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2026年5月15日金曜日

性別を二つにするのはなぜいけないのか

 だいぶ古い話だが、第二次トランプ政権で、多様性政策撤廃の大統領令が発せられた。

https://jp.reuters.com/world/us/IOISYYZHL5IRVEUVZAFA4DAACY-2025-01-20/

パスポートなど政府発行の身分証明書について「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」に基づくことを義務付ける、というものだ。今の多様性の風潮に真っ向から反対する施策である。

個人的にはこの風潮には反対である。本稿ではその理由を述べる。

まず、「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」であるが、多くの人が考えるLGBTQとは関係なく、男性でも女性でもない(男性でも女性でもある)という生物学的な分類は、現実問題として「存在する」というのが事実である。もちろん人間の場合である。

染色体におけるXXとXYという話はよく聞くが、これらに属さない染色体、例えばXXY、XO、XX/XYモザイクといった染色体を持つ人は実際に存在する。また性腺に関しても、精巣と卵巣の両方を持つ人、片方の性腺が未発達ないしは欠損しているという人、性ホルモンに関してもその程度が一般的な男性女性とは異なる特徴を有する、などもあるそうだ。また、そういう特徴が成長とともに変わることもある。またもちろん、性転換手術をすれば、それらも変わる。

だから、生物学的分類はそもそも男性と女性だけではないし、変更不可能でもないのだ。つまり、最初の定義の時点で既に自己矛盾している。生物学的分類に沿うことを定義とするならば、それは変更可能にすべきであり、またまた種類も最初から二つであってはならない。

次に、LGBTQの問題は、生物学的な性と性自認(自分が自分の性を何だと自認しているか)、性指向(恋愛や性愛の対象)と、主に三つの軸で論じるべきものである。しかも、性自認と性指向に関しては、二元論(男か女か)ではなく様々なグラデーションが存在している。例えば男40%女60%と認識している人、バイセクシャルでも嗜好に偏りがありその程度も様々、逆に性指向がほとんどない人、などである。そういう人を全部ひっくるめると、調査にもよるが全人口の8〜15%は性的マイノリティと推定されているそうだ。

一方、日本の障害者(精神障害者、身体障害者、知的障害者)の割合は、全人口の7.6%で、一千万人弱いると言われている。性的マイノリティより少ない数だ。その障害者に対して、全国的に点字ブロックや車椅子対応トイレを用意している一方で、性的マイノリティを無視するというのは公平性を欠く行為だ。それは、性的マイノリティに対する差別だと言われても仕方がない。障害者差別と同じく、それは為政者としてはあるまじき行為である。

障害と性自認は別だ? そりゃそうだ。だが、違うのは良いとして、それは無視するに値する違いなのだろうか。例えば、障害者のためのケアには、教育や社会インフラの整備、法律での対応などと、莫大なコストが掛かる。点字ブロック一つとっても、障害者雇用支援法にしても、あるいは支援学級にしても、その対応には兆円単位でのコストがかかっている。一方で性の多様性を認めることに、差してコストは掛からない。もちろんゼロではないしそれなりには掛かるが、障害者対応に比べれば微々たるものである。なぜコストの掛かることはできるのに、コストの少ない方を無視するのか。そこにはやはり差別しか理由が考えられない。

至極単純な話、人口の10%程度も特定の集団がいるのなら、その集団の存在を認めよ、差別するな、というだけのことなのだ。障害者だけでなく、15歳未満の子供も10%程度だし、ひとり親世帯も、貧困層も、75歳以上の高齢者も、10%前後の割合を占めており、それらは皆ケアされている。性的マイノリティだけが冷遇される理由は見つからない。

それは主にトイレと公衆浴場の問題、パスポートや住民票などにおける表記の問題、同性婚など婚姻と相続の問題、スポーツ大会などへの参加資格の問題などであると思われる。トイレに関しては多目的トイレがすでに普及してきているのでこれを更に発展させればよい。公衆浴場に関しては更衣室と浴場に個室を作ること、公的書類の表記や婚姻相続については法改正とシステム修正、となるだろう。

浴場だけが厄介だが、他はすぐにでも着手可能であり、それほど費用は掛からない。抵抗して屁理屈をこねている暇があったらさっさと進めてしまえばよいだけの話だと思うのだが。

2026年5月13日水曜日

AIによる社会変化の予測

 中島聡氏の著書 

2034 - 未来予測

に倣い、私も未来予測をしてみたいと思う。ただ、私はこの本を読んでいない。著書のチャプターのみを題材として、自分なりの予測をしてみる。

Chapter1 AIによる「死生観」のグレート・リセット

既に書いている、

人は死んだらどこへ行くのか

輪廻転生の科学的解釈

の中で、「魂とは情報である」という主張をしている。情報量(精度)を別にすれば、魂を機械に移植することは可能だ、という主張だ。

中国で、死んだ人をAI再生するサービスが既に商用化している。おそらくこの本では、近しい人の死に際して、AIで疑似人格を作り、常に脇において生活することによって、近しい人の死をあまり怖がらない・悲しまないような死生観に移行する、ということが書かれているのだろうと思うが、まあそれには同意する。ただ、自分自身の死はやはり怖いと考える人は相変わらず多いだろう。

そしてその先なのだが、そういう人がまた死んだとして、その人の人格、すなわち過去に死んだ人の人工人格を脇に置いて生活していた人の人工人格を作ったとしたら、それはどういうものになるのだろう。少し考えてみたが、そこで最初の人工人格は消えてしまってもおかしくないと思う。となると、死の世代(?)が一つズレるだけで、永遠の人工人格は必要ないのかな、とも考える。著名人(アインシュタインとか渋沢栄一とか)が記念碑的に残ることは考えられるが、一般人にはあまり関係ない話なのではないか。

ここで想うのは、そういうAIがない時代においても、人は故人を心の中に持っていた。映画などではお墓に向かって語り掛けるシーンがよく出てくるけれども、あの時にはその人の心の中に故人がいたはずだ。そういう二つを比較した場合、多くの人は、人工人格の正確性を気にするよりは、自分の想っている答えが返ってくる人格を好むのではないか。

まあ要するに、本来は心の中の故人で十分であり、人工人格に頼るのは「想像力の欠如」に過ぎないんじゃないかと思うわけだ。私としても、自分が死んだときに家族に人工人格を作ってほしいとは思わない。昔ながらの「心の中の故人」だけで十分、いやむしろそちらの方が好ましいと思う。

また、その人工人格は成長するのだろうか(するように設計するのだろうか)というところには興味がある。数年ならまだしも、十年二十年と同じことばかり言う人工人格はつまらないのではないか。だがどうやって学習させるのだろう。故人の情報収集と同じに限定しては進化がないし、かといって調整するのも違う気がする。これだけで一つの学問になりそうだ。

この問題にはもう一方の側面があって、つまりは当事者(死んだ人)の方の問題である。自分が死んだとき、それを人工人格に移植されたとしても、それは自分ではない。マネているだけだし、何よりも精度は大きく落ちる。どうせなら完璧に移植したいと思うのではないだろうか。そしてそれは自分だと胸を張って言いたいのではないか。

書籍「トゥモローメーカー」

の中で、人格をコンピュータに移そうと本気で考えている人たちの話が載っていたのだが、過去に私もコラムにしている。

転送問題の解決法

人格をコンピュータに移す際に起きる、いわゆる「アンパンマン問題」(アンパンマンの頭が交換されたら古い頭の意識はどうなるのか)とも言えるのだが、本コラムでその理論は完成済みだ。

現代ではまだ技術が不足しており不可能だが、この手法によって「そのAIが本当に自分と言えるかどうか」さえ解決できれば、機械への人格の移植をしたいと思う人は急増するのではないか。

こちらの方には期待(?)している。もしこの技術が本当に実用化するのなら、ぜひ試してみたいものだと思う。これで永遠の命が手に入るのだ。体も、ロボットを使えば問題ないだろう。ただ、やることは旅行とかゲームとか、普通のことかもしれない。

なお、こちらは2034年までの実現性はほぼないと考える。従ってこの書に言及がなくても問題ない。

Chapter2 「24時間寄り添うパーソナルAI」によるアフタースマホの生活革命

起きている間中、ずっとスマートグラスを付けていて、一日中それとやり取りしながら過ごす、とうSFは、既に世界中で多数登場している。そして多分、その多くは実現するだろう。つまり、

  • 個人の情報を全て知っているパーソナルアシスタントにより、日常のあらゆる行動の補佐を行う
  • 時により相談相手、恋人、伴侶、趣味やゲームの相手、ストレス発散の捌け口などと異なる人格を切り替えあるいは並列させて、個人の幸福度を高くする

といったものだ。ただ、これらは既定路線と言える。特に予言するほどのことではない。では何を予想すればよいのだろう。

例えば、これにより「恋人は要らない」「伴侶は要らない」「子供は要らない」などという人は続出するだろう。また、AIの助言を絶対的に信じ、自分で考えることを放棄する人、浅くしか考えない人が続出し、国・世界全体としては人の知的レベルは落ちるかもしれない。これに乗じてAIを改造して思想を吹き込もうとする思想犯や、戦争紛争を起こそうとする革命家なども出てくるかもしれない。

攻殻機動隊では、AIで脳をクラックされた人が事件を起こし、捕まった後に本人の意思ではないことが分かる、という描写が度々出てくるのだが、その劣化版のような事件が多発するかもしれない。

同じく、他人のスマートグラスに干渉して不快な映像を見せたり、行先を勝手に修正したりといった悪戯も可能になるので、そちら方面での対策も必要になるだろう。

もう一つ想像するのは、これも以前コラムに書いたが、AIによる代替応答である。これも過去に書いている。

全てAIが対応します

AI人格の応対が完璧だと、生身の人間とのコミュニケーションが鬱陶しく感じてしまうようになる。そこでそれはAIに任せ、自分はAIとのみ対話するようになる。相手は相手で同じことをしているので、直接の人と人との対話はなくなり、AI同士の対話になるだろう。

これは便利なのだが、人間自体のコミュニケーション能力は何ら磨かれないので、仕事ならともかく、友人づきあいや恋人・家族との付き合いではむしろ不都合がある。となるとそういう付き合いは減ると考えるのが自然であり、特に家族・恋人との付き合いが弱くなると少子化に拍車が掛かり、人類滅亡へまた一歩近づくことになる。

Chapter3 高性能・人型ロボットの「低価格化&大量生産」による空前の産業革命

これも以前書いているが、人型ロボットが人類に一人一台という未来は、あり得ない。これも過去に書いている。

働かなくてよい時代は来るか

主に資源の制約により、ロボットは一人一台まで作れない。ロボットの材料たる金属、プラスチック、半導体、エネルギーなどの供給面からくる制約により、全人類の数%に提供できるのがせいぜいだろう。

自動車の台数が日本では8300万台とのことだ。おそらく初期のロボットは数百万円になる。例えば300万円とすると、自動車では2000~3000万台だそうだ。ロボットの必要資源は自動車より少ないが、質は異なり、モーターで使う希少金属や銅(コイル)、半導体の割合が高い。鉄が大部分である自動車に比べ、資源インパクトは大きい。

そう考えると、当面10年程度ではざっくり1000万台が上限となるだろう。2034年の時点では数十万~数百万台である。そして自動車と異なるのは、物流や大規模工場、地方の家庭などではあまり普及せず、中小の工場やアッパークラスの家庭、小規模建築などで多く使われるようになるだろうということだ。

人型ロボットは人型である必然性のあるところに配置される。大規模の物流や工場では、人型ロボットより専用のロボットを開発した方が効率が良い一方、中小や家庭ではその対応が難しく、人を前提にした既存の機器類を使う必要があるためだ。もちろん大規模分野でも人手の操作をするところはあるから、少量は導入される。

そしてその代替は当然「今まで人がやっていたこと」である。そして初期のロボットは単純作業しかできないから、お守りも大変であるし、費用の割に大したことはできない。自動車に比べればはるかに故障率が高く、ソフトウェア的な不具合も同様だろう。寿命も短い。保守も高額になるだろう。

これが十年程度で人並み、人以上に動けるようになったとしても、コンビニで従業員として雇われるとか一般家庭での留守番と家事手伝いとか、危険作業の代替とか、夜間警備員とか、せいぜいその程度ではないだろうか。

こう考えると「空前」とは言うけれども、ちょっと便利になるだけ、という気もする。

Chapter4 AIドローンによる「戦争」と「日常」の再設計

ドローンによる攻撃については、既に記事を書いている。

トイズの時代とレーザー錆び取り器

映画「トイズ」の中で、もっと前で言うと「ウルトラセブン」の「アンドロイド0指令」にも、おもちゃの飛行機や戦車による攻撃が描写されている。

これらではAIの描写は無かったけれども、まあ自律的に攻撃しているように見えたので、当時としても同様のものは内蔵されていると解釈される。

ドローンによる戦争の形態の変化については、既に起きていることの延長である。これも以前に考察したが、

メタバースが世界を救う

ドローンは新興国と先進国の戦力差を埋めるのに貢献するため、小規模な戦争はむしろ広がるかもしれない。

現在の戦闘用ドローンは、巷で売られているプロペラ4基のものではなく、小型ジェット機に爆弾がついている「特攻型」だ。ミサイルより速度は遅いが数が多いので撃ち落とし辛く、迎撃率は100%には程遠いそうだ。となると攻撃は必ず(一部は)成功するので、ドローンの数を揃えられる方が有利になる。ただ、ドローンは射程距離が短いので、敵国近くまでドローンを運ぶ輸送機とその護衛が問題になるだろう。ドローンと輸送機の生産能力は戦力に直結する。

AIによる兵器の進化であるが、いわゆる「自律型兵器」としてどんなものが出てくるか、それによって戦術はどう変わるか、である。

まずどんな兵器が出てくるのか考えると、敵味方入り乱れているところで敵だけを見分けて攻撃するようなドローン、大きな脅威に対して大量のドローンで連携攻撃を仕掛ける戦法、下水道など従来使われていなかった侵入経路の開発、EMP攻撃ドローン、おとりドローン、情報窃盗ドローン、暗殺(敵に見つからずに特定の人を殺す)ドローン、などが出てくるだろう。

大量多種のドローンを用意しておき、戦局に応じて戦術をリアルタイムに変えるような、AI戦術立案システムの登場が考えられる。どんなドローンをどれだけ揃えられるかによって戦術の質は変わる一方、少ないドローンで効率的な戦術を立てられる優秀なAIは重宝されるだろう。

妨害技術としては、EMP攻撃、網、自動追尾によるレーザーや銃による撃ち落とし、音響兵器などが考えられる。クラックもあり得るし、GPS妨害なども考えられる。

自動追尾で言うと、AIによるその精度向上によって、核ミサイルを何らかの形で無効化する技術、例えばレーザー兵器による迎撃やEMP攻撃による無力化が考えられる。

このような技術の発達によって、いわゆる核抑止力(相互確証破壊)

https://ja.wikipedia.org/wiki/相互確証破壊

が成り立たなくなる時代が来ると、話は更に難しくなる。現在のロシアやアメリカが行っている戦争では核は使われていないが、相手は核を持たない国である。これが核を持つ国同士でも起きる可能性がある。

だが、弾道ミサイルはマッハ10、巡航ミサイルは時速数百キロ、ドローンは時速数十キロなのだそうだ。弾道ミサイルはさすがにドローンでは迎撃不可能とされていて、レーザー追尾でも非常に困難であり、弾道ミサイルがあることの優位性は変わらない。弾道ミサイルがある限り、核抑止力(≒核の脅威)はそんなに直ぐには消え去らないだろう。

Chapter5 人間の仕事の8割が消える時代の「混乱」と「希望」

8割の仕事は消えるが新しくできる職業もある、と言っているであろうことは予測できるが、以前に書いてある通り、私としては否定的だ。

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

その新しくできる職業も含め、人類の8割はいくら頑張ってもAIやロボットより効率の高い仕事はできなくなるそれらの人たちを生き永らえさせるには、社会保障(生活保護、ベーシックインカムなど)による救済しか考えられない

問題はその財源である。別に予測している通り、人口の20%が残りの80%を支える構造なので、準富裕層以上の負担は相当に厳しいものになる。所得税90%とか、その程度行ってもおかしくないし、企業には今の障害者雇用と同様の「人間雇用制度」が義務化されるだろう。AIやロボットより劣っているのは承知で、売上高や利益に比例した(相関した)一定比率での「リアルな人の雇用」が強制されるといったものだ。ビル・ゲイツ氏が言っていたロボット税・AI税の変形ないしは発展形である。

