2017年8月31日木曜日

AIによる契約書チェック


契約書を盾にした強引な訴訟やごり押しを避けるため、契約書をよく読むことは企業間の取引においては必須だ。法務部門があるところはよいが、中小ではそうも行かない。そこで提案するのが、AIに契約書を読ませることで、リスクを事前にロジカルに洗いだすことだ。このサービスを中小企業向けに提案する。

もちろん大企業でも可能だろうが、その契約書はより複雑になり、解釈も曖昧になるだろうから、中小から始めるのが良かろう。それは契約書のロジックを明らかにすると共に、一般的な契約からの逸脱や曖昧な点が何処かを指摘するものだ。リスクがどの程度あるかを事前に分かった上で契約する、ただそれだけでも大いに違う。

もちろん、違法だったり、極端に不利な契約だったりすれば、その旨は電子的に記録される。いわゆる中抜きやパワハラに対してはそれなりに警告が出たり、監督省庁への通知が自動で行われたりするようにすれば、一定の抑止効果が出るはずだ。

紛争が起きたときに裁判所に縺れ込むのは、お互いの契約に対する認識が曖昧だからだが、AIであらかじめ構造が分かっていれば、どちらが悪いのかは明確にしやすくなる。それでも裁判がゼロになることはないだろうが、統計的に数が減れば、それだけ社会効率が向上することを意味する。従って、国や自治体がAI契約を推奨することには大きな意味がある。

日本のGDPの半分は中小企業が生み出している。、その多くで契約トラブルが例えば半分に減るなら、それだけでも景気が向上しそうな気がする。

2017年8月30日水曜日

磁気ネックレスは効くのか


磁気ネックレスが効く理由として挙げられている、マイナスイオンやらヘモグロビンやら生体電流やらというのは、理論としていまいち納得できない。疑り深いひとには効かないようだから(笑)自分には効かないのだろうか。だがこの肩の痛みは何とかしたい。

磁気が体に与える影響として考えられることは二つ。一つは磁性体を引きつける力、もう一つは磁場の中を体液が通過することによって発生する起電力だ。このうち前者には特にメリットが見出せない。後者が神経を刺激することは考えられるが、これが肩凝りを解消できるものかどうか。

肩凝りを解消するには、豊富に体液を循環させて栄養を届け、老廃物を吐き出し、傷を修復する必要がある。このうち、少なくとも磁気には栄養を豊富にする機能はない。傷修復の活性化は、神経刺激と細胞を直接刺激することの両方が考えられるが、原理的に納得できるものはない。体液循環の活性化は、活性化すれば肩凝りが解消することはあり得る。だが、体液を循環させるためには心臓に働きかける必要があるが、首からは遠い。

しかし、体液循環にはもう一つの原理があり、それが「筋肉ポンプ」だ。筋肉の収縮に合わせて血管も圧を受けて潰されたり元に戻ったりするが、静脈には弁があり、逆流しないようになっている。この収縮で静脈が潰れたり元に戻ったりすることで、心臓とは関係なく血液を循環させることができる。ふくらはぎの筋肉は特に、重力で足に溜まりがちな血液を押し上げるのに重要で、ふくらはぎが細い人が冷え性だったりするのはこれも一因と考えられる。これから考えられる原理が一つある。

心臓の動き(1分間に70回程度)に合わせて、血液の流れは速くなったり遅くなったりしている。肩に磁気ネックレスで磁場を形成すると、その流れの強弱に合わせて起電力が発生するが、これが微細な電流となって筋肉の神経を刺激し、ほんの僅かだが筋肉が収縮する。この微細な収縮が筋肉ポンプとなって、血液が通常以上に流れ、老廃物を排出し栄養や酸素を補給する。

つまり、磁気ネックレスをすることには、理論的に納得できる原理がある。また、この原理からすると、磁気を発生しないチタンネックレスには意味がなく、磁気ネックレスの売り文句である「血液の循環を促進する」という説も、(意外にも)正しいことになる。磁気の強度も強いほどよい。

この理論を検証することは容易い。磁気ネックレスを使っている場合と使っていない場合、各々で筋肉の微細な動きを調べ、体液循環の量をそこから推測すればよい。

ガッテンあたりで調べてくれないだろうか。

2017年8月29日火曜日

二重ブロックチェーン


ビットコインの分裂が、2017年8月に発生している。ブロックチェーンに関する懸念は以前にもしたことがあるが、それとは違った懸念が表面化したように思う。今回の問題は処理性能の向上のための規格の変更に関するトラブルだが、他のブロックチェーンでも何れは直面する問題だ。つまり、
  1. 台帳の整理問題
  2. 性能問題
この二つは避けて通れない。改めて整理すると、前者は全ての取引(トランザクション)を永久に保存するのかどうか、保存しないのならどのように整理するのか、という問題。これは記憶容量とその効率の問題でもある。後者は、トランザクションの処理速度は、検証の速度との相関にあるため、時代(機器の性能)と共に増えていく性質のものではない、ということ。つまり、処理数が時代と共に増えていくことへの対処が簡単にはいかない、ということだ。また、性能が向上すれば記憶域消費のスピードが上がるから、この二つも相関関係にある。

この問題に対処するために、従来のブロックチェーンとは相反するようなシステムが提案できる。それは、ブロックチェーンの二重化である。銀行網のような、信頼性を社会的に担保した高速なブロックチェーンと、個人の口座のような、処理速度や記憶容量に様々な制約があるが取引回数が少ない一般ブロックチェーンがあり、各々を繋ぐシステムだ。

前者を銀行ブロック、後者を口座ブロックと呼ぶことにしよう。後者同士が取引をしようとするとき、その取引自体を銀行ブロックに検証依頼する。銀行ブロックはその検証をチェーン内でランダムな割り当てで行い、その後多数決などで承認する。銀行ブロックはその承認を受けて口座ブロックに取引の実行を許可する。このブロックチェーンと既存通貨との交換は、銀行ブロックが保証する取引所で行う。

銀行ブロックは、全ての取引台帳を共有し、将来的にシステム変更があった場合には協議した上で矛盾なく移行することを保証する。一方で口座ブロックは銀行ブロックのシステム変更を受け入れることを保証され、また取引台帳は自分の口座に関するものだけに限定できる。自らが検証をすることはない。

今のブロックチェーンがベンチャーなら、このブロックチェーンは政府公認ということになる。既存の通貨とは異なる仮想通貨での流通ということにすれば、為替相場は相対取引で自然形成されるから問題あるまい。この方式なら、多少怪しい口座が紛れ込んだとしてもブロックしやすいし、今のビットコインのように相場が荒れる心配も少ない。また、「採掘」の概念をなくすことで、新しく作った口座は必ず0円(単位は知らず)から始まり、取引所のレートは市場で決まるので、不正が入り込む可能性は低い。

結局これは今の銀行網と同じなのだが、従来の銀行網は、特に海外では意外とローテクで、処理は手作業で行うところもあったりする。振込みや送金が100%間違いなく且つ遅滞なくできる、それだけでもこのシステムに移行する価値はある。

2017年8月28日月曜日

センサ服


服にセンサーを搭載し動きを検知する「e-skin」個人向けに提供

この記事で注目したのは、これがTensorFlowに対応していることだ。少し残念なところは、4時間しか持たないこと。

TensorFlowに対応しているということは、個性を加味した上で特定の動作をしたことを精度良く検知できることになる。これには二つの側面があり、一つは特定のジェスチャーをコマンドとして認識させること。もう一つは、何らかの自然な動作を検知できるということだ。

前者は分かりやすいだろう。リモコンの操作をジェスチャーにするものだ。テレビに向かって手を右に動かせばチャネルが変わり、上に動かせばボリュームが上がる、といった類のものだ。だがこれより後者の方が重要である。例えば急に胸を押さえて倒れこんだとか、転倒したとか、急に向きを変えたとか。つまり、肉体的なアクシデントを検知する方法としてこれを使えるわけだ。

ただ、アクシデントだけを検知するには少々装置が大袈裟に過ぎる。そこで考えるのが、もっと普段使いができるようにすることだ。ここでは二つの事例を紹介する。

その一つは、運動不足の把握と解消だ。これは今で言うフィットネストラッカーの高級版と言える。単に運動量を計るのではなく、運動の種類までを細かくチェックできる。また、運動だけでなく、肩こり(同じ姿勢を維持してしまう)やストレッチ不足(関節を十分に曲げ伸ばしていない)なども検知できる。一日の動きの中で何がどの程度足りないかを把握し、その解消に向けた運動メニューや、自然な動きでの補完(階段を使いましょう、など)を提案する。

もし本人に持病や未病不具合があったり、一定の目標がある場合なら、それに合わせて負荷を調節できる。これはスポーツソフトでよくあるインターバルトレーニングの拡大版になる。

もう一つの使い方は、スポーツのコーチングだ。単純には武道の型や素振りなどの補助、もっと高度になれば戦略的アドバイスをする。前者は比較的単純で、例えば目の前にコーチがいなくても、電気刺激と音声サポートで正しい動きになるように補正する。右の手をもっと上げる必要があるなら、その場所に電気刺激をして位置を知らせ、音声で「ここをもっと上げて」と言えばよい。後者は、相手の動きに合わせて自分の体をどう動かすかをアドバイスするものだ。もちろんどちらも本番では使えない。

人間の寿命が延びたのは、食べ物の改善と医療の進歩によるところが大きいと思う。この次は肉体的な健康、最後は精神的な健康、この二つをクリアすれば寿命は更に延びると思われる。これはその肉体的な健康に大いに貢献するだろう。

どちらの使い方も大いにビジネスチャンスがあるし、自分でも使ってみたいと思う。

2017年8月27日日曜日

超音波VAPE


VAPEとは、液体を使うタイプの電子タバコだ。日本でも既に購入可能だが、あまり普及しているようには見えない。

PG(プロピレングリコール)とVG(ベジタブルグリセリン)からなる液体にフレーバーを混ぜたものを電気で加熱してその蒸気を吸うのだが、この加熱のところがいい加減なものが多く、焦げ付いたり、最悪の場合は発火したり爆発したりする。加熱温度の範囲は狭いので電子制御が必要なのだが、センサの位置や精度の設定には相当のノウハウがあるようだ。また、加熱コイルは消耗品で、何回か使えば交換しなければならない。

