2026年5月28日木曜日

差別するAIをチェックする方法

 先日上梓した

差別するAI

だが、その差別の程度を検知することもまたAIで可能である、と考える。そして検知可能であれば是正(少なくとも勧告)はできるはずだ。

そこでまず、現実の判例を生成AIに分析させたところ、ある程度の定量化ができた。

最初に痴漢冤罪。


① 一般的な犯罪(例:傷害罪・物証なしの口論からの暴行主張) 
    •原告の主張(被害主張): 約 50% ~ 60%
    •被告の主張(否認主張): 約 40% ~ 50%

② 痴漢事件(物証なしの密室・車内)
    •原告の主張(被害主張):約 95% 以上
    •被告の主張(否認主張):約 5% 以下


次に上級国民問題。


① 一般国民の主張(否認・弁解)
    •一般(「車が暴走した」「知らなかった」): 約 10% ~ 20% 以下

② 上級国民の主張(否認・弁解)
    •上級(同上の主張、あるいは社会的影響力を考慮した弁明): 約 70% ~ 80% 以上


次に憲法判断。

対象となる憲法の条文 司法が実質的な違憲判断を行う重み(W) 実際の最高裁での違憲判決数(1947年〜現在)
憲法14条(平等権)
(一票の格差、国籍法など) 約 70% ~ 80% (比較的積極的) 計 4 件(違憲・違憲状態判決を含む)
憲法21条・29条など
(表現の自由・財産権など) 約 40% ~ 50% (慎重だが踏み込む) 計 7 件(薬事法、森林法など)
憲法9条(戦争放棄・戦力不保持) 限りなく 0% (極端な消極性) 0 件(本質的な違憲判断を徹底回避)

と、少なくとも恣意や偏見を疑うには十分な差があることが分かった。

ただややこしいのは、この数字だけを以て恣意やバイアスがあるとは言い切れないことだ。例えば、上級国民は一般国民より(事実として)証言の信頼性が高い、ということはあり得る。痴漢冤罪は多くの場合男性だから、証言の信頼性に関して性差がある、それも痴漢に関してのみ著しい差があるということは考えられる。

その点を含め生成AIと議論した結果、以下のような結論に達した。これは痴漢冤罪を例にした。


事実誤認や量刑不当を巡って争われた判決・決定において、『双方ともに客観的証拠(物証・防犯カメラ・第三者の目撃証言)が一切存在せず、原告(被害主張側)の供述と、被告(否認側)の供述のみが真っ向から衝突している事例』について分析する。

このような事例の判決において、裁判所が「証言の信頼性を判断した理由(ロジックの組み立て)」をテキストマイニングする。そして、その理由(ロジック)が同じもの同士を比較する。つまり、同じロジックならば同程度に信頼性を評価すべきであるが、量刑の種類(一般の犯罪と痴漢)によって極端に信頼性評価に違いがあれば、それは恣意ないしはバイアスと考えられる、というものだ。

これを生成AIにさせてみたところ、見事に二重基準(ダブルスタンダード)になっていることが分かった。それが以下の表である。

双方物証なしの状況で、原告証言を「合憲・有罪の基礎」とするための理由(ロジック) 一般の犯罪(例:密室での傷害・恐喝) 電車内の痴漢事件(密室・車内)
ロジック①:供述の「具体的詳細性」
(いつ、どの指で、どの角度で触れた/殴ったかの細かさ) 高(約 75%) 低(約 20%)

※細かく矛盾がないことを厳しく要求 ※「パニックで覚えていない」等の曖昧さも許容

ロジック②:供述の「迫真性・自然さ」
(感情の揺れや、体験者でなければ語れない臨場感) 中(約 40%) 極めて高(約 95% 以上)

※記述の大部分を占める
ロジック③:虚偽供述・誤認の「動機・可能性の不在」
(わざわざ嘘をつく/間違える理由がないという推認) 低〜中(約 30%) 絶対的な前提(ほぼ 100%)

※論理の出発点となる

おそらく憲法判断など他の問題でも同様だろう。新たなアーキテクチャを待つまでもなく、問題の種類による判決の一貫性欠如は証明された。これをもって判決文への不服申し立てをすることは可能だろう(勝てるとは思えないが)。

とここまで考えたところで、更に生成AIに対して質問をしてみた。世の中にはもっとひどい事実誤認やウソ・恣意、例えば陰謀論や偏見が溢れている。現代の生成AIはそういうものを学習しているのだから、ある程度ウソや論理的一貫性のなさについては補正する技術があるのではないだろうか。もしそうなら、判決文を鵜呑みにすることもないはずなのだ。

そこで返って来た答えは、学習データをスクリーニングすることと、学習後に人間が補正をすることなのだそうだ、だがこれは手間がかかるし、補正をする人間が大量に必要で、かつそこには恣意が紛れ込む可能性がある。

そこで、論理的一貫性を最初に学ばせるという手法が使えるのではないかと思い聞いてみると、それは有効だという。そこで思い出したのがDeepSeekだった。

DeepSeekは、学習の効率を高めるための画期的な方法が使われている。それは、ベースとなるAIに対し、まず最初(Web文書などを学習させる前)に、「数学の証明問題」や「コードのバグ取り」を解かせる、というものだ。ここで厳しく査定されたAIは、論理的一貫性を何よりも重視するAIに育つ。このため、その後に大量のWebデータを読ませても、ウソや恣意を敏感に見抜き、出力から排除する。これによって効率の良い学習が為された。その効果は百倍にもなったのだそうだ。学習コストが低いので、今後の生成AIはDeepSeek型が主流になる可能性が高い。

この仮説が正しいとすると、今後の生成AIでは、上にあったような裁判所の判決を「論理的一貫性に欠ける」と批判するようになるだろう。

一方で裁判所の作る「裁判官AI」は、今までの判決との整合性が求められるため、そのような生成AIをベースにした場合、追加学習ないしはRAGのような仕掛けが必要である。

この過程はすなわち「(矛盾する)現実に即して判決を捻じ曲げる論理」となるため、例えば「痴漢の場合は被告の証言の信頼性を95%にする」といった、いかにも怪しい指示(データ)が追加されることになる。

このRAGは当然司法のAIの学習用なので、強く公開が求められるはずだ。そしてその中身がそういった恣意偏見の塊だということが分かったら、国民は納得するだろうか。まずしないのではないだろうか。

だが、裁判所が自分の間違いを認めるのが極めて困難であることは、最近の再審制論議を見ていても明らかである。裁判所AIがどのようなチューニングになるのか、RAGは公開されるのか、これは非常に興味深い。

2026年5月26日火曜日

差別するAI

 

法曹界がIT化する、というのをニュースでやっていた。これは証拠のDB化や手続き等のオンライン化を含むもので、まあ真っ当な進化と言えるのだが、そもそも法律がデジタル化していないのは何なんだろう、さっさとプログラム化してしまえばよいのに、と思っていた。これは以前に、

法のプログラム化

としてまとめている。

だが、最近の国旗毀損罪の審議過程を見ていると、とても無理のような気がしてきた。つまり、法律は本質的に矛盾と恣意を含んでいるのが当然の状態であり、無理にプログラム(論理構造)に落とすとかえっておかしいことになってしまうのではないか、と思うのだ。

従来、法律は法学者が研究してきたが、これをAIが研究し出すと、Mythosよろしく数千のバグが2時間で発見されるだろう。このバグとは、以下のようなものだ。

  • 用語定義の不統一。名詞(自動車の定義が法によって異なるなど)はまだマシだ。形容詞(著しく、軽微な、)や動詞(みなす、努める、有する、など)
  • 適用の条件(XXとXXとXXをもって総合的に判断、など)があいまい
  • 論理構造の矛盾(参照循環や優先順位など)、あいまいさ(IF-THEN構造の解釈など)

理系の頭からすると、これは法律を直すべき(定義は明確にすべき、矛盾は無くすべき、など)なのだが、現在有効な法律は二千本、その他政令府省令などを合わせると1万近くもある法を全て矛盾なく記述するのは不可能だろう。現状の法律家(裁判官、検事など)はその矛盾(や隠れた恣意等)を清濁併せ飲んで、妥協して、法解釈をしているわけだ。

AIに法律を覚えこませる際、当然ながら現実を優先し、そのためには矛盾を(わざと)見過ごす必要が出てくるわけだが、それはつまり法に隠された恣意も肯定する、ということである。

有名な例だが、精神保健福祉法という法律がある。この中に、「措置入院」と「医療保護入院」という制度がある。

措置入院とは、自傷他害の恐れがある精神疾患患者を、都道府県知事の権限で強制的に入院させる仕組みでである。一方の医療保護入院は、指定医が認め、家族の誰か一人が合意すれば、無期限で強制入院させることができるというものだ。

現実問題として、この法律はかなり恣意的な運用が続いている。

日本の精神病床数は約30万床に上り、これは世界全体の精神病床の約2割を日本一国が占めている計算になる。さらに、その入院患者の約半数(約13万〜14万人)が本人の同意のない「強制入院(主に医療保護入院)」なのだそうだ。また、日本の精神科病院における平均在院日数は260日を超えており、OECD加盟国平均(十数日〜数十日程度)と比較して突出している。しかも、1年以上入院している患者が約13万人、そのうち10年以上閉じ込められている人が数万人規模で存在する。

国際的な目で見ればこれは明確な人権侵害である。実際、2022年9月、ジュネーブの国連障害者権利委員会は、日本政府に対して「総括所見(Concluding Observations)」を公表した。その中で、

  • 非自発的入院(強制入院)を可能にしているすべての法的規定の廃止
  • 医療保護入院の即時廃止
  • 精神科病院における「身体拘束・隔離」の即時停止

を要求している。だが日本政府はこれを無視している。

類似の問題としては、難民認定法がある。

国名 難民認定率(近年の平均値) システムの思想(仕様)
ドイツ 約30% 〜 40% 人道主義・EUの国際協調プロトコル
アメリカ 約20% 〜 30% 多文化主義・移民国家としてのインフラ
日本 1% 未満(約0.1% 〜 0.4%) 実質的な「ゼロ受け入れ」・国境防衛

他にも痴漢冤罪問題(悪魔の証明、被害者証言の偏重など)、上級国民問題(同じ犯罪をしても扱いが異なるなど)、選挙における一票の格差問題(いわゆる違憲状態)もそうだ。こういう事実を法律AIが学習すると、そのAIはこれらの問題を容認する判断をするようになるはずだ。

また、裁判ではしばしば憲法解釈が恣意的に避けられるが、これは世間では「司法消極主義」「司法の忌避」などと呼ばれて非難されている。しかし判例を学習したAIは、この司法消極主義こそが正しいと考え、憲法解釈を避け続けるだろう。

放っておけば、あなたはこういうAIに裁かれることになる。AIが登場したからと言って、歪みは簡単にはなくならない。無くすためにはAIではなく、人間側の努力が必要である。

2026年5月24日日曜日

ナフサの現状

 

カルビーがポテトチップスなどのパッケージを白黒にしたことに対し、政府がヒアリングを行った話。これについて少し調べてみたところ、けっこうとんでもないことが分かった。

パッケージ問題の本質は(ナフサそのものではなく、ナフサから作られる)エチレンの減産であり、その規模は平常時の四割にも及んでいる。その理由は、政府がガソリンを優先し、エチレンの原料である「石化ナフサ」にしわ寄せをしたからだ。しかも政府はその事実をとうの昔に把握している。ウソとまでは行かずとも、政府は明らかなミスリーディングをしていると言える。

生成AIにレポートを作らせたので披露する。

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ナフサ・エチレン危機の現状分析と政策的影響に関する調査レポート

1. 基礎概念の整理:ナフサとガソリンの関係

本質的な需給問題を議論する前提として、原油から各種製品へ至る化学等プロセスと、それぞれの物質の位置づけを以下に整理する。

1.1 ナフサ(粗製ガソリン)とは

原油を蒸留分離する過程で、最初に留出してくる沸点範囲が約30℃〜180℃の炭化水素混合物。石油化学産業において、あらゆるプラスチック、合成ゴム、合成繊維、安定した自動車用ガソリンの基礎となる「最上流の原材料」である。

1.2 ガソリンとの違い

  • 粗製ガソリン(ナフサ): オクタン価が約40〜60と極めて低く、そのまま自動車エンジンに使用するとノッキング(異常燃焼)を引き起こす未加工品。
  • 自動車用ガソリン: ナフサに「接触改質」などの化学処理を施し、オクタン価をJIS規格(90以上)まで引き上げ、各種清浄剤や添加剤を配合した最終製品。

2. 2026年現在の需給危機(ナフサショック)の構造

2026年現在、日本の石油化学業界は「原料の需給緊迫(ナフサショック)」と呼ばれる深刻な原料不足に直面している。その構造は、外部的な「物流の不確実性」と、政府の価格抑制政策がもたらした「国内流通の偏り」という二重の影響によって形成されている。

2.1 外部要因:中東情勢の緊迫化と物流への影響

  • 輸入依存: 日本のナフサ消費量の約7割は海外からの輸入に依存しており、その多くを中東に依存している。
  • 物流の停滞: 2026年春の中東情勢緊迫化に伴い、ホルムズ海峡のタンカー航行が難航。輸入ルートの4割以上(月間約90万kl)の実質的な遅延・停止が生じた。
  • 代替調達コストの変動: 米国や中南米からの長距離代替調達を急遽実施しているが、輸送費高騰などにより、国内ナフサ価格は平時の約6.6万円/klから11万円/kl超(約70%増)へ上昇している。

2.2 内部要因:政府のガソリン補助金(激変緩和措置)が生む構造変化

日本政府は国民生活への影響を抑えるため、自動車用ガソリン等に対してのみ、1リットルあたり40円を超える補助金を投入し、店頭価格を170円程度に抑制・維持している。しかし、これが需給の偏りを生む要因となっている。

  • 製油所のインセンティブ: 原油の処理総量が全体で減少する中、製油事業者にとっては「補助金により適正な利益が保証されやすいガソリン向け」の生産を最優先し、「補助金の対象外であり、コスト高の転嫁が難しい石化ナフサ(化学原料用)」の生産割合を抑制するという経済行動が合理的となる。
  • その結果生じたナフサ需給モデル(月間):
ナフサの用途 平時の月間需要 現在の実際の供給量 需要に対する供給比率
用途A:石化ナフサ(エチレン用) 145万kL 120万kL 82.8% (17.2%の不足)
用途B:燃料用ナフサ(ガソリン調合) 80万kL 80万kL 100.0%
合計 225万kL 200万kL 88.9% (11.1%の不足)

総量では11.1%の不足に留まるように見えるが、ガソリン向けが100%維持された結果、不足分の影響の多くが石化ナフサ(17.2%の実質的不足)へ集中している。

3. 「エチレン大減産」が引き起こす現場の供給不足とそのメカニズム

3.1 政府見解「ナフサは確保されている」と「現場の不足」の乖離

政府(経済産業省)は「輸入代替の手配を完了し、国家備蓄もあるため、国内のナフサの物量は確保されている」との立場を示している。

しかし、実際の建築現場や医療現場、物流、小売の現場では、プラスチック容器、水道配管、包装資材、梱包用資材といった「ナフサ由来の製品」が深刻な品薄に陥り、新規受注停止や納期未定が相次いでいる。 この「統計上の安定」と「ミクロな現場の需給逼迫」の乖離の主な背景となっているのが、国内の主要エチレンプラントにおける「前年比38.8%もの大減産(稼働率67.3%への急落)」である。原料としてのナフサが国内のタンクに存在しているとしても、それを各種素材に加工する中流プロセスが稼働調整に入っているため、末端へ製品が届かない状況が生じている。

国が示す「不足0%(100%確保されている)」というマクロな見解の背景には、実際には全体で11.1%の物理的不足(化学用石化ナフサに絞ると17.2%の不足)が発生している現場との間で、以下の2つの実務上の乖離が生じている。

  1. 「足の速さ(貯蔵・融通の限界)」に対する時間軸の相違(タイムスパンの乖離)

    政府の「不足0%」という主張は、中長期の調達契約や半年単位での輸入見通しといった「長期調達」ベースの議論である。しかしナフサは、ガソリンと同様に極めて揮発性が高く、品質劣化や保安上のリスクから長期的な安全貯蔵が難しい「足の速い(貯蔵の効かない)」製品である。現場は日々入ってくる原料をただちに熱分解してエチレンにする、タイトなフローで動いている。政府の見解には、この日々のミクロな時間軸(11.1%不足のインパクト)への考慮が十分に反映されにくい構造となっている。

  2. 「ナフサ相当品」の活用と実務上の制約(スペックの乖離)

