここでパスワードを盗まれる可能性がある。

ここはOSで管理して欲しい。というか、OSの管理であることがはっきり分かるようにして欲しい。アプリの中でパスワードを打ちたくない。あるいは前述のパスキーを使うべきである。

2024年10月16日水曜日

メタバースと物理法則

メタバース上の「モノ」、例えば衣服やアクセサリやオブジェ等は、ワールドをまたいで、あるいはメタバースプラットフォームをまたいで使うことはできない。これを解消すべくMetaは協議会のようなものを開いているが、その成果は未だ現れていない。以前も主張してきたが、プラットフォームとワールドという二段階で世界が分断されている現状は、望ましくない。更に言えば、服のような「形だけ、色だけ」のアイテムではなく、ウォレットや契約書、書籍、あるいは電子機器のような「機能性のあるアイテム」には、全く互換性は無いと言って良いのが現状ではないかと思う。

二次元の画面ではなく三次元の空間を扱うメタバースOSは、全面的にUIを乗っ取るべきではない。メタバース空間自体はあくまでもOSが管理し、アイテム類はOSの上で並行して動く複数のミニプログラムとして存在すべきであり、そのミニプログラム同士でもデータのやり取りを(位置ベースで:近づく、触れる)できるようにするのが正しいのではないだろうか。そしてそのUIとAPIを標準化して、開発ツールとして開放するのだ。そうすれば複数のワールドを渡り歩いて使えるようになる。

そして、メタバースにおけるAPIやUIは、現実世界のメタファを引き継ぐべきである。なぜならそこは3D空間であり、現実世界の模倣だからだ。既存のPCのAPIのように、何のメタファもない状態でAPIを作ってしまうと、自由度がありすぎて互換性が無くなってしまう。これに対してネジには物理的規格があるので世界中で通用する。物理の法則は勝手に作れないから、APIとしても自然に大人しくなり、結果として互換性は増すことになるはずだ。

そこで本提案では、その仕様として①物理法則、②電気、③光学、④情報、を規定するものとする。つまり、メタバース上の「モノ」には物性や電気的特性等を付与し、そこを通じて他の「モノ」と連携するのだ。

従来のコンピュータのUIやAPIは自由度がありすぎ、相互接続が困難だったが、物性なら誰でも知っているし法則も少ない。例えば複数の歯車を組み合わせて時計を作るとか、建材を加工して家を建てるといったことが可能になる。電気で言えば、銅線を巻いてモーターを作ったり、電球を作ったりができるようになる。

情報で言えば、近接通信を設定してお互いがウォレットを近づけると操作可能状態になり、送る側が金額を指定して送れば相手のウォレットに送金される、といったことが可能になる。

契約書の作成については、両者が契約書を手に取り、双方が署名を許諾すると、その場で署名済みの契約書が作成され、両者のアイテムボックスにコピーされるようにするのが良いと思われる。また、契約書に紐づくスマートコントラクトが設定できるようにするのが良い。例えばアイテムの販売なら、モノの所有権の移動と対価の支払いがセットになっている必要があるが、これが契約書に書かれていれば、契約の成立と同時にそれらの処理が自動で行われる。

なお、ステータスウィンドウのような投影画像は、モノではないとみなし、空中に浮かんでいて良い。

こういった法則に基づいてアイテムを作れば、メタバース上のアイテムは、素材の組み合わせによって急速にリッチになる。現実の世界でもできていたように、メタバース内でPCの自作とかモデルガンの改造とかも可能になるだろう。ルーブ・ゴールドバーグ・マシンだって夢ではない。

但し、どこまでも現実世界をシミュレートする必要はない。例えばニュートン力学は模倣しても良いが量子力学まで踏み込む必要はないし、摩擦ゼロとか電気抵抗ゼロとかのいわゆる理想状態も想定して良いだろう。物理的な存在の加工精度や誤差もゼロにして良い。そうしないとモノの動きの計算が複雑になってしまう。

2024年10月10日木曜日

終日運用を想定したVR環境

 朝起きてから寝るまでの大部分の時間をメタバース空間で過ごすと仮定した際、各家庭にどんな機器を設置すれば良いかを考えてみる。

現在のところ、VRゴーグルの連続稼働時間はせいぜい2時間である。これを16時間程度に伸ばすには、極端な省電力化か、連続的に給電するか、しかない。省電力化の方法として期待されているのはレーザー網膜投影だが、これはまだしばらく時間が掛かりそうだ。よって当面は給電方式になる。

