2020年12月15日火曜日

一日中VR


 ブルース・ウィルス主演の映画で「サロゲート」というものがあった。現実世界では人間そっくりのロボットを動かし、自分は部屋の中でそれを操作している、というものだ。今見てみると、あまり現実的ではないな、と思うようになった。あの操縦法が許されるのなら、普通にVR空間にしてしまった方が遥かに簡単だからだ。自分も相手もVR、それで良いではないか。

別項でも示している通り、VRでの生活が長くなってくると、今のようなVRゴーグルでは都合が悪い。まず目の周りが蒸れるし、遠くの人は良いとしても目の前の家族と縁遠くなってしまう。電池も一日は保たない。これを解決する方法を考えてみる。

個人的に注目していたのは、Focals 2020だった。これは黒縁メガネとほとんど変わらない外観を持つ、MRグラスだ。しかしGoogleに買収された後音沙汰がない。

また、このFocalsとて一日中は動かせない。大きさを取ればバッテリや画面の質が落ちる、これは必然だ。これを何とかしなければならない。

そこで考えるのは、室内にいることを前提として、電源や映像を外部から供給することだ。そこで、こんなものを考えてみる。

Focalsと同じく、大きめのメガネ、あるいはサングラス程度の大きさの端末を想定する。基本的にはMRであり、つまりはグラスは透明で、向こうが見える。ディスプレイの形式もFocalsと同じである。但し解像度と視野角は改良してほしい。

また、普段はMR、アタッチメントでメガネを覆うことでVR兼用にしたい。これは他のVRグラスでも例があるので難しくないだろう。それがかなわないのであれば、VR用とMR用は別のグラスになる。この場合でも、従来よりは薄く軽くできるだろう。

基本的には、テレビと同じように映像を受信して垂れ流すだけとする。Miracastのような技術を使えば良い。電源も無線供給とする。ドコモが研究しているWi-Chargeは、4mの給電が可能だそうなので、これを使用する。ツルの部分には骨伝導スピーカを付けておく。後で述べるがマイクは不要である。

このシステムに置けるもう一つの主役は、天井シーリングに付けるコントローラである。このシーリングには、もちろん照明は兼用するが、その他にグラスのコントローラとしての機能が備わっている。

その一つは、言うまでもなく上の無線給電と画像データの送信である。天井からはせいぜい3mなので、Wi-ChargeもMiracastも能力としては充分だ。また外部との接続にはWiFiを使い、WiFiルータと接続する。

もう一つの機能は、グラス装着者の顔の向きや手の動きを解析することである。グラスにセンサを付けるとそれだけ複雑になり、電力も消費するため、その機能を移すわけだ。グラスに付けるのは再帰性赤外線反射材のような簡単なものに留め、カメラでその向きや位置を検知する。その解析結果はそのままシーリング内のコントローラが使うため、タイムラグは最低限に抑えられる。

カメラは2、3台を位置を変えて設置すれば、立体的に検知できる。また指先や手首にも反射材入の手袋ないしは腕輪や指輪などを付けておけば容易に検知できるので、CPU負荷を軽減することができる。これにより、コントローラを手に持たなくても操作ができるようになる。

室内で使う前提であるため、マイクをグラスに仕込む必要はない。シーリングに仕込んでおけば良い。一方で音声は一人ひとりに送る必要があるため、上のようにグラスを仕込んだ骨伝導を使用する。マイクがないことは、通信が一方向で良い(シーリングからグラスへ)ことを意味しており、グラスの構造の簡略化に貢献する。

Focalsクラスの軽量、また目の周りを厳密には覆わないものであれば、一日中掛けていても疲れず、また蒸れないで済む。初期にはここまで軽快なものは望めないだろうが、それでもグラスが大きめになる程度であり、シーリング側は変わらない。シーリングの能力が十分にあれば、部屋に4、5人いても同時に使える。グラスは端末なので安価に作れるから、この点でも合理性がある。

シーリングは新しい鍵になる、というのは以前も投稿したが、こうなるとホームサーバ機能も含め、シーリングに集約した方が良い気がする。例えばワイヤレスキーボードを机の上に置いて、ディスプレイはグラスに表示する、というような使い方をすれば、普通のPCと同様のことができるだろう。壁に仮想的なテレビを置くことで、テレビやビデオを見ようと思えば、そのための情報もシーリングに集中する必要がある。

ここまでくれば、以前提案したように「全てがVRで表現され、何もない部屋」が現実味を増してくることになる。固定電話、FAX、本、テレビ、カレンダー、掛け時計、置物、BDプレイヤー、スマホ、音楽プレイヤー、PC、タブレット、腕時計、等は全てバーチャルになり、棚に仕舞うべきものはどんどん仮想世界に逃げていく。朝起きたらまずグラスを付け、会社や学校もバーチャル世界で済ませ、趣味も雑用も全て同様にバーチャルで行い、一日中リビングから出ない。そんな社会が、あと十年もすれば来るのではないか。

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