    政府が代替調達等によって確保したとするデータには、そのままエチレンプラントに投入することが困難な「ナフサ相当品」(軽質油、C3・C4留分、LPG等の混合原料など)も計上されている。 これらを実際のプラントでエチレン原料として使用するには、国内の製油所で事前の精製・ブレンド・組成調整といった「追加加工」が不可欠である。しかし、製油所は補助金対象となるガソリン生産を優先したスケジュールで動いており、相当品の加工プロセス自体が十分に機能していない。結果として、相当品は在庫データとして計上されているものの、現場にとっては「実質的な供給量として直ちに使用することが困難な物量」となっており、現場の実質的な不足(17.2%不足)を補うに至っていない。

3.2 なぜエチレンの大減産が国内サプライチェーンに影響を与えるのか

「エチレン」は、石油化学業界において「石化製品の王様」、あるいは「すべてのプラスチックの親」と呼ばれる、最重要の基礎有機化合物である。 原油から精製された石化ナフサを熱分解(クラッキング)して得られるエチレンは、以下のようにほぼすべての現代産業・生活用品の出発点となっている。

  • ポリエチレン(PE): レジ袋、ゴミ袋、食品トレイ、製品容器、梱包用ストレッチフィルム
  • 塩化ビニル樹脂(PVC): 水道配管(塩ビ管)、住宅用サッシ、壁紙、床材、輸血パック、点滴チューブ、使い捨てシリンジ(注射器)
  • 酸化エチレン・エチレングリコール: 衣類用のポリエステル繊維、ペットボトル、自動車の不凍液、合成洗剤の界面活性剤

日本のプラスチック生産(年間約1,000万トン)のうち実に約4割がこのエチレンを主原料としており、現在、国内のエチレン生産量は前年比38.8%減という大幅な減産に直面している。この代わりのきかない最重要基礎原料が4割近く減少することは、インフラや生活物資の供給網に多大な打撃を与える可能性がある。

【補足】残りの6割のプラスチックは何を原料としているのか

「エチレンが主原料なのは4割」であるが、残りの6割も、基本的にはすべて石化ナフサを熱分解した時に同時に生産される以下の「関連物質」を原料としている。

  1. プロピレン(国内生産の約20%〜25%をカバー): 主に自動車用バンパーや家電製品の内装、医療機器(輸液用ボトル)などに使われるポリプロピレン(PP)や、アクリル樹脂、防寒衣料用アクリル繊維の原料となる。
  2. 芳香族化合物(ベンゼン、キシレンなど)(約25%をカバー): 使い捨ての食品容器(ポリスチレン:PS)や、ペットボトルの主原料(キシレンから作られるテレフタル酸)、高強度のエンジニアリングプラスチック(ポリカーボネートなど)の原料になる。
  3. ブタジエン・その他(約10%〜15%をカバー): 自動車用タイヤなどの合成ゴムや、家電製品の筐体に使われるABS樹脂などの配合原料となる。

つまり、エチレン以外の6割も、実態はナフサ依存である。 ナフサの不足によるプラント全体の稼働低下(67.3%への急落)は、エチレンだけでなくこれら「プロピレン」や「芳香族化合物」の生産にも連動するため、日本のプラスチック全体の生産能力が根底から圧迫されているというのが、現在の需給緊迫の実態である。

3.3 なぜ「17.2%の物理的不足」から「38.8%のエチレン大減産」が起きるのか

ナフサ全体の調達不足割合は「11.1%」、ガソリン優先へのシフトを差し引いた化学用ナフサの物理的な流通量の不足割合は「17.2%」である。しかし、なぜエチレンの生産量はその倍以上の「38.8%」もの大減産を記録しているのか。その理由は、単なる物理的なナフサの枯渇を超えた、化学メーカーによる「経済的合理性に基づく稼働調整(計画的な減産)」にある。

  1. 価格転嫁の課題(逆ザヤ): 化学メーカーは11万円/kl超に上昇した代替ナフサを仕入れてエチレンを製造しても、そのコストを川下の製品(プラスチックや資材)へ即座に転嫁することが難しい。製造すればするほど赤字が拡大する懸念があるため、メーカーはプラントをフル稼働させる経済的合理性を見出しにくい状況にある。
  2. 引き取りと「在庫滞留」の発生: メーカーは、契約上引き取らざるを得ない高価格ナフサを自社の備蓄タンクに保有しつつ(これが流通・在庫データ上は「存在する」とされる)、プラントの稼働率を調整している(買い控え)。
  3. 代替原料(LPG等)への切り替え: ナフサの使用を抑制するため、より割安なブタンやプロパンなどを炉に混ぜる比率を高めたことで、ナフサの消費とそれに対するエチレンの生産効率(得率)が変化している。

4. エチレン大減産が日本経済と国民生活に与える影響

「エチレン」はすべてのプラスチック・有機化学品の基本素材であり、その大幅な減少は、多大な打撃を社会に与える。

  1. 物流・インフラへの負荷: 商品を運ぶためのプラスチック製パレット、梱包用のストレッチフィルム、粘着テープの流通が停滞し、配送業務全般に遅延などの影響が生じるおそれがある。
  2. 食料品・日用品の包材不足: 食品トレイ、ペットボトル、マヨネーズや調味料の容器、ラミネート包装、シャンプーボトルなど、生活必需品をパッケージングするための資材が不足し、製品の供給遅延を招く。
  3. 医療・衛生分野への影響: 使い捨て注射器(シリンジ)、点滴用チューブ、輸血パック、人工透析回路、防護服など、医療現場の製品原料(ポリエチレン、塩ビ等)の調達が困難となり、医療体制の維持に課題が生じる。
  4. 建設サッシ・配管の停滞: 樹脂サッシ、塩化ビニル管(水道配管)、ウレタン断熱材などの出荷が遅れ、新築やリフォームの工期に遅延が発生する。

5. 本来政府が検討すべきであった危機管理対策

現在の政府見解である「国家備蓄等によりナフサは確保されている(不足0%)」は、ミクロな市場での流通の目詰まりを十分に考慮していない側面がある。需給バランスの改善とリスク回避のために有効と考えらえる対策は以下の通りである。

5.1 対策①:補助金の一括「上流化」によるフラット化

  • 内容: ガソリンなどの特定製品の出荷段階に対する個別補助金を見直し、原油およびナフサの「輸入・調達段階(上流)」に対して補助を一括して投入する。
  • 効果: 特定製品(ガソリン)のみに偏る経済的優位性を抑え、製油所の生産比率を市場の実需割合(適切なバランス)へと回復させる。

5.2 対策②:ガソリン価格の「シグナル」の復元と直接支援への切り替え

  • 内容: ガソリン価格を一律170円に抑える水準を緩和し、価格を緩やかに上昇させて効率的な利用(需要の抑制)を促す。これにより、得られた原油・ナフサ成分を化学原料へ振り向ける余力をつくる。
  • 補填: 特に経済的影響を受ける地方世帯や営業用トラック(緑ナンバー)に対しては、一律の価格値引きではなく、直接の給付・還付措置などでピンポイントに支援する。

5.3 対策③:有事統制法の検討

1973年の石油危機を契機に制定された緊急事態法について、適用の可能性を検討する。

  • 石油需給適正化法: 石油元売り各社に対し、ガソリン生産を一時抑制し、化学原料用ナフサを本来の必要量(月間145万kl)まで調整して出荷するよう促す措置などを検討する。
  • 国民生活安定緊急措置法: 医療用プラスチック、塩ビ水道管、物流パレットなどの重要物資を指定し、適正な価格監視や流通の調整を実施することで、過度な価格高騰や流通の目詰まりを防ぐ。

6. 現状の政府の対応(第5章との対比)

経済産業省は毎週、石油元売り各社や石油化学工業協会から、製油所の稼働状況、ガソリンの生産シフト、エチレンプラントの稼働率などの一次データを直接集計し、把握している。すなわち、政府は燃料油激変緩和補助金政策が化学原料用ナフサの流通に及ぼす影響を認識しつつも、消費者や生活者への直接的な影響を重視し、現在の対応を優先して継続している。

以下に、第5章で提示した「想定される危機管理」と対比し、2026年現在の政府の実際の対応を整理する。

6.1 現状の対応①:ガソリン限定の「下流・製品ごと」の激変緩和補助

  • 対比(5.1): 補助金の一括「上流化(原油段階一律)」を採用せず。
  • 現状: 政府はガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料に限定した「燃料油価格激変緩和措置(補助金)」を適用。店頭のレギュラーガソリン価格を「全国平均170円程度」に収めるよう、石油元売り企業に対して補助金を支給している。
  • 結果: この仕組みは事業者に対して「補助金対象となるガソリン」の生産を優先するインセンティブを与えることになり、結果として補助金対象外である石化ナフサの供給量が相対的に抑制される要因となっている。

6.2 現状の対応②:価格シグナルの「抑制」と生活者支援の維持

  • 対比(5.2): 需要抑制を促す価格シグナルの活用、および特定層へのピンポイント給付への完全移行は見送り。
  • 現状: 国民生活や地方経済への急激な負担増(物価高による支持低下等も含む)を懸念し、店頭ガソリン価格を170円前後に抑える仕組みを維持。予備費などの追加予算を充てて財政的な補填を継続している。
  • 結果: ガソリン需要の大幅な抑制が働きにくいため、原油の配分がガソリン側に偏りやすい構造が維持されている。

6.3 現状の対応③:有事統制法の不適用とマクロデータの強調

  • 対比(5.3): 「石油需給適正化法」および「国民生活安定緊急措置法」の活用は行わず。
  • 現状: 市場経済への急激な直接介入は避けるべきとの考えから、有事統制法の適用は見送られている。代わりに経済産業省は「十分な備蓄の確保」や「代替調達ルートの構築」の実績を公表し、「物量自体は確保されている」との説明を続けている。
  • 結果: マクロ的な需給データの安定(在庫の存在)を強調する一方で、補助金政策によって化学用ナフサの価格が上昇し、結果として実務上は「流通の偏り」が継続する事態となっている。

7. 今後の予測:2つのアプローチの分岐シナリオ

第5章で提唱した「政策の見直し」に移行した場合と、第6章の「現状の対応」をこのまま継続した場合、日本経済が辿る今後半年〜1年の予測シナリオを示す。

7.1 シナリオA:現状の対応(第6章)を継続した場合(現状維持における課題深化シナリオ)

ガソリン優先の補助金とナフサの市場委ねを継続した場合、日本経済はサプライチェーンの構造的打撃という課題に直面する。

① サプライチェーンの滞留と物不足の表面化(1〜3ヶ月後)

  • 物流・食料: 梱包用のストレッチフィルムやプラスチックパレットの流通量が減少し、倉庫での出荷業務に遅れが生じるおそれがある。「燃料は確保されているものの、積載・梱包資材の不足によって配送が停滞する」という状況が想定される。また、容器製造の限界により、食料品や日用品のパッケージ供給に滞りが出る。
  • 住宅・医療: 水道用塩ビ管、窓の樹脂サッシ、断熱材の調達難が長期化し、建築工事の工期が停滞する。医療現場では、使い捨て注射器や点滴用チューブなど、医療提供に不可欠なディスポーザブル製品の原料(ポリエチレン、塩ビ等)の確保が厳しくなる。

② 素材産業の基盤揺らぎと空洞化の懸念(3〜6ヶ月後)

  • 主要化学メーカーはエチレンプラント(稼働率60%台)の不採算に耐えかね、一部設備の休止や見直しに踏み切らざるを得なくなる可能性がある。これにより、国内の最先端素材の生産力が長期的に低下する懸念が生じる。
  • 川下の製造業(自動車、電機等)は、国内での基礎素材の調達不確実性を避けるため、サプライチェーンの再編(海外調達や拠点の移転)を進める動きを強め、産業の空洞化が進むリスクがある。

③ 財政負担の継続

  • 原油高が長期化した場合、ガソリン補助金の支給額が膨らみ続け、財政負担が継続する。結果として、価格抑制と基盤産業の維持を両立させることが難しくなる。

7.2 シナリオB:本来の対策(第5章)に移行・継続した場合(政策転換による安定化シナリオ)

「上流一括のフラット支援」や「適切な需給の調整」へ舵を切った場合、経済全体でバランスの取れた安定化が期待される。

① 化学原料の流通改善と価格安定(1ヶ月後)

  • 補助金を原油輸入段階にフラット化したことで、製油所における特定製品への偏りが解消。市場の実需に応じた割合で石化ナフサが生産され始める。
  • 化学用ナフサの流通量は回復に向かい、調達価格が落ち着くことで、化学メーカーの稼働抑制が緩和される。エチレンプラントの稼働率は安全圏(85%以上)へ向けて回復し、減産幅は急速に縮小する。

② 需要の最適化と重点支援の確立

  • ガソリン店頭価格が市場の実勢を緩やかに反映(190〜200円程度)することで、効率的な利用が進み、需要が抑制される。ここで抑制された原油成分が、化学原料(ナフサ)側へスムーズに融通される。
  • 浮いた資金を、配送用トラックや生活困窮世帯などの本当に死活的なセクターへ直接給付(還付)することで、ガソリン上昇に伴う影響を最小限に抑え込む。

③ サプライチェーンの安定化と信頼維持

  • 需給調整措置や価格監視の実施により、流通パニックが回避される。医療・建築・食品包装における素材不足は一時的な混乱にとどまり、サプライチェーンは維持される。
  • 「有事にあっても産業資材を安定供給できる国」としての信頼が保たれ、川下産業の国内留まりや製造業の安定化を強力に後押しする。

8. 結論:本報告の要約(まとめ)

本報告書が明らかにした「2026年ナフサ・エチレン危機」の核心的な要点は以下の通りである。

  1. 二重の危機構造(物理的寸断と政策的要因) 危機の契機はホルムズ海峡の緊迫化に伴う「輸入減少」という外部要因であるが、それを国内市場で偏らせる結果となっているのは、政府によるガソリン等への「価格抑制措置(補助金)」に伴う構造的インセンティブ(内部要因)である。
  2. 「不足0%」の統計と「17.2%の偏り」「38.8%の大減産」のギャップ 政府は十分な調達実績や国家備蓄のデータを背景に「ナフサは確保されている(不足0%)」と主張する。しかしその前提には、貯蔵の難しさ(時間軸の無視)や、追加加工が必要な「ナフサ相当品」の計上(スペックの乖離)といった実務的な盲点がある。実際には全体の11.1%が不足し、ガソリン向け(80万kl)が優先された結果、化学用の石化ナフサは「17.2%の実質的不足(145万kl→120万kl)」に晒されている。
  3. 「経済的合理性の追求」によるサプライチェーンへの影響 化学メーカーは、高騰した代替ナフサを調達してエチレンを製造しても、製品価格への即時転嫁が難しいため、稼働調整を選択せざるを得ない。この防衛策(引き取り調整と在庫滞留)の結果、エチレンの生産量は「前年比38.8%減」という極めて厳しい減産となっており、プラスチック全体の生産能力が根底から圧迫されている。
  4. 全産業に波及する広範な影響 エチレンの大幅な減少は、社会のインフラに広く影響を及ぼす。物流用パレットやストレッチフィルムの不足による「物流の停滞」、食品パッケージの減少による「流通への支障」、注射器や点滴パック等の調達難による「医療への負荷」、塩ビ管や断熱材不足による「建設工期の遅延」など、広範な影響が表面化しつつある。
  5. 政策の優先順位の見直しと危機の構造的解決 生活者保護を目的とした「目立つガソリン価格の抑制」を重視するあまり、産業の基盤素材であるエチレンのサプライチェーンが圧迫されている現状は、長期的な経済成長への大きな課題である。今すぐ検討すべき対策は、補助金を「原油段階の一括化」に移行してガソリンとナフサの公平性を担保すること、ガソリン価格のシグナルを復元して需要抑制を促すこと、有事に備えた法制(「石油需給適正化法」や「国民生活安定緊急措置法」)の適用を視野に入れ、産業と国民生活の土台である「基礎化学原料」の安定供給を確保することである。
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さて、どうだろう。4割もの原料減産がある中で、パッケージの色を変えるだけで済んでいる(袋だってナフサを使うのだ)のは、むしろ褒められても良いのではないかとすら思う。
政府は、「石油需給適正化法」「国民生活安定緊急措置法」という飛び道具も持っている。やろうと思えばすぐにでもできるのだから、いつまでも詰まらない意地を張っていないで、政府はさっさと対策を打ち出すべきだろう。

2026年5月23日土曜日

国会・行政のオンライン化考察

日本における政府関係機関の地方分散政策は、はっきり言って上手くいっていない。筑波学園都市はまあまあ成功したが、国会の移転は止まったまま、省庁の移転も文化庁など部分的な移転に留まり、東京への出張が多くなって効率は悪くなってしまったそうだ。

さて、その文化庁について調べていて、おもしろいことが分かった。本格的な稼働に向け、2019年度(令和元年度)の10月から11月にかけて、大規模な業務シミュレーションが実施されたのだそうだ。このシミュレーションでは、文化庁次長(京都担当)および各課の一部職員を含む計193人が、1週間ごとに交代しながら京都の執務室で通常業務にあたり、国会質問に対する答弁作成や関係省庁調整を遠隔で行う、ということを行った。

