2025年12月8日月曜日

ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル

近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕事に波及していくだろう。

ここであぶれた人間には、もはや働くところが無い。何をするにもロボットやAIに劣る人間には、今後もう労働市場自体が存在しないのだ。そんな彼らを救済するには社会保障しかない、と以前は考えていたのだが、ここで発想を転換し、ロボットを所有させれば良いのではないか、と考えてみた。つまりそういう人たちは、その(人間の代わりに働く)ロボットを所有して、労働需要に貸し出して働かせ、その借り賃を得るというものだ。もちろん人間が働くよりは安い額だが、その間自分は何もしない(から他のことができる)のだし、ロボットの台数を増やせばそれだけ額は伸びる。

ここから更に、所有せずともレンタルすれば同じことができるのではないかと考えた。カーシェアリングと同じようにまず自分が借りて、そこから他人に貸すのだ。そうすれば所有のリスクを抑えられる。

用途としては、マンション管理人、イベントや駐車場の誘導員、近所の食堂のホールスタッフ、介護の搬送補助、清掃員、宅配要員、ケータリング要員、などが考えられる。こういうものは、平均的には常に需要があるが時間までは揃わないので、人間よりロボットの方が向いている。

ただ、これだけでは不足だ。第一には、同じビジネスモデルを一般人が使うことは阻止できないので、参入されるとレッドオーシャンになってしまう。そこで、ロボットのジョブマッチングシステムを導入する。これと連動して自動でレンタルが開始されるようにしておけば、カネが自動で落ちてくるようにできる。そしてこのジョブマッチングを使えるのは、生活保護や境界知能など一定の要件を持つ人に限定する。一般人は自分でレンタル先を探さなければならない。ジョブマッチングでは「必ず儲かる」が、手動でマッチングする際には借りてから貸し出すまでのタイムラグがあり、必ずしも収支はプラスにならない。

第二に、借りたい側が直接シェアリングサービスからレンタルしてしまうとこのモデルは破綻するので、借りる側は一定比率でそのジョブマッチングシステムからレンタルしなければならない、と法で定める。個人が借りる場合は100%ジョブマッチング経由とするのも良いだろう。

このシェアリングロボットのプール(待機場所)は地域毎に細かく設定されるので、現実的には寡占状態に近くなり、この定めは大きな障害にはならないと考える。つまりジョブマッチングを通すか通さないかに関わらず、その地域のそのシェアリングサービスから借りることになるので、余計な課金を嫌って他を探すということはあまり発生しない。

このモデルは、社会保障モデルとしても望ましい点がある。従来、生活保護や障害者雇用は「バラマキ」的発想が強く、それ故に偏見も多くあった。だがこのモデルでは、彼らはロボットのオーナーであり、得られるのはそのレンタル料という普通の報酬である。ジョブマッチングが使えるという有利はあるが、同じことを手動することは一般人でも可能なので、ある意味一般人と同じビジネスモデルである。これにより偏見を受けにくくなると考えられるのだ。

ロボットは地域で運用されるので、仕事に限らず家事の補助や子守りなどでも使えるだろう。一家に一台がまだ遠い時代でもロボットを使えることは、地域にとっても望ましいことだ。例えば共稼ぎの夫婦の子供の保育園えの迎えに使うなどということも考えられる。そう考えると、弱者保護は置いておいてもロボットシェアリングには意味があると考える。それにジョブマッチングを加えれば、福祉も効いて一石二鳥になる。

後はビジネスモデルとして成立するかどうかだが、保護対象者(生活保護、境界知能など)の収支は一方的にプラスになるので問題ない。ロボットオーナーは地域の需要を鑑みて調整の必要があり、それなりのリスクを持つが、まあこれはシェアリング会社としては通常のリスクである。借りる側は一定比率の足かせがあり若干不満はあるだろうが、ここは世論に応じて法で調整してやる。つまり十分に低い負担率から始めて徐々に上げていけば、うまい落とし所が見つかるだろう。