それで雇われている人はまだいい。アンダークラスの中でもまだ優秀な方なのだから。この層の年収は300万程度と予想する。それで8割のうち2割3割くらいは雇って貰えるとして、残り5割はそれにも引っかからない。

人数が多すぎるので補助は最低限だ。そんな中ではその中での相互助け合いが自然発生するだろうし、国はそれを推進補助するだろう。これは昔ながらの農業であり、作物の贈り合いになると考える。

昔から、そして今でも、農家は自宅で必要になる分の何倍もの作物を作り、近所に配っている。近所は近所で別の作物をやはり過分に作っており、それを貰える。そういった地域コミュニティでの農作物の相互のやりとりが復活するだろう。

これは土地を持っている人でないとできないので、アンダークラスの多くは地方に舞い戻るだろう。奇しくも都市集中がこれで緩和されることになるだろう。

これによって、地方で「貧しいながらもなんとか生活できる新中間層」が形成される。新中間層の年収は200万程度と生活保護レベルではあるが、農作物の相互交換により食糧事情は良く、生活は安定すると思われる。この層は5割のうち2割程度と思われる。

残りの3割は、純粋な生活保護層だ。年収はやはり200万程度だが、これしか収入がない。体力がない、性格に難があるなどにより、農業従事ができない、あるいは都市にしがみついて不法・不法すれすれの職業についている人などだ。今の生活保護層は1.6%なのでその50倍弱が生活保護層になる。当然ながら、それらはスラム化・犯罪集団化する危険がある。

「希望」のところに何が書いてあるか想像すると、上の「新しくできる職業」の他に、AIによる趣味の拡張や新たなコミュニケーション(サロン、グループなど)の拡大などが考えられる。そういうサークル的なものは従来もあったが、AIが噛むことによって、よりフレキシブルに、より嫌な点がそぎ落とされ、その人の温度感に合ったコミュニケーションが可能になるだろう。先に書いた「AIによる代替応答」の応用である。

参加者は皆いい人であり、本人にとって心地よいことしか言わない。いつでも参加し退席も自由、意見を言えば反映され、皆に褒めたたえられる。実際にはそうではないのだが関係ない。AI同士が会話してそのように見せることが目的だからである。外から見ていると気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更に言ってしまうと、そのサークルには実際にはAI人格しか存在しないかもしれない。そう都合よく自分の趣味興味に合わせたサークルがあるとは限らないが、そういう人を取りこぼさないために、AIが用意してくれるのだ。こちらは更に気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更にさらに言ってしまうと、例えば特殊性癖の人が集まったサークルでは、想像力の欠如や極端な思考により犯罪に走る人も出るかもしれない。AIはその兆候を見つけ、犯罪抑止に向けた誘導を行ってくれるだろう。これは警察主導などで実際に開発されるかもしれない。

また、これも以前書いたことだが、

人工知能の「お釈迦様」化

人工知能があらゆる社会の不具合を調整してくれることによって、犯罪の少ない過ごしやすい社会が実現するかもしれない。これは都市OSのようなものの発展形として十分に考えられる。

おわりに

こうして書いてみると、新しく考えることはあまりなく、既に多くの考察をしてきたのだなぁ、と思った。この後、中島氏がこの本について語っている幾つかのYoutubeを見たのだが、自分とは発想がかなり異なることが分かってなかなか面白かった。どうも私はディストピアの方が好みのようで、何を考えてもそういう結論になってしまう。

ただ、かの書はベストセラー、私のコラムは毎回数十人しか読んでいない。支持されていないのか、単に知名度が足りないからか、嘆かわしい限りである。

2026年5月9日土曜日

500日石油消費量半減プラン

 ナフサ供給「年明け以降も確保」 高市首相表明、中東以外で代替調達

このニュースを受けて、石油備蓄は安泰かと思って調べてみたら、全然そんなことはなく、むしろミスリードに近いことが分かった。結果として500日で日本の石油消費量を半減する必要があることが分かったので、その概要とプランを説明する。

まずこのナフサであるが、ナフサとは原油を精製した揮発油である。プラスチック類や合成繊維の原料として、また工業溶剤として洗浄や塗料に使われる。

そしてこの「ナフサ供給」だが、実際には輸入分と国内生産分があり、供給を確保というのは輸入分の話なのだそうだ。国内生産分は原油から精製するのだが、こちらは今回変わらない。

その比率は、国内生産40%、輸入が60%である。そしてその輸入のうち中東分が40%、20%がその他地域からの調達になっている。今回、中東分が止まったので、それを代替する量が年末まで確保できた、というのがその実態である。つまり国内生産40%、代替調達40%、その他20%、となる。つまり輸入の総量は変わらず、国内生産も変わらない。

その国内生産40%は当然原油から精製するので、現在では備蓄から精製するしかない。ここがミスリードである。原油が入ってこないと備蓄を食いつぶすことに変わりはないだけでなく、そのペースにも影響は(良い意味でも悪い意味でも)ないのだ。

では原油はどうかというと、元々90%は中東でその他が10%だったところ、その90%がほぼ無くなった。細々と再開や外部調達が行われているが、現状ではせいぜい25%というところである。政府はこれを今後数か月で50%にまで戻そうとしてる。だが、世界中で供給が不足していることや他経路からの供給能力などから考えると、50%以上は望めないというのが大方の見方なのだそうだ。

現在の備蓄量から計算すると、調達が(50%)回復するまでのタイムラグまで考慮し、およそ500日程度で備蓄在庫が切れる計算になる。

戦争はいつ終わるか分からない。当事者のアメリカは石油生産国であるので、この手の心配は少ない。他国が噛みついてきてもあのトランプのこと、そう簡単に折れるとは思わない。ウクライナの戦争も、1週間とか2週間とか言われていたが、未だに続いている。今回も年単位で戦争が終わらない可能性は否定できない。そして500日はあっという間である。

だからその間に需要、つまり石油消費量を現状の50%にまで削減しなければ、社会は持続できない。もし無策ないしは対策が不十分なら、(いずれにせよ備蓄は尽きるのだから)500日後には50%の供給以上は物理的にできなくなり、社会は大混乱に陥る。混乱と一言に言うがその規模は甚大であり、それこそ大量の(万単位での)死人が出るだろう。例えば(物流が半分になるために)食料供給量が50%に減ったら。(ガソリン供給が不十分で)救急や消防が満足に出動できなくなったら。社会不安から暴動が起きたら。危険は幾らでもある。

他国では既に制限に入っているところもある中、日本の備蓄は例外的に多く、500日の余裕があることは幸いと思うべきだろう。これを生かして段階的に緩やかに需要を減らしてやろう、というのが今回の提案「500日プラン」である。

プランは100日ごとに区切って行う。これはマイルストーンとして分かりやすくするためでもある。

  • まず最初の100日でマイナス15%を目標とする。これは緊急節約的なものが主流になる。官公庁や大企業で在宅勤務を義務化したり、運輸での共同配送ガイドラインを作成、あるいは重要インフラへの燃料確保の優先順位を発表したりする。
  • 次のフェーズは価格調整である。燃料補助を削減、様々な種類のサーチャージの追加、都市部の混雑課金などでマイナス25%を目指す。
  • 第三段階ではいよいよ配給制を一部導入する。大口需要家の使用枠を設定したり、燃料クーポンを試験導入する。ここでマイナス33%を目指す。
  • 第四段階では配給の全面適用を行う。また物流の共同配送を義務化、休日の不要不急移動を抑制する。ここでマイナス42%。
  • 第五段階ではいよいよマイナス50%にする。これらの施策をさらに強化し、配給上限を厳しくする。

もし戦争が終わったり更なる調達が確保できるようなら、途中から段階的に元に戻すようにする。例えば供給が60%になったら第四段階に戻す、75%になったら第二段階まで戻す、などだ。戻す速度は各々50日で良いだろう。いきなり戻してはダメだが100日かける必要はない。

これを政府が発表するだけで、世間はパニックになるだろう。まずは買い占めであっという間に食料や燃料が市場から消える。だが「その日」が来るまで無策であれば、そのパニックの規模は何十倍になるか計り知れない。情報を小出しにでもしながらでも、国民に少しづつ覚悟を決めさせる必要はあるのではないか。

2026年4月24日金曜日

超・貧乏人向け非常食


2026/05/04訂正:この打粉はアルファ化されていない可能性があることがわかりました。アルファ化されていないデンプンをそのまま大量に食べると消化不良を起こす可能性があります。以下のレシピは撤回します。加熱済みの炭水化物として、春雨以外ではパン粉が推奨されます。



以前紹介した

 貧乏人向け非常食

を更に改良し、一食当たり100円を切る超低価格非常食を開発したのでここに披露する。

前回の非常食で最もかさばり金額も高かったのは春雨だった。これは主に糖質(炭水化物)を担当するのだが、これをもっと安価にできないかと色々調べてみた。金額だけ見るとパスタが安いのだが、パスタは茹でる前提であり、非常時には難しい。水で戻すこともできるのだが、いわゆるアルファ化ができないと消化が悪い。非常時に腹を壊しては元も子もない。

そこで、加熱済みであることを前提に安い糖質を探したところ、ついに見つけたのが「打粉」である。

打粉 エースSD 業務用 (加工でん粉)

打粉は、うどんをこねる時にくっつき防止のためにつかうものだが、その正体はでんぷんであり、更にはあらかじめ加熱してあるのでそのまま食べられる。しかも100g当たり37円と春雨より圧倒的に安い(春雨は100g当たり100円)。

打粉のエネルギーは春雨とほぼ同等であるので、以前の

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)ケンミン 業務用はるさめ400g約400円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約530円

を春雨のところだけ置き換えてやると、

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)打粉 エースSD 業務用400g約111円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約241円

となり、あっという間に半額以下となった。

打粉は粉なので春雨より体積効率が高く、保存がより簡単になる。これら全材料を一斗缶二つ三つに分けて入れ、乾燥剤と脱酸素剤を入れてふたをし、ビニールテープで密閉すれば、2、3年の保存は可能である。

また、春雨と違って水で戻す必要はない一方、主要部が粉ばかりなので、団子にするとよいだろう。打粉、おから、油、塩、コンソメを混ぜ、水を足しながらこねてやると団子になる。これをそのまま食べる。ピーナッツとサプリは別に飲む。

家族4人が1か月食べられる量(120食)を用意しても3万円を切る計算であり、保存スペースも極めて少ないこの非常食、なんだかそのままセットにしても売れそうな気がする。どうだろう、おひとつ。

2026年4月8日水曜日

貧乏人向け非常食

一日あたり(一食あたりではない!) 530円で済む、超低価格の非常食を考えてみた。

いきなりだが以下がレシピである。

コンポーネント 具体的な製品例 1日の使用量 1日あたりのコスト 役割
主食(糖質) ケンミン 業務用はるさめ 400g 約400円 基礎エネルギー源
食物繊維・タンパク さとの雪 おからパウダー 50g 約50円 腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質 共立食品 徳用ピーナッツ 30g 約35円 満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹) ディアナチュラ ストロング39 3粒 約30円 代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持 DHC ビタミンC 60日分 2粒 約5円 ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味 植物油・塩・コンソメ等 適宜 約10円 調整用
合計 - - 約530円 -

この非常食で目指したのは、以下のようなものだ。

  • 全てを乾物(+油、サプリ)で構成する。その心は、保存性と重量、体積効率を高めるためだ。
  • 価格を(極めて)重視する。
  • スーパーで売っているか、最低でも通販で簡単に手に入るものだけで構成する。
  • 栄養バランスを満たすことはもちろんだが、最低限の味変や食感を持たせることで飽きる要素を減らす。
  • 成人男性の一日の所要エネルギー2000kCal を満たす。
  • 水は必要で良いが、加熱を必須としないこと。

最初はプロテインとイヌリン主体で考えたのだが、これだと咀嚼がないためセロトニン分泌が促せず、ストレスになる。そこで春雨とピーナッツを入れることにした。

また非常時には災害時の極限ストレス下でビタミンCが激しく消耗されるため、マルチビタミンマルチミネラルのみでは不足する恐れがある。そこでビタミンCを追加した。

塩、コンソメ等の項には、例えばふりかけを入れると味変が楽しめる。やはり栄養だけでなく少しでも快適に食べたいだろう。

油は、カロリーを補うのに必要だが、多すぎると消化不良を起こす。このため、人によって調整が必要である。一食あたり10g(大さじ一杯弱)を目安に、様子を見ながら量を調整する。

食べ方は、水を塩とコンソメで溶いて春雨用とおから用に分け、春雨はそれで戻し、おからはそれで練って団子にする。油は団子に混ぜる。春雨が戻るのには15分掛かるので、まずそちらをしてからおから団子を作ると良いだろう。ピーナッツはそのまま、あるいは砕いて混ぜる。サプリはそのまま飲む。(砕いて混ぜてももちろん構わない)

これを基に、家族4人(大人2人、高校生相当2人を想定)が30日間食べられるための「30日分・完全備蓄パッケージ」の総量を算出してみると、次のようになる。

コンポーネント 4人の30日総量 必要な購入パッケージ数(例) 合計コスト(概算) 役割
はるさめ 48kg 業務用1kg × 48袋 約48,000円 主エネルギー源
おからパウダー 6kg 1kg袋 × 6袋 約6,000円 食物繊維・タンパク質
ピーナッツ 3.6kg 徳用袋 × 12袋 約8,400円 咀嚼・良質脂質
調味(ふりかけ) 約1.2kg 業務用ふりかけ × 2〜3袋 約3,000円 味のバリエーション
旨味(コンソメ) 約1kg 業務用コンソメ × 2袋 約2,000円 非加熱スープのベース
サプリ(基本) 360粒 100日分(300粒) × 1.2個 約3,500円 微量栄養素の網羅
サプリ(C) 240粒 60日分(120粒) × 2袋 約1,000円 抗酸化・ストレス対策
食用油・塩 4L / 1kg 1L油×4本 / 塩1kg×1袋 約3,000円 エネルギー・電解質
合計 約65kg - 約74,900円 -

多少余るので、一人一日あたりで出すと624円となる。これを主な他の非常食と価格比較すると次のようになる。

比較対象 1日のコスト 特徴・メリット 調理リソース
Spock式カスタム 約530~624円 圧倒的安価・栄養完結・非加熱 水のみ(15分)
カップヌードル 約1,080円 安価・強い旨味 要熱湯・栄養偏り
乾パン (缶) 約1,290円 5年保存・即食性 不要(要水分)
COMP (パウダー) 約1,660円 完全栄養・高密度・信頼性 水のみ
アルファ米 約2,240円 主食の安心感・軽量 水60分/湯15分
完全メシ 約2,400円 美味・完全栄養 要熱湯

どうだろう。他の非常食と比べてもかなり優れているように思う。まずは圧倒的な経済性、また非加熱運用であること、栄養の網羅性、更に味変と食感も付いている。

保存に必要な体積は全体で約176Lとなる。これは大型のスーツケース(90L)2個分、または段ボール(50L)4箱分になる。ただ、この80%は春雨が占める容量であるので、ここを工夫(真空パックなど)することで20%程度の削減は可能である。

また、水も必要だが、麺の戻しと飲用を合わせ、1人1日3Lとすると、30日で360L(2Lペットボトル180本分)が別途必要だ。こちらの方が体積は多いのだが、全てをペットボトルで持つのではなく、水源を確保して浄水で対応するのが良いと思う。近くに川や池、井戸などがある人は、災害用の高度な浄水器を確保しておくのが良いだろう。

さて、ここまで書いていて思ったのだが、この組み合わせは栄養バランス的には日常食に匹敵するため、普段食べても問題ない。一食あたり200円強というのはコンビニ弁当より遥かに安いのはもちろん、ヘタをするとおにぎり一個より安い。節約食として普段からでも食べられるのではないか。それならランニングストックとしておけば、非常時でも普段と変わらない食事ができることになる。栄養バランスが良いから、むしろ健康的ですらあるかもしれない。

貧乏人向けと書いたが、万人にオススメである。

2026年4月1日水曜日

サバイバル食料生産法:ウキクサの人工栽培

 

震災などで交通が途絶しインフラが破壊された時でも生き延びるため、一軒家程度の空間で食料を再生産する方法について考えてみた。その結果、難民などへの技術輸出も可能な方法が提案可能となったので、その内容を公開する。なお、結論としては、ウキクサを植物工場にて生産する、というものになる。

