2017年7月31日月曜日

ノンアルコールビール


少し前に、職場で休憩時間にノンアルコールビールを飲んで上長に咎められた、という話が議論を呼んだことがあった。その際、殆どが否定的な意見だったのだが、中には「なぜダメなのか分からない」という意見もあった。これはちょっと興味をそそられた。

そもそも、海外では昼食時に飲酒することを特に咎めていないケースもある中、更にノンアルコール(最近では1%以下などではなく0.0%のものもある)で何故ダメなのか。否定派の中には単純に「非常識」で片付けてしまう人も居たのだが、もう少し突っ込んで考えてみると、問題の本質が見えてくる。

それは、「従来は単純な選択肢だったものが、時代と共に新しい選択肢が出てきたために混乱している」という図だ。他の例を挙げるなら、トランスジェンダーの問題が代表的だろう。

女子大にトランスジェンダー女子(体は男)が入学することは許されるのか、また女子トイレに入ることや女性限定サービスに参加すること、女性専用車両に乗ることはどうなのか。従来は問答無用でダメだったところ、トランスジェンダーに関する意識は国際的にも日本国内でも大きく変化している。

そこで改めて考えるのが、女性とは何なのか、あるいはなぜそのサービスは女性向けなのか、ということだ。そうすれば、精神性に関する部分は許されるべきで、肉体(特に性器)に関わる部分は更なる場合分け(性転換手術の有無、程度など)が必要、などと考えを進めることができる。

ではノンアルコールビールの場合はどうなのかと言えば、「非常識」というのを分解すると、日本文化では仕事が終わるまで酒を飲まないのが常識だ、というところがまず原点になる。なぜ海外では許されて日本では許されないのかと言えば、日本では仕事終わりに飲みに行って大いに羽目を外す習慣があったからだ。つまり「酒を飲む=仕事は終わり、羽目を外してよい」とうのが日本の「常識」だった、と考えられる。

これは一方で、酒は嗜み、嗜好品、酔うまでは飲まない、味や香りを楽しむもの、適度にリラックスして仕事の活力にする、という飲み方があることを否定している。大いに飲むなら当然思考力は低下し、仕事に支障を来たすだろう。だが、そうなれば当然本人の責任なのだし、その程度は個人差がある。そこで一律に縛ってよいものかどうか。

これには日本、日本人のもう一つの特性が観察できる。海外では、飲酒運転をまず車の挙動から判断し、怪しいとなれば追跡して止めて調べるが、日本では検問で全車両を止めて一律に検査する。また、建築許可などでも、シミュレーションや実地検査ではなく、設計段階で事前に決めた基準に沿っているかどうかでチェックされる。逆に、できたものが実質どうなっているかは検査されない。

つまり日本人は本質的に、結果を問うのではなく、過程を問う人種なのだと言えるのではないだろうか。嗜む人がいることは無視して、少しでも飲もうとする人は(酔っ払って仕事に支障を来たす『可能性が高い』から)ダメ、という発想だ。そうであれば、ノンアルコールビールでも「紛らわしいからダメ」というロジックが通じてしまう。

これを演繹と帰納に当てはめて考えるなら、日本風は演繹でありヨーロッパは帰納と考えられる。演繹の最大の欠点は、過程の誰(どこ)に責任があるかが曖昧(にできる)ところで、よく「責任者不在」などと言われる。建築でよく起こる瑕疵や書類偽造、列車脱線事故、築地移転など、結局責任元が曖昧で当事者が損をする理不尽は事件は後を絶たない。

過程さえ正しければ結果が悪くてもよい、というのは、日本の伝統のようだ。一連の議論の中で、「仕事で結果を出せば文句ないだろう」という意見が一つも出なかった(見かけなかった)のも、そういった日本人の特性を反映しているのかもしれない。

2017年7月30日日曜日

自動運転人工都市


家族の自動車」が実際に使われる人工都市を考えてみた。コンセプトは、「地上に一度も降りずに生活できる都市」だ。

ここで考えるべきは、コミューターとリビングカーのサイズと役割分担である。既存の都市を発展させると想定した場合、リビングカーのサイズは幅2.5m、長さ10m、高さ3.5m辺りが限度である。これは大型バスに相当する。だが実際のリビングではもっと幅がほしいと思われる。このため、移動のためのリビングカー(家族揃って移動する)ものは2.5m幅に止め、自宅は別に持つようにするか、幅3m、4mのものを認めるかを考える必要がある。

広い土地があれば後者でも良いだろうが、現実的には前者だろう。そして前者であれば、リビングカーのサイズは小型~中型バス程度でも充分なはずだ。中型バスの椅子を取り払い、天井を高くして、床を低くして、後ろにコミューターハッチを1~2基設置する、その程度でよい。

ハッチのサイズは、車椅子が通る幅である必要がある。幅90cm、高さは2m。これが開口部の大きさなので、ハッチは更に一回り大きくなる。こうなるとバスの後部にハッチを2基並べるのはギリギリになる。コミューターのサイズを、幅1m、高さ2.5m、奥行1mとして、床の高さを40cmで揃える。

自宅における宅配便等の受け渡しは、大型品はコミューターハッチで、そうでない日常のものはロボットカーでやり取りする。このため、コミューターハッチは上下二分割で、ロボットカーに対しては下50cm程度のみが開くようにする。ロボットカーは荷物を押し出して、受領印やサインの類はその際に自動でやり取りする。これは新聞や郵便物などでも同様とする。

大規模施設では、長い廊下に大量のハッチが並ぶような光景が見られることになる。中型程度までは接続できるので、家族一同が一緒に乗り込むことができる。また、長さが短く椅子だけ、移動だけを目的としたタクシーも用意される。荷物だけを運ぶロボットカーも欲しい。

この接続を効率化するため、接続したまま放置することはせず、乗り降りをしたら直ぐに離脱して自動で駐車場に向かうようにする。また人の移動に応じてまた接続しにくるため、待ち時間を抑えることができる。ここはコンピュータで最適化する。駐車場は、立体駐車場でも可能だ。ギリギリまで詰められるので、効率よく土地を使うことができる。

学校や会社への移動はコミューターのみで行い、週末にはモールやレジャー施設などに中型リビングカーで移動、現地での細かい動きはまたコミューターで行う、というのが基本的な動きになる。

こういう都市ができると、途中でふらっと立ち寄るような行為は基本的になくなる。明確に「ここに行きたい」と指定しなければ、飲み屋にすら立ち寄れない。独立系の店が路地裏に、というのは少なくなるだろう。また、建物は大型化、雑居化の傾向が高くなるだろう。職場ビルの地下にいけば飲み屋、というのは今でもよくある光景だが、これに拍車が掛かる。

となると、帰路にそこを通らざるを得ないような設計にする、ということも考えられる。例えば、ターミナルが1階だとすると、中央エスカレーターに至るまでの道にそういう店があって、エレベーターには2階からしか乗れないようにする、などだ。

さて、ここまで書いておいてなんだが、日本では実現しにくいと思う。このシステムは高低差が激しいと、また道が狭すぎると上手く機能しないからだ。北海道の原野を切り開いて、とかいうのならまだしも、既存の都市を改造して導入するのは難しいだろう。

2017年7月29日土曜日

電子ペーパーAndroid端末


電子ペーパーを有し、360°回転できるキーボードを備える、Android端末が欲しい。画面サイズはB5くらいがよい。12型くらいか。重さはできるだけ軽く、できれば350g以下、せめて500g程度に。また、電磁ペンを内蔵してほしい。
この端末の用途はアイデア等のメモと読書である。電磁ペンとキーボードはメモに使い、読書のときはタブレットにして使う。なぜ電子ペーパーかというと、常時表示及び長時間電池駆動が欲しいからだ。メモにしても読書にしても、電源を入れる動作、5分経つと画面が消えてしまう、というのは我慢ならない。
スマホはスマホとして持ち歩きたいが、それを読書兼用にするには画面が小さすぎる。また、Androidのソフトでもタブレット用のものの一部は静止画表示に向いているはずだ。例えば月次カレンダーなどは机の上に置いておきたい。これには常時表示が必要だ。
で、メモだが、これはEverNoteやGoogle Keepなど、オンライン同期するものが使いたいし、一種類に限定できるほど決定的なものがないので、Androidなどがベースになって欲しいわけだ。同期するにしても独自ソフトだけだと後で使い勝手が悪い。また、自分の場合、一気に長文を書くことも多いので、キーボードは必須だ。しかも通常サイズのものがいい。これにはクラムシェル型のPCの形状が最適だ。
後は、できればカラーが欲しいのだが、これは高望みかもしれない。

2017年7月28日金曜日

ロボット自動仕訳


ゴミでも分別すれば資源になる。これは今まででも常識だ。例えばPETボトルの回収で、中にゴミが入っていたり色がついているものを弾く作業では、今でもロボットが使われているものと思うが、もっと広範囲にゴミを選り分けることができたらどうなるだろう。

産業ゴミはとりあえず置いておいて、家庭ごみを考えてみる。PETボトルやビン缶はある程度できているだろうから、燃えるゴミ燃えないゴミを考えてみよう。燃えるゴミの袋を全部破って出し、細かく切り刻んだ上で、様々な波長のカメラで撮影して資源の種類を特定し、選り分けるロボットがあったとする。

燃えるゴミと言っても様々なものがある。ビニールとポリエチレンを分離したり、紙でも普通紙と光沢紙と色紙を分離したり。そうやって分けることで、例えば燃えるゴミの8割が資源ごみになるかも知れない。そして資源ごみは集められてリサイクルされる。こうすれば、燃えるゴミの量は減り、資源リサイクルが躍進することになる。

資源ごみでも雑多なものの代表は残飯だ。これを材料ごとに分離することができればどうなるか。例えば米とパンと肉と野菜と骨と皮と漬物と、などだ。今では一緒くたにするしかなく、例えば家畜の飼料にするには塩分が多過ぎるなどの不具合があったが、分離することでその程度を押さえられるとしたら。

燃えないゴミでは、ガラスや陶器、鏡、金属、半導体などを細かく資源分けできないか。そうすれば埋めることなく再利用できるだろう。

これらは今までできなかったが、その理由は、人手に頼るしかなく時間と手間が見合わなかったからだ。AIとロボットでそれが解決できるのなら、ゴミをもっと気軽に出し、また処分費用も大きく節約できるように思う。

で、問題なのはそんなことが本当にできるのかどうか。またできたとして費用に見合うのか。前者だが、程度の差こそあれ今でもできるものはできる。また、ロボットと言っても手を二本持つロボットではなく、ベルトコンベアで指定の品を突き落とすようなものになるだろうから、技術的な目処は立てられるだろう。後は費用だが、さすがにこの程度の見立てでは分からない。前者が可能になった時点で改めて考えてみても遅くはない。

