以前にも
https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html
という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。
首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策検討会』というものがある。
https://www.bousai.go.jp/kazan/shutokenkouhai/index.html
この内容を大雑把に伝えると、
降灰30cmまでは自宅などで生活を継続、30cm以上で原則避難
というものになっている。ただ、なぜこうすることにしたのかについては詳しくは書いていない。
実際の降灰量予想としては、令和3年に発表された「富士山ハザードマップ」
https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/kazanfunka/fujisankazan/1030190.html
の中にある
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/190/21_kouhai.pdf
が参考になる。東京23区、千葉県西部、埼玉県南部は2〜10cm積もると予想されている。
以前の自分の考察では、交通網が全て遮断される、全てのインフラは数カ月回復不能で救援物資も来ない、というものだったが、いくらなんでも100%ということはないだろう。まずここから精査していく。
まず概略から抑えておくと、首都圏の人口は3700万人である。これは1都3県の人口だ。
インフラとして一番重要なのは上水道と物流である。人は水が飲めなければ3日で死ぬ。水道が止まっても物流が大丈夫なら水は飲めるが、この両方が止まれば死ぬ。個人にしても自治体にしても、備蓄はせいぜい数日程度だろうが、この間にどちらかが復旧しなければ死ぬ。つまり、水道と物流が止まり、備蓄が尽きてから3日で死ぬ。
そこでまず水道だが、この資料によると、上水道施設の83%で機能停止ないしは機能低下があると予測されている。また浄水場の機能停止による断水が4%あるとのことで、つまりは87%が止まる可能性がある。
備蓄があると答えた人は、あるアンケートによると60%だったそうだ。だが水をどの程度備蓄しているかについては正確な情報がなかった。そこでこの60%の人が平均3日分の水を保存しているとすると、1週間以内に水道か物流が復旧しなければ87%(3200万人)が渇水死する、という計算になる。
給水車があるじゃないかと考える人がいるかもしれないが、首都圏に給水車は250台しかない。15万人に1台だ。これが雀の涙であることは明らかだ。地方から救援が来たとしてもせいぜいこの数倍が限度だろうから、ほとんど状況は改善しない。被災者が多過ぎるのだ。また、そもそも道路が火山灰で覆われているので、末端まで届けることは最初から不可能だ。自衛隊の支援も同様である。
もう一方の物流だが、これは報告書にもはっきり書いていない。鉄道と飛行機は全面ストップだが、自動車の通行がどこまでできるかは曖昧である。一応、乾燥時10cm、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が走行不能とある。また30cmで四輪駆動車が走行不能になる。ここではトラックを想定しているので二輪駆動車が該当する。また、タイヤ走行という意味では走行可能でも、実際にはエンジンに火山灰が入り込んで焼付き、数時間でダメになってしまう。現実的にはほとんど動けないと見るべきだ。
ただこれには例外がある。EVだ。EVにはエンジンがないため、降灰の中でも走行可能である。もちろん換気フィルタも火山灰には対応していないので換気なし、中途充電できないので脱出のみとなる。万一往復を想定して途中で頓挫してしまうと、道路を塞いでかえって迷惑だからだ。これは前回の考察からの更新点だ。
停電の予想だが、碍子への降灰の影響は配電線100箇所、送電線35箇所、変電所2箇所だそうだ。変電所は首都圏に1600箇所、配電線と送電線は数えるのが困難なほどだそうなので、意外にも影響は小さい。また火力発電所は、噴火15日後に最大42%の供給力低下が見込まれているが、もちろん発電には他の方法もあるため、総合的に見ると80%程度の発電が可能とのことだ。これは前回の予想よりも大幅に良い。電力さえあれば、例えば自治体備蓄として持っている大型浄水器は稼働可能となる可能性があるし、何よりも明かりが確保できることは治安面からも心理面からも大きなメリットになる。降灰中はどうせ工場などは動かないだろうから、電力は意外にも足りる可能性が高い。
さて再度物流だが、復旧の速度が気になるところだ。資料によれば、10cm程度の降灰にはホイールローダーと散水車を使うとある。だが水は貴重なのでとりあえず無視し、ホイールローダーに注目する。
ホイールローダーは全国に10万台以上あるとされている。首都圏に何台あるかは不明だが、仮に4万台として、どれくらいの速度で火山灰が撤去できるのだろうか。
その前に、ホイールローダーはやはりエンジンを積んでいるので、数時間で焼き付いて動かなくなるのではないか、と考えられる。これを是としてしまうと道路の復旧は全く望めないことになってしまうので、ここではフィルタを十分に用意し頻繁に交換することで稼働可能、と仮定する。(この仮定は大甘である。)