加熱するからこそ大電流が必要、電池も大容量が必要、制御も大変、という問題を一気に解決しうるのが、提案する超音波式だ。何のことはない、超音波加湿器の小型版を作ればよい。原理的に、発熱しないのでエネルギー消費は少なく、電池は小さくて済む。発火の危険が高いリチウムイオン電池を使う必要がなくなる。

また、発振子を液体に暴露する必要はない。液体タンク内に発振子を付け、外部から発振を励起すればよい。このため、発振子は消耗品にならない。タンクの発振子自体は液体に触れるが、コイルと違って焦げ付く心配はないので、もし消耗品だとしても長時間使えるはずだ。

問題になりそうなことは二つ。一つ目は、市販のVAPE用リキッドがそのまま使えるかどうか。加熱前提の調合だから、気化しにくかったりフレーバーが変わったりするかもしれない。二つ目は、タバコ類似の「煙」(蒸気)が上手く出るかどうか。タバコを吸わない身としては出なくてよいのではないかとも思うが、喫煙者に言わせると「吸った感」のためには必要なようだ。これらは専用のリキッドを開発すれば済むように思う。

2017年8月26日土曜日

AIには絶対できないこと


以前の投稿「 AI寿司職人は美味い寿司を握れるか」と関連して、「AIには絶対できないこと」、とGoogleで検索してみると、出るわ出るわ。無名有名入り乱れ、色々な説が唱えられている。

だがどれも、技術的に不可能であることを証明・説明できていると言えるものはなかった。自分に言わせれば、上の投稿と同じく「人間の能力を過大評価している」あるいは「コンピュータの可能性を過小評価している」ように見える。
  1. 創造力
    • 上の投稿で示した通りだ。
  2. 発明
    • 発明も既存のモノの組み合わせだ。だからデータが既存のモノだけでも、発明をするように設計したシステムを作ることはできる。データの出し方が既存のAIとは異なるが、これも単用途AIの一種として設計すればよい。チャレンジブルではあるが、原理的にできないという証明はできないだろうし、途方もないというほど難しいとは思わない。
  3. ルールを破ること
    • ルールは学習のための一データに過ぎない、と位置付けるだけで可能だ。もちろん絶対に破らないように設計することもできる。
  4. 勘、直感、ひらめき
    • 勘の本質は、明文化できない、また厳密ではないルール(因果関係)で、これは深層学習における関連性推定そのものだ。既にできている。
  5. 感覚
    • IoTの時代に何を言っているのだろう。センサのパラメータ(及びその組み合わせ)だ。
  6.  臨機応変
    • 当然できる。臨機=外部パラメータだ。
  7. 感情
    • 表情などから感情を読み取るAIは既にある。いじめれば泣くロボット、おちょくりに怒るアバター、幾らでも事例はある。
  8. 個性
    • 学習データが全く同じでも別の結論を出すAIなど、造作もない。
  9. 忘れること
    • 深層学習は、最初に学習したことを徐々に忘れている。また、学習時刻に連動して影響を可変にするようなアーキテクチャも可能だ。
  10. 疲れる、間違える
    • わざわざそうすることに意味があるかはさておき、設計でそうすることは可能だ。
  11. 意思
    • これも定義の段階で曖昧だが、その定義に従って設計をすることは可能だろう。
  12. リーダーシップ
    • 音声やメールなどで人間の感情を制御(誘導)することは可能、課題を与え報酬を設定することも可能。もちろんそう設計する必要はあるが、可能だ。
  13. 少ない事例からの推察
    • 無論可能だ。精度が悪いのは人間と同じ。また他の学習結果をベースにして推察することもできる。
  14. 起業
    • 少なくともイチゼロで考えるなら可能だ。起業を目的とするAIを作ればよい。
  15. 普通の人(汎用AI)
    • 多数の目的別AIを束ねるAIを作ることは可能で、その目的別AIの種類が十分に揃えば、汎用とみなすことは可能だろう。ここでその種類が幾つかが問題になるが、人間だって無限ということはあり得ないから、それをもって不可能とは言えない。
ひとつひとつには細かな考察が必要だが、おおむね実現のための課題設定や解決方法などには光が見える。もちろん上の殆どは今存在していないし、「苦手」と言えるものもあるかも知れないが、「絶対にできない」あるいは「当分(原理的に)できそうにない」ものは一つもない。

2017年8月25日金曜日

乗り遅れアラート


電子チケットと位置情報を連動させておき、予約までの時間に「その場所」に行けることが確認できない場合にアラートを出すシステムを提案する。

例えば飛行機だ。搭乗15分前にはゲートに居なければならないなど、いくつか関門を設けておく。現在時刻と現在位置、交通機関とその遅延情報などから逆算して、今直ぐに動かないと間に合わない、というときにアラートを出す。

あるいは、搭乗手続き後にまだ搭乗していない乗客を探すために、航空会社側がスイッチを押すと、その乗客の位置が分かる、というものも考えられる。こちらの方はあまり遠方から許可しては問題だから、空港内などと限定する。また、こちらからプッシュでアラートを上げるだけなら問題なかろう。

飛行機に限らず乗り物全般、あるいは時間指定の映画館やイベントのチケットなどに対応できる。ガイド付きのツアーであれば、時間までに集合場所に現れないトラブルをこれで回避できる。

プライバシーの問題さえクリアできれば、スマホにソフトを乗せるだけで済む。技術的障害はない。

2017年8月24日木曜日

バリアフリーの衰退


最近のショッピングモールは、道幅も広く、多目的トイレも豊富で、階段の横にはスロープがあり、車椅子の貸し出しもあるなど、バリアフリーを考慮している。もちろん法的な側面もあるのだろうけれども、高齢者の割合が増えてきたことも手伝って、良い循環になっている。

一方で、スマホによる3D空間把握や歩行補助ロボットなどの市場が立ち上がりつつある。これは逆に、障害者が健常者のように振舞えることを目指しているとも言える。もしこちらの方が急速に発達すると、従来のアプローチとは逆行する結果を生むことになる。つまり、バリアフリー設計が必要なくなるかも知れない。

サイバーダイン社のHALシリーズは、歩行支援と重量物持ち上げ(腰)支援、単関節(肘、膝)のタイプがある。健常者でも、例えば歩行なら素早く、あるいは長時間歩けるなど、メリットはある。音声による歩行支援があれば、目をつむる理由が単なる怠慢であっても問題なく歩けるわけだ。

もちろん、それを前提として社会が更にアンチバリアフリーになる可能性はある。狭くて急な階段しかなくても障害者が住めるとか、用意があった車椅子がなくなるとか。が、その代わりにそういった補助具を貸し出せるなら、それも良しとなるのかもしれない。

もちろん、セニアカー一つとってもろくに普及していない現状を見れば、この可能性は低い。だが、サイバーダインを付けた高齢者が多数、街中をかくしゃくと歩き回る姿を想像すると、少し楽しい。

2017年8月23日水曜日

リニアモーターフロアパネル


ロープなしで動く“高速エレベーター”が世界初登場!

要はリニアモーターで動くエレベーターらしい。そして垂直だけでなく水平も移動できるという。思えば「スタートレック ザ・ネクストジェネレーション(TNG)」であったターボリフトも水平を移動できるエレベーターで、ロープを使っていない。

リニアモーターと言えば高速鉄道、と短絡的に思いがちだが、考えてみれば低速だってよいし、このエレベーターのような短距離での使い方だってよいはずだ。もっとリニアモーターの使い方を考えても良いのかもしれない。

このエレベーターの使い方は、従来見えてこなかったリニアモーターの新しい利点を示している。つまり、水平と垂直両方の駆動系を組み合わせ、格子状の軌道に対して縦横無尽に移動できるということだ。これを水平にして考えるとよく分かるのだが、床に駆動系を埋め込んでおいて、永久磁石だけが付いた台座を持つ台車を、平面の何処へでも移動することができる。

床に埋め込むのは、多数のコイルが仕込まれたパネルだが、せいぜいOAフロアの床タイルに毛が生えた程度の厚さでよく、配線も同じくOAフロア下に仕込める。動かせるものは基本的に台車だが、滑りが良く、床面側に規定のパターンの永久磁石さえ埋め込んでおけば何でもよい。棚でも椅子でも机でも良いし、更にコイルを通じた無線給電もできる。極端な話、椅子に座ったまま、エレベーター昇降して別のフロアの会議室に移動することだって可能だ。

また、この応用として、地震の際のファシリティの制震が考えられる。つまり、その場に強い磁力で押し留めることができるのだ。同じ原理で、見た目を細くしても倒れにくい家具を作ることもできる。突っ張り棒が必要なくなるので見た目も良くなるし、上手くすれば引っ越しが自動化できたり、自動車などへの搭乗にも応用できる。

この技術が成功するためのカギは、フロアパネルの規格化と制御ソフトの簡便さにある。既存のフロアにこれを新たに敷き詰め、コンセントに挿してソフトをインストールだけで自由に制御できること、また全てのフロアの段差をなくすことだ。エレベーターなどでは入口の段差解消が必要になる。ソフトに関しても、地震検知による自動制震、AIを取り込んだ自動ルーティング、天候や在庫管理と連動した配置の推奨など、使いやすくするための工夫は多数考えられる。

細かいことを言えば磁気対策をどうするのか、パワーレベルをどう考えるかなど色々あるが、衣替えがスイッチ一つで出来るとか、時間帯に合わせて家具の配置を変えるといったように、大きなものの移動を気軽にできるようになるのはなかなか夢のある未来ではないだろうか。

2017年8月22日火曜日

LPWA緊急通信網


低消費電力(20mW)で低速(80bit/sec)だが長距離(100km)通信ができる、といった通信の規格の開発が盛んになっている。IoTシステムの通信手段として注目されている。

様々な応用が考えられるが、携帯電話網がない山間部や海などでも通信できるから、防災用途は注目される。例えば登山や救命胴衣に付けることを義務付ける、などは考えられる。

