2017年5月31日水曜日

個人主義と教養の退行


別項で「本は読むべきか」という投稿をした。このときに思ったのが、社会の教養が低下している可能性だ。
Webサイト、キュレーションメディア、オンライン広告では、パーソナライズ、つまり個人の好みを強く反映する仕掛けが取り入れられている。これは「知りたいことを知る」ということで、広告効果は高くなる、つまり商品を売る人は儲かるし、ページビューも稼げることになる。だが一方、社会的な「教養」は低下する。
ここで言う教養とは、社会が持つ平均的な知識量のことだ。自分が生きていくためには必要ない、だが他のある人にとってはそれが生活の糧である、あるいは心を豊かにする知識があって、そういう知識をお互いが多く知っていることが、社会的な教養が高い状態である、と定義する。逆に、自分が必要な知識以外を知らないことが、社会的な教養が低い状態である。
少し考えれば分かるように、社会的な教養が低い社会は、お互いがお互いを理解しようとしない、不寛容な社会になる。また、社会全体としての文化や科学技術の向上速度は遅くなる。教養が高い社会はその逆だ。どちらが穏やかで健康的な社会であるかは明らかだろう。
教養というのは、自分が興味のない知識でも知ろうとするモチベーションが必要で、これは多分に努力が必要だ。自制心と言ってもいい。つまり、自制心の弱い人が多ければ、社会的な教養は落ちる。また、昔の日本には社会的に平均であろうとする圧力があった。学校では平均的に成績を上げるよう求められ、成人すれば結婚を促され、子供を促され、社会人になれば平均的な出世を望まれる。近所付き合いも濃厚だったし、悪いことをすれば直ぐに噂がたったり、他人の子であっても遠慮なく注意されたものだ。つまり、昔の日本は、(良きにつけ悪しき煮つけ)社会的な教養は高くなる状況にあったと言える。
心理学的に見ても、相手のことを良く知れば知るほど親しみを感じるものだ。だから、相手と仲良くしたくない場合にはその情報を遮断しようとする。これは多分に感情的な行為であり、個人レベルでも国家レベルでも同じだ。一方で、自制心があれば反対意見にも耳を傾けるものだ。つまり、情報を遮断しようとしたり、反対意見を聞こうとしない、ごり押しをしようとするような社会は、社会的教養が低いと言える。
教養の退行は、もちろん為政者によって引き起こされる場合もあるけれども、基本的には社会を構成する人々一人ひとりの自制心の緩みによって進んでいく。CMやニュースはそれでもパーソナライズされていなかったが、近年それも崩れてきた。これが負のスパイラルを描いていないだろうか。近年国際的に問題になっている右傾化、保護主義化、過剰な自尊心は、その象徴と言えないだろうか。

2017年5月30日火曜日

ロボット・ファースト


クルマ社会と言えば、クルマが主で歩く人が従のような社会を思い描く人も多いと思う。実際問題として、自動車用の道路は広く平らに整備されており、歩道は端にあり、クラクションで追いやられることもしばしばだ。これと同じように、職場や家庭にロボットが進出してくると、ロボットが優先され人が追いやられるようなことが起きるのではないか。
例えばロボットカー専用レーンだ。ロボットカー同士の方が運転の効率は高いから、物流や人流の効率を考えればまとめた方がよい。高速道路や幹線道路などでは、特定のレーンを指定してロボットカー専用になる可能性はある。そうなると、そのレーンだけは異常に車間が短く速度も速い、というような環境も考えられる。
工場では、作業員はいなくなり、代わりにロボットレイバーの保守員が常駐することになる。ロボットは真っ直ぐな平らな道を行き、人は残りの歩きにくい場所に追いやられる。24時間ロボットを動かすために、人間の方が三交代制で働かされる。ロボットに明るい照明や冷暖房は要らないから、人間が我慢することになる。
そのうち、人間の健康や生命までもが軽視されるようになるかも知れない。だがそれはロボットが悪いのではない。人間の経営者がそう判断するからだ。AIやロボットによる人類への反乱は、そういった人間が首謀者になるのかもしれない。

2017年5月29日月曜日

完全分離ミキサー


ミキサーの回転する刃は、ボディのモーターと物理的に接続する。その力の伝達部は当然、カップの底を貫通している。これには様々なデメリットがある。パッキンの漏れや劣化及びそれによる不衛生や漏電の恐れ、分解掃除のしにくさ、摩擦による効率の低下などだ。
この問題を解決するのに、電磁誘導の原理を用いる。回転するのは磁場で、ガラスを通して中にも連動する回転子(磁性体)を入れてやる。直接刃を廻すのも良いが、回転子自体は高速で回転するようにしておき、ギアで減速して刃を廻すことで色々とつぶしが効く設計ができる。この、回転子とギアからなるパーツは、器の底に沈めるだけで器には固定されておらず、磁石で本体に引っ張られて固定される。
この仕掛けにより、上の問題を全て解決できる。また追加でメリットが出る。それは、回転磁場を作るのにモーターが不要ということだ。電磁石を放射線状に配置して交流を流せばよいため、ここでは余計なノイズや音が出ないのだ。一方で本当に回転する刃と回転子はジュースの中に沈んでいるため、やはり音が抑制される。また故障率もぐんと下がる。
また、この回転子と刃の関係を色々変えることで、裁断だけでなく単なる攪拌にまで用途を広げることができる。回転速度の制御幅も広いので、固形物のかき混ぜ(チャーハンなど)や、単純にスープが煮詰まらないようにゆっくりかき混ぜるだけ、というような使い方すらできる。容器も用途も選ばない。食品以外、例えば塗料やセメントにも適用可能だ。
刃ではなく他のものを廻すことも可能だ。脱水籠はその一例だろう。洗濯機に応用すれば、脱水籠をカンタンに取り外して掃除できる一漕式全自動洗濯機ができる。実験で使うような遠心分離機にも応用できる。その回転の勢いで、ポテチや千枚漬け用のスライスを作る、などもできるだろう。
実は、実験用の器具に類似のものはある。フラスコを乗せる回転磁場発生装置と、フラスコの中に入れる攪拌棒の組み合わせがそれだ。本提案はこれの発展形であると言える。

2017年5月28日日曜日

変身


アイカツシステムより更に困難を極めるのが「変身」だ。変身のためのシステムがベルトとか指輪とかに押し込められている設定だから。正直な話、指輪は無理だ。ベルトでもかなり厳しい。変わったところではヘルメット(破裏拳ポリマー)があったが、やはり衣装を仕舞っておくスペースとしては厳しい。
スパイ物(007など)では上着の裏地に別の服の表地を縫い付けたようなものはあった。「ウルトラマン」の科学特捜隊のスーツのズボンは折り目のついたフォーマルなものだが、ジッパーで横が空くようになっていて、数秒で脱ぐことができる。その下は、あのオレンジ色の隊員服を始めから着ていた。ジャケットを脱いで手袋をしてヘルメットを被れば完成だ。
考えてみると、スーパーマンもスパイダーマンも、あらかじめコスチュームを下に着ていて、上を脱ぐものだった。であるなら、これを前提にして、直ぐに脱げるように加工した普段着を着ておく、というのが合理的なように思える。
脱いだ服をどうするか、また普段はしない手袋やヘルメットはどうするか、と言う問題は残る。スーパーマンの場合はケープのポケットにスーパーパワーで押し込めておく(!)のだそうだ。スパイダーマンはあの糸で絡めておいて目立たないところに貼り付け、後で取りに来るのだろう。どちらもその特殊能力が前提なので、一般人には難しい。
それらを総合して考えたのが、こんな仕様だ。
まず、ヒーローだから、普段はジーパンに革ジャケットだろう。ブーツは最初から履いておき、ジーパンを上から被せれば目立たない。そのジーパンは、実はマジックで使うフラッシュペーパーでできている。そしてジャケットの裏地は、ヒーロースーツになっている。つまり、下半身には火をつけて一瞬で消し去り、上はジャケットを裏返して着直す。手袋はジャケットの裏(ヒーロースーツ側)に仕込まれているので、裏返す際に取り外してはめる。ジーパンの予備は小さく折り畳まれてポケットに入っている。
残るはヘルメットだ。これは最初から帽子(ないしはかつら)を被っておいて、ジャケットと同じ原理で裏返す。裏には顔を隠す布地と、その布地の形を保持する針金が仕込んである。針金は形状記憶合金でできており、バッテリで電気を流すと発熱して、記憶していた形に戻る。
変身解除は逆で、帽子をひっくり返して被り直す。針金は常温に戻っているので頭の形に曲がり、元に収まる。手袋を脱いでジャケットの表(ヒーロー側)に仕込み、裏返して着なおす。ジーパンはポケットから出して上から履く。
一瞬とは言わないが、これなら15秒以内に変身できるように思う。フラッシュで目くらましをした隙に、くらいはイケるかもしれない。考えてみると意外とできるものだ。ただ欠点が一つ。タバコの火など、ちょっとしたアクシデントでジーパンが一瞬で脱げてしまうと恥ずかしい。