2017年7月27日木曜日

仮想空間の標準化


先日、

https://cluster.mu/

というサービスが始まった。以前流行ったSecondLifeと比べてみると、前者はロボットに毛の生えたようなアバターしかないのに対し、後者は実にリアルなアバターを使っている。アメコミと日本のマンガの違いを反映しているようで面白い。

SecondLifeは日本では廃れているが、海外ではそれなりに継続している。改めてSecondLifeが流行るかどうかは不透明だが、個人的にはGoogleなどが新たな仮想3D空間を発表して一気にそれらを取り込んでしまうのではないかと考えている。
それは、以前にも

https://spockshightech.blogspot.jp/2017/05/blog-post_27.html
https://spockshightech.blogspot.jp/2017/04/blog-post_17.html

などで夢想した通りだ。これらが従来のプラットフォームと何が違うのかというと、
  1. 他の人が見える、逆に言えば自分が何をするかは見られている
  2. ローカルにソフトをインストールする必要はなく、そこに「行く」だけでよい
というところだろう。Googleはもちろん、何処に何があるかを知らせる案内板、ないしは地図の役割をする。これは、URLのような無味乾燥なものを、物理世界の概念たる座標ないしは住所に当てはめ、直感的に分かりやすくするものと言える。

URLには横の繋がりがなかった。つまり、aaa.comの隣はaab.com、というイメージはなかったわけだが、住所や座標にはこの概念がある。自分の敷地の隣に何があるかが見える、大体の住所が分かれば見回して探すことができる、というのが新しい体験として得られるわけだ。

仮想空間の特性を生かして、色々な町を作ることもできる。例えば「リアルな国・地域のイメージ」「類似の商品を扱う比較サイト的な町」「XX特集として期間限定で出現する町」「ショッピングモールのある店に入ると中がとんでもなく広い」「言語の自由な切替」「アバターの存在を、他のアバターから隠したり匿名化したりする」などだ。

URLを叩く、間違って違った文字を打ってしまう、という心配がなく、自宅から出てこの道を行き、この道路に沿って進めばそこに行き着く、というのは、ネット空間への敷居を下げる。また、町への出店を審査できるようにすれば、危ない場所はここ、と特定できるし、町内会や巡回パトロールのようなことも地域単位でできるだろう。

単純なWebと違ってデータ量も多いし、ローカルでのコンピューティングパワーも必要になるため、そう簡単には実現できないけれども、何れはこういう時代になるのではないかと思う。

この際、例えばGoogleとBingで違う空間を作ってしまうと混乱してしまうから、それだけは避けなければならない。URLの場合は階層的な文字のルールだけだったが、これを3D空間で規定するとなると、とんでもなく多くのルールが必要になる。できれば野放図に作られる前にきっちり標準化してほしいのだが、どうなるだろうか。

2017年7月26日水曜日

ケース・バイ・ケース


この言葉は思考停止を生むので、極力使ってはいけない。似たような言葉に「人によって(全く)違う」「時と場合による」「柔軟な対応」「臨機応変」などがある。

なぜそう思うのか。例えば、米国の「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」という有名なマーケティングの事例がある。それまでそのような分析を行った例は当然なかった(あるいはマイナーだった)と思われるが、従来気付かなかった傾向分析ができて、それに一定の論理的根拠が見出せたわけだが、これを見出さなかった理由は単純に「知らなかった」「分析をしていなかった」というだけだ。

頭をいきなり殴られて平気な人はいるまい。怒るか、戸惑うか、防御しようとするか、きょとんとするか、くらいには分類できるはずだ。その比率まで直ぐには分からずとも、「人によって(全く)違う」などということはあり得ない。つまり、この手の言葉を発する人というのは、それ以上の分析をすることを「(暗に)拒否している」あるいは「想像できない」のだ。ここが思考停止という所以である。

もちろんそこにはとんでもない反応をする人もいるだろう。本当に無反応だったり、嬉しがったり。でもそれは統計的に処理すべき問題であって、十分に少ないなら無視すればよいし、ある程度いるなら「場合の数」が増えるだけのことだ。しっかり場合分けをして、その場合分けが充分実用的範囲に収まるか検証し、不足なら追加して調べ、各々の場合にどう対処するかを事前に考えておく。これが正しいやり方だ。

システムを設計するとき、エラーリカバリを考えるとき、ルールを作るとき、防犯や防災の対策をするとき。その想像力の欠如が悲惨な結果を迎えることになるし、不都合を拡大することもある。しっかり場合分けして考えることは重要だ。

この話にはもう一つ裏がある。不都合を隠すためにこう言う、というケースもあるのだ。不幸なことに、こう言われることで黙ってしまう人も多い。それは質問する側の思考停止だ。だからこそ、こういう言い方をされたときには質問をする側も諦めてはいけない。

2017年7月25日火曜日

飲まず食わず


80年近く飲まず食わず インド苦行者 医師らを仰天させる

もちろん胡散臭い類の話であり、完全に信じているわけではないが、もしこれが事実だとしたらどういった原理になっているのだろう。それを考えるのは面白い。

指摘の多くは、エネルギー保存の法則に反することと水の問題だと思う。曰く、
  1. 動くこと、体温を維持することにエネルギーが消費されるので、どこからか同等のエネルギーが供給されなければおかしい。
  2. 体表から水分が蒸発するので、その分の水の補給がなされなければおかしい。
食べ物はおろか水も摂らず、また排泄もしないというのはなかなかにして究極だ。興味深い。

まず、水から考えてみる。排泄がないとすると、体から出て行く水分は、体表からの蒸散及び呼気に含まれる水蒸気だ。

http://mizuiku.suntory.jp/kids/study/n005.html

によると、皮膚からの蒸発で600ml、呼吸で400mlが出ていく、となっている(汗は含まない)。 ここで単純に考えると、どこかで1000mlの補充が必要になるはずだ。次にエネルギーだが、成人男性で2000kcalとして、このエネルギーの補充が必要になる。

この問題を考えるに、方向性は二つある。一つは、それらの必要量を、この人の外部的観察事象から合理的である範囲で減らすこと。もう一つは、それでもゼロにはならないだろうから、通常とは異なる方法で補給しているはずだ。それが何かを推測することである。
まず、この人は食事はしないので、消化器は機能していないと考えられる。かつてはもちろん使っていただろうが、退化しているだろう。すると、この分のエネルギーは不要であるはずだ。一方で、呼吸、筋肉、体液循環はサボれない。

また、呼気や皮膚からの水の蒸散は、体温を低下させる効果がある。汗も含め、体内で熱を作り、体表や呼気で冷やすことで体温を保っているわけだ。だが、もし体内の熱生産が極めて合理的なら、その熱生産は僅かであり、即ち気温と体温との差に毛が生えた程度のものであるかもしれない。場所がインドであれば相応に暑いだろうから、その差は小さいはずだ。となれば体表や呼気からの発散も少なくてよいことになる。

この二つから、成人男性で必要なカロリー2000kcalを、半分程度に見積もることはできるだろう。

多く出ている仮説の中に、体表から空気中の水分を取り込めるのではないか、というものがある。だが、空気中から1000mlないしはそれに近い量を取り込むのは不可能だ。一日中大風の中にいる必要がある。また記事にないものに、水浴びや風呂についてどうしているか、がある。つまり、風呂に入る時に体表から水分を吸収する、あるいは尻の穴から水を吸い込むということも考えられる。一日の必要量が(皮膚からの蒸散が少ないと仮定して)数100mlで済むのなら、このどちらかないしは両方を使って水を補充することは十分に可能だ。

問題はやはりエネルギーである。考え方は三通りあり、まず食べ物以外のエネルギーを吸収しているのではないか、というもの。次は、通常の食べ物ではないものを実は食べているのではないか、というもの。三つ目は、体内で作り出しているのではないか、というものだ。

第一の候補は太陽、風、空気熱、電磁波、などだが、このうち1000kCal程度のエネルギーを持ちうるのは太陽だけだ。しかし実験では病院に入院していたというから、それほど直射日光を浴びているわけではないだろう。

第二の候補は土、昆虫(飛翔しているものなど)、空気中のゴミ(カビ粒子やフケの類)、などが考えられるが、これも入院の事実と合わないし、もしあったとしても相当の量が必要なので考えにくい。となると、第三の考えしかない。また、体内の元素レベルの収支で考えてみても、これは辻褄が合う。これを少し説明しておく。

例えば呼吸は、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すわけだが、これはつまり炭素が体内から出て行くことを意味する。炭素が体内から出て行っては収支が合わない。この収支を合わせるには、動脈と静脈の成分変化を考える必要がある。

ここには、大きくは三つの器官が絡んでいる。肺、腎臓、腸だ。食べ物の栄養を腸が吸収して血液に取り込み、これが細胞で消費(化学変化)されて老廃物が腎臓で漉されて小便になる一方、炭素は肺を通じて呼吸として排泄される。この人は排尿排便をしないので、老廃物は全て何らかの還元を受けていることになる。

体内の代謝はあまりに複雑で、個別に追いかけるのは不可能に近い。だが、元素レベルでの収支を考えるなら、老廃物として小便の尿素やアンモニアと呼吸の二酸化炭素を分解できれば、かなりの説明が可能になる。

体に必要な栄養素は多数あれど、その殆どは酸素、水素、炭素、窒素の組み合わせだ。つまり、ある組み合わせで入ってきたものを別の組み合わせにして出しているだけで、元素の総量で見れば変わらない。だから、体から出て行く組み合わせを体に入っていく組み合わせに変化させられれば、何も出て行くものはなく、体を維持できる。そしてこれを担ってきたのは、植物や微生物などを含め、他の生物の役割だったわけだ。つまり、そのための「回路」は自然界に既に存在している。

だから、その回路が体内にあれば、少なくとも元素レベルでの収支は合うわけだ。だがその「回路」を動かすにはエネルギーが必要で、その代表は太陽光だ。回路は当然光合成回路である。

先ほど、太陽光は望み薄だと言った。だが、回路が光合成回路でなければ別のエネルギー形態でも問題ないはずだ。そこで他の可能性を考えてみると、「質量変換」という奥の手を思いついた。

E=mc2 、という式を見たことがあるだろう。物質からエネルギーを直接取り出すことができるなら、ごく少量の物質でも充分だ。質量 1 kg をエネルギーに変換するとおおよそ9×1016 Jと等価、1J=0.239calということだから、100ngで2000kcalになる。この程度体重が減っても誰も気付くまい。
ということで、結論。この人は、
  1. シャワーや風呂などの際に、皮膚ないしは尻の穴から、1日1リットル程度の水を吸収している。
  2. 体内に質量変換回路を持ち、細胞老廃物を全てそのエネルギーで再生している。
  3. 実は呼吸はしているが二酸化炭素は吐き出していない。
ということになる。前者はともかく、後者は画期的だ。もし解明できたら、世界中のエネルギー危機と食糧問題、貧富の差についても一気に解決できる。
無論、冗談である。