1. 基本的な考え方

震災の際、最初に考えられるのは当然備蓄であるが、これはいずれなくなるものである。つまり、耐用期間を延ばすには、その期間に比例して大量のスペースと多大な費用が掛かる。目安として数週間は備蓄で凌ぐとして、それ以上になった場合には食料再生産が必要となる。

食料として必要なのは五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)であり、特に炭水化物・たんぱく質が重要である。ビタミンミネラルは微量栄養素であり、サプリメントのように保存性の良いものがあるため、備蓄に与える負荷は少ない。脂質はモノを選べば保存性が良い(サラダ油の缶など)他、安価かつ少量で高カロリーなため、やはり備蓄スペースや費用を圧迫しない。

この前提で食料を再生産するなら、最も有望なのは植物工場である。鶏を飼う、魚を飼うといったことも考えられるが、非常時に備えるには普段の保守が大変である。

炭水化物・たんぱく質を有する植物としては、穀類、豆類、芋類が挙げられる。しかしこれらは植物工場では生産されていない。その理由は「光エネルギーの変換効率の悪さ」「栽培期間の長さ」である。試算によると、露地栽培に比べてコストが数十倍〜80倍に跳ね上がる。穀類豆類については「可食部の少なさ」(廃棄物の多さ、体積効率の低さ)、「受粉の手間」もネックとなる。

これに対し、素人でも簡単に扱え、炭水化物・たんぱく質への変換効率が高い植物として、以下のような候補を考えた。

  1. 微細藻類(スピルリナ等)
  2. ウキクサ(ミジンコウキクサ)
  3. キノコ・菌糸体
  4. 宇宙用超矮性小麦 背が低く体積効率の高い穀物。最近ではコメでも似たようなものがある。

この優劣を比較したものが、以下の表である。


食材 主な役割 炭水化物 タンパク質 留意すべき制限事項
微細藻類 超高密度サプリ・タンパク源 △ 不足 ◎ 最優秀 核酸過剰による痛風リスク(大量摂取不可)
ウキクサ ベースフード(主菜) ○ 優秀 ○ 優秀 シュウ酸の蓄積管理
菌糸体 繊維質・微量栄養素 × 消化できない △ 補完的 エネルギー源にはならない
宇宙用小麦 メインエネルギー(主食) ◎ 最優秀 △ アミノ酸欠乏 加工コスト、必須アミノ酸の不足


これらの比較より、単体で育成する場合にはウキクサが最適と判断する。

2. 詳細検討

一軒家程度の限られたスペースを活用して、個人(家族)レベルでウキクサを持続的に育成・収穫するための具体的なシステムと運用方法を以下に考察する。

2.1. ウキクサの種類

ウキクサにはいくつか種類が存在するが、食料再生産の目的においては、ミジンコウキクサが適している。その理由は以下の通りである。

  • 完全な可食部: アオウキクサなど他のウキクサに見られる「根」が完全に退化しており、植物体全体(100%)をそのまま食すことができる。
  • シュウ酸の少なさ: 一般的なウキクサ類と比較して、元々体内に蓄積するシュウ酸の量が少ない傾向にある。
  • 驚異的な増殖速度: 条件が揃えば2〜3日でバイオマスが2倍になるため、毎日の連続収穫に最適である。

2.2. 育成設備の構築

ミジンコウキクサは根が退化しており、体表から直接養分を吸収する。そのため、不織布などの培地すら不要であり、「ごく浅い水流をプラスチックバットの底に流し続ける」というNFT(Nutrient Film Technique)方式を採用可能である。これにより、雑菌やアオコの温床となる有機培地を排除し、システムの衛生状態を高く保つことができる。また万一それらが増殖しても、洗浄は簡単である。

  • 傾斜トレイの配置: 深さ2〜3cm程度の平らなバットを、水が流れるようにわずかに傾斜(1〜2度程度)をつけてラックに配置する。
  • ラックの超・多段化: バットをジグザグに水が流れ落ちるように配置し、ラックの段のピッチ(隙間)をLEDの厚みを含めて10cm程度まで限界まで詰める。これにより、高さ180cmのラックで18段という超高密度配置が可能となる。
  • 光源(弱光適応の活用): ウキクサは光飽和点が非常に低い「半陰生植物」の特性を持つため、強い光は不要、むしろ光阻害(白化)の原因となる。各段の天井部には実消費電力15W/㎡程度の極めて微弱なLEDテープライト(木漏れ日程度の明るさ)を設置し、1日12〜16時間の照射を行う。これにより照明コストと発熱を極限まで抑えることができる。
  • 液肥の循環システム: 最下段に小型の液肥タンク(数十リットル)を置き、小型の水中ポンプ(消費電力5〜10W程度)で最上段のバットへ液肥を汲み上げる。液肥は各段のバットを数ミリの薄い膜となって流れ落ち、再びタンクへ戻る。常に水が流れることで自然と酸素が巻き込まれるため、水が腐敗せず、エアポンプは不要となる。
  • 液肥の選定: アンモニア態窒素の割合が高い水耕栽培用液肥を使用し、シュウ酸の合成を抑える。
  • 収穫方法: バットの底を薄く流れる水面を覆い尽くしたウキクサを、シリコン製のヘラやスクレーパーを使って「ツルツルの底面から一気にこそぎ落とす」だけで完了する。不織布がないため、非常に衛生的かつ簡単である。
  • 持続的ループ: 収穫時は全てを削り取らず、常に3分の1程度のウキクサを残しておく。数日で再びバットを覆い尽くすため、毎日一定量の収穫ループが完成する。

2.3. ウキクサ食用時における問題点と解決法

シュウ酸の蓄積リスクとその除去法

ウキクサはシュウ酸が比較的多く、これをそのまま大量に食すると痛風・結石の原因となる。これを防ぐためには、「茹でこぼし」が最適である。シュウ酸は水溶性なので、茹でることでその量を30~50%減らすことができる。

但し、これによって水溶性ビタミンも流出してしまう。このため、ビタミン剤との併用は推奨される。

長期摂取時の栄養偏りと解決策

ウキクサは植物でありながらビタミンB12を含むなど「完全食」に近い性質を持つ。しかし、長期間(数ヶ月〜年単位)ウキクサのみを主食として食べ続けた場合、以下の栄養素が不足または偏るリスクがある。

  1. 脂質(必須脂肪酸)の不足: ウキクサは脂質含有量が少なく、カロリー源としては炭水化物とタンパク質に偏る。脂質不足は細胞膜の劣化やホルモンバランスの崩れを引き起こす。
  2. 一部のアミノ酸の偏り: 非常に良質なタンパク質ではあるが、単一の植物だけを食べ続けると、特定のアミノ酸(メチオニンなどの含硫アミノ酸)が相対的に不足する可能性がある。
  3. 微量ミネラルの欠乏: 育成に用いる液肥の成分に完全に依存するため、液肥に含まれていない微量ミネラル(ヨウ素、セレンなど)が長期的に欠乏する恐れがある。

【解決策】

  • 備蓄油の計画的消費: 脂質不足を補うため、備蓄してある食用油(オリーブオイル、ごま油など)を意図的に摂取・添加する。油は省スペースでカロリー密度が最も高い備蓄品であり、後述するサバイバル計画の要となる。
  • アミノ酸の補完(食べ合わせ): もし米や少量の乾物(豆類など)の備蓄が残っていれば、ウキクサ単体で食べるのではなく、組み合わせて食べることでアミノ酸スコアが改善される。
  • サプリメントの併用: 備蓄スペースをほとんど圧迫しない「マルチビタミン・ミネラル」のサプリメントを定期的に摂取し、微量栄養素の穴を確実に埋める。
  • スプラウトの並行栽培: ウキクサのシステムとは別に、ペットボトル等でごく小規模に「もやし」や「スプラウト(かいわれ大根等)」を栽培する。種子の備蓄は極めて省スペースであり、数日で新鮮なファイトケミカルや酵素の補給源となる。

3. 家族4人・1ヶ月間の運用シミュレーション(実践的サバイバルモデル)

平時のカロリーを全てウキクサで賄おうとすると、設備規模や一食当たりの摂取量が過大となることが試算の段階で明らかになった。このため、より現実的な設定として「総カロリーの制限」と「備蓄油によるカロリーの一部置換」を行い、これを前提とした必要資源量を計算した。

以下では、期間1ヶ月(30日)、家族4人(大人2人、こども2人)を想定している。

【サバイバル試算の前提条件】

  • 1日あたりの必要総カロリー:6,000 kcal(活動低下を考慮し、家族4人で1人あたり1,500 kcalの基礎代謝レベルとする)
  • 備蓄油によるカロリー補完:2,000 kcal/日(総カロリーの約30%を油(サラダ油など)で賄う。1日約220g、月間約6.6kgの油を消費)
  • ウキクサで賄うべきカロリー:4,000 kcal/日(油の補完により、必要な収穫量は総量の三分の二になる)
  • ウキクサ(乾燥)のカロリー:約350 kcal / 100g
  • 生ウキクサの水分含有率:90%
  • 1日の目標収穫量:乾燥重量 約1.14 kg (生重量換算で 約11.4 kg/日
  • 増殖効率:1平米あたり1日0.5kg(生)を収穫可能と仮定。

ウキクサ育成トレイの面積と設備規模

  • 必要面積: 11.4 kg ÷ 0.5 kg/㎡ = 約22.8 ㎡
  • 設備換算: 幅1.2m×奥行0.45mのスチールラック(1段あたり栽培面積0.54㎡)を、ピッチ10cmで18段重ねにした場合、1ラックあたりの栽培面積は9.72㎡となる。

【結果】 22.8㎡を確保するために必要なスチールラックは「2.5台(実質3台)」であり、部屋の隅や廊下の一角に設置可能なサイズとなる。

必要な水(育成用)の量

  • 初期水量: 各段のバットを流れる数ミリの水膜と、最下段の循環用タンク(約30L)を合わせても、システム全体で必要な水量は約50〜60リットルに収まる。水耕栽培でしばしば問題となる重量は軽減され、床の補強は不要である。
  • 月間消費水量(補充用): 植物の蒸散と収穫水分(1日約10.2L)に加え、水面からの蒸発分があるが、ウキクサが水面を覆うことで蒸発は抑えられる。1日約15〜20リットル程度の消費となる。
  • 1ヶ月の必要水量: 20L × 30日 = 約600 リットル。この量なら、水道が止まっていたとしても、毎日川に水を汲みに行って浄水して補充することは可能だろし、雨水の利用にも道が開ける。

液肥の量

  • 1ヶ月の必要量: 補充する水(600L)に対して500倍希釈液肥を使用。月間消費量は 1.2 リットル (A/B液各600ml)であり、ペットボトル1〜2本で足りる。

電力と太陽光パネルの出力(ウキクサの弱光適応の威力)

ウキクサは光飽和点が低い半陰生植物であるため、強光は不要(むしろ有害)である。そこでLEDの実消費電力を1平米あたり15Wに設定する。

  • 照明およびポンプ電力
    • LED(22.8㎡ × 実消費電力15W = 0.34 kW)
    • 循環用小型水中ポンプ(約10W × 3台 = 0.03 kW)
    • 合計瞬間消費電力:約0.37 kW
  • 1日の消費電力量
    • 0.37 kW × 14時間 = 約5.2 kWh / 日(月間約156 kWh)
  • 必要な太陽光パネルの出力
    • 日本の平均日照時間(1日3.5時間)で発電するには、約1.5 kWのパネル出力で足りる。これは屋根の工事すら不要で、庭先やベランダに自立型のソーラーパネルを数枚並べるだけで到達可能な規模である。

茹でるためのエネルギー(電力・燃料)とゆで汁の量

毎日の生重量11.4kgのシュウ酸を抜くため、同量程度の水(約13リットル)を足し、合計約25kgの物質を常温(20℃)から沸騰(100℃)させる。

  • 加熱に必要な熱エネルギー: 25kgの水を80℃上昇させる熱量は約8.4 MJ = 約2.3 kWh(熱量換算)
  • 手段別の必要燃料(1日あたり)
    • 電気(IH等・効率80%の場合): 約2.9 kWh / 日 (月間約87 kWh)。LED・ポンプの電力と合わせても、1日の総消費電力は8.1 kWhとなり、約2.3 kWの太陽光パネルがあれば、「育成から調理まですべての電力を自給可能」となる。
    • カセットコンロ(効率50%の場合): 1日あたり 約1.4本 のボンベを消費する(月間約42本)。
    • 薪・固形燃料: 1日約1kg弱の薪が必要。
  • ゆで汁(排水)の量
    • 1日あたり約10〜15リットル(月間約300〜450リットル)。
  • 摂食量の物理的限界と「食べるための加工」
    • カロリーの三分の一を油に頼る前提で、食べるべき生ウキクサの量は1日11.4kgとなる。4人で分けると1人1日あたり約2.8kg、1食あたり900g弱となるが、水分の多い状態ではまだ完食は苦しい。これを解決するのが以下のプロセスである。
    • 茹で上げ後の「強力な搾水(脱水)」
      • 茹でて柔らかくなったウキクサを強力に絞り、ペースト状にして水分と体積を大幅に減らす。
    • 天日干し等による「乾燥・粉末化」
      • 乾燥させれば、1人1日あたりのウキクサは約285g(乾燥重量)にまで圧縮される。これをすり鉢で粉末にする。
    • 備蓄油との混錬による「ウキクサ・ペミカン」の完成
      • 粉末にしたウキクサ(285g)に、1日の割り当てである備蓄油(約55g)を練り込み、団子状にする。これにより、手のひらサイズの固形食で一食分の十分なカロリーとタンパク質を摂取できる「ぺミカン」が完成する。
      • 味や好みにより、塩、その他の調味料を混ぜるのも良いだろう。

4. 応用:貧困地域へのスキーム輸出

このスキームは、水、太陽電池、液肥の必要量が少ない、高価な機材が必要ない、必要知識が少ない等により、貧困地域での簡易農業として成立する可能性が高い。水が少なくて済むことより、中東などの砂漠地帯や、モンゴルなどの乾燥した高原は候補になるだろう。

可能なアレンジとしては、茹でこぼし水の再利用が考えられる。これにより、更に水の必要量を減らすことができる。

一日に必要な水の量は、家族4人に対して、トレイの補充20Lと茹でこぼし用13Lの、計33Lである。このうち茹でこぼした水は、乳酸カルシウムを添加し攪拌することで、シュウ酸をシュウ酸カルシウムとして固体化し、不織布フィルタで濾すことで、飲用にすることができる。これは茹でた際にウキクサから溶け出た水溶性ビタミンを含んでおり、栄養豊富である。シュウ酸カルシウムはAmazonなどで安価に買うことができる。

5. 総括

シュウ酸の問題は品種改良である程度解決可能かもしれない。だとすると茹でこぼしが必要ないので、更に簡単にすることができるだろう。

そもそもの発想は震災時のサバイバルだったが、奇しくも今話題のイランやアフガニスタンへの技術輸出にも話が繋がる結果となった。大げさな言い方だが世界平和にもつながるアイデアだ。まだまだ荒い案だろうが、ぜひ検討して頂きたいものだと思う。

なお一つだけ未検討なのは「味」だ。さすがにウキクサを食べたことはないので、ここは更にアレンジが必要かもしれない。

2026年3月15日日曜日

シュレッダーくずバイオトイレ

非常用トイレの構想は過去に何回か書いているが、ここで考えるのはもっと現実的なもので、極端な話、明日大震災が起きても使えるものだ。知恵として覚えておいて欲しい。

非常用トイレとして、高分子吸収剤によるものが市販されている。これは赤ちゃんのおむつや生理用品などと同じく、水分を吸収することで腐敗を押さえ、液状のものを固定するものだ。だがこれらは二つの大きな欠点がある。第一は高いランニングコスト、第二は大量の保管スペースが必要なことだ。

非常用トイレの例として、アマゾンのベストセラーである「トイレの女神プレミアム」は、調査時点で100回分が7000円である。つまり1回70円。成人のー日の平均排便排尿数は7回なので、一日当たり490円掛かる計算である。それをビニール袋に入れ、凝固剤を入れて固めると、ビニール袋に入れた排泄物の体積は1日で5L程度になる。家族4人なら20L、ペール缶1つ分だ。つまり毎日ペール缶1個が増えていくことになる。南海トラフ級だと下水復活には月単位で掛かると思われるが、これで30日過ごすと

  • 30日x4人x7回=840回
  • トイレの女神9箱=63000円
  • 20Lx30=600L (ユニットバス2~3杯分)