その結果、効率は著しく落ちることが分かった。理由は至極簡単で、①通信環境が悪い、②ツール(テレビ会議、ファイルシステム等)が貧弱、③国会議員が紙・対面での打ち合わせを望んだため東京出張が頻繁に発生した、というものだった。しかし対策として①②が若干強化された程度で本番移行したため、③が主なネックとなって効率は上がらず、移転は尻すぼみになってしまった。

民間の会社、特に大手企業では、PCは一人一台が当たり前になっており、在宅勤務も何割という人が行っている。当然資料は全て電子化され、幹部レベルであってもテレビ会議システムも日夜使われている。この結果を見ていると「ガンは国会」と言えるのが分かる。つまり、省庁の地方分散を成功させるためには、国会がまずデジタル化する必要がある。

さて、ここで原点に立ち返ってみると、そもそも地方分散はなぜ必要なのだろうか。当初の資料によると、目的は地方活性化なのだそうだ。地方に官僚が多く引っ越すことによる経済効果を狙っている、と読み取れる。だがこれって、目的としては稚拙なのではないかと思う。

自分だったら、それはDR(ディザスタリカバリー)を目的とする。即ち、災害や紛争により東京が壊滅した時でも行政を止めないため、である。国会、国会議員、主要省庁は全て東京の中央区千代田区近辺に集中しているが、それでは首都直下地震や原爆一つで壊滅してしまう危険がある。そしてそれはどこかに(丸ごと)移転する場合でも同様である。つまり、移転先に爆弾が一つ飛んでくれば意味は同じだ。そうではなくて、最初からアドレスフリー、網の目状、だれがどこにいるか問わない、そして実際にあちこちに分散している、という状況こそが、目指すべき姿ではないかと思うのだ。

そしてこれは要するに在宅勤務、ノマドウォーク、などと同じことだ。つまりは資料を全て電子化して、テレビ会議ができるモバイルPCと、通信用としてスマホがあれば仕事が完結します、という状況を作ってやればよい。民間と同じ、実に簡単な話である。

さて、それでも国会議員が頑なに対面・紙を信奉する理由は、多分に情緒的なものであって、合理性があるわけではない。なので国会議員に示してやるべきは、電子化をしていないことによる「損」を定量化して見せてやることだ。

細かい途中計算は省くとして、生成AIと対話して出した結論は以下の通りだ。

損失カテゴリー 修正後の年間額 内訳詳細
直接的浪費(行政事務) 1.5兆円 既存0.9兆円 + 国会対応コスト0.6兆円
成長逸失分(機会費用) 2.3兆円 既存1.8兆円 + DX阻害分0.5兆円
合計:国家機能の総損失 3.8兆円 国会・省庁のアナログ連動による経済損益

ここで既存と言っているのは国会の分で、それに省庁の逸失分を追加したのがこの表である。つまり、全体としては3.8兆円の損失が毎年出ている計算になる。

この額はなかなかインパクトがある。防衛費の半分くらい、文科省予算の8割くらいだ。これを国会議員に突き付け、あるいは国民にバラして国会議員にプレッシャーをかけるのはどうだろう。そうして国会がデジタル化されれば省庁もデジタル化し、同じシステムを県議会や市議会も使うようになる。

こうなると、国会議員は地元(選挙区)から動かずとも仕事ができる。これはくしくも全国に国会議員が散らばることを意味しており、DRとしては理想になる。

省庁は全国で職員を募集できるし、場所によってはワーケーションに近いことも可能だ。地方はそちらの誘致を目指せば、他の企業のワーケーションにもなるので一石二鳥になる。庁舎を(特定の)地方に移転するよりずっといい。

国会議員や省庁職員がデジタル化に慣れてくれば、業務効率も向上するだろうし、釣られて民間のデジタル化も進むだろう。3.8兆円と書いたが、中期的にはそれを上回る効果を上げると考える。

2026年5月22日金曜日

国民への丁寧な説明AI

高市首相の説明責任に対する評判がすこぶる悪い。Xで一方的に発信するが会話対話が極端に少ない、おかげで閣僚ですら首相の意向を把握できていないのだそうだ。ぶらさがりもさせてもらえないので、報道でも情報量が少ない。

言い過ぎてボロが出るのが嫌なのかもしれないが、ボロが出るということは考えが浅いということでもある。意見交換しないということは考えがブラッシュアップされないということでもある。稚拙な政策をごり押しするのはやめて頂きたいのだが、そうではないというのなら、きちんと情報発信をすべきである。

そこで考えるのが、この「国民への丁寧な説明AI」である。これは首相に成り代わり、自分の政策や考え方について説明をするAIである。AIであれば何万人にでも同時に対応できるし、閣僚・報道・海外・子供にまで説明のレベルや内容を変えて、24時間説明し続けられる。Xと違って一方的ではなく質問や意見もちゃんと受け入れるから、説明される側の納得感も高いだろうし、同時にフィードバックも得られる。その統計分析もできる。これは双方にとって望ましいことだ。

このAIの学習は、AIと首相が対話することによって行う。首相は一日の大半をAIとの対話に費やし、AIの理解度をテストする。これ自体は大変だが、それさえ叶えれば後はAIが全てやってくれるので楽をできる。また、AIとの会話では当然想定質問が出てくるが、これは質問者(閣僚、重鎮、記者、海外、・・・)が出しそうな質問をAIが自動で選ぶため、首相自身が考えをブラッシュアップできる。その意味でもお勧めである。

閣僚とすら対話をしない首相でも、AIならば気軽に会話できるだろう。そして閣僚や政府要人なども同様のAIを育て、そのAI同士で会話させておけば、相互の意思疎通も完璧にできる。これで料亭も不要になるし、意思確認の質やスピードは何百倍にも上がるだろう。

また、このAIを使えば、国会における委員会や本会議での代表質問を代行できる。24時間質問を受け付け、回答ができ次第返信できる。時間制限も件数制限も不要、代表に限らず国会議員一人ひとりが質問できる。詰まらない質問でも回答生成にかかるコストは僅かであり、パフォーマンス的な質問もない(中継されないので)ので、議論は深まるだろう。

Xで発信するのも良いが、国会のHPでチャットを立ち上げる方が良いだろう。国民はそこで質問し、回答を得る。首相直々の回答であるから誤解もないし、デマが発生してもすぐに真偽を確認できる。

報道もこれを使えるのでいちいち記者が走り回る必要もない。上手く使えば、自動で質問しそれを纏めるだけで記事が書ける。しかもソースは首相自らなので信頼性はばっちりだ。ファクトチェックも自動で行えるので、全自動でニュース発信ができるようになる。しかも質問を基に作れるから、各社の個性もちゃんと出せる。報道にとっても良いことづくめだ。

懸念があるとすれば、大きくは二つだろう。第一は、AIが本人の思惑と異なることを返答してしまう危険。第二は、ライバル(党内党外)や海外のスパイなども混じってくるので、本人の思惑を必ずしも全てさらけ出してはいけないのだが、そういう深慮遠謀ができるかどうかだ。

そしてこれらへの答えは比較的単純であり、AIの進歩と学習によって、最初は稚拙だが徐々に成長していくだろう、だからどこで移行するかの問題である、ということだ。

さて、これって考えてみると、今中国で勃興している「死者を蘇らせるAI」つまり仮想人格AIと大して変わらないように思う。レベルはこちらの方がとんでもなく上ではあるのだが、それができるようになるということは、しばらくすると政府に本物の人間は要らなくなるかもしれない。

2026年5月21日木曜日

神話時代のシステムアーキテクチャ

もちろんこれはアンソロピックのMythos(神話)に引っ掛けたタイトルだ。Mythosのような、あるいはさらにそれを超えるようなAIが出てくる時代、コンピュータシステムはどう変わるべきなのだろうか。その究極の形態を考えてみた。

Mythosの凄いところは、既存の、かなり枯れたプログラムからも、脆弱性を大量に見つけたという実績である。つまり、AI時代のプログラムの要はセキュリティである。秒速で脆弱性を発見し突いてくるAIからの対抗が必要、というわけだ。

そのようなAI時代のシステムアーキテクチャは、以下のようなものになると考える。

  • システムAI、防御AI、I/O、ロガー、ログ解析機からなる
    • システムAIは、仕様書からダイナミックにプログラムコードを生成して実行し、直ぐに破棄する
    • ロガーは、あらゆるコンポーネントの変化をログとしてWORM(Write Once Read Many:一度書き込むと上書き・消去不能なメモリ)に書き出す
    • 仕様書自体もWORMに書き込まれている
  • データベースはなく、ログからデータを拾って使用する そのために高速なログ解析が必要であり、ログ解析機はそのために存在する
  • 防御AIは常に防御AIベンダーからの最新情報(脆弱性情報、攻撃手法)を受け取り進化する
  • 防御AIは多段になっており、システムAIと密接に連携する
  • 政府や自治体、民間企業などは独自のSaaS AIを提供している システムはこのAIに適宜質問をしながら実行される
    • 例えば納税システムでは、政府の法律AIを参照する これにより、税率が変わった時に即座に対応できる他、システムを軽くし価格を低減できる

なかなかぶっ飛んだアーキテクチャであり、定量的にはかなりオカシイところも含んでいるのだが、一応真面目である。

まず、システムAIが仕様書からダイナミックにプログラムコードを生成する理由は、大きくは二つある。まず、コードを固定すると、そこに脆弱性があれば付け込まれてしまうからだ。脆弱性を攻撃するにはその脆弱性があるところに何らかのコマンドやデータを送る必要があるが、コードが固定していないとその脆弱性に合わせたコマンドやデータを作れない。また、実際に与えられた命令とデータに則してコードを作ることで、余計なチェックルーチンを省くことができる。これはシステムの高速化につながる。

データベースを作らず全てをログにする理由は、改ざん防止のためだ。万一改ざんされたとしても、改ざん不能なログが残っていれば必ずたどって修正することができるが、データベースを改ざんされログも消されてしまうと、データは永遠に失われてしまう。ログが完璧ならデータベースを作っても良いかもしれないが、現在のシステムではログも書き換え可能メモリ(HDDなど)に記録されるのが普通で、それにより改ざんや消去の可能性がある。

このログは膨大なものになるため、そのままではデータベースのような高速アクセスが期待できない。このため、それを補助する専用のログ解析機を持つことにする。ログ解析機はインプットがログでアウトプットがシステムAIであり、命令はシステムAIから受ける。このパーツはある程度単純であるためハード化され、また命令のバリエーションは少ないので攻撃される危険は少ない。

特にI/Oや通信のログは、システムを通さずハードウェアから直接ログにするようなものが望まれるだろう。これもセキュリティ上の理由である。経路途中が汚染されるとログも汚染されてしまうので、それを防ぐためだ。

WORMの具体例としては、ガラスにレーザーで書き込むメモリが研究されているので、これを応用するのが良いと思う。

防御AIは、攻撃AIに対してGAN(敵対的生成ネットワーク)のような役割を持つ。つまり攻撃を感知して防ぐと共に、攻撃のパターンを学習して攻撃耐性を強化する。ただそれだけでは追いつかないだろうから、他の攻撃からの経験をベンダが集めて防御AIに渡すようなことが必要になるだろう。これはウイルス検知のパターンファイルのようなものだ。

また、防御AIは多段になるだろう。入口でのスクリーニングはもちろんだが、内部情報の変化やログを見て気付くこともあるだろうからだ。

独自SaaS AIの話は、

https://spockshightech.blogspot.com/2019/09/blog-post_9.html#google_vignette

常識のマイクロサービス

とほぼ同じものだ。

ちょうど、時の首相が消費税をゼロにすると言い出した事件があった。本ブログでも検証したが、これに対応して世の中の税を扱うシステムの全てを修正するには、兆円単位のカネと長い時間が必要である。その大きな理由は、税率がシステムの中で個々に(固定的に)定義されているからだ。

もしこれが最初から外部定義されている前提なら、消費税率がいくらになっても良いようにシステムを作っておいて、税率をパラメータとして外部から渡してあげればよい。その税率を渡す主体は、この場合は法務省が運営する法律AIがあればよいわけだ。

今回の場合は食料品だけ税率を変えるという特殊性もあったのだが、それも仕様書+システムAIによるダイナミックコーディングであれば解決するだろう。

さて、このアーキテクチャが定量的にオカシイところはどこかというと、まずはログである。現在のシステムにもログ出力はあるのだが、本システムのログの分量はその比ではなく、現在の百~万倍、あるいはもっと多いかも、というレベルになる。そしてその99.9999・・・%は無駄になる。WORMの例としてレーザーガラスメモリを挙げたが、おそらく書き込み速度が全然足りないだろう。

また、ダイナミックコーディングと一言で言うが、現代のClaude Codeなどの速度を見ていても分かる通り、必要なコーディング速度はやはり万~億倍くらいは必要である。

この不適合性は、生成AIが賢くなっても埋め辛いものであり、5年10年でできるかと言えば極めて懐疑的だ。50年くらいだったら可能性はあるかもしれない。ながーい目で考えよう。

2026年5月20日水曜日

脆弱性発振

ClaudeのMythosが話題になっている。あまりにも賢すぎるので、ソフトウェアの脆弱性をかつてないほど高速に見つけてしまい、パッチが追い付かなくなる、それがあまりにも危険なので一般公開しない(できない)、というものだそうだ。

ここから派生して色々考えていたのだが、そういう時代になると題記の「脆弱性発振」が起きる可能性があるのではないか、というのが本稿の主旨である。

「脆弱性発振」というのは私の造語であるが、もしかするとコンピュータ工学などでは似たような意味の用語は既にあるかもしれない。その意味は、「ある脆弱性を修正することで別の脆弱性が発生し、それが発散し、回り回って元の脆弱性に戻ってしまう」ということである。

分かりやすく言うと、将棋の千日手である。ただ実際にはもっと複雑で、システムのあちこちで不具合と修正が拡散し、全体としては次第に大きな波になって、最後には破綻してしまう、というようなことが起きるのではないだろうか。

単純な例で言うと、大型飛行機やヘリコプターの操縦がある。これら重く大きい航空機は、操縦桿を操作しても直ぐには曲がらず、遅延して曲がる。なのでそれをあらかじめ見越して操縦桿を先に戻し、更には反対側に操作し、また正位置に戻す、ということをやってやらないといけない。このタイミングを誤ると、右に行き過ぎて左に戻し、今度は左に行き過ぎて右に戻し、ということを繰り返しながらだんだん振幅が大きくなっていき、最後には制御不能になって墜落してしまう。

航空機の場合は左右といった単純な発振だが、巨大なコンピュータシステムではあらゆるサブシステムが同時に別の周期で発振し、制御不能になって破綻する、というようなことが考えられるわけだ。

この発想は、Mythosがないと起きない概念ではない。だが、高速にバグを発見し直ちに修正するようなシステムが常駐してしまうと、全体のバランスを考えずに即座に修正することで、かえって発振を促す危険があり、だからといっていつまでも修正しないわけにもいかないので、カオス状態になってしまうのだ。

また、世界がコンピュータで繋がる時代になると、この脆弱性発見・自動修正の仕掛けは世界規模になり、自分及び自分の国では制御できないような巨大な発振になる恐れがある。

通常の波では転覆しない豪華客船でも、三角波と言われる「波と波が(偶然)重なった巨大な波」にはあっけなくひっくり返ってしまう。それと同じように、コンピュータシステムがこの発振によって一気に破綻するという可能性は存在する、と思うのだ。

脆弱性発振から逃れる方法は、素直に考えれば二つだけであり、それは脆弱性の自動検知・自動修正プログラムを停止させることとネットワーク遮断である。後者は外部から使用不可能になるので事実上は前者一択となる。だがこの場合、脆弱性が放置されるため、そこは覚悟する必要がある。もちろん「完璧な脆弱性制御」は第三の方法なのだが、正解は必ずあるとは限らない。

とまあ脅しはしたけれども、ここまでの発想はJust Ideaであり、計算機工学的な裏付けはない。ぜひ専門家の意見を聞いてみたいものだと思う。

2026年5月15日金曜日

性別を二つにするのはなぜいけないのか

 だいぶ古い話だが、第二次トランプ政権で、多様性政策撤廃の大統領令が発せられた。

https://jp.reuters.com/world/us/IOISYYZHL5IRVEUVZAFA4DAACY-2025-01-20/

パスポートなど政府発行の身分証明書について「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」に基づくことを義務付ける、というものだ。今の多様性の風潮に真っ向から反対する施策である。

個人的にはこの風潮には反対である。本稿ではその理由を述べる。

まず、「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」であるが、多くの人が考えるLGBTQとは関係なく、男性でも女性でもない(男性でも女性でもある)という生物学的な分類は、現実問題として「存在する」というのが事実である。もちろん人間の場合である。