2017年5月27日土曜日

フォース・コミュニティの充実


人間の幸福度は、人との関わりで決まるところが大きい。家族や友人など、気兼ねなく話せる人が多数いることは、幸福度の大きなファクターである。
人のコミュニティの種類というのは、昔からさほど変わらない。家庭、職場(学校)、地域、その他(趣味・ボランティアなど)だ。細かく言えば学校には部活動があるとか、地域でも近所付き合いと町内会では少し違うが、基本的にはそう変わるものではない。
このうち、最初の三つは半強制的な関係であり、自分の意思で自由に出入りできるのは第四の「その他」での集まりである。これは、近年の個人主義とSNS等の発達により、オンラインでのコミュニティは飛躍的に発達した一方、実社会でのコミュニティは衰弱したように思える。
オンラインでのコミュニティは社会的なルールが自然には適用されないし、一般論に囚われない極端なコミュニティが形成可能である。このため、「LINE疲れ」のような言葉もあるように、まだ落ち着ける場所にはなっていないのではないかと思う。人付き合いが苦手だからオンラインに逃げる、というのが初期の風潮だったが、オンラインの方がもっと酷かった、でも現実に戻る気もないので結局オンラインで神経をすり減らすだけ、というのが現状ではないだろうか。
もっと実世界の常識を自然に組み込めるようになれば、距離の壁を越えたり匿名性を確保したりという有利を十分に生かし、幸福度の向上に貢献できるように思う。ここで言う実世界の常識とは、面等向かった際に人が自然に行う配慮そのものだ。特定の場所に現れない人には話しかけない、言葉遣いに気をつける、生活時間帯を配慮する、といった社会常識的なマナーだ。
これに近い存在と言えるのが、Oculus Roomsだ。ただ喋ったり一緒にゲームをするだけしかできず、まだこれだけでは不足だが、取っ掛かりとしては有望と言える。後は、アバターの顔や仕草をリアルにして、入退室のアクションや天気・時刻の反映など、現実世界の情報をできるだけ取り込むことで、人は自然と社会的ルールを守るようになる。
技術的な仕掛けとして是非欲しいのは、本人のアイデンティティを残しつつも個人情報を廃する技術だ。チャットでも音声でも、本人が不用意に個人情報を発言すると自動的に削除や変換をしてくれるようなツールだ。これを機械が保証してくれるなら、後に引く心配がないので気兼ねなく入退会ができる。これこそが現代社会におけるオンラインコミュニティの重要事項だ。また、誹謗中傷や個人情報を尋ねる、金品を要求するなどを抑制する仕掛けも欲しい。これは言葉を発した人に警告が表示されるようにする。
他にも、コミュニティの存在を外から緩く知ることができる、あるいは試し入会ができる、というのも重要だ。これも、コミュニティ内の人の宣伝だけでなく、中の様子をある程度抽象化した上でAIが公平に評価してくれると嬉しい。例えばコミュニティ内で皆に嫌われている人やネグレクトされている人の存在、主な活動時間帯、連動する実コミュニティがあるかどうか、性別・年齢層分布、入退会の頻度や量などだ。
まだ色々とほしいものはある。例えばダンスや楽器のサークルを作るには、それも含めて仮想化しなければならないから、今のHMDによるVRやARだけではダメだ。HMDを被りつつも本人の全体を撮影し、更にそれをCGに変換してコミュニティスペースに投影するようなことをする必要がある。模型のサークルなどは、模型自体はリアルに投影して、人物を抽象化するような技術も必要だろう。これがアウトドアスポーツになると、どうすればよいのか検討もつかない。
個人宅にそれらの装置を備えるのは、まあ不可能ではないにしても少し敷居が高い。カラオケボックスのようなレンタルルームにTV会議兼バーチャルコミュニティ用スペースを備え、1時間幾らで貸し出すのがよいように思う。趣味に合わせてエクストラな道具や仕掛けを備えるのもよいだろう。

2017年5月26日金曜日

中国語の部屋


チューリングテストに対する反論とも言える思考実験だ。両者の概要はここでは省略する。Wikipediaにおける中国語の部屋への反論とは別に、自分も反論を持っている。ここではそれを紹介する。
以前の投稿で、「輪廻転生の科学的解釈」というのがあった。生命の正体は単なる複雑な物理/化学構造であり、魂の正体は情報である、というのがその概要だ。意識や知性といったものも、その延長にある。つまり、中身がどうであれ、外から見て知性に見えればそれは知性だ。本当の知性に対する偽の知性などというものは存在しないし、明確な線引きもない。中国語の部屋は知性である一方、人間の脳内の動きは中国語の部屋と同じである。
人間にも知性の高い低いはあるし、病気や先天性疾患などで知性の低い人は、猿やイルカよりも知性が低くなる可能性は十分にある。その知性の差は、多くの人が思っているほど開いていないかもしれない。更に言うなら、コンピュータの知性は人間や他の動物の知性と定量的に比較しうるものであり、人間を圧倒的に超える可能性すら秘めている。チェスで勝てないばかりでなく、知性や教養でも人は機械に負ける運命にあるのだ。
微生物から人間、コンピュータ、神に至る知性の程度の差は連続的であり、途切れも線引きもない。必要以上に人間を尊厳視することは、他の生命への蔑視につながるし、今後のコンピュータの飛躍的な発展を正しく理解できなくなる原因になる。何れも好ましいものではなく、止めるべきである。

2017年5月25日木曜日

メイドロボットと家の変化


技術が進むと、従前の組織や仕掛けそのものがなくなってしまう、意味がなくなってしまう、意味が薄くなってしまう、という現象が起こる。近年ではレジ打ちがPOSになったり、ビデオレンタルがVODに駆逐されたりした例がある。
人間、従前通り動くのが楽なものだ。IoTだ改革だと騒いでいても、自分の仕事が楽になるのではなく無くなってしまうのなら願い下げのはずだ。だが、その流れが変わるわけでもない。変に従前のものに気を使って中途半端になってしまうと、新興に乗っ取られることになる。音楽配信の主導者がSpotifyやAppleであってレコードレーベルではない、VODがNetflixやHuluであって映画会社ではない、というのは、その悪い見本だ。
進化論で言う、「生き残るのは強いものではない、変化する環境に適応できるものだ」というのがよく分かる。今後も技術の進化で不要な職業が出てくるだろうが、どう変わり身速く次の時流に乗るかが生き残る鍵になる。
ただ、AIとロボットが発達した未来において、それは必ずしも暗い話題ばかりではない。メイドロボットに身の回りの世話をさせ、ロボットレイバーに仕事をさせて稼がせ、自分は悠々自適、ということだって夢ではない。
そんな時代、例えば洗濯機のボタンをどうデザインするかという問題は、メイドロボット前提とするとあまり意味がない。どんなにUIを複雑にしようとも、どんなにダサいデザインでも、使いこなしてくれる。もっと言えば、洗濯機そのものが必要ないかも知れない。手洗いの面倒さをメイドロボットが感じるはずはないからだ。
人間が扱う前提で作られた機械の多くは、その使い勝手の向上と機能性能の向上の両方で進化を遂げてきたわけだが、今後は前者が不要になる、ということが言えるのではないか。となると、機能として本質的な部分は残し、場合によってはそれが共通するなら融合する可能性は出てくるわけだ。
上の洗濯機で言えば、浴槽ないしは洗面台と兼用になる可能性は否定できない。調理家電の多くは、同時並行という課題も含めて不要になる可能性が高い。収納の類も、同様の理由でだいぶ整理されるはずだ。荷物の出し入れに苦がなくなるから、奥に押し込んだものでも天袋にしまい込んだものでも無駄なく使えるし、どこに何があるかはメイドが知っているから、忘れて二重に買ったり、消費期限を越えて食料をダメにしたりということもなくなる。
他にも、布団の上げ下ろしが苦でなくなるなら、普通のベッドではなく折りたたみ式簡易ベッドの方がスペース効率が高い。散らかしたテーブルの片付けをメイドがやってくれるなら、勉強机とダイニングテーブルを兼用にすることもできるはずだ。
こうなると、家に余計なものがなくなり、広く使えるようになる。財布にも優しくなる。もちろんメイドロボットの費用は掛かるわけだが、相応の価値はある。感覚的には二百万円くらいだったら触手が動くだろう。
なお、ダメ人間になってしまう、結婚から遠のく、という可能性は否定しない。一方で、独居老人や障害者、病気怪我人などには強い見方になるだろう。

2017年5月24日水曜日

鉄筋内蔵ブロック


別稿でも触れたとおり、ブロックを下から順に積み重ねるだけで建築ができるのなら、機械化は可能である。そのための課題となるのは、主に縦方向の構造材だ。
今のところ、構造材として認められていて、積み重ねて作れるものは、ログハウスとドームハウスだけだ。一般に使われる鉄筋コンクリート、木造軸組み、2x4、プレハブ、鉄骨などは、先に柱を作って後から壁を作る必要があるため、機械化は難しい。これを可能にする方法を考えてみた。
鉄筋を内蔵したブロックを積み重ねていく、というのがその構造だ。この鉄筋は当然、ブロックのサイズにブツ切りにされているが、その切り口にちょっとした工夫がある。その第一は、切り口同士が十分な面積をもって接触すること。第二は、その切り口には高抵抗となる素材が塗ってあること。第三は、ブロックは充填されておらず、中空になっていること。
このブロックを積み重ねた後、隣り合うブロック同士の鉄筋に電流を流すと、接合している鉄筋の切り口の抵抗素材が発熱し、溶融する。つまり電気溶接をすることになる。これを上下左右で行い、1段接合ができたら隙間にコンクリートを流し込んで固める。これを繰り返すことで建築を続ける。
切り口はブロックの切片と一致させるのではなく、少しずらしてやるとやり易いだろう。例えば上と右に少し出っ張るような形である。コンクリートは層構造になるが、元々圧縮強度を求めているので問題ない。接合部とコンクリートの層が一致しない方が強度が保てるだろう。また、天井や2階床はこの方法では作れないので、別途検討する必要がある。接合部が多数できてしまうため強度低下が懸念されるが、これは数(量)で補えばよい。
この方法にはもう一つメリットがある。コンクリートを一度に作らなくてよいので、ローマンコンクリートを使えるのだ。これなら鉄筋コンクリートの劣化を大きく抑えることが可能になる。
また、必ずしも一段づつコンクリートを充填する必要もない。単にコンクリート型枠として使うのも良し、ブロックを断熱材で作れば内外断熱が同時にできる。配筋をプロにさせなくてもよく、また長い配筋が必要ない点もメリットになる。
他にも、コンクリート柱を作るのも簡単にできるし、鉄筋でなく鉄骨で落とし込み陥合にするなど、様々なバリエーションが考えられる。