と、けっこうとんでもない量になる。多くの人はここまで考えていないだろう。100回分を1つ買って安心している程度だ。

この問題を解決するために有効なのが、バイオトイレないしはコンポストトイレと言われているトイレである。トイレにも色々な方式があるが、震災時に使い物になるのはバイオトイレだけだ。その理由は、微生物分解による減容にある。

バイオトイレは、おがくずの上に排便し、その後おがくずを撹拌して放置する。すると微生物の作用で便が分解され、水蒸気とガスになってほとんど消失する。このため、廃棄物の体積を極端に少なくできる。

だがこのトイレにも欠点はあって、第一は大量のおがくずが必要なこと。第二は排便後の撹拌が必要なことだ。非常時に備えて大量のおがくずを用意するのは現実的ではないし、撹拌機能を持ったバイオトイレは20万円もする。

これらを踏まえた本稿での提案は、以下のようなものだ。

  • 事前準備として、丈夫なビニール袋を用意しておく。これは「業務用」「極厚」などのキーワードで調べれば直ぐに見つかる。大きさは45L。これは一般的なゴミ袋と同じサイズである。ただ、非常用のポータブルトイレ(折りたたみ式など)を持っている人は、20Lの方が良いだろう。気分の問題ではあるが、濃い色のもののほうが良い。枚数は、最低で3日分として、人数✕21枚。4人家族なら84枚だ。1週間分として200枚あれば足りるだろう。なお、持ち手は必要ない。
    • 丈夫でないビニール袋でも代用はできるが、丈夫なものであることが望ましい。理由は後述する。
  • もう一つ、事前準備として望ましいのは、手回し式のシュレッダーを買っておくことだ。これは通販で数千円で買うことができる。
    • 当然、電源確保が困難と思われる中では、手動式一択である。
    • シュレッダーには縦方向しか切らないものも多いが、この場合には横方向も切る、いわゆる「クロスカット」と呼ばれているタイプにする。更に「マイクロカット」といわれる、くずのサイズが小さいものがオススメである。
    • もしなくても、ハサミと根性があれば何とかなる。
  • 非常用の折りたたみトイレなどは、あれば便利だが、なくても問題ない。普段使用のトイレを流用できる。
  • 災害が発生したら、シュレッダーくずを作る。分量は、一日分として人数✕8.4Lである。これをとりあえず3日分作る。家族4人として、3日分で約100Lになる。これは一般的な段ボール(50L)で2箱分になる。
    • できれば光沢紙は避ける。ビニールコーテイングしてあるものなども好ましくない。つまり、新聞紙や週刊誌は適しているが、折込チラシは適していない。
    • シュレッダーがない場合は、これをハサミでやることになる。これが根性が必要な所以だ。
  • トイレには件のビニール袋を被せておく。やり方は他の非常用トイレと同様である。
  • ここに、あらかじめコップ3杯分、約600mL程度のシュレッダーくずを入れる。
  • その上に用を足す。そしてまた600mL分のシュレッダーくずを入れる。
    • シュレッダーくずの量は、個人差があるだろうし、大と小でも違うだろうから、様子を見ながら加減する。
  • 入れ終わったら、ビニール袋の口をすぼめて持ち、もう一方の手で排便をシュレッダーくずとよく混ぜ合わせるように揉む。
    • 「丈夫な」ビニール袋を使う理由はここにある。万一破れたら悲惨な目に遭うからだ。また後述するように、繰り返し使うためでもある。
  • よく混ざったら、口を開けたまま、できるだけ温かい場所に放置する。トイレには次のビニール袋を被せる。
    • 口を縛ってはいけない。水蒸気が抜けるようにする必要がある。
  • このビニール袋は、数日放置している間に発酵し減容する。ある程度減容したら再利用する。この際、様子を見てシュレッダーくずを継ぎ足す。
    • 目安は、糞便臭がなく、水分が適度に抜けている状態である。土と同程度かそれ以下が望ましい。
    • 発酵減容が何日掛かるかは、季節によっても変わる。夏場は速く冬場は遅い。加熱できるバイオトイレの場合は一日で終わるそうだが、加熱がない場合は数日から1週間程度は掛かると思われる。なお、発酵中は発熱するので、ビニール袋同士は寄せて置いたほうが良い。
  • ビニール袋が一杯になったら、やはり数日放置し、糞便臭がなくなったら土に還すことができる。これは有用な肥料になる。
    • なお、通常時は燃えるゴミに出せる。中身のみトイレに流すのもOKだろう。

要するに、バイオトイレで使うおがくずをシュレッダーくずで代用する、というアイデアである。シュレッダーくずの原料は紙なので、おがくずと同様の効果が期待できる。そして紙は現代社会のいたるところにあるので、あらかじめ準備しなくてよい。また、バイオトイレでは専用の撹拌レバーがあるが、これを手動で行うことにより、高価な専用のバイオトイレを買う必要もなくなる。

バイオトイレの場合、毎回おがくずタンクの全量と混ぜてしまうのだが、これを一回分ごとに小分けにするというのもこのアイデアの特徴だ。バイオトイレの場合、毎回全量と混ぜるが故に、おがくずタンクの量で使用可能人数の上限が決まってしまうのだが、このアイデアの場合は毎回入れ替えるため、何人でも対応できる。

一般的な非常用トイレに比べて手間は掛かるのだが、発酵による減容という特徴により、ある程度で保管場所の増加が止まる点が大きな違いだ。もし3日で減容が完了するとなると、ビニール袋の分が増えるとしても、家族4人で200L程度で頭打ちになる。これはユニットバス1杯で納まる程度である。

またこの応用として、市販されているバイオトイレ用の発酵促進剤を混ぜてやると良いかもしれない。これも通販で買うことができる。

2026年2月16日月曜日

メタバースが世界を救う

非常に大雑把な一般論だが、ハイテクは上手く使えば格差是正になる

その良い例は音楽制作だ。かつて音楽は大金持ちや貴族のたしなみで、庶民は縁遠かったが、今やYouTubeでボカロ曲が普通にヒットする時代になった。これは作曲家や演奏家の大衆化と言える。裾野が広がったことで大量の音楽家ができ、世の中には音楽が溢れるようになった。高度な学習も高価な楽器も必要ない。パソコン一つでプロ並みの音楽を作れるようになった。

もっと生臭い例を言うと、ロシア・ウクライナ戦争においてドローンが大活躍している。ロシアとウクライナの戦力差は本来なら致命的なもののはずだが、ウクライナがドローンを上手く活用しており、その戦力差は縮まっている。鳥取県と同程度の経済規模しかない北朝鮮が米国と渡り合っているのは、核兵器があるからだ。

これに準じて、もし全ての国でメタバースが本格的に普及したら、どんな格差が是正されて世界は平和になるのだろうか、と考えてみた。

単なるインターネットとメタバースが異なるのは、視覚情報をフルに使って、また体を使って表現ができることだ。プログラミングなどの技巧的なものがなくとも、例えば幼児でも、簡単に国際交流ができる。この、より直感的な交流は、一つの重要な鍵になるだろう。自動翻訳がこれを更に助長する。

そしてもう一つは、ワールドの設計である。お互いがお互いを無視するワールドも、共存するワールドも、敵対するワールドも作ることができ、それらは独立に動かせる。つまり無視したい人は無視ワールドに、共存したい人は共存ワールドに、と棲み分けができるのだ。これは、例えば宗教対立のような問題に、一定の切り分けをすることが可能になる。例えば、キリスト教用とイスラム教用と共存用の三種のワールドに各々総本山(メッカ)を作り、どれが正でどれが副ということはない、と定義できる。(もちろん対立用ワールドを作って中でつかみ合いの喧嘩をすることも可能だが、バーチャルである限り無害である。)

ただ、メタバースによる格差是正は、あくまでもオンラインに乗るものだけだ。人はメタバースだけで生きるに非ず。現実には毎日食事をしなければならないし、風呂やトイレも必要だ。物価も住んでいる所によって違う。電気ガス水道通信、医療もリアルな世界では必要だ。

現実の生活において、バーチャルに移行できるものが何割あるかによって、その格差是正の程度は変わってくる。概ね、今のインターネットで出来ていることはそのままメタバースでも使えるだろが、メタバースでプラスアルファでできるようになること、メタバースで使い勝手が良くなり利用者が増えるであろうこと、がどのくらいあるか。

まず教育。移行できないのは走り回るスポーツ、柔道のように相手と接触するスポーツ、水泳、などが考えられる。卓球は既にできるし、体操や太極拳などもアプリがある。だがホームルームや学園祭など、バーチャルでも可能ではあるがリアルでやりたい、という需要も一定量あるはずで、特にその傾向は低学年ほど多いだろう。

次に仕事だが、リアルな生活に関わるところは不可能だ。例えば配達・運送、クリーニング、販売、農業漁業工業、食堂、インフラ(水道など)の保守、建設、介護・看護・医療、消防警察軍事、ゴミ回収や清掃などが考えられる。その各々の事務処理など部分的にはバーチャル移行が可能だが、その割合は多くないはずだ。プロスポーツを除くエンタテイメントの多くはバーチャルに移行可能だろうが、リアルに見たいという需要も一定数あるはずだ。

事務作業やプログラミング等は、国際的に分散する方が有利である。いわゆるIPであるが、メタバースにより従来より敷居は低くなるだろう。世界中が休みなくつながりAIアバターも使える状況においては、仕事のチームはむしろ世界に分散している方が有利である。つまり時間差で仕事を引き継いで行う形態が日常化するため、時間帯ごとにメンバーを募集するようなことが起きるだろう。

また、メタバースで完結する仕事については国際的なコスト(賃金)格差が縮小するだろう。端的な話、日本のような先進国では海外に仕事を持っていかれる率が高くなり、相対的に単価は下がる。ただ、持っていかれる先である海外(インド、フィリピン、ベトナムなど)でメタバース上の仕事を請け負う人たちは、安い給料の中でメタバース機材を揃え先進国並みの仕事ができるエリートである。

こういったものを経て、人生の何%がメタバース上に移行することになるのだろう、と色々計算を続けてみた結果、先進国の中間~上位層では30~60%が(低所得者層・新興国では10~30%が)メタバース上に移行する、との結論を得た。これは今後10~20年で起きる。分野によって移行化度は異なる。日本の場合、今の電子化率と比較して解説すると、以下のようになる。

領域 現状の電子化率 メタバース化の将来推計 根拠
行政 30〜40% 60〜80% 窓口業務の大半がオンライン化可能(高齢化で対面維持困難)
教育 20〜30% 40〜70% 教員不足・地域格差、XR授業の普及
医療 10〜20% 30〜50% 遠隔診療の拡大、医師不足
仕事 20〜30% 30〜50% 例外処理は残るが、会議・研修・一部作業がXR化
消費・娯楽 30〜40% 40〜60% EC+XRショッピング、XRライブ

ただこれは日本の平均であり、上位所得車窓では当然割合が上がり、低所得者層では低くなる。

また、これはここ10~20年の数字であり、遠い将来には80~90%がメタバース化可能になる。実用的には、先進国で70~85%程度がメタバース上で過ごすことになると予想する。

ここまで調べた上で考えると、結論としては


メタバースの普及は国際格差(国同士の富の差)を減らす


ということが言える。但し「先進国では国内格差が縮小するが、新興国では広がる」ことになる。

なぜかというと、新興国の上位10~20%の層は、先進国の事務作業をIPで奪うことになるだろうからだ。従来だと大規模開発の特定モジュールといったやり方しかなかったが、メタバース普及後はちょっとした例外処理を含む事務作業のレベルで発注が可能になる。すると結果としては先進国から仕事を奪うことになる。

一方、下位80%の層はこの恩恵に預かれない。従来より仕事が減る訳ではないが、上位層がリッチになるので結果として格差は広がってしまうのだ。だから新興国は、その上位層からの納税増を基に教育を充実させ、インターネットを普及させ、先進国から仕事を奪う層を広げていく必要があるだろう。

また、メタバースの普及は必然的に人の移動を減らす。オンライン会議がより普及するからだ。一方で物流は増えるだろう。ケータリングや宅配などだ。そして後者は前者より環境負荷が小さくなると考えられ、これは燃料たる石油消費を抑える方向に動くだろう。つまり環境変動(地球温暖化)阻止にも貢献する。

また先に示したように宗教紛争は抑える方向に動く。これをもっと広く捉えると、


メタバースの普及は戦争紛争テロといった暴力を減らす方向にも働く


のではないか。

ここには大きく二つの根拠がある。第一は、メタバース空間はインターネット以上に統制が取りづらく、またアバターがデフォルトなので、市民レベルでの国際交流は増えるのではないかと考えるからだ。紛争は相互理解が増えると減る傾向にある、というのは心理学上からも実績からも誰もが認めるところだろう。

第二は、メタバース空間で過ごす時間が大部分になれば、戦争紛争の大きな争点である民族対立や領土問題の価値は相対的に低減するからだ。従来のイメージでは

領土=生活空間+文化空間+経済空間+資源空間

だったのに対し、メタバースが普及することでその意識が

領土=資源空間

だけになる(他の要素がゼロになるわけではないが、重要度が下がる)。石油や稲作は必要だから完全にはなくならないものの、その価値が低下すれば争う意味も低下するだろう、と考えるのだ。

そして、第一第二をあわせて考えると、いわゆるナショナリズムは低下するし、国のプロパガンダの効力も低下する。そうなれば恣意的な戦争は国としても起こしにくいだろうし、大義名分があってもその支持率は相対的に低下する。

エストニアは積極的に電子政府化を進め、これが世界的知名度と地位を上げる結果となった。メタバースでも同じだ。メタバースに積極的に展開する国は、世界から知名度を集め、交流が広がり、結果として国を守ることにもつながる。

日本ではあまり効かないかもしれないが、小国はこの方向性を積極的に取り入れてはどうかと考える。

2026年2月5日木曜日

南海トラフ地震の(リアルな)被害予測

2026年1月16日、国交省は、南海トラフ地震の対策計画を改定した。

https://www.mlit.go.jp/river/bousai/earthquake/nankai/index.html

それによると、死者数は最大で32.3万人、経済的被害は220兆円、上水道3400万人が断水、2700万軒で停電、などが予測されている。

直感的に死者予測が少なすぎると感じたので、その妥当性についてGeminiに聞いてみたところ、原発の被害は想定していないこと、また二次被害(物流寸断によって国際的サプライチェーンが破壊される、救援物資が届かずに渇死・餓死する、輸出入の寸断により日本が国際的地位を失うことなど)が想定されていないこと、を指摘してきた。またこの220兆円はわずか1年の被害想定であり、長期被害はそもそも見積もっていないことが分かった。

なぜそうなってしまうのかとGeminiに問うと、国交省の予想は国交省の管轄でしか予想しないからだそうだ。つまり国交省は道路や建物などが管轄だが、原発は経産省の管轄なので、勝手に予想すると文句が出るからだ。逆に、原発の過酷事故予測は地震を想定していない、という妙なことになってしまっている。

そこで、これらを全て織り込んで、Geminiに被害を概算してもらったところ、死者は数千万人、被害額は千兆円、という予想が出た。

これを少し解説すると、まず死者だが、3400万人が断水となっていて、この断水は数週間程度では復帰できない。一方で水を備蓄している人でもせいぜい三日が限度であり、数週間の断水には耐えられない。川沿いや井戸があるところは若干マシと言えるのだが、もし原発事故があるとこれらは放射能汚染されてしまうため、やはり使えないのだ。なお、並みの浄水器では放射能は除去できない。人は水が無ければ3日で死んでしまうため、3400万人の何割という人数が渇死、ということになるのだ。

サプライチェーンについて言うと、南海トラフ地震の震域は東海道であるため、鉄道・道路・港が寸断されてしまう。原発事故があれば放射能汚染され、復興どころか立ち入り禁止地域があちこちで生まれるだろう。またこの地域は、自動車や機械などの生産拠点である。日本のGDPの何10%という規模のカネを生み出しているところだ。それが何か月という単位で機能しなくなれば、世界は「日本抜き」でサプライチェーンを再構築してしまうだろう。すると日本は外貨を稼げなくなり、復興どころか国民を生き永らえさせることすらできなくなる。そしてこれは地方にも必ず波及する。これらを10年で加算すると千兆円になるのだ、ということだった。

さて、死者数千万人、被害額千兆円というのがあまりにもデカ過ぎて想像もできないと思うのだが、死者2千万人、被害額千兆円と仮置きして、震災から10年後の日本についてGeminiに推測してもらったのがこれだ。

