2025年2月24日月曜日

砂の船

 


免震構造については過去いくつか提案しているが、これの新しい版である。

以前、難燃性の油の上に浮かべた船の構造を提案したことがある。あれの砂版である。つまり、砂のプールを作っておいて、その上に浮かべるというものだ。砂が抵抗となって振動を軽減する。

ただし、油や水と違って砂の抵抗は大きいから、工夫が必要である。まず第一に、砂は砂漠の砂を使う。砂漠の砂はコンクリートの骨材としては使い物にならないが、その理由は粒の角が取れて丸くなっているため、引っ掛かりが少ないからだ。つまり固めても割れてしまう可能性が高い。しかし免振に利用する場合、この欠点はむしろ好都合になる。

もう一つの工夫は、普通の船ではなく水中翼船方式にすることだ。つまり、砂の内部に浮力を持つ空洞の構造(浮き)を作っておき、地上との間は柱で支える。こうすることによって、砂の抵抗は空洞構造と柱が引き受けることになる。この二つの構造の大きさを調整することで、砂の抵抗を適度なものに調整することができる。例えば空洞構造と柱を兼用にした縦長の柱を作っておくとか、空洞構造のみを砂に埋めるとか、あるいは砂に難燃性の油を混ぜて抵抗を調整することも可能と考える。

ダンパーや積層ゴムなどの免振構造と比べると価格は安いように思われるが、砂プールの深さと柱・空洞構造の費用を計算してみないと費用対効果は分からない。トータルで安いとなれば、構造は単純なので普及が期待できる。また、この柱は地熱冷暖房と兼用できるので、そちら方面での応用もできるはずだ。

欠点として考えられるのは、揺れた後、必ず中央(当初の位置)に戻るのが不可能であることだろう。いくら砂の上に「浮いている」とは言っても、浮力だけで砂のプールの中央に戻れるほどの力は働かないはずだ。また、浮力を使っている以上、平屋建てを後から二階建てにするといったような、地上部の重量が大きく変化してしまう改築は困難である。もしそれをすると、揺れたときに沈んでしまう。

2025年2月21日金曜日

マニュアルエージェント


生成AIの話題が盛んであるが、最近はエージェントの方に話題が移ってきているように思う。このエージェントというのは、生成AIを少し加工して、特定の目的に向けてカスタマイズをしたようなものだ。エージェント開発ツールの例としては、ChatGPTのOperatorやMicrosoft Copilot Studioなどがある。

これを大雑把に説明するならば、三つの種類がある。第一は、検索型とでも言うべきもので、(深津式プロンプトのような)前段の命令をあらかじめ与えておくものである。指定する知識(要するにオンラインドキュメント)を前提として答えること、あるいは特定のキーワードに対して特定の返し方をする、というものだ。例えば「怪しいメールを受信したのだがどうしたらよい?」という質問に対し、生の生成AIなら「見ずに捨てる」などと返すだろうが、これが企業のヘルプデスクだったら「特定の部署に通報する、報告書を書く」などとルールがある場合があり、そう返すべきだ。それを行うには社内規則を読んでおく必要があるが、そういうものを指す。

第二は、ノーコードツール型とでも言うべきもので、単に受けて応えて終わりではなくて、ワークフローを起動する機能があるものだ。曖昧な言葉から変数となるキーワードを抜き出し、あらかじめ定めておいたルーチンを実行する。怪しいメールの例で言えば、話を聞いたら通報すべきと判断し、そのメールをドロップしてもらった上で、通報を自動実行してくれるようなものだ。

第三は自律型とでも言うべきもので、第二のワークフローを特定の条件で自動実行するものだ。上の例で言えば、怪しいメールが来た時点でそれを識別して、通報を自動実行するワークフローを起動する。