2025年12月5日金曜日

努力は報われるのか

努力しても報われない場合はある、というのは一般論として正しいと思うが、成功者は「いや、それは努力が足りないだけだ」と反論する。この構図は昔から存在する。

有名なところでは王貞治の「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」というもので、同じようなことは孫正義や柳井正、稲盛和夫、ホリエモンなども言っている。あるいは、努力しても成功するとは限らないが、成功した者は必ず努力している、という言い方をしている人もいる。だがこれも、才能だけで生きてきたような人がいることを無視した発言だ。

ただ、少数の例外を挙げて反論するのも芸がないので、統計的な決着をつけようと、生成AIに聞いてみた。やり取りは色々あったのだが、最終的には次のような結論が出た。

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◎相関係数の考え方

  • 努力(学習時間)と学力成績 多くの教育調査で相関係数は 0.2〜0.4程度 と報告されています。 → 正の相関はあるが、中程度にとどまる。つまり「努力すれば成績は上がるが、必ずしも強い関係ではない」。
  • 資質(認知能力・IQ・基礎学力)と学力成績 相関係数は 0.5〜0.7程度 とされます。 → 資質の方が努力よりも強く成績に結びつく。特に数学や読解力では高い相関が確認されている。

◎研究例

  • PISA調査(OECD) 学習時間と成績の相関は弱〜中程度(0.2〜0.3)。 認知能力や基礎学力(資質)との相関は中〜強(0.5以上)。
  • NLSY(米国の長期追跡調査) AFQTスコア(認知能力)と所得・学力の相関は 0.6 前後。 学習時間や努力指標との相関は 0.3 前後。

◎まとめ

  • 努力(学習時間)と成績:r ≈ 0.2〜0.4
  • 資質(認知能力)と成績:r ≈ 0.5〜0.7
  • 結論:努力も資質も成績に寄与するが、資質の方が相関は強い。努力は資質を補完する形で効果を発揮する。

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つまり、努力よりも資質のほうが重要であり、努力しなくても資質があれば成功する。それは資質がなくて努力すれば成功する確率よりも倍程度高い、ということだ。

どうだろう。身も蓋もない結論ではないか。資質のないキミ、努力しても無駄だよ~ん。

2025年12月3日水曜日

量子対応暗号の普及時期と世界危機


 聞くところによれば、実用的な量子コンピュータの登場は2030年代半ばから後半(2035年〜2040年頃)が有力な予測とされているのだそうだ。これは、数百万qbit規模の量子コンピュータが開発される時期、という意味だ。

一方、従来の公開鍵暗号(RSAや楕円曲線暗号など)は量子攻撃に脆弱になるため、量子耐性を持つ暗号技術(ポスト量子暗号)の導入が必要である。こちらの普及時期の予測としては、2028年頃から始まり、政府機関や重要インフラについては2035年までに完了することが目標とされているようだ。

量子コンピュータより先に量子対応暗号が普及するのであれば安心、と思ってはいけない。というのは、OSの脆弱性などとは違い、暗号が破られるというのはとんでもないリスクになるからだ。

つまり、脆弱性の場合は脆弱性を突く必要があるのだが、暗号の場合は脆弱性を探す必要はなく、いきなり通信を解析してしまえば良いからだ。それでパスワードを盗まれてしまえば、正規のログインができてしまうので、そこからゆっくり乗っ取ればよいのだ。「脆弱性のある機器を探す」ではなく「古い暗号を使っている通信を探す」だけで良いのなら、その難易度は何百分の一、何万分の一に下がるであろうことは言うまでもない。そしてそもそも、量子暗号対応するにはOSのアップデートが必要だが、脆弱性すら対応できていない機器が多数あるのが現状なのだから、OS自体のアップデートができていない機器は更に多いことは容易に想像できる。つまり母数も多いのだ。

それが例えばプリンタやBluetoothイヤホンだとしても安心はできない。Bluetoothにはキーボードやストレージが繋げられるから、古い暗号を許していると、接続プロトコルを解析されてしまう。その結果、既存のペアリング済の機器のフリをして、別の機器が繋げられてしまうのだ。WiFiでも同様である。

これは企業間取引などでも同じであり、つまりは例えば銀行網なら世界中の銀行が全て対応していないと意味がないし、そこから先につながるスマホやPCなども全て対応していなければならない。どこか一箇所でも古い機器があれば、そこに入られて不正な送金を正規のルートで要求できてしまう。