2017年5月23日火曜日

AI構造計算


現在の建築基準法では、構造計算は演繹的に行われる。これに対し、帰納的に行う構造計算というのが考えられないだろうか。
話は簡単。設計図を使って仮想空間に建物を実際に建て、揺らしてみるのだ。幾つかの地震のパターンを入れておいて、安全率を掛けて実際に建物が倒壊しなければ、あるいは構造材のダメージがなければOK、とする。
CADやCAMが普及してきたことから、CADオリエンテッドな建築も増えてきている。単に図面だというだけでなく、パーツの材質や結合方法など、様々な情報がここに集約するため、抜け漏れがないし、変更にも適切に対応できる。そういった時代ならこその提案である。
具体的にどんなメリットがあるのかと言えば、細かい規定を守らずとも倒れなければ良いでしょ、と言える事だ。つまり、耐力壁や柱の位置関係など、構造に関わる位置や素材選びの自由度が広がる。それを意匠に生かすのも良いし、コスト低減に向かうのも一つの方法だ。新しい素材や部品も使いやすくなる。
CAD/CAMが進むことで、耐震設計以外にも、日照計算、耐火設計、防音設計、換気設計などもシミュレーションでできるため、建築の質について総合的な評価が簡単にできる時代が来るのではないか。また、それを売りにした新しい家がどんどん出てきてほしいと思う。

2017年5月22日月曜日

メッシュ配送アルゴリズム


以前の投稿「1号缶配送ロボットトラック」のようなシステムを前提として荷物の配送計画をする場合、個々のトラックが小さいループを回りながらあちこちで接点を持ち、その接点で少量の荷物を交換する、という形態が考えられる。荷物の移動が頻繁に起き、綱渡りのようにあちこちのトラックを経由しながら目的地に近づいていくような方式だ。
トラックの搭載容量と荷物・トラックの位置は様々で、交通渋滞や充電も発生するから、状況はリアルタイムに変わる。このため、固定的アルゴリズムではなく、状況を見ながら都度戦略を変えていくと共に、極端に遅くなってしまう荷物がないようにする必要もある。
荷物側をインテリジェントにすることは困難だろうし、中央集権型のアルゴリズムの採用は困難だろう。これにより、トラックに自律的プログラムを搭載して、近隣のトラックと通信をし合って荷物をやり取りするようにするのがよいと思われる。移し替えはトラック搭載のドローンを使えばよい。
トラックのルートが変わり得る、渋滞などで配送時間やトラック同士の交接時間や場所がずれる、トラックが充電や故障などで動けなくなる、荷物がループする、など、様々な可能性を考えると、単純なアルゴリズムでは決められない。緊急避難的な中央集権操作が必要になる可能性も含め、実証実験が必要になるだろう。
これはもはや複雑系の世界になるので、時にはビックリするような動きが見られるかもしれない。例えば一台のトラックに徐々に長距離用の荷物が集中し始め、今までの巡回ルートを外れて遠くまで突っ走るようになるとか、次第に巡回ルートが固定されて特定の企業専用に近くなってしまう、などだ。だがそれはそれでよいと思う。荷物が上手く流れればそれでよいのだ。

2017年5月21日日曜日

本は読むべきか


今時の人の情報入手手段はWebサイト、キュレーションメディア、ソーシャルメディア、などだそうだ。昔、本を読まないことは恥ずべきことだったのだが、今はそうでもないらしい。新聞を読むか読まないかというのもそうらしい。自分はどちらも読むべきだと思っているのだが、この意識のギャップを考えてみると、結構興味深い。技術論にも通じる話である。
ダイソンの羽のない扇風機が発売されたとき、その発明のきっかけが技術者の偶然の発見によるものだということが紹介された。だが実際には、その現象は何十年も前に発見されていた「コアンダ効果」というものだ。ダイソンのHPには未だにこの記述がないが、もしダイソンの技術者が最初からコアンダ効果について知っていたとしたら、この逸話は別のものになったはずだ。
発明や発見の動機となるのは「不満」だ、とよく言われる。だがベースに必要なのは知識だ。ある不満を解決しようとして、その手段について多くの引き出し(知識)をもっていればいるほど、解決はたやすくなる。そしてそれは普段からの積み上げが大事で、いざ発明しようと思ってから勉強し始めても遅い。
この場合の知識は、特定のジャンルに偏っていてはいけない。上の例の場合、作ろうとしていたのは扇風機だが、それには電気工学、電子工学、材料工学、流体力学、色彩学、人間工学、微生物学、経済学、更には芸術的センスなど、必要な知識は多岐に渡る。
これを全部学問として習おう、極めようとするのは困難だろう。だが普段から新聞を読んで、興味が出たら本を読む、ということを繰り返していけば、平均的な教養は身につく。これをWebやソーシャルメディアだけで完結させることは不可能ではないが、そのコスト及びコスト対効果、またカバレッジを考えると、相当に不利だ。
新聞や本は纏まった知識を得る手段として非常に優れていて、オンラインメディアではまだ(平均的に)対抗が困難なのが現状だと思う。その理由は以下の通り。
    1. 元々新聞は、世の中が必要とする情報を満遍なく提供することを責務としており、一通り読むことが世間の平均的な興味を網羅していると言える。これに対しWebサイトは、それがたとえ新聞社のニュースサイトだったとしても、一覧として纏まっていない。自分が見たいところだけをつまみ食いできるし、記事の重要度(ランク)付けが極めて弱く、何が世間の興味なのかを実感しにくい。
    2. 新聞には、ニュース単体だけでなく、解説記事や別の連載、投稿による意見交換、広告、紙面構成、更には入ってくるチラシなど、様々な種類の情報がある。これを総合して閲覧することで、広い意味で時代の空気を読むことができる。これに対し、キュレーションサイトやWebの最適化広告では、自分の興味に合わせて情報が選択されるため、世の中の動きとは乖離してしまう。
    3. 新聞社以外の、国や企業等のサイトは、新聞社のような平均化バイアスと無縁でいられるため、載っている情報の偏り、質、正確性にばらつきがあり、そのばらつきを見極めにくい。
    4. 有料サイトの認知度が低く、多くのWebサイトは無料で閲覧できる。これはプロによる正しい(精査された)情報と、素人が偏見で作る情報の識別をしにくくしている。
    5. 同じく有料情報への認知度が低いため、読者数が少ないが専門性のある情報が、Webサイトには載りにくい。ネットサーフィンを幾らしても見つからない情報が、本を1冊買うだけで簡単に手に入る、ということはよくある。
    6. 本は基本的に有料であるから、作る側にも一定の精査がある。情報の質、量、共に充実していることが多い。分量がある程度多い知識を載せるには本の方が有利だ。
    7. Webサイトの情報を読むには、PC、タブレット、スマホなどが必要である。これは長時間文書を読むのに適していない。これに適した機器としては電子書籍端末があるが、もちろん読めるのはWebサイトではなく、電子書籍だけだ。
    8. 本には、本屋や図書館という、本を選ぶのに適した仕掛けがある。ざっと見回すだけで相当量の情報が手に入るし、専門家(司書や店員)に聞くこともできる。一方でWebは検索が主体となるだろうが、一覧性で大きく劣る。情報にたどり着くまでの経路として、圧倒的に不利だ。
    9. 精査していないが、ニュースの類では負けるにしても、実際に頒布されいている専門知識の質×量で比較すれば、本の方が圧倒的に勝ると思う。
現状のキュレーションメディアやWebサイト、Web広告などは、パーソナライズがされている。つまり自分の興味がある情報を多く、そうでない情報を減らす工夫がされている。これは娯楽としては正解だろうが、教養というのは本来そういうものではない。
嫌いなもの含め何でも満遍なく読むことこそが教養であり、その人のベースラインを引き上げるものだ。もし今の人がそういう発想がなく、娯楽(興味本位だけで動く)を主に、教養を高めることをあまり考えていないというのであれば、今の人の考え方にも納得できる。
「低欲望社会」というのは大前研一氏の主張だが、そんな時代には教養を高めることへのモチベーションが起きないのかもしれない。だが、教養は出世のためだけではなく、自分の精神的な幸福感にもつながると思うのだが。