2017年7月24日月曜日

盲導VPSイヤホン


何れはこういう世界はやってくると思っていたが、意外に早く来たようだ。
世の中にはスマホが溢れているから、GPSもVPSも人がいるところでは常に稼動し、その情報はリアルタイムで更新されるだろうから、何処に何があるか、あるいは人も犬も蚊も含めて何処にいるかが常に分かる世界が来るだろう。
この恩恵を受けるのは健常者だけではなく、特に盲の人には朗報となり得る。リアルタイムで地形や人車の行き来がコンピュータに把握されるなら、健常者と変わらない歩行ができるからだ。ここでは、その「盲導VPSイヤホン」を夢想デザインしてみる。
そのイヤホンは、耳にかける骨伝導イヤホンの形状をしている。両耳には掛けるが耳穴は塞がず、首の後ろにバッテリとコンピュータが入っている。耳の前の部分には、カメラと測距装置が仕込んである。これは両方の耳にあり、Tangoないしは類似の技術が使われる。
イヤホン内部でAndroidが動いているか、ないしはポケットのAndroidと接続する。そこでGPSによる位置把握とセンサからの情報を合わせ、その場で立体地図が生成される。無論、この場合の地図は、地形や道の凸凹から通りを歩く人、信号までの情報が含まれていて、更には自分の足の位置までリアルタイムで把握する。装着者が音声で行先を指定すると音声でマンナビを行うのだが、足の上げ下ろしのレベルで細かく指示をしてくれる。
また、例えばレストランに入ったらメニューを読み上げてくれる、大規模施設の案内板を読む、周囲の状況を音声で知らせてくれる、蚊が飛んできたら知らせてくれる、自宅でも郵便受けまで誘導してくれる、手紙を開いたら読んでくれる、などが可能になる。これこそが盲導の真骨頂だろう。個人的にも、目が疲れたときにはこれに頼りたいと思う。
これには一つ面白い付加価値があって、それは明かりのない夜や停電したときなどでも普通に暮らせる。健常者でも時々使っておいて、いざという時や明かりが切れた時に使う、ということもできるだろう。

2017年7月23日日曜日

八割病院


以前の投稿「医療用トリコーダーの実現」で、医療用プローブの可能性について述べた。

医者が行っている毎日の診断は、せいぜい十数種類だけで八割を占めると言われている。プローブを活用して、この八割で片がつく病気に限り、ICTを駆使して効率よく診察する病院、というのを考えた。

この病院では、まずロボットが応対し、患者の希望を聞く。必要に応じて音声又はタブレットで問診し、ロボットにトリコーダーを渡される。患者は自分で自分をスキャンする。スキャンが済むと、医師の判断に廻される。

医師はそれを次々に見ていき、診断完と判断すると、結果を入力する。殆どの場合は投薬指示、また次回来院の指示、だけになる。これも、医者の入力結果を元にロボットが伝える。もし追加で診察が必要となったら、看護師が追加で診察する。これは検査キット(インフルエンザ等)や採血等だ。その結果、八割の診断から外れると判断した場合、他病院を紹介して終了する。

患者は患者で、その八割に収まる自信がなければ始めから別の病院に行く。また、診察券の電子化や薬局連動による薬の即時発行、電子マネー対応なども積極的に行う。特に薬に関しては、自動倉庫の活用を検討する。八割に適応すれば良いので、薬の種類も形状も絞り込める。

この病院のいいところは、とにかく待ち時間が最短で済むことだ。別の病院に行くのはその八割以外の人だから当然人数は少なく(二割)、そちらの待ち時間も少なくなると期待できる。患者側が二度手間になる可能性はあるが、その二割病院を併設するという手もある。

医者は医者で、八割側では効率が良く稼ぐことができるし、二割側ではじっくり診れる。双方にとってよい結果になるのではないか。また、この仕掛けは通信回線でも使えるから、僻地ではこれで対応しておいて、残りは自動運転車で街まで、などという対応もできるだろう。

この病院が成功するためのポイントは、ロボットによる問診だ。例えば頭が痛い、どの程度痛い、何時頃痛くなる、などは、単純な問診票で対応できるとは限らないから、音声による問い掛けとその回答に対する音声認識と判断が必要である。また、診断と患者の希望が食い違うとき、ロボット経由で伝達するだけで完結するかどうか。これも応対方法の良し悪しが大きく影響する。割り切ってタブレットだけ、という方法も考えられるが、これだと八割には届かないかもしれない。そうすると効率が落ち、あまり効果がなくなってしまう。

2017年7月22日土曜日

学校で学ぶべきこと


https://www.lifehacker.jp/2017/06/170607_startup_accelerator.html

米国で、「スタートアップアクセラレーター」なるシステムが急増しているらしい。

スタートアップで学ぶべき技術や制度、メンターとの出会いなどは、確かに起業では重要だけれども、広い意味で人生には重要なものではないかと思う。このため、起業学として体系的に学ぶことは行ってもよいのではないだろうか。それも一般教養として、だ。

学校で教えるべき教科が時代と共に変わらないというのはむしろ不自然だ。昔と比べて単純な生活自体に必要な知識が増えている現代のこと、何を教えるべきかは変わっていって良い。では今、何を学ぶべきか。
  • いじめや詐欺など身近な犯罪について(提案済)
  • 防災(非常食、避難ルート、災害の種類、サバイバル術)
  • 身近な法律・マナー、交渉術(土地、相続、子供、補助控除、騒音公害、自治会など)
  • 広告の仕組み(ポイントプログラム、虚偽広告とそうでないものの違い、心理学的誘導、マーケティング)
  • 起業、ビジネスモデル、ディベート
  • ストレス・依存症(ギャンブル、宝くじ、収集癖、麻薬、ストーカー)
  • 差別(同和、外国人、ヘイトスピーチ)
  • 国際関係(領土問題、領土領海経済水域、資源問題、宗教、軍事力、思想)
  • 金融(金融商品、生涯賃金、保険、年金、投資、健康保険)
  • 高齢化社会(介護保険、介護、年金、労働者人口)
  • 政治(選挙区、マニュフェスト、政党)
  • 経済(コングロマリット、独占禁止法、コンプライアンス、石油、財団)
  • 地球環境(温暖化、資源枯渇、南北問題)
  • トンデモ学(オカルト、放射脳、霊、宇宙人、血液型占い、予言、買ってはいけない、心理学)
  • 社会悪(新興宗教、暴力団、麻薬、武器商人、悪徳警官、悪徳役人)
  • 集団心理学(新興宗教や為政者に騙されないために)
  • 情報機器(スマホ、ウィルス、ランサムウェア)
  • 論理的思考法
なんだか整理されていないが、まだまだありそうな気がする。また、小学校だけでは納まりそうにない。中学校でも少し厳しいものもある。でも高校になると義務教育ではないから難しい。このギャップ、何とかならないだろうか。

2017年7月21日金曜日

倉庫ロボットのある家庭像


以前の投稿「何でもロボット」で、家の中にあるもの何でも動くようになったら、という話をした。これに関し、Amazonやニトリが既に導入している倉庫ロボットの話

http://juke2016.hatenablog.com/entry/2016/12/07/115145

を組み合わせてみると、何でもロボットにするのではなく、倉庫ロボット対応にすれば良いのだ、と思い直した。

倉庫ロボットに対応する手段は簡単で、ロボットが潜り込み持ち上げられるよう、床を規定の高さまで底上げすればよい。また、風呂とトイレはダメと言ったが、人を風呂やトイレに運ぶことはできる。つまり椅子にも応用できる。こうなると、家のレイアウトにも影響を与えることになる。倉庫ロボットのある家庭像とはどんなものなのだろう。

棚の基本となるのは、90x90x180cmの倉庫ロボット対応棚だ。棚にはバリエーションがあり、例えば引き出し式か可倒式のテーブルがあるものは、子供の勉強机やアイロン台になる。デザインや色が表と裏で違うもの、洋服ダンス、和ダンス、引き出し、などは色々あってよい。

棚サイズでないものでも、ロボット移動対応にする。化粧台、ダイニングワゴン、折り畳みベッド、ダイニングテーブル、リビングテーブル、ソファ、AV機器ラック、炊事用椅子、家族用の椅子、冷蔵庫、などだ。

移動できない家具類としては、風呂、トイレ、キッチンくらいだろうか。これら水周りは一箇所にまとめ、玄関の近くに集中させる。それ以外は全て段差のないフローリングになる。部屋を仕切る壁やドアはあってもよいが、ない方が使い勝手がよいだろう。

部屋の使い方の基本は、日当たりの悪い場所に不要な棚や家具類を集中して片付け、部屋を広く使う、というものになる。また、広過ぎて気持ち悪いとかプライバシーを配慮して、棚を仕切り代わりに使用する。

例えば料理中は、キッチンの傍に冷蔵庫とパントリーを寄せて使い、料理が終わる頃に冷蔵庫とパントリーを片付けて食器棚を寄せて盛り付けし、ダイニングワゴンに乗せてダイニングテーブルまで運ぶ。食事中に食器棚は去り、食事が終わればダイニングワゴンに食器を乗せ、キッチンの食洗器まで運ぶ。食器洗浄が終わればまた食器棚が近づいてきて仕舞うことができる。

また、家族が各々何処にいるかを把握して、部屋にいる時はそこを広く、いなくなったら狭くして他(リビングなど)を広くする、なども可能だろう。風呂は移動できなくとも脱衣室は可変にして、その分の面積を稼ぐこともできる。

これで、部屋の面積の有効使用率を3割上げられるなら、3割広い部屋に住んでいるのと同じ効果があるわけだ。家自体もシンプルな作りになるため、掃除ロボットと組み合わせれば隅々まで定期的に掃除できるし、換気も完璧だ。Gの出現余地も低くなるだろう。壁紙の張替えなど、メンテナンスも簡単になる。

問題になりそうなのはロボットのプログラミングだ。個別の生活様式に合わせ、またコンピュータの素人でも簡単に操作できなければならない。子供もいることだし、プログラミングのミスで事故を起こしたりしては元も子もないので、ここは慎重にしなければ。

2017年7月20日木曜日

COMP GUMMY


http://www.comp.jp/gummy.html

以前、「COMPに夢想 」で触れたことがあるCOMPが、グミタイプを出した。
その時に欲しいCOMPを書いたのだが、それが
  • 100kCalないしは200kCal単位の顆粒ブロック(キューブ)。赤ちゃん用のミルクに似たようなものがある。ないしは水なしでかじられるビスケットタイプ。
  • 最低でも2年以上、できれば10年以上の長期保存が可能な包装。サバイバルフーズには25年保存可能なものもある。
  • 複数のフレーバーのラインナップ。
だった。このグミタイプは、1袋200kcalで、水なしで食べられ、複数のフレーバーはないもののフルーツミックス味、また賞味期限が1.5年とのこと。

従来のCOMPは賞味期限が1年だった。これは非常食としては極めて惜しいところで、もし1年1ヶ月でもあれば毎年の同じ時期での見直しに際しての候補になったのだが、1年だと毎年期限切れになってしまう恐れがあった。そこに1.5年ときたのは大きい意味がある。

