2025年11月6日木曜日

外国人共生DX

 
クルド人と地元の人たちとのトラブルに見られるように、日本で外国人排斥運動が起きている。

世の中は近年、融和より対立を好んでいるように見える。その代表は右翼対左翼で、トランプや安倍のような対立を煽る風潮の流れを汲んでいる。生活保護者への批判、女性女系天皇、憲法改正などでも同様の構図が見られる。話し合いではなく拒絶と罵り合いで対応する、という方向だ。陰謀論の台頭さえ、この延長と感じる。外国人排斥もこの一つなのだろうが、これらが望ましくないことは言うまでもない。

もちろん、相手方(この場合はクルド人)に全く問題がないわけではないので、双方が双方を理解する努力は必要である。そしてそれにはコストが掛かるので、それをICTの力で省力化してやろう、というものが、タイトルの「外国人共生DX」である。

字面だけ見てイメージできることは、大きくは二つだろう。第一は、翻訳や解説などによって、日本における行動や手続きを「補助」するシステムだ。翻訳はすぐわかるだろうが、例えば、外国人が土葬をしようと手続きを調べても、そもそも日本の自治体には土葬をすることが頭にないため、「手続きが存在しないことが明示されていない」。ただ「手続きがない」と言うだけではなく、文化的背景の違いを補完して説明してやらないと、それが分からないし、更に「ではどうすればよいか」も補佐してやる必要がある。そういった、既存のシステムに対する「前段」を用意するものだ。

第二は、「異文化理解システム」である。これは広い意味でのEMS(Education Management System)であって、教育コンテンツが異文化理解やコミュニケーション、問題解決能力、調整力、日本語教育、等であるものだ。座学が大部分だろうが、VRやシミュレーションなども取り入れられるだろう。

第一は直ぐにでも着手できる。ここには生成AIが大いに活躍するだろう。つまり、きっちりした説明体系を作るよりは、生成AIに臨機応変に説明させる方が早いと思われる。

問題は第二の方で、単に教育コンテンツを揃えれば良いだろうというものでもない。そもそも何を教えるのか、その到達度や評価をどうするか、また宗教や思想信条の衝突に対してどう考えるか、など、難しい問題が山積している。

例えば、ゴミ出しルールを教えたとしても、それをどの程度律儀に守るべきかについての思想が違っていたら、あまり効果はないかもしれない。また、日本人の方が学ぶべきこともある。「ここは日本だから何から何まで日本のルールに従え」と言うのも違うと思うからだ。特に宗教観の違いは強烈であり、日本人の目から見ていくら非合理的であっても尊重すべきものはある。場合によっては国際問題に発展する危険すらあるものだ。

コンテンツの多くは、マナーや不文律、暗黙の了解といったものを明文化するものになるはずだ。だがこれは、日本人にとっても異論が続出する可能性がある。マナー警察のようなXX警察も、その逆もいるはずであり、バランスを取るのは難しい。それそのもの(過剰な指摘とその反発)も日本の文化であるかもしれない。

外国人共生のために日本人も学べ、と言われると、反発する人も多いだろう。それを説得し教育させるのも、このEMSの役割である。そのためにはもっと広く、国や人種を問わない「基礎的な人間力」という入り口を作った方が良いかもしれない。さらに言えば、これは義務教育とシームレスに連携したり(たとえば道徳教育の一部として取り入れるなど)、あるいは生涯教育として国が主導したりする方向性も考えられるのではないか。だがそうするとまた一部の左翼が「洗脳だ」「思想を強制するな」などと騒ぎ立てるかもしれない。というわけで、色々と難しいのだ。

そういった「中身」についての議論は百出だろうが、ICTを活用したシステムとして必要なものが何かは、これとは別に考えることができる。

  1. 単一の点数ではなく、複数の視点を持つ総合的なスコアを出すシステムであること
  2. 思想信条の違いや正解のない問題に対応したシステムであること
    1. 個々の問題に正解を出すのではなく、話し合いや協調、問題解決に向けた姿勢を問うものとすること
  3. 個々人の思想信条を類推できないようプライバシーに配慮したものであること
  4. ある程度公的なバックグラウンドを持つものであること
    1. 世界的にもそれなりに認められるものであること
    2. 公務員採用試験の条件やスコア加算に(将来的に)採用され得るものであること
    3. マイマンバーによるオンライン資格確認システムに(将来的に)対応すること
  5. 座学だけでなく、VRシミュレーションやロールプレイなど、ある程度総合的な視点を持ったコンテンツであること
  6. 外国人だけでなく、日本人も対象とすること
  7. 無料ないしは極めて安価に学習できること
  8. VC(Verifiable Credentials)、DIW(Digital Identify Wallet)への対応
  9. 日本人によるフィードバックと定期的な改正・改定、そのための大原則、更にはそれらの適正性を恣意的でなく監視するシステム
    1. 異論があるものについて、書くこと自体をタブーとするのではなく、個々のコンテンツへの合意度まで含めて明文化する
    2. 両論併記はもちろんだが、その温度差についても記述する

コンテンツ自体の評価を恣意なく行うために、世論を生成AIで評価して付け加えるというのは面白い試みだと思う。これも複数の指標をスコアにしてレーダーチャートを作り、総合スコアを出す、というものになる。指標の候補としては「制度的裏付け(法律など)」「社会的普及度(実際にどの程度守られているか)」「専門家の見解」「世論調査の結果」「地域格差」などが考えられる。特定のコンテンツ(道路へのポイ捨て)に対してこのスコアがこの程度、というものが広範囲に列挙されていたら、外国人の理解も進むだろう。そしてその外国についても同じ評価があれば、両国の違いが浮き彫りになるはずだ。そしてこれらは生成AIで簡単に作ることができる。

日本語は、翻訳アプリが発達しているため、実はあまり重要ではない。ICTで補完できるものは除き、本質的にコンテンツとして教えるべきものに厳選して、基礎・応用・高度(異論のあるもの、より良いマナーなど)とレベル分けして、スコアを出すようなアプリがあれば、外国人受け入れのハードルは大きく下げられるのではないかと思う。

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