2025年2月7日金曜日

中小企業への電子化の強制


高齢者1人を支えるのに若者1.5人、なんて数字も出てきている年金問題だが、これを解決する方向は基本的には三つしかない。第一は若者の比率を増やすこと、第二は労働者の効率を上げること、第三は高齢者の待遇を落とすこと。たったこれだけである。全ての施策はこのどれかに対応するものであり、後は程度問題だ。

では各々のKGIはどうあるべきかというと、第一は合計特殊出生率2.1(現在は1.2)、第2は現在の2倍、第三は医療・介護補助の半減(結果として平均寿命は縮む)、というレベルではないかと思う。そしてこれらはどれか一つないしは二つを行うのではなく、三つ同時に行う必要がある。第三はかなり反対が多いと思われるが、それほど日本の状況は逼迫している。第三の施策をせずに済むためには、第二の施策のKGIのハードルを更に上げる必要がある。例えば3倍、4倍だ。そしてこれは非現実的と言える。

それを敢えてやろうとするのなら、方法がないわけでもない。それは極端なIT化、そしてそのITの標準化だ。極端ということは即ち、強制することを意味している。つまり、様々なフレキシビリティを排除し、全体主義的な、画一的なIT化を行うのだ。

具体的には、従業員千人以下の中小企業に対し、商取引、資産管理、納税、出納などといったシステムを強制的に使わせるようにする。またその仕様は統一する。国(デジタル庁など)が仕様を作成して、各ベンダに強制する。

従来の考え方では、電子化すること自体が各企業の自由であるし、採用するとしてもそのベンダや仕様はやはり企業の判断である。それを強制的に一種類にするというのであるから尋常な施策ではない。抵抗も大きいだろうし、法的根拠も不明だ。

では、そうすることによって何が起きることを期待するのか。これは簡単な話で、これら全てが完全に電子化する。完全とはつまり、例えばプリンタやスキャナは一切不要になるし、データ変換も不要、書類は全て電子化、また粉飾決算など不正も極めて困難になる。確定申告などの必要書類も全て電子化され、様々な自動化も進むことになる。手順も全て統一されるので、一度覚えてしまえば転職しても問題なく使える。

役所でも何でもそうなのだが、電子化するなら完璧にすべきだ。中途半端な電子化は結局アナログとの両対応になり、かえってコストが掛かってしまう。上で言うなら、プリンタやスキャナが必要か不要か、という差である。一つ一つは大したことなくても、日本全体でそれができるのなら、その効率向上の程度は飛躍的に向上する。

ただもちろん、プリンタやスキャナを作っているベンダには大損害だ。それこそ潰れてもおかしくない。それでも効果が膨大なら、それは妥協すべき問題である。補助金でも転職斡旋でも付けて、倒産してもらったほうが良い。

中小企業の生産性は、大企業の半分以下だと言われている。その理由の一つは、こういった電子化の遅れなのだが、なぜ遅れているかと言えばお互いがお互いを見合っているからだ。つまり、取引相手に相手にされなければ効率は上がらないし、電子化していても仕様が違っていればそこで事務作業が増える。これを一気に強制的に電子化すれば、その憂いが無くなる。これが狙いである。

これらは相乗効果を生むので、大企業との取引においても効率化が進み、全体として二倍を超える効率化が期待できる。

企業数で言えば99.7%、労働者人口で言えば70%が中小企業なのだが、売上規模は大企業の半分しかない。もしここが倍になれば、GDPはいきなり100兆円増えることになる。三倍なら200兆増える。大企業もこれほどではないが追従すると考えると、両者合わせて300兆くらいは改善できそうだ。

そのために犠牲になるのはシステムの多様性だ。これは言わば共産主義のようなもので、貧しい者の戦略とも言える。だが背に腹は代えられない。健全性の前に死活問題を回避することが必要である。

似たようなことは、あらゆる業界に関して考えることができる。紙の書類のサイズを統一するとか、服の種類を減らすとか、物流の通函のサイズを統一するとか、色々だ。だが電子化はその中でも優先順位が高いと考えるべきで、その理由は効果が高いからだ。完璧な電子化でなくとも、例えば決算システムだけは統一する、とするだけでもかなり違う。

強制力という意味で民主主義と相容れない施策であるので「積極的に進めるべきだ」とまでは言わない。だが背に腹は代えられない。そこまで日本は切羽詰まっているという自覚が足りないのではないか。国は真剣に、中小企業の電子化推進を検討すべきである。

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