大企業であっても、10年前の機器を1台も持っていないところなどないだろう。また、海底ケーブルのように交換が困難なものもあるし、個人持ちのWiFiルータや末端のPCなどを含めて全てを刷新するというのは、企業の規模が大きければ大きいほど困難になる。様々な使い方をしているPCには各々それなりの事情があり、容易にリプレースすることはできない。

だから、量子対応暗号の普及については、単に導入が始まる時期ではなく、端末、通信、ホストなど全ての機器が対応を完了し、量子攻撃に耐えうる状態になることが必要である。OSレベルでの対応が必要、場合によっては機器入れ替えも必要だ。そして現実にはそれは非常に困難だ。

従来の脆弱性パッチのような対策は不適切であり、完全総入れ替え+古い機器の完全なデータ抹消ないしは破壊廃棄といった徹底した対策が必要で、これに掛かる費用はとんでもないものになる。それが2028年から2035年の間の7年で完遂できるとはとても思えない。タダでさえ日本の企業はセキュリティ認識が甘いと言われている。ましてや4割が赤字と言われている中小企業の全てがそのためのセキュリティにカネを掛けるとは思えない。

さて、Lloyd's of Londonがケンブリッジ大学リスク研究センターと共同で作成した、サイバー攻撃の経済的影響を定量的に評価した研究がある。この研究におけるこのシナリオの発生確率は約3.3%(30年に1回程度)、被害規模は400兆円とされているのだそうだ。そこから類推するに、恐らくこの被害は千兆円規模になるのではないかと考える。世界のGDPを全部足すと1京4千兆円になるのだが、もう何%ではなく何割というレベルであり、当に世界が傾くようなとんでもない規模だ。

更には、Lloyd'sの研究の発生確率は3.3%だったが、このシナリオではこれよりも遥かに高く、数十%の高いリスクとして扱うべき段階に近づいていると推測されるのだそうだ。

さて、そうなるとどう自衛しようかという話になるのだけれど、このぐらいの規模になると、自衛ができたとしてもそれは無意味で、世界経済が壊れてしまうので、資産を守れても使う場がなくなる、食べ物がない、となって、その先は餓死か暴動に巻き込まれて死ぬか、という悲惨なものになりかねない。

それでも何とか対応しようとするなら、個人で使うIT機器は全部刷新するか、できないならその古い機器はクローズドネットの中に閉じ込めてしまうのが良いだろう。この場合、WiFiやBluetoothは使わず有線にすべきである。もちろんあまり現実的な回答ではない。

というわけで、よい解決策を思いつかないままくらい終わり方になってしまうのだが、国や技術者へのお願いとしては、量子対応暗号の普及に全力で邁進していただきたい。

2025年11月22日土曜日

高市氏の積極財政論と確証バイアス

高市首相は安倍氏と同じ積極財政論者で、就任直後からその方向に舵を切っている。プライマリバランスゼロ目標を事実上反故にし、戦争でもコロナでもないのにいきなり17兆円もの補正予算を組んだ。ちなみに安倍総理が初年度に打ち出した補正予算は10兆円であり、それと比べても突出している。

この方針は正しいのか。MMTのような極端な思想は問題外だが、高市氏の主張する「責任ある積極財政」の「責任ある」のところが十分に正しければ納得もできようものだが、 そのへんはどうなっているのだろう。

まず高市氏は、「PB黒字化目標」から「純債務残高対GDP比の安定化・削減」への転換を行った。これは、「借金(負債)をしても、それに見合う資産(知識・技術・インフラ)を形成すれば問題ない」というロジックである。もう一つは、17兆円の投資が、金利負担を上回るリターン(税収増)を確実に生み出すという定量的な主張である。この二つを検証してみよう。

第一の主張は、そもそも借金をするのは国(政府)であり、それに見合う資産が増えたとしてもそれら(知識・技術・インフラ)は何れもカネではなく(無形資産)、またそれは国(政府)の資産ではない。民間の資産である。このため、予算(カネ)上は返ってくるものがなく、ただ借金が増えるだけである。つまり、それに見合う資産が形成されても問題は解決しない。