価格は、200kcal 80パックの場合で¥19,500+975ポイント。100kcal当たり116円の計算になる。成人一日当たり2,000kcalとして10パック、¥2,316。一方で、旧来のパウダータイプについて計算してみると、4,000kcalが16パックで¥50,000+2500ポイント。100kcal当たり74円となる。結構差がある。こちらの1日の食費は、袋半分で¥1,484となる。全部を外食と比べるならそこそこだが、毎日の食事としては少々高いかもしれない。

非常食として有名なものに「救難食糧」があるが、これはカロリー:2465kcal(ビスケットバー:56g×9個)で¥2,052だった。100kcal当たり¥83となる。カロリーバランスは悪いが、安い。またCOMPには重量の記載がないが、救難食糧は乾燥しているのでCOMPの方が重いと思われる。サイズもCOMPの方がかさばる。また、これも非常食としては有名なのものに「井村屋 えいようかん」があり、これは60g×5本、1本あたり/171kcalで¥540。100kcal当たりでは¥63となる。こう考えると、非常食としても高めである。

もちろん開発者の意図は非常食よりも日常にあると思うので、文句を言う筋合いではないのだが、個人的にはこちらに重きがあったので惜しいところだ。

2017年7月19日水曜日

有償アプリとしてのチケット


チケット高額転売、マイナンバーカードで阻止 総務省とぴあが検討

この手の話で以前考えたのが、「有償アプリとしてのチケット」だ。

電子チケットを扱うアプリは山のようにある。だがこれらは百花繚乱、且つ個人情報を登録する必要がある。支払手順も複数あり、クレジットカード番号入力などもある。沢山のチケットサイトにこれらを一々登録するのは大変だし、中には怪しいところもある。

これに対し、初めからGoogle PlayやApp Storeで販売してしまえば、この問題は解決する。チケットサイトに個人情報は渡らないし、支払はアプリストアの元々の支払い手段を使えばよい。転売、譲渡、機種変更等は、アプリの機能として適切に実装すればよい。例えば転売なら、アプリ間でのみ可能、購入値でのみできるようにすればよいし、決済はアプリストアのウォレットを使えばよい。

従来のチケットソフトと何が違うかというと、サーバ側には誰にチケットが渡ったのかの情報が残らないところだ。暗号鍵は残せるので、出されたチケットが本物かどうかは判断できるが、失くしたチケットは探せない。ローカルに保存されるため、ウィルスで消えたり、機器が故障したり電池切れの時に取り出せない、などのトラブルは予想されるが、この救済はしないと割り切る。また、有償アプリと言ったが、実際にはアプリは無償で、アプリ内購入を利用するようにした方がシステム的にはすっきりするだろう。

マイナンバーカードで運用する際の最大の欠点は、マイナンバーカードが必要なところだ。マイナンバーカードの発行はえらく手間で、カネも時間も掛かる。また、当然ながら住民票のない人(短期滞在外国人、住所不定など)には発行されない。需要は中高生が中心だろうから、親の許可も必要だ。マイナンバーカードをその世代が、しかもそんなところに(一斉に!)持ち込むこと自体、大いに危険と言えるだろう。一方でこちらの方式は、スマホを盗まれるのと同じリスクにしかならない。

欠点らしい欠点と言えば、スマホがないと話にならないところだ。だが同じくその世代は殆どがスマホを持っているし、もしなくても複数枚購入を認めれば、誰か一緒に行ってくれれば済む。また、この仕掛けでは携帯回線契約なしでも使えるので、中古の白ROMスマホを1台調達すれば済む。後はフリーのWiFiを探してアプリをインストールし、その場でチケットを買ってしまえばよい。クレジットカードを持っていなくても、ストアの金券はコンビニで買える。アカウントは必要だが、個人情報はデタラメを入れてもよい。これなら外国人でも使えるし、海外のスマホでも問題ない。

コンサートに行こうかという輩が中古のスマホ一つ買えないとも思えないが、セキュリティのためにわざとそうすることも可能だ。コンサート用にMVNOの極安SIM(一番安い通信専用)と中古スマホを買っておいて、アカウントもそれ専用にしておけば、盗まれても被害は最小限に抑えることができる。

考えるほどに、ぴあ案よりも遥かに良いような気がするのだが、少し自惚れ過ぎか。

2017年7月18日火曜日

脳インターフェース


DARPAが小型で並列性の高い双方向脳コンピューターインターフェイスの開発に6500万ドルの研究資金を提供

既に脳障害や四肢麻痺を起こしている人にとっては福音であろうことは想像がつく。この記事では「神経インプラント」と言っているが、脳手術は確かに普通にできるようになってきているけれども、さすがに健常者の頭に穴を空けるのは抵抗が大きい。

皮膚の下に埋め込む電極のようなものならまだ抵抗も少ないだろう。電気刺激は今でもEMSや低周波治療器が行っているが、他にも光トポグラフィーのような技術もある。これを合わせ、頭皮下に多数のLED、フォトダイオード、電極の復号回路を埋め込んでおいて、無線給電と通信を兼務する帽子を被ると作動するような仕掛けはどうだろうか。

脳の特定部位の活動の情報を得るには光トポグラフィーを使うが、頭におけるセンサの位置が固定するため、AI学習によって精度を恒久的に向上させられる。特定の動作をして脳の活動部位を測定することを繰り返す、というものだ。また、多数の電極の電位を制御して、脳の特定の部位を刺激することに関しても、同様の精度向上が期待できる。何れも頭皮に埋め込むことによる効果だ。

従来の光トポグラフィーでは、せいぜい感情や脳の活性化という程度しか検知できなかった。学習がどの程度できるかによるけれども、何を考えているかをもっと精度高く検知できるなら、例えば口に出さず頭の中で喋ることでコンピュータに指令を出したり、逆に脳内で音声を再生したりすることもできるようになるかもしれない。

その原理は、耳からの神経刺激を騙してやることになる。耳に「あ」という音を聞かせてやって、それと同じ神経興奮を電気刺激で出してやれば、「あ」と聞こえるはずだ。EMSで筋肉を騙して動かすのと、原理的には同じである。そしてそれが更に発展すると、視神経を刺激して映像を見せるようなこともできるかもしれない。

これは無限の可能性を秘めている。例えばカナヅチの人がいきなり泳げるようになる、転倒したときに勝手に受身を取る、嚥下困難を解消する、といった健康・安全面から、スポーツ選手の能力向上、高度なナビゲーションなど、様々な応用が考えられる。

2017年7月17日月曜日

AI光臨


MateLabsが機械学習とIFTTTを連携させた

MateVerseというサービスが、IFTTTのレシピに登録された、というニュース。現状では画像と自然言語処理にしか対応していないが、それでもこれは画期的だ。

IFTTTのサービスは、その名の通り「IF」「THEN」の「IF」に相当するところが相応にデジタル(Yes/Noで仕切られる)である必要がある。ところが人間の要求はそう単純ではない。例えば「あの人が怒っているようなら」とか、「(特定の)だれそれが家にいるなら」といったものは、従来ではIFTTTのサービスに乗り辛かった。画像認識と自然言語処理がある程度出来るのなら、こんなレシピが作れる。
  1. 留守中の自動給餌機に指示して、家にいる複数の猫を認識し、タマには大量のエサをやるがミケは少食なので少なくしてやる。
  2. 室内の監視カメラの画像を認識して、家族でない者や顔を隠した者がいたらアラームを出す。
  3. インターホンの画像を監視し、よく来る業者が来た時には、それ相応の通知を出す。(宅配業者が来ました、XX会社のXXさんが来ました、など)
  4. 特定のキーワードで引っ掛けるのではなく、中身まで解析した上でツィートを検索する。(ニュースで言っていたXXの発言に否定的で且つ理由まで述べているツィートを集めよ、など)
  5. 特定の意見に関する世論で、賛成反対のどちらが多いかによって行動を変える
  6. レストランで食事中に写真を撮ってよいか、車椅子で入れるかなどを、あらかじめツィートを検索して調べる(以前断られた、許可されたなど)、可能なレストランに予約を入れる
他にも多く考え付くはずだ。IFTTTに限らず技術的にできることは多いが、IFTTTと結びつくことで、個人レベルでの細かい要求に応えることができる。こういったものがAIの裾野を広げていき、普段使いの域に達することになるだろう。


2017年7月16日日曜日

AIオシロスコープ


オシロスコープは昔、技術者の憧れだった。高額だが自作も不可能ではなく、波形が見えることがもちろんデバッグに役立つのだが、それ自体に興奮したり感動したりしたものだ。一時期世の中が何でもデジタルになって、オシロよりロジアナ、という風潮が流れたのだが、またラズパイなどをきっかけとした自作ブームが起き、オシロも勢いを取り戻しているように思える。
ロジアナにしてもオシロにしても、多数のスイッチやダイヤルがあって、その意味が分かること、上手く調整することがステータスだった訳だが、PCとの接続が可能になると、そちらでの解析がある程度自動化できるようになっている。
PCのディスプレイの方が大きいのだから、プローブ廻りだけを残して、操作パネルとディスプレイはPCにしてしまおう、というのは自然な流れだ。だがPCのパネルではリアルタイム操作がしにくい、というのは分かる。そこで、それをAIで補完してはどうだろう。
結局、オシロで見たいのは波形であり、複数の波形の比較であり、トリガの瞬間の波形であり、・・・と決まっている。パネルの操作は同期とスケーリングが主のはずだから、AIでの自動化はそんなに難しくないはずだ。
更には特徴分析や異常診断まで自動でできれば、オシロは単なる道具ではなく、信頼できる助手、と言える立場にまでなるかも知れない。