こういったものは、今後数年で急速に普及し、世の中を便利にしてくれるだろう。特にヘルプデスクの類は大いに重宝するはずだ。

これの応用で、各社が今すぐ対応してほしいと思うのが、マニュアルエージェントだ。

すでにいろいろなところで言われている通り、日本の家電は機能が豊富でマニュアルも分厚い。UIもあまり賢くない。このためマニュアルを読まずに使おうとする人は多く、読めと言われても読まない。これで身近なちょっと詳しい人が呼び出されて説明したり対応したりする、という事態が全国で起きている。

だが、上のようなエージェントがあれば、質問すれば音声で返ってくるし、故障なら手続きをある程度自動実行してくれるから、豊富な機能が無駄になることもないし、故障時や不具合時の対応時間を大いに低減できる。更に言えば、その機器の使い方についてのアドバイスも受けられるだろう。もったいない使い方をしているユーザに、機能の説明をすることができる。

いっそ、紙のマニュアルは廃止し、マニュアルエージェントへのURLをQRコードで本体に貼ってくれていれば良い、あるいは機械にスピーカとマイクを付けてネットに繋げばOKとしてほしい。

これは例えば、消耗品の手配を大いに促進するので、機器の寿命も伸びるし、ユーザも機器を放置することなく使い続けられる。高機能の機器を積極的に買おうとするモチベーションにもなる。

2025年2月10日月曜日

AIがあるから勉強は不要?

 


自動翻訳があるのだから英語の勉強はいらない、というのは、英語の勉強が苦手な学生がよく思いつく疑問だ。これと同じように、AIが発達すれば何でもAIに聞けば良いのだから勉強全般が不要になる、という人もいる。もちろんどちらも(少なくとも当面の間は)間違いである。

その理由は二つある。第一は、AIの誤りや悪意、AI制作者の恣意などを見抜くことができなくなるからだ。そして第二は、AIの出力自体を理解する能力が失われてしまうからだ。

第一は割と分かりやすいと思うが、識者でも第二を見落としがちなので注意が必要だ。そしてどちらが本質かというと、第二である。

例えば数学において、足し算引き算は自分でできるが、掛け算割り算は難しい、という人がいたとしよう。その人は「掛け算割り算はAIに尋ねれば良い」とうそぶいて、自分で勉強しようとしない。さてこの人が、微分積分をせよと言われたらどうだろう。

知識は階層化している。ある知識を前提に、次の知識が成り立っている。その知識を前提に、更に次の知識が成り立っている。この図式は単純な層ではなく、実際には網目のように複雑に絡み合っている。そういう知識の網の中で、自分が理解しているのはごく一部だ自分の知識の範囲から少し離れたところなら、AIにたずねても理解できるだろう。だがそこから遠く離れた知識は、概念のレベルで理解できない。そうであれば、その知識周りの会話や議論には、いくらAIがあっても理解できないし、その知識に関する質問や疑問は最初から湧いてこない。

つまり、聞く側にも技量が必要だということだ。AIが答を持っていてもそれを引き出せないなら、その人にとってその知識はないのと同じである。だから、高度な質問をできる人間の方が有用である、というのは自明だろう。

英語のケースは当てはまらないのではないか、と思う人もいるかも知れない。だが、例えば「What is the longest word?」「smiles」というのを直訳してしまうと、そのジョークの意味は失われてしまう。この場合、最初のsと最後のsが1マイルもある(s+mile+s)というのがその意味なのだが、このような(他国語の)単語遊びの他、他国の文化的背景や歴史的背景、地理的背景を知らないと意味がわからない、というようなことは、翻訳では普通に起きる。そこまで含めてAIに訳させるというのもまあアリとは言えるのだが、そんなことを日常的にしていたら、前段の解説ばかり長くなって、鬱陶しいだけだ。