2017年5月20日土曜日

本気の改憲論


自衛隊の予算規模は先進国としてはそれなりのものだが、他の国と違って効率はかなり悪いようだ。他国の安い武器が買えないから、同じ性能を持つ国産をライセンス生産するにしても、需要が限られているので単価が高い。先般の警護出動で露見したのは、医療法の絡みで衛生兵ができることが極めて限られていること。怪我をしてもモルヒネも打てず、治療もできないらしい。
日本は長い間戦争から離れていたから、国民も背広組も戦争に対する感覚が鈍くなっている、慣れていない。また百歩譲って自衛隊が優秀だとしても、指揮官たる背広組が的確な指示を出せるとは思わない。日々の国会の運営や、自然災害における対応の酷さを見れば、エビデンスとしては十分だ。だから実際に戦争が起これば当初の想定より大幅に弱いだろう、というのは想像できることだ。
改憲論者の主張の理由としてよく挙げられるのが、他国(具体的には中国と北朝鮮であろうと推測する)の軍事的脅威に対する抑止力としての自衛隊だ。だが、現実的な問題として、現状の自衛隊では抑止力にならない。自衛隊の戦力は、自国の領土の外で大規模な軍事活動をすることを想定していないからだ。具体的には航空機の航続距離が短く、燃料補給機や空母がない。遠距離ミサイルも持っていない。サイバー攻撃部隊も持っていない。ABC兵器(核、生物、化学)も持っていない。
自衛はできても敵本国への反撃はできない。つまり敵にしてみれば、戦力(コマ)は消耗するにしても自国への軍事的脅威はない。これでは抑止力にならないのは当然だ。また、肝心の自衛力にしても、核ミサイルに対しては無きに等しい。これは現在の技術ではどうしようもない。だから、もし軍事力を抑止力としたいのなら、自国へのミサイル攻撃を受けてなお、相手国を充分な数の核ミサイルで攻撃する能力がなければならない。
現在それは米国が担っている(安保)。もし米国に頼らず自国のみの力で自衛したいと思うなら、当然安保は破棄ないしは縮小すべきであり、その軍事力も中国本土への攻撃を想定するのが筋だ。改憲して且つ自衛隊の守備範囲を変えない、安保もそのまま、などという理屈は通らない。
中国は国土も広く、軍事拠点も政治的拠点も多数あるから、航空機では無理で、多数の核ミサイルが必須となる。つまり核非拡散条約の破棄も必須である。そしてその標的の数は十や二十では効かず、数百数千となるはずだ。それに見合う数だけのミサイル基地を各地に設置し、その各々の位置も秘匿したり、位置の検知が困難なミサイル原潜を複数保持するなども必要となる。
そうなれば、軍事費(防衛費)も、人員も、現状のそれでは全く不足である。特にミサイルの増強には実地での経験がないから、他国から買ってくるか、膨大な量の発射実験が必要となる。原潜も同様だ。軍事費は、少なくとも当初はGDPの10%を大きく超えるような増加となる。さらに問題なのは人員で、進んで軍隊に行きたがる若者がそう急激に増加するとは考え難いから、徴兵しないのであればカネで釣るしか道はない。
既に20年間経済成長がゼロの国がそれを捻出しようと思えば、紙のカネを刷るしかない。その規模は十兆円規模と推測される。当然それは大幅な円安を引き起こし、また軍需は輸出を増やさないから、一方的に輸入が落ち込んで経済は悪化するだろう。核非拡散条約の破棄に伴う経済制裁も小さくないずだ。
そうしたところで優秀な人材が集まる訳ではなく、当初はカネ目当ての守銭奴か、生活が苦しい困窮者になる。それでも昔は歩兵の需要があったのだが、近年の軍隊はハイテクであり、一定以上の頭脳が要求される。そういった人材を(例えば今の十倍)集めなければならないとなると、やはり何らかの強制は必要である。
これには、大手ICT会社や重機会社からの一定数の出向を半強制にする(政府調達の入札条件にするなど)、設備納入に当たってのサポートという名目で常駐させる、などが考えられる。もちろん戦争が起こった時の生命の保証はナシだ(あったとしても有名無実になる)。よく言われる「子供が徴兵に取られる」というものではなく、いきなり一家の大黒柱が事実上の徴兵に取られる、というわけだ。
自衛官の数は25万人で、中国軍(中国人民解放軍)はその10倍だ。単純に考えれば同程度の人員増が望まれるし、圧倒するなら更にその数倍が必要だが、それが無理としても十万人単位(2倍、3倍)の増強が必要だろう。それは、国内の大手企業の何割というような大規模な「徴兵」が発生することになる。
当然ながら、そういった人材が軍需に取られることで、本来その人たちがするはずだった仕事はできなくなる。大手企業の中堅層がごっそりいなくなれば、日本の経済にとっては大きなダメージになること疑いない。また、国内では輸入食料が減少するので、主に第一次産業の人口増が必要だが、それを担う人材がいない。この場合、海外からの移民には大きな期待はできない。
一方でそうしたとき、戦争の脅威は減るのだろうか。安保が破棄ないしは変質したとしても、米国の基地がなくなる可能性は極めて低い。本来の米国の目的は日本を守ることではなく、東南アジアに軍事的な睨みを利かせることだからだ。つまり(地域としての)日本における戦闘能力は維持ではなく増強になり、中国を更に刺激することになる。
結局これは、冷戦構造の再来でしかない。それはお互いを疑心暗鬼にさせ、エスカレートを産む。そしてこれはもう始まっている。日米安保と米韓相互防衛条約などがそれで、長らく中国の国力が弱く対抗できなかったところ、近年の好景気で中国が盛り返してきた。中国に言わせれば、長らく爪先で立たされてきたところ、ようやく地に足が着いた感じだろう。
この競争は、当然伸び率の高い方が勝ち、息切れした方が負けだ。中国と日米で比べれば、前者が圧倒的に有利だろう。そして本来の目的、つまり抑止力としての軍備は、先制攻撃という口実を得て、弱い方が口火を切ることになる。そして勝っても負けても、中国と日本は各々国土を破壊され経済的な打撃も受けるが、米国本土は無傷で残る。米国にしてみれば、近年の伸び著しく、米国に追いつき追い越そうとしている中国の国力を弱めるには良いチャンスだろう。
ここで原点に返って考えてみてほしいのだが、なぜ日本は長らく平和でいられたのだろうか。安保と自衛隊のおかげだ、というのが改憲派の主張だろうが、そもそも日本に戦争を仕掛ける理由はあるのか。先の大戦は日本が仕掛けたからその反撃、という大義名分ができた。それ以前は日本は南方や満州に進出(侵略)して資源や労働力を搾取し、軍備を増強してきた。それを阻止する狙いはあったと言える。
だが現状はどうか。他国を侵略している事実は当然ながらなく、また日本で資源と言えるようなものはほぼない。あえて言えば広い経済水域からくる漁獲と、まだ開発途上の海底資源だろうが、何れも微々たるものだ。人材の確保にしても、昔のような強制労働より機械の方が優れている。特許や知的所有権も欲しいかもしれないが、アメリカは自身の方が強いし、中国は無視することができる。難民の流出もないし、工業製品の輸出は戦争をすればむしろ途絶えてしまう。国内に酷い人権侵害や差別、奴隷労働などがあるわけでもない。預金が欲しい?だが戦争になれば円の価値はガタ落ちになる。
そんな日本と唯一戦争をする理由があるとすれば、それは「先制攻撃」、つまり日本が攻めてくる危険があるから先に攻める、というものだ。戦争をしないため(と勝手に日本が思っているだけ)の準備が、かえって戦争の危険を高めていることになる。
そしてもう一つ、日本が戦争になると大きく助かるのが、他でもない「日本政府」だ。戦争に乗じて預金封鎖や新円切り替えをしたり、国債でデフォルトを起こすことができる。そうならなくても、円の価値が大幅に下がれば借金を減らす効果がある。安保でつながっている日米(政府)双方の思惑が合致すれば、その方向に世論を誘導することは大いに考えられる。
恐らくここで想像できていないことも多く起こるだろう。改憲を謳うならば、そういった想定外のことも含め、このすべてを受け入れるくらいの覚悟は必要である。

2017年5月19日金曜日

家庭用太陽炉


家庭での太陽の有効利用と言えば太陽電池や温水器で、太陽炉という発想はなかった。その理由として、太陽を追尾する反射鏡が高価なことが挙げられる。逆に言えば、価格の問題を克服できればまだ見込みはあるわけだ。
追尾が不要な太陽炉としては、トラフ式反射鏡がある。市販の太陽熱温水器より格段に軽くなるので、大面積の設置が可能となる。媒体は硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合液で、これは一般的にトラフ式太陽炉でも使われているものだ。これで溜めた熱でバイナリー発電機を稼動させる。廃熱は温水器に吸収させ、更に発電した電気でヒートポンプを動かす。また、夜間の発電に備え、断熱材を貼ったタンクにこれを蓄積する。
太陽炉にはもう一つの利点がある。もし太陽が出なくても、あるいは発電量が足りない時、熱媒体を取り出して別の方法で暖め、タンクに戻してやることができる。このときの手段は、燃料でも燃えるゴミでも構わない。被災時には大量のゴミが出るから、これを使うことができる。また、普段は燃料を主に使って安定的に発電し、被災時で燃料供給が止まったときに太陽光を主に使う、というようなこともできる。
十分に余裕を持って設計すれば、別に書いた沸騰型浄水器に熱供給して浄水を供給したり、煮炊きに使ったりすることもできるだろう。

2017年5月18日木曜日

パック式培養装置


「ジューゼロ」というジューサーがある。普通のジューサーとはかなり違う。ジュースの元になる素材(野菜等)がパックに入っていて、これをセットして圧搾する。このため、機械も衛生が保てるし、野菜の鮮度や素性についても一定の品質を保つことができる。
以前、「芋豆穀類の培養」という投稿をしたのだが、これと同じように、あらかじめ衛生的な工場でパッケージされた材料を使い、機械の方もその工場が設計したものを使えば良いのではないか、と考えた。
システム構成は以下のとおりになる。まず、芋や豆などの細胞が少量入っている、衛生的なパックが販売される。これには培地と養分まで入っているが、水は入っておらず、空気を抜いて冷凍された状態で販売される。
家庭用の培養器は、電子レンジ程度の大きさで、複数のパックをセットできるようになっている。倍容器には水タンクがあり、パックを穿孔して水を供給する。もちろんここは無菌にするため、浄水フィルターや殺菌ランプなどで防護している。
パックにはQRコードが印刷されており、そのパックに合わせたレシピで培養する。完成すると培養器が知らせてくれる。これを取り外し、そのまま冷蔵庫や冷凍庫にしまうこともできる。完成しても無菌のため、長期保存ができる。
どの程度の培養を目指すかによって体積効率は変わるが、例えば月に一回、小型の段ボールを一箱受け取るだけで、家族4人の三食の主食分と惣菜の素材が賄える、となれば、少々高くても人気になるだろう。また、電気と水さえあれば僻地でも食料が得られる点、防災用品としても有用だ。
問題になるのは実現可能性とコストだろうが、どちらもまだ計算していない。