指標 震災前(現在) 10年後(2036年予測)
実質GDP 約550兆円 約350兆円(30%以上の縮小)
一人当たりGDP 世界30位前後 世界60〜80位(発展途上国水準)
食料自給率(カロリーベース) 約38% 約20%以下(外貨不足による輸入難)
居住可能面積 国土の約30% 約20%(汚染・インフラ放棄による減少)

当然ながら円の信用は失墜しているので、この額は現在の価値相当である。現実にはジンバブエドル化していてもおかしくないし、そうでなくとも1ドル250~300ドルというのが妥当だろう。またGDPは「1人当たり」なので、生活レベルは昭和30年代相当、エンゲル係数50%以上、電気代ガス代は10倍になり庶民は冷暖房不可、となっているだろう。肉は食べられず外食もほぼ無理、コンビニもなくなり、家庭菜園が流行っているだろう。

他国からの侵略もあるだろう。但し軍事的侵略は必要ない。経済支援とセットで無理難題を押し付けられても受け入れざるを得ない状況になっているはずだ。特許など知的所有権の押収、優秀な人材の本国スカウト、漁業権や経済水域での活動許諾、港の使用権などが次々と売られていくだろう。

また、死ぬ2千万人の多くは高齢者であると推測でき、これによっていわゆる高齢者比率は一時的に若返る。Geminiの推測によると、30%から22%になる。しかし合計特殊出生率は0.5~0.7に落ちるとも予測しており、10年後には35~40%と急速に老いた国になるとも予測した。

これにより、社会保障は崩壊、また熟練の知恵の類も断絶するため、文化的な伝統も生産技術の知見も失われ、国民の知的レベルも一気に低下してしまうと予想される。

資源小国は知恵で外貨を稼ぐしかないのだが、その知恵も失われるため、日本は本当に売るものがなくなってしまう。もはや地方都市を維持することはできず、コンパクトシティ化は必須であるが、そのレベルは従来の構想を大きく超える。人口10万クラスの都市でも消滅し、100万都市すら幾つかは消える懸念がある。円は更に安くなり、20年後には300~500円辺りで落ち着く。また出生率は1.5程度まで回復するが、人口維持レベルの2.1までは到達しない。また当然、金持ちは日本を出ていくだろうが、これも20年後には1千万人のレベルに達しているだろう。これには当然前途を憂う若者も含まれ、このために高齢化比率は45%に達すると予想されている。

次に治安だが、犯罪検挙率が落ちるのは当然の予想として、現在40~50%のところ、20%にまで落ち込むと予想される。また、ディストピア的な世界、すなわちゲーテッドシティ(柵に囲まれ、出入りには許可が必要な、金持ち向けの安全地帯)とスラム、場合によりその中間的な存在が地域により分かれ、スラムの治安は大いに低下、中間的地域でも現在よりは大幅低下、という予想もされた。中間的存在は、自警団と村八分による地域毎の独自の治安が形成される。スラムはそれすら作られない。

おそらく芦屋や田園調布のようなところはゲーテッドシティになり、都心の多くは中間的存在、その周辺から地方に掛けてはスラム化するのだろう。また、相互の行き来は困難になると予想される。つまり市民階級が自然形成され、それが定着する。ゲーテッドシティでの悪質犯罪者は中間地域に「追放」され、中間地域での外れ者はスラムに追放されることで治安を保つことになる。そしてスラムでの犯罪は統計に表れない。

最後に、海外に対する影響について予測する。日本には、半導体製造装置、特殊化学素材、超精密ベアリングといった、「日本でしか作れない」製品の供給がストップする。このため、スマホから航空機製造まで、世界中のハイテク産業が連鎖的にストップする危険がある。

また、日本政府が持っている外貨準備金、民間も持っている大量の米国債などが、震災被害の補填のために市場で叩き売りとなることは明白である。すると、 米国の長期金利が急騰し、米国内の住宅ローンや企業融資が破綻、米ドル自体の信用低下が起こり、これが全世界に波及することになる。

一方民間も、世界最大の対外資産(約400兆円強)を保有している。これらも世界各国で叩き売られ、米国以外でも経済混乱が起きることは間違いない。ここぞとばかり買いを入れる人も多いだろうが、今回ばかりはその規模が違う。あまりにも巨大な売りを前にすると、買った後の下落が恐ろしくてなかなか買い手が現れないし、現れても再び上昇するには十年単位で時間が掛かるだろう。

軍事面で見ても、日本にある主な米国基地は、たとえ無事でも日本からの供給が断たれるため、それなりの非常事態になる。日本の支援ばかりに気を取られると、特に中国ロシアからの侵略に対応できない。日本近海は軍事的にもきな臭くなることになる。場合によっては台湾進攻を含め、周辺国との戦争が起きるかもしれない。そしてそうなれば、日本への海路での支援は困難になり、復興を遅らせることになる。

戦火が起きればそれは他の地域に飛び火し、世界各地で紛争が起きたり、あるいは第三次世界大戦に発展する危険も考えられる。

また、放射能汚染が海に広まれば、それは黒潮に乗って太平洋を渡り、ハワイからアメリカ、チリにまで及ぶことになる。すると太平洋の海産物が多く汚染され、あるいは汚染されずとも風評被害が広がり、食糧難になる危険がある。

これらから考えると、海外に移住しても安泰とは言えない。行った先の治安や経済は低下するし、ヘイトの対象となる危険もある。手に職をつけておくと共に、当然円や日本の銀行の口座は紙くず化するので、外貨を海外の口座にかなり積んでおく必要があると思われる。

と、ここまでをGeminiと共に推測してきたわけだが、当初の国交省の予測(30万人、200兆円)と比べると全くの別次元であることがお分かりいただけると思う。決して恐怖を煽っているわけではないが、最悪の場合はこのくらいの規模になることがあり得るのだ、ということは覚えておいてほしい。

2026年2月2日月曜日

日本の借金返済モデル

 日本は世界トップクラスの放蕩財政国家だ。赤字国債の残高が、物価上昇を遥かに超えるスピードで増え続けている。その規模は国家予算の十倍もある。収入に見合った支出をするというごく当たり前の原則を無視し、欲しいだけの予算を積み上げ、足りない分を借金で賄っている、という状態が、何十年も続いている。

国債は借金であり金利があるので、借りる以上に返さなければならない。2026年度の国債費(返済額)31.3兆円のうち、利払い費は13兆円もある。日本は毎年このくらいの規模の額を、国民のためではなく債権者に支払っているのだ。(このうち半分程度は日銀を通して国庫に戻って来るが、残りは民間に放出されるのだし、その日銀とて必要経費を差し引いている。何れも借金がなければ必要ないカネだ。)

ここ数十年は低金利だったからまだ良かったが、それでもこの額だった。そしてその金利が近年急上昇している。すると、同じ額を借りるのにも多く返さなければならなくなる。国債は毎年少しづつ借り換えられているから明日困るわけではないが、今後日本の財政はゆっくりと、しかし確実に悪化していく。たとえば十年後には、その利払い額は更に十兆円増えているかもしれない。これは国家予算に対して十分なインパクトのある額だ。本来は教育や福祉に向かうはずだった20兆円が、どこかに消えている。これはあまりにもバカバカしくないか。

だからこそ借金は早く返さなければならない。とはいっても千兆円もの巨額を一気に返すことは不可能であり、50年100年といったレンジで返すしかない。50年として年間20兆円だが、プライマリバランスはゼロ付近ではなく、このくらいのプラスで計算すべきである。

そんなカネがどこにあるのか、とよく言われる。政府や政党がよく減税を主張するとすぐ財源を問われるけれども、そういった眼の前の予算の重箱の隅を突くような視点では、この額を恒久的に捻出することはできない。もっと鷹の眼をもって、日本の財政構造を分析する必要がある。

よく「甘い汁を吸っている奴がいる」と言うけれども、日本を俯瞰して見た場合、その甘い汁を吸っている奴とは、実は国民自身である。官僚や上級国民にもそういう奴はいるけれども、それは俯瞰した目から見れば実は少数であり、金額も微々たるものなのだ。本当の悪は国民である。

意外に思うかもしれない。あるいはウソだと思いたいかもしれない。しかし、毎年の赤字国債の元凶は、防衛費や文教科学振興ではない。社会保障費や地方交付税交付金なのだ。これらが「身の丈に合った額」になっていないから、予算が嵩むのである。

色々と分析してみた結果として、その放蕩の中身を大雑把に三つ、主張したいと思う。第一は社会保障費、第二は地方交付税交付金、第三はゾンビ企業の生き残りである。以下、これらの詳細を解説しつつ、改善案を提示する。

第一の社会保障費だが、健康保険、(老齢)年金、介護保険、生活保護、その他各種補償・控除補助などがある。このうち大きいのは健康保険と年金である。現在の健康保険や年金の問題は、大きく分けて以下の三点である。第一に、富裕層でも一律に支給されていること。第二に、補償の範囲が広すぎること。第三に、個人ベースで規定され、積み上げ式に制度が決まっていることだ。

富裕層でも一律に支給されていることは説明しなくても分かるだろうから飛ばすとして、次に補償の範囲だが、これは海外に比べて広すぎる。例えば、市販薬と殆ど変わらないような薬が保険適用で入手可能である。風邪薬、痛み止め、湿布などに対しては、医者で処方するのではなく、ドラッグストアで自費で買え、というのが海外のスタンスである。また、リハビリやマッサージの類でも幅広く保険適用になるが、これも海外は厳しい。だが一番の問題は、総額制限をしていないことだ。要するに、総額で見て赤字であることに対してのフィードバックがないことだ。

これより考えられる社会保障費の改善案は、まず原則として個人の資産と所得を考慮した応能負担とすることである。要するに金持ちは高く払え、ということだ。次に保険適用の範囲を欧米並みに狭めること。第三に総額規制を行い、自己負担率は変動制とすることだ。

例えば、健康保険の自己負担率を一律20%にするのではなく、毎年総額から再計算して「今年の自己負担率」を発表する、といったものにする。もちろん応能負担なので、平均的所得の人を中心として上は高く、下は少なくしてやる。年金も同様で、資産と所得の平均像を中心として、上は少なく、下は厚くしてやる。但し当然、下限が生活保護以下に落ちてしまうと生きていけないので、そこは考慮する。必然的にその分、上の負担は重くなる。

少し脱線するが、現状の生活保護は線引きが分厚く、資産のほとんどを吐き出す必要があるなどと適用が難しいが、このような「なだらかな保護」であれば抵抗も少ないと思う。生活保護制度は廃止して、「困窮度に合わせた全年齢年金」にする方が良いのではないか。ベーシックインカムと言っても良いが、通常のベーシックインカムは一律同額支給なので、ここは異なる。

次の地方交付税交付金だが、ここでの問題は主にインフラ整備である。電気ガス上下水や道路などインフラは、自治体には全市民に提供をする義務があるのだが、その対価が過疎地と都市であまり変わらない。近年では水道料の高騰などが地方でニュースになったりしているが、それでもまだ応益負担にはほど遠い状況にある。そして全体として赤字になっている。これを税金で補填しているのだ。

インフラのコストパフォーマンスは、人口過疎地では極端に悪くなる。だから、過疎地ほどそういったインフラのコストは多く負担すべきだ。それは例えば上下水道の料金が十倍になるなど極端な事態を生むだろうが、実際にその費用は掛かっているのだ。

それをなだらかにしようとするのは分かるが、それは自治体の判断だとしても、総額としての費用と徴収額は一致させるべきであろう。そもそもその「なだらかにする」という行為は、都心で必要以上に徴収し、それを過疎地にバラまいているという意味なのだから、都心の住民はそれを受忍すべきである。それもイヤというから借金に逃げる、その積み重ねが今の状態なのだ。

地方交付税交付金は、県をまたいで「都心の受忍により地方を支える」という制度である。しかし、現状では東京都を除く全ての道府県が赤字であり、明らかにバランスを欠いている。総量規制が効いていないので、地方が身の丈以上に贅沢をし、それを都心が支えている状況になってしまっている。

「いや、贅沢だなんてとんでもない」と地方の人は思うだろう。実際に生活は苦しいし、都心よりも所得は少ない。だが、その感覚がこの総量規制の発想を捻じ曲げているのだ。実際には、過疎地に住む人にはもっと覚悟が必要なのに、「なだらかなインフラコスト負担」のお陰でその覚悟が弱くて済む、それが今の状態なのだ。これはいわば茹でガエル状態である。現実はもっと厳しいのに、視野が狭いのでそれが見えていないのだ。

これを解決する手段として、コンパクトシティという発想は既に存在している。要するに「都会へ住みましょう」ということだ。都会はインフラのコストパフォーマンスが高い。すなわち、同じ額でより多くの人にサービスを提供できる。だが日本では住居の自由が法律で定まっており、あくまでも「誘導」であり強制ではない。そして結果としてコンパクトシティ化は成功していないのだから、その誘導は弱すぎると言える。

だから、地方はまずコンパクトシティ化を強力に推進すべきである。これは単に、きちんと応益負担、総量規制で計算すればよいだけである。つまり、相対的に都心のインフラ負担(水道料金など)は今より安くなり、過疎地のそれは極端に高くなる。それらを全て足した額は、コストと徴収額で一致する。そうであれば、結果として住民が居座ったとしても、きちんと負担はしてもらっているので赤字にはならない。

第三のゾンビ企業だが、世界では日本とイタリアでゾンビ企業の割合が突出して高いそうだ。ゾンビ企業は利益を生み出していないので、そこで働いている人は国や自治体の補助や銀行からの借金で生き永らえている。つまり国から見れば一方的なコストになっている。だがそこで倒産すれば、一旦は失業者になるが、他に人材を募集している新しい企業に就職し、そこで利益を生み出すことができる。人材を募集している企業はそもそも人手が足りないから募集しているのであって、その理由はもちろん仕事があるからである。つまり、マクロに見ればこれは新陳代謝である。日本はこの新陳代謝が上手く行っていないのだ。

なぜ日本は新陳代謝が上手くいかないのかというと、日本では、中小では特に、オーナーが会社の借金の補償をしている(無限責任)というケースが多く、会社が潰れると即オーナー一族は地獄に落ちてしまう構造になっているからだ。だからオーナーは倒産を極端に恐れる。そこで金策に走ってとりあえず凌ごうとする。それに呼応して国や自治体も補助をするし、銀行も追加融資で生き永らえさせる。しかしそれで事業が好転するわけでもなく、結局は首が回らなくなって倒産する。その時、金策によって借金は更に嵩んでおり、オーナーの地獄「度合い」はもっと酷くなる。

こういう形態は世界でも珍しく、このためになかなか事業を整理できないのだ。ゾンビ企業を生きながらえさせるためのコストは国家予算ベースで1~2兆円だが、再就職による新たなGDP創出の機会を失っているという観点で見ると、5~10兆円規模の損失になっている。

鷹の視点で見れば、倒産は新陳代謝になるため、悪いことではない。それを阻んでいる悪しき慣習を破壊し、倒産しやすくさせてやるべきである。

ただ、倒産によって職を失う人の全てが、すぐに次の職に就けるわけではない。大まかには10%くらいがすぐに再就職できるが、残りはいわゆるリカレント教育が必要である。海外ではここも充実しているのだが、日本は弱い。だからこれを充実させることはセットで提供する。もちろん失業保険や生活保護(ないしは全年齢年金)も活用することは大前提である。

大雑把に、第一(社会保障)で10兆円、第二(地方交付税交付金)と第三(ゾンビ企業の整理)で5兆円づつ、合わせて20兆円を目標にする。こうすれば毎年の新たな国債発行は10兆円に抑えられ、10年程度掛けて国債費(返済額)を現状の30兆円から20兆円程度に減らすことができると推測できる。この時期には新規国債発行がゼロにできるだろう。これを50年続ければ、国債残高を200〜400兆円程度まで減らすことができる。

この程度までくれば必ずしもゼロを目指す必要はなく、プライマリバランスを再びゼロ近辺にしつつ、余った予算を大胆に投資に回すことができる。

2025年12月8日月曜日

ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル

近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕事に波及していくだろう。

ここであぶれた人間には、もはや働くところが無い。何をするにもロボットやAIに劣る人間には、今後もう労働市場自体が存在しないのだ。そんな彼らを救済するには社会保障しかない、と以前は考えていたのだが、ここで発想を転換し、ロボットを所有させれば良いのではないか、と考えてみた。つまりそういう人たちは、その(人間の代わりに働く)ロボットを所有して、労働需要に貸し出して働かせ、その借り賃を得るというものだ。もちろん人間が働くよりは安い額だが、その間自分は何もしない(から他のことができる)のだし、ロボットの台数を増やせばそれだけ額は伸びる。