さて、上で(少なくとも当面の間は)と言ったが、遠い将来はもっといびつなことになるかもしれない。つまり、AIを使いこなすのに必要な知識レベルにたどり着けない人間は、ある程度の線引きで無視される存在になってしまうだろう、ということだ。人間の生産性はAIを使いこなせるほど高くなるが、その能力差があまりにも極端になってしまうからだ。たとえば、AIを使いこなせる人間は、使いこなせない人間一万人が束になってもかなわない、となってしまう。であれば、使いこなせない一万人をクビにして、使いこなせる人間を千人分の給料で雇っても、会社は利益が出せる。

クビになった一万人は、どの会社に行っても就職できない。AIを使いこなせる一人だけで十分だからだ。働けるのに仕事がない、というのとはちょっと違う、新しい意味での就職難がやってくることになる。

更に言えば、AIが高度になるにつれてその必要知識は増えていき、そこにたどり着けない人間の比率はどんどん上がっていくであろうと考えられる。そうなると、ごく一握りのエリート以外は皆スラム、というディストピアになってしまう。

エリートは単に贅沢な暮らしをしているだけではなく、スラムの人からは想像すらできない超高度な仕事を日々こなしていて、その成果のおこぼれでスラムを生き永らえさせていることになる。古典のSFではスラム街から反乱分子が出てきてエリートを乗っ取るのだが、現実にはそうはいかないだろう。スラムの人とエリートの知識差は圧倒的で、いくら真剣に反乱を計画してもエリートにすぐに対策されてしまうだろう。しかも、もし反乱が成功してしまうと、スラムを支えていたエリートが倒されてしまうのだから、たちまちスラムも廃れてしまう。彼らにはその理由すら想像できないまま滅んでしまう。

スラムを生き永らえさせることに意味はないのでエリートはスラムを潰してしまうのだろうかというと、それはできない。なぜなら、エリートから生まれて幾ら勉強させても、エリートに達するのは極めて困難だからだ。エリートかスラムかに関わらず、子供には英才教育を受けさせ、どんどん淘汰していくしかない。それでエリートの数を確保するには、スラムで母数を稼ぐ必要がある。

つまり、大部分の人間は生かして頂くことをありがたく受け止めて貧困を我慢し、一部のエリートは彼らを生かすためにその叡智の大部分を使わざるを得ない、という世界に甘んじるしかないのだ。

あと5年10年という短時間で、AIの賢さは、あらゆる意味で並の人間を超えるだろう。それにショックを受けてあるいは自暴自棄となって、日々の勉強を怠ってしまう人は出るかもしれない。だがそれはスラム行きの第一歩なのだ、ということは心しておいて欲しい。

2025年2月7日金曜日

中小企業への電子化の強制


高齢者1人を支えるのに若者1.5人、なんて数字も出てきている年金問題だが、これを解決する方向は基本的には三つしかない。第一は若者の比率を増やすこと、第二は労働者の効率を上げること、第三は高齢者の待遇を落とすこと。たったこれだけである。全ての施策はこのどれかに対応するものであり、後は程度問題だ。

では各々のKGIはどうあるべきかというと、第一は合計特殊出生率2.1(現在は1.2)、第2は現在の2倍、第三は医療・介護補助の半減(結果として平均寿命は縮む)、というレベルではないかと思う。そしてこれらはどれか一つないしは二つを行うのではなく、三つ同時に行う必要がある。第三はかなり反対が多いと思われるが、それほど日本の状況は逼迫している。第三の施策をせずに済むためには、第二の施策のKGIのハードルを更に上げる必要がある。例えば3倍、4倍だ。そしてこれは非現実的と言える。

それを敢えてやろうとするのなら、方法がないわけでもない。それは極端なIT化、そしてそのITの標準化だ。極端ということは即ち、強制することを意味している。つまり、様々なフレキシビリティを排除し、全体主義的な、画一的なIT化を行うのだ。

具体的には、従業員千人以下の中小企業に対し、商取引、資産管理、納税、出納などといったシステムを強制的に使わせるようにする。またその仕様は統一する。国(デジタル庁など)が仕様を作成して、各ベンダに強制する。