100km間隔でLPWA基地局を設置することは、携帯電話基地局を設置するよりは簡単だろう。LPWA専用のSMSを設定し、そこを通す通信について一定の(できれば法的な)制限を掛けてやることを考える。緊急地震速報などの緊急通報(ブロードキャスト)と、SOS(遭難など)を最優先で通し、その情報がない場合のみ他の情報を通す、という仕掛けにしておく。

これには二種類の機器が考えられる。一つ目は、大容量の電池を持つ大きめの装置で、GPSが常に稼動している。場所を定期的に通知し、それが途絶えたことをもって遭難とみなす。もう一つは小さなもので、電池容量も小さい。こちらもGPSを内蔵しているが、普段は動いていない。SOSボタンを押すことで初めて作動し、救難信号を発信する。また、一定の信号を受信することで作動し、場所を通報する。

前者の代表としては、雪崩ビーコンやパラグライダーなどの危険スポーツで、SOSボタンを操作する暇がないことがあり得る、且つ十分に準備ができるもの。後者は簡易的なもので、簡易的な登山やキャンプなどを想定したものだ。ここでは後者についてさらに考えてみる。

簡易的なものと言っても用途は様々で、恐らく形状も様々になる。最初の形態は、スマホに内蔵する、ないしはスマホと連動するタイプだ。操作はスマホ画面から行うが、通信をLPWAで行う。スマホとはBluetoothないしは有線(USB)で繋ぐ。これなら、携帯電波が届かなくても、SMSで通信をし続けることができるので、携帯回線の延長として使える。

次は単独で動作するものだ。衛星電話用で似たようなものは存在するが、SOSスイッチを入れることで指定のSMSを送信する。ペンダント型、時計型などが考えられる。これは登山や探検などを想定する。

三つ目はSOSスイッチを持たない埋め込み型。これは特定の通信を受け付けることによってのみ動作する。子供のランドセルや徘徊者の靴などに埋め込む。あるいは盗難されて困るもの(車など)に取り付けておく。いない(盗まれた)ことに気づいた人が操作して場所を突き止める。これは緊急通報を受け付けない。

何れも基地局が存在することが前提ではあるが、もし基地局をプライベートで建てられるのであれば、直ぐにでも欲しいものだ。もちろん公的な期間でも検討してほしい。

2017年8月21日月曜日

霊能力開発


以前何回かの投稿で、魂は記憶の塊であるという説を唱えた。また以心伝心や呪いなどについいても説明を試みた。これと同じく、霊能力もこの仮説で説明がつくかもしれない。

現在の仮説では、魂は記憶の塊であるとは説明したが、それがどのような媒体に載っているかは不明である。もちろん基本的には脳だが、体の細胞のあらゆるところにも存在する可能性がある。そしてそれが空気中を伝搬するのであるから、その伝搬方法は
  1. 電磁波
  2. 音波
  3. 重力波
の何れかであろうが、このうち重力波は考えにくい。体の組織が発生させ得る重力波のレベルはあまりに小さく、検知もほとんど不可能と考えられる。音波よりは電磁波の方があり得そうだが、断定はできない。ここでは電磁波であると仮定して話を進める。

記憶は、人間が意識しなくとも常に発生している。目にも耳にも皮膚にも始終様々な情報が入ってきており、それが細胞の接続や構造に何らかの影響を与えるならば、全てが記憶と言える。以前も説明した「記憶の溜まり場」にしても、単純な空間のみでは考えにくいが、何らかの(半)固定的な物質が存在していれば、原理的にはあり得る。ただこの場合、石(コンクリート)や鉄骨よりも、植物(特に木)の方が可能性としては高いだろう。固形物、非生命では構造が変化しにくいからだ。勿論人間そのものでもよい。

長く記憶を留めるには、簡単に移動されたり伐採されたりしない方が好ましいから、未踏の山や神社仏閣などは理想的だ。墓(の周辺の木)、庭木なども候補に挙がる。そういったものが日々の人間の行動から発する電磁波を受けて微妙な変化をし、またその変化を人間が電磁波で感じ取ることができれば、霊能力が成立するわけだ。

人間は、ごく弱い電磁波でも関知する能力がある。目はその一つだが、肌でも感じられる。電磁波過敏症の人はその典型例だ。なお、電磁波過敏症にはなお否定的な見解が多いが、もしそうだとしても、肌が電磁波を感じることのできる器官であることは間違いない。日焼けがそうだし、光線過敏自体は医学的にも認められている。

その原理は医学的には不明だが、そういった電磁波の波形、周波数、方向、偏波などの組み合わせ及び時系列的変化を、人は日常的に浴びている。普通の人はそれを意識しないが、それを元の変化原因にまで遡って再構築できる人が稀にいて、これが霊能力者と呼ばれる、というのがその仮説だ。

もしそうであれば、これは細胞の細かい変化のパターンを脳がそれとして意識できるかどうかという問題になるため、誰にでもその可能性は有り、また鍛えることもできるということになる。これは滝行のようなものではなく、変化のパターンと正解を結びつけることを繰り返して脳内回路を強化する作業、要は深層学習と同じことをすれば良いのだ。もっとも単純には、ESPカードを当てる訓練がそれに当たる。

この仮説によるならば、本人に近づくほどその作用(正確さなど)は強くなるし、その場所に行くことでその場所の記憶を得ることも理に適うことになる。時間と共にその記憶も薄れることも理解できる。心霊スポットもパワースポットも説明できる。霊能と人格が比例しないことも同様となる。

2017年8月20日日曜日

津波にはサーフボードで


東北の震災以来、津波への対策がクローズアップされているように思う。以前から「ノアの箱舟」的な浮かぶ脱出艇やゴムボート、折り畳みカヌーのようなものはあったが、何れもかさばる上に高額であり、一般家庭ではなかなか手が出ない。

津波対策の最低限のグッズとして、「サーフボード」はどうだろうか、と考える。これなら数千円~数万円程度で買えるし、かさばるとはいえボートほどではない。空気を入れるタイプのボートは経年劣化があるが、サーフボードなら素材が浮くから、この点も有利だ。

だが、単純に市販のものがそのまま使えるとは思えない。要は、素材として浮く発泡スチロールやウレタン系の素材を使った安価な浮体で、最低限の身の安全を図るものがあればよい。そのスペックを考えてみる。

まず、大人一人が安定して乗れること。寝られるほどあれば嬉しいが、まずは座った状態で安定していなければならない。サイズとして、まず、直径1メートル、厚さ20センチの発泡スチロールを考えてみる。そしてフリスビーのような窪みを作ってやり、穴を上にする。その上で全体を、サーフボードのような樹脂コーティングしてやる。持ち手を前後左右4箇所に付け、回転しないように底にフィンを付ける。同じく1メートル程度のオールを付属品として付ける。

津波が来たら、これを持って逃げる。余計な荷物を持ってはいけない。また、これは一人一台だ。子供にも一回り小さいものを用意しておく。もし膝上くらいまでに追いつかれたらこれに乗り、オールで浮遊物を避けるようにしながら波に乗る。勢いが弱まり、水の高さが減ってきたら、できるだけ前に漕いで浮遊物を乗り越え、陸地に脱出する。

もちろん、こんなに上手く行くとは限らない。浮遊物にぶつかって水中に落とされたり、挟まれて潰されたり、水の勢いでひっくり返ってしまうことは十分に考えられる。だからこれはあくまで最後の手段であり、逃げるのが基本だ。それでもこのようなものが例えば5千円程度で市販されれば、相応の商品になるのではないかと思う。

2017年8月19日土曜日

家に居るときに届く宅配システム


巷ではヤマト運輸の労働環境の話題でもちきりだが、留守持ち帰りの問題を解決すれば20%程度の効率化は可能である。これには、自分が家にいることを宅配業者に通知できればよい。

配達予定通知サービスはヤマトや佐川が実施している。その追跡番号にのみ連動する位置情報通知サービス、それもチェックインだけを知らせるソフトがあればよい。つまり、
  1. 配達予定通知サービスのリンクをクリックすると、専用のソフトが開き(あらかじめインストールし会員登録しておく)、チェックインサービスを利用するかどうかを問われる。
  2. 「はい」を選択した場合、宅配業者が該当荷物を持って近くまできたときに、その荷物の配送先のソフトに自動で問合せ、「チェックイン」即ち自宅近くにいるかどうかを確認できる。もしチェックインしていなければ始めから配送しない。(玄関まで行かずに次回に廻す)
  3. 例えば2回目にきたときにまだチェックインしていなければ、初めて不在票を発行する。
  4. チェックインには代理人も指定できる。ソフト側であらかじめ連動設定をしておく。本人含め代理人のだれかがチェックインしていれば配送する。
  5. もちろん荷物の配送が完了すればチェックイン機能は無効になる。
ソフトウェア的に難しいことは何もない。セキュリティの観点でも、希望者のみに提供するサービスだし、一時的なものだからさして問題なかろう。誰も考え付いていないのか、思わない大穴があるのか。

2017年8月18日金曜日

強制マンナビ


頭にハンガーをはめると首が右に曲がる、というのは割と有名なトリビアだが、頭に弱い電気刺激を与えて頭や体に弱い動きを促したり制限したりする技術というのは可能で、軍事技術としても研究されている。

スクランブル交差点や混雑する駅で人とすり抜けるというのはもはや一つの技術だ、と思う。外国人や田舎から出てきた人が戸惑ってしまうのも理解できる。そういった人でも人ごみをすり抜けて歩くために、上の技術を使ってみたらどうかと思う。

頭に帽子かヘッドバンドのようなものをつけて、そこにProject Tangoのような3D位置速度認識センサを付けておく。あるいは単純に高精度GPSでもよい。後は動き予測と目的地から最適ルートをリアルタイムで割り出し、それを電気刺激にして頭に伝える。人は頭の向く方向に歩けばよい。更に言えば、お互いが通信して協調し、ぶつからないように最適ルートを割り出して進む、ということもできるだろう。