次に火山灰を撤去するに当たってその灰をどうするかなのだが、これは2車線以上ある場合には外側の1車線を通して中央に寄せるのだそうだ。これを前提として、どの程度の速度で復旧できるのか考えてみる。
首都圏の道路の総延長は、24万3千キロメートルだそうだ。これを前提に、生成AIに対して
「10cmの火山灰が降り積もった24万3千キロメートルの道路を4万台のホイールローダーで清掃するとして、また高速道路と幹線道路から始めて徐々に支線に取り掛かるという前提、つまり初期には全台数は稼働できず徐々に稼働台数が増えていくという前提で、灰の除去に何日掛かるかを推定せよ」
と指示してやると、結論としては最低3ヶ月、現実的には半年以上という結論が出た。つまり、少なくとも最初の1ヶ月、物流による水の確保は不可能である。
これらを合わせて考えると、水道が87%能力低下、電力は20%能力低下、物流は100%ダウンの状態が1ヶ月続く、ということになる。水の備蓄の量は、個人と自治体合わせても2週間がせいぜいだろうから、そこから先はバタバタと人が死んでいくことになる。3700万人中3200万人が死ぬ、というとんでもない結論だ。
であれば、早期に脱出するのが正解である。残念ながらこの結論は前回の考察と変わらなかった。東京都の指示は誤っているが、1千万人を数時間で脱出させることなど最初から不可能だからこういう結論になったのだろうと推察する。
脱出方法として考えられるのは、徒歩、自転車、バイク、自動車、電車、船などだ。また前提として、安全な移動距離は100kmを想定する。
まず徒歩だが、1日8時間、時速4kmで進んだとしても32kmなので、100km動くには4日掛かる。4日分の水と食料を持って移動するのはほぼ不可能だ。食料はともかく、4日分の水となると12L、2Lのペットボトル6本入りの箱を丸ごと背負っていくというレベルになるからだ。ここで、火山噴火と同時に脱出したとしても、灰は2〜3時間で降り始めるので、初日で周囲の水道が止まる可能性があり、水を途中で補給しながら歩くというのは厳しいだろう。
自転車は、初動としてはあり得るが、やはり2、3時間で移動できる距離では降灰に追いつかれてしまう。バイクなら可能性はあるが、降灰に追いつかれるとスリップしてまともに走れなくなるので、噴火から即時に動け、かつ運転に自信のある人限定である。
電車は0.1cmの降灰でストップするため、本当に初期の1、2時間程度しか動かないだろう。都市部での電車の平均速度(営業平均速度)は30〜40km毎時であるため、目標の半分しか進めない。もし2時間動くなら何とか、というレベルである。だが、電車が律儀にこの通り動いてくれるとは限らない。噴火と同時に止まるかもしれないし、降灰が確認されたら直ちに止まるかもしれない。その意味では電車を生命線とするのは危険だろう。
自動車の場合、数時間で焼き付いて動けなくなるが、その数時間内に逃げ切るという可能性はある。一方で渋滞に巻き込まれる可能性を考えると、乗り捨てる(エンジンが焼き付くまで走る)覚悟が必要だろう。それでも渇水死よりはマシだ。EVでも充電切れで乗り捨てる覚悟はやはり必要だと思う。
そして、新たな可能性として、水路を提案する。これは川沿い、しかも江戸川に限られるという制約があるのだが、江戸川を日光・宇都宮方面に遡上すれば、おそらく脱出可能である。手漕ぎではなくエンジンであることは必須だが、川なら渋滞がないので降灰前に逃げ切ることができるだろう。時速40kmほどが必要だが、これは一般的なレジャーボートや釣り用のボートでも出せる速度だ。燃料だけがちょっと心配だが、そこはあらかじめ計算しておくのが良いだろう。
ただ、東京湾を出て房総半島を回って太平洋を北上するというルートは取るべきではない。こちらだと走破距離が2〜3倍になり、燃料の準備がおぼつかなくなると思われる。
なお、これらの脱出方法は、噴火と同時という前提である。降灰後籠城して我慢できなくなって脱出する、というシナリオだと、状況は違ってくる。
例えば噴火2週間後、幹線道路と高速道路の灰が一応1車線分除去できたという想定で脱出する場合、まず除去されたと言っても灰は舞っているので自動車は使えない。但しEVなら可能なので、渋滞さえ起こらなければEVで脱出するというのはアリになる。
残りは自転車か徒歩だが、どちらにしても灰は舞っているのでN95マスクとゴーグルは必須である。それで100km移動するのはやはり厳しい。人は水がないと3日で死ぬが、その3日間元気で時速4kmで8時間歩くなんてことはあり得ない。徐々に弱っていくはずだ。せめて2日分、6Lくらいは持ち歩かないと、ゴール前に死んでしまう。だがまあ、この場合は水が尽きて命がけの脱出という覚悟だろうから、マイナスの選択としてはアリだろう。もしかしたら60kmくらいで水にありつけるかもしれないが、もはやそれは時の運である。
さて、脱出のためのEVだが、車高の高い、タイヤもそれなりのものを使うなら、30cmでも何とか走行可能らしい。そんな視点で車を選ぶなら、
https://www.subaru.jp/solterra/
がオススメである。ハマーのような極端なものは別格として、普段も乗り回せる割に車高が高いEVである。ソルテラの航続距離は500kmあるから、フル充電しておけば十分に降灰圏を脱出することは可能であろう。
また、火山の場合は地震と違って1ヶ月前程度には予兆が現れるので、全く予知不可能というわけではない。その時点で車を買う、避難する、備蓄をする、ということは考えられるだろう。