給電には有線と無線があるが、有線だと手を動かした時に引っかかるので、ここでは無線を考える。後述する無限軌道デバイスから給電してやるのが良いだろう。数m級の無線給電の技術は、実験では色々とされているが、まだ実用化(商用化)はされていない。これは汎用を目指すからこうなるので、VRゴーグル専用とすることで認可は取りやすくなるはずだ。

また、VRゴーグル自体の性能ももっと向上させる必要がある。主には解像度と視野角がまだ足りない。これらを増やせば計算能力も必要だが、これは後述するようにVRゴーグルから外出しすることが可能だ。

次に無限軌道である。歩く走るといった運動をするためには無限軌道が必要だ。市販されているものでは、滑りやすい靴を履いて半球状の台の上を歩くというものがあったが、これは足元が不安定だし、地面の形が平面にならないので好ましくない。

ディズニーが実験的な無限軌道を作っているニュースがあったが、あのようなものが良いと考える。また上の(滑る)市販品の直径はせいぜい1mくらいだったが、人間の運動範囲を考えると1.5〜2mくらいは必要だろう。

無限軌道は必ずしもキャタピラである必要はなく、例えば大量のベアリングを並べてモーターで回すとか、表面を超音波モーターにしてやるなど、幾つか考えられる。個人的には超音波モーターに魅力を感じる。

次に体の動きだが、手首足首にトラッキングツールやマーカーを着けて無線で把握するというものは市販されている。また手にコントローラーを持つ前提のものも多いが、これは止めるべきだろう。

無限軌道デバイスがある前提なら、その無限軌道デバイスからカメラで撮影すれば、トラッキングツールやマーカーは不要なのではないか。つまり、無限軌道デバイスの周辺に複数のカメラを埋め込んでおけば良いのではないか。下から見上げることになるが、見下ろすところはVRデバイスのカメラでできるので、下半身の動きを補強することでバランスがとれそうな気がする。

最後だが、椅子やベッド、テーブルの類をどうするかだ。1日中立っているのは疲れるし、事務作業は椅子に座ってキーボードを叩く、ないしはペンで書く、といった作業が必要だろう。

このためには、無限軌道デバイスをベッドぎりぎりに設置しておいて、寝る時にはそこへ移動する、というのが正解だろう。これで寝るのと座るのはできる。椅子の高さや硬さが調整できないが、これは妥協する。

机だけは解決策がないので、いったんゴーグルをMRモードにして、リビングの椅子とテーブルに移動してから改めてVRモードにする、といったことが必要だろう。キーボードやペンもリビングに置いておく。

ここまでのところを整理すると、①無線給電に対応したVRゴーグル、②無線給電と姿勢検知カメラを内蔵した無限軌道デバイス、これらさえ開発できれば、従来のVR体験にも増してかなりの体験ができることになる。②はAC接続だから、CPUを載せてVRゴーグルの計算の一部を肩代わりすることも可能だろう。これはVRゴーグルの軽量化、低消費電力化に貢献するので、一石二鳥である。例えば無線給電だけでなく無線LANも内蔵させてペアリングしておけば、①からはセンサのデータを飛ばし、②からは計算結果としての左右の眼の動画ストリームを流すだけで済むので、①はかなり小さくできるだろう。

これは今の8万円のVRゴーグルだけの体験よりは遥かにリッチになるので、①②セットで30万円くらいでも売れると思う。もちろんコンテンツの充実は前提だが。

2024年10月4日金曜日

メタバース前提の社会はどう変わるか

 

メタバースが主流の社会では、外出の機会が極端に少なくなる。これによって、大きなダメージを受ける業界が出てくる。それは大雑把に観光業と交通・運輸業、飲食業である。観光にはゲームセンターや映画館、大型ショッピングモール、スポーツ関係なども含まれる。また、雨具の需要も減るだろう。こういう業種は、メタバース内での類似の仕事に業種転換することを強いられるだろう。例えばメタバース内に観光施設を作り、入場料を取るなどだ。