2017年7月15日土曜日

もしも1京円当たったら


デススターの建造費用が7580京円、アメリカのGDPが1200兆円、らしい。まあデススターは置いておくとして、国はおろか世界中の全ての国がひれ伏す額だ。だがまあ、精神的な満足であれば10万円もあれば買えるし、心理学的に考えれば長くは続かない。カネがあっても技術的にできないものはできない。不老長寿とか。それに、以前も書いた通り、個人の欲の満足には多過ぎるカネだ。
ここまで来ると、研究をチンタラやっている場合ではない。実力行使あるのみ、である。そこで考えるのが、以下の通り。
  1. 地球温暖化防止事業
    1. 光合成事業
      • 藻による光合成で、二酸化炭素の固定及び食料・飼料・燃料生産を行う
    2. 砂漠緑化事業
      • 大規模な砂漠(アフリカ、西アジア、モンゴル、オーストラリア等)で大規模な緑化を行う
      • 人工木で太陽光発電と水生成、日陰の確保を行い、日陰で植物を育成する
      • 最終的には地域の気象まで変えることができる
    3. ドライアイス生成事業
      • 寒冷地では光合成や太陽光発電ができないので、できる地域から電力を貰ってドライアイス他液体ガスを生成する
  2. エネルギー事業
    1. 太陽光発電及び太陽熱発電事業
      • 火力、原子力発電に匹敵する電力を生み出し、これらを駆逐する
      • 需要より大幅に高い能力を持ち、寒冷地への送電も行う
    2. 送電事業
      • 石油パイプラインに相当する超電導電力線を世界各地に張り巡らす
      • 世界中でくまなく豊富な電力が使えるようにする
    3. 蓄電事業
      • 大規模な蓄電所を各地に作り、電力グリッドと併せて安定供給を行う
  3. 通信事業
    1. 有線通信事業
      • 電力線に並行して通信線も這わせ、世界中で安価な通信を実現する
    2. 衛星通信事業
      • 現状の4G並みの通信を世界中で行えるようにする
      • 特殊な携帯電話でなくても、世界中で使える
  4. 教育事業
    1. コンテンツ作成事業
      • 中学卒業程度までの一般的教養を全世界で網羅し教育素材として活用できるようにする
    2. 教師育成事業
      • 教師を志す者への無償の教育プログラムを整備する
      • プログラム卒業者の職場探しを手伝う
  5. マイクロインフラ事業
    • 大都市以外を想定し、必要となるエネルギー・水・通信・(基本的な)食料生産システムをセットにして販売する。規模により家族単位・村単位・町単位程度までカバー。
    • 自力メンテナンスのための教育もセットで開発する。
  6. 地球連邦の設立
    • 国際連合が条約ベースなのに対し、連邦制の国際組織を作る。つまり、原則的な部分に関して拘束力を持ち、ある程度中央の意向が反映される組織である。それは、軍事力、連邦外国家との外交、大まかな経済政策、人権要綱、連邦内交易、連邦税などになる。但し広い地域、場合によっては不連続な地域が纏まるため、その拘束はより原則的なレベルに留まる。
    • 連邦内は上の施策の恩恵を受ける。即ち通信、エネルギー、教育が無償ないしは極めて安価になる。
最後の一つは少し違和感があるかもしれない。だがちゃんと理由はある。というのは、エネルギーを作り出すのは赤道付近、消費するのは温暖地域と寒冷地域、となる。地域的には不公平だ。またこれは、現在の石油・ガス産出国にとっては疑いなく商売敵になる。
地球規模で考えればこの程度の分散は当然のことなのだが、今の国ベースではそうは行かない。そうなれば中には反発して妨害をするところも出てくるだろう。そこから事業を守るためにはある程度の軍事力は必要だが、国家でない私人が軍隊を持つわけには行かないし、特定の国に依存することもできないからだ。
恐らく、弱小国から順に加盟するようなことになるだろう。だが最初の電力を確保するには、広い砂漠地帯を持つ国をどうしても最低一国は仲間に入れる必要がある。これが何処になるのかが成否の鍵になる。
ざっと計算してみたのだが、金額のブレはかなり大きい。最初の二つが多額になるだろうが、各々100兆円も掛からないだろう。意外と地球連邦の方が掛かるかもしれない。軍隊に、である。皮肉なものだ。

2017年7月14日金曜日

車は諸悪の根源


そういう本があるそうで、少し齧ってみたら面白かった。特にエネルギー消費の観点で見ると、自分が別に試算していた結果と合う点があって興味深い。

エネルギー効率の点から見て、燃料を使うエンジン、つまりガソリンエンジンやディーゼルエンジン、ジェットエンジンなどというのは極めてリーズナブルなものなのだが、同時に大量のエネルギーを消費するものでもある。というのは、人間が生活するにあたって必要な衣食住の殆どは太陽エネルギーの賜物だが、そのエネルギーに比べて「移動」のエネルギーというのは物凄く大きいのである。

成人が一日に必要なエネルギー量をざっと2500kcalとすると、1 cal = 4.184 Jであるので、10.5MJ。一方でガソリンの発熱量は47.3MJ/kgであり、また比重は0.74(kg/L)であるので、リットル当たりで言うとその発熱量は64MJ/L。つまり(単純換算ではあるが)人は一日コップ一杯程度(164ml)のガソリンを飲めば生きていけることになる。そのコップ一杯で、燃費15km/Lの車なら2.5kmしか走れない。これは、人なら歩きで1時間、ジョギングで20分もあれば到達できる距離だ。

車は人と比べて非常に重いから、いくら燃料効率が良くても、人単独の移動に比べて遥かに効率が悪い。つまり、人の移動と共に車も移動するが、車の移動自体には意味がない(目的は人の移動なのだから)、しかも車の方が遥かに重いので、燃料の殆どは車の移動に費やされてしまう。これがその理屈だ。

これは化石燃料の枯渇という視点以外にも、太陽エネルギーの収支、あるいは持続性という点でも大きくマイナスである。つまり人類は、過去に万年単位で蓄積された太陽エネルギーを、新たに得られる分を大幅に凌駕して、百年単位で消費しているわけだ。「このまま後X年で石油が枯渇する」類の問題は、何十年も言われてきたわけであるが、新油田の発見や採掘技術の向上で都度延命され、今更感も出てきている。しかし、こういった視点から見ればやはり有効だ。

太陽エネルギーの収支から考えると分からなくなるので、間接的に二酸化炭素収支で考えるなら、現在の石油消費量は概ね半分にすべきである。それも、代替として他の化石燃料を使ってはならない。このうち、工業生産に使うものはごく僅かで、殆どは燃料として使われている。その二大用途は、移動と発電だ。2012年の世界の石油消費量は42億500万トンだそうだ。つまり、大雑把に年間20億トンの削減が必要ということになる。

移動に関して言うと、この問題の解決方法は三つしかない。①圧倒的に軽い(燃費の良い)車を作る、②(車での)移動を極端に減らす、③石油以外のエネルギーを使う、だ。

①の「圧倒的」は、目安として半分になる。②も概ね半分だ。①②を同時に行うなら、合わせ技でよいので各々のハードルはその分下がる。③は自然エネルギーか原子力だが、これは事実上困難だろう。むしろ発電所をそのように作って車は電気自動車にする、などの方が現実的だ。

例えば②に関し、人口の都市集中というのは考えられることだ。①はコミューターや電車が考えられる。3Dプリンタによる現地生産や、植物工場による現地栽培なども、これに含まれるだろう。だが、便利になればそれだけ贅沢をしてしまうのが人間だから、そう簡単にはいかない。

既存の交通機関で、最も、しかも極端に燃費がよいのは電車だ。乗員当たりで行くと5~10倍の差がある。だが勿論、電車は線路があるからこそ高効率なのだし、乗客数もそこそこ必要であるので、車のような自由度のあるものの代替にはならない。電気自動車ならどうかといってもそんなに変わらない。電車が根本的に自動車と違うのは、エネルギーが架線から供給されるため、大きく重いバッテリーがいらないからだ。

これより、①に関しては一つのアイデアが出てくる。電気自動車の重量の大部分を占めるのはバッテリとモーターだが、道路から電力供給ができればバッテリが要らなくなる。また、自動車のモーターを軽くするためには馬力を少なくすれば良いのだが、このためには急加速をしない、急な坂を上らない、という前提があればよい。つまり、坂が緩く電力の供給が可能な道路があればよい。

これにうってつけの道路がある。高速道路だ。高速道路には規格があり、坂の角度には上限がある。バッテリを減らすことで車重が軽くなれば、同じ加速度でもモーターの出力を減らすことができる。問題は電力供給だけだが、高速道路限定の車にすれば問題ない。つまり、道路の全面に渡って、例えば1kmおきに走行中無線給電ができるエリアを作っておき、その間は専用の車で移動するようにすれば、この問題は解決する。

これを実現するためには、高速道路の入口と出口で車を乗り換える必要があるが、当然入口の車は乗り捨てになり、出口の車はその車とは別になるから、車を個人で持つ場合は使えない。だから、経路の全ての車はレンタルないしはカーシェアになる。それも、ちゃんと遅滞なく繋がる保証がないと乗り辛いだろう。だから社会がそこまで充実して初めて実用になる。

ただ、トラックの場合は運送会社で閉じてやれば同じことができるから、先に物流でインフラ整備を進め、整ったところで一般に開放する、という手段は使えるだろう。

また、①のカーシェアについて、乗り合いバスを併用してやる。入口と出口が同じ人同士が一台の車をシェアすることで、行き交う車の数を減らすことができる。荷物の場合は混載が同じ効果を生む。また、空のトラックが帰ってくるということは避けられないが、その際のエネルギー効率も良いため、エネルギー節約に貢献する。

だが、②をやらないとかえって物流人流が増えてしまうかもしれない。コストが下がるからだ。だから技術的には①をやるにしても、政策的には②を進めるべきだ。これについては以前も議論しているので省略する。

2017年7月13日木曜日

ロボットメンテ前提のシールド工法共同溝


高度成長期に作られたインフラが老朽化し、補修費がかさむ問題について、その本丸は上下水道である。壊れたら修理しないわけには行かない(水浸しになったり汚物が溢れたりする)一方、その費用は膨大だ。その主たる理由は、地下に埋められていることにある。

対症療法たる補修は勿論必要なわけだが、根本的な解決策は別途必要だ。その代表的なものが共同溝だ。完全に埋めてしまうことがメンテナンス性を悪くしているので、後からアクセス可能なようにしておけばその後のコストは大きく減ることになる。

共同溝の欠点もまた分かっていて、初期投資が大きいことである。どうしても単独の溝より大きくなってしまうためだが、上下水管は一定以上細くできないし、何しろ人が通る必要があるから、小さくするのにも限度がある。空気も通さなければならない。そういった機構が費用を上げている。

これを解決する手段として、シールド工法による小型トンネル+ロボット保守が考えられる。人間は入れない、ロボットによる保守のみ、という前提で、必要な穴径を小さくし、通風も行わない。またシールド工法を用いることで開削が不要なので、費用を抑えられる。

その構造は、下に下水管、その上に上水管、その上に電気・通信・ガスを入れてやるものとする。下水管は底に直置きとし、それ以外の管は、内壁の左右にある支持棒で支えて宙に浮くようにする。途中の要所にメンテナンス用の縦穴を通し、そこから交換用の資材やロボットを出し入れする。要するにマンホールだ。

通す管の中では下水管だけが少し特殊で、径が最大となること、また勾配が法律で決められている。このため、共同溝は下水管を基準に設置することになる。これは、万一上下水管が破損した場合でも、共同溝が排水管を兼用としてくれるメリットがある。

共同部の下水管の最小は150mmないしは200mmであるため、共同溝の大きさは少なくとも300~500mmになると思われる。僻地向けの500mmと、都心向けの1mを標準として作ってみてはどうだろうか。

実は、この程度の大きさの共同溝なら既に実例がある。問題はその先で、大きくは二つだ。①共同溝内の作業を全てロボットが行う、②共同溝自体の修繕や新たな共同溝の作成にもロボットを使う、というところだ。これができなければ低価格化は難しい。

ロボットは、天井付近にレールをつけておき、ここをモノレールのように移動する。これで、水没する危険もゴミでコケる心配もなく移動できる。通信も電力供給もここからできる。カメラとロボットアームを持ち、またロボットアームはある程度の力が出るように作る。これでケーブルの引っ掛かりを解いたり掃除をしたりする。アームの操作は自動でもラジコンでもよい。

もし共同溝そのものが破壊されたら、中の管は諦め、改めて共同溝を掘り直すのが簡単だ。無事なところから再開し、次のマンホールまで自動で掘り進むようなシールドマシンが必要になる。このシールドマシンは、一般の鉄道用などとは違って汎用化が可能である。掘り進む度に外壁を自動ではめ込み、隙間をシールドするところまで自動で行う。これは新たに掘り進む場合も同じである。

まだ問題はある。一般論として、シールド工法で作るということは、各家庭等への分岐も開削せずに行う必要がある。50cm径のマンホールに対して、各戸から20cm径の共同溝を掘るシールドマシンも必要になり、またできた穴を通してどうやって配線配管をするか。

また、特に電力ではトランスや各種制御機器が必要だが、それをどこに設置するか。共同溝内で一番危険なのは電線だろうが、これを狭い穴に押し込んで大丈夫なのかどうか。ネズミやシロアリなどの被害を避けるためにはどうしたらよいか。ロボットが詰まって穴を塞いでしまったらどうするか。...