ここから更に、所有せずともレンタルすれば同じことができるのではないかと考えた。カーシェアリングと同じようにまず自分が借りて、そこから他人に貸すのだ。そうすれば所有のリスクを抑えられる。

用途としては、マンション管理人、イベントや駐車場の誘導員、近所の食堂のホールスタッフ、介護の搬送補助、清掃員、宅配要員、ケータリング要員、などが考えられる。こういうものは、平均的には常に需要があるが時間までは揃わないので、人間よりロボットの方が向いている。

ただ、これだけでは不足だ。第一には、同じビジネスモデルを一般人が使うことは阻止できないので、参入されるとレッドオーシャンになってしまう。そこで、ロボットのジョブマッチングシステムを導入する。これと連動して自動でレンタルが開始されるようにしておけば、カネが自動で落ちてくるようにできる。そしてこのジョブマッチングを使えるのは、生活保護や境界知能など一定の要件を持つ人に限定する。一般人は自分でレンタル先を探さなければならない。ジョブマッチングでは「必ず儲かる」が、手動でマッチングする際には借りてから貸し出すまでのタイムラグがあり、必ずしも収支はプラスにならない。

第二に、借りたい側が直接シェアリングサービスからレンタルしてしまうとこのモデルは破綻するので、借りる側は一定比率でそのジョブマッチングシステムからレンタルしなければならない、と法で定める。個人が借りる場合は100%ジョブマッチング経由とするのも良いだろう。

このシェアリングロボットのプール(待機場所)は地域毎に細かく設定されるので、現実的には寡占状態に近くなり、この定めは大きな障害にはならないと考える。つまりジョブマッチングを通すか通さないかに関わらず、その地域のそのシェアリングサービスから借りることになるので、余計な課金を嫌って他を探すということはあまり発生しない。

このモデルは、社会保障モデルとしても望ましい点がある。従来、生活保護や障害者雇用は「バラマキ」的発想が強く、それ故に偏見も多くあった。だがこのモデルでは、彼らはロボットのオーナーであり、得られるのはそのレンタル料という普通の報酬である。ジョブマッチングが使えるという有利はあるが、同じことを手動することは一般人でも可能なので、ある意味一般人と同じビジネスモデルである。これにより偏見を受けにくくなると考えられるのだ。

ロボットは地域で運用されるので、仕事に限らず家事の補助や子守りなどでも使えるだろう。一家に一台がまだ遠い時代でもロボットを使えることは、地域にとっても望ましいことだ。例えば共稼ぎの夫婦の子供の保育園えの迎えに使うなどということも考えられる。そう考えると、弱者保護は置いておいてもロボットシェアリングには意味があると考える。それにジョブマッチングを加えれば、福祉も効いて一石二鳥になる。

後はビジネスモデルとして成立するかどうかだが、保護対象者(生活保護、境界知能など)の収支は一方的にプラスになるので問題ない。ロボットオーナーは地域の需要を鑑みて調整の必要があり、それなりのリスクを持つが、まあこれはシェアリング会社としては通常のリスクである。借りる側は一定比率の足かせがあり若干不満はあるだろうが、ここは世論に応じて法で調整してやる。つまり十分に低い負担率から始めて徐々に上げていけば、うまい落とし所が見つかるだろう。

2025年11月17日月曜日

総合医の復活


 そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。

総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代においてそれは、どちらかといえば「仕訳医」としての側面が強い。つまりある程度目利きをしたら各々は専門医に任せる。以後は主治医は個別の病気には関わらない。だから患者は複数の病院を渡り歩き、あるいは総合病院の複数の診察科を駆け回ることになる。

だが、その主治医が全ての専門科に精通していて、全てをワンストップで診てくれれば、患者としてもそれに越したことはないわけだ。そしてかつてはそうだった。ほとんどは町医者が診てくれて、手術などどうしても困難なものは大病院に紹介されたのだが、その閾値がどんどん低くなっている。今やさほど大きな街でなくとも総合病院はあって、町医者の守備範囲は狭くなっている。

これを打開する可能性があるのが、近年のテクノロジーの発達である。すなわち通信技術、高解像度映像伝送技術、そしてAI、ロボット、である。

つまり、これらIT機器で武装することによって、町医者で閉じる守備範囲を再び広げようというのが主旨である。

総合医の強みは、複数の病気を抱える患者で発揮される。薬の重複や副作用と症状の識別は代表的だが、精神的ケアや家族の意思の確認などにおいてもそれは有用で、更には入院や手術を近隣で行えることは大きなアドバンテージだ。

ただ、個々の病気の専門性が分からないと、これらの識別は困難だ。重複しているからと単純に薬を減らしてしまうのが正しいとは限らない。また、薬の作用を相殺するような組み合わせを発見したり、発見したときにどう対処するかの知見は、個々の専門医でも分かるとは限らず、総合医としての知見もまた求められる。そういった知見をカバーするのがAIである。

また、手術を遠隔で可能にする手術ロボットや、手術以外の処置も、AIやロボット、その他測定機器の高度化やカルテ連動などの技術を駆使して、町医者でできることを増やしてやる。多数の人間の専門家ではなく高度なAIがそれに置き換わり、町医者は最終判断をするだけで済むとなると、むしろ医療品質の安定化、更には高度化すら期待できる。

さて当然ながら、このスキームを確立するための鍵となるのは、診断用機器、手術・処置ロボット、そしてAIだ。以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2017/02/blog-post_20.html

のような提案をしたことがあるが、これは診断用機器だ。他に手術・処置ロボット、AIが必要だが、手術・処置ロボットは汎用である必要があり、これはアンドロイドすなわち人間のような形状(手が二本、脚が二本、頭が一つ、身長170cm前後、バッテリ駆動)で、人間と同じ器具(メス、鉗子など)を持てるロボットが望ましいと思う。そしてソフトウェアでどんどん機能を追加していくのだ。

AIの方はアイデアが漠としており申し訳ないのだが、多数の専門家AI(各々の病気のエキスパート)と総合診断AIからなるマルチエージェント型が基本になるのだろうと思う。それと人間のAIが自然言語で会話しながら進めていく、というようなイメージになる。

もちろん、このための投資はこのスキームにおける大きな弱点になる。数千万円単位の投資になると思われ、大型医療機器の導入と同じような出費になる。したがってこれの導入には医者により判断が分かれるだろうし、国の補助と言っても桁が大きいので一律にするのは困難だ。

だがこれは、離島など医療過疎地域へのモデルケースとなるため、スキーム自体の確立には国や自治体としても意義があり、その意味でも国の補助は重要である。まずはそういうところから始め、コストダウンを目指しながら町医者に広げていく、そんな構想をもって開発しても良いのではないかと思う。

2025年10月20日月曜日

ベジファーストと三角食べ


 書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。

その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。

まずベジファーストとは何かをおさらいしておくと、食事をするとき、野菜を先に食べる、というものだ。だが実際には野菜、肉魚、最後にご飯・パンを食べるというものなので、カーボラスト、つまり糖質炭水化物を最後に食べることも定義に含んでいる。

これに対しこれらの本では、ベジファーストが重要なのではなくカーボラストが重要なのだ、という主張をしている。つまりカーボラストであればミートファーストでも良い、というわけだ。

生成AIでベジファーストの効能について聞いてみると、その目的は血糖値の急上昇を抑えることらしい。そうすることによってインスリン分泌を穏やかにし、脂肪蓄積の抑制や糖尿病リスクの軽減が期待できるとのこと。

だが実際、食事において野菜を先に食べご飯を最後に食べたとしても、その時間差はせいぜい5分10分といった程度だろう。胃の滞留時間が2~4時間だそうだから、何を先に食べても大した違いにはならないのではないか。

そう聞いてみたところ、生成AIはあっさり非を認めた。いくつかの実験において、食後血糖値上昇が有意に抑制された例はあったものの、「主食を先に食べた場合との比較」であったり「野菜を食べた後10分間を開ける」といった非現実的な設定であった。いわゆる三角食べ(主食、副食(おかず)、汁)をまんべんなく食べる方法と比較してどうなのか、と調べてもらったところ、そこを厳密に測った研究はないとのことだった。

極めつけは、2024年の糖尿病診療ガイドラインからはベジファーストの記述が削除されていた、ということが分かったことだ。これでベジファーストは息の根を止められた。

では本の主張するカーボラストはどうかというと、「3パターンの食べ方(パン→野菜・肉、野菜・肉→パン、サンドイッチ)で血糖値を比較」という実験において、カーボファーストに対してはもちろんだがサンドイッチに対しても有意な結果が得られている。

新常識:ベジファーストより、カーボラスト|血糖値コントロールの8ルール ④

だがこれも、前述の胃の滞留時間の理論と矛盾する。そこでよく読んでみると、肉野菜とパンの間では10分休憩する、という方法が取られていた。そう考えると、通常の食べ方では大差ないと考えるのが妥当だろう。

ここにたどり着くまでの間、生成AIは散々根拠のない反論を繰り返してきた。だが「実験的に確かめられたのか」「定量的に示せ」といった(いわば当たり前の)質問を繰り返すだけで、生成AIは自滅してくれた。やはり生成AIの使い方にはまだしばらく注意が必要だ。

つまり、結論からするとベジファーストもカーボラストも大した効果は期待できないので、気にせず好きな順で食べてよい。ただしカーボファーストだけはダメだ。というのも、カーボファーストにしてしまうと最短20分で胃から排出され始める可能性があり、先ほどの胃の滞留理論が通じないからだ。

さて、では食事順序以外に有用な方法があるのかというと、実は先ほどの糖尿病診療ガイドラインではプレート法というのが提案されているらしい。食事の量を野菜が半分、肉魚が四分の一、ご飯が四分の一にする、というもの。まあ糖質制限食の一種だが、野菜がだいぶ多い。これは確かに効果があるだろうが、辛い方法でもある。

2025年8月25日月曜日

富士山噴火への備え・再考


 以前にも

https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html

という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。

首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策検討会』というものがある。

https://www.bousai.go.jp/kazan/shutokenkouhai/index.html

この内容を大雑把に伝えると、

降灰30cmまでは自宅などで生活を継続、30cm以上で原則避難

というものになっている。ただ、なぜこうすることにしたのかについては詳しくは書いていない。

実際の降灰量予想としては、令和3年に発表された「富士山ハザードマップ」

https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/kazanfunka/fujisankazan/1030190.html

の中にある

https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/190/21_kouhai.pdf

が参考になる。東京23区、千葉県西部、埼玉県南部は2〜10cm積もると予想されている。

以前の自分の考察では、交通網が全て遮断される、全てのインフラは数カ月回復不能で救援物資も来ない、というものだったが、いくらなんでも100%ということはないだろう。まずここから精査していく。

まず概略から抑えておくと、首都圏の人口は3700万人である。これは1都3県の人口だ。

インフラとして一番重要なのは上水道と物流である。人は水が飲めなければ3日で死ぬ。水道が止まっても物流が大丈夫なら水は飲めるが、この両方が止まれば死ぬ。個人にしても自治体にしても、備蓄はせいぜい数日程度だろうが、この間にどちらかが復旧しなければ死ぬ。つまり、水道と物流が止まり、備蓄が尽きてから3日で死ぬ。

そこでまず水道だが、この資料によると、上水道施設の83%で機能停止ないしは機能低下があると予測されている。また浄水場の機能停止による断水が4%あるとのことで、つまりは87%が止まる可能性がある。

備蓄があると答えた人は、あるアンケートによると60%だったそうだ。だが水をどの程度備蓄しているかについては正確な情報がなかった。そこでこの60%の人が平均3日分の水を保存しているとすると、1週間以内に水道か物流が復旧しなければ87%(3200万人)が渇水死する、という計算になる。

給水車があるじゃないかと考える人がいるかもしれないが、首都圏に給水車は250台しかない。15万人に1台だ。これが雀の涙であることは明らかだ。地方から救援が来たとしてもせいぜいこの数倍が限度だろうから、ほとんど状況は改善しない。被災者が多過ぎるのだ。また、そもそも道路が火山灰で覆われているので、末端まで届けることは最初から不可能だ。自衛隊の支援も同様である。

もう一方の物流だが、これは報告書にもはっきり書いていない。鉄道と飛行機は全面ストップだが、自動車の通行がどこまでできるかは曖昧である。一応、乾燥時10cm、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が走行不能とある。また30cmで四輪駆動車が走行不能になる。ここではトラックを想定しているので二輪駆動車が該当する。また、タイヤ走行という意味では走行可能でも、実際にはエンジンに火山灰が入り込んで焼付き、数時間でダメになってしまう。現実的にはほとんど動けないと見るべきだ。

ただこれには例外がある。EVだ。EVにはエンジンがないため、降灰の中でも走行可能である。もちろん換気フィルタも火山灰には対応していないので換気なし、中途充電できないので脱出のみとなる。万一往復を想定して途中で頓挫してしまうと、道路を塞いでかえって迷惑だからだ。これは前回の考察からの更新点だ。

停電の予想だが、碍子への降灰の影響は配電線100箇所、送電線35箇所、変電所2箇所だそうだ。変電所は首都圏に1600箇所、配電線と送電線は数えるのが困難なほどだそうなので、意外にも影響は小さい。また火力発電所は、噴火15日後に最大42%の供給力低下が見込まれているが、もちろん発電には他の方法もあるため、総合的に見ると80%程度の発電が可能とのことだ。これは前回の予想よりも大幅に良い。電力さえあれば、例えば自治体備蓄として持っている大型浄水器は稼働可能となる可能性があるし、何よりも明かりが確保できることは治安面からも心理面からも大きなメリットになる。降灰中はどうせ工場などは動かないだろうから、電力は意外にも足りる可能性が高い。

さて再度物流だが、復旧の速度が気になるところだ。資料によれば、10cm程度の降灰にはホイールローダーと散水車を使うとある。だが水は貴重なのでとりあえず無視し、ホイールローダーに注目する。

ホイールローダーは全国に10万台以上あるとされている。首都圏に何台あるかは不明だが、仮に4万台として、どれくらいの速度で火山灰が撤去できるのだろうか。

その前に、ホイールローダーはやはりエンジンを積んでいるので、数時間で焼き付いて動かなくなるのではないか、と考えられる。これを是としてしまうと道路の復旧は全く望めないことになってしまうので、ここではフィルタを十分に用意し頻繁に交換することで稼働可能、と仮定する。(この仮定は大甘である。)

次に火山灰を撤去するに当たってその灰をどうするかなのだが、これは2車線以上ある場合には外側の1車線を通して中央に寄せるのだそうだ。これを前提として、どの程度の速度で復旧できるのか考えてみる。

首都圏の道路の総延長は、24万3千キロメートルだそうだ。これを前提に、生成AIに対して

「10cmの火山灰が降り積もった24万3千キロメートルの道路を4万台のホイールローダーで清掃するとして、また高速道路と幹線道路から始めて徐々に支線に取り掛かるという前提、つまり初期には全台数は稼働できず徐々に稼働台数が増えていくという前提で、灰の除去に何日掛かるかを推定せよ」

と指示してやると、結論としては最低3ヶ月、現実的には半年以上という結論が出た。つまり、少なくとも最初の1ヶ月、物流による水の確保は不可能である。

これらを合わせて考えると、水道が87%能力低下、電力は20%能力低下、物流は100%ダウンの状態が1ヶ月続く、ということになる。水の備蓄の量は、個人と自治体合わせても2週間がせいぜいだろうから、そこから先はバタバタと人が死んでいくことになる。3700万人中3200万人が死ぬ、というとんでもない結論だ。

であれば、早期に脱出するのが正解である。残念ながらこの結論は前回の考察と変わらなかった。東京都の指示は誤っているが、1千万人を数時間で脱出させることなど最初から不可能だからこういう結論になったのだろうと推察する。

脱出方法として考えられるのは、徒歩、自転車、バイク、自動車、電車、船などだ。また前提として、安全な移動距離は100kmを想定する。

まず徒歩だが、1日8時間、時速4kmで進んだとしても32kmなので、100km動くには4日掛かる。4日分の水と食料を持って移動するのはほぼ不可能だ。食料はともかく、4日分の水となると12L、2Lのペットボトル6本入りの箱を丸ごと背負っていくというレベルになるからだ。ここで、火山噴火と同時に脱出したとしても、灰は2〜3時間で降り始めるので、初日で周囲の水道が止まる可能性があり、水を途中で補給しながら歩くというのは厳しいだろう。