足の動きや速度まで調整して交通機関と連動し、更に最適化すると、待ち時間もなく疲れも少ないルートが取れるし、個人の疲れ具合に応じて休憩の時間や場所、摂るメニューまで推奨してくれるかもしれない。

最近、耳穴に隠れるくらい小さいイヤホンが流行っている。あれに電極が入っているものを作ってスマホと連動させることで、これらが実現できないだろうか。そうすればデザイン的にも許容範囲だし、社会全体が高効率化できるように思う。

2017年8月17日木曜日

野菜の皮むき器とCAS冷凍


レストラン関連のトレードショーに行くと、業務用の厨房用機械が多数展示されていたりする。そんな中でも、日本のロボット技術のきめ細かさが際立つのが野菜の皮むき機だ。

従来は、大規模なレストランや、チェーンレストランの前処理工場などで活躍していたのだが、その用途としては直ぐに加工するための前段だった。つまり、皮をむいたらその後切って炒めて茹でて揚げて、という作業が直ぐに行われる前提だった。またこのため、中小レストランや一般家庭での導入は考えられなかった。

だが、これとCAS冷凍が組み合わさった時、また更にそれにフリーズドライが組み合わさった時は話が別になる。業務用冷凍野菜は今でも出回っているが、それはミックスベジタブルやブロッコリーなど、冷凍に支障のないものだけであり、種類も限られていた。例えば野菜の千切りなどは、業務用でも売っていない。これができるようになる。

野菜が殆ど全て冷凍可能になるなら、前処理の最初の一歩たる皮むき器の需要は一気に高まるはずだ。それこそ農家に設置して、その場でどんどんCAS冷凍するようなことも起こりうることになる。

こうなれば、例えば小型トラックの後部に冷凍庫と皮むき器が並んで搭載されたようなものが大量に出回り、あるいは農協で共同購入されるようなことが起こるかもしれない。今でも農家の収穫期は大忙しだが、皮むきや冷凍の工程が入れば更に忙しくなるので、人材の流動化(農家の会社化)にも拍車が掛かるかもしれない。

更に、品質の自動チェックや袋詰めまで自動でできるようになれば、農家は自前で大容量の冷凍庫を買い、楽天で直接売るようなことまで始めるところも出てくるだろう。これは中間マージンを減らす意味で役に立つし、天候不順などの影響を軽減し、価格の安定にも貢献する。

皮むき後の加工についても機械の導入が考えられるから、同じ野菜でも千切り専門やらいちょう切り専門やらの農家が出てきて協業する、などもあり得る。

2017年8月16日水曜日

賢者学習


従来型の深層学習を見ていると、何だか赤ちゃんが言語を学ぶときのようなもどかしさを感じる。水泳を習うのにいきなり川に投げ込まれるようなもので、いまいちスマートでない。ベタなデータを読むのではなく、教科書を読むとか先生に教わるとかいった、スマートな学習法はないものか。

従来の学習が「経験から学ぶ」型だとすると、「本から学ぶ」型の機械学習があってもおかしくない。つまり、ごく少量のデータだけで多くを学ぶことができるのが、この学習の特徴である。ここでは前者を「愚者学習」、後者を「賢者学習」と呼ぶことにする。

やや乱暴に例えるなら、愚者学習は現在流行りの深層学習、賢者学習は第五世代コンピュータのようなものだ。何だか逆転しているように見える。だが賢者学習はこれからの研究テーマであり、単なるPrologマシンではない。具体的なアーキテクチャを考えてみよう。
教科書として与えられるのは、例えば大学の講義で使われるような、人間が使う教科書と同じものだ。もちろんPDF化くらいは必要だが、自然言語で書かれている。これをデータとして取り込む。

これは、自然言語解釈エンジンによって論理型言語に変換される。これは、言うなればPrologのソースコードだ。だがPrologと決定的に違うのは、その「正しさの程度」は絶対ではない、ということだ。また、この部分は、その論理型言語の記述量さえ少なければ、自然言語から生成するのではなく、直接人がプログラミングすることもできる。

その信頼度には初期値が付けられる。これは、出典の信頼性と書いてある内容の両方から推測されるべきものであるが、初期においては前者だけでよいだろう。例えば有効な法律、顧客の仕様書、専門書などは信頼性が高く、雑誌やSNSの情報は低い、といった具合である。

次に、そのソースコードから、学習用データセットを自動生成する。これは、業務用のダミー住所データのようなもので、ソースコード(ルール)に合った条件でランダムに生成する。これを信頼度に合わせて必要数だけ生成し、愚者学習に読み込ませる。つまり、賢者学習の必要モジュールは、愚者学習のフロントエンドとして機能する。

「信頼度に合わせた必要数」とは、愚者学習で累積で覚えた実地データによって変化する。従って賢者学習は、愚者学習の学習数をモニターし、必要に応じて追加で学習をさせる。これにより、怪しいデータで信頼性の高いルールが汚染されるのを防ぐ。

こうすると、信頼性の高いルールについて強く覚え、低いルールについては弱く覚え、単なるデータに対しては更に弱く覚える、という調節ができる。また、信頼性の高いルール(とされているもの)の間に矛盾があっても、それなりの答を返すことができる。教科書どおりだけではなく実地データも配慮した答を出せる。これは人間の特徴と同じだ。

これを更に信頼性の高いものにするために、ソースコードをそのまま実行する論理マシンを並行して立て、論理マシンの結果と賢者学習の結果を突き合わせて比較し、矛盾があった場合は信頼度を下げる、というような仕掛けも導入が可能である。

賢者学習には、たぶん他のアーキテクチャも考えられるだろう。自分で言っておいてなんだが、上のアーキテクチャでは計算コストが高くつきそうだ。だが研究の取っ掛かりとしては十分に魅力的に見える。

2017年8月15日火曜日

エスカレーターの片側を空けるべきか


自分が小さい頃にはエスカレーターを歩く習慣はなかった。片側を空ける習慣ができたのは最近のことだと思う。

これについては論争があった。第一に、そもそもエスカレーター自体が歩く前提で作られていないからダメ、ということ。これは東京ビックサイトの事件で有名だ。第二に、病気や怪我などの影響で、どうしても反対側に立たざるを得ない人はどうするのだ、という問題。第三に、全体効率の問題。一部の急ぐ人に向けて空けておくよりも、詰めて立つ方がスループットは良い、という話。また、空けるのは右か左か、という問題。

空けておくべきだ、という側の論点は二つ。第一は急いでいる人に道を譲る。第二は全体効率が良くなる、という主張。これは上の主張と矛盾するが、駅などでは確かにこの方が効率がよい場合もあるだろう。これについて、色々な人が色々なことを言っている。だが、積極的に空けるべきだ、と言っている人は少ないようだ。T.P.O.をわきまえて判断する、というのが多くの人の意見だろう。

だが、それでもトラブルは継続的に起きている。それについてもう少し深く考えると、そもそも空ける意味は「他人に気を使う」ことだ、ということが分かっていないのではないだろうか。

トラブルのパターンは、自分は急いでいるのに道を塞いでいる人への文句と、皆は空けているのに自分の主張(歩くべきではない)の下に自分だけわざと道を塞いでいる人、に分けられる。この共通点は、何れも「自分の主張が強く他人のことに気を使っていない」ことだ。

前者の場合、道を塞いでいる人が病気や怪我ではなく、単に気が利かない人、子供であるパターンもある。もし後者であるからと言って、それが強いマナー違反であるわけではない。論争があるくらいだから一方的な常識ではないのだ。後者の場合、件の事件が頭にあるのかもしれないが、大部分の人が片側で止まっている状態であればその心配はない。

どちらであっても感情的に腹は立つかもしれないが、文句を言うほどのものではないと思う。降りるまでの高々数十秒すら我慢できないというのは(トイレが近い場合を除いて!)大人気ないというものだ。ここで最初の問題に立ち返ると、結局「他人に気を使う」ことだから、細かい理屈はどうでもよく、「周りに合わせる」でOKとなる。上のT.P.O.とは似ているようで少し違う。(自分の考える)T.P.O.に合わない形で流れていたとしても、それに従うのが正しい。そしてもちろん、事情のある人(病気や怪我など)は堂々と道を塞いでいて良い。

なお、電車で入口付近に立って頑張っている人には文句を言って良いと思う。

2017年8月14日月曜日

花のCAS冷凍と「泡」梱包


CAS冷凍」については何回か書いている。ここでは花へ適用することを考える。

いうまでもなく、花は生鮮品で、消費期限の短いものだ。余れば捨てるしかない。花によっては特定の日にしか売れないとか、急な注文にも応じなければならないが育成期間が長い、などの心配がある。ここでこの技術が使えたら。

食べ物と同様、もしそんなことができれば価格が安定し、下がり、種類は豊富になるはずだ。例えば胡蝶蘭、あるいはカーネーションやポインセチアなどは、その恩恵を大いに受けることができる。

一旦アレンジしておいてから凍らせる、ということも可能だろう。となると、従来は不可能だった工場での大量生産に道が開ける。これも品質の安定と価格の低減に貢献する。アレンジの形のバラエティにも対応ができるようになる。

どの程度下がるのか分からないが、例えば四分の一程度になったとすると、単純に4倍の数が買える。カーネーションはアレンジから花束になり、高くて買えなかったポインセチアを買う勇気も出る。新築祝いでなくても胡蝶蘭を買える。

問題になりそうなのは、凍らせると割れやすくなることだろう。水に漬けて一緒に凍らせることは考えられるが、これでは持ち運びが極端に重くなり、凍らせるため、解凍するためのエネルギーも膨大になるので非現実的だ。そこで提案するのが、「泡」による梱包。つまり、容器に入れ、泡を充填した状態で凍らせたらどうだろう。

泡の材料の候補は、多糖類、油、界面活性剤などが考えられる。植物に影響なく融けた後の始末が簡単ならどれでも良い。欲を言えば、CAS冷凍でも凍ってしまわず、ないしは凍った状態でも弾力を保てることが望ましい。

これなら倉庫に山積みしても問題ない。また、冷凍宅配便での輸送が可能だから、世界中の花を堪能できたり(これは別に輸入制限の問題があるが)、花屋でなくとも(その道の素人でも)配達が可能になる。これも低価格化を促進する。