まあ、「言うは安し」である。問題山積ではあるが、技術的に不可能ということではなく、考えることがいっぱいあって面倒だ、というところだと思う。後はコストだろうか。ロボット技術がもう少し発達してきたら、それらにも解決の糸口が見えるのかもしれない。

2017年7月12日水曜日

物凄い量の「気付き」



AIの代表的な使用目的は、大量のデータの中から相関関係を見つけること、つまり「気付き」を得ることだ。例えば米国では、犯罪の起きやすい場所、時間をAIが推定してそこに警官をあらかじめ配備することで犯罪発生率を低減させることができた。

AIがその目的で使われだしたとき、どうせその気付きは殆ど人間が感じていたことの追証に過ぎないだろう、と思っていたのだが、最近は考えが変わっている。人間が感じられる環境条件のキャパシティは限られているが、AIにはそれがない。バタフライ効果とまでは言わずとも、一見何の関係もないように見える事象から新たな気付きを得る、またその気付きの質、量が人間を大幅に上回る可能性も考えなければならない。

それが極まってくると、従来は偶然起こるものと考えられていたことの多くが、実は必然的に発生するものだということが色々と分かってくるのではないか。単純には犯罪や交通事故、更にはテロ、紛争、戦争に至るまでが、実は必然だったのかもしれない。

今の世の中が戦前に似ている、と警告する戦争体験世代は多い。一つ一つは小さいことでも、それが数多く、タイミングを合わせて発生し始めると、何年後に戦争に至る確率何%として示されるとすれば、それは大きな成果だ。そして知りながらそれを止めなかった為政者もまた、不作為の罪を問われることになる。

戦争などは極端な例だ。制度を変えることで失業率が減る、待機児童が減る、貧困が解消される、二酸化炭素がどうなる、などというのは、政治家の(根拠の薄い)信念やプロパガンダではなく、冷静な数字として示されるようになる。それでも選択肢は人間の手の中にあるが、極端にオカシな選択肢を取ることはできなくなる。AIに支配されている気がして面白くないだろうか。でも世の中はそれで良くなるのだ。

日頃の生活でも様々な予想が便利さを加速する。天気予報はより高精度になり、ゲリラ豪雨や竜巻、光化学スモッグなども地域含め厳密に予測できるようになる。天気によって売り上げが変わる弁当や傘の準備なども、正確に提供できる。服の準備も完璧にできるだろう。電車の遅れや交通渋滞も予測できるから、出発に余裕を見込む必然性も薄れるし、無駄な待ち時間も減る。遊びや勉強の長さやタイミングも、より効果的な選択ができるし、無理しても落ちそうな受験はしなくなるだろう。

そのように、日頃何でもスムーズにいくようになると、渋滞や待ち、予備といった概念からくるモノやサービスが減ってくる。倉庫、備蓄、待ち時間、待合所、行列、整理券、ダフ屋、などだ。なくなるということはないだろうが、商売が厳しくなるだろうことは想像できる。その逆に、何時も混んでいるところに行くときは、必ず待ちが長くなる。たまたま空いているときに滑り込めた、などという偶然がなくなるので、そちらは詰まらない話になるだろう。

2017年7月11日火曜日

マトリックス


映画「マトリックス」シリーズでは、生身の人間は頭脳として使われてきた。単純に言えば計算機のパーツだ。あれはSFだが、ニューロコンピュータの進展を見ていると、人間の脳というのは実に良くできていて、計算能力とエネルギー消費のバランスは素晴らしい。生物コンピュータというのも有り得なくはないな、と思い始めている。

刺激を受けることでシナプスが伸びていき、新しい回路が繋がる、という仕掛けさえあればよいのだから、無理にシリコンコンピュータでシミュレーションするよりも、何らかの科学的/生物学的現象を応用した方が良いかも、というわけだ。

例えば粘菌や析出はどうだろう。析出と言えば二次電池の劣化原因として有名だが、わざと析出しやすいメッシュルートを作っておいて電気刺激をしてやるようなことは可能だろう。粘菌なら光や養分で誘導してやることができる。だがやはり神経細胞が最適なのではないか。

例えば、プレパラートの両端に電極を置いて、真ん中は神経細胞を培養して育てておく。このプレパラートを多数並べて結合し、機械学習と同じような学習をさせるのだ。電気刺激の他に温度感理や養分補給なども必要になるが、これらは養液循環で賄う。上手く作れば人間の脳より遥かに巨大な、情報処理能力の大きなコンピュータができるかもしれない。

だがそのうち、雑菌やウィルスの問題が顕在化するだろう。殺菌剤やフィルタなどの試みの後、白血球を使う方法が提案されるかもしれない。養液循環と酸素供給の効率を考えると血液の方が良い、であるなら肺と心臓も、・・・となって、最後にはやっぱり生物の脳を使った方が簡単、という話になるかもしれない。ネズミを使い、犬を使い、サルを使い、・・・ という可能性は、やっぱり否定できない。

2017年7月10日月曜日

VR記憶の宮殿


記憶の宮殿というのは、古典的な記憶術の一つだ。詳細はWebに委ねるとして、この「記憶の宮殿」を造るには最初の取っ掛かりが大事で、基点とする場所の選定や語呂合わせの手法などにはコツがある。これをVRと反復学習で補助してやることができないだろうか、と考える。
まず、基点となる家を3D撮影する。これはスマホのカメラをぐるっと廻して撮ることができる。これをVR空間にまず作り上げる。室内のものを3D分析して、家そのものと家具、たまたま置いてあるモノなどに分け、不要なものを取り除いて基礎空間を作る。
記憶を置く場所として更に先に進む場合、例えば引き出しを空けると云々、隣の部屋に行くと云々、というのは、更に同じ工程を繰り返して作る。この際、リアルなものでなく、あらかじめ用意した仮想的な部屋や引き出しをはめ込むこともできるようにする。
次に、覚えたいものから連想するイメージの自動作成を行う。例えば、部屋の右の壁にはアマゾンの密林の写真が飾ってあって、その写真には密林以外にも何か写っている、それはamazon.co.jpへのログインパスワードの語呂合わせだ、という具合だ。
アルファベットや数字に相当する様々なオブジェクトをライブラリとして提供してやるのがソフト側の役目で、それをどう配置するかは自分で行う。その後VRで見て、イメージを定着させる。もちろん自分で素材を作ってもよい。また、短いセンテンスからそのオブジェクトを自動作成する機能も欲しい。例えば「ずぶ濡れの太った人が怖い顔で手に「XX」という本を持っている」などという文章をタイプすると、そのイメージが現れる、という具合だ。
本物の記憶の宮殿との違いは、忘れてしまったとしてもそのイメージを何時でも見られる、ということ。また、忘れそうになるタイミング(忘却曲線)を利用して、再度VR映像を見るよう促され、覚えているかどうかのテストもできるようにしてやる。
これにより、初心者がカンタンに記憶の宮殿を導入できる。欠点として考えられるのは、そのVR空間を人に見られたり、サイバー攻撃で盗み見される危険だ。これを防ぐには、最後に数文字付け加えるマジックワードを別に覚えておいてこれは記憶の宮殿には入れない、複数の場所に分散して置いておいて合体させる、文字をずらしたり入れ替えたりするルールを別に持っておく、などが考えられる。

2017年7月9日日曜日

モノの『超』整理法


別の投稿「服の『超』整理法」で検討したことを、服でなく一般の荷物で行ってみたらどうだろう、と考えた。だが、家庭の荷物は大きさが様々であり、服や書類のように折り畳んで一定のサイズの袋(箱)に納める、という芸当ができない。箱の大きさがまちまちでも同じことをするためには、まず箱にIDを振っておいて、棚からの出し入れを自動検知する、という方法が望ましい。しかも自然な形で、だ。

Arlo Proは、バッテリで動く監視カメラだ。視界に動きがあったときだけ動作し、無線LANでデータを飛ばす。それは自動でサーバに保存される。電池のもちが良いことが特徴で、半年交換不要だそうだ。ここからキックして画像解析をすることは当然可能だろう。すると、こんな仕掛けを思いつく。

棚にカメラを向けておいて、そこからのモノの出し入れの様子をネットワーク上に自動保存する。保存されたデータは逐次解析され、そのモノが何であるかを識別する。この際、箱であってそれにIDが振ってあれば最高に簡単だが、そうでなくても形を認識して何とか個別識別する。暫くして充分な解析が出来たら、サーバからメールが飛んでくる。

そのメールの中身は、リコメンデーションだ。つまり、棚の使い方に関するアドバイスである。頻繁に出し入れするものを集中して手の届き易い中段に置き、殆ど使わないものは破棄を提案する。どれをどの程度出し入れしたかの記録を取り、出したまま戻ってこないものなども分かる。また、複数の棚に設置した場合、どこからどこに移ったかまで追跡する。また、引き出しのように仕舞った状態が分からないものは、その総量を推し量って詰め込み過ぎを警告する。モノが生ものと認識したら、長期間使っていないモノの識別の「長期間」を「消費期限相当」に置き換えて警告してくれる。

長期的に統計を取れば、無駄な買い物の指摘、平均的な家族とのギャップを量的に指摘する、モノの寿命など、様々な情報を得て、生活の改善に役立てることができる。なくなったモノが何処にあるかを教えてくれたり、誰かが持っていったのならそれを教えてくれるというのも有用だ。

新たに使うものはカメラだけだが、これとても監視カメラが既にあるならそれを兼用できるし、電池駆動のカメラなら配線を気にする必要もない。後はメールとWebだけだ。金額さえ折り合えば、結構有用なソリューションになると思う。