従来の考え方では、電子化すること自体が各企業の自由であるし、採用するとしてもそのベンダや仕様はやはり企業の判断である。それを強制的に一種類にするというのであるから尋常な施策ではない。抵抗も大きいだろうし、法的根拠も不明だ。

では、そうすることによって何が起きることを期待するのか。これは簡単な話で、これら全てが完全に電子化する。完全とはつまり、例えばプリンタやスキャナは一切不要になるし、データ変換も不要、書類は全て電子化、また粉飾決算など不正も極めて困難になる。確定申告などの必要書類も全て電子化され、様々な自動化も進むことになる。手順も全て統一されるので、一度覚えてしまえば転職しても問題なく使える。

役所でも何でもそうなのだが、電子化するなら完璧にすべきだ。中途半端な電子化は結局アナログとの両対応になり、かえってコストが掛かってしまう。上で言うなら、プリンタやスキャナが必要か不要か、という差である。一つ一つは大したことなくても、日本全体でそれができるのなら、その効率向上の程度は飛躍的に向上する。

ただもちろん、プリンタやスキャナを作っているベンダには大損害だ。それこそ潰れてもおかしくない。それでも効果が膨大なら、それは妥協すべき問題である。補助金でも転職斡旋でも付けて、倒産してもらったほうが良い。

中小企業の生産性は、大企業の半分以下だと言われている。その理由の一つは、こういった電子化の遅れなのだが、なぜ遅れているかと言えばお互いがお互いを見合っているからだ。つまり、取引相手に相手にされなければ効率は上がらないし、電子化していても仕様が違っていればそこで事務作業が増える。これを一気に強制的に電子化すれば、その憂いが無くなる。これが狙いである。

これらは相乗効果を生むので、大企業との取引においても効率化が進み、全体として二倍を超える効率化が期待できる。

企業数で言えば99.7%、労働者人口で言えば70%が中小企業なのだが、売上規模は大企業の半分しかない。もしここが倍になれば、GDPはいきなり100兆円増えることになる。三倍なら200兆増える。大企業もこれほどではないが追従すると考えると、両者合わせて300兆くらいは改善できそうだ。

そのために犠牲になるのはシステムの多様性だ。これは言わば共産主義のようなもので、貧しい者の戦略とも言える。だが背に腹は代えられない。健全性の前に死活問題を回避することが必要である。

似たようなことは、あらゆる業界に関して考えることができる。紙の書類のサイズを統一するとか、服の種類を減らすとか、物流の通函のサイズを統一するとか、色々だ。だが電子化はその中でも優先順位が高いと考えるべきで、その理由は効果が高いからだ。完璧な電子化でなくとも、例えば決算システムだけは統一する、とするだけでもかなり違う。

強制力という意味で民主主義と相容れない施策であるので「積極的に進めるべきだ」とまでは言わない。だが背に腹は代えられない。そこまで日本は切羽詰まっているという自覚が足りないのではないか。国は真剣に、中小企業の電子化推進を検討すべきである。

2025年2月6日木曜日

車椅子社会の実現

 以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2020/12/vr_23.html

という投稿をしたことがある。メタバース空間を、全て車椅子前提で設計してしまおう、というものだ。こうすることによって、人は机に椅子、キーボードとマウス、という状態で、メタバース上で一日中過ごすことが可能である。その上で、メタバース上の広大な空間を行き来することが可能だ。

これをもっと進めると、実社会も全て車椅子で移動するようにできないだろうか。今の社会は歩きがデフォルトで車椅子が例外だが、これを逆転するのである。これについて少し考えてみる。

この場合の車椅子は、机とノートタイプPC、移動のためのジョイスティックを備えた、電動のインテリジェントタイプである。これでどこへでも行けなければならないので、当然ながら坂道は極力無くし、階段は廃止、トイレも広いものしか赦されない。電車や飛行機、自動車などの乗り物は設計のし直し必至、更には道路や家なども設計し直しになる。