他にも、アレンジの大量生産が可能になり、品質が安定したり技術の蓄積ができたりするとか、店先での細かい作業が不要になる(工場で作業済みのものを卸す)とか、定期便(仏花、記念日など)対応する、(回数は少なくとも)使い回しをする(結婚式場や葬儀場など)、といったことも考えられるようになるだろう。

2017年8月13日日曜日

都会税


http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/platform/index.html

何もしないよりはマシ、だがかえって「やってます、成果でません、またやってます、(以下略)」というのも困る。

「動かない生活」推進の鍵」でも述べたことだが、地方創生のカギとは、都会から地方に人が移動するところにある。これには大きく分けて三つの方法がある。一つは強制的に人を減らすこと。人口密度を規定した上であぶれたものを抽選にする、子供が生まれたら郊外に引っ越す、などだ。だがこれは人権上あまり現実的でない。二つ目は、都市の便利さを阻害することだ。例えば病院や学校の数を減らしたり、物流や電車の本数に制限を掛けたりする。これも無理だろう。三つ目は、都会で生活することが高コストになるようにすることだ。これは端的には「都会税」の導入、ということになる。一番簡単なのはこれだろう。

これはある意味「地方交付税」と同じだ。それで不足だというのなら、もっと税率を上げてやればよいし、別の視点で新たな税を掛けてもよい。目的税として、目的と連動する指標に比例した税率を掛ける、などとすれば是正そのものはできる。

ここには、大きな二つの問題が隠れている。第一は、「日本全国どこでも最低限クリアしていなければならない公共のインフラ」が何で、どの程度であるべきか。第二は、その実現のための財源や予算は今の体系で良いのか。

第一の問題を今の程度で良しとするならば、全てを第二の問題として解決すべき、となる。今の問題は、それが地方自治体の予算で賄われているところにある。上の「都会税」は国税として国が税率を決定し、地方交付税は大幅に縮小ないしは廃止として、第一の問題については全て国が直接財源となり、地方自治体はその事務作業と、地方の裁量については自らの予算で補足するのみとすれば、問題は解決する。

これなら原理的に自治体は赤字にならないし、もしなったとしても自治体民に迷惑が掛かることはない。インフラ整備、選挙、学校、病院数などに影響がなければ、自治体が潰れても誰も気にしないだろう。

それでも都心税に文句が出るなら、第一の問題に手を染めなければならない。だがその結論は、定性的には既に出ている。コンパクトシティ化がそれだ。つまり、第二の問題を二つに分離し、現状の基準はコンパクトシティにのみ適用することとして、それ以外の地域には更に低い基準を適用する、というものだ。

地方からは相当に反発が出るだろうから、都会と地方の喧嘩になることは必至だが、そのまま殴り合えば圧倒的に地方が不利だ。直接利害を言い合うのではなく、客観的な視点での議論が必要になる。

そもそも人が都会に集まるのは世界的な傾向であり、それなりの魅力があるからこそ集まっているのであって、わざわざそれを阻害するのには理由が必要だ。今の地方創生の発端は、限界集落の増加や財政再建団体の発生などであろうと思われる。しかしそれだけでは、都会に集まって地方は絶滅した方が良いのでは?という問いに答えられない。地方で苦しむよりも都会で楽した方が、その人は幸せなのではないか、ということだ。

ここでは二つの視点を提案する。その一つ目は、都市への資源供給能力、即ち農林水産物の生産能力だ。東京の食料自給率は1%だそうだが、これを健全と見るべきかどうか。地方の食料総生産力は、都会への人口集中と共に減っていく。これには輸入と言う逃げ道があるが、国策で国としての食料自給率向上が挙がっている。これは主に地方が貢献すべきものだ。国策で目標何%と指定してやって、それに必要な人数を都会税で調整する、という名目で推進すれば、一定の納得感は出る。

もう一つは、都会の不健全さである。これは、人口が密集しすぎることによってかえって効率が悪くなる限界点、と言える。例えば空気の汚さ、騒音の多さ、暗さ(人工照明が必要)、臭気、近所のトラブル、犯罪の増加、ヒートアイランド、渋滞、学校保育所病院など公共施設の不足、海外不法滞在者の過多、などだ。他にも、インフラ老朽化、災害対策の困難さ(住宅密集による延焼など)なども考えられるだろう。但しこちらは、単体での定量化はできても総合評価になるので、少々難しい。

都心税の掛け方だが、自治体の人口推移を見ていると、政令市では概ね増加、中核市では拮抗している。中核市の定義は20万人以上なので、20~100万の間に拮抗点があるように思える。つまり、例えば30万人を境にして、これより小さいところは放っておくと自然に減り、大きいところは自然に増える、と推定できる。その限界点を境に都会税が急に大きくなるようにしてやれば、人口の均衡を調整できる。(まあもっとも、人口が増加傾向のところに増加度合いに応じて掛ければよいのだが)

そうすると、まず政令市から中核市に人口が流出し、中核市からそれ以外の自治体に人口が流出する。政令市はそれでも一定の規模を保つが、流出の規模は都市のサイズに比例して大きいため、中核市以下も大きな恩恵を受ける。結果、中核市未満の自治体に人が増える結果となる。

人は、環境が良くとも悪くとも、(悪い意味で)慣れてしまうものだ。だから満足度アンケートのような形ではなく、こういった客観的な評価を元に、結果をフィードバックすることも忘れずに誘導し続けるようなことをしなければ、安易なほうに流れてしまう。今の位置が正しいといえるのか、常に問い続ける姿勢が必要だ。

以上、考えてみて、ピケティの「富裕税」となんとなく似てきてしまったことに気づく次第だ。

2017年8月12日土曜日

スマホ枕


スマホ特化型「スマホ枕」7月14日発売、まくら株式会社から3980円で

このタイトルを見たときに最初にイメージした枕と、実際のニュースの枕はかなり違っていた。ニュース枕はいわゆる寝モバのためのものだが、自分がイメージしたモノはこんな感じだ。

枕の両側にスピーカが入っていて、スマホと充電器(バッテリー式)が入る隙間がある。スマホを差し入れるとスピーカーと充電器につながり、朝までに充電してくれる。また繋がったことを認識してソフトが切り替わり、安眠のための雑音(雨だれやホワイトノイズなど)が発生し、電話・SNS等の着信やアラームを抑制し、朝になれば目覚ましが掛かる。

SiriやGoogleアシスタントが自動的にオンになって、夜に特化した認識モードになる(余計な検索や面白話は抑制し睡眠を促すなど)。HAがあれば連動して警戒モードになり、異常があればまずスマホに通知する。緊急地震速報等も全て音声での通知に切り替わる。いびきや睡眠時無呼吸症候群を検知し、朝になると通知したり、統計をとったりできる。睡眠時間も計測できる。

自分は寝モバの習慣がないのでこう思うのかもしれないが、こちらの方が健全ではないかな。

2017年8月11日金曜日

マクスウェルの悪魔オーディオ装置


似たようなニュースが立て続けに飛び込んできて、興味深く見ている。マクスウェルの悪魔自体の話は永久機関にも繋がる話で、一見すると胡散臭いのだが、もちろん両者とも真っ当な研究で、永久機関と繋がるものでもない。つまり、選別には相応の電力が必要である。
で、ここで考えるのが、ピュアオーディオにおける電力の選択の話が度々取り上げられるが、これが本当になる可能性が出てきたと言えるのではないか、ということだ。もちろん電力だけではない。音楽データそのものにこれを適用できるのではないだろうか。
電力は無論ピュアな直流だ。だがそれだけではない。上のニュースで見て取れるのが、電子一つ一つの動き方を観察して、ゲートを通すか通さないかを決める、という機構だ。まだ方向しか検知できずとも、何れはその量(速さ)まで検知できるようになるのではないだろうか。となれば、音楽の波形に対応して、その波形に相当するベクトルの電子のみを通すような回路を付けてやれば、その波形以外の(結果として相殺されるはずの)電子は淘汰され、正に「ピュア」な音のみが出てくる、というわけだ。
もちろん、それができたからといって音の質が画期的に変わるわけではない。が、そこは趣味の世界。タダの電源ケーブルとスピーカーケーブルに何万円も掛ける輩が、今度は「マクスウェルの悪魔」オーディオ装置に何十万円掛けたとしても驚かない。そしてそれは、利益率の高い、良い商売になるだろう。

2017年8月10日木曜日

ポイント規制と管理ソフト


楽天ポイントだ、Tカードだ、PontaだPotoraだと忙しい。ポイントカードが山と増えてしまい、使える店もしょっちゅう変わり、はっきり言って覚えきれない。何とかしてほしい。

ポイントというのは、囲い込み戦術の一種だ。最初は店舗毎、次にチェーン店、次にポイントカード自体が単独で登場した辺りから話がおかしくなってきている。グループ会社ならまだしも、顧客が「この店はこのカードが使える」というのが分からなくなってしまえば、何のための戦略だか分からなくなってきていないだろうか。つまり、類似した業態のどちらで買うかをポイントの有無で決めるとして、そのポイントがどの店で使えるかわからなくなってしまったら、そもそも囲い込みの目的は達成できないのではあるまいか。

ポイントカード業界全体としてのICT的取組みが必要な時期に来てはいないだろうか。極端な話、全部マイナンバーカードに吸収されてしまえばユーザは楽だが、これでは囲い込みの意味がない。こちらの方がお得ですよ、あなたはこちらを使うほうが効率がよいですよ、ということを、AIが推奨してくれるようなことはできないだろうか。

ポイントの溜まり具合、使用頻度・額、無駄にしてしまうポイントの状況などを総合的に判断して、ポップアップでアドバイスしてくれるようなソフトがそれだ。例えば、ポイントの有効期限と買い物頻度から、無駄にポイントを溜めていると思えば、別のポイント(店)に切り替えるとか、気分で買わずに店を統一するアドバイスとか、ポイント消費のタイミングを通知してくれる、などだ。