2017年7月8日土曜日

機能スキン


ソフトウェアの見た目を手軽に換えることができるのがこの「スキン」機能だ。テンプレート、フレームワーク、言い方はソフトによって色々あるが、様々なレベルで様々なスキンが提供されている。WebブラウザのCSSだってスキンと言えなくもない。

近年感じるのは、様々なソフトウェアの間を渡り歩くにあたり、単に見た目というだけでなく、操作性の違いを一々覚えなければならないことだ。単純な話、MacとWindowsとLinuxにおけるウィンドウの操作の違いがそうだし、アプリケーションのメニューの位置や階層もそうだ。そういった「操作体系」のレベルでもスキンが欲しい、というのが本稿の主張だ。

これは、ボタンやメニューバーなどを操作した結果として得られるファンクションの実行と、その操作体系を分離するものだ。起動するプログラムとパラメータ、その名称と属性をリスト化しておいてスキンに渡すと、スキンが考えて適切なUIを提供する。これによって、例えばMicrosoft Office風、vi風、iPhone風、・・・とスキンを変えてやることができる。

これは、同じアプリケーションを異なるプラットフォームに展開したい場合に有利だ。と同時に、異なるプラットフォームで同じUIを使いたい、というときにも対応できる。開発者側にとっても、UIを一々細かく考える必要がないことにはメリットがあるはずだ。

2017年7月7日金曜日

未来投資戦略


未来投資戦略2017を見たのだが、施策ばかり並んでいて将来像がよく分からない。色々な要素が少しづつ便利になっていくのはありがたいことではあるが、技術の進展に何も考えずにただ乗っかっているだけ、と言われても仕方がないような内容だ。

自分だったらどう考えるだろう。一番重要なのは、高齢化社会の到来と人口の減少に対してどう考えるか、また地球温暖化や生物多様性を含めた地球の持続性、近年の国際的な右傾化、閉鎖化を鑑みた貿易と国防の問題をどう考えるか、となるだろう。もちろん未来投資戦略はあくまでテクノロジー視点なので、自衛隊をどうするかなどを考えるわけではないが、色々とできるようになる中でもどれを重視し、どれを軽視するのか、といった観点は必要になる。

ここから得られる結論は、以下の通りとなる。
  1. 重点化
    1. 自然エネルギー発電を推進
    2. 自動車の電動化(物流用含む)
    3. 農業・畜産業の桁違い(何倍というレベル)の推進、それを達成するための株式会社化・AI化
    4. コンパクトシティ化(大都市も含む)
      1. シティ内物流・人流(自動運転コミューターなど)
      2. 共同溝
      3. 教育・行政・医療・職場のローカル化(遠隔XXを含む)
    5. 高齢者雇用(主に農業・畜産業)
    6. 健康寿命の延伸
    7. テレコミュニケーション技術の推進(テレビ電話、ボット)
  2. 非重点化(低減)
    1. 長距離物流・人流
    2. 石油・ガス・石炭・原子力の割合
    3. コンパクトシティ外のインフラ整備・再整備
日本は資源がなく、エネルギーや食料を外国に大きく依存している。だから近年の国際的な右傾化や閉鎖志向の流れに合わせるなら、化石燃料からの脱却と食料自給率の増大が最重要課題であるはずだ。

化石燃料からの脱却に原子力は含まれない。原子力もやはり輸入に頼っているからだ。となれば、未開発の海底シェールガスなどを除けば自然エネルギーしか選択肢がない。そして幸いにもこれは地球温暖化防止にもなる。施策の重点第一はここになる。

第二は食糧自給だが、これは未来投資戦略内にも記述がある。AIによるベテラン農家ノウハウの導入がそれだ。野菜工場もこれに含めてよいだろう。これらへの就職が高齢者への優遇施策として提供されれば、高齢化少子化と労働人口の減少対策にもなる。

「桁違い」と言ったのは、日本では殆ど生産されていない飼料用のとうもろこしと小麦を、需要の何10%というレベルになるまで国産にすることである。場合によっては関税と助成金で均衡させてもよい。価格では海外に勝てないところ、ハイテクである程度対抗できる価格に持っていく。

一方で、未来投資会議にあった物流革命的な話は、むしろ抑えるべきだ。というのは、移動には化石燃料が不可欠だからだ。エネルギー自給の観点、また地球温暖化防止の観点からも良くない。もちろん将来的に全部電気自動車になり、自然エネルギーだけで賄えるなら異論はないが、当面は輸送の効率化よりも地産地消を目指す方向性になる。

インフラ整備などもむしろ方向性は反対で、コンパクトシティ化の方を推進すべき、となる。イニシャルコストは少々掛けてでも、共同溝を作って二度と道路を掘り起こさなくても済むようにして、電柱も全て無くし、歩道を十分に広げて車椅子やセニアカーが全て通れるようにする。一方で自動車は通行禁止にして、電動コミューターや自動宅配車だけを許可する、といった大胆な整備を行う。一方でシティ外のインフラ整備は実費負担とすることで、シティへの移住を促す。もちろんインフラがなくても生活できるように、浄水器などの技術的手段は提供する。

さて、これを全部やると、景気は恐らく悪くなる。安くできることを高くやることになるからだ。国民が納得してくれるかと言えば、かなり怪しい。だが長期的視点から考えればやるべきだと思うのだが。

2017年7月6日木曜日

バニラ・エア問題


なぜ声をあげた障害者がバッシングを受けるのか?バニラ・エア問題、本当の争点はどこにある

ニュースへのリンクは何れ消えてしまうだろうから概略を復習しておくと、2017/6/5、奄美大島から関西空港へ向かうバニラ・エアの飛行機に車椅子の男性が乗ろうとしたところ、空港職員に止められた、という話だ。男性は自力で(手を使って)乗ることを強制された。同行者もいたのだが、手伝うことを許されなかった。

記事そのものに特段不具合はなく、またバニラ・エアのその後の対応(謝罪し対策を講じた)にも問題はないと思うのだが、2chなどでこの車いすの男性を非難する声が非常に気になった。

実際に見てみると、非難9割、擁護1割という感じで、殆どが非難だった。曰く、
  1. 他に対応のよい(ANAやJALなど)を選ぶ自由があった
  2. LCCはサービスを削っている代わりに安いのだから当然
  3. バニラ・エアは事前連絡を求めているのにしなかった(からダメ)
  4. 障害を特権と思っている、思いやりを権利と勘違いしている
  5. 障害者のために金・手間が掛かる(のが迷惑)
  6. 他のところでも同様のクレームをしている(だからクレーマー)
これに「反吐が出る」「馬鹿」「アホ」「テロリスト」「ヤクザ」「プロ障害者」「付け上がり」「当たり屋」「クレーマー」などの誹謗中傷用語が付いてくる。こういう輩が一定数出てくるのはしょうがないと思っていたのだが、今回は中身がマトモなのにその殆どが誹謗中傷だった、というところが相当にショックだった。

ここまで一方的だとまともな議論もできない。従って2chの議論に参戦しようとは思わないが、(たとえ本人が本物のクレーマーだったとしても)バニラ・エアの最初の対応は間違っており、後の対応は正しかった。クレーム自体にも問題はない。よって、本人が批判される言われはない。バニラ・エアに関しても、後の対応に関して(行き過ぎ、障害者に媚び過ぎ、などの)批判があるとすれば、やはり間違いである。

公共の乗り物は全て、障害者に対する相応の配慮が必要で、これは義務であって親切の類ではない。それは法で定められているもので、LCCかどうかは関係ない。一方で事前連絡は、その上での義務とは認められない。これだけで上の1~5の内容は全て間違っている、と断言できる。

まあギリギリ、「特権」という気持ちは分からなくもない。だがその特権なるものもやはり法で定められたものであって、文句を言うなら自分(その法を制定した国会議員らを選挙で選んだ国民自身)に言うべきだ。障害者に対して、ではない。

自分の読んだ範囲では、ここまでを知った(知っていることを示した)上で誹謗中傷している文章はなかった。(今後調べたとしてもごく少数だろう。) 当然、その事実を踏まえた上での反論もなかった。つまり、今回見かけた9割の誹謗中傷者は、この事実を知らないか、知っていたとしても無視して発言していたことになる。

障害者に限らず、日本には様々な弱者保護の仕掛けがある。生活保護、年金、様々な控除・補助金、健康保険などの金銭的なもの。バリアフリーやユニバーサルデザインに関する法整備(地方自治体のものも含め)。盲導犬など介助犬の差別禁止。人種差別やヘイトスピーチなどへの規制。同和問題(出身地差別の禁止)、機微な個人情報の取得制限、就職差別の禁止。郵便配達は全国くまなく義務付けられているし、店舗への入店拒否にも一定の制限がある。他にもまだ色々あるだろう。

特に、差別の禁止に関する様々な法がなぜ整備されているのかというと、放っておけばそれらが容易に復活してしまうからだ。つまり人の自然な感情は、(今回の誹謗中傷者のように)差別をしたがるものなのだ。それを是正するには、一方では法整備があるが、もう一方では教育が必要になる。これは一応学校の道徳で習うけれども、それでは全く不足であり、親や社会から学ばなければならない。

こういう誹謗中傷が多くなっているということは、それら(広い意味での教育)が弱体化していることを意味する。学校の教育が大きく変わっているとは思わないし、自分の経験上、社会から学ぶ量の方が遥かに多かったから、社会全体のモラルの低下の影響の方が大きいのだろう。

そもそも論(なぜ差別がいけないのか、その(補助の)程度はどの程度が適切であるべきか)についてはここでは触れないが、この手の社会モラルにも当然成熟度があって、時代とともに向上してきた。だが、今までは一方的にどんどん(遅々として、かもしれないが)良くなっていくだけだと思っていたところ、ここ十年ほど(つまり景気の停滞に合わせて)低下しているように感じる。

所詮、差別は社会の余裕度と逆相関する程度のものであって、人類の英知とか精神性の高尚さとかとは関係ない、社会というものも退行するポテンシャルを秘めているのだなあ、と、一人嘆く次第である。

2017年7月5日水曜日

服の『超』整理法


自動で衣料を折り畳んでくれる「ランドロイド」、またその付帯(?)サービスである「airCloset」の発表を見ていて思ったのだが、これを組み合わせて、自分の衣装のうち使う頻度の少ないものをairCloset向けに貸し出す、あるいは古着として売り払う、というサービスがあってもよいと思う。

ランドロイドでは、服を折り畳んだ回数を記憶しておいて、自分のお気に入りの服が何かが分かるようになっている。だから、最初にまず一回全部洗濯してランドロイドに折り畳んでもらっておいて、それを着ては洗っていく。1年も経てば、全く着ない服は自然と選別できるから、ランドロイドが例えば月1回、破棄を提案する。人が判断の結果破棄となったら、それをairClosetに送る。airCloset側は、それを買い取るか破棄するかをモノの状態を見て決める。まあairClosetではなく、普通に古着屋やフリマに出してもよい。