というわけで、これはさすがに無理だ。だが、大規模なショッピングモールとそれに併設するマンション、といった形なら可能だろう。これは以前

https://spockshightech.blogspot.com/2024/10/blog-post_31.html

として紹介した街を、更に車椅子前提で設計するようなものになる。この場合、家や教室、事務室などのサイズは更に広くなるが、天井は若干低くて良い。それ以外に大きな変更は必要ない。

この世界で実現できることは、フレキシブルシティ構想で提案したような「完璧な人流・物流の自動化」「完璧なラストワンマイルの実現」と考えてもらって問題ない。これに加え、「車椅子前提メタバースとのシームレスな接続」もできるようになる。

例えば、普段は普通に学校に通うのだが、感染症が流行した際には、全く同じような教室メタバースに「登校」することで、支障なく授業を続けることができる。先生や友達の顔がアバターになってしまうが、視線や移動の仕方が全く同じなので、違和感を低減することができる。

また、観光旅行を計画していて、それが何らかの不具合で中止になってしまったとすると、旅行会社はVR体験で次善策を打つことができる。天候不順などのときでも同じような対処が可能である。

逆に、旅行や出張などの出先で、自宅や会社に用事ができてしまったとしたら、現地でXRグラスを装着してVR空間に入り、仮想的に自宅に戻ることもできる。現実を反映した空間にしておくことで、例えば忘れ物の位置まで把握できるだろうし、書類がどこにあるかも探せるだろう。

また、街に出ていて道に迷った時、一時的に仮想空間の同じ街の同じ位置にジャンプして、そこで検索を掛けたりAR表示をしてもらったりして場所を確認した後、現実空間に戻って移動する、といった芸当もできるようになるだろう。

だが、隠れた真のメリットとでも言うべきことがあって、それは「車椅子使用者の真に公平な扱い」である。現代社会は歩行がデフォルト、車椅子は例外の扱いだが、この社会では車椅子がデフォルトなので、既存の車椅子使用者は例外からデフォルトに変わる。トイレや移動の不便が無くなり公平になるので、逆に不慣れな新米を尻目に活躍できるだろう。

フレキシブルシティのような街を作って、そこに車椅子ネイティブな人を誘致する。その街は車椅子の人でも普通に生活でき、普通に仕事ができ、普通に勉強ができ、普通に医者に掛かることができる。車椅子生活をしている人は、日本の人口の1.6%ほどいるという。その多くは、普段の移動に苦労しているはずだ。そういう人が普通に活躍できるだけで、日本のGDPの1%くらいは追加で稼ぎ出してくれるのではないかと期待できる。投資対効果としては十分である。

2025年1月27日月曜日

軸性近視とVR


近年の若年層からの近視の増加傾向は、生活スタイルの変化と関係があると言われている。つまり、外を出歩かず、窓も締め切り、外出してもスマホばかり見ているという、要するに近くばかり見ている生活がその一因である。これは学術的にも証明されていて、外に出歩く機会が多い人ほど軸性近視の確率は少ないという結果が出ている。

今後また、遠くを見る機会が多い生活に戻ることはないと思われるので、禁止の割合も増えていくだろう。そして近視も進み過ぎると矯正不可能になったり頭痛の原因になったりするので、ここは何とかしたいところだ。

そこで考えることなのだが、生まれてからずっとVRゴーグルを着けて生活すれば、この傾向は低減できるのではないだろうか。

VRゴーグルのピント調整は、無限遠が基準になっている。つまり、VRゴーグルで近くのものを見ても、ピントは無限遠のままなのだ。だから、窓を閉め切ってカーテンを閉めていてもピントは無限遠、スマホを見ても無限遠なので、軸性近視の低減にはなるのではないかと思うわけだ。