今、この手の情報の横連携はよくない。電子化の足も鈍い。そろそろ法で規制したり監視したりを検討してもよいタイミングではないか。

例えば、ポイントをタイプ別に整理しカテゴライズして、ポイント換算分を経営データに反映させるよう義務付ける(発行数、量の管理と合わせ)。ルールを曖昧にしたり、ルールを頻繁に変更したり、都合のよい解釈をしたり、優良誤認させたりする行為を禁じる。電子化、API提供の努力義務、などだ。

ポイント管理ソフトに対応しないものは使われなく廃れる、というところまで持っていければ、強制せずともそれに乗っかってくれるはずだ。

2017年8月9日水曜日

フォトフレームTVとQi給電壁面パネル


サムスンから、テレビを見ないときは絵を表示しておくTVが登場した。

http://techable.jp/archives/59011

ディスプレイが液晶なのか有機ELなのか、また音はどこから出るのかが分からないが、額縁が木でできているというのがよい。ある程度以上薄く軽ければ、このようなものを複数壁に掛けておくのも悪くない。

欧米にはよく、フォトフレームだらけの壁というのがあるけれども、あれと似た感覚なのかもしれない。動画でなくとも、音が出なくとも良い、映像もWiFiかSDカードに入っていればよい、あるいはリフレッシュレートが15Hzでもよい、輝度もそれほど要らない、など、壁掛け前提であればディスプレイの作りや要求もかなり変わってくる。

気になるのが電源供給と価格だ。さすがに電池駆動は難しいだろうし、もしそうしたとしても交換が大変だろうが、ACコードを這わせるのは美観上少し抵抗がある。例えばUSB-Cで繋がるとか、できれば無線給電があるとよいのだが。

以前TRONの坂村健氏が提案した、「ECCパネル」というのがある。単純に言えばパネルに電源と通信を内蔵したタイル式のパネルで、壁床天井の何処にでも電源と通信を供給できるものだ。必要に応じてパネルを抜いて機器を挿入する、というのがその使い方だ。できればこれを使いたい。今時なら通信は無線で可能だから、電源供給だけできれば目的を達成することができる。

これに類似するものとして、ライティングレール(配線ダクト)と呼ばれる商品がある。例えばこんなものだ。

http://www.garageland.jp/garageland/lighting_l.html

これは天井など上を想定していて壁を想定していない。実際、電源を通したダクトを床に着くまで延ばすと、虫が入り込んだりカビやホコリが溜まることでショートする危険がある。このため、単純にライティングレールを埋め込んだだけではダメだ。

そこで、こんなパネルを提案する。それはある程度厚みがあり、例えば2cm程度とする。パネルは床から90cm程度の腰壁相当部分と、それより上の90cm相当に分割され、更にその上は普通のパネルになっている。下の二つは表面カバーを外せるようになっており、その状態では縦横に溝が走っている。またパネル内数箇所に機器収納スペースがある。

この機器収納スペースには、専用の無線給電器をはめ込むことができる。溝はそこにACケーブルを這わせるものだ。表面カバーは薄いので、その上に充電器を合わせれば給電ができる。また、この給電器と充電器は磁石で位置合わせを行えるようになっている。溝と機器収納スペース以外の部分は、木ネジなどで重量物をぶら下げることができる。

ポイントとなるのは、ACコンセントにしても無線給電器にしても、パネルの薄さに納めることだ。無線給電器は当面はQiとなるだろうから15Wしか供給できない。このため、ACプラグを直接出したいところだが、この薄さではコンセントが差せない。このため専用のコンセント(下から挿す)を用意したり、USB PDなどとする必要はあるだろう。

このパネルにするメリットは、壁の何処にでも給電できるというところだ。それは例えば、天吊プロジェクタ、時計(電池式でなく大電力を使えるもの)、フォトフレーム、テレビ、オーディオ、鏡ディスプレイ、監視カメラ/インターホンディスプレイ、緊急地震速報通報器、BDプレイヤー、電話、無線LANルータなど、従来はテーブルや床にラックで置いておいたものの殆どが対象になる。スマホやタブレット、PCの充電台も壁に作れる。ケーブルが醜く這い回ることがないのでホコリも溜まらず、見た目もすっきりする。Fax、プリンタ、スキャナはちょっと無理か。

考えてみれば、これはOAフロアの壁版だ。どこかが既に作っていてくれても良さそうなものだが。

2017年8月8日火曜日

遺伝子操作の安全基準


遺伝子操作の実験に失敗してできてしまった怪物、それを退治しようとする地球防衛軍と怪物を憎めない科学者、といった構図は、SFではよく見られる。だが実際のところ、そんなに恐ろしいものなのだろうか。

まず、遺伝子操作と突然変異は、現象としては同じモノである。ついでに言うなら品種改良も殆ど同じである。問題なのはどこ(どの遺伝子)が変わるかだが、突然変異はその場所はランダムだ。品種改良では、人間が把握できていないとしてもある程度の場所の目処はある。遺伝子操作は人が意図的に特定部分を改変する。
そしてその心配を分析すると、
  1. 瞬く間にその種が世界中に広まってしまい、それ以外の種が絶滅したり、あるいはそれが原因で他の生物へも影響が及ぶこと。例えばそれを含む食物連鎖が破壊されたり、遺伝子の変異が他の生物にも感染すること。
  2. それを食すことによって、治療不可能な病気になること。
  3. 醜い、凶暴な、等、マイナスイメージな(主に高等)生物が作られてしまう可能性。多く肉を取るために極端に肥大した牛豚鶏、(性格の悪い)超天才、手足を切り取られてもまた生えてくる危険作業員、など。
となるのだろう。このうち3.自体は大きな問題ではない。一言で言えば「失敗作」として封印してしまえばよい。2.は実験によって確認できるから、1.さえ起こらなければやはり「失敗作」として葬ることができる。つまり、全ての問題は1.に帰結する。

1.には更に二つに分かれる。前者は拡散の速度、後者は他の生物への遺伝子汚染だ。そして遺伝子汚染は更に三つに分かれ、接触によるもの、受精によるもの、摂食によるもの、に分かれる。

まず拡散の速度だが、拡散の速度=生物としての強さだから、環境に対する強さをあらかじめ試験することで相応の予測と対策は取れるはずだ。例えば新しい小麦を開発したとして、その小麦が従来の小麦を駆逐するかどうかは、小麦畑の環境への適応度に比例する。元々従来品種であってもその差はあるので、それらと極端に違わなければ問題はないはずだ。つまり、実験で前もって環境耐性を知り、一定以上の「強い」品種はやはり「失敗作」として葬ることができる。

その「強い」品種が万一漏れてしまった場合、その強さは予想されているため、対策の規模もまた予想できる。だが、後述の遺伝子汚染さえなければ、それは自然淘汰と同じ結果になる、つまり最悪、弱い小麦が駆逐されるだけに終わる。原始小麦が殆ど地球上にないのと同様、仕方のないこととして片付けられるだろう。

遺伝子汚染についてだが、原理的にはそれほど安全ではない。交配は正にそうであるし、摂食によるDNAの生物間移動は実験で確かめられている。単純接触による遺伝子移動は聞いた範囲では知らない。

そこで、まず検査すべきなのは遺伝子汚染である。これも「強さ」と「影響範囲」を調べることになる。同種(同じ小麦)に対してだけでよいのなら、実験で確かめられるからそれほど問題ではない。むしろ問題なのは、あらゆる生命に対して全て実験をしなければならないのか、というところだ。

例えば小麦と大麦、小麦と米、小麦とじゃがいも、小麦とキャベツ、・・・などは網羅的に調べなければならなくなる。極端な話、小麦とサル、小麦とイルカ、小麦と人間、小麦とインフルエンザウィルス、なども可能性としてはあり得るわけだ。なぜあり得るかと言えば、あり得ないということが科学的に実証されていないからだ。

多くの動植物では、自分と同一種でなければ受精はしないのだが、これも確率論の話で、たまにでもそういうことが起こらないとは保証できない。実験室なら見つけたら処分すればよいが、自然界でそれをすることは不可能だ。そして、大部分は大丈夫だとしても、見逃したごく少数の生物が集中的に汚染されてしまう、ということがあり得る。生物の数は膨大だから、実験で確かめるのは不可能であり、原理的に不可能であることが証明される必要がある。

また、摂食によっても、大部分は消化されてしまうのだが、ごく一部が消化管を通じて体内に入った例は実験で確かめられている。もちろんその後活性化するかどうかは別の話ではあるが、原理的に不可能と言うのではなく確率論で大丈夫、というのであれば少々心配だ。原発のときのように、何百万年に一度のはずの事故が、数十年の間に三回も起こるようでは安心できない。

ただ、それだけを以って不可とするのは早計である。それは、汚染される部分が遺伝子汚染に関わるものか、つまり自己複製遺伝子になっているかどうか、だ。単に病気になりやすくなるというのも困りものだが、遺伝子汚染が1世代で留まるならまだ考えようがある、ということだ。

しかし、そこまで研究が進んでいるわけではない。だから、今の時点では、遺伝子操作生物がとんでもない事態を引き起こす可能性はゼロではないし、天文学的に少ないとも言えないのが実態だ。少なくとも論理的には、まだ遺伝子操作生物を実験室の外に出すべきではない。

2017年8月7日月曜日

暗喩MR


一日中MRメガネを掛けていて、町のどこを向いても情報だらけ、というビデオを見た。実際にそうなったら相当鬱陶しいものになるだろうが、多分そうなるだろう。そこで検討してほしいものが、暗喩MRだ。

これは、露骨に情報を映し出すのではなく、暗喩として表示する、というもの。例えば行先の天気を知りたいとして、その方向から向かってくる別の歩行者がサングラスを掛けていたら快晴、傘を差していたら雨、を暗喩するようにする。また、ハンバーガー屋の前を通るとき、そこから出てくる人が美味しそうにハンバーガーを頬張りながら出てきたとしたら、食欲をそそられるだろう。それは実は宣伝だ。クーポンを配る人が実在しない人だったり、夜でも看板が明るく点滅していたりしたら、それも宣伝だ。