それでも外出が必要となる機会としては、①対面が必須の業務、②本物の運動、③医者に掛かること、④メタバースに飽きて本物に触れたくなる、くらいだろうか。

①としては、介護業務や医者・看護師、デリバリーや宅配業者などが考えられる。また②に対応するコーチや④に対応する観光業者なども考えられる。③については、殆ど家の中にいれば感染症に掛かる心配はない一方、運動不足、日照不足、食事の偏りは懸念される。医者に掛かる回数が増えるか減るかは微妙なところである。

一方で、宅配やデリバリーは今以上に発達する。これに対応すべく、宅配に適した構造は進化するだろう。それは端的には宅配ロッカーの進化だ。ロボットカーによる自動配送に対応した宅配ロッカー、冷蔵や冷凍に対応した宅配ロッカー、また階段を登れるロボットカーなどによって、ドアToドアでロボットで完結するデリバリーも出てくるかもしれない。

次に、メタバースの性質からくる細かい問題について議論する。

メタバース内ではアバターを使う。アバターの自由度は現実のファッションの比ではないため、街を歩くアバターの奇抜さには慣れが必要だろう。またビジネスコードも新たなものが必要になる。背広にネクタイ七三分けはもう古いが、獣人や無用にセクシーなアバターはやはりビジネスには相応しくない。どのへんがセーフ、どのへんがアウト、というのは徐々に合意を積み重ねていく必要があるだろう。

また、メタバース内ではワープ(ワールドへのジャンプ)が可能なため、場合によってはプライバシー侵害になったり驚かせてしまったりする懸念がある。ワープ/ジャンプのマナーについても議論がされることになるだろう。これはワールドに「入口」を作っておいて、そこにしかジャンプしないようにする、というのが落とし所になるだろう。また、誰でも入れるのではなく、ある程度の制限が類型化されると思われる。誰でもOK、連絡先に登録している人はOK、リクエスト可能にする、指定した人だけOK、チケットの発行、入館料を取る、家族だけOK、誰もNG、などだ。

メタバース内では、通勤や通学など、移動の時間は殆ど必要ない。このため、従来より自由時間は増える。それを全て労働や勉強に振ってしまうのは勿体ないし、健康にも悪い。このため、国レベルで時間の使い方には制限を掛けて欲しい。今の労働基準法のようなものを拡大して、労働メタバース(勉強メタバース)、睡眠、食事・トイレ等、自由時間の上限下限を制定し、自動で監視する。副業してもサービス残業をしても全てバレる。また勉強も、同じ勉強時間での比較をするようにすれば、受験地獄には陥らない。これもメタバースだからこそできることである。

次に、メタバースでの体験が現実の体験より優れているところについて考えてみる。

メタバース内での全ての人の行動は、メタバース空間提供業者が完璧に把握することができる。またその人のIDを厳密に管理することで、そのIDが誰かも即時に分かる。このことから容易に想像できることは、メタバース内での犯罪やイジメ、それに準ずるトラブルは、現実世界に比べて大いに減るだろうということだ。

例えば、現実の世界で旅行をすると、ホテルや飛行機の都合で日程が制限されたり、予約が一杯で希望するところに行けない、旅行会社がミスをして、あるいは雲隠れして旅行ができない、現地でスリや強盗に遭う、接客がなっていない、混雑していて満足に見れない、暑い寒いなど、様々なトラブルが待ち受けている。下手をすれば病気になったり怪我をしたり、命を落とす危険すらある。

これらの問題は全て、メタバースの世界では起こりにくいし、モノによっては起こり得ない。どんなに人気のスポットでも交通手段が予約でいっぱいになることはないし、病気や怪我をする心配もない。トラブルが起きれば直ちに相手を切って、次に進むことができる。

これは旅行に限らず普段の生活でも同様である。迷惑行為をするご近所さん、タバコのポイ捨て、学校でのイジメやネグレクト、そういったものはメタバースでは起こらない(ようにすることができる)。問題が起きれば証跡を辿れば直ちに分かるから、訴えれば即事実が確認され、対応できるからだ。100%バレる犯罪をする人などいないし、もしいても確実に修正される。その意味で、メタバースは現実世界より安全である。

また、メタバース上には資源問題も食糧問題もないため、メタバース上での戦争や国際紛争は起こりにくい。起きるとすれば宗教や思想信条の対立だが、メタバース上で武力行使をするのは基本的に不可能である。自分のワールドやアバターを他人が破壊することは、そもそも許されていないからだ。もしそれが起きるとすれば、現実の社会において国がメタバース業者に圧力を掛けることだろうが、これはもう現実社会の問題であって、メタバースはそのとばっちりを受けているに過ぎない。一方で言論は大いにやってもらって構わない。