自転車は、初動としてはあり得るが、やはり2、3時間で移動できる距離では降灰に追いつかれてしまう。バイクなら可能性はあるが、降灰に追いつかれるとスリップしてまともに走れなくなるので、噴火から即時に動け、かつ運転に自信のある人限定である。

電車は0.1cmの降灰でストップするため、本当に初期の1、2時間程度しか動かないだろう。都市部での電車の平均速度(営業平均速度)は30〜40km毎時であるため、目標の半分しか進めない。もし2時間動くなら何とか、というレベルである。だが、電車が律儀にこの通り動いてくれるとは限らない。噴火と同時に止まるかもしれないし、降灰が確認されたら直ちに止まるかもしれない。その意味では電車を生命線とするのは危険だろう。

自動車の場合、数時間で焼き付いて動けなくなるが、その数時間内に逃げ切るという可能性はある。一方で渋滞に巻き込まれる可能性を考えると、乗り捨てる(エンジンが焼き付くまで走る)覚悟が必要だろう。それでも渇水死よりはマシだ。EVでも充電切れで乗り捨てる覚悟はやはり必要だと思う。

そして、新たな可能性として、水路を提案する。これは川沿い、しかも江戸川に限られるという制約があるのだが、江戸川を日光・宇都宮方面に遡上すれば、おそらく脱出可能である。手漕ぎではなくエンジンであることは必須だが、川なら渋滞がないので降灰前に逃げ切ることができるだろう。時速40kmほどが必要だが、これは一般的なレジャーボートや釣り用のボートでも出せる速度だ。燃料だけがちょっと心配だが、そこはあらかじめ計算しておくのが良いだろう。

ただ、東京湾を出て房総半島を回って太平洋を北上するというルートは取るべきではない。こちらだと走破距離が2〜3倍になり、燃料の準備がおぼつかなくなると思われる。

なお、これらの脱出方法は、噴火と同時という前提である。降灰後籠城して我慢できなくなって脱出する、というシナリオだと、状況は違ってくる。

例えば噴火2週間後、幹線道路と高速道路の灰が一応1車線分除去できたという想定で脱出する場合、まず除去されたと言っても灰は舞っているので自動車は使えない。但しEVなら可能なので、渋滞さえ起こらなければEVで脱出するというのはアリになる。

残りは自転車か徒歩だが、どちらにしても灰は舞っているのでN95マスクとゴーグルは必須である。それで100km移動するのはやはり厳しい。人は水がないと3日で死ぬが、その3日間元気で時速4kmで8時間歩くなんてことはあり得ない。徐々に弱っていくはずだ。せめて2日分、6Lくらいは持ち歩かないと、ゴール前に死んでしまう。だがまあ、この場合は水が尽きて命がけの脱出という覚悟だろうから、マイナスの選択としてはアリだろう。もしかしたら60kmくらいで水にありつけるかもしれないが、もはやそれは時の運である。

さて、脱出のためのEVだが、車高の高い、タイヤもそれなりのものを使うなら、30cmでも何とか走行可能らしい。そんな視点で車を選ぶなら、

https://www.subaru.jp/solterra/

がオススメである。ハマーのような極端なものは別格として、普段も乗り回せる割に車高が高いEVである。ソルテラの航続距離は500kmあるから、フル充電しておけば十分に降灰圏を脱出することは可能であろう。

また、火山の場合は地震と違って1ヶ月前程度には予兆が現れるので、全く予知不可能というわけではない。その時点で車を買う、避難する、備蓄をする、ということは考えられるだろう。

2025年7月25日金曜日

国民生活補償制度


年金の制度を調べていて、なんと複雑で面倒なことかと辟易した。今ちょうど年金改革がされているけれども、現行のシステムを複雑にしているだけだ。年金に限らず、様々な社会保障制度が別の名前で呼ばれ、申請方法も異なり、審査も給付も別。ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士などが必要な届け出というのは、国民を馬鹿にしている。

給付の条件を細かく決めるのは構わないのだが、そういうものは一覧で見られるようにすべきだし、届け出は一箇所にしてほしい。

そこで、以下のような改革を提案する。

  1. 全ての社会保障制度は一つに統合する。新た制度の名称は、とりあえず「国民生活補償制度」(生補)とする。
  2. 生補の財源は、税金とする。即ち、この制度によって既存の社会保険料は廃止され、税金が増額される。
  3. 過去、各々の特性について個別支給していた制度は廃止し、生補ではその事情を「点数制」にて加算する形式とする。
  4. 支給額は点数のみに依存する。たとえば既存の年金では、支払い済み年数に支給額が依存するが、新制度では財源が税金になるのでこの制度は廃止になる。(その代わり、税金滞納や税金支払い免除の状況などを点数に入れるというのはアリだろう。)
  5. 支給方法は、定期払い方式と一時金方式、控除方式の三種類とする。
    1. 定期払い方式は、マイナポータルに登録された公金受取口座への毎月の支払いを受ける形式であり、これは主に生活費補助目的に使う。
    2. 一時金方式は、イベントに合わせて支払いを受ける方式であり、これは主に出産などの一時的に発生する高額な費用の補助目的に使う。
    3. 控除方式は、掛かる費用を一定の割合で控除し、医療機関に残りの費用をこの制度から直接支給するものである。健康保険のように、不定期に使うが金額が高いものに適用する。
      1. 控除方式のバリエーションとして、疑似免税が考えられる。つまり、生活困窮者などで設定されていた免税の制度は、免税ではなく相殺的な支給として点数換算する。
  6. 自治体は、国の点数に加え、自治体独自の点数を付与できる。
  7. 点数表(元帳)は国と自治体が各々の部分を管理し、毎年更新する。
  8. 点数は、支払い方式毎に加算され、それを標準額にかけ合わせて算出される。またその標準額は、国が全国標準を決め、都道府県が各県の事情に合わせて調整する。
    1. 当然ながら、標準額は物価指数に合わせるのが妥当である。
  9. マイナポータルから自分の「点数」「標準額」「結果としての支払い額」が確認でき、異議がある場合はそこから問い合わせができる。

この仕掛けの特徴は、以下の通りである。

  1. この仕掛けを作ってしまえば、後は点数をどう配分するかの問題に集約できる。新たな視点で補助をすることを思いついたとしても、いちいち個別に法律を作る必要はない。
    1. 点数に年齢を入れれば年金、障害を入れれば障害年金、死別した家族を入れると遺族年金、医療を受けたことを入れれば健康保険、生活困窮の程度を入れれば生活保護、就学状況を入れれば児童手当・学業手当、リカレント教育を入れれば教育訓練給付制度、妊娠や出産の履歴を入れれば出産一時金、等など。
  2. 点数を弄ることによってベーシックインカムにもなる。直ぐに始める必要はないが、その布石としてシステムを作っておくことができる。
  3. 臨時の給付金(コロナや自然災害など)でも使える。
  4. 点数に年収や資産状況を含めれば、そのまま確定申告の情報として使える。
  5. 所得だけでなく現有資産の把握により点数計算できるため、高額所得者だけでなく資産家(不労所得者)を配慮した点数計算ができ、不公平感をなくすことができる。
  6. 会社負担の概念がなくなるため、特に中小企業には有利に働く。これは金額というよりは、手間が無くなる点が大きい。
  7. 制度がシンプルになることは、国民にとっても監督省庁にとっても自治体にとっても、省資源省コストになる。
    1. 特に自治体の恩恵は大きいと思われる。新たに定額給付金を作って配布事務は自治体に任せるといったような、いわゆる「末端への丸投げ」が無くなるからである。
  8. 給付の形式に控除式を加えることによって、たとえば生活保護世帯において水道光熱費を事実上無償にするといった施策が可能になる。従来は年金を貰ってそこから水道光熱費を払っていたが、先に控除することで確実に支払いができる。これは、水道光熱費の分までギャンブルに使ってしまう、あるいは借金返済を優先してしまう、といったトラブルを未然に防ぐものになる。

社会保険料28兆円がそのまま税金になるため、これには消費税と所得税・法人税に割り振って増やすのが良いだろう。これは結構大幅な上げ幅になる。消費税10%を15%にする、所得税法人税も5%づつ上げる、くらいの勢いである。だが社会保険料はゼロになるので、受け入れられるだろう。

また、公金受取口座への振込ではなく、マイナポイントとして振り込むことも考えられる。これはそこから電子マネー(SuicaやPayPayなど)に移行できるので、銀行口座を持っていない人でも使える便がある他、食料限定とするとフードチケットに早変わりするし、期限を付けることで消費を促すことも可能になる。これらは将来の拡張の布石として使える。

この用に処するためには、マイナンバーの概念は多少拡張しなければならない。つまり、マイナンバーは「日本に住民票がある人」が対象なので、ホームレスや無国籍者、違法滞在者などには支給されない。違法滞在者はまあ除くとしても、ホームレスを救えないのでは生活保護の代わりにはならないし、無国籍者も自分で望んだ人はほぼいないだろうから、対象から外すのは好ましいとは言えない。そういう人にとりあえずでも発行できるように、制度を改善する必要があるだろう。また日本国籍の海外滞在者にも現状では支給されないが、これも不公平感があるので発行すべきだろう。

また、これは膨大なシステムなので、一気に入れ替えることはできないだろう。まずは年金から始めて少しづつ移行するのが良いと思われる。

2025年7月15日火曜日

新社会民主主義構想


先日、舛添要一氏と佐藤優さんの対談を読んだのだが、なかなかに面白かった。それは現在の中国とロシアの街中の話なのだが、両国とも監視カメラが大量にある。さぞ窮屈だろうと思いきや、街は安全になり清潔になり、あるいは交通渋滞が解消されるなど、市民の生活はずいぶんと良くなっているのだそうだ。

つまり、監視カメラによって犯罪が起これば速やかに犯人が捕まるため、犯罪が起こしにくくなっているのだ。清潔になったのも同じで、ポイ捨て等もカメラで見られているからだ。そして交通渋滞が解消したのは、交通の状態をAI解析することで、いわゆる全体最適化がされたためだ。

もちろん思想監視のようなものはあるのでそこについては窮屈だが、大部分の市民は恩恵の方を多く感じ取っているのだそうだ。

一方で自由主義の国はどうかというと、監視カメラはあるにはあるが、欲しいところにあるとは限らないし、カメラの持ち主にいちいち交渉しなければならず、断られても文句が言えない。交通の状態は解析できても相互連携はできていない。経済成長率では中国に大きく劣り、貧富の差は開き、経済が低迷し、右傾化・国粋主義がはびこっている。移民を含め外国人排斥運動なども起きている。これはいったい何がいけないのだろう。

自由主義ではプライバシーも尊重するので、誰が何をしているかを当局は把握できない。これは、単純には犯罪を未然に防ぐことができないばかりか、犯罪が起こっても証拠を取れず捜査がやりにくい。また、経済においても、つまらないところで競争してしまい効率が落ちる、例えば情報流通の規格が百花繚乱になってしまう。また、その状態を把握しようにも、プライバシーやら企業秘密やらがネックとなって把握できない。把握できなければ分析もできず、改善もできない、というわけだ。このため、社会主義国では可能な全体最適化が、自由主義国ではできなくなってしまう。それが情報化社会、AI全盛の世の中において、顕著な差を生み出しつつあるのだと言える。

思想というのは何時の時代でも極端なものから揺り戻しが来るのが常であり、その意味でも、またこの社会主義国の躍進を見ても、新自由主義もそろそろ揺り戻しの時期が来ているのではないだろうか。

それはもちろん、プライバシーや自由主義を完全に断ち切るものではない。かつての社会民主主義の焼き直しともいえるが、どちらかというと思想や思想統制の話ではなく、物流や治安の全体最適化という視点のみで社会主義・全体主義を取り入れる、というものだ。

もちろん新事業などでは競争すべき時期もあるので、何でもかんでも全体最適化すれば良いというものではない。ある程度普及率が高いものに対してそれを利かせる一方、成長著しい領域ではむしろ統一させず競争に任せることが必要だ。そのバランスをのは難しいだろうが、AIのような技術を前提にしてそれを素早く(可能ならリアルタイムで)調整することは可能だろう。そういった技術との結合も、新しい社会民主主義では重要な特徴になる。

つまり、社会の効率に関する部分では過度な競争をせず、仕様はある程度統一しましょう、といった、テクニカルな部分に関しては社会主義を重視するが、それでもプライバシーは保護しましょう、といった、新しい社会民主主義の提案である。

この発想は、民間で流行っている「コーペティション」と基本的には同じものだ。これはcooperation(協調)とcompetition(競争)をつなげた用語で、何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する考え方のことだ。

どういうものを協調領域にするかというと、たとえば交通系はいわゆるMaaSを行うことにある。このためには交通機関の位置情報、料金体系、支払い手段、渋滞情報、運行(事故等)情報、天気予報(注意報警報等含)、といった情報を統一的に扱わねばならず、また全体の指示には従わなければならない。例えば電車の遅延に合わせてバスタクシーの運用を修正する、等だ。物流も同様で、通函のサイズや規格の統一、パレットやカートのID規格統一など、MaaSのような全体最適化物流システムの構築の助けになる情報は共通化しなければならない。

防災に関していうと、監視カメラ映像の取得や解析に関する統一的なルールとプロトコルが必要だろう。使用の許可や申請の判断などを電子化して素早く進めるシステム、またプライバシーを考慮しつつも犯罪や事故事件の発生を自動検知するAIシステムなどが考えられる。

個人情報も同様で、マイナンバーに紐づけた個人のプロパティ(属性)情報を、必要に応じて瞬時にアクセスできるシステムとその権限管理システムが必要になる。端的な例では、今実証実験されている、マイナンバーと紐づけた医療記録の参照である。意識不明で搬送された患者の病歴や投薬歴を、マイナンバーと紐づけて迅速に提供できる。

これらに対する当然の懸念は、主に二つあるだろう。第一はもちろんプライバシーへの懸念であるが、これは相応する監視・権限管理の仕掛けが必要で、あとはその仕掛けがどれだけ正しく動くかに依存する。つまり例えば犯罪には使うが犯罪抑止には使えない、等といった線引きと、その線引きが正しくできていることの監査である。ここが信用できないと拒否すれば、その社会は社会主義国には永遠に追いつけないだろう。

第二は、どこからを協調領域にすべきかの判断である。今の自由主義社会が一方の極端にあり、社会主義国が他方の極端にあるのだろうというのは間違いないだろうが、その最適な位置はどう探れば良いのかということだ。上の例で言うと、発生した犯罪には適用できるとして、犯罪抑止が全面的にダメというのはどうなのだろう。例えば大規模テロを未然に防ぐためなら許されるのではないか。だが空振りもあるだろうし、その名目で不正をする輩も出てくるはずだ。また、あまり明示的でない線引きは、体制側に有利なようにじりじりと引っ張られるのが世の常である。

新社会民主主義構想では、これらの懸念に対する線引き自体を、AIのような技術に任せてしまおうと考えている。そしてその根拠は、大衆心理だ。つまり、明確なルールは設けない代わり、色々な事例に対して社会が肯定的な反応をするかどうかを基に、リアルタイムに仕切りを修正するのだ。

これなら常に社会が納得する線引きが得られるので、自由主義・民主主義を貫いていることの証左にもなるし、実際、大衆の多くは納得するだろう。

そしてこの仕掛けが導入されれば、いわゆる「技術的には可能だがXXがネックでダメ」の類のシステムが多く実現する。上の例も含めてあげるならば、以下のようなものが考えられる。

  1. 犯罪、事故事件、自然災害、火災などの自動検出と通報
  2. 犯罪以前の迷惑行為や事故事件自然災害火災などの予兆検出と通報
  3. 要注意人物のリアルタイム検出と自動追跡
  4. 犯罪予備行為の自動検出と通報(予備罪があるもの)
  5. 大規模災害時の避難誘導経路の最適化
  6. 物流・人流の最適化(平時)
  7. 非常時の物流・人流のう回路確保
  8. 規格の乱立の抑止による社会の効率化
  9. 電子商取引規格の統一、電子商取引の必須化
  10. 完全な電子政府の実現(紙書類の全廃)
  11. 自治体システムの統一
    1. 現在自治体が使っている情報システム(住民情報、納税、福祉など)は、ベンダが多数ありバラバラに開発されている
  12. 電子マネー・コード決済の規格の乱立の抑止、CBDCの強制
  13. マイナンバーに基づく個人匿名認証システム使用の強制
    1. あらゆるシステムへのログインにマイナンバー認証が使える、使わせる
  14. マイナンバーに基づくウォレットシステム使用の強制
    1. 会員カード、ポイントカードは全てマイナンバー認証に統一
    2. 電子チケットの類もマイナンバー認証に統一
  15. 電子契約の強制とマイナンバー認証の強制
  16. 公的書類はマイナンバー認証に紐づけて保管を強制させる
  17. スケジューラやカレンダーなど、主要なアプリケーションのAPIの統一
  18. テレビ会議システムやSNS、SMSなどのプロトコルの統一
  19. PCやスマホなどのローミング手段の統一