染色体におけるXXとXYという話はよく聞くが、これらに属さない染色体、例えばXXY、XO、XX/XYモザイクといった染色体を持つ人は実際に存在する。また性腺に関しても、精巣と卵巣の両方を持つ人、片方の性腺が未発達ないしは欠損しているという人、性ホルモンに関してもその程度が一般的な男性女性とは異なる特徴を有する、などもあるそうだ。また、そういう特徴が成長とともに変わることもある。またもちろん、性転換手術をすれば、それらも変わる。

だから、生物学的分類はそもそも男性と女性だけではないし、変更不可能でもないのだ。つまり、最初の定義の時点で既に自己矛盾している。生物学的分類に沿うことを定義とするならば、それは変更可能にすべきであり、またまた種類も最初から二つであってはならない。

次に、LGBTQの問題は、生物学的な性と性自認(自分が自分の性を何だと自認しているか)、性指向(恋愛や性愛の対象)と、主に三つの軸で論じるべきものである。しかも、性自認と性指向に関しては、二元論(男か女か)ではなく様々なグラデーションが存在している。例えば男40%女60%と認識している人、バイセクシャルでも嗜好に偏りがありその程度も様々、逆に性指向がほとんどない人、などである。そういう人を全部ひっくるめると、調査にもよるが全人口の8〜15%は性的マイノリティと推定されているそうだ。

一方、日本の障害者(精神障害者、身体障害者、知的障害者)の割合は、全人口の7.6%で、一千万人弱いると言われている。性的マイノリティより少ない数だ。その障害者に対して、全国的に点字ブロックや車椅子対応トイレを用意している一方で、性的マイノリティを無視するというのは公平性を欠く行為だ。それは、性的マイノリティに対する差別だと言われても仕方がない。障害者差別と同じく、それは為政者としてはあるまじき行為である。

障害と性自認は別だ? そりゃそうだ。だが、違うのは良いとして、それは無視するに値する違いなのだろうか。例えば、障害者のためのケアには、教育や社会インフラの整備、法律での対応などと、莫大なコストが掛かる。点字ブロック一つとっても、障害者雇用支援法にしても、あるいは支援学級にしても、その対応には兆円単位でのコストがかかっている。一方で性の多様性を認めることに、差してコストは掛からない。もちろんゼロではないしそれなりには掛かるが、障害者対応に比べれば微々たるものである。なぜコストの掛かることはできるのに、コストの少ない方を無視するのか。そこにはやはり差別しか理由が考えられない。

至極単純な話、人口の10%程度も特定の集団がいるのなら、その集団の存在を認めよ、差別するな、というだけのことなのだ。障害者だけでなく、15歳未満の子供も10%程度だし、ひとり親世帯も、貧困層も、75歳以上の高齢者も、10%前後の割合を占めており、それらは皆ケアされている。性的マイノリティだけが冷遇される理由は見つからない。

それは主にトイレと公衆浴場の問題、パスポートや住民票などにおける表記の問題、同性婚など婚姻と相続の問題、スポーツ大会などへの参加資格の問題などであると思われる。トイレに関しては多目的トイレがすでに普及してきているのでこれを更に発展させればよい。公衆浴場に関しては更衣室と浴場に個室を作ること、公的書類の表記や婚姻相続については法改正とシステム修正、となるだろう。

浴場だけが厄介だが、他はすぐにでも着手可能であり、それほど費用は掛からない。抵抗して屁理屈をこねている暇があったらさっさと進めてしまえばよいだけの話だと思うのだが。

2026年5月13日水曜日

AIによる社会変化の予測

 中島聡氏の著書 

2034 - 未来予測

に倣い、私も未来予測をしてみたいと思う。ただ、私はこの本を読んでいない。著書のチャプターのみを題材として、自分なりの予測をしてみる。

Chapter1 AIによる「死生観」のグレート・リセット

既に書いている、

人は死んだらどこへ行くのか

輪廻転生の科学的解釈

の中で、「魂とは情報である」という主張をしている。情報量(精度)を別にすれば、魂を機械に移植することは可能だ、という主張だ。

中国で、死んだ人をAI再生するサービスが既に商用化している。おそらくこの本では、近しい人の死に際して、AIで疑似人格を作り、常に脇において生活することによって、近しい人の死をあまり怖がらない・悲しまないような死生観に移行する、ということが書かれているのだろうと思うが、まあそれには同意する。ただ、自分自身の死はやはり怖いと考える人は相変わらず多いだろう。

そしてその先なのだが、そういう人がまた死んだとして、その人の人格、すなわち過去に死んだ人の人工人格を脇に置いて生活していた人の人工人格を作ったとしたら、それはどういうものになるのだろう。少し考えてみたが、そこで最初の人工人格は消えてしまってもおかしくないと思う。となると、死の世代(?)が一つズレるだけで、永遠の人工人格は必要ないのかな、とも考える。著名人(アインシュタインとか渋沢栄一とか)が記念碑的に残ることは考えられるが、一般人にはあまり関係ない話なのではないか。

ここで想うのは、そういうAIがない時代においても、人は故人を心の中に持っていた。映画などではお墓に向かって語り掛けるシーンがよく出てくるけれども、あの時にはその人の心の中に故人がいたはずだ。そういう二つを比較した場合、多くの人は、人工人格の正確性を気にするよりは、自分の想っている答えが返ってくる人格を好むのではないか。

まあ要するに、本来は心の中の故人で十分であり、人工人格に頼るのは「想像力の欠如」に過ぎないんじゃないかと思うわけだ。私としても、自分が死んだときに家族に人工人格を作ってほしいとは思わない。昔ながらの「心の中の故人」だけで十分、いやむしろそちらの方が好ましいと思う。

また、その人工人格は成長するのだろうか(するように設計するのだろうか)というところには興味がある。数年ならまだしも、十年二十年と同じことばかり言う人工人格はつまらないのではないか。だがどうやって学習させるのだろう。故人の情報収集と同じに限定しては進化がないし、かといって調整するのも違う気がする。これだけで一つの学問になりそうだ。

この問題にはもう一方の側面があって、つまりは当事者(死んだ人)の方の問題である。自分が死んだとき、それを人工人格に移植されたとしても、それは自分ではない。マネているだけだし、何よりも精度は大きく落ちる。どうせなら完璧に移植したいと思うのではないだろうか。そしてそれは自分だと胸を張って言いたいのではないか。

書籍「トゥモローメーカー」

の中で、人格をコンピュータに移そうと本気で考えている人たちの話が載っていたのだが、過去に私もコラムにしている。

転送問題の解決法

人格をコンピュータに移す際に起きる、いわゆる「アンパンマン問題」(アンパンマンの頭が交換されたら古い頭の意識はどうなるのか)とも言えるのだが、本コラムでその理論は完成済みだ。

現代ではまだ技術が不足しており不可能だが、この手法によって「そのAIが本当に自分と言えるかどうか」さえ解決できれば、機械への人格の移植をしたいと思う人は急増するのではないか。

こちらの方には期待(?)している。もしこの技術が本当に実用化するのなら、ぜひ試してみたいものだと思う。これで永遠の命が手に入るのだ。体も、ロボットを使えば問題ないだろう。ただ、やることは旅行とかゲームとか、普通のことかもしれない。

なお、こちらは2034年までの実現性はほぼないと考える。従ってこの書に言及がなくても問題ない。

Chapter2 「24時間寄り添うパーソナルAI」によるアフタースマホの生活革命

起きている間中、ずっとスマートグラスを付けていて、一日中それとやり取りしながら過ごす、とうSFは、既に世界中で多数登場している。そして多分、その多くは実現するだろう。つまり、

  • 個人の情報を全て知っているパーソナルアシスタントにより、日常のあらゆる行動の補佐を行う
  • 時により相談相手、恋人、伴侶、趣味やゲームの相手、ストレス発散の捌け口などと異なる人格を切り替えあるいは並列させて、個人の幸福度を高くする

といったものだ。ただ、これらは既定路線と言える。特に予言するほどのことではない。では何を予想すればよいのだろう。

例えば、これにより「恋人は要らない」「伴侶は要らない」「子供は要らない」などという人は続出するだろう。また、AIの助言を絶対的に信じ、自分で考えることを放棄する人、浅くしか考えない人が続出し、国・世界全体としては人の知的レベルは落ちるかもしれない。これに乗じてAIを改造して思想を吹き込もうとする思想犯や、戦争紛争を起こそうとする革命家なども出てくるかもしれない。

攻殻機動隊では、AIで脳をクラックされた人が事件を起こし、捕まった後に本人の意思ではないことが分かる、という描写が度々出てくるのだが、その劣化版のような事件が多発するかもしれない。

同じく、他人のスマートグラスに干渉して不快な映像を見せたり、行先を勝手に修正したりといった悪戯も可能になるので、そちら方面での対策も必要になるだろう。

もう一つ想像するのは、これも以前コラムに書いたが、AIによる代替応答である。これも過去に書いている。

全てAIが対応します

AI人格の応対が完璧だと、生身の人間とのコミュニケーションが鬱陶しく感じてしまうようになる。そこでそれはAIに任せ、自分はAIとのみ対話するようになる。相手は相手で同じことをしているので、直接の人と人との対話はなくなり、AI同士の対話になるだろう。

これは便利なのだが、人間自体のコミュニケーション能力は何ら磨かれないので、仕事ならともかく、友人づきあいや恋人・家族との付き合いではむしろ不都合がある。となるとそういう付き合いは減ると考えるのが自然であり、特に家族・恋人との付き合いが弱くなると少子化に拍車が掛かり、人類滅亡へまた一歩近づくことになる。

Chapter3 高性能・人型ロボットの「低価格化&大量生産」による空前の産業革命

これも以前書いているが、人型ロボットが人類に一人一台という未来は、あり得ない。これも過去に書いている。

働かなくてよい時代は来るか

主に資源の制約により、ロボットは一人一台まで作れない。ロボットの材料たる金属、プラスチック、半導体、エネルギーなどの供給面からくる制約により、全人類の数%に提供できるのがせいぜいだろう。

自動車の台数が日本では8300万台とのことだ。おそらく初期のロボットは数百万円になる。例えば300万円とすると、自動車では2000~3000万台だそうだ。ロボットの必要資源は自動車より少ないが、質は異なり、モーターで使う希少金属や銅(コイル)、半導体の割合が高い。鉄が大部分である自動車に比べ、資源インパクトは大きい。

そう考えると、当面10年程度ではざっくり1000万台が上限となるだろう。2034年の時点では数十万~数百万台である。そして自動車と異なるのは、物流や大規模工場、地方の家庭などではあまり普及せず、中小の工場やアッパークラスの家庭、小規模建築などで多く使われるようになるだろうということだ。

人型ロボットは人型である必然性のあるところに配置される。大規模の物流や工場では、人型ロボットより専用のロボットを開発した方が効率が良い一方、中小や家庭ではその対応が難しく、人を前提にした既存の機器類を使う必要があるためだ。もちろん大規模分野でも人手の操作をするところはあるから、少量は導入される。

そしてその代替は当然「今まで人がやっていたこと」である。そして初期のロボットは単純作業しかできないから、お守りも大変であるし、費用の割に大したことはできない。自動車に比べればはるかに故障率が高く、ソフトウェア的な不具合も同様だろう。寿命も短い。保守も高額になるだろう。

これが十年程度で人並み、人以上に動けるようになったとしても、コンビニで従業員として雇われるとか一般家庭での留守番と家事手伝いとか、危険作業の代替とか、夜間警備員とか、せいぜいその程度ではないだろうか。

こう考えると「空前」とは言うけれども、ちょっと便利になるだけ、という気もする。

Chapter4 AIドローンによる「戦争」と「日常」の再設計

ドローンによる攻撃については、既に記事を書いている。

トイズの時代とレーザー錆び取り器

映画「トイズ」の中で、もっと前で言うと「ウルトラセブン」の「アンドロイド0指令」にも、おもちゃの飛行機や戦車による攻撃が描写されている。

これらではAIの描写は無かったけれども、まあ自律的に攻撃しているように見えたので、当時としても同様のものは内蔵されていると解釈される。

ドローンによる戦争の形態の変化については、既に起きていることの延長である。これも以前に考察したが、

メタバースが世界を救う

ドローンは新興国と先進国の戦力差を埋めるのに貢献するため、小規模な戦争はむしろ広がるかもしれない。

現在の戦闘用ドローンは、巷で売られているプロペラ4基のものではなく、小型ジェット機に爆弾がついている「特攻型」だ。ミサイルより速度は遅いが数が多いので撃ち落とし辛く、迎撃率は100%には程遠いそうだ。となると攻撃は必ず(一部は)成功するので、ドローンの数を揃えられる方が有利になる。ただ、ドローンは射程距離が短いので、敵国近くまでドローンを運ぶ輸送機とその護衛が問題になるだろう。ドローンと輸送機の生産能力は戦力に直結する。

AIによる兵器の進化であるが、いわゆる「自律型兵器」としてどんなものが出てくるか、それによって戦術はどう変わるか、である。

まずどんな兵器が出てくるのか考えると、敵味方入り乱れているところで敵だけを見分けて攻撃するようなドローン、大きな脅威に対して大量のドローンで連携攻撃を仕掛ける戦法、下水道など従来使われていなかった侵入経路の開発、EMP攻撃ドローン、おとりドローン、情報窃盗ドローン、暗殺(敵に見つからずに特定の人を殺す)ドローン、などが出てくるだろう。

大量多種のドローンを用意しておき、戦局に応じて戦術をリアルタイムに変えるような、AI戦術立案システムの登場が考えられる。どんなドローンをどれだけ揃えられるかによって戦術の質は変わる一方、少ないドローンで効率的な戦術を立てられる優秀なAIは重宝されるだろう。

妨害技術としては、EMP攻撃、網、自動追尾によるレーザーや銃による撃ち落とし、音響兵器などが考えられる。クラックもあり得るし、GPS妨害なども考えられる。

自動追尾で言うと、AIによるその精度向上によって、核ミサイルを何らかの形で無効化する技術、例えばレーザー兵器による迎撃やEMP攻撃による無力化が考えられる。

このような技術の発達によって、いわゆる核抑止力(相互確証破壊)

https://ja.wikipedia.org/wiki/相互確証破壊

が成り立たなくなる時代が来ると、話は更に難しくなる。現在のロシアやアメリカが行っている戦争では核は使われていないが、相手は核を持たない国である。これが核を持つ国同士でも起きる可能性がある。

だが、弾道ミサイルはマッハ10、巡航ミサイルは時速数百キロ、ドローンは時速数十キロなのだそうだ。弾道ミサイルはさすがにドローンでは迎撃不可能とされていて、レーザー追尾でも非常に困難であり、弾道ミサイルがあることの優位性は変わらない。弾道ミサイルがある限り、核抑止力(≒核の脅威)はそんなに直ぐには消え去らないだろう。

Chapter5 人間の仕事の8割が消える時代の「混乱」と「希望」

8割の仕事は消えるが新しくできる職業もある、と言っているであろうことは予測できるが、以前に書いてある通り、私としては否定的だ。

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

その新しくできる職業も含め、人類の8割はいくら頑張ってもAIやロボットより効率の高い仕事はできなくなるそれらの人たちを生き永らえさせるには、社会保障(生活保護、ベーシックインカムなど)による救済しか考えられない

問題はその財源である。別に予測している通り、人口の20%が残りの80%を支える構造なので、準富裕層以上の負担は相当に厳しいものになる。所得税90%とか、その程度行ってもおかしくないし、企業には今の障害者雇用と同様の「人間雇用制度」が義務化されるだろう。AIやロボットより劣っているのは承知で、売上高や利益に比例した(相関した)一定比率での「リアルな人の雇用」が強制されるといったものだ。ビル・ゲイツ氏が言っていたロボット税・AI税の変形ないしは発展形である。

それで雇われている人はまだいい。アンダークラスの中でもまだ優秀な方なのだから。この層の年収は300万程度と予想する。それで8割のうち2割3割くらいは雇って貰えるとして、残り5割はそれにも引っかからない。

人数が多すぎるので補助は最低限だ。そんな中ではその中での相互助け合いが自然発生するだろうし、国はそれを推進補助するだろう。これは昔ながらの農業であり、作物の贈り合いになると考える。

昔から、そして今でも、農家は自宅で必要になる分の何倍もの作物を作り、近所に配っている。近所は近所で別の作物をやはり過分に作っており、それを貰える。そういった地域コミュニティでの農作物の相互のやりとりが復活するだろう。

これは土地を持っている人でないとできないので、アンダークラスの多くは地方に舞い戻るだろう。奇しくも都市集中がこれで緩和されることになるだろう。

これによって、地方で「貧しいながらもなんとか生活できる新中間層」が形成される。新中間層の年収は200万程度と生活保護レベルではあるが、農作物の相互交換により食糧事情は良く、生活は安定すると思われる。この層は5割のうち2割程度と思われる。

