2020年12月23日水曜日

VR空間では車椅子で移動しよう

 


別の投稿でも書いているが、VR普及の条件はビジネスに使えることだ。即ち、①会議・打ち合わせ、②プレゼン、③コラボレーション(共同作業)、④PC作業(大画面、多画面)、これらが「使い勝手よく」できる必要がある。

これらに適合するVRアプリとしては、EngageBigscreenImmersed等があるが、このうちEngageだけが下半身までを表示するようになっている。また、等身大のリアルなアバターになっているのもEngageだけだ。だがアバターの動きは不自然で、不気味の谷以前の問題になっている。

ビジネスでは歩き回ったりしないし、周りを広くすることもない。むしろ机に座り、机にはキーボードとマウスがあるはずだ。もしコラボしたくなったら、歩いていくのではなく操作で近づくことになる。これはリアルなアバターよりも、下半身のないBigscreenやImmersedの方が自然だ。しかしこれらのアバターはかなりアニメっぽく、ビジネスには向いていない。

そもそも、Oculusのスタート時には、周りを片付けて、動くエリアを決める、といった操作が必要だが、そんなものはUIとしての使い勝手を大いに損なうものだ。気軽にさっと被って終わったらさっさと取る、そんな気軽さがないとビジネス用には不適格だ。

そこで提案するのは、Engageのようなリアルアバターで、且つ車椅子で移動することを前提とするUIである。

事務机の前で椅子に座っている状態でVRゴーグルを被ると、VR空間でもやはり自分は電動車椅子に座っている。小型のテーブルもついていて、そこにはキーボードとマウスも見える。車椅子の移動用に、小さなジョイスティックも別に用意する。キーボード、マウス、ジョイスティックは、現実のUIとしても存在する。あるいはキーボードを中心として一体化したUIを作っておくのも良い。

これを前提としたVR空間は、下半身のスキャンやトレースが必要ないので、上半身しかない不自然なアバターでもなく、等身大だが歩き方が不自然な不気味の谷を作ることもなく、容易に構築できる。また、移動速度をかなり速くしても違和感なく表現できる。立ったり座ったりといった運動はできないが、ビジネスにはその程度で充分だ。

VRゴーグルではよく出てくる、両手に握るコントローラは、この世界では不要だ。キーボードとマウス、ジョイスティックがあれば良い。指はカメラでトレースできるから、大画面を立ちして選び、マウスで操作すれば良い。

事務机、会議室、映画館などでは、小型テーブル車椅子を考慮した作りが必要になる。即ち道幅は広く、席の間隔も広く、部屋備え付けテーブルは小さめになる。

また、VRであることを活用して、会議など業務を自然にスムーズに進めるためのメタファを取り込むことをお願いしたい。例えば会議なら資料が不可欠だが、席につくと自動で資料がテーブルに揃うとか、スケジューラから拾ってその日前後1日分の資料フォルダが小型テーブルに準備されるとかがあれば嬉しいし、フォルダから出した資料はPC画面のように前面に出るのではなく、テーブルに置かれるように表示されるのが望ましい。全員が見る資料は投影されるようにする。手元と全員の資料は切り替えるのではなく、視点を変えることで複数見ることができる。

主催者の方も、準備には会議室に行って資料を置いてくる、というようなメタファがあると良い。会議室には資料を置くフォルダがあって、置くところによって開示レベルが変わるなどといったことも可能だろう。また、議事録が自動で作成されるとか、 類似タイトルの会議で資料が通して閲覧できるような機能があると嬉しい。

更には、オフィスのように皆が集まっている場において、相手に気軽に声を掛けて打ち合わせをスタートしたい場合に、音声アシスタントにそれをお願いするような機能があると嬉しい。

2020年12月22日火曜日

水素ガスヒーター


 ガスファンヒーター、石油ストーブなどは、北国では多く使われている。これらは換気が必要だが、その主な理由は一酸化炭素中毒の危険だ。燃焼不良が起きると一酸化炭素が大量に発生するが、一酸化炭素中毒は死に至る危険なものだが、人はこれを吸っても気付かない。それが危険である理由でもあるのだが、もしガスに炭素がなければどうか、と考えてみた。

原理的に、水素ガスだけであれば、幾ら燃えても一酸化炭素は出ない。炭素がないからだ。一酸化炭素中毒の危険は、ほぼゼロになるはずだ。

もちろん、酸素は消費されるので酸欠の危険は相変わらず残る。だがこちらは換気をすれば直ちに回復するし、息苦しくなるので分かりやすいはずであり、一酸化炭素中毒に比べればリスクは低いだろう。

