2025年8月5日火曜日

労働生産性向上策私案


 https://www.newprinet.co.jp/日本生産性本部 「労働生産性の国際比較2024」を

こちらの統計によると、日本の一人当たりの労働生産性は、1990年頃には13位だったところ、その後落ち込み、1998年から20位前後で推移していた。だが2018年から急速に落ち始め、2023年には32位と急激な下落を起こした。そもそも20位でも不名誉だとは思うが、今や30位というのは情けない限りである。

2018年はコロナ前であり、コロナのせいではない。2011年の東日本大震災前後でも落ち込まなかったものが急激に落ちたのには、何か理由があるに違いない。そう思って少し調べてみた。生成AIの助けを経て得られた結論は、以下のようなものだ。

順位 要因 相対的影響スコア 解説
1位 マークアップ率 -0.179 日本は停滞、米独は上昇 → 価格転嫁力の差が拡大
2位 為替レート(円安) +0.164 PPP換算での見かけの生産性が大きく低下
3位 DX投資額 -0.080 日本は緩やか、米独は急増 → 効率化の差が拡大
4位 高齢者就業率 +0.066 日本の増加幅が大きいが、影響度は相対的に小

マークアップ率とは、コストを価格に転嫁できているかどうか、である。物価は上がっているのだから、同じものを作るのにも原価は上昇している。これを価格に転嫁できないと、労働生産性は下がる。他国は順調にアークアップ率を上げているのに、日本は停滞したままだ。

為替は円安だ。日本は加工貿易で儲けている国なので、基本的に円安はダメージになる。DX投資はその名の通りで、DXによって生産性は著しく向上するが、日本はこれが停滞している。また、高齢者は一般的に労働生産性が低いため、労働者全体における高齢者の割合が増えると平均値は下がる。

これらを影響度順にランキングすると、見ての通り、DXや高齢者の影響は意外に小さく、マークアップ率と為替レートがその主要因である。

次に、マークアップ率が低い理由をAIに尋ねたところ、

指標 日本 米国 ドイツ
平均マークアップ率(製造業) 約1.13 約1.45 約1.38
無形資産投資比率(対売上) 約3〜5% 約10〜15% 約8〜12%
上位10%企業のマークアップ率 約1.31 約1.80 約1.65

無形資産投資比率が低いことが挙げられた。無形資産とは、例えばブランドイメージ、研究投資、人材開発などだ。つまり、ブランドイメージが高ければマークアップ率も高くなるのだが、日本はそれが低いのだ。特にGAFAのような強力なブランドイメージを持つ企業がトップにいるアメリカでは、それらが平均を引き上げる効果があるのだという。

日本は不景気だから、景気が悪ければ無形資産への投資が減るのは当たり前だろう、とAIに聞いてみると、そうではなく、世界ではむしろ増える傾向すらあるのだという。その理由として、国内では短期投資が重視される傾向があるのだそうだ。つまり銀行や株主が短期的視点になっているわけだ。これには研究による裏付けもあるらしい。また、日本は機関投資家の比率が高く、これも短期的視点を重視する傾向に拍車を掛けているのだそうだ。

これらから考えられる政治的施策は、要するに「株主が長期的視点で企業を評価してくれるように誘導すること」だ。AIの推奨を基に、以下四つを提案する。

  1. 長期的インセンティブ制度への優遇
    1. 例えば、5年以上株主であると、株主優待の額が向上する、といったものだ。この制度を利用する株主は、目先の利益よりも長期的な視点を重視してくれる。
  2. 株主との対話頻度向上に対する優遇
    1. 海外では年10回も対話があるというのが普通なのだそうだ。これにより会社からの情報開示が増え、株主はより会社を詳しく知った上で投資することができるようになる。それは必然的に、目に見えない投資=無形資産投資への情報開示が増やすので、その視点で見る投資家の比率が増える、というわけだ。
  3. 無形資産投資比率向上に対する優遇
    1. 例えば研究等に利益の15%以上を投資することで法人税が割り引かれる、といったものだ。
  4. 個人投資家の増大に対する優遇
    1. 個人投資家は機関投資家のような頻繁な売買は行わない傾向があり、必然的に長期的な投資が増えることになる。ただ、これはNISAで既に行われているので、別の視点での優遇が必要かもしれない。例えば個人投資家比率が高い企業が優遇される、あるいはクラウドファンディングへの優遇、などだ。