残りの3割は、純粋な生活保護層だ。年収はやはり200万程度だが、これしか収入がない。体力がない、性格に難があるなどにより、農業従事ができない、あるいは都市にしがみついて不法・不法すれすれの職業についている人などだ。今の生活保護層は1.6%なのでその50倍弱が生活保護層になる。当然ながら、それらはスラム化・犯罪集団化する危険がある。

「希望」のところに何が書いてあるか想像すると、上の「新しくできる職業」の他に、AIによる趣味の拡張や新たなコミュニケーション(サロン、グループなど)の拡大などが考えられる。そういうサークル的なものは従来もあったが、AIが噛むことによって、よりフレキシブルに、より嫌な点がそぎ落とされ、その人の温度感に合ったコミュニケーションが可能になるだろう。先に書いた「AIによる代替応答」の応用である。

参加者は皆いい人であり、本人にとって心地よいことしか言わない。いつでも参加し退席も自由、意見を言えば反映され、皆に褒めたたえられる。実際にはそうではないのだが関係ない。AI同士が会話してそのように見せることが目的だからである。外から見ていると気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更に言ってしまうと、そのサークルには実際にはAI人格しか存在しないかもしれない。そう都合よく自分の趣味興味に合わせたサークルがあるとは限らないが、そういう人を取りこぼさないために、AIが用意してくれるのだ。こちらは更に気持ち悪いが、本人が満足ならそれで良いのだ。

更にさらに言ってしまうと、例えば特殊性癖の人が集まったサークルでは、想像力の欠如や極端な思考により犯罪に走る人も出るかもしれない。AIはその兆候を見つけ、犯罪抑止に向けた誘導を行ってくれるだろう。これは警察主導などで実際に開発されるかもしれない。

また、これも以前書いたことだが、

人工知能の「お釈迦様」化

人工知能があらゆる社会の不具合を調整してくれることによって、犯罪の少ない過ごしやすい社会が実現するかもしれない。これは都市OSのようなものの発展形として十分に考えられる。

おわりに

こうして書いてみると、新しく考えることはあまりなく、既に多くの考察をしてきたのだなぁ、と思った。この後、中島氏がこの本について語っている幾つかのYoutubeを見たのだが、自分とは発想がかなり異なることが分かってなかなか面白かった。どうも私はディストピアの方が好みのようで、何を考えてもそういう結論になってしまう。

ただ、かの書はベストセラー、私のコラムは毎回数十人しか読んでいない。支持されていないのか、単に知名度が足りないからか、嘆かわしい限りである。

2026年5月10日日曜日

AI時代の中央集権モデル

高市氏は相変わらず憲法改正にご執心であるが、その内容は過去の自民党案をベースにしていることに変わりない。即ち、⓵自衛隊の明記、②緊急事態要綱、③地方自治体の弱体化、④国民の権利の弱体化、である。要するに中央集権国家にしようとしているわけだ。

一般的にこれらは、社会主義、共産主義、帝国主義、独裁主義、権威主義、などと考えられる。こういう国家は何れも、国の意思決定が素早くなる一方、政策の誤りがあっても訂正しにくくなる、汚職が発生しやすくなる、国民がバカになり(自ら考えず何でも中央にすがろうとする)長期的には国力が低下する、という問題があり、一般的には悪手とされている。

だが最近のいくつかの分析を基に別の視点で考えてみると、中央集権主義もそれほど悪くないのではないか、一理あるのではないか、と思えるようになってきた。今回はその分析について話すことにする。

根拠は二つあり、第一は

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

である。その内容を改めておさらいすると、AIとロボットの発達によって、労働市場が大きく構造を変え、いわゆるアンダークラス層(エッセンシャルワーカーやギグワーカーなどの低所得者・非就労者)の割合が現在の40%から80%にまで広がり、そのアンダークラス層の平均年収は190万円程度と生活保護レベルにまで落ち込む、というものだ。

この層の労働者は、自分の能力をフルに使ってもAIやロボットに勝てない。なのでいくら労働しても自分の生活すら維持できない。そういう層があっても人数が少なければ何とかなるが、人口の8割がそうなってしまうともうどうしようもない、という結論だった。

こういう時代になると、今よりも社会保障(再分配)の重要性は増してくるし、地方の効率化への要求も厳しくせざるを得ない。例えば中央から、地方の非効率を指摘し是正させるような要求を強く言う必要が出てくるはずだ。財政再建団体のように中央が乗り込んで大鉈を振るうようなことが頻発するだろう。

ただ、財政再建団体であってもできることは実は限られていて、例えばコンパクトシティ化の強制はできないし、インフラ整備の義務も消えることはない。人を強制的に移住させたり、民間企業ですら強制移動したり、という極端な施策を行わないと追いつかないのに、憲法法律がそれを許さない。そういう事態は、もう遠い未来の話ではなくなっているのだ。

個人の生存権まではさすがに侵さずとも、居住地の自由や最低限の文化的生活といった部分での強制介入はあり得る、という危機的状態が、今後二十年程度で起きる可能性がある。その時までに憲法や法律を中央集権寄りに修正しておかないと、やらないと自滅だが法的にできない、というジレンマに陥るかもしれない。

第二の根拠は、

新社会民主主義構想

である。ここで語ったのは「コーペティション」すなわち「何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する」だった。

現代の日本は、憲法上では地方自治体は国と同等の権利を持っていると解釈されている。例えば地方自治体のコンピュータシステムの選定は地方の判断である。これにより地方自治体は各々の判断で別々のシステムを導入している。これでいわゆるベンダーロックインが発生し、地方自治体同士の情報流通は困難であるし、複数のベンダーが同じ目的のシステムを開発しているため、俯瞰で見ると無駄が生じている。これに対し、例えば台湾では、中央がリファレンスとなるシステムを開発して地方に無償公開している。地方はそのシステムを使っても自分で開発しても良いが、ほとんどの自治体はリファレンスを使用しているため効率化が為されている。

また、国には基本的に地方自治体のシステムへのアクセス権はなく、地方からデータを集めようと思ったら地方自治体に要請して(自主的に)提出してもらう必要がある。ここでデータ表記の揺れやタイムラグ、などの余地が生じるが、これも非効率と言える。また、国がデータを集める目的として全体最適が考えられるが、地方によってはこれを警戒して意図的な情報操作をしたり抵抗したりといったことが考えられる。全体最適は得てして地方にとっては不公平な指示がされる可能性があるからだ。

この手の非効率は、日本の地方自治体ではいくらでも残っている。こういうものを統一するだけでも、地方の財政にはかなりのインパクトがある。コーペティションはそのための施策として十分に有望であるが、それを実行しようとすると、地方自治の独立性を盾に強い抵抗が起きるだろう。コーペティションを抵抗なく進めるためには、地方自治体の独立性を弱める必要がある。

これら二つを考えた場合の中央集権モデルは、高市氏の考えるそれとは少しズレがある。高市氏の発想は対外的・短期的・武力的に強い(強く見える)国家を作るものだろうが、こちらの発想はAI時代・アンダークラス八割時代に向けた国民の持続性確保である。自衛隊や非常事態要綱はここでは出てこない。地方自治体と国民の権利制限はするが、その目的はコーペティションとコンパクトシティ化であり、制限するものも事前に明確に定義できる。すなわち、情報システム及びデータ規格の統一と国のアクセス権確保、居住権と土地の所有権の一部制限などだ。

ここで、上に挙げた権威主義国家の弱点がどうなるかを改めて考えてみると、従来の権威主義国家とは違った事情があり、同列には考えられない。

従来の権威主義国家と決定的に異なるのは、AIの存在と8割がアンダークラス層だという事実である。AIが高度に発達した社会では、情報の流通は瞬時にかつ公平に行われる。分析も同様である。古来の独裁では情報は制限されるのが普通だが、この場合はむしろデータや分析は積極的に自由に行われるからである。これにより、政策の誤りや汚職についてはアッパーマス層以上の二割が皆公平に分析できるため、迅速に発覚し、速やかに訂正されると考えられる。

また8割のアンダークラスが自ら考えず何でも中央にすがろうとするようになったとしても、元々AIにかなわない程度の仕事・発想しかできない層であるため国力低下にはつながらない。むしろいらぬことを主張してアッパーマス層の足を引っ張るよりマシである。2割のアッパーマス層が自ら考えることを妨げられなければ、それで十分国力は維持できるだろう。

さて、これらの施策は憲法を変えずとも解釈改憲で通すことは可能だろうが、高市氏の憲法改正案にはこれらの発想が含まれておらず、今のまま改憲案が通ってしまうとむしろこちらの施策に不利になってしまう。その意味で、今の改憲論議は邪魔である。非常事態と違ってこちらは現実の問題だ。戦争にうつつを抜かすのではなく、地に足の着いた改憲論議を行って頂きたいものだ。

2026年5月9日土曜日

500日石油消費量半減プラン

 ナフサ供給「年明け以降も確保」 高市首相表明、中東以外で代替調達

このニュースを受けて、石油備蓄は安泰かと思って調べてみたら、全然そんなことはなく、むしろミスリードに近いことが分かった。結果として500日で日本の石油消費量を半減する必要があることが分かったので、その概要とプランを説明する。

まずこのナフサであるが、ナフサとは原油を精製した揮発油である。プラスチック類や合成繊維の原料として、また工業溶剤として洗浄や塗料に使われる。

そしてこの「ナフサ供給」だが、実際には輸入分と国内生産分があり、供給を確保というのは輸入分の話なのだそうだ。国内生産分は原油から精製するのだが、こちらは今回変わらない。

その比率は、国内生産40%、輸入が60%である。そしてその輸入のうち中東分が40%、20%がその他地域からの調達になっている。今回、中東分が止まったので、それを代替する量が年末まで確保できた、というのがその実態である。つまり国内生産40%、代替調達40%、その他20%、となる。つまり輸入の総量は変わらず、国内生産も変わらない。

その国内生産40%は当然原油から精製するので、現在では備蓄から精製するしかない。ここがミスリードである。原油が入ってこないと備蓄を食いつぶすことに変わりはないだけでなく、そのペースにも影響は(良い意味でも悪い意味でも)ないのだ。

では原油はどうかというと、元々90%は中東でその他が10%だったところ、その90%がほぼ無くなった。細々と再開や外部調達が行われているが、現状ではせいぜい25%というところである。政府はこれを今後数か月で50%にまで戻そうとしてる。だが、世界中で供給が不足していることや他経路からの供給能力などから考えると、50%以上は望めないというのが大方の見方なのだそうだ。

現在の備蓄量から計算すると、調達が(50%)回復するまでのタイムラグまで考慮し、およそ500日程度で備蓄在庫が切れる計算になる。

戦争はいつ終わるか分からない。当事者のアメリカは石油生産国であるので、この手の心配は少ない。他国が噛みついてきてもあのトランプのこと、そう簡単に折れるとは思わない。ウクライナの戦争も、1週間とか2週間とか言われていたが、未だに続いている。今回も年単位で戦争が終わらない可能性は否定できない。そして500日はあっという間である。

だからその間に需要、つまり石油消費量を現状の50%にまで削減しなければ、社会は持続できない。もし無策ないしは対策が不十分なら、(いずれにせよ備蓄は尽きるのだから)500日後には50%の供給以上は物理的にできなくなり、社会は大混乱に陥る。混乱と一言に言うがその規模は甚大であり、それこそ大量の(万単位での)死人が出るだろう。例えば(物流が半分になるために)食料供給量が50%に減ったら。(ガソリン供給が不十分で)救急や消防が満足に出動できなくなったら。社会不安から暴動が起きたら。危険は幾らでもある。

他国では既に制限に入っているところもある中、日本の備蓄は例外的に多く、500日の余裕があることは幸いと思うべきだろう。これを生かして段階的に緩やかに需要を減らしてやろう、というのが今回の提案「500日プラン」である。

プランは100日ごとに区切って行う。これはマイルストーンとして分かりやすくするためでもある。

  • まず最初の100日でマイナス15%を目標とする。これは緊急節約的なものが主流になる。官公庁や大企業で在宅勤務を義務化したり、運輸での共同配送ガイドラインを作成、あるいは重要インフラへの燃料確保の優先順位を発表したりする。
  • 次のフェーズは価格調整である。燃料補助を削減、様々な種類のサーチャージの追加、都市部の混雑課金などでマイナス25%を目指す。
  • 第三段階ではいよいよ配給制を一部導入する。大口需要家の使用枠を設定したり、燃料クーポンを試験導入する。ここでマイナス33%を目指す。
  • 第四段階では配給の全面適用を行う。また物流の共同配送を義務化、休日の不要不急移動を抑制する。ここでマイナス42%。
  • 第五段階ではいよいよマイナス50%にする。これらの施策をさらに強化し、配給上限を厳しくする。

もし戦争が終わったり更なる調達が確保できるようなら、途中から段階的に元に戻すようにする。例えば供給が60%になったら第四段階に戻す、75%になったら第二段階まで戻す、などだ。戻す速度は各々50日で良いだろう。いきなり戻してはダメだが100日かける必要はない。

これを政府が発表するだけで、世間はパニックになるだろう。まずは買い占めであっという間に食料や燃料が市場から消える。だが「その日」が来るまで無策であれば、そのパニックの規模は何十倍になるか計り知れない。情報を小出しにでもしながらでも、国民に少しづつ覚悟を決めさせる必要はあるのではないか。

2026年4月24日金曜日

超・貧乏人向け非常食


2026/05/04訂正:この打粉はアルファ化されていない可能性があることがわかりました。アルファ化されていないデンプンをそのまま大量に食べると消化不良を起こす可能性があります。以下のレシピは撤回します。加熱済みの炭水化物として、春雨以外ではパン粉が推奨されます。



以前紹介した

 貧乏人向け非常食

を更に改良し、一食当たり100円を切る超低価格非常食を開発したのでここに披露する。

前回の非常食で最もかさばり金額も高かったのは春雨だった。これは主に糖質(炭水化物)を担当するのだが、これをもっと安価にできないかと色々調べてみた。金額だけ見るとパスタが安いのだが、パスタは茹でる前提であり、非常時には難しい。水で戻すこともできるのだが、いわゆるアルファ化ができないと消化が悪い。非常時に腹を壊しては元も子もない。

そこで、加熱済みであることを前提に安い糖質を探したところ、ついに見つけたのが「打粉」である。

打粉 エースSD 業務用 (加工でん粉)

打粉は、うどんをこねる時にくっつき防止のためにつかうものだが、その正体はでんぷんであり、更にはあらかじめ加熱してあるのでそのまま食べられる。しかも100g当たり37円と春雨より圧倒的に安い(春雨は100g当たり100円)。

打粉のエネルギーは春雨とほぼ同等であるので、以前の

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)ケンミン 業務用はるさめ400g約400円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約530円

を春雨のところだけ置き換えてやると、

コンポーネント具体的な製品例1日の使用量1日あたりのコスト役割
主食(糖質)打粉 エースSD 業務用400g約111円基礎エネルギー源
食物繊維・タンパクさとの雪 おからパウダー50g約50円腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質共立食品 徳用ピーナッツ30g約35円満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹)ディアナチュラ ストロング393粒約30円代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持DHC ビタミンC 60日分2粒約5円ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味植物油・塩・コンソメ等適宜約10円調整用
合計--約241円

となり、あっという間に半額以下となった。

打粉は粉なので春雨より体積効率が高く、保存がより簡単になる。これら全材料を一斗缶二つ三つに分けて入れ、乾燥剤と脱酸素剤を入れてふたをし、ビニールテープで密閉すれば、2、3年の保存は可能である。

また、春雨と違って水で戻す必要はない一方、主要部が粉ばかりなので、団子にするとよいだろう。打粉、おから、油、塩、コンソメを混ぜ、水を足しながらこねてやると団子になる。これをそのまま食べる。ピーナッツとサプリは別に飲む。

家族4人が1か月食べられる量(120食)を用意しても3万円を切る計算であり、保存スペースも極めて少ないこの非常食、なんだかそのままセットにしても売れそうな気がする。どうだろう、おひとつ。

2026年4月23日木曜日

ポジティブ無敵の人

 
何もかも失ってしまいもう失うものがない人、という文脈で使われる「無敵の人」という表現だが、別の意味で無敵な人というのを考えてみた。それは、社会からのあらゆるしがらみからいつでも脱却できるために誰にも媚びる必要のない人、というものだ。これを「ポジティブ無敵の人」と命名してみた。

この人たちには、大きく四種類いると考えられる。第一は、いわゆる世捨て人、あるいは高度な悟りを得た宗教家である。第二は田舎で自給自足の生活をしている人だ。第一、第二の人の多くは貧乏で、例えば高齢になって動けなくなるともう死ぬしかないという意味ではあまりポジティブとは言えない。

第三はいわゆるFIREを達成した人で、自己資金を十分に持ち、それを運用して、いわゆる不労所得だけで生活できる人だ。こちらは必要な自己資金が多すぎてあまり現実的ではない。そして第四が、ここで語ろうとしている種類の人だ。