また、それがもし第二の主張にあるように税収増をもたらすとしても、そこには二つの問題がある。まずもしGDPが増えたとしてもそれは翌年以降のことで、つまりタイムラグがあること。そしてその「確実」という主張が決定的にウソであることである。17兆円の借金が17兆円以上の税収増をもたらすためには、GDPはその数倍増やさなければならない。税率を20%と仮置きすると、必要なGDPはその5倍、つまり85兆円増えなければならないが、これは現在の日本のGDPの15%にも及ぶ。550兆円というGDPの母数に対し、たった17兆円の投資で85兆円もGDPが増えるとはとても思えない。一般的に、先進国における公共投資の乗数は、高く見積もっても1.1〜1.5が限度で、下手をすれば(しかも最近の日本はたいてい)1を切るというのが常識だ。高市氏の主張はこれが5になると言っているのだが、そんなことは奇跡でも起きなければ無理だ。

これに追い打ちを掛けるのが金利の上昇だ。この二十年あまりのゼロ金利のせいで忘れ去られているのかもしれないが、金利が上昇すればそれは公債費に反映せざるを得ない。借金が増えれば元本だけでなく利払いも増えるのだが、金利が上がれば借金が同じ額でも支払いは増えてしまう。

日本の公債残高における平均償還年限は9.7年(9年8ヶ月)だそうだ。つまり10年で一新され、新しい金利になる。そして現在の公債残高における平均利率は1%である。それを千兆円とすると、ざっと10兆円だ。そして現在の長期金利は10年もので1.835%、20年もので2.815%、40年もので3.705%。これを前提として生成AIにシミュレーションしてもらったところ、2035年時点の公債残高の平均利率は1.9%と出た。つまりもし借金が増えなくても(同額を借り換えるだけでも)、2035年には利払いが10兆円から19兆円になってしまうのだ。そして、過去の公債残高の推移を見れば、公債残高が増えないなどということはあり得ない。当に「金利地獄に陥ろうとしている」のが今の日本である。

ついでに言うと、この金利は現在の状態からの推測である。今、世界的に金利は上昇傾向にあり、そもそも日本はその中でも例外的に低金利だったのだが、それも動き始めている。欧米は4%程度だが、もし4%になると利払いは40兆円であり、今の(元本返済も含めた)返済額をも上回ってしまう。

ここまでの主張を最新のGemini3に投げかけると、私の主張に完全同意してきたので、ちょっと慌てて「高市氏になったつもりで反論して 多少屁理屈を捏ねても良いから」と指示すると、やっと反論してくれた。その調子でGeminiには高市氏になってもらい、しばらく会話を続けたのだが、まるで子供のケンカであり話にならない低レベルの屁理屈しか捏ねてくれない。最後はヒステリックな誹謗中傷に終わる、というとんでもない終わり方になってしまった。

ここでGemini君には冷静に戻ってもらって、その「高市氏になったつもりでの反論」を分析してもらった。まあ予想通り稚拙な反論であるとの結論が出された。これ以上続けても仕方がないので、別の方面から分析してみることにした。

まず、高市氏の言う新たな指標「純債務残高対GDP比」についての分析をする。これがその推移だ。

そもそもGDP比率というのは指標としておかしいと思う。GDPは国家予算ではない。GDPが増えても税収が増えないことはあり得るし、そもそもGDPは国家予算に対して遅効指標、つまり後から着いてくる数字なので、常に「やり逃げ、その結果としての手遅れ」が可能な状態になるからだ。

だがまあそれは置いておくとして、このグラフではこの数十年上がりっぱなしであることが分かる。高市氏はこの指標を打ち出した手前、このグラフに類似したものは見ているはずだが、最近景気が良いのでごまかせると考えたのかもしれない。だがマクロで見れば、まだそれ(低下)は誤差の範囲である。

さて、プライマリバランスを引っ込めて純債務残高対GDP比を打ち出した高市氏だが、具体的な数値は示していない(安定化と低減とは言ったが)。これが財務指標的にどう違うのかというと、つまりは「プライマリバランスはマイナスだが純債務残高対GDP比は減っている」という超微妙な線を目指していることになる。これが経済学上どのような状況かというと、「構造的な財政赤字を抱えながらも、経済成長の力によって債務の重みが希釈され、財政の持続可能性が保たれている」状態を意味する。そしてこれは、次のような状態が成り立っているときにのみ成立する。