メタバースでは、距離の概念が希薄になるだけでなく、言語も自動翻訳が掛けられるため、言語上の障壁も少なくなる。これによって国際交流は現実世界よりもずっと簡単になる。これは相互理解を深め、ひいては国際紛争を減らすことに繋がる。戦争の最も大きな動機は、お互いの無理解だからだ。

メタバースでは、学習効果が高くなる。紙の教科書に比べてタブレットによる電子教科書のほうが学習効率が高い、ということは既に証明されているが、これがメタバースになれば更に立体的な視覚効果が使えるので、学習効果が更に上がることは間違いないと考える。これは学校の勉強だけでなく、社会のあらゆる学習場面で効いてくる。このため社会の進歩の速度は一層進むと考えられる。

逆にメタバースのデメリットを考えてみると、匂いや味はほぼ伝わらない。観光旅行で現地の食事を食べることができないというのは、人によっては致命的だ。もちろん通販と組み合わせて疑似体験することはできるのだが、自分で調理や解凍などをする必要があるのは興ざめである。またメタバースは視覚を主に使っているため、盲の人には殆どメリットがないと思われる。

運動不足になりがちというのもデメリットだろう。例えば短距離走をメタバースで行うのは無理がある。砲丸投げやり投げ、テニス野球、鉄棒鞍馬吊り輪新体操など、メタバースでは困難な競技はごまんとある。

これらより、人がメタバースに留まる時間について、公共の視点から何らかの制限が掛かる可能性はあるだろう。例えば週休二日としてその二日は運動や外出を勧められる、等だ。

2024年10月2日水曜日

メタバース警察

 

メタバース内でも犯罪は起こり得る。既に問題になっているのは、メタバース内での集団レイプ事件だ。アバターだからといって精神的被害がない訳ではない。実際に発生した事件では、現実の警察で捜査が行われている。

現実の警察が動くことがあるとしても、メタバース上で犯罪が起きてから実際に行動するまでは長く時間が掛かり、多くの証拠は失われてしまうだろう。だがメタバースは全てコンピュータ上で動いているので、犯罪が起こればシステム側がその証拠を確実に抑えることは可能である。例えば誰のアバターがどこにいてどんな行動をしたかは、証跡を取れば分かる。だからメタバース上の犯罪捜査や抑止は、メタバース空間提供業者の中で専門の組織を組んで、これに当たるべきである。

この組織は常時メタバース上に待機しており、ユーザの「110番」(通報)を受ければ秒速で現地に飛び、被害者と加害者を各々別の隔離された空間に飛ばす。そして各々事情聴取すると共に証跡を取り、裏付けを確認する。そしてそのレベルに応じて注意、ID停止、ID剥奪、警察への通報等を行い、被害者には裁判に必要な証拠を提供する。マスコミへの公表等も行う。

通報を受けずとも、犯罪発生率の高いところは巡回したり、犯罪のパターンを調べておいて証跡から自動警告するような仕掛けも作ってほしい。逃れようのない証跡が常に残るので、犯罪の抑止は現実よりずっと簡単なはずだ。

このためにも、IDは公的な身分証明書と対応させ、ブラックリストも作っておくべきだろう。ID作成時の契約条項にも、当然これらは書いておく必要がある。

2024年10月1日火曜日

全てAIが対応します


星新一のショートショートで、今でも覚えているものがある。全ての人の肩には鳥が留まっていて、その人が本音を言うと、鳥が当たり障りのない言い方に変換して相手に伝えてくれる、というものだ。今、生成AIがメールの下書きをしてくれているのを見ると、正にこれだな、という感がある。

肩に鳥というのは寓話であるが、これがアバターならもはや完璧だ。人がメタバース上で交流するようになれば、この鳥は完全に隠れた存在となり、もはや相手には鳥がいることが分からない。言葉もそうだが、態度も表情も全て、AIが一枚噛んだ状態で接するしかないことになる。

メタバース上のコミュニケーションでは、この問題が付いて回る。相手が実はAIだった、というものも含めて、相手の本当の人格が分からず、自分の人格も他人には分からない。メタバース上で友人になったり恋人になったりしても、それが本当の相手とは限らないわけだ。