だが考えてみれば、これはランドロイドに頼らずとも人力でできる手だ。箱なり封筒なりに入れて、「『超』整理法」の手法を使えばよい。箱が余計に必要だが、ランドロイドを買うカネに比べればマシだ。ただ箱に入れる手間は結構なもので、億劫になるかも知れない。

2017年7月4日火曜日

官民データ活用社会


「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定された。
美辞麗句はいつもの通りだが、官が本当にこの意味を理解しているのかが気になる。その大きな理由は以下の通りだ。
  1. 情報には、単独では意味がなくともその組み合わせによって意味が出てくるものがある。ビッグデータ活用とかAIによる解析とかいうものは正にそのようなものだ。だから、単独では問題でなくとも、組み合わせによって国家機密が結果的に漏洩してしまうようなことは十分に考えられることだ。
  2. それが国家機密というほどのことはなくとも、官(自治体まで含め)の不作為、怠慢、思想的偏り、忖度といったことまでも明らかになってしまう。それも過去に遡って調べられるから、自分の首を絞めてしまうことになる。
  3. 言ってしまった以上、情報公開は加速する必要があるはずだが、今の国会に出ているような、黒塗りだらけの情報公開の印象は、更に悪くなるだろう。
国家機密に関して言うと、自衛隊周りの調達が代表的だろう。そこから推測して、今年度の自衛隊の航空機の部品調達がどの程度か、などが漏れる危険がある。自治体の怠慢当たりだと、まだ「効率化の糸口が見つかった」などといって誤魔化すこともできようが、特定の企業への肩入れなどは統計的にバレてしまう。つまり、無駄が漏れるのはまだ良し、恣意が漏れてしまうことが問題だ。その中には無意識のものもあるだろうが、政治家たるもの、意識している恣意は、漏れて欲しくない代表格だろう。それも数字でバッチリ出てしまう。もっと言えば、内閣への忠誠心まで%で出てしまうかもしれない。

AIは結構恐ろしいものだ。先日の記事では、世界中に感染したウィルスの画面表示から、その文章が元々どの国で書かれたものかが推測されていた。ある程度長い文章であれば、句読点のつけ方やかな漢字の選択、改行の癖、章立てなどから、文章を書いた個人を特定できるようになってきている。情報公開法で請求すれば途中過程も分かるから、誰がどこを修正しようとしたかまでバレるだろう。役所として、省としてならともかく、それを基に個人攻撃を受ける可能性が出てくれば、また色々と不都合が出るだろう。

例えば、個人情報保護関連で有名な高木浩光氏が、個人のブログで個人情報保護法改正の顛末について情報公開法を駆使して調べている。誰がどう法律を捻じ曲げていったかが分かる、なかなかの力作だと思うが、このレベルでの解析がどの法律でもAIで簡単にできるとなったらどうなるか、更にそれが個人別に蓄積されていったらどうなるか、ということだ。

この方法で、AIを駆使して公のアラを探すネトサヨは増えるはずだ。公やネトウヨがこれに対抗することは困難で、なぜなら非効率や恣意がある程度あるのは行政の常だからだ。そういった情報は、新聞雑誌よりもむしろソーシャルメディアで広がる。これらは自分が知りたい情報が広まる原理になっているから、情報操作は困難で、特に若者の支持を失うことは今の与党にとって不利なはずだ。

情報の分析能力が格段に上がった時、従来通り黒塗り文書を出していれば良いと高をくくっていると足元をすくわれる、そういう時代が来ているのだ。だがまあ、対抗というよりは、そういう時代になりつつある今、公はそのままでよいのか、変わるならどう変わるべきか、を考える時期に来ている、と言えるのだろう。

2017年7月3日月曜日

人工淘汰


植物でも動物でも、品種改良は行われている。これは人間の都合で自然淘汰を促進しているという意味で、「人工淘汰」である。遺伝子操作は、程度が画期的に違うけれども、同じことをしていると言える。では、改良前の植物や動物が絶滅してしまっても良いのだろうか。

外来種の侵出を防ぐとか珊瑚の保護とか、人類は一方で(弱い)生物を保護し、他方では耐性菌や品種改良で(強い)生物を生み出している。まあ耐性菌は生み出そうと思ってやっているわけではないだろうけど。これに矛盾はないか。

人類が絶滅させるかどうかは別にして、特定生物の絶滅は恒常的に起こってきた。だがそれは悪いことではない。そもそも「悪い」というのは人間の考えることであって、自然淘汰に良いも悪いもない。自然現象だ。そこに人間が絡むと、かくもこう面倒になるのか。
外来種の侵出で絶滅するような生物は絶滅すればよい、とはならないのだろうか。絶滅するからにはその生物は弱いのだから、強いものが生き残るのに何の不都合があるのだろう。ノスタルジーだけでは生きていけないのに。絶滅にしても、保護にしても、理由はあくまで人間の都合に過ぎない。学問的に貴重、可哀想(な容姿、振る舞い)、それでいいのか。

今まで絶滅してきた生物は、弱いからこそ、環境の変化に耐えられないからこそ、絶滅した。これを保護したところで、何れは動物園でしか生きられなくなる。自然保護区だって意味は一緒だ。学術的、ノスタルジー的価値はあるにしても、もはや生きているとは言えない。だんだん環境がその生物にとって悪くなっていき、そのうち動物園のガラスの中にでも閉じ込められて、生き延びさせるコストも増大していく。そのうち諦められて、遺伝子サンプルを回収して終わり、となるのではないか。

なぜだんだんコストが増大していくのかと言えば、周りの生物が進化するからだ。そしてそれは人類にも当てはまる。人間は、生物としては地球上最強というわけではない。むしろ猪程度の動物にも劣る。それを補ってきたのは知能なのだが、それが更に生物としての強さを弱めている。

生物としての強さと知能でどちらが重要かと言えば、今の時代はもちろん知能だ。だが、これも程度問題で、自然淘汰が発生しなくなれば、生物としての強さはむしろ退行してしまう。この考えを極端にしたものが優生学だと言える。

20世紀の優生学は殺戮や断種に走ってしまったため反発を買い廃れていったが、遺伝子操作が発達することで再度復活する可能性がある。古い人種は放っておいて、新しい遺伝子の人間を増やす、という方向性だ。単純な話、病気になりにくい体というのは望まれるもののはずだ。ダウン症候群のように比較的数の多い遺伝子の病気には特に注目が集まるだろう。

ゲノム編集で筋骨隆々となった牛を見たことがあるが、人間にも類似の願望を持つ人たちが存在する。ボディビルダーだ。運動選手がステロイドの誘惑に負けるのと、本質はそう変わらない。つまり、その技術が簡単になるにつれ、そういった輩が少しづつ出てくることは避けられないだろう。

バイオハザードのような化け物が出てきて暴れまわるようなことは考えにくいが、例えば風邪を引きにくく、耐性菌にも強く、健康寿命が長く、スタイルがよく、ギリシャの彫刻のような美男美女ばかり、それらは全て遺伝子操作によるもの、などという人種が出てこないとも限らない。

ただ、性格がよいとは限らない。生命として生き残るためにはある程度のズルさ、凶暴さも必要だからだ。積極的な殺戮をしなくとも、例えば政策やビジネスで圧倒して旧人類を貧乏にしてスラムに追い込む、ようなことは可能だろう。

つまり、人間同士でも淘汰はあり得る。人類の中で、「優しい(弱い)」種族が絶滅(に近い状態に)させられた事例は沢山ある。ネイティブアメリカン、アボリジナル、日本でも東北やアイヌ、沖縄で似たようなことが起きている。そのうち、遺伝子操作された人類とそうでない人類の戦争になり、前者が勝つような事態も起きるのではないか。(戦争も広い意味で「淘汰」だと言える)

そのうち、人類は「エイリアン」そっくりになるのかもしれない。

2017年7月2日日曜日

ドローンの型式確認


飛行機の開発には十年単位で時間が掛かり、ある日突然見たこともないような飛行機が市場に出回ることはあり得ない。その殆どは安全性の確認と監督省庁の許可認可に費やされるので、そうカンタンに短縮できるものでもない。だがドローンの登場により、それも揺らいできているのではないか。
プロペラが4基以上あるドローンでは、エンジンではなくモーターを使う。また、ヘリコプターではよくある、ローターやブレードの角度調整のような複雑な機構はない。ただ回転数の制御だけだ。操縦にしても、個々のプロペラの出力を手動で調節することなどは考えづらい。まあそれでも4基くらいだったらあり得るが、原理的にはそれこそ宮崎駿の映画に登場するような何十基も搭載するドローンが考えられ、その一つ一つを人間が直接制御するのは不可能だ。つまり、コンピュータが関与することが不可欠である。
だから、コンピュータが止まらないように工夫すると共に、例えば強力な電磁パルスでコンピュータとモーターが焼ききれてしまったら、制御系を切り離してパラシュートに頼る、とした方がすっきりする。
また、操縦は機種ごとに認定を受ける必要があるのが現状の飛行機やヘリコプターだが、初期のドローンは群雄割拠で進歩も激しいはずだ。免許を二~三段階に分け、基礎免許で全部飛ばせ、上級免許で同乗や営業を許す、などを考えてもよいように思う。その代わり更新時に都度考え直すようにする。そのためにはアーキテクチャ上も工夫が必要で、基礎免許相応部分と上級免許部分で制御可能範囲を分けたり、サブシステム連結には免許をかざす必要がある、などもあって良いだろう。

2017年7月1日土曜日

仮想環境下防災訓練


学校や会社の防災訓練で、都合のよい想定ばかりが続いてうんざりしている人は多いのではないだろうか。事前に火の出る場所が分かっているとか、津波はこないとか、情報システムは全て正常とか、都合よく人数の把握ができているとか。
まあ訓練を主導する総務部署がそういう設定をしたがる理由は分かる。実際に災害がくればボロボロだろうことは目に見えているからだ。だが、それを何となく分かっていつつも、それがどの程度なのか、というのは想像もできていないというのでは困る。
仮想環境下なら、業務に支障を来たすことなく、そういったシミュレーションが可能になる。例えば階段のキャパシティに対して従業員がどの程度殺到すると急激に事態が悪化するか、という変曲点を知ることは充分な価値がある。逃げ切れず人が死ぬ場合があっても、被害を最小限にするためにどう動くか、というのは、危機管理としては知っておくべきことだ。
これをシミュレートするための基礎は既にであり、専門のものも存在するが、(意外にも?)映画のソフトが使える。モブシーンの描画ソフトがそれだ。想定する建物のCAD図と人の数・位置を入れておいて、人の動き方と想定する災害(階段が崩れるとか火が出るとか)を様々に設定して描画を繰り返すことで、どのように人が動き、また死んでいくかを知ることができる。
消防署や自衛隊などでは似たような訓練をやっているのかもしれない。これが汎用化・低価格化して、自治体や学校などに落ちてくれば、実際にはどれくらい危険なのかが分かるだけでも大きな成果だと思う。

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