非常用トイレの構想は過去に何回か書いているが、ここで考えるのはもっと現実的なもので、極端な話、明日大震災が起きても使えるものだ。知恵として覚えておいて欲しい。
非常用トイレとして、高分子吸収剤によるものが市販されている。これは赤ちゃんのおむつや生理用品などと同じく、水分を吸収することで腐敗を押さえ、液状のものを固定するものだ。だがこれらは二つの大きな欠点がある。第一は高いランニングコスト、第二は大量の保管スペースが必要なことだ。
非常用トイレの例として、アマゾンのベストセラーである「トイレの女神プレミアム」は、調査時点で100回分が7000円である。つまり1回70円。成人のー日の平均排便排尿数は7回なので、一日当たり490円掛かる計算である。それをビニール袋に入れ、凝固剤を入れて固めると、ビニール袋に入れた排泄物の体積は1日で5L程度になる。家族4人なら20L、ペール缶1つ分だ。つまり毎日ペール缶1個が増えていくことになる。南海トラフ級だと下水復活には月単位で掛かると思われるが、これで30日過ごすと
- 30日x4人x7回=840回
- トイレの女神9箱=63000円
- 20Lx30=600L (ユニットバス2~3杯分)
と、けっこうとんでもない量になる。多くの人はここまで考えていないだろう。100回分を1つ買って安心している程度だ。
この問題を解決するために有効なのが、バイオトイレないしはコンポストトイレと言われているトイレである。トイレにも色々な方式があるが、震災時に使い物になるのはバイオトイレだけだ。その理由は、微生物分解による減容にある。
バイオトイレは、おがくずの上に排便し、その後おがくずを撹拌して放置する。すると微生物の作用で便が分解され、水蒸気とガスになってほとんど消失する。このため、廃棄物の体積を極端に少なくできる。
だがこのトイレにも欠点はあって、第一は大量のおがくずが必要なこと。第二は排便後の撹拌が必要なことだ。非常時に備えて大量のおがくずを用意するのは現実的ではないし、撹拌機能を持ったバイオトイレは20万円もする。
これらを踏まえた本稿での提案は、以下のようなものだ。
- 事前準備として、丈夫なビニール袋を用意しておく。これは「業務用」「極厚」などのキーワードで調べれば直ぐに見つかる。大きさは45L。これは一般的なゴミ袋と同じサイズである。ただ、非常用のポータブルトイレ(折りたたみ式など)を持っている人は、20Lの方が良いだろう。気分の問題ではあるが、濃い色のもののほうが良い。枚数は、最低で3日分として、人数✕21枚。4人家族なら84枚だ。1週間分として200枚あれば足りるだろう。なお、持ち手は必要ない。
- 丈夫でないビニール袋でも代用はできるが、丈夫なものであることが望ましい。理由は後述する。
- もう一つ、事前準備として望ましいのは、手回し式のシュレッダーを買っておくことだ。これは通販で数千円で買うことができる。
- 当然、電源確保が困難と思われる中では、手動式一択である。
- シュレッダーには縦方向しか切らないものも多いが、この場合には横方向も切る、いわゆる「クロスカット」と呼ばれているタイプにする。更に「マイクロカット」といわれる、くずのサイズが小さいものがオススメである。
- もしなくても、ハサミと根性があれば何とかなる。
- 非常用の折りたたみトイレなどは、あれば便利だが、なくても問題ない。普段使用のトイレを流用できる。
- 災害が発生したら、シュレッダーくずを作る。分量は、一日分として人数✕8.4Lである。これをとりあえず3日分作る。家族4人として、3日分で約100Lになる。これは一般的な段ボール(50L)で2箱分になる。
- できれば光沢紙は避ける。ビニールコーテイングしてあるものなども好ましくない。つまり、新聞紙や週刊誌は適しているが、折込チラシは適していない。
- シュレッダーがない場合は、これをハサミでやることになる。これが根性が必要な所以だ。
- トイレには件のビニール袋を被せておく。やり方は他の非常用トイレと同様である。
- ここに、あらかじめコップ3杯分、約600mL程度のシュレッダーくずを入れる。
- その上に用を足す。そしてまた600mL分のシュレッダーくずを入れる。
- シュレッダーくずの量は、個人差があるだろうし、大と小でも違うだろうから、様子を見ながら加減する。
- 入れ終わったら、ビニール袋の口をすぼめて持ち、もう一方の手で排便をシュレッダーくずとよく混ぜ合わせるように揉む。
- 「丈夫な」ビニール袋を使う理由はここにある。万一破れたら悲惨な目に遭うからだ。また後述するように、繰り返し使うためでもある。
- よく混ざったら、口を開けたまま、できるだけ温かい場所に放置する。トイレには次のビニール袋を被せる。
- 口を縛ってはいけない。水蒸気が抜けるようにする必要がある。
- このビニール袋は、数日放置している間に発酵し減容する。ある程度減容したら再利用する。この際、様子を見てシュレッダーくずを継ぎ足す。
- 目安は、糞便臭がなく、水分が適度に抜けている状態である。土と同程度かそれ以下が望ましい。
- 発酵減容が何日掛かるかは、季節によっても変わる。夏場は速く冬場は遅い。加熱できるバイオトイレの場合は一日で終わるそうだが、加熱がない場合は数日から1週間程度は掛かると思われる。なお、発酵中は発熱するので、ビニール袋同士は寄せて置いたほうが良い。
- ビニール袋が一杯になったら、やはり数日放置し、糞便臭がなくなったら土に還すことができる。これは有用な肥料になる。
- なお、通常時は燃えるゴミに出せる。中身のみトイレに流すのもOKだろう。
要するに、バイオトイレで使うおがくずをシュレッダーくずで代用する、というアイデアである。シュレッダーくずの原料は紙なので、おがくずと同様の効果が期待できる。そして紙は現代社会のいたるところにあるので、あらかじめ準備しなくてよい。また、バイオトイレでは専用の撹拌レバーがあるが、これを手動で行うことにより、高価な専用のバイオトイレを買う必要もなくなる。
バイオトイレの場合、毎回おがくずタンクの全量と混ぜてしまうのだが、これを一回分ごとに小分けにするというのもこのアイデアの特徴だ。バイオトイレの場合、毎回全量と混ぜるが故に、おがくずタンクの量で使用可能人数の上限が決まってしまうのだが、このアイデアの場合は毎回入れ替えるため、何人でも対応できる。
一般的な非常用トイレに比べて手間は掛かるのだが、発酵による減容という特徴により、ある程度で保管場所の増加が止まる点が大きな違いだ。もし3日で減容が完了するとなると、ビニール袋の分が増えるとしても、家族4人で200L程度で頭打ちになる。これはユニットバス1杯で納まる程度である。
またこの応用として、市販されているバイオトイレ用の発酵促進剤を混ぜてやると良いかもしれない。これも通販で買うことができる。

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