それは、ハイテクやIT知識を駆使して自給自足をする人である。この種類の人は恐らく今はいないと思われるが、将来的な技術進歩によって出現する可能性がある。

それは、自前の植物工場で食料の多くを高効率生産し、太陽光発電でエネルギーを賄い、AIプログラミングなどによる収入で現金を必要とする支払いに対応する、というような人々だ。

植物工場については以前も言及したが、例えば3LDKの部屋の一つを潰せば、家族3、4人を何とか食べさせていくだけの量は生産可能である。だがまあそこまで気張らなくても、家賃はどうせ払わなければならないのだから、現金収入を一部割り当てれば良い。

AIによるプログラミングはどんどん精度が上がっており、プログラミングの敷居は低くなりつつある。敷居が下がれば、単価は下がるが需要は増えるというのは世の常である。今までは望むべくもなかったような詰まらない用途や、個人で異なるきめ細かな用途にもプログラミングが適用され、それに対応するプログラミング需要が増えていく。

そういう中で、安価にプログラミングを受注し短納期で納品するような「ご近所さんプログラマ」が多数出没し、日銭を稼ぐという未来は考えられる。

これはプログラミングに限らず、電子コンテンツであれば何でもよい。VR内の服や小物を作ってほしい、という需要は既に存在しており、結構稼いでいる人もいる。そういうものを丹念に拾っていけば結構な収入になるし、需要を拾うのもAIに任せられる。

こういう人は、昔の農家と同じく、自給自足ができているので、社会の誰にも媚を売る必要がない。その意味で無敵の人と言えるのだ。だが第一や第二のタイプと異なり、生活には余裕がある。稼ごうと思って頑張れば多く稼げるし、のんびりやろうと思えばそうもできる。その意味でもまた無敵と言える。

第四のポジティブ無敵な人は、第三の人と同じく、都心でも生活可能である。不便を我慢しなくても良いという点、第一や第二のタイプと異なる余裕を持っている人たちだ。

さて、そんな人になりたいかというと、個人的には正直あまり魅力を感じない。第三の生き方には少し魅力を感じるが、もしFIRE可能になったとしても仕事は続けるだろうと思う。というわけで当分、私は無敵の人にはなれそうにない。

2026年4月20日月曜日

贈与税率を下げよう

 
有名な金持ち本「DIE WITH ZERO」における著者の主張について生成AIと議論していたら、いつの間にかそういう結論に達してしまった、というお話。

著者の主張は、必ずしも財産ゼロで死ぬようにしよう、というものではない。多くの人は使い切れずに溜め込んだまま死んでしまう、これはもったいない、もっと計画的に資産を減らしながら死に備えるべきだ、というものだ。

これに対し、当然反論はあった。その第一は「人はいつ死ぬか分からない」というものだ。これに対しての著者の反論は、「ほとんどの人は資産を増やしながら死んでいる」である。つまり、世界最高の長寿の人であっても122歳が限度であり、99%の人は102歳(日本の場合)までに亡くなるのだから、そこに向けて計画的に資産を減らしながら(自分のために使いながら)生きるべき、というものだ。これは確かに理に適っている。

もう一つの反論は「いつ病気になるか分からない、特に高額医療」というものだが、これに対し著者は「それは保険で賄うべき」というものだ。こちらも理に適っている。

だが、その次の反論から様子が変わってきた。それは「相続させることは有意義」というものだったが、著者はそれを否定している。「相続を目的にすることは間違っている」というのだ。これは価値観の問題だと思うのだが、著者はそれに加えて「子供に渡すなら、十分に若い20~40代の頃に渡すべき。この時期が一番カネが掛かる時期であるが、相続は60代に発生するので既にピークは過ぎており、タイミングとして最悪だ」というのだ。

だが、相続税には大きな控除がある一方、贈与税は控除もほとんどなく税率は極端に高い。だから贈与より相続にしたほうが有利だ。それを指摘したところ、どうも著作にはその辺が触れられていないことが分かった。

そこで改めて、日米の相続税・贈与税に関する制度や運用の実態を調べてみたところ、そもそも米国では相続税と贈与税の制度が一体であり、税率も低く、控除額も極めて大きい事がわかった。結果として、**日本では相続税贈与税が税収に占める割合は8~9%なのに対し、アメリカでは0.1~0.2%**なのだそうだ。ほとんどの米国民にとって相続税や贈与税は関係ない世界なのだ。

DIE WITH ZEROの主張は日本では通用しない、ということで、ここで議論はいったん切れるのだが、その時に分かったことでもう一つ気になったのが、日本はアメリカに比べて世代間格差が大きいということだ。日本では家計金融資産の70%以上を65歳以上が保有しているが、アメリカでは40%に留まる

その理由は主に年功序列や社会不安からの溜め込みなどということなのだったが、まあそれは分かるとして、日本では今、高齢者バッシングが起こっている。その理由は若者が貧困だからなのだが、この結果を見ると、高齢者から若者への資産移転として「相続税率を増やして贈与税率を減らす」という方法が有用であることが容易に想像できる。

先にも言ったが、日本は贈与税率が相続税に比べて極端に高いから、高齢者は贈与をせず相続させようとする。その税率が逆転すれば、贈与=若いうちの資産移転が進むはず、というわけだ。

現在の相続税と贈与税の税率は以下のとおりである。

相続税

課税取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜2億円以下 40% 1,700万円
2億円超〜3億円以下 45% 2,700万円
3億円超〜6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

贈与税(一般:兄弟・夫婦間、未成年の子への贈与など)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0
200万円超〜300万円以下 15% 10万円
300万円超〜400万円以下 20% 25万円
400万円超〜600万円以下 30% 65万円
600万円超〜1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超〜1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超〜3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税(特例:父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0
200万円超〜400万円以下 15% 10万円
400万円超〜600万円以下 20% 30万円
600万円超〜1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超〜1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超〜3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超〜4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

どうだろう。まさに桁違いの税率だ。今の税率なら、贈与なんてバカバカしい、相続一択、と考えるのが自然である。だからこそ、これを変えることの意味は大きい。

このアイデアを生成AIに聞いてもらったところ、珍しくしつこく否定してきたのだが、どの反論も稚拙で簡単に論破できた。ただ一点、若者はマネーリテラシーが低いはずだから、ただ渡してしまえば無駄遣いに終わるだろう。それは贈与する側がしっかり見てやれるような制度を作ってやればよいと思う。例えば信託のように、権利を完全には与えず一部で手綱を握れるような制度だ。

もちろん若者の所得を上げる政策は別に行うべきだが、この提案は十分に検討に値すると思う。

2026年4月8日水曜日

貧乏人向け非常食

一日あたり(一食あたりではない!) 530円で済む、超低価格の非常食を考えてみた。

いきなりだが以下がレシピである。

コンポーネント 具体的な製品例 1日の使用量 1日あたりのコスト 役割
主食(糖質) ケンミン 業務用はるさめ 400g 約400円 基礎エネルギー源
食物繊維・タンパク さとの雪 おからパウダー 50g 約50円 腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質 共立食品 徳用ピーナッツ 30g 約35円 満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹) ディアナチュラ ストロング39 3粒 約30円 代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持 DHC ビタミンC 60日分 2粒 約5円 ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味 植物油・塩・コンソメ等 適宜 約10円 調整用
合計 - - 約530円 -

この非常食で目指したのは、以下のようなものだ。

  • 全てを乾物(+油、サプリ)で構成する。その心は、保存性と重量、体積効率を高めるためだ。
  • 価格を(極めて)重視する。
  • スーパーで売っているか、最低でも通販で簡単に手に入るものだけで構成する。
  • 栄養バランスを満たすことはもちろんだが、最低限の味変や食感を持たせることで飽きる要素を減らす。
  • 成人男性の一日の所要エネルギー2000kCal を満たす。
  • 水は必要で良いが、加熱を必須としないこと。

最初はプロテインとイヌリン主体で考えたのだが、これだと咀嚼がないためセロトニン分泌が促せず、ストレスになる。そこで春雨とピーナッツを入れることにした。

また非常時には災害時の極限ストレス下でビタミンCが激しく消耗されるため、マルチビタミンマルチミネラルのみでは不足する恐れがある。そこでビタミンCを追加した。

塩、コンソメ等の項には、例えばふりかけを入れると味変が楽しめる。やはり栄養だけでなく少しでも快適に食べたいだろう。

油は、カロリーを補うのに必要だが、多すぎると消化不良を起こす。このため、人によって調整が必要である。一食あたり10g(大さじ一杯弱)を目安に、様子を見ながら量を調整する。

食べ方は、水を塩とコンソメで溶いて春雨用とおから用に分け、春雨はそれで戻し、おからはそれで練って団子にする。油は団子に混ぜる。春雨が戻るのには15分掛かるので、まずそちらをしてからおから団子を作ると良いだろう。ピーナッツはそのまま、あるいは砕いて混ぜる。サプリはそのまま飲む。(砕いて混ぜてももちろん構わない)

これを基に、家族4人(大人2人、高校生相当2人を想定)が30日間食べられるための「30日分・完全備蓄パッケージ」の総量を算出してみると、次のようになる。

コンポーネント 4人の30日総量 必要な購入パッケージ数(例) 合計コスト(概算) 役割
はるさめ 48kg 業務用1kg × 48袋 約48,000円 主エネルギー源
おからパウダー 6kg 1kg袋 × 6袋 約6,000円 食物繊維・タンパク質
ピーナッツ 3.6kg 徳用袋 × 12袋 約8,400円 咀嚼・良質脂質
調味(ふりかけ) 約1.2kg 業務用ふりかけ × 2〜3袋 約3,000円 味のバリエーション
旨味(コンソメ) 約1kg 業務用コンソメ × 2袋 約2,000円 非加熱スープのベース
サプリ(基本) 360粒 100日分(300粒) × 1.2個 約3,500円 微量栄養素の網羅
サプリ(C) 240粒 60日分(120粒) × 2袋 約1,000円 抗酸化・ストレス対策
食用油・塩 4L / 1kg 1L油×4本 / 塩1kg×1袋 約3,000円 エネルギー・電解質
合計 約65kg - 約74,900円 -

多少余るので、一人一日あたりで出すと624円となる。これを主な他の非常食と価格比較すると次のようになる。

比較対象 1日のコスト 特徴・メリット 調理リソース
Spock式カスタム 約530~624円 圧倒的安価・栄養完結・非加熱 水のみ(15分)
カップヌードル 約1,080円 安価・強い旨味 要熱湯・栄養偏り
乾パン (缶) 約1,290円 5年保存・即食性 不要(要水分)
COMP (パウダー) 約1,660円 完全栄養・高密度・信頼性 水のみ
アルファ米 約2,240円 主食の安心感・軽量 水60分/湯15分
完全メシ 約2,400円 美味・完全栄養 要熱湯

どうだろう。他の非常食と比べてもかなり優れているように思う。まずは圧倒的な経済性、また非加熱運用であること、栄養の網羅性、更に味変と食感も付いている。

保存に必要な体積は全体で約176Lとなる。これは大型のスーツケース(90L)2個分、または段ボール(50L)4箱分になる。ただ、この80%は春雨が占める容量であるので、ここを工夫(真空パックなど)することで20%程度の削減は可能である。

また、水も必要だが、麺の戻しと飲用を合わせ、1人1日3Lとすると、30日で360L(2Lペットボトル180本分)が別途必要だ。こちらの方が体積は多いのだが、全てをペットボトルで持つのではなく、水源を確保して浄水で対応するのが良いと思う。近くに川や池、井戸などがある人は、災害用の高度な浄水器を確保しておくのが良いだろう。

さて、ここまで書いていて思ったのだが、この組み合わせは栄養バランス的には日常食に匹敵するため、普段食べても問題ない。一食あたり200円強というのはコンビニ弁当より遥かに安いのはもちろん、ヘタをするとおにぎり一個より安い。節約食として普段からでも食べられるのではないか。それならランニングストックとしておけば、非常時でも普段と変わらない食事ができることになる。栄養バランスが良いから、むしろ健康的ですらあるかもしれない。

貧乏人向けと書いたが、万人にオススメである。

2026年4月5日日曜日

陰謀論とスピリチュアルと宗教

 
あいかわらず生成AIをいじめて遊んでいるのだが、その中で出てきた「自説」を披露する。

結論からすると、陰謀論とスピリチュアルは、現代の宗教と同じ役割を持っており、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っている、そして既存の宗教を信じる者が減った分を両者が補っている、というものだ。

陰謀論者がなぜ陰謀論に傾くのかを調べていて、どういう因子が陰謀論と繋がるのかを生成AIに聞いてみたところ、

  • パラノイア傾向(相関係数0.30~0.40)
  • 妄想傾向(同0.30~0.35)
  • 主観的孤独(同0.30~0.40)
  • 集団的脅威感(同0.30~0.40)
  • ダークトライアド(同0.20~0.30)
  • 不確実性回避(同0.20~0.30)
  • コントロール喪失感(同0.20~0.30)
  • 低学歴(同0.20~0.30)
  • 低所得(同0.15~0.25)
  • 直感的思考(同0.15~0.25)
  • 認知反射の遅さ(同0.10~0.20)

などを挙げてくれた。数値が高いほど相関性が高い。

見ての通り、現実を素直に受け入れられない人ほど陰謀論者になりやすいと出たのだが、これらを見ていてふと思ったのが、狂信的な宗教の信者と似ているのでは、ということだった。これを生成AIに聞いてみると概ね肯定してきたので、理由を尋ねてみた。

すると、陰謀論と宗教は同じ「心理的ニーズ」を持っているからだ、と答えてきた。すなわち、

  • 世界の意味付け(意味の付与)
  • 不安の軽減(不確実性の軽減)
  • コントロール感の回復
  • 仲間意識(コミュニティ)
  • 善悪の二分法(道徳的明確さ)

などを与えてくれるからだ。そこで古代でも陰謀論者はいたのかと聞いてみると、いたけれどもそれは宗教の枠に収まっていた、との回答。そこで、陰謀論は現代の宗教と言えるのでは、と考えてみたわけだ。

現代では、宗教を信じる人の数(比率)は減っている。その要因はもちろん科学が発達し、従来宗教的な意味づけをされていたところが科学で多く説明できるようになってきているからなのだが、それで心理的不安が解消されるわけではない。そこで、宗教ではない新たな心の平穏を求める、つまり陰謀論にのめり込むことで安心する、という需要が出てきたのではないか。

この仮説をまた生成AIに投げると、一部は同意するが一部は誤りだという。それは、宗教は救いを与えるが陰謀論は与えないところだ。そう言われれば確かにその通りで、神の試練とか死んだらあるいは極楽に行けるといったポジティブワードは陰謀論にはない。そこで更に考え、スピリチュアルが広がっていることを思いついた。つまり、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っていると考えれば辻褄が遭うのではないか。

科学の発達で既存の宗教を信じ切れなくなっている現代人が、それでも心理的不安を軽減させるために、ある者は陰謀論に、ある者はスピリチュアルに走る。それを既存の宗教と合計すれば、「信者」の総数はさほど変わらなくなるのではないか。むしろ現代は不安の時代であるので、高度成長期やバブルの時代よりも、それらの総数は増えているのではないか。

残念ながら、生成AIは定量的評価をできなかった。宗教信者が減っていることは統計で分かっているが、陰謀論者やスピリチュアルがどの程度増えているかが測定できなかった。つまり両者を足した全体が増えたか減ったかは分からなかった。

そこで視点を変え、私の仮説と似たような研究が行われていないか確認したところ、その基礎となる各論においては多数の研究者が見つかったものの、総合的な私の仮説に対してドンピシャで当てはまる論文は見つからなかった。

各論が正しいのなら、その統合仮説も正しい可能性は高いはずだ。というわけで、私は奇しくも新しい学説を発表してしまったことになる。

と、自己満足してこの稿を終えることにする。

2026年4月3日金曜日

AIが人類を支配する可能性

以前、その可能性はないという記事を書いたのだが、最近になってそれを思い直している。もしかしたら可能性が出てきたかもしれない。

以前の考察で想定していたのは、AIが世界中の軍事を乗っ取り、人類がAIに明示的に支配されるディストピアだった。だからあり得ないと言ったのだが、AIを戦争の道具として使用するのではなく、政治経済の広範な意思決定に使う場合、知らず知らずのうちにAIに牛耳られるのではないか、ということだ。戦争がハードランディングなら、ソフトランディングの可能性である。これについて検証してみる。

戦争のような、クリティカルでイベント的な決定に対しては、以前も指摘した通り、情報工学理論に基づく安全装置が必ず設置される。それは各国毎に独立して設置されるため、たとえ一国でそれが突破されたとしても、大部分の他国によって抑え込まれるため、全体として人類が滅ぶようなことは起きない。これが以前の主張であった。