2017年5月17日水曜日

無筋コンクリートブロックドーム


高度成長期に作られた鉄筋コンクリートの建物や道路が軒並み寿命を迎え、2020年の東京オリンピックのときにどうなるのか、という議論があるそうだ。
鉄筋コンクリートの寿命は50年だという。見た目頑丈そうに見えるのに意外なことだ。調べてみると、中性化による強度低下や鉄筋のさびによる膨張などが問題だということらしい。そして、手抜きや無理解のままで作るとその寿命も大幅に縮まる。
古代ローマのコンクリート建築物が未だに残っているのに、なんと寿命の短いことか。そう思ってローマの方を調べてみると、これまた面白い。こちらは鉄筋は入っておらず、セメントの種類も違うそうだ。経年で劣化しないローマンコンクリートというもので作られている。
であれば日本でもそうすれば、と思うのだが、そう単純ではないそうだ。ローマンコンクリートは固まるのが速く作業がしにくいこと、配合が複雑でまだ充分な解析がされていないこと、そしてやはり普通のセメント(ポルトランドセメント)と同じく引っ張り強度は弱いので、鉄筋を排除できないこと。
コンクリートは圧縮強度は強いが引っ張り強度は弱い、だから引っ張り強度が強い鉄筋が必要、というのがその原理なのだが、そこから逆に考えると、引っ張り強度が必要ないのなら鉄筋はいらない、という理屈になる。そもそもローマの建築物が鉄筋なしで成り立っていたのは引っ張り強度が不要だったからだが、それは即ち地震や台風による建物の変形である。イタリアは結構な地震国だが、ローマ周辺は実は殆ど揺れないらしい。
そこで考えるのが、タイトルの通りだ。ローマンコンクリートでブロックを作り、これを積み重ねてドームを作れば、圧縮強度だけで構造物が作れる。揺れに対しては免震機構で対処し、またブロックの重みと隙間のズレを利用して吸収する。アーチ構造のように、ひとつひとつのブロックの形状を工夫して、ズレてもその重みで自然に元の形になるように作るのだ。
このためにはある程度の厚みが必要になる。例えば2階建て一軒家程度の場合でも20~30cmは必要ではないか。そうすると重量が問題になるので、中を中空にしたり柱構造にしたりして軽量化する。隙間に発泡スチロールでも吹き込めば断熱にも役立つ。
問題になりそうなのは、雨と窓だ。多数の隙間ができるから、幾ら表面を加工しようとも雨漏りはしやすいし、ドーム構造という性質上、窓は作りづらい。大きくすれば強度に影響があるし、構造が複雑になるためそこから雨漏りしやすくなる。通常の屋根防水と同じような仕方では、50年どころか10年ももたない。ただ、漏れたとしても木造と違って構造体が腐ることはないので、いっそのこと何もせず、室内側の造作で排水路を作ってぼた落ちしないようにする、ということも考えられる。
全部をローマンコンクリートにするのではなく、天井だけは普通に作って、壁だけをローマンコンクリートブロックにする、ということも考えられる。これなら隙間と雨漏りの問題は大きく緩和される。屋根だけは耐久性がないが、これも相対的なものであり、50年に1回葺き替えればよい。
ただ、こちらの場合は揺れが想定以上に大きいとバラバラになってしまう。これを防ぐためだけに、ブロックに通し穴を空けておいて、何らかの配筋をするのもよい。ブロックに密着する必要はなく、経年劣化を考慮するなら、鉄筋ではなくアルミやグラスファイバーなども考えられる。この問題はドームでも同じだが、その揺れの想定はずっと大きなものにできるはずだ。

2017年5月16日火曜日

3Dプリンタによる高セキュリティ小型水冷サーバ


普通に基板を作っておいて、その上から3Dプリンタで表面を覆い、また水路を作ってやると、基板の凸凹に追従して効率よく水を廻し、且つ水漏れの心配がなくなる。また、回路が樹脂で固められた状態になるため、その改変をするのは困難である。
これをサーバへ応用すると、高密度でセキュリティの高いサーバができる。水冷は熱効率が良いから、今の倍程度の密度なら、簡単に実現できるはずだ。水路を工夫することで液浸にしたり、重力落下を利用して下部を開放にするなど、従来より大胆に冷却することも可能になるだろう。
セキュリティに関しては、ICチップの端子などに直接プローブをつけて読み取る物理的攻撃が出来なくなるので、遠隔地に置いても安心できる。
これに関しては、更にアイデアがある。樹脂で覆う際、その樹脂の破壊を検知する機構をつけることで、樹脂構造を破壊してでもアクセスしようとする攻撃を察知することができる。回路の周りにメッシュ通電回路を設け、その通電が切れることを検知すれば良い。従来も理論的には検討できたが、実際の実現は困難だった。3Dプリンタならそれを容易に実現できる。
もっと極端なことを言うと、電界検知により人が近づくことすら検知する技術がある。こうなると近づくだけでNGになるので、回路の安全は絶対になる。

2017年5月14日日曜日

関連死を防ぐ


熊本の地震では、直接の死者よりも震災関連死の人の数が3倍だったそうだ。東北では圧倒的に死者が多いが、津波の被害を差し引けば3500人という数は決して少なくない。
その内訳を見ると、70代以上が90%、また避難所での精神的肉体的疲労・ストレスに関するものが半数近くを占める。これを見ると、簡単に「震災関連死を防ぐ」と言っても難しいことが分かる。震災直後の避難所生活におけるストレスや疲労の高さは如何ともしがたいからだ。
それでも、少しでもそれを少なくしようとすれば方策は考えられる。一つは、避難所の速やかな整備と運営だ。避難所が十分に広く、プライバシーが確保され、トイレや食事や風呂の心配がなければ、そのストレスや疲労は軽減される。
この稿は技術の夢想がテーマなので、技術的観点から考えると、避難所の運営に技術を取り込むことが考えられると思う。例えば職員の負担を減らすための施策。タブレットのカメラで避難所をひとなめするだけで推定人数や年齢層、できれば人物特定までを可能にするAIとか、到着した物資を写真に撮ってその分量を一瞬で把握するとか、インタビューから文字起こしして意味解析して困窮度や具体的要求をデータ化するとか、避難所内の声や人の表情を確認してストレス度を測定する、というような技術である。
あるいは、放送やネットなどで入手可能な情報を全部ウォッチして整理し、信頼度と共に提供するシステム。それらの情報を、ローカルWiFiや地域ワンセグで再配信するシステム。物資の請求を市町村から県、国などに送るシステム、あるいはそれを受け取るシステムなどが考えられる。
また、ストレスケアとして、避難者の組織化や作業分担、ストレス軽減プログラム(体操や娯楽の提供など)を組み込んだり、交通事情に鑑みてドローンによる支援物資配送など、ハイテクで改善できる可能性は多々ある。
一つ一つは細かいことだが、避難所では普段のインフラが破壊された状態でスタートするため、どれか一つだけが突出していてもダメで、全体が少しづつ改善するのがよい。そういう意味では自治体より国が主導して研究し、OSSなどにして広く配布するのがよいと考える。

2017年5月13日土曜日

ないとはいえない


裁判所の判決文でよく出てくる、このフレーズが嫌いだ。
判決に納得ができないことも多いが、その多くは心情的というよりも論理的な矛盾だ。上のフレーズはその代表的な例と言える。被疑者に悪魔の証明を要求している、量的議論を無視している、判決に矛盾する証拠を無視する、心理学的事実を無視する、などは枚挙に暇がない。
裁判や法律にはもっと理系の視点が必要だと思う。例えば、判決の信頼性に一定の基準を設けてAIで点数化するなどしてはどうだろう。社会力学的な恣意は無視するとして、論理学のレベルでチェックし、もちろん合格落第は付けずとも、裁判所のレベルや裁判官について各々点数を蓄積していくのだ。例えば、
  • 悪魔の証明(そもそも証明が非常に困難なこと)を要求していないか
  • 過大な費用が掛かる証明を要求していないか
  • 弁護士の質が極端に違わないか
  • 法律を正しく解釈しているか(他の解釈事例と矛盾していないか)
  • 提出された証拠を公平に評価しているか(片方に一方的な有利な解釈をしていないか)
等を診断する。単独の判決でどうこうするのではなく、長期間蓄積していけば傾向が出せる。その上で、原告被告のカテゴライズや訴訟金額規模などとの相関が出せれば、その偏りを見た上で、裁判官自らへのフィードバックになるだろう。