他にも、コインパーキングで止めた自動車の停車時間を、車の中に溜まっている水の水位で示す、広い駐車場で自分の車だけが金色に光っており、周りの車が全て灰色になっている、なんてのはどだろうか。この手の表示アイデアは、考えれば山ほど出てくるはずだが、「暗喩」である、という一点を外してはならない。具体的な言葉ではなく、あくまで既存の映像を損ねないようにする。

他にも、音(や匂い)で表現することも可能だろう。流行り歌がどこからともなく聞こえてくるとか、逆に不快な音が聞こえてきたら避けるべき何かがある(危険な場所など)、などだ。サブリミナルまでくると犯罪なのでやりすぎは禁物だが、これならあまり鬱陶しくない情報提示ができるのではないか。

2017年8月6日日曜日

トイレットペーパーの使い方


たまに、トイレットペーパーが横並びで二つある場合がある。これは便利だ。一つがなくなってももう一つがあるので、席を立たずに使い続け、終わったら補充してあげられる。一つだと、立ち上がって補充する必要がある場合があり、これは尻が心許ない。

だが、どういうわけかたまに出くわすのが、この両方ともが同じように減っていて、さらには殆ど使い切られている場合がある。タイミングが悪いと両方切れてしまい、立ち上がらざるを得なくなる。そんなときに限って腹を壊していたりする。なんとも腹立たしい。

当たり前の話だが、これは前に使っていた人が悪い。二つある意味をちょっと考えれば分かりそうなものだ。言うまでもなく、残りが多い方を先に使えば両方とも同じように減ってしまう。また、優先的に使う方を指定してしまうと、優先的でない方が長期間の間に徐々に減り、最後にやはり両方いっぺんになくなってしまう。

両方が同じくらいのときが悩ましいのだが、だから、この場合は取りやすいほうを先に使えばよい。どちらも同じくらい取りやすいということは少ないだろうが、多くの場合は手前が取りやすいはずだ。つまり、少ない方を先に使う、同じくらいだったら手前を使う、というのを公衆ルールとして定着させてほしい。

いっけんバカバカしい論争かもしれないが、これにもちゃんとロジックはある、という例だ。

2017年8月5日土曜日

AGIのアーキテクチャ


AGIとは、汎用人工知能(Artificial General Intelligence)のことだ。今のところ、研究段階としてはまだ初期の初期だと思われる。一方で、限定的なAIは飛躍的な進歩を遂げている。そこで、AGIを実現するための一つの提案として、弱いAIの弱いAIによる相互接続、という形態を考える。

AGIという名の弱いAIが居て、そのAI自体は具体的な判断はせず、命題を下位の弱いAIに投げる。この投げ方だけを判断するのが上位AIだ。下位の弱いAIとしては、ディープブルーやAlfaGoなどがずらっと並ぶ。そしてこれらは随時付け足されていく。

また、この階層は二階建てとは限らない。例えば街医者AIが居て、その下に専門医AIが並ぶようなものも考えられる。様々な専門AIをマイクロサービスとみなして束ねるAIがあれば、それはAGIと言ってよいのではないかと思う。

研究の対象となるのは、この上位AIだ。直接の目的をもつAIと違って、下位にどう投げればよいかを考えるものなので、アーキテクチャ的には工夫が必要かもしれないし、また試行錯誤がある(ループ、フィードバック)かもしれない。下位AIが増える毎に人が調整しなければならないようではAIとは言えないから、自己学習の仕掛けも必要だ。

最下位AIにも工夫が必要かもしれない。その一つは、回答に「自信度」ないしは「設問が適切係数」のようなものを添付することだ。また、上位AIからの質問を基に回答する場合と、個別に学習する場合ではモードを切り替えるようなことも必要かもしれない。上位AIは上位AIで、単純に問題を提供するのではなく、周辺状況を合わせて提供するような工夫が必要かもしれない。

この、多階層AIは、先に示した町医者~専門医階層のように、汎用でない段階からでも応用できるから、下から徐々に積み上げ、いつの間にか賢者になっていた、というような発展が見込めるのではないかと思う。

2017年8月4日金曜日

人間関係学


人間工学、心理学、社会学などの初歩は、道徳というよりは学問として、義務教育で教えて欲しいものの一つだ。これは単純に、クラスや近所付き合い、会社などにおける人間関係を良好にする効果を持ち、ひいては社会の効率向上に繋がる有意義な学問だと思う。

現代社会において、中学校以上の高等学問を日常生活で使う場は殆どないが、これは計算機や本を有効に使えているからだろう。そのため、今の時代、会社の効率は技術よりもこういった「人」に掛かってきているのではないか。

また、これらは従来、近所付き合いなどで自然と学べたものだが、第一に都市化や個人主義の台頭でそれが薄れており、またそれ自体も発達して複雑化しているように思う。日本人固有と言ってもいいかもしれないが、細かいマナーやその違反に対する反応は、時代とともに厳しくなっているように思う。

これは、実際に上手くいっていない社会、例えばいじめ、ネグレクト、ブラック企業、サービス残業、各種差別、・・・といったことの改善に繋がる。広く一般の知識になれば、これらが発現する割合は減るはずだ。

広く言えば、これも効率化、最適化の一つと言える。Society 5.0にはこの文句はないけれども、人と人との付き合い方がスムースになれば、人間としての生きやすさも含め、よい世の中になるのではないかと思う。

2017年8月3日木曜日

介護が普通


介護用品と言えば、デパートの片隅にひっそりと売られているのが定番だったが、最近ではスーパーにも介護用品コーナーが進出して、他のコーナーとの仕切りも目立たなくなってきた。介護が一般的なものになってきた証拠だ。

車椅子一つとっても、おしゃれなもの、便利なものが続々と出てきている。介護をもっと広く捉え、「単に使いやすい」ものとしてデザインし直していけば、新たな市場ができると考える。これは、バリアフリーがユニバーサルデザインに転化したのと同じ経緯を辿るだろう。新しい大型のショッピングモールは通路が広く、段差が少なく、車椅子トイレがあちこちに設置されているのが普通になってきているが、それと同じだ。

狙いは、「介護前、日常困難」、要は介護予備軍だ。要介護認定を受けていないため、人数も多く、プライドも残っており、デザインと値段にはこだわりがある層だ。今まで専用然としていた介護用品を、もっと日常寄りに持ってくるのである。

介護を大きく分けると、①食事、②移動、③排泄、④風呂、⑤就寝、⑥リハビリ、⑦医療措置・健康チェック、⑧娯楽・情報交換、⑨痴呆・徘徊対策、などとなるのだろうが、各々にその兆候が出てきている。例えば③は、普通のパンツと変わらないデザインのオムツが多数出てきている。

この中で最大の市場たりうるものが食事だ。食事をもっと掘り下げてみると、①介護対応の外食、②柔らかい食材の提供、③食材を柔らかくする技術的手段の提供(調理器など)、となるが、従来は②ばかりで、レトルトや冷凍食として出されてきた。これは単価が高く、毎日使えるようなものではない。もちろん①も同様で、レストラン自体が増えたとしてもたまの娯楽であり、毎日はそう行けない。

Panasonicの内部ベンチャーで開発しているDeliSofterというのがあるが、これは③に相当する。原理の説明がないが、恐らく圧力鍋のようなものと推測する。まだ製品化されていないようだが、個人的にはヒット間違いなしと思う。

上の延長で行くなら、レストランや家庭にこれが設置され、既存の料理に対して(むろん刺身などできないものもあるだろうが)これでチンしてやるだけ、であるなら、負担も少ないから大いに受け入れられるはずだ。

また、移動や風呂の補助にはロボットの活用が期待されるが、特にサイバーダインのようなパワーアシストをもっと充実させて欲しい。ここには大きく改良して欲しいポイントがある。

今のものはベルクロで締める仕様で、またパーツ毎に装着が必要なので、着けるにも外すにも時間が掛かる。これが使い勝手を大きく損なっている。

ベルクロでなく、時計のバンドやスキー靴のような治具で止める。また、ハンディ掃除機のように充電スタンドに立てておき、使うときにはそこに行って立つだけでその治具が締まり、30秒以内で装着できるようにする。そういった一見SFチックな仕掛けが、使い勝手を大きく改善する。

また、要介護者自身が(介護者の助けがあったとしてもごく簡単に)装着できれば、自分でトイレに行ったり軽作業をこなしたりと、随分楽になるはずだ。(防水でも風呂は無理か?)

スタンドと言ったが、椅子型に置けるなら、車に積むのも簡単だ。外出もできるようになるだろう。そのためにはデザインも充分に考えなければならない。
とりあえずこの2つ(食事と運動補助)は早急にやって欲しいものだ。