都市ガスを改質して水素だけを取り出す技術は既に存在するが、都市ガスレベルでの普及は無理なので、最初はガスコンロ用のガス缶のような形で普及させる。これなら1本交換する度に換気、等と目安を付けられるので、更に危険は減るだろう。

また、水素が燃えればそれは水蒸気になるから、加湿にもなる。冬は乾燥するので、こちらも有利ではないだろうか。

2020年12月15日火曜日

一日中VR


 ブルース・ウィルス主演の映画で「サロゲート」というものがあった。現実世界では人間そっくりのロボットを動かし、自分は部屋の中でそれを操作している、というものだ。今見てみると、あまり現実的ではないな、と思うようになった。あの操縦法が許されるのなら、普通にVR空間にしてしまった方が遥かに簡単だからだ。自分も相手もVR、それで良いではないか。

別項でも示している通り、VRでの生活が長くなってくると、今のようなVRゴーグルでは都合が悪い。まず目の周りが蒸れるし、遠くの人は良いとしても目の前の家族と縁遠くなってしまう。電池も一日は保たない。これを解決する方法を考えてみる。

個人的に注目していたのは、Focals 2020だった。これは黒縁メガネとほとんど変わらない外観を持つ、MRグラスだ。しかしGoogleに買収された後音沙汰がない。

また、このFocalsとて一日中は動かせない。大きさを取ればバッテリや画面の質が落ちる、これは必然だ。これを何とかしなければならない。

そこで考えるのは、室内にいることを前提として、電源や映像を外部から供給することだ。そこで、こんなものを考えてみる。

Focalsと同じく、大きめのメガネ、あるいはサングラス程度の大きさの端末を想定する。基本的にはMRであり、つまりはグラスは透明で、向こうが見える。ディスプレイの形式もFocalsと同じである。但し解像度と視野角は改良してほしい。

また、普段はMR、アタッチメントでメガネを覆うことでVR兼用にしたい。これは他のVRグラスでも例があるので難しくないだろう。それがかなわないのであれば、VR用とMR用は別のグラスになる。この場合でも、従来よりは薄く軽くできるだろう。

基本的には、テレビと同じように映像を受信して垂れ流すだけとする。Miracastのような技術を使えば良い。電源も無線供給とする。ドコモが研究しているWi-Chargeは、4mの給電が可能だそうなので、これを使用する。ツルの部分には骨伝導スピーカを付けておく。後で述べるがマイクは不要である。

このシステムに置けるもう一つの主役は、天井シーリングに付けるコントローラである。このシーリングには、もちろん照明は兼用するが、その他にグラスのコントローラとしての機能が備わっている。

その一つは、言うまでもなく上の無線給電と画像データの送信である。天井からはせいぜい3mなので、Wi-ChargeもMiracastも能力としては充分だ。また外部との接続にはWiFiを使い、WiFiルータと接続する。

もう一つの機能は、グラス装着者の顔の向きや手の動きを解析することである。グラスにセンサを付けるとそれだけ複雑になり、電力も消費するため、その機能を移すわけだ。グラスに付けるのは再帰性赤外線反射材のような簡単なものに留め、カメラでその向きや位置を検知する。その解析結果はそのままシーリング内のコントローラが使うため、タイムラグは最低限に抑えられる。

カメラは2、3台を位置を変えて設置すれば、立体的に検知できる。また指先や手首にも反射材入の手袋ないしは腕輪や指輪などを付けておけば容易に検知できるので、CPU負荷を軽減することができる。これにより、コントローラを手に持たなくても操作ができるようになる。

室内で使う前提であるため、マイクをグラスに仕込む必要はない。シーリングに仕込んでおけば良い。一方で音声は一人ひとりに送る必要があるため、上のようにグラスを仕込んだ骨伝導を使用する。マイクがないことは、通信が一方向で良い(シーリングからグラスへ)ことを意味しており、グラスの構造の簡略化に貢献する。

Focalsクラスの軽量、また目の周りを厳密には覆わないものであれば、一日中掛けていても疲れず、また蒸れないで済む。初期にはここまで軽快なものは望めないだろうが、それでもグラスが大きめになる程度であり、シーリング側は変わらない。シーリングの能力が十分にあれば、部屋に4、5人いても同時に使える。グラスは端末なので安価に作れるから、この点でも合理性がある。

シーリングは新しい鍵になる、というのは以前も投稿したが、こうなるとホームサーバ機能も含め、シーリングに集約した方が良い気がする。例えばワイヤレスキーボードを机の上に置いて、ディスプレイはグラスに表示する、というような使い方をすれば、普通のPCと同様のことができるだろう。壁に仮想的なテレビを置くことで、テレビやビデオを見ようと思えば、そのための情報もシーリングに集中する必要がある。