2017年5月12日金曜日

ロボットによる建築


まず建物の外側にあたる部分に足場を組んでやれば、以後の作業は、その足場を基にしてクレーンやロボットが動き回ることで、かなりの部分を自動で作ることができるのではないか、と考えた。この場合の足場は、天井より高い位置にトラスなどの骨格を作り、クレーンが内側の全空間にアクセスできるように作る。
ただ、幾つか問題はある。ロボットやクレーンを使うのなら、下から順に組んでいくのが正当だろうが、柱構造ではこれは困難だ。梁を張った後、それを横断してクレーンを動かすことはできないし、壁と屋根を作った後から内装を作ることもできない。日本の建築基準法で、柱になる構造物を使わなくてもよい建築方法は殆どない。また、基礎も問題だ。鉄筋を組むのは相応に職人技なので、クレーンとロボットで作れるかどうかは疑問だ。
そこで、この二つについては以下のようにする。まず基礎は従来同様に人間が作ることにする。次に柱を使わない作り方で作る。柱を使わずに作れる家の代表はログハウスだ。また、ログハウスの多くは内装が簡素だ。例えば断熱材や壁紙を貼ることはない。従って、ログハウスを基本に考えることにする。
問題になりそうなのは、ログの長さだ。ある程度以上大きな家だと、かなり長いログが必要になるし、多数のサイズが異なるログを組み合わせるための制御は大変だろう。通常は設計図に基づいて一本一本ログを指定サイズに加工するのだが、ここで考えるのは、同じサイズのログを管理せず大量に持ち込み、上から順番に取っていき、その場で継ぎ目を加工して設置する、という方法だ。
これは単純に、落とし込み陥合のためのホゾをその場でNC加工して作る、という作業になる。以前提案したようなエンジニアリングウッドであれば、加工くずは再度エンジニアリングウッドの材料となるため、掃除機内蔵のNCマシンで回収する。これで現場はきれいなままだ。落とし込み陥合の種類は2つで、1つは角の加工、もう一つは長さが足りない時の継ぎ足しである。
これで、材料さえ切らさなければ全自動で家を組める。騒音の問題はあるが、昼夜通して作ることも可能だろう。さすがに無人にするのは困難だろうが、少人数で対応できるはずだ。
尚、天井と屋根はさすがに難しいので、いきなり全自動にするのではなく、ここだけは職人に任せる必要があるだろう。その場合でも吊りのための足場があるので、ずっと簡単にできるはずだ。

2017年5月11日木曜日

Amazon Driveを前提として


Amazon Driveが容量無制限プランを出したので見てみたが、少し心許ないことが分かった。大容量ファイルのアップロード、ダウンロードが遅すぎ、また不安定すぎるのだ。また暗号化についても特に言及がなく、第三者やAmazon自身に覗き見されたり、検閲されていきなり削除されたり漏れたりという懸念も払拭できない。
この問題に対応するシステムとして有名なものに、電子割符がある。クラシックなものでは、①二つに分割して別々に保管し、両方揃わなければ復元できないもの、②三つに分割し、そのうち任意の二つが揃えば復元できるもの、があった。だが原理的に考えれば、この数値は任意に変えることができる。分割数と復元要数が4/3、4/2、5/4、5/3、・・・などの組み合わせだ。また、サイズを均等にする必然性もない。大2/小2としておき、大2と小1が必要、なども考えられる。
個人で使えるネットワークドライブを想定した場合、有料だが無制限で使えるAmazon Drive、無料でそこそこの容量を持つGoogle DriveとOneDriveを使うものとして、仮想的に無限のドライブを使え、ローカルにはキャッシュだけ持ち、更にはローカル機器の破損を想定した対策ができていてほしい。こうした想定に対応するシステム構成を考えてみる。
ファイルサイズが小さいものに関しては、割符は均等3分割、復元数2のものを使用する。これをAmazon Drive、Google Drive、OneDriveに置く。また、ファイルサイズが大きいもの及びバックアップに関しては、大2/小2、復元数大2/小1の分割を用いる。つまり、Amazon Driveに大2、Google DriveとOneDriveに各々小1を分散する。
小さいものに関しては3つのうち2つが生きていれば復元できる。大きいものとバックアップは、Amazonは必須で、他1つはどちらかが生きている必要がある。ここでAmazonが必須なのにわざわざ分割するのは、Amazon単体では復元できないようにするためだ。Amazon内のファイルが1つだと、割符というよりは暗号化ファイルと復号キーのようになってしまうため、相対的に復号が容易になるのだ。
また、分割後の個々のファイルに関しても、更に適当な容量に分割する。これは割符ではなくブツ切りで構わない。細切れにする理由は、ネット帯域の制限や、大容量ファイルにして一気に送るとエラー率が高くなり、再送の無駄が大きくなるためだ。
これらのファイルのアップロード・ダウンロード・分割・結合の状態は常にモニタされ、必要に応じて再送や復元、ゴミ処理(ガーベージコレクション)を行う。これはローカルで行ってもよいし、AWS Lambdaのようなもので行ってもよい。
大容量ファイルと小容量ファイルでは復元強度(障害耐性)に違いがあるが、これは大きさだけでなく重要度で分けるのもよい。フォルダで特性を分けるなどすれば簡単にできる。
3社ともにアメリカの企業である点がリスク管理上は問題になるので、企業が使う際には他国のサービスやローカルNASなども組み合わせてやるとよい。
自分で作る技量はないが、需要はあると思うので検討いただきたいものだ。

2017年5月10日水曜日

細線CANDLE原発


研究中の原発の一つに、TerraPower社の進行波炉やCANDLE原発がある。核物質が棒状に加工されており、その先端で核反応を起こすと、その後ゆっくりと核反応が進み、棒の最後まで到達すると終了する。その間、ずっと一定の核分裂を続ける。
CANDLE原発の詳細はWebに譲るとして、現状では実用化されていない。こういうものは小規模でまず実験するものだが、それもされていないようだ。理由は幾つかある。その最大のものは材料で、燃料棒をどのような配合で作ればよいのか、まだ正確には分かっていない。設計をし損じると、暴走して止められないか、うんともすんとも動かない燃料棒ができてしまう。
これを確認するためには、シミュレーションばかりするのではなく実地で作ってみることだ。このためには、ごく細い糸状の燃料棒(糸)を作ってみればよい。それが暴走したとしても量が少なければ影響も小さいはずだから、放射線量の最大値を見積もって充分に細いものに仕上げればよい。
もう一つの問題として、最初の「点火」をどうするか、というものがある。従来の燃料ペレットと異なり、CANDLE原発の燃料棒は太く短い、巨大なものになる。安全な状態で格納しておいて後から制御棒を引き抜く、という手段が使えない。
これにはレーザーを使えばよいと思うのだが、燃料棒が太く短いという性質から、中央にごく小さい反応を起こしただけでは全体に熱(核分裂)が広まらない(広まるのに時間が掛かる)。CALNDLE原発の寿命は年単位であるから、必要充分な発熱が得られるまでに何ヶ月も掛かるようでは困る。かと言って、平面をいっぺんに反応させるには、燃料棒を広く露出しなければならない。
この問題を解決するには、反応の進行が速い細線燃料棒を作っておき、紡錘状に広げてやるのがよい。つまりは「核の導火線」だ。細線の広がった先にCANDLE燃料棒をくっつけておけば、最初の反応は小さく、素早く広がり、実用域に達する時間も節約できる。
最初の細線による実験で、反応速度を調節できる配合が見つかれば、将来的にこのような形状の原発ができる希望は高まるだろう。

2017年5月9日火曜日

サツマイモ栽培工場


サツマイモはプランター栽培が可能であり、比較的弱い光でも育つ。採算を度外視すれば人工光植物工場での育成は可能である。問題は、4ヶ月と比較的長い期間の育成が必要なことだ。
ここで、芋を燃料として育成しようとしている研究室を紹介する。
ここでは、イモは最短6週間、平均8週間で育てるという試みをしている。これは、芋の育成期間のうち、小さい頃は成長速度が速いことを利用し、期間当たりの収量を最大にすることを実現している。当然できたイモは小さいのだが、収量は最大になる。
この研究室は、イモを食用ではなく燃料として利用することを目標としているため、味については何も言及していない。だがもちろん、燃料とするためには糖分や炭水化物が必要で、これは味に貢献するものだし、食用のイモは熟成させることで美味しくなるので、食べる方向性はある。小さいイモであっても、自己消費や潰す用途(菓子材料など)であれば問題なかろう。洗浄後そのまま袋に入れ、電子レンジで加熱して蒸かし、そのまま冷凍して通販に流す「一口イモ」なんてのは如何だろう。
この研究では植物工場までは考えていないようだが、夜にも光を当てて、また環境も調節してやることで、育成期間をもっと短くすることができるかもしれない。潰す前提なら多少ラフに扱ってもよいだろうからロボットの導入も考えられる。狭い空間に押し込んでもそれなりに育つはずだ。となると、工程の大部分をロボット化して自動収穫するような植物工場は考えられる。この場合、例えば実と葉茎をロボットで分離して、葉茎を裁断乾燥して燃料に使う、というところまでロボット化が可能だと思う。
残念ながら、このHPは2013年で更新が止まってしまっている。現状の研究の進展をぜひ見てみたいと思うのだが。