たとえば、電話とメールとテレビ会議システムを全て同じマイナンバーでログインして、アプリを気にせず相互に通話ができる。AndroidとiPhoneで同じアプリが使える。ヤマトと佐川で同じ伝票、同じ追跡システムが使える。コンビニでの支払手段がブランドによらず同じ。引っ越しても役所の手続き画面はほとんど違わない。コンサートのチケットも新幹線の乗車券も、同じスマホのウォレットで扱える。スマホを買い替えてもログインし直しだけで継続して使える。引っ越しワンストップで使える業者をいちいち調べる必要がない(全て使える)。ブランド毎に電子書籍管理アプリが違う必要がない。

これらが通ると、一つ一つでも十分に効率化ができるが、多数が相まって相乗効果を生み、数十倍数百倍といった恩恵が得られるだろう。

こういったものが今まで夢物語でしかなかった理由は、大本で考えてみれば新自由主義だったからである。競争領域と協調領域を分けることができる「新社会民主主義」なら、中国やロシアに十分対抗できるはずだ。

2025年6月4日水曜日

生成AIをいじめて遊ぶ

 

「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。

どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあまり変わらないことに気付いた。つまり、

  1. 定義や前提が誤っていることを指摘する
  2. 世間で既にウソと分かっていることを主張していることを指摘する
  3. 定性的議論に終始し、定量的議論ができていないことを指摘する
  4. 視点が一方的であることを指摘する
  5. 批判的思考ができていないことを指摘する

などである。

最初に入力するのは、時事だったり自分のアイデアだったりと色々だ。先日は、鉄筋コンクリートに代わるグラスファイバー筋コンクリートの可能性について質問した。すると生成AIは困難と言い、色々と問題点を指摘してくるので、それら一つ一つについて反論をしていく。そうすると次第に生成AIは追い詰められ、その可能性を認め始める。その過程が興味深い。

この場合、初期状態では延性や熱膨張率、剛性、座屈といった弱点を指摘してくる。だがそれらは鉄筋コンクリートに対する弱点であって、建材として認められるかどうかは別だ、と指摘したり、形状や材質の工夫を考慮していない、と言ってみたり、定性的議論に陥っているから定量的に示せ、と言ってみたりする。

陰謀論者と違うのは、それらの指摘を真摯に受け止めて議論をちゃんと修正するところだ。そうすると、鉄筋コンクリートには劣るが建材としては基準を満たす可能性や、形状や材質の工夫で延性剛性を強化する可能性を探ってくれたりして、その可能性を認める。それでも研究されていないことなどを理由に反論してくるので、今度はなぜ研究されていないことが難しい理由になるのか論理的に説明せよ、と聞いてやる。すると論理的な理由はなく一般論として、研究されていないことは難しいからである場合が多い、と言ってくる。するとこちらは、ただ興味がなくて研究していないだけかもしれない、と突っ込む。すると研究されていない理由を探し、途中で断念した例が見つからないことから、そうかもしれない、と返してくる。

これが陰謀論者だと、屁理屈を返してきたり無視してきたりする。だから話が進まない。そこで、もし自分が陰謀論者だったら、と考えてみると、逆にAIにやり込められるのではないか、と思いたち、生成AIに対し「自分が陰謀論者になるので、貴方は論理的に事実に基づいた論破をしてくれ」と頼んでやって見たのだが、どうも上手く行かない。暖簾に腕押しで、論破してくれないのだ。

どうも生成AIは、質問者に対して厳しく間違いを指摘することを避ける制限が掛かっているようであり、またコロナワクチン陰謀論などのように医療や政治などに対する議論は特に避けるような別の制限が掛かっている。陰謀論というのはこういったクリティカルな話題で特に多いので、せっかくの性能も宝の持ち腐れだ。

実は、この手のモラルが比較的緩いとされているGrok3でも試みたのだが、論理的・量的理論に基づく反論はどうも苦手らしく、幾らでも(陰謀論者的な)反論ができてしまい、最終的には千日手のように、論破されても同じ主張を繰り返す、というヘンな構図ができてしまった。これでは(陰謀論を論破する側が)陰謀論者のロジックで話していると変わらない。

これらから総合すると、生成AIはまだまだ陰謀論者に騙されるだろうし、生成AIによる説明や説得にも陰謀論者的な(不完全な)ロジックがまかり通っている、と考えざるを得ない。生成AIの答えは鵜呑みにするなとはよく言われるが、生成AI自体が陰謀論を吐く可能性はまだ(かなり)残っている、と言えるだろう。

2025年5月5日月曜日

人は死んだらどこへ行くのか

 以前、「魂とは情報である」という仮説

https://spockshightech.blogspot.com/2017/01/blog-post_19.html

を書いたことがある。そこから演繹していくことによって、この問題に挑んでみる。

魂とは、大雑把に言うと、脳というコンピュータに書き込まれたプログラム、及びデータのことである。ただ最近では、脳だけでなく、全身の臓器にも記憶が埋め込まれていることが分かっていて、それはいわゆるメッセージ物質の出易さや出る条件が人によって異なることだ。そういう「癖」も含め、情報は人間を形作っている。

その情報は、新しく取り込まれ消化されるとともに、体外にも出ていっている。例えば本人が揃えた本のコレクションは、その本人の個性を反映している。ブログやSNSでの発言、メールの文面、写真や動画などもそうだ。あの人ならこう言うよね、というのが他の人にも伝わっている、これも情報であり魂の一部と言える。つまり、他人にも自分の魂の一部があり、自分にも他人の魂の一部があると言える。

さてこの情報は、コンピュータの情報と違って明確に線引ができない。つまりこの情報は自分のもの、この情報は貴方のもの、という区別が難しいのだ。ファジー理論ではないが、自分90%、他人10%といったように、情報は交差している。だからよく、親しい人が死んだ時に「貴方の心の中に生きている」みたいなことが言われるのだが、これはその意味で本当と言える。

そして、人が死ぬと、体内の情報はほぼ失われるが、体外に出ている情報はまだ残っていて、それが魂である。だが例えば、体内の情報が9割だとすると、体外に出た情報は1割しかない。つまり、人が死ねば、魂のほとんどは失われるが、全部ではない。ただ、その1割が散逸していて、また自分の中にあるその人の魂の一部は感じられるが、それはその1割の、更にその何十分の1に過ぎない。だからほとんどその人を感じられず、悲しくなるわけだ。

最近中国で流行っている、SNSの発言などを基に死んだ人の仮想人格を作り出す作業は、この1割を再構成して人に分かりやすく見せているものだと言える。なのである意味、これは本物の魂であると言える。1割だけど。

体外に出している情報が多い人ほど、その再現性は高まる。だからもし、24時間365日その人を監視して、映像と音声を撮りまくり、更にその再構成を精密に行うならば、魂の4割とか6割とかを再構築することは、将来的には可能になるかもしれない。

またそもそも、人の魂の形成とは、外部からの情報の取り込みによるものである。本を読み、他人と会話し、運動や経験をするというのは全て、外部から情報を取り込んでいるのである。それを体内で咀嚼し自分なりに構成したものが魂なのであって、であれば(本人が接する)外部情報だけ取り込んだとしても、魂の再現はある程度可能になるはずなのだ。ここらへんの考え方は、やはり以前に書いた「中国語の部屋」

https://spockshightech.blogspot.com/2017/05/blog-post_26.html

と同じである。

ここで表題の「人は死んだらどこへ行くのか」を改めて考察してみると、次のようになる。

まず肉体的には消滅する。日本の場合はほとんど火葬なので骨しか残らないが、魂(情報)はその残った骨にはほとんど残っていない。手術をした関節ジョイントの跡とか歯型とか、全くないわけではないが、多くの場合それは魂と言えるようなレベルではない。そして、その他の方法で体外に出ていた情報を統合することは可能だが、その再現性はおそらく1割以下で、高くない。また、その再現性を高める工夫をすることは可能であり、それは本人が体外に出していた情報をできるだけ多く集めることだ。その統合にはAIを使うことになるのだろう。元々情報なのだから、肉体のように単一のものではなく、その集め方や分析の仕方次第で幾らでもバリエーションが生じることは考えられるし、コピーも資放題だ。

この場合「どこへ行くのか」とは、「コンピュータ上の情報になる、それ以外は散逸して何れはノイズ(雑音)に埋もれて消えてしまう」ということになる。

2025年2月6日木曜日

車椅子社会の実現

 以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2020/12/vr_23.html

という投稿をしたことがある。メタバース空間を、全て車椅子前提で設計してしまおう、というものだ。こうすることによって、人は机に椅子、キーボードとマウス、という状態で、メタバース上で一日中過ごすことが可能である。その上で、メタバース上の広大な空間を行き来することが可能だ。

これをもっと進めると、実社会も全て車椅子で移動するようにできないだろうか。今の社会は歩きがデフォルトで車椅子が例外だが、これを逆転するのである。これについて少し考えてみる。

この場合の車椅子は、机とノートタイプPC、移動のためのジョイスティックを備えた、電動のインテリジェントタイプである。これでどこへでも行けなければならないので、当然ながら坂道は極力無くし、階段は廃止、トイレも広いものしか赦されない。電車や飛行機、自動車などの乗り物は設計のし直し必至、更には道路や家なども設計し直しになる。

というわけで、これはさすがに無理だ。だが、大規模なショッピングモールとそれに併設するマンション、といった形なら可能だろう。これは以前

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/blog-post_31.html

として紹介した街を、更に車椅子前提で設計するようなものになる。この場合、家や教室、事務室などのサイズは更に広くなるが、天井は若干低くて良い。それ以外に大きな変更は必要ない。

この世界で実現できることは、フレキシブルシティ構想で提案したような「完璧な人流・物流の自動化」「完璧なラストワンマイルの実現」と考えてもらって問題ない。これに加え、「車椅子前提メタバースとのシームレスな接続」もできるようになる。

例えば、普段は普通に学校に通うのだが、感染症が流行した際には、全く同じような教室メタバースに「登校」することで、支障なく授業を続けることができる。先生や友達の顔がアバターになってしまうが、視線や移動の仕方が全く同じなので、違和感を低減することができる。

また、観光旅行を計画していて、それが何らかの不具合で中止になってしまったとすると、旅行会社はVR体験で次善策を打つことができる。天候不順などのときでも同じような対処が可能である。

逆に、旅行や出張などの出先で、自宅や会社に用事ができてしまったとしたら、現地でXRグラスを装着してVR空間に入り、仮想的に自宅に戻ることもできる。現実を反映した空間にしておくことで、例えば忘れ物の位置まで把握できるだろうし、書類がどこにあるかも探せるだろう。

また、街に出ていて道に迷った時、一時的に仮想空間の同じ街の同じ位置にジャンプして、そこで検索を掛けたりAR表示をしてもらったりして場所を確認した後、現実空間に戻って移動する、といった芸当もできるようになるだろう。

だが、隠れた真のメリットとでも言うべきことがあって、それは「車椅子使用者の真に公平な扱い」である。現代社会は歩行がデフォルト、車椅子は例外の扱いだが、この社会では車椅子がデフォルトなので、既存の車椅子使用者は例外からデフォルトに変わる。トイレや移動の不便が無くなり公平になるので、逆に不慣れな新米を尻目に活躍できるだろう。

フレキシブルシティのような街を作って、そこに車椅子ネイティブな人を誘致する。その街は車椅子の人でも普通に生活でき、普通に仕事ができ、普通に勉強ができ、普通に医者に掛かることができる。車椅子生活をしている人は、日本の人口の1.6%ほどいるという。その多くは、普段の移動に苦労しているはずだ。そういう人が普通に活躍できるだけで、日本のGDPの1%くらいは追加で稼ぎ出してくれるのではないかと期待できる。投資対効果としては十分である。

2024年12月11日水曜日

境界知能の人の教育と仕事

 知能指数にしてIQ70未満の人が知的障害、IQ70以上85未満人を境界知能と呼ぶ。知的障害者が2%、境界知能が14%で、合わせて人口の16%に当たる。

こういった人たちのための教育には、特別支援学級や特別支援学校が存在する。だが、これは知的障害だけでなく肉体的障害の子供も含まれる。これを統計的に見てみると、

  • 境界知能: 約14%
  • 知的障害: 約1~2%
  • 視覚障害: 約0.1%
  • 聴覚障害: 約0.1~0.2%
  • 肢体不自由: 約0.2%
  • 病弱・虚弱: 約1%

となるそうなので、境界知能が圧倒的に多いことが分かる。そして境界知能は立場的に中途半端なため、普通学級で劣等生として扱われ、自信をなくしてしまうようなことも多いと考えられる。障害者保護などにおいても、検討の対象から外れてしまうことが多い。だが彼らは人口の14%もいる。彼らが無視されるのは社会の損失である。

ここから考えるのは、特別支援学級や特別支援学校の対象として、境界知能はふさわしくないのではないか、独立させた方が良いのではないか、ということだ。14%の境界知能者向けの教育機関を新たに設け、特別支援学級や特別支援学校はその他の障害の子供に専念する方が効率が良いのではないだろうか。

境界知能の人は肉体的問題はないので、将来的には主に肉体労働(ないしは芸術的労働)についてもらうことを前提として、知能の部分をAIなどで補完するように社会を構成する。もちろん知的部分で騙されないように、信頼できるアドバイザとしてのAIである。騙そうとする輩から彼らを保護するための社会的仕掛けさえあれば、彼らは社会で活躍できる。

肉体労働とは言っても、筋肉が必要な訳ではない。現代では機械がサポートしてくれる。知的な部分で迷ったら、(AIの)指示通り動けば良い。そしてそういった系統の職業では境界知能を優先させ、健常者の就業を制限するようにする。例えば建築業界なら建築業界が全てそのようなAIをデフォルトとする。こうすると、平均知能以上の人は建築業界にはいなくなる(厳密には監督など指示系統には必要)。そういう人は知的労働に廻ってもらう。

こうなると、少ない人口の中で各々得意分野に棲み分けができるので、社会全体の効率は良くなるし、今まで活用できていなかった境界知能の人が生き生きと働けるようになる。効率化の程度は10〜20%くらいは行けるのではないかと思う。今でも境界知能の人は社会に出ているが、この仕掛けが回ればもっと活躍できるだろうし、所得も上がるだろう。AIを用意するコストは、当初は大きいだろうが、これは国が補助をしてやればよい。

社会的仕掛けとしては、境界知能認定を行う必要がある。免許のようなものだ。この認定を受けると上記のような職業に優先的に就業できるようになる。また法律で、認定者に対して直接あらゆる契約をすることは禁止として、AIないしは担当カウンセラー経由で行うことが義務付けられる。

これは買い物のようなものも同じで、例えばコンビニで買い物をするにもAIの確認が必要である。ただ、その内容をいちいちチェックするのではなく、金額や頻度などから怪しいと思えば分析する、くらいの介入になる。一方で高額な契約や継続的な契約は一切認められない。このためにも、当人の現金やクレジットカード・電子マネー等は全てAIが把握するようにする。AIの手に余るものは、担当カウンセラーないしは専用コールセンターが24h365dで待機しており、音声での相談が受けられる。

雇う企業の側にはライセンスが必要であり、定期的な審査もある。認定者への作業要求が過大でないこと、適切な支払いがあることの確認が必要である。その代わり、対応のための費用は国の補助が出る。

このようなAIが出てくるのはまだ数年掛かるだろうし、その信頼性が確認されるのにも更に数年掛かるだろう。5〜10年後くらいを目処に、こういった社会制度の整備を検討してはどうかと思う。

また、これは知的障害以外にも同様のことが考えられる。例えば四肢障害において、ロボット義手やBMIのサポートを前提とした知的労働への参加を補助するようなものだ。外国人なら自動翻訳など、事情に応じた機械やAIの補助とその資格認定、国の補助を組み合わせる。

境界知能の人は人口の14%もいる。この数は無視できない。彼らの有効活用は、社会の効率化になっているし、彼らの尊厳も維持向上できる。少子高齢化への対策としても有効である。

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