第一は、名目成長率が金利を上回っていること。これは実際には下回っている。長期金利は既に1.7~1.8%になっているが、名目成長率は0.5%しかない。第二は、政府資産の増加分が負債の増加分を上回っていること。こちらも現在は成立しておらず、政府資産の増加分数兆円に対して負債の増加分は35兆円である。つまり、現在ではどちらも成立しておらず、しかも17兆円の投資程度で逆転するほどギリギリの数字でもなく、大幅に乖離している。

ではそうでない場合はどうなるのかというと、「プライマリバランスはマイナスで、純債務残高対GDP比も増えている」という状態になる。借金は膨らみ、国防や治安維持、社会福祉といったものにはカネが回らなくなり、返済ばかりに予算が取られる。金利は上がり続け、為替は暴落し、海外からモノ(主に食料や石油)が買えないため国内の経済が回らなくなる。治安も同時に悪化し、国全体がスラム化していくと共に、海外からの侵略の恐怖にも怯えることになる。当に「奈落の底に落ちる」という表現がふさわしいと言える。しかも、この状態への変化は、ほんの十年で起こり得る。

さて、高市氏の経歴を調べてみたのだが、松下政経塾出身であり、頭は良いはずだし、経済についても素人だとは思えない。なのになぜこれほど頓珍漢な主張をするのかと生成AIに聞いてみると、自己の政策への過大評価(成功確率が低いことを無視、失敗した場合の影響を考えない)、他人の意見の過小評価などを挙げた。

これは典型的な確証バイアスの症状であるため、それを確認したところ、Geminiは合意してくれた。そこで更に、彼女の過去の発言からそれを確認できるか聞いたところ、やはり成功への確信と失敗の可能性の過小評価、自身の主張への確執、他人の意見への否定などが山ほど出てきた。

念の為、彼女が確証バイアスに陥っていないと思われる発言も拾ってもらい、両者を比較しどちらが優位かを評価してもらった結果がこれだ。

評価項目 確証バイアス的発言の優位性 定量的な判断
政策的な重み 圧倒的優位 彼女の政策の**「柱(PB目標の否定)」はアクセル論で構成され、ブレーキ論は「添え物(出口戦略)」**に過ぎない。
主張の頻度と強度 圧倒的優位 「デフレの元凶」「ありえない」といった強い断定語で発言されるアクセル論に対し、ブレーキ論は「〜の場合には」「〜する必要がある」といった限定的な言及に留まる
定量的な具体性 優位 アクセル論はPB目標否定、名目成長率2.0%などの具体的な目標値に紐づく。ブレーキ論には、「金利何%」といった**具体的なトリガー(閾値)**が設定されていない。

最終的な結論をコピペすると、以下のようになる。

最終的な結論

高市氏はリスクの存在を言葉の上では認識(現実認識)していますが、その対処方法(ブレーキ論)が極めて曖昧で受動的であるのに対し、「デフレ脱却のためには財政規律を無視すべき」という信念(確証バイアス)は政策の中核をなす能動的な要素です。

どうだろう。特に高市氏擁護派の人にはよく読んでほしい。もちろん、確証バイアスは外して。

本ブログでは、繰り返し陰謀論や確証バイアスについては警告を発してきたが、ここまで来ると「確証バイアスは国を滅ぼす」とすら言えるのではないか、と思う。この手の心理学は義務教育必須にすることを強く推奨する。

2025年11月17日月曜日

総合医の復活


 そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。

総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代においてそれは、どちらかといえば「仕訳医」としての側面が強い。つまりある程度目利きをしたら各々は専門医に任せる。以後は主治医は個別の病気には関わらない。だから患者は複数の病院を渡り歩き、あるいは総合病院の複数の診察科を駆け回ることになる。

だが、その主治医が全ての専門科に精通していて、全てをワンストップで診てくれれば、患者としてもそれに越したことはないわけだ。そしてかつてはそうだった。ほとんどは町医者が診てくれて、手術などどうしても困難なものは大病院に紹介されたのだが、その閾値がどんどん低くなっている。今やさほど大きな街でなくとも総合病院はあって、町医者の守備範囲は狭くなっている。