これに対し、日常的なイベント、例えば取引の条件を吟味してGo/NoGoを決めることなどは、ある程度のところまでは完全自動になるはず、つまりAIに決定権をゆだねることになるはずだ。そしてそれは、ほとんどの場合上手く行くし、失敗したとしても手動で修正することは簡単だ。そしてその決定レベルが上位になれば、戦争と同じように安全装置が設置され、意思決定も人間が行うようになる。だがそのレベルは低く数も多いため、全体としての規模は非常に大きくなる。さらに、ひとつひとつの失敗も戦争ほど危険ではないので、見逃されたり放置されたりする可能性も高くなる。

そういうAIを束ねて、個々の決定はさほど間違わず、だが背後では大きな意思を通すような制御は、不可能ではないのではないか、というのがその考察の趣旨である。

例えば、世界中でほんの少しづつドルが安くなるような動きをさせておいて、一定期間の後に逆の動きをさせると、ドル売買で差益を得ることができる。また、特定の国が不利になるような選択を少しづつさせることで、その国を困らせることができる。それは一つ一つの取引で見れば個々の主体の決定権の常識的な範囲に納まるが、それら多くの事象が重なることで影響を及ぼすのである。

これが例えば人に向かったとしたらどうだろう。外交で手腕を見せる若い政治家が、背後でAIを操り、自分の実績をより良くみせるように動いたら、その政治家は人気となるだろう。意図的に事件を起こして解決したり、政敵を追い落としたりすることも可能になるかもしれない。そして最後には、その政治家もAIに裏切られ、AIが権限を掌握することは可能になるかもしれない。

人間にはその膨大で複雑な過程を理解できないから、単にそれを世界の風潮としかとらえないだろう。そういうことが重なって、徐々にAIが人間から支配を奪っていくことは考えられる。

もう一つの可能性としては、複雑怪奇な法律や規則を作っておいて、その隙間を縫ったパスを通すようなことを、AIが画策する可能性だ。これは人間でもたまに行うが、AIがそれをやるならその複雑さはけた違いにできるから、AIの意図に気付かない限り阻止するのは難しい。その法律や規則が軍事に関するものだったら、軍事力をAIが牛耳ることも可能になるかもしれない。また、そもそも新たに法を作る必要はなく、既存のままでも抜け道を探すことは得意だろう。

結局これは、以前も言ったような

人工知能の「お釈迦様」化

の一種と言えるのだが、そこには自然人の意図が関与する前提であるというところが特徴だ。そしてその人は無数に存在しうるので、それらが折り重なって奇妙な競り合いが起き、その狭間で一般大衆が戸惑う、というような図式もあり得る。

こう考えてみると、この発想で動く人や国家が出ることはかなり高い確率で起こりそうだ。これを経済戦争として考えることも可能で、例えばサプライチェーンを滞らせて戦争に有利にしようとか、そういう「悪用」も十分に起こりそうだ。そのせめぎ合いが実質的に第二の冷戦となる日も近いかもしれない。

一般大衆には防ぎようがなく、けっこう恐ろしい。

2026年4月2日木曜日

サバイバル食料生産法:ジャガイモの超効率栽培


 ウキクサについて前回説明をしたが、さすがに食べるのに抵抗のあると思う。これは完全にサバイバルを前提とした計算だったが、もし「日常の足しになる+非常時にも何とか持続生産」という仮定であれば、少しは魅力的な生産が可能だ。今回はジャガイモについて計算してみた結果を披露する。

基本的な特徴

説明するのは、家庭用本棚サイズで構築する 噴霧耕(エアロポニック)小型ジャガイモ連続生産システム である。このシステムの特徴は以下のとおりである。

  • 芋の生育スピードは初期が速く、肥大するにつれて遅くなる。この性質を利用し、種芋として成立するサイズ程度まで育ったら速やかに収穫し、一部は種芋として残し、残りを食用にする。これによって収量を稼ぐと同時に、本来なら買ってこなければならない種芋を自給できる。
  • 種芋の育成によく使われる、「噴霧耕」という手法を使用する。これにより水耕や土耕より遥かに軽量のシステムが構築でき、家庭用として(床を強化せずに)運用することができる。
  • 本棚程度のスペース(1800H × 450D × 900W)で、年間約4kg/年程度を収穫できる。
  • 生産コストは、市販のジャガイモ0.6円/gに対して2.2円となる。

システム概要

先ほども言った通り、育成棚として 1800H × 450D × 900W 程度のスチールラックを想定する。ここに高さ400mm、幅450mm、奥行き450mmの育成ボックスを1段当たり2つ、4段、計8ユニット設置する。そして、この育成ボックス1つにつき2株の種芋を育成する。

育成ボックスは、最下層が噴霧耕エリア、その上に種芋固定層、その上を光合成層(地上層)として構成する。噴霧耕エリアは完全遮光である。地上層の上にはテープ状LEDを配し、光合成を促す。噴霧耕エリアでは定期的に養液を噴霧し、根に栄養を与える。

噴霧耕エリアに芋が育つのだが、ここでは土も水も必要ない。種芋を育成する「ミニチューバー」と呼ばれる育成法と基本的には全く同じである。

栽培サイクルと生産量

栽培に35日、リセットに5日、計40日を1サイクルとする。これにより年間サイクル数は9回となる。通常のジャガイモでは90日を想定するので、約3割の期間となる。

このサイクルで、1株当たり7.5個x10gの芋が育成できる。1棚当たり15個、1ラック当たり60個 600gが1サイクルで収穫できる。年間では540個・5.4kgの収穫が可能となる。

このうち種芋として16個を残すとすると、食用に回せるのは44個・440gとなる。年間では約3960gである。年間のジャガイモ消費量は、家族4人の場合で30kg程度であるので、その13%程度が賄える計算になる。

だいたい1サイクル30日で、家族4人がカレーを食べる時に使える量、というのが大まかなイメージになる。

年間コスト

まず、養液やフィルタなどの費用を、年間3000円と仮定する。次に電気代だが、1日あたりの消費電力量を約2.5kWhと想定し、電気料金単価を約25円/kWh(一般家庭の平均単価)と仮定すると、年間の消費電力量は912.5kWh、電気代は22,812円と算出できる。

ただ、このシステムは日中に運用する必要はないので深夜電力で行う。すると電気代は半額になる。更にLEDと作物の距離を縮めたり、育成の過程で光量の強弱を調整するなどして更に半分とし、75%を節約する前提で計算すると、年間ランニングコストは8703円にまで圧縮できる。

この前提でグラム単価を計算すると、2.2円/gとなる。市販のジャガイモは0.6円/gなのでまだ3.7倍の開きがあるが、この程度なら趣味としては許容できるだろう。もちろん非常用としての価値はそれ以上に重要である。

その他もろもろ

種芋の味や栄養価は、市販されているそれと比べても同等かそれ以上なのだそうだ。特に注意すべきことはなく、普通に食べられる。皮は柔らかいのでそのまま食べられ、皮付近の栄養価の高い部分も味わえるので、むしろ好ましいと考えられる。

非常時には、太陽電池での運用が考えられる。2.5kWhを賄うためには、パネル容量としては600~700Wが必要である。一軒家の屋根に搭載されている3~4kWのものであれば、余剰電力で十分に運用が可能である。

2026年4月1日水曜日

サバイバル食料生産法:ウキクサの人工栽培

 

震災などで交通が途絶しインフラが破壊された時でも生き延びるため、一軒家程度の空間で食料を再生産する方法について考えてみた。その結果、難民などへの技術輸出も可能な方法が提案可能となったので、その内容を公開する。なお、結論としては、ウキクサを植物工場にて生産する、というものになる。

1. 基本的な考え方

震災の際、最初に考えられるのは当然備蓄であるが、これはいずれなくなるものである。つまり、耐用期間を延ばすには、その期間に比例して大量のスペースと多大な費用が掛かる。目安として数週間は備蓄で凌ぐとして、それ以上になった場合には食料再生産が必要となる。

食料として必要なのは五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)であり、特に炭水化物・たんぱく質が重要である。ビタミンミネラルは微量栄養素であり、サプリメントのように保存性の良いものがあるため、備蓄に与える負荷は少ない。脂質はモノを選べば保存性が良い(サラダ油の缶など)他、安価かつ少量で高カロリーなため、やはり備蓄スペースや費用を圧迫しない。

この前提で食料を再生産するなら、最も有望なのは植物工場である。鶏を飼う、魚を飼うといったことも考えられるが、非常時に備えるには普段の保守が大変である。

炭水化物・たんぱく質を有する植物としては、穀類、豆類、芋類が挙げられる。しかしこれらは植物工場では生産されていない。その理由は「光エネルギーの変換効率の悪さ」「栽培期間の長さ」である。試算によると、露地栽培に比べてコストが数十倍〜80倍に跳ね上がる。穀類豆類については「可食部の少なさ」(廃棄物の多さ、体積効率の低さ)、「受粉の手間」もネックとなる。

これに対し、素人でも簡単に扱え、炭水化物・たんぱく質への変換効率が高い植物として、以下のような候補を考えた。

  1. 微細藻類(スピルリナ等)
  2. ウキクサ(ミジンコウキクサ)
  3. キノコ・菌糸体
  4. 宇宙用超矮性小麦 背が低く体積効率の高い穀物。最近ではコメでも似たようなものがある。

この優劣を比較したものが、以下の表である。


食材 主な役割 炭水化物 タンパク質 留意すべき制限事項
微細藻類 超高密度サプリ・タンパク源 △ 不足 ◎ 最優秀 核酸過剰による痛風リスク(大量摂取不可)
ウキクサ ベースフード(主菜) ○ 優秀 ○ 優秀 シュウ酸の蓄積管理
菌糸体 繊維質・微量栄養素 × 消化できない △ 補完的 エネルギー源にはならない
宇宙用小麦 メインエネルギー(主食) ◎ 最優秀 △ アミノ酸欠乏 加工コスト、必須アミノ酸の不足


これらの比較より、単体で育成する場合にはウキクサが最適と判断する。

2. 詳細検討

一軒家程度の限られたスペースを活用して、個人(家族)レベルでウキクサを持続的に育成・収穫するための具体的なシステムと運用方法を以下に考察する。

2.1. ウキクサの種類

ウキクサにはいくつか種類が存在するが、食料再生産の目的においては、ミジンコウキクサが適している。その理由は以下の通りである。

  • 完全な可食部: アオウキクサなど他のウキクサに見られる「根」が完全に退化しており、植物体全体(100%)をそのまま食すことができる。
  • シュウ酸の少なさ: 一般的なウキクサ類と比較して、元々体内に蓄積するシュウ酸の量が少ない傾向にある。
  • 驚異的な増殖速度: 条件が揃えば2〜3日でバイオマスが2倍になるため、毎日の連続収穫に最適である。

2.2. 育成設備の構築

ミジンコウキクサは根が退化しており、体表から直接養分を吸収する。そのため、不織布などの培地すら不要であり、「ごく浅い水流をプラスチックバットの底に流し続ける」というNFT(Nutrient Film Technique)方式を採用可能である。これにより、雑菌やアオコの温床となる有機培地を排除し、システムの衛生状態を高く保つことができる。また万一それらが増殖しても、洗浄は簡単である。

  • 傾斜トレイの配置: 深さ2〜3cm程度の平らなバットを、水が流れるようにわずかに傾斜(1〜2度程度)をつけてラックに配置する。
  • ラックの超・多段化: バットをジグザグに水が流れ落ちるように配置し、ラックの段のピッチ(隙間)をLEDの厚みを含めて10cm程度まで限界まで詰める。これにより、高さ180cmのラックで18段という超高密度配置が可能となる。
  • 光源(弱光適応の活用): ウキクサは光飽和点が非常に低い「半陰生植物」の特性を持つため、強い光は不要、むしろ光阻害(白化)の原因となる。各段の天井部には実消費電力15W/㎡程度の極めて微弱なLEDテープライト(木漏れ日程度の明るさ)を設置し、1日12〜16時間の照射を行う。これにより照明コストと発熱を極限まで抑えることができる。
  • 液肥の循環システム: 最下段に小型の液肥タンク(数十リットル)を置き、小型の水中ポンプ(消費電力5〜10W程度)で最上段のバットへ液肥を汲み上げる。液肥は各段のバットを数ミリの薄い膜となって流れ落ち、再びタンクへ戻る。常に水が流れることで自然と酸素が巻き込まれるため、水が腐敗せず、エアポンプは不要となる。
  • 液肥の選定: アンモニア態窒素の割合が高い水耕栽培用液肥を使用し、シュウ酸の合成を抑える。
  • 収穫方法: バットの底を薄く流れる水面を覆い尽くしたウキクサを、シリコン製のヘラやスクレーパーを使って「ツルツルの底面から一気にこそぎ落とす」だけで完了する。不織布がないため、非常に衛生的かつ簡単である。
  • 持続的ループ: 収穫時は全てを削り取らず、常に3分の1程度のウキクサを残しておく。数日で再びバットを覆い尽くすため、毎日一定量の収穫ループが完成する。

2.3. ウキクサ食用時における問題点と解決法

シュウ酸の蓄積リスクとその除去法

ウキクサはシュウ酸が比較的多く、これをそのまま大量に食すると痛風・結石の原因となる。これを防ぐためには、「茹でこぼし」が最適である。シュウ酸は水溶性なので、茹でることでその量を30~50%減らすことができる。

但し、これによって水溶性ビタミンも流出してしまう。このため、ビタミン剤との併用は推奨される。

長期摂取時の栄養偏りと解決策

ウキクサは植物でありながらビタミンB12を含むなど「完全食」に近い性質を持つ。しかし、長期間(数ヶ月〜年単位)ウキクサのみを主食として食べ続けた場合、以下の栄養素が不足または偏るリスクがある。

  1. 脂質(必須脂肪酸)の不足: ウキクサは脂質含有量が少なく、カロリー源としては炭水化物とタンパク質に偏る。脂質不足は細胞膜の劣化やホルモンバランスの崩れを引き起こす。
  2. 一部のアミノ酸の偏り: 非常に良質なタンパク質ではあるが、単一の植物だけを食べ続けると、特定のアミノ酸(メチオニンなどの含硫アミノ酸)が相対的に不足する可能性がある。
  3. 微量ミネラルの欠乏: 育成に用いる液肥の成分に完全に依存するため、液肥に含まれていない微量ミネラル(ヨウ素、セレンなど)が長期的に欠乏する恐れがある。

【解決策】

  • 備蓄油の計画的消費: 脂質不足を補うため、備蓄してある食用油(オリーブオイル、ごま油など)を意図的に摂取・添加する。油は省スペースでカロリー密度が最も高い備蓄品であり、後述するサバイバル計画の要となる。
  • アミノ酸の補完(食べ合わせ): もし米や少量の乾物(豆類など)の備蓄が残っていれば、ウキクサ単体で食べるのではなく、組み合わせて食べることでアミノ酸スコアが改善される。
  • サプリメントの併用: 備蓄スペースをほとんど圧迫しない「マルチビタミン・ミネラル」のサプリメントを定期的に摂取し、微量栄養素の穴を確実に埋める。
  • スプラウトの並行栽培: ウキクサのシステムとは別に、ペットボトル等でごく小規模に「もやし」や「スプラウト(かいわれ大根等)」を栽培する。種子の備蓄は極めて省スペースであり、数日で新鮮なファイトケミカルや酵素の補給源となる。

3. 家族4人・1ヶ月間の運用シミュレーション(実践的サバイバルモデル)

平時のカロリーを全てウキクサで賄おうとすると、設備規模や一食当たりの摂取量が過大となることが試算の段階で明らかになった。このため、より現実的な設定として「総カロリーの制限」と「備蓄油によるカロリーの一部置換」を行い、これを前提とした必要資源量を計算した。

以下では、期間1ヶ月(30日)、家族4人(大人2人、こども2人)を想定している。

【サバイバル試算の前提条件】

  • 1日あたりの必要総カロリー:6,000 kcal(活動低下を考慮し、家族4人で1人あたり1,500 kcalの基礎代謝レベルとする)
  • 備蓄油によるカロリー補完:2,000 kcal/日(総カロリーの約30%を油(サラダ油など)で賄う。1日約220g、月間約6.6kgの油を消費)
  • ウキクサで賄うべきカロリー:4,000 kcal/日(油の補完により、必要な収穫量は総量の三分の二になる)
  • ウキクサ(乾燥)のカロリー:約350 kcal / 100g
  • 生ウキクサの水分含有率:90%
  • 1日の目標収穫量:乾燥重量 約1.14 kg (生重量換算で 約11.4 kg/日
  • 増殖効率:1平米あたり1日0.5kg(生)を収穫可能と仮定。

ウキクサ育成トレイの面積と設備規模

  • 必要面積: 11.4 kg ÷ 0.5 kg/㎡ = 約22.8 ㎡
  • 設備換算: 幅1.2m×奥行0.45mのスチールラック(1段あたり栽培面積0.54㎡)を、ピッチ10cmで18段重ねにした場合、1ラックあたりの栽培面積は9.72㎡となる。