2017年8月2日水曜日

噴火対応物流地下トンネル


今の日本の状況では、自然災害から完全に逃れることはできず、ある程度の被害は避けられない。ではもし、全ての自然災害に対し完璧に防衛ができる都市があるとしたらどういうものになるのだろう。
想定する自然災害は、森林火災、地震、台風、ゲリラ豪雨、雷、噴火、隕石落下、くらいだろうか。このうち隕石については、近未来まで含めて技術的な回避手段はないので除外する。残った中で一番大きいのは噴火だ。これは日本でも実績があるし、現実的な問題だろう。
このうち、破局噴火と言われる巨大噴火は、やはり技術的な回避手段はないので除外する。残るは富士山の噴火だ。こちらは数百年に一回は噴火しているので、現実的な対応が必要になる。
過去の富士山の噴火から、おおむね1立方キロメートルの噴出物が出ると見込まれる。関東全域が10cm程度の降灰に見舞われる。火山灰はPM2.5を大量に含む。雨が降ったとしても全部が流れるわけでもなく、逆に固まって動かなくなり、地層を形成するようなことが起こるだろう。
このような状況に対応する技術的手段として考えられるのは、降り来る火山灰を全て吸い込んで素早く海に捨てるような(非現実的な)装置か、ドームや地下都市のように、閉鎖されエネルギーと食料の自給自足ができる施設、ないしは巨大なシェルターであろう。このうち最も現実的なのはシェルターで、但し自給自足は無理だから、例えば地下鉄や地下街を拡張して一時退避場所を作り、更に超長距離地下トンネルを掘って脱出に使用する。
但し、脱出専用となると非常に費用対効果が悪いので、ここでは貨物用を兼用として、各都市を繋ぐものを想定する。このトンネルは、普段は貨物用として使うために、通常の電車用より大幅に小さいものになる。トラックへの積み替えを考慮すると、鉄道用12フィートコンテナが最大であろうと思われる。シールド工法で作るとして、直径5m程度を2列(双方向)。また効率から考えれば当然鉄道を敷くことになる。
これを何処に配するのかというと、基本的には関東圏の人は東北へ、神奈川以西の人は名古屋へ避難するのが良かろう。これより遠くではトンネルにする意味が薄くなる。これを、宇都宮~つくば~東京~横浜~熱海~静岡~浜松として考えると、全長は概ね350kmとなる。
これを作るのに幾ら掛かるのか、トンネルの工事費を調べてみたのだが、余りにもバラバラで分からない。九州新幹線の1km50億円を元にして、断面積が1/5になるから1km10億円だ、と仮定すると、350kmで3500億円だ。物流の市場規模が20兆円となると、それほど非現実的な額でもない。また実際、首都圏内ではもう少し細かく網を形成して、物流の補助にすることは重宝するだろう。
では噴火における人の搬送能力はどの程度か。12フィートコンテナに人を20人詰め込んで、時速100kmで東京から宇都宮に脱出するとして、所要時間は2時間。10分毎に出発できるとしても1時間で120人、1日で2880人。コンテナは24台(行き帰り)。首都圏には4千万人居るので、38年掛かる計算になる。10台連結としても3.8年だ。
つまり、現実的には、脱出するのは病気などの生活弱者に限られ、大部分は残らざるを得ない。だから、その人達に向けての物流(救援物資)を噴火の影響に関係なく送り届ける、という目的の方が理に適っている。これは噴火でなく地震などでも使えるから、汎用自然災害用物資ラインとしても使える。
噴火自体は二週間もすれば落ち着くので、人が徒歩で移動することは可能になる。そのタイミングまでに物資を届けることで、シェルターや地下街から地下鉄の線路を通じて23区全体に配布が可能になる。
但し、これでも上下水道と電気・通信の問題は残る。発電所も発電機も、降灰でダメになるから、燃料を送ってもあまり意味がない(暖を取る効用はあるが)。直接電気を送るには、トンネルの電力を分ける手があるが、量的には全く不足する。シェルターの発電にはスターリングエンジンを使う手があり、これなら灰に強いのだが、一から準備するのは大変だろう。水にしても、必要量は膨大で、とても足りない。ただ、排泄は灰に混ぜることである程度処理できるかもしれない。
こう考えると、シェルターにしてもトンネルにしても焼け石に水かもしれない。噴火に対抗するには、個人がシェルターを作り、何か月分もの備蓄をする、それしかないのかもしれない。

2017年8月1日火曜日

運動しないで・・・


深夜の通販番組などで、運動しないでも痩せられる!なんていう器具や下着などが多数売られているが、ときどきズッコケる説明が堂々と為されていることがある。

こういうものを見るとき自分が気をつけているのは、論理的に、統計学的に、納得できるものかどうか、ということだ。それには商品知識自体は必ずしも必要ない。体の構造と、論理学と統計学の基礎が分かっていればよい。以下に考えてみる。

原理的に考えて、食事制限をしない(普段と同じ)場合、直接運動をしてカロリーを消費するか、基礎代謝を上げて消費するかをしなければ収支が合わない。市販されている全ての機器は食事制限を要求していないから、「運動をしている」「基礎代謝を上げている」のどちらかが為されていなければならない。

だが、例えばジョギングを1時間してもケーキ1個分程度しか消費しない。しかし、それで基礎代謝が上がり、体温が1℃上がった場合、1日でケーキ10個分ものカロリーを消費する。つまり、運動するのは「カロリーを消費する」ためではなく、基礎代謝を上げるためだ。ではどの程度の運動が必要かというと、運動する場合のシェイプアップの基準として、「週2~3回、1回当たり30分以上の軽く息があがる程度の有酸素運動」を基準として、そこから大きく逸脱していない必要がある。

また、もし運動をせずとも基礎代謝が上がるのなら、そういう方法も考えられる。この代表例は加圧トレーニングだ。筋肉を酸素不足の状態にして成長ホルモンを大量に出させ、結果として筋肉が太くなり基礎代謝が上がる。量的議論はともかく、理屈は通っている。但しこれは運動を全くしていないわけではなく、少しの運動で大きな効果を狙うもので、実際のところ少しの運動でも大いに疲れる。

ここで、基礎代謝と代謝の違いに注意する必要がある。体を温めることで代謝を促すダイエットに、長湯やホッカイロダイエットなどがあるが、これらはその「暖めている時間」のみ代謝が上がり、その後は元に戻ってしまう。代謝が上がっている時間はカロリーを消費するが、その程度は体温1℃毎に基礎代謝の13%と言われている。基礎代謝1400kcalの女性なら182kcalだが、これは1日での消費なので、例えば風呂に1時間入って体温を1℃上げたとしても、その消費は9kcalにしかならない。

以上を一言で整理すると、「基礎代謝が上がるほどの量の運動をしたことになっているか」というのが判断基準になる。機器の種類毎にこれを見ていこう。
  1. EMS
    1. 神経を騙して筋肉が自ら動いているので、運動していると言える。
    2. 部分的には激しく動いているので、筋繊維を切断していることは考えられる。筋繊維を切断すると、再生時に繊維が太くなり、基礎代謝を上げる。これは、やった人が初日に筋肉痛になった、などのレポートがあることからも確かに思える。
    3. だが、別途検討している通り、当てたところしか動かないので、その量は全く不足だ。
  2. 揉み解しマシン
    1. 動いてはいるが、筋肉が自ら動いているわけではないので運動しているとは言えない。
    2. 激しい運動で筋繊維を切断している可能性はあるが、当たっているところにしか効かないのはEMSと同じだ。
  3. 金魚運動マシンや振動マシン
    1. 体が強制的に動いているだけだが、動きに合わせて自分も体のバランスを調整しているため、運動していると言える。
    2. 全身が激しく揺れるため、筋繊維を切断するような動きになっている可能性がある。その量も、全身に影響しているため、充分である可能性がある。どちらかと言えば振動マシンの方が運動量が多いように見える。金魚運動マシンでは激しさが足りないかもしれない。
  4. シェイプアップパンツ
    1. ただ締め付けるだけではなく、体の自然な動きを阻害しているため、その分普段の動きの抵抗が増し、運動していると言える。
    2. 運動代謝は全代謝の20%、基礎代謝は70%、その他が10%ということなので、基礎代謝が1400kcalの人の運動代謝は400kcalということになる。効率低下分を10%とすると、追加で得られるエネルギー消費は40kcal。ジョギング1時間当たりのエネルギー消費は350kcalだから、7分ジョギングをすれば間に合う。つまり量的に全く足りない。
    3. 動きが普段のままなので、(追加での)筋繊維の切断は生じない。
  5. 超音波マシン、ラジオ波マシン
    1. 筋肉の運動には貢献しない。どちらも体温が上がるポテンシャルはあるため、その部分が、当てている間だけ、温度が上がる分「(基礎代謝ではない)代謝」が上がる可能性はある。
    2. 体温が上がるのは体の中のホンの一部だ。体温が1℃上昇、体温が上がっている体積を全体積の1/100、時間を20分で計算すると、1400×0.13×0.01×20÷60÷24=0.025kcalとなり、殆ど意味がない。
    3. ラードが融けるデモには意味がない。体内の脂肪分は体温で既に液体である。牛や豚の脂を食べたとしても、消化器で分解され体内で再構築されるので、体の中の脂が(体温より低い常温では固体の)ラードのようになっている訳ではない。温度が上がれば粘度が下がるということはあるだろうが、だからと言ってそれが流れ出ていってどこに行くかといえば同じ体内である。消費されるわけではない。
    4. ラジオ波の周波数は1MHzくらいが相場のようだ。電子レンジの周波数は2GHz前後だが、その周波数は2千倍違う。電磁波のエネルギーは周波数に比例するから、同じ効果を挙げるには二千倍の出力が必要ということだ。例えば500Wの電子レンジに相当するエネルギーを得るには1,000,000Wが必要ということになる。
    5. 一方で、単三アルカリ電池1本の容量は、1.5Whくらいだ。つまり1.5Wで1時間動かせることになる。単三アルカリ電池3本で1時間動かせる機械の出力は、4.5W以上には原理的になり得ない。これは電子レンジの1/200,000の効果、ということになる。
    6. 使い捨てカイロの発熱量は12kcalで、これは14Whになる。基礎代謝でなく代謝を上げる目的なら、ホッカイロを脇に挟む方がずっと簡単で効果的だ、ということになる。
    7. 体をほんの少し暖める程度のエネルギーしかないので、筋繊維を切断するほどのエネルギーが発生するとは考えにくい。また、もしそうなら、その結果として筋肉痛が起きるはずが、そのような話は聞いたことがない。
  6. キャビテーション
    1. 結局超音波なので超音波マシンと一緒だ。
 また、これらの機器には決まって、被験者が驚きの効果を挙げたことが唄われる。わずか4週間でマイナス何cm!などだ。

これには、統計学的な視点からの反証可能性がない、ということを指摘したい。つまり、①被験者の数が統計学的に有意な数だけ居たのか、②比較対象として何もしない人、あるいは別の(効果のない)やり方でやった人が同じ人数だけ居たのか、③恣意が入らない状態で行われたのか、だ。

①がなければたまたまかもしれない。②がなければ心理的効果(意識せずとも頑張ってしまう、よく見せようと見栄を張ってしまう、プラセボ効果)が排除できない。③は大量に募集しておいて成功した人だけ見せる、などが可能である。まあ当然だが、どれか一つでもマトモにクリアしたものは見たことがない。

結論として、(意外にも?)振動マシンのみが可能性として残った。まあ、エンタテイメントとして見ていれば害はないので好きでよく見ていたのだが、知り合いに相談を受ける事態となって、ちょっと慌てて考えをまとめてみた次第である。

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