これを打開する可能性があるのが、近年のテクノロジーの発達である。すなわち通信技術、高解像度映像伝送技術、そしてAI、ロボット、である。

つまり、これらIT機器で武装することによって、町医者で閉じる守備範囲を再び広げようというのが主旨である。

総合医の強みは、複数の病気を抱える患者で発揮される。薬の重複や副作用と症状の識別は代表的だが、精神的ケアや家族の意思の確認などにおいてもそれは有用で、更には入院や手術を近隣で行えることは大きなアドバンテージだ。

ただ、個々の病気の専門性が分からないと、これらの識別は困難だ。重複しているからと単純に薬を減らしてしまうのが正しいとは限らない。また、薬の作用を相殺するような組み合わせを発見したり、発見したときにどう対処するかの知見は、個々の専門医でも分かるとは限らず、総合医としての知見もまた求められる。そういった知見をカバーするのがAIである。

また、手術を遠隔で可能にする手術ロボットや、手術以外の処置も、AIやロボット、その他測定機器の高度化やカルテ連動などの技術を駆使して、町医者でできることを増やしてやる。多数の人間の専門家ではなく高度なAIがそれに置き換わり、町医者は最終判断をするだけで済むとなると、むしろ医療品質の安定化、更には高度化すら期待できる。

さて当然ながら、このスキームを確立するための鍵となるのは、診断用機器、手術・処置ロボット、そしてAIだ。以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2017/02/blog-post_20.html

のような提案をしたことがあるが、これは診断用機器だ。他に手術・処置ロボット、AIが必要だが、手術・処置ロボットは汎用である必要があり、これはアンドロイドすなわち人間のような形状(手が二本、脚が二本、頭が一つ、身長170cm前後、バッテリ駆動)で、人間と同じ器具(メス、鉗子など)を持てるロボットが望ましいと思う。そしてソフトウェアでどんどん機能を追加していくのだ。

AIの方はアイデアが漠としており申し訳ないのだが、多数の専門家AI(各々の病気のエキスパート)と総合診断AIからなるマルチエージェント型が基本になるのだろうと思う。それと人間のAIが自然言語で会話しながら進めていく、というようなイメージになる。

もちろん、このための投資はこのスキームにおける大きな弱点になる。数千万円単位の投資になると思われ、大型医療機器の導入と同じような出費になる。したがってこれの導入には医者により判断が分かれるだろうし、国の補助と言っても桁が大きいので一律にするのは困難だ。

だがこれは、離島など医療過疎地域へのモデルケースとなるため、スキーム自体の確立には国や自治体としても意義があり、その意味でも国の補助は重要である。まずはそういうところから始め、コストダウンを目指しながら町医者に広げていく、そんな構想をもって開発しても良いのではないかと思う。

2025年11月10日月曜日

こんなキュレーションメディアがほしい

 
SmartNewsやGunosyなど、いくつかのキュレーションメディアをインストールして使ってみて、やっぱりダメだと削除する、ということを、数カ月毎にやっている。なぜ数ヶ月毎にやっているかというと、進歩しているかもしれない、使えるようになっているかもしれない、と淡い期待を寄せているからだが、そのたびに裏切られている。何がダメなのかというと、新聞の代替として、まだまだお粗末だからである。ではどんな方向に進化してほしいのか。

まずそもそも、新聞はニュースメディア(だけ)ではない。新聞にはニュース以外にも、解説記事、社説、読者投稿、新聞小説、クイズ、四コマ漫画、川柳など、さまざまなコンテンツが掲載されている。新聞広告や折込チラシまで含めて総合的に、「その時代の情報を提供してくれている」のだ。

キュレーションメディアにも読み物記事は掲載されるが、新聞のそれとは異なり、Web記事のつまみ食いになってしまっている。浅い雑学にはなるが、新聞のような筋は通っていない。

次に困るのはフラットな構造だ。タブ毎にジャンルが分かれているが、このタブの重み付けが皆同じなので、政治・経済と芸能ニュースが同列の重み付けになってしまう。もちろんカスタマイズはあって良いのだけれど、新聞たるもの、基本はそこなのだから、重み付けはしっかりしてほしいのだ。