ここまでくれば、以前提案したように「全てがVRで表現され、何もない部屋」が現実味を増してくることになる。固定電話、FAX、本、テレビ、カレンダー、掛け時計、置物、BDプレイヤー、スマホ、音楽プレイヤー、PC、タブレット、腕時計、等は全てバーチャルになり、棚に仕舞うべきものはどんどん仮想世界に逃げていく。朝起きたらまずグラスを付け、会社や学校もバーチャル世界で済ませ、趣味も雑用も全て同様にバーチャルで行い、一日中リビングから出ない。そんな社会が、あと十年もすれば来るのではないか。

2020年12月14日月曜日

VRの普及で現実のモノの価値が落ちるかも知れない


Oculus Quest 2が登場したことで、VRには新しいステージが開けている。価格が画期的に安くなり、また単独で使えることで、ユーザ層がぐっと増えているため、今まではアーリーアダプタのおもちゃだったものが実用に向けて進みつつある。

例えば、VR会議は、それほど難しくなくなってきている。無料のVRルームソフトが幾つも出現しており、資料は従来のPowerPointやExcelを使えば良い。後はユーザ毎にVRゴーグルを配るだけだが、ここが簡単になってきたのだ。

電話会議やZoomがようやく普及してきたところだが、これがVR会議になれば、本人はアバターになるため、Zoomのように化粧や服を気にする必要はないし、他の参加者との物理的な距離感が復活するため、むしろやりやすくなる。

こんな感じでVRが普及していくと、むしろVRががデフォルトになり、現実世界での行動が廃れていくことになるのではないか。そしてそれに伴い、実物としての「モノ」の価値は減っていき、相対的に仮想世界でのモノに価値が出てくるのではないだろうか。

例えば、既にVRアプリストアには、仮想オフィスとか仮想デスクトップとかいうアプリケーションが存在している。これを使うと、デスクトップ画面が幾つも、また幾らでも大きく表示できる。そうなれば、高価な大画面ディスプレイを買わずとも、VRゴーグルを支給してしまえば良い、となってしまう。CADのような用途は言うに及ばず、Excelファイルを多数開く経理の業務などでも有用だ。

また、本を読みたいと思った時、Kindleより物理的な本が良い、と考える人は多い。あの小さな画面、遅い反応が気に入らない、大きな雑誌やグラビアがきれいに見えない、等、iPadでも不満になる場面は多い。しかしこれもVRなら、幾らでも見やすくできるし、反応速度もクラウドで改良すれば幾らでも良くなる。iPadを持ち続けるのは肩が凝るが、VRなら空中に浮かせておけば良い。更には、静かな海岸、雑踏のカフェ等、好きな場所で読むことができる。紙の本からKindleを経由せずに一気にVR本に移行する、という人も、一定数いるはずだ。

VR空間で生活する時間が長くなれば、外出の時間は相対的に減っていく。学校も仕事も買い物もレジャーもVRで済ませられるようになれば、服や靴、アクセサリ、髪型、化粧、等といったファッションは、相対的にカネを掛ける価値が減っていくだろう。代わりに、VRの中で着る服等のファッションに気を使うようになる。そこへの投資(支払い)も増えていくだろう。

また、観光というものの価値が根本的に考え直されることになるかもしれない。まずはVRで現実の観光スポットに行けるようになる。次に、現実を模した仮想環境への観光になる。そこでは現実には存在するトラブル、例えば天候不順で景色が見えないとか、手違いやダブルブッキングでホテルがとれていないとか、詐欺ボッタクリに遭うといったことがなくなる。更にその次は、現実には行けないところ、例えば宇宙旅行等が出てくる。そして最後には、現実には存在しない場所が観光スポットになる、という段取りだ。

現実には存在しない場所。それはクリエイターのイマジネーションの限りを尽くした特殊空間だ。現実の景色を遥かに超える体験ができることになる。その頃には、現実世界で観光なんてとんでもない、汚いし怖いしカネも時間も無駄に掛かる、という価値観になっているかもしれない。

いや、現実に存在する観光スポットの価値は変わらない、と考える人もいるだろうが、価値とは相対的なものだ。音楽を聞くのに楽器を演奏するしかなかった時代と、スマホで幾らでも無料で再生できる時代の違い、とでも言うべきものだ。生演奏には今でも一定の価値があるけれども、日常の大部分はスマホで聞いていて、人によっては生演奏は全く不要と考えている、というのが今の状態だ。現物と仮想化したモノの関係は、今後そうなっていく可能性を秘めている。それは景色も同じである。

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