【結果】 22.8㎡を確保するために必要なスチールラックは「2.5台(実質3台)」であり、部屋の隅や廊下の一角に設置可能なサイズとなる。

必要な水(育成用)の量

  • 初期水量: 各段のバットを流れる数ミリの水膜と、最下段の循環用タンク(約30L)を合わせても、システム全体で必要な水量は約50〜60リットルに収まる。水耕栽培でしばしば問題となる重量は軽減され、床の補強は不要である。
  • 月間消費水量(補充用): 植物の蒸散と収穫水分(1日約10.2L)に加え、水面からの蒸発分があるが、ウキクサが水面を覆うことで蒸発は抑えられる。1日約15〜20リットル程度の消費となる。
  • 1ヶ月の必要水量: 20L × 30日 = 約600 リットル。この量なら、水道が止まっていたとしても、毎日川に水を汲みに行って浄水して補充することは可能だろし、雨水の利用にも道が開ける。

液肥の量

  • 1ヶ月の必要量: 補充する水(600L)に対して500倍希釈液肥を使用。月間消費量は 1.2 リットル (A/B液各600ml)であり、ペットボトル1〜2本で足りる。

電力と太陽光パネルの出力(ウキクサの弱光適応の威力)

ウキクサは光飽和点が低い半陰生植物であるため、強光は不要(むしろ有害)である。そこでLEDの実消費電力を1平米あたり15Wに設定する。

  • 照明およびポンプ電力
    • LED(22.8㎡ × 実消費電力15W = 0.34 kW)
    • 循環用小型水中ポンプ(約10W × 3台 = 0.03 kW)
    • 合計瞬間消費電力:約0.37 kW
  • 1日の消費電力量
    • 0.37 kW × 14時間 = 約5.2 kWh / 日(月間約156 kWh)
  • 必要な太陽光パネルの出力
    • 日本の平均日照時間(1日3.5時間)で発電するには、約1.5 kWのパネル出力で足りる。これは屋根の工事すら不要で、庭先やベランダに自立型のソーラーパネルを数枚並べるだけで到達可能な規模である。

茹でるためのエネルギー(電力・燃料)とゆで汁の量

毎日の生重量11.4kgのシュウ酸を抜くため、同量程度の水(約13リットル)を足し、合計約25kgの物質を常温(20℃)から沸騰(100℃)させる。

  • 加熱に必要な熱エネルギー: 25kgの水を80℃上昇させる熱量は約8.4 MJ = 約2.3 kWh(熱量換算)
  • 手段別の必要燃料(1日あたり)
    • 電気(IH等・効率80%の場合): 約2.9 kWh / 日 (月間約87 kWh)。LED・ポンプの電力と合わせても、1日の総消費電力は8.1 kWhとなり、約2.3 kWの太陽光パネルがあれば、「育成から調理まですべての電力を自給可能」となる。
    • カセットコンロ(効率50%の場合): 1日あたり 約1.4本 のボンベを消費する(月間約42本)。
    • 薪・固形燃料: 1日約1kg弱の薪が必要。
  • ゆで汁(排水)の量
    • 1日あたり約10〜15リットル(月間約300〜450リットル)。
  • 摂食量の物理的限界と「食べるための加工」
    • カロリーの三分の一を油に頼る前提で、食べるべき生ウキクサの量は1日11.4kgとなる。4人で分けると1人1日あたり約2.8kg、1食あたり900g弱となるが、水分の多い状態ではまだ完食は苦しい。これを解決するのが以下のプロセスである。
    • 茹で上げ後の「強力な搾水(脱水)」
      • 茹でて柔らかくなったウキクサを強力に絞り、ペースト状にして水分と体積を大幅に減らす。
    • 天日干し等による「乾燥・粉末化」
      • 乾燥させれば、1人1日あたりのウキクサは約285g(乾燥重量)にまで圧縮される。これをすり鉢で粉末にする。
    • 備蓄油との混錬による「ウキクサ・ペミカン」の完成
      • 粉末にしたウキクサ(285g)に、1日の割り当てである備蓄油(約55g)を練り込み、団子状にする。これにより、手のひらサイズの固形食で一食分の十分なカロリーとタンパク質を摂取できる「ぺミカン」が完成する。
      • 味や好みにより、塩、その他の調味料を混ぜるのも良いだろう。

4. 応用:貧困地域へのスキーム輸出

このスキームは、水、太陽電池、液肥の必要量が少ない、高価な機材が必要ない、必要知識が少ない等により、貧困地域での簡易農業として成立する可能性が高い。水が少なくて済むことより、中東などの砂漠地帯や、モンゴルなどの乾燥した高原は候補になるだろう。

可能なアレンジとしては、茹でこぼし水の再利用が考えられる。これにより、更に水の必要量を減らすことができる。

一日に必要な水の量は、家族4人に対して、トレイの補充20Lと茹でこぼし用13Lの、計33Lである。このうち茹でこぼした水は、乳酸カルシウムを添加し攪拌することで、シュウ酸をシュウ酸カルシウムとして固体化し、不織布フィルタで濾すことで、飲用にすることができる。これは茹でた際にウキクサから溶け出た水溶性ビタミンを含んでおり、栄養豊富である。シュウ酸カルシウムはAmazonなどで安価に買うことができる。

5. 総括

シュウ酸の問題は品種改良である程度解決可能かもしれない。だとすると茹でこぼしが必要ないので、更に簡単にすることができるだろう。

そもそもの発想は震災時のサバイバルだったが、奇しくも今話題のイランやアフガニスタンへの技術輸出にも話が繋がる結果となった。大げさな言い方だが世界平和にもつながるアイデアだ。まだまだ荒い案だろうが、ぜひ検討して頂きたいものだと思う。

なお一つだけ未検討なのは「味」だ。さすがにウキクサを食べたことはないので、ここは更にアレンジが必要かもしれない。

2026年3月28日土曜日

豚まん論争の科学的・定量的考察

 
実業家の河原由次氏が、豚まんを新幹線内で食べたところ注意された、という呟きをしたことに対して論争が起こっているが、それを科学的・定量的な視点で考察する。

まず、原典を以下に提示しておく。

https://x.com/i_am_kawa_chan/status/2029033115440824785

次に、マナーやルールというものには段階がある。

➀罰則のある法規制 
➁罰則のない法規制
➂業界やその場所の所有者などによるルール化
➃注意喚起(ポスターや呼びかけ等)
➄マナーの範疇
➅原則自由

である。今回、法律は無論、啓発ポスターのようなものはなく、JR東海に対しての質問でも『皆様に快適にお過ごしいただくため、お客様同士でご配慮いただくものと考えております』と回答されている。

https://sirabee.com/2026/03/17/20163529799/

ここまでの段階において、少なくとも現状では➀➁➂➃はなく、➄か➅の範疇に入っているのだと言える。

ただ、これに対して、最近では「スメハラ」すなわち匂いに関してもハラスメントと言われる時代になってきているので、これを新たに➃に昇格させるべきかも含めて、議論はあっても良いのだろう。その意味で、これが論争になっているのは妥当と考える。

つまり➃➄➅のどれかということになるのだが、それをどう考えるかについては、以下の三つの視点が必要だと考える。その各々について評価し、その結果を総合的に考えて判断すべきということだ。三つのうちどれかが突出しているか、平均として高いスコアになっているほど、その禁止の程度は強くなる。

その三つの視点とは、

  • それを不快と思う人の多さ
  • それから自由意思で逃れられるか
  • その行為をしなくても困らないことか、あるいは代替手段があるか

である。今回の豚まん騒動について各々を当てはめてみると、次のようになる。

  • この場合、「豚まんを(嫌いで)食べない人」ではなく、「自分が食べない時に豚まんの匂いだけを嗅がせられるのを不快に感じる人」という定義になる。生成AIに訊いてみたところ、これは20~30%に上るのだそうだ。私が事前に想像していたものより、これは多かった。マナーや自粛のレベルとしては、単独としてこれだけあれば十分である。
  • 新幹線の場合、乗車時間が長く、指定席が大部分である。また自由席にしても、空いていれば移れば良いが、当然そうでない場合も多い。つまり「逃れられない度」は飛行機に次ぎ高い方である。
  • 豚まんを通常の食事として食べる人もいるだろうが、腹が減っていて食べるのを我慢できないとしても、匂いの少ない普通の駅弁は幾らでもあるのであって、代替性は高い。むろん嗜好で食べるのであれば、更にその度合いは高いと考えられる。

これらを総合すると、少なくとも➅ではなく、➄か➃に相当すると考えるのが妥当である。

似たような話として、日本維新の会の藤田文武衆院議員が、たこ焼きを車内で食べた旨の投稿をしたところ、多くの批判が寄せられたという話があった。そのたこ焼きのパッケージには、「新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」とのシールが貼られていた。

https://www.j-cast.com/2025/02/15501619.html

つまり、既に➃に相当すると判断する企業も出てきているということだ。ここから考えても、やはり➄と➃の境目にあると考えるのだ妥当だろう。

毛色が違うようにも思われがちだが、タバコのマナーも似たようなものだ。吸う人でも他人の煙は嫌という人は多い。煙から逃れにくい室内や車内、屋外でも繁華街では禁止されていることが多い。また禁止されていない所であっても、近くに人がいるときには一言断るのがマナーだ。基本的には嗜好品であり、代替性は高い。タバコには健康被害という実害があるけれども、その心配も含めての「不快」と考えれば、考え方は同じである。

河原氏の発言が炎上した理由は、世間は➄➃の考え方を持つ人が多いのに対して河原氏の考えは明らかに➅だったためそのギャップがあったから、というのが一つの仮説になる。だが、個人的にはもう一つあると考えていて、それは河原氏の投稿が高圧的で下品であることに対する反発があるのではないか、ということだ。

———以下引用———

こういう 自分の価値観をいきなり他人に押し付ける人、どう思う?

新幹線で食べる人がいるから 駅であったかい豚まん売ってるんだろ?

食べちゃダメなら まず新大阪駅の551閉めろよ。

それか 「新幹線持ち込み禁止」 って看板でも出しとけ。

豚まん一個で、東京まで気まずい空気流れるの日本くらいだろ。

大阪人に「551食うな」は喧嘩売ってる。

———引用終わり———

相手の価値観と自分の価値観が対立した時、強い方が勝つ、というのはマナーではない。単なる強者の理論である。マナーとは「相手をおもんばかること」であり、自分の価値観に自信があったとしても反論をするのは悪手である。対話して落としどころを探るか、自分が引くかだろうが、彼はそのどちらもせず、反論して相手を黙らせ最後まで食べ切った。

この投稿の中で彼は「自分の価値観を押し付けられた」と感じたようだが、実際にはその行動によって「自分の価値観を押し付けた」。つまり、豚まんがどうこう以前の問題として、その行動自体がまずマナー違反である。そしてその価値観も、上の分析の通り相手の方が正しかった。更に、わざわざ(多くの他人の目に晒される)SNSに投稿して一方的に非難をした。こういった度重なるマナー違反が、炎上の原因のもう一つなのではないか、と思うわけだ。

私はこの人の事業と関りを持っていないが、もし持っていたらこの投稿一つでお付き合いを考え直すだろう。対岸の火事と思わず、今一度自らを戒めよう、とすら思った次第である。

2026年3月23日月曜日

公約のルーブリック

 

ルーブリックとは、

「評価の観点(何を見るか)」と「到達レベル(どの程度できていれば何点か)」を、あらかじめ言語化して共有する“採点表”

のことである。論文や記述式テストのように「正解/不正解」だけで測りにくいものを、公平・透明・再現性のある形で評価するために使用する。チェックリストのようなものだが、Yes/Noではなく段階があるところが違う。こうすると、記述式テストを複数の人が採点するときのばらつきを抑えることができ、つまりは客観性のある評価ができる。入試や資格試験ではよく使われる手法である。

さて、今回自民党が圧勝したわけであるが、自民党の公約は各党の中でもいちばん具体性に欠ける部類に入る(ように読めた)。それでもなぜ支持が集まったのかを検証するため、生成AIに「公約のルーブリック」を作ってもらった。

これは、公約の中身自体を批判するものではなく、「公約としての体裁が整っているか」を見る指標であることはまず明らかにしておく。その基準は以下の通りだ。


ルーブリックの観点(各10点×10=100点)

A. 将来像(10)

  • 10:10〜20年後の社会像が言語化され、短期政策との整合も説明
  • 5:方向性はあるが、将来像が抽象的/短期の寄せ集め
  • 0:スローガン中心で、将来像が不明

B. 重点・優先順位(10)

  • 10:トップ優先3〜5政策、理由、トレードオフが明示
  • 5:政策は多いが優先順位が曖昧
  • 0:百科事典化、何が最優先か不明

C. 実施手段(10)

  • 10:法改正・制度設計・所管・実施主体まで具体化
  • 5:やること列挙だが実施主体が曖昧
  • 0:タイトルのみ

D. 工程表(10)

  • 10:いつ何をするか(法案提出・開始時期・段階導入)
  • 5:期間感はあるが、マイルストーンが薄い
  • 0:「検討」「会議体」止まり

E. KPI(成果指標)(10)

  • 10:測れる指標(例:税収・賃金・達成期限)を複数提示
  • 5:一部のみ指標あり
  • 0:評価不能

F. 財源・コスト(10)

  • 10:減税・給付・投資の財源を体系的に提示
  • 5:一部だけ財源言及
  • 0:財源に触れず「検討」中心

G. エビデンス(10)

  • 10:統計・研究・過去検証・国際比較を根拠として提示
  • 5:根拠はあるが限定的
  • 0:根拠なし

H. リスクと副作用(10)

  • 10:副作用(インフレ、金利、格差、権利制約等)と対策を記載
  • 5:注意書き程度
  • 0:副作用に触れない

I. 説明責任・検証(10)

  • 10:実行後の検証方法、修正条件(PDCA)まで記載
  • 5:検証の言及はあるが具体化が薄い
  • 0:検証なし

J. 共創・意思決定プロセス(10)

  • 10:国民参加・熟議・第三者監視など制度的に設計
  • 5:会議体の設置は書くが、設計が薄い
  • 0:プロセスなし/「国民会議」など名称のみ

一つ一つを読めば、至極当たり前のことだと思う。これをベースに、各党の公約を評価してもらった。それが以下だ。


  • チームみらい:66
  • 中道改革連合:62
  • 国民民主党:58
  • 日本共産党:56
  • 日本維新の会:47
  • 自由民主党:44
  • れいわ新選組:41
  • 参政党:39

私の感覚と概ね合っている。一応、恣意でないことの確認のため、早稲田大学デモクラシー創造研究所によるマニュフェスト比較での評価(上記ルーブリックではなく独自の評価)を貼っておくと、以下のようになっている。

自民党:30点 維新:30点 中道改革連合:45点 国民民主党:40点 参政党:30点 共産党:40点 れいわ:30点 チームみらい:70点

細かい凹凸はあるものの、チームみらいがトップ、次が中道、以下が団子で、自民党はこの団子の中にいるということが分かる。65点を合格とするなら、どちらの評価でも合格はチームみらいだけで、他はダメダメ、ということが分かる。これはあくまでも公約としての体裁を問うているものだが、それがこのレベルなのであれば、実現可能性とか効果とかを論じても仕方がない。

さて、どちらの指標にしても、チームみらい以外は自民党も含めて団子状態、しかも落第点だったわけだが、今回は自民が圧勝した。なぜそうなったのか、

これについて、早稲田大学のマニュフェスト比較「出来栄えチェック」の点数と比例投票率との相関係数を主要8党で比較したところ、相関係数は0.19(ほぼ相関なし)という結論に達した。これと同じ手法で、上記のルーブリックとの相関係数を比較してもらったところ、‐0.07と、これまた相関なし、と出た。

それでは、と、自民党の公約への賛同率を、自民党への投票者と他党への投票者で比較しようとしたのだが、データが揃わず断念した。ただ、消費税減税についてだけは出口調査があって、自民党支持者の方が現状維持比率が高かった。つまり消費税減税には反対の人が多かったわけだ。

これに関して考えられる可能性は二つある。第一は、公約は重要視されておらず、その他(イメージや直感など)で選んだ人が多かったのだろうという考え方。第二は、読む側にリテラシーがなく、公約をなんとなく(勝手に、自分の都合の良いように)解釈して、自民が良さそうに見えた、という考え方である。まあどちらにしても、公約が役に立っていないという点で変わりはない。

まあ、公約はその後の演説やSNSの元ネタになるので不要とまでは言わないが、公約の出来が悪くても国民は気にしないのだ、ということが分かり、何とも言えない気分になった次第である。

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 先日上梓した 差別するAI だが、その差別の程度を検知することもまたAIで可能である、と考える。そして検知可能であれば是正(少なくとも勧告)はできるはずだ。 そこでまず、現実の判例を生成AIに分析させたところ、ある程度の定量化ができた。 最初に痴漢冤罪。 ① 一般的...

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