2017年5月8日月曜日

超節水洗濯機


現状の市販されている節水洗濯機は、ためすすぎをするとか水の量を適切にするとか程度しかやっていないが、もっと極端に節水する洗濯機ができないだろうかと考えた。
これを考えた理由は、震災対応だ。一説によると、洗濯で使用する水の量は、一人当たりの水使用量の16%になるそうだ。このため、震災で水道が止まると、電気が使えたとしても洗濯ができない。これは辛いだろう。風呂には循環風呂という立派な節水術があるし、トイレにはコンポストトイレや非常用トイレなどの逃げ道もあるが、洗濯にはこれがない。
このための最も簡単な施策は、浄水器を内蔵する洗濯機、ということになる。洗いからすすぎに切り替わると、洗濯漕の水が順次浄化槽を通るようにしておき、徐々に水が綺麗になっていく。心配なら最後の1回だけ水道水を使うようにすればよい。後は浄水器の性能を用途に合わせて選ぶか調整するだけで済む。
究極には、洗濯機内に水タンクを持っておいて、(設置後最初は必要だが)以後はほぼ水無しで(若干の補充だけで)洗い続けられるものが欲しい。循環風呂の洗濯機版だ。風呂よりも浄化能力は高いものが必要だが、やっていることは変わらない。
問題となるのは浄水器の能力で、性能はもちろん、ある程度のスピードも必要である。まず、市販されている飲料水用の浄水器はほぼ全滅だ。数百リットルの浄水能力しかなく、あっというまにダメになってしまう。循環風呂用の浄水器も、そのままでは使えない。洗剤や柔軟剤などで相当に汚れた水を使うので、かなり強力なものが必要である。またその使用頻度からしても、何らかの薬剤を投入するタイプではダメだ。
浄水のタイプとして、大きくは微生物を使う浄化槽タイプ、フィルタを使うもの、沸騰浄水がある。洗濯機に使うには一長一短だが、ここでは沸騰浄水型を考えてみる。
汚れた水を沸騰させ、蒸気を冷やして再び水にするのがこのタイプの主要原理だ。この発熱を、そのまま乾燥に使えないか、と考えたわけだ。つまり、汚水と浄水のタンクを備えておき、脱水は全て汚水タンクに誘導する。その後乾燥に入ったとき、直接洗濯漕に熱風を吹き込むのではなく、汚水を沸騰させてその蒸気を洗濯漕廻りに誘導し、できた水を浄水タンクに戻すわけだ。こうすればエネルギーの節約になり、一石二鳥だ。
汚水タンクの汚れはどんどん凝縮されていくので、ある程度以上になったら廃棄する。それでも汚水タンクには汚れがこびりつくので、定期的に取り外して清掃する必要があるが、内側をツルツルに仕上げておくことでその頻度も抑えられる。あるいはスクラブ清掃なども考えられる。
タンクを二つ備える関係上、水を大量に使う縦型は困難で、ドラム式限定になるだろう。また当然、洗濯容量の割りにボディは大きくなってしまう。値段も上がる。だが、例えば1回の洗濯で使用する(汚水排水の結果補充の必要がある)水の量が2リットルで済むなら、一定の需要は望めるはずだ。
フィルタタイプの場合、タンクは一つでよい。まずタンクの水を洗濯漕に開放して、洗剤を投入して洗った後、すすぎの過程でフィルタを通して徐々に浄水していき、最後のすすぎ水の排水をタンクに戻せばよい。この場合はフィルタが高性能で長寿命且つ安価でなければならず、それなりにチャレンジになるだろう。

2017年5月7日日曜日

縦翼機


飛行機の翼は左右についている。これは鳥でも虫でも同じだ。だが、羽の役割だけを考えるなら、左右についている必然性はない。揚力と方向制御さえできれば、どこについていても問題ないはずだ。
エアタクシーのように、少人数が乗れるドローンを考えた場合、左右に展開される翼は邪魔になる。幅が必要だし、折り畳みにすると付け根の強度が心配になる。しかし前後、上下に展開できる羽ならどうだろう。展開しても左右の邪魔にならない。
そこで考えるのがこんな飛行機だ。普段は軽トラックのような形状で、羽は荷台に仕舞われている。飛びたいときは、羽を展開する。クレーンのように伸びるポールが車幅いっぱいの左右に仕込まれていて、これを上ないしは斜め前方に伸ばす。このポールの間には、定間隔で離れた羽が挟まっている。要は複葉機の羽だが、羽の数は必要揚力に合わせて増やす。推進は、普通の小型飛行機と同じくプロペラである。
ポールの角度や伸縮度合いを変えることで向きを変える。形状からして速度は期待できないが、車がメインで緊急避難的に飛ぶだけなら充分だろう。
ここで問題になりそうなのは重量バランスだ。羽が揚力を生み出し、搭乗部がぶら下がっている状態において、前への推進力が下にあるというのは確かに難しい気がする。これを解決するには、飛び上がったら下にも展開するか、あるいは上下ではなく前後に展開するということが考えられる。
用途だが、人が乗るだけでなく、従来のドローンでは困難な10kg~50kg程度の荷物を中距離(数km~十数km)運ぶのにも便利だ。大げさな滑走路を使わずとも、一般道や私道を使って離発着ができるとなれば、運送業者での使用や僻地での使用に役立つ。

2017年5月6日土曜日

溶融塩発熱所


電気を貯めることは困難だが、熱を貯めることは比較的簡単だ。だから、発電所よりも発熱所にした方がよいケースは存在するだろう。これには二つ考えられる。一つは、発電自体が不安定な、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー発電だ。もう一つは、負荷による出力調整が困難な原子力発電だ。
風力発電では、既に似たような機構が開発されている。それは発電が主で発熱は従なのだが、最初から発熱を目的に作れば、構造は簡単になり、効率も上がるだろう。また、原子力発電では、一旦溶融塩に熱を移し、パイプで誘導してプールに貯める。発電は、再びそこから溶融塩を運び出して蒸気を沸かす。従来の原子力発電は、揚水発電所を併設したりしていたものだが、これを溶融塩プールにする、という具合である。
一旦電力にしてから再度ポンプで水をくみ上げるのより、熱のまま保管した方が簡単で効率も高いのではないかと思う。また揚水発電よりも土地の使用効率は高いだろう。更には、発熱方法を複数用意して、相互補完することもできる。原子力と火力の組み合わせは正に適切だ。
細かい出力変動に対応する必要がないので、発熱所は機構も単純にでき、結果として事故も起こさず効率も高くなる。また、発電所を原発から離して作ることもできるし、将来的に増設する場合も、溶融塩パイプの引き回しを変えることで対応できる。ちょうど溶融塩プールがバッファになる格好だ。
欠点として考えられるのは効率で、どれだけ熱の漏洩を防げるかが鍵になる。真空断熱などは理想だが高価だし、補修費も掛かる。敷地が増えれば漏れも大きくなる。発電効率の向上や安全性、負荷変動対応の有利などから、総合的に検討されることになるだろう。

2017年5月5日金曜日

ファンクションベースデスクトップ


AmazonのLambdaというオンラインサービスがある。類似のものをMicrosoftやGoogleも提供している。何かというと、ファンクションの実行に対して、呼び出し(実行)回数と、それに伴うリソース(CPU)消費をベースとした従量課金をするというものだ。ここでいうファンクションとは、マイクロサービスをイメージしてもらうとよい。つまり、ごく小さいオンラインサービス、例えばGoogleの検索とかデータベースへの1項目の書き込みとかである。
ファンクションはコードとしてAmazonに保持されているが、実行されない限り課金されない。また逆に、幾ら実行してもサーバ資源を気にする必要はなく、速度が低下する心配もない。いわゆるサーバーレスコンピューティングである。
サーバーレスコンピューティングは、従来で言うスケールアウトの概念と似ている。但しサーバーの量を増減させるという発想ではなく、ユーザはファンクション数の増減のみを意識し、バックグラウンドでサーバがどう増減するかを気にする必要はない、それはAmazonがバックグラウンドで勝手に行う、というものになる。
これは、負荷の予測がつかない新しいWebサービスで特に有効である。たとえばポケモンGOのように、予測の50倍もの負荷が掛かったとしても、クラウドベンダが勝手にスケールアウトしてくれるため、ソース管理者は数人でよいそうだ。
これを個人のデスクトップに使えないかと考えてみる。同じくAmazonの例で言うと、WorkSpacesというサービスがある。これは定額なのだが、年間で借りると結構高い。知っての通り、デスクトップというのはWebサービスのピークに比べれば極めて負荷の低い作業であり、その使用時間の殆どはアイドル(待ち)である。これをファンクションベースで作ってしまえば、借り切るより安い値段で使え、且つピークでもストレスなく作業ができるのではないか。
これを実現するためには、WordサービスとかExcelサービスとかが必要になる。これは今の、例えばOffice 365のようなものではダメで、見かけは同じにするとしても、バックグラウンドのソフトはマイクロサービスベースに書き換える必要がある。
このデスクトップがよいところは、ローミングが実に簡単であるところだ。また、個々のデスクトップに幾らサービスを並べていてもよい。使わない限り料金は掛からないし、権限管理も可能だ。見かけはChrome OSのようなイメージだろうが、インストールは必要ない。VMだと他のユーザが高負荷のときに困るがそのようなことはなく、特定のアプリからの応答が返ってこなくてもハングすることはない。ウィルス関係もサーバ側の問題となるから、個人の手間や必要知識が減ることになる。
欠点らしい欠点と言えば、常にオンラインである必要があることだ。これだけでも一昔前なら致命的だったが、今ではそれほどでもない。必要ならローカルにサーバを置くこともできるが、SIはほぼ必要ない。全てが同じ構成で良いためだ。保守も同様で、完璧にマニュアル化され、ベテランは必要ない。またSIに業務知識が完全に不要となる他、逆に業務内容を知らせたくはないが保守は任せたい、というような用途にも向く。