またこの重み付けは、ジャンル内の各記事の問題でもある。新聞記事の一面は重要ニュースであり、分量も充実している。軽い記事は扱いも軽い。キュレーションメディアでは皆フラットで、これができていない。

個々の記事を読むのにも、新聞ではできる「ページめくり」ができない。記事を選んで読んで、戻って、また記事を選んで読んで、今度はタブを切り替えてまた記事を選んで読んで、を繰り返す必要がある。ページめくりができるのはFlipboardくらいだが、1ページ1記事ベースなのでやはり重み付けが分かり辛いし、足りない記事はやはり足りない。

似たようなことだが、キュレーションメディアはカスタマイズが出来すぎてしまうので、社会人として最低限必要な知識すら読まずに済むことができてしまう。これがよく言われるフィルターバブルを生む。せめて見出しくらいは飛ばさず必ず目に入るような構造にすべきである。

つまり、以上のようなことを解消してくれるキュレーションメディアがあれば、新聞を止められる。それはこんなものになるのだろう。

  1. 基本的なUIはFlipboardに似ている。つまり、縦フリップによるページめくりが基本だ。
  2. 但し、トップニュース2枚、政治2枚、経済2枚、スポーツ1枚、芸能1枚、地域1枚といったようにページ数は決まっていて、各々の枚数内には重要度の強弱により記事の大きさが異なるレイアウトがされている。また、ページ位置(何ページ中何ページ目)がわかるように常に表記されている。当然、ページ数はカスタマイズされていてよいが、最低限のページ数は決まっている。逆に言うとタブはなく、前から順番に読んでいく必要がある。
  3. 気になる記事は詳細をタッチすると更なる解説が入っている。戻る時は左スワイプする。
  4. ニュース以外のコンテンツ(上記)も充実している。
  5. 特に、地域のチラシが含まれていて、そのチラシもスマホ画面サイズに最適化されている。
  6. 曜日により特別ページが増える。週末の特集記事など。

技術的に難しいところは何も無いと思う。ただ、チラシについてはShufoo!のような前例はあるものの、新聞に挟まっているもの全てが掲載されているわけではなく、まだ網羅性が圧倒的に足りていない。これはチラシがローカルで募集されているからでもあるので、チラシの集め方に更なる工夫は必要である。

2025年11月6日木曜日

外国人共生DX

 
クルド人と地元の人たちとのトラブルに見られるように、日本で外国人排斥運動が起きている。

世の中は近年、融和より対立を好んでいるように見える。その代表は右翼対左翼で、トランプや安倍のような対立を煽る風潮の流れを汲んでいる。生活保護者への批判、女性女系天皇、憲法改正などでも同様の構図が見られる。話し合いではなく拒絶と罵り合いで対応する、という方向だ。陰謀論の台頭さえ、この延長と感じる。外国人排斥もこの一つなのだろうが、これらが望ましくないことは言うまでもない。

もちろん、相手方(この場合はクルド人)に全く問題がないわけではないので、双方が双方を理解する努力は必要である。そしてそれにはコストが掛かるので、それをICTの力で省力化してやろう、というものが、タイトルの「外国人共生DX」である。

字面だけ見てイメージできることは、大きくは二つだろう。第一は、翻訳や解説などによって、日本における行動や手続きを「補助」するシステムだ。翻訳はすぐわかるだろうが、例えば、外国人が土葬をしようと手続きを調べても、そもそも日本の自治体には土葬をすることが頭にないため、「手続きが存在しないことが明示されていない」。ただ「手続きがない」と言うだけではなく、文化的背景の違いを補完して説明してやらないと、それが分からないし、更に「ではどうすればよいか」も補佐してやる必要がある。そういった、既存のシステムに対する「前段」を用意するものだ。

第二は、「異文化理解システム」である。これは広い意味でのEMS(Education Management System)であって、教育コンテンツが異文化理解やコミュニケーション、問題解決能力、調整力、日本語教育、等であるものだ。座学が大部分だろうが、VRやシミュレーションなども取り入れられるだろう。