今の時代、メタバース上でカップルになった人はそこそこいるらしいが、それは容姿のみしか隠していない。将来上記のようなAIが実用化した時、言葉も態度も全て隠した状態で相手を好きになったとしても、それは本当のことなのかどうか。これは社会問題になるだろう。

その先には、「生身の人間が一人づつ殺されてAI人格に置き換わっていく」といったSFも書けるだろうし、「生身の人間との相対は全てAI人格になり、人格を磨かずとも人は幸せになれる」という籠の鳥状態の人間が多く出てくることも予想される。そういう世界では人同士が生身で会う機会が極端に減り、これは人口減に直結するが、社会はAI人格で回るのでそれが問題にならない。そして本物の人口はどんどん減っていき、人類は穏やかなる滅亡を迎える、というシナリオを書くことも可能だ。

上のシナリオで、人類が穏やかに滅亡するとしても、その個人個人は全く不幸ではない。むしろ世界の誰でも理想的な生き方、死に方ができて、幸せこの上ないはずだ。戦争も起きないし、動物の絶滅もないし、地球環境は維持できる。人類以外にとっても、それは理想ではないだろうか。

それは人類にとって、マクロで見ると防ぐべきなのかもしれないが、ミクロで見ればその幸せを取り上げることになる。大衆は賛成してくれるだろうか。滅亡を他人事として自分が幸せなら良い、という人が大部分ではないだろうか。事実をAIに隠されることも含め、これらは真面目に考えるべき問題である。

2024年9月20日金曜日

メタバース前提の家

 


生活の大部分がメタバース上でできるようになった時、家の構造はどう変わるのだろうかと考えてみた。

ここでの前提は、まず一人一台のXRゴーグルがあり、1日中装着しても苦にならないようになっていること、またあらゆることがメタバース上でできるようになっていること、とする。その上で、60平米3LDKに夫婦と子供二人が過ごしていたところがどう変わるのか、と考えてみる。

まず当然ながら、トイレ、風呂、飲食はメタバース上では不可能だ。このため、バスルーム、トイレ、冷蔵庫、食器、台所の類は変えられない。睡眠も同様で、寝落ちは可能でも寝具は必要だ。当然ながら冷暖房も必要である。

不要になるのは、テレビなどのAV機器、外出用の服やバッグ、アクセサリや化粧品類、文具、電話、などである。椅子とテーブルはかろうじて必要だろう。

ここから得られる結論としては、「2〜3LDK、風呂とトイレ以外の各部屋は小さくなる」と考えられる。つまり、個室は寝られるスペースさえあればよく、リビングも食事ができる広さがあれば十分だ、というものになる。60平米が45平米くらいになって、これが標準になるのではないだろうか。

生活体験はこのようなものになる。まず、朝起きるとXRゴーグルを装着する。これは大きなサングラスないしはスキーゴーグルのようなもので、十分に軽量であり、また天井からの無線給電によって使用時間制限がない。ゴーグルを装着したままリビングに向かう。AR(強化現実)によって、リビングは実際より広く、キレイに見える。

食事の準備もゴーグルを着けたまま行う。AIのアシストによって、より良い食事が作れる。食べるのもゴーグルを着けたままだ。実際の食事をARで強化し、より多く、美味しく食べることができる。

その後、大人は勤めに、子供は学校に行くが、ここから先はVRだ。そこで一通り仕事や学習をする。昼休みには、子供は友達同士で、親は一旦帰って、自宅の食事を摂る。午後も同様に仕事や学習を行い、子供はクラブ活動なども行うだろう。

この際、運動部は少々厄介である。この場合はXRゴーグルだけでなく、全身トラッカーと無限軌道などが必要になる。それにはカネが掛かる。それが調達できない子は、卓球のような狭いスペースでもできるスポーツにするか、文化部に行くしかないだろう。

飲み会などは宅飲みである。なので酒量は制限できるし、幾ら酔っても自宅なので問題ない。

休みのお出かけもメタバース内である。イベントに出かけるのも家族旅行も簡単だ。但し現地での買い食いや食事はできない。見るだけだ。ウインドショッピングはできるし通販も可能だが、現物を即時に入手することは当然できない。

さて、この方式では、外食の機会は殆ど無くなる。三食全て自宅である。そうなると、ネットスーパーの存在意義は大きくなるし、冷蔵庫も大きいものが必要になるだろう。

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