一日中というのは大げさと思うかもしれないが、近い将来、大人でも一日の大半をVRゴーグルを着けて過ごす時代は来るかもしれない。VRゴーグルが十分に小型軽量化し、無線給電が確立するという条件は必要だが、そうなればゴーグル内で仮想PCや仮想スマホを使えるから、ピントの問題は解決してしまう。

特に現代の子供は、昔のように野原を駆け回って遊ぶことは無く、むしろ塾通いで夜遅くまで近くを見続ける生活をしている。教科書や参考書なども仮想空間に持っていけば、ピントの問題は解決する。もちろん他のメリット(在宅で参加できる、荷物が少なくなる等)も出てくる。

少なくとも勉強を全てVRでやるようにすれば、軸性近視はかなり抑えられるのではないかと考える。この視点からも、教育のメタバースへの移行は推奨できる。

2024年12月13日金曜日

少量多品種植物工場

 植物工場で少量多品種栽培をしたいと思った時に困るのが、環境制御だ。植物の生育に最適な条件は植物によって異なり、しかも成長の過程でどんどん変わる。このため、既存の植物工場では複数の種類を並行して栽培することができない。環境のコントロールは皆一斉にやる必要があるからだ。これを解消するためのアイデアが、今回のテーマだ。

まず、密閉容器を多数用意する。イメージとしては、ドラム缶よりは小さいがペール缶よりは大きいものだ。ドラム缶は200L、ペール缶は20Lだが、50L〜100L程度が良いのではないかと思う。一般的な段ボールが50L、ミルク缶が100Lくらいなので、この程度のサイズ感だ。例えば、JEJアステージ NCボックス #45 (幅38×奥行54.5×高さ32cm) は66Lである。これを幅120、奥行45、高さ180cmのスチール棚に載せると、最上段1段を制御装置やリザーブタンクに充てる前提で、4段8箱を設置できる。

この容器の一つ一つについて、断熱し、環境制御装置を付けて、中の環境を制御する。具体的には、照明用LED、紫外線ランプ(殺菌)、温度センサ、ヒーター、換気ファン、ポンプとリザーブタンクと水位計(水と肥料水)、カメラ、ECセンサ(肥料濃度)、無線LAN、及びこれらを制御するワンボードコンピュータで構成する。また、全体を監視するサーバと繋がり、異常通知や収穫時期の通知を行う。

電源や水、液肥等の密閉容器への供給については、棚側に配管し、接続できるようにする。また、排水は行わず、給水のみで制御する。これによって、容器下部は穴あけ加工せずに済むので、水漏れの心配がなくなる。

人手の作業は、最初に土と種(苗)をセットしたら棚に載せるだけだ。後は育成が完了するまで放置する。収穫時には容器から通知が来るので、棚から下ろして収穫する。

棚は単一の規格、密閉容器も単一の規格で作り、環境だけプログラムを変えてやれば、幾らでも種類を増やすことができる。

小さい容器を多数使うことで、例えば葉物と根菜と芋を同時に育成したり、育成に長く掛かる作物でも時期をずらして作成することで通年栽培できるなど、メリットは色々と考えられる。

一方、このプランの弱点は無論コストである。密閉容器一つ一つはいわば小さな植物工場であり、単価は数万円といった程度だろう。これで寿命が10年だとしても、機械だけで消耗費が年間数千円になる。野菜を年に数サイクル作ったところで回収できるものではない。

なので、これが活躍できるところは、島嶼部や陸の孤島のような僻地、長期航行する大型船、宇宙船や宇宙ステーション、核シェルターなどの隔離される空間である。マーケットは大きくはない。

これが単価数千円にまで落ちれば、爆発的な需要が生じる可能性はあるだろう。このためには機構部分の集積化が必要である。つまりカメラ、センサ、CPU、照明部分がワンチップないしはせめてワンボードになることだが、可能性はないわけではない。今でもラズパイやM5のようなワンボードコンピュータはあり、数千円のものもある。そこに命を懸ける価値はあるだろう。

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