これらには何れも短期的効果はないが、長期と言ってもせいぜい5年程度である。これらの施策によって欧米並みに無形資産投資が高まれば、マークアップ率は向上し、労働生産性も向上するはずだ。

さて、これらの政策案は、無料版のCopilotを使って1時間程度で作成できた。自民党はおろか、弱小政党であっても簡単に立案できるばかりでなく、全て税優遇だけで実現できるので実現性も高い。細部を詰め、さっさと提案してほしいものである。

AIによる政策立案という話題性からすると、「チームみらい」が良いかもしれない。だがもちろん本稿は公開されているので、他党でも構わない。早い者勝ちでもない。好きにアレンジして使ってほしい。

2025年8月1日金曜日

津波の高さと遡上高

 2025年7月30日、ロシアのカムチャツカ半島沖で地震が発生し、日本の太平洋側の広い範囲で津波警報、津波注意報が発令された。最大予測は警報地域で3m、注意報地域で1mだった。

電車は止まったところもそうでなかったところもあったが、都心で避難した人は皆無だった。警報が出てから半日経っても海岸で遊んでいた人もいたし、海岸の道路の交通も普通にあった。

実際にはほとんどの地域で0.3〜0.6m程度、最大でも1.3mに留まった。そして自分としても、海抜3m以上の場所にいたため、特に警戒はしなかったのだが、その後調べていて肝を冷やした。その判断は間違っていたのだ。

その間違いとは、津波の高さと遡上高との違いだ。つまり、津波の高さが1mであれば標高2mのところには届かない、と思い込んでいたのだが、それは誤りであり、津波の高さ以上のところにまで津波は到達するのだ。それを遡上高と言う。そして実際に過去どの程度の遡上高があったのかを調べてみて、肝が冷えたのだ。以下は生成AIに聞いて得た、過去の遡上高の例である。

1. 東日本大震災(2011年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 岩手県大船渡市で観測された津波の高さは、3.8mでした。
    • 宮城県石巻市鮎川で観測された津波の高さは、3.2mでした。
    • 気象庁は、最大で10m以上の津波が予想されると発表しました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、30.9mの遡上高が確認されました。
    • 岩手県宮古市田老地区では、40.1mという、観測史上最大級の遡上高が記録されました。
    • 宮城県女川町でも、34.7mの遡上高が確認されました。

この事例が示すように、発表された津波の高さが3m程度であっても、遡上高はそれを10倍以上も上回る地域がありました。


2. 日本海中部地震(1983年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 秋田県男鹿市で観測された津波の高さは、1mでした。
  • 実際の最大遡上高:
    • 男鹿市加茂青砂地区では、観測値の1mをはるかに上回る14.9mの遡上高が記録されました。
    • この津波により、秋田県や青森県などで、多くの死者・行方不明者が出ました。

3. チリ地震津波(1960年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 日本の太平洋沿岸各地で、津波の高さは1mから数メートルで観測されました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、観測された津波の高さが数メートルであったのに対し、最大で5.5mの遡上高が記録されました。
    • 特にリアス式海岸の地形が、津波のエネルギーを集約させ、被害を拡大させました。

どうだろう。実際の津波の高さの10から15倍の遡上高が、実績としてあったということだ。予想高から考えても数倍の差があったのだ。

ここから得られる教訓は、至極簡単だ。最大高さ予測の15倍まで見込んで避難すべき、というものだ。今回の場合、東京23区は湾岸の注意報が1mだったわけだが、この計算によると標高15m以下のところは避難すべきとなる。その面積は、おそらく23区の三分の一から二分の一という広大な面積になる。ここに住む人は200から300万人に上ると思われ、数時間で避難するのは困難な数である。

となれば選択肢は一つで、標高と高さを合わせて15m以上のビルに避難するしかない。幸いにも都心にはこの程度のビルは無数にあるので、そこに数時間退避させてもらえば良い。住民全体としては無理でも、個人としてその知識を持っていれば、次からは対処できる。

それにつけても、この情報は当然気象庁は知っていたはずなのに、なぜ発表されなかったのだろう。大いに疑問であり、かつ不満である。下手をすれば、今回300万人死んでもおかしくなかったほどの重大情報なのに。無知は命をも左右する。次からはぜひ発表してほしいと思う。もちろんこの記事を読んだ諸氏におかれては、ぜひ周りにこの知識を拡散して、命を守ってほしい。

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