第一は直ぐにでも着手できる。ここには生成AIが大いに活躍するだろう。つまり、きっちりした説明体系を作るよりは、生成AIに臨機応変に説明させる方が早いと思われる。

問題は第二の方で、単に教育コンテンツを揃えれば良いだろうというものでもない。そもそも何を教えるのか、その到達度や評価をどうするか、また宗教や思想信条の衝突に対してどう考えるか、など、難しい問題が山積している。

例えば、ゴミ出しルールを教えたとしても、それをどの程度律儀に守るべきかについての思想が違っていたら、あまり効果はないかもしれない。また、日本人の方が学ぶべきこともある。「ここは日本だから何から何まで日本のルールに従え」と言うのも違うと思うからだ。特に宗教観の違いは強烈であり、日本人の目から見ていくら非合理的であっても尊重すべきものはある。場合によっては国際問題に発展する危険すらあるものだ。

コンテンツの多くは、マナーや不文律、暗黙の了解といったものを明文化するものになるはずだ。だがこれは、日本人にとっても異論が続出する可能性がある。マナー警察のようなXX警察も、その逆もいるはずであり、バランスを取るのは難しい。それそのもの(過剰な指摘とその反発)も日本の文化であるかもしれない。

外国人共生のために日本人も学べ、と言われると、反発する人も多いだろう。それを説得し教育させるのも、このEMSの役割である。そのためにはもっと広く、国や人種を問わない「基礎的な人間力」という入り口を作った方が良いかもしれない。さらに言えば、これは義務教育とシームレスに連携したり(たとえば道徳教育の一部として取り入れるなど)、あるいは生涯教育として国が主導したりする方向性も考えられるのではないか。だがそうするとまた一部の左翼が「洗脳だ」「思想を強制するな」などと騒ぎ立てるかもしれない。というわけで、色々と難しいのだ。

そういった「中身」についての議論は百出だろうが、ICTを活用したシステムとして必要なものが何かは、これとは別に考えることができる。

  1. 単一の点数ではなく、複数の視点を持つ総合的なスコアを出すシステムであること
  2. 思想信条の違いや正解のない問題に対応したシステムであること
    1. 個々の問題に正解を出すのではなく、話し合いや協調、問題解決に向けた姿勢を問うものとすること
  3. 個々人の思想信条を類推できないようプライバシーに配慮したものであること
  4. ある程度公的なバックグラウンドを持つものであること
    1. 世界的にもそれなりに認められるものであること
    2. 公務員採用試験の条件やスコア加算に(将来的に)採用され得るものであること
    3. マイマンバーによるオンライン資格確認システムに(将来的に)対応すること
  5. 座学だけでなく、VRシミュレーションやロールプレイなど、ある程度総合的な視点を持ったコンテンツであること
  6. 外国人だけでなく、日本人も対象とすること
  7. 無料ないしは極めて安価に学習できること
  8. VC(Verifiable Credentials)、DIW(Digital Identify Wallet)への対応
  9. 日本人によるフィードバックと定期的な改正・改定、そのための大原則、更にはそれらの適正性を恣意的でなく監視するシステム
    1. 異論があるものについて、書くこと自体をタブーとするのではなく、個々のコンテンツへの合意度まで含めて明文化する
    2. 両論併記はもちろんだが、その温度差についても記述する

コンテンツ自体の評価を恣意なく行うために、世論を生成AIで評価して付け加えるというのは面白い試みだと思う。これも複数の指標をスコアにしてレーダーチャートを作り、総合スコアを出す、というものになる。指標の候補としては「制度的裏付け(法律など)」「社会的普及度(実際にどの程度守られているか)」「専門家の見解」「世論調査の結果」「地域格差」などが考えられる。特定のコンテンツ(道路へのポイ捨て)に対してこのスコアがこの程度、というものが広範囲に列挙されていたら、外国人の理解も進むだろう。そしてその外国についても同じ評価があれば、両国の違いが浮き彫りになるはずだ。そしてこれらは生成AIで簡単に作ることができる。

日本語は、翻訳アプリが発達しているため、実はあまり重要ではない。ICTで補完できるものは除き、本質的にコンテンツとして教えるべきものに厳選して、基礎・応用・高度(異論のあるもの、より良いマナーなど)とレベル分けして、スコアを出すようなアプリがあれば、外国人受け入れのハードルは大きく下げられるのではないかと思う。

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