2017年5月4日木曜日

画像認識ID


従来、品物にIDを付けるには、QRコードやRFIDなどが使われてきた。つまり、生産者が有意に付与する必要があった。だが、これには大きな欠点が幾つかある。第一に、最初に付与されなかったものを後から識別することができない。次に、IDマークを付け替えたり汚されたりしたら不正されたり使えなくなったりする。また、自然のもの(農産物など)にシールを貼り付けるのは、人手やロボットなどの費用も掛かる。
だが、近年の画像認識の精度向上により、何もせずとも識別できるようなことができるようになる可能性がある。従来はりんごとバナナの識別くらいしかできなかったところ、品種を識別したり、更には個体を識別できるようになるかもしれない。
工業製品で且つ同じ品番のものでも、例えば服のしわや糸くずの出方や色むらによって個体識別ができるようなことも考えられる。双子が同じ服を着て同じ日に洗濯に出しても、洗いあがりがどちらのものかを識別できることになる。これを助けるために、材料や塗料に微量の赤外線反射素材や紫外線吸収剤のようなものを入れておいて、わざと均質にならないような混ぜ方をしてやることが考えられる。
IKEAやコストコなど、海外の巨大ショッピングセンターのレジでは、ベルトコンベアに自分が買ったものを並べて清算する方式のものがあるが、あれとてもバーコードを読んでいる。それにこの機能を付加してやれば、りんごのようなものであっても自動入力され、レジ打ちが必要なくなる。
他にも、硬軟取り混ぜて様々な応用が考えられる。
  • 旅行の最終日に忘れ物がないかどうかを一瞬で判断する。
  • 引越しの前後でなくなったものがないか確認する。
  • かるたやパズルのピースに不足がないか確認する。
  • 野生の動物や植物の調査で、個体識別まで行う。
  • 工事現場で、次に必要な部品を一瞬で探す。
  • 工場で、段取りや部品の仕訳をきっちり行わずとも自動でピックアップする。
  • 荷物を送るとき、適当に詰めても、取り出したら仕訳ができる。
  • 真贋判定や盗難品判定に使う。
  • 故障品修理の個体識別、保証範囲の判定に使う。改造や開封の有無を調べる。
  • 押入れや引き出しにに無造作に突っ込んでおいたものがどこにあるかを勝手に記憶しておいて、必要なときに教えてくれる。
以前提案した「監視カメラ社会」のように、ただ単に多数の監視カメラをつけておくだけで、屋内屋外問わず様々なことが分かるというのは、恐ろしいが面白いことだ。

2017年5月3日水曜日

一家に何台?LEDステージライト


一家にテレビやディスプレイは何台あるのだろう。リビングにテレビがあって、場合によっては寝室に小さいのがあって、後はPCやタブレット、スマホなどがちょこちょこ、というのがせいぜいだと思う。その用途は、テレビ番組を見る、ケーブルテレビやVODを見る、Webやアプリ、といったところだろう。その全てが一定の目的をもって見に行くためのものだ。
以前の提案、例えば
のように、もっと環境にディスプレイを積極的に使うようになれば、もっとディスプレイの売上げは増えるはずだ。その際に必要となるのが、長時間投影可能なプロジェクタである。
つまり、消費電力が少なく、映像素子の寿命が長く、発熱や故障が少なく、騒音が低く、価格も安いプロジェクタだ。用途にもよるが、必ずしも平面フルスキャンをする必要はなく、レーザーステージライト、例えば
に毛が生えた程度のもので充分である。一昔前に流行ったように、空中に霧を出して文字を描いてやるようなものだ。色もフルカラーでなく、単色ないしはLEDの数色(赤青黄緑くらい)で充分だ。
家庭用ならレーザーでなくともLEDで充分である。制御のためのDMD(デジタルミラーデバイス)にしても、プロジェクタ用の細かいものは必要ない。量産すれば、今の簡易ステージライトのように、1万円を切る価格で作れるはずだ。大きさも、少し大きめの電球程度にはなるだろう。つまり、スポットライト用の冶具を使って多数のLEDステージライトを装着し、壁のあちこちに様々な情報を映し出すことが、何十万何百万というレベルではなく、数万円で実現できるわけだ。他にも、シーリングライトの付加価値として組み込むこともできるだろう。
これに、初期に需要が予想される制御パッケージを付けて販売してやる。代表的には、天気予報、時計、カレンダー、スケジュール、インターホン・防犯防災センサの反応、アラートメール(地域の防犯情報や光化学スモッグなど)、熱中症情報、ソーシャルメディアなどのアラート、電話・Faxの着信通知、特定のニュース(キーワードで引っ掛けるなど)、AI音声会話の受け答え補助、などが主に使われ、更にはAPIを開放してやることで、工場や事務所で使うこともできるようになる。
大型ディスプレイやレーザープロジェクタだと高価だが、これなら安価に大画面が実現できる。情報を受け取るには必要充分だ。場所を問わず投影できるから、逆に言えば定番の置き場所があったようなものは不要になり、気分によって、あるいは時間や季節によって投影場所を変えたり、時計ならアナログとデジタルを切り替えたりもできるし、机の上がモノで溢れたり、何かというとスマホを触る必要もなくなる。
母艦が必要となるところは玉に瑕だが、これはスマホやPCで充分だろうし、あるいはAlexaのようなディスプレイなしデバイスが一台あればよい、ということも考えられるだろう。

2017年5月2日火曜日

支出見合いの補助


別稿「ベーシックインカム」で触れた支出の把握だが、支出の内容に従ってベーシックインカムを振り込む額を決める、というのであれば、人は喜んで支出が把握されることを容認するはずではないか。
ベーシックインカムの決め方は、一人当たり一定量までの生活必需品は全額補助、その上は定額補助、更に一定以上では補助なし、とする。また必需品でないもの(嗜好品など)も率が変わるだけで構成は同じ、品目間での相関計算はなし(ぜいたく品を買っても生活必需品のベーシックインカムには影響しない)とする。こうすれば、定額援助の上限額までの支出を隠す意味がなくなる。
ベーシックインカムの計算に収入は関係ない。一方で所得税はなくなり、収入税に変わる。つまり必要経費は支出なので、ベーシックインカムの対象となるわけだ。こうすれば税もシンプルになる。所得は隠したがるモチベーションが働くが、支出を全て把握できる前提では、これも難しくなる。隠蔽のペナルティが適切なら、不正も問題ない程度に収まるだろう。
一方で、架空の支出を捻出することは考えられる。だが、まず第一に、補助の上限が一人当たり幾らであり、また生活必需品は支出として計上するわけであるから、誤魔化して得られるであろう利益は殆どない。また、、もし不正が発覚した場合、「罰金(の類)を取る」のではなく、「ベーシックインカムを支給しない」という手段が取れる。罰金は取り立てが必要だが、この場合は必要がなく、確実に罰を与えられる。
他にもまあ色々と細かい問題は発生するだろうが、原則として考えれば「根が良い」方法論ではないかと思う。

2017年5月1日月曜日

スタートレックの時代は来るか


映画「スタートレック」で描かれる23世紀の未来は、貧困が撲滅されていて、貨幣が存在しない。人は皆、自分を高めることを究極の喜びとして生きている。本当にそんなことは可能なのか。
技術が発達することで、衣食住に必要な全てが無償で提供される事態はあり得るか、という問題でもある。これへの答えは「あり得る」だ。だがもちろん無条件と言うわけにはいかない。そして、その根本となるのは、人間が持つ「欲」の抑制である。
その一つは、争いの欲だ。どんなに進んだ文明でも、その文明に相応する破壊兵器は作り得るものだ。だから、考えの違う人たちと仲良くやっていくための抑制がなければ、何れは戦争になって死滅する。また、物欲もその一つだろう。どんなに多くのモノを持っても満たされない人種というのは居るものだし、金儲けにしても、使う目的を明確に持って儲けている人は皆無だろう。儲かること自体が楽しいのだ。他に重要なのは、子供を必要以上に欲しがらないことだ。人口には一定の制限を掛けるべきで、それは地球の資源と技術の進展具合から逆算して求める。
これらの欲を直接抑えるようなことは、対症療法に過ぎない。その根本原因は、精神的な安定(幸福感)である。例えば過度な物欲は、依存症の一種である。もちろん肉体的な病気からくる場合(分泌異常など)もあるだろうが、それには治療で対処すればよい。それ以外の、例えば社会的欲求を満たすことは、薬では難しいし、本質的ではない。
だからと言って、希望する人が希望する職種に全て収まるなどということはあり得ない。誰かが尊敬されるためには、他の多くの人は尊敬する側に廻らなければならないから、全員が尊敬されるなどということもナンセンスだ。人の全ての欲を満たすことは所詮無理だし、その不満が一定の水準を超えれば争いが生まれる。
だが、近未来において、このナンセンスを可能にする技術がある。それがAIだ。以前の投稿
で書いたような社会だ。人同士の付き合いの中にAIが自然な形で紛れ込むことで、人の欲求を適度に消化すると共に、危険な方向に進むことを抑制するものだ。こうすれば、たとえ全人類が誰一人働かずとも生きていける世の中になったとしても、依然として適当に問題は発生し、人が自らの力でそれを解決することで欲求を満たす、といった、精神的なエサまでも与えられる「新・籠の鳥」状態になれる。
これがもっと進むと、人は一人ひとりがホロデッキの中で過ごし、相対する人間が本物かAIかの区別すら付かないような社会が考えられる。自分が籠の鳥であることすら自覚できなくなれば、人は一生幸せに暮らせることだろう。
これでも知的好奇心を満たすための欲求は止まらないから、新たな知見や発明が途絶えることはないし、むしろ促進されるだろう。そのうち本当にワープエンジンが開発されるかも知れない。そうして宇宙に進出できるようになれば、鳥籠も不要になるかもしれない。

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