2026年2月3日火曜日

分散下水処理モデル

 下水道が腐食し、道路で穴が空くという事例が全国で頻発している。それに落ちて人が死ぬという悲惨な事故も起きた。下水道の復旧にも多大なコストが掛かるということも分かってきた。

下水道の多くは高度成長期に敷設され、寿命を迎えている。この保守コストが酷く嵩み、自治体の予算を圧迫していることもよく知られている。予算がなくても下水道は壊れ、道路には穴が空くので、補修せざるを得ない。これが更に自治体の予算を圧迫する。人口減少下で、自治体の収入は減少傾向にあり、これはもう破綻へのスパイラルと言える状況にある。

これを何とかするための施策を色々考えていて、有望だと思ったのが、この「分散下水処理モデル」である。これを以下に説明する。

人口1万人程度に対し、地域下水処理場を一つ作る、その処理場で処理した水は下水道を通らず、川などに放出する。地域下水処理場の規模は小学校の校庭程度だが、沈殿槽型を採用するので地下に作ることが可能で、地上は公園などにできる。

この沈殿槽型浄化槽は、従来の下水処理場や、あるいは家庭で使われる合併浄化槽に比べ、極めてローテクで運用できる。基本的に機械装置類など可動部はゼロであり、重力を利用してただ流すだけで浄化できる。このため管理も簡単で騒音も出ない。地下に作ることで臭気も閉じ込められる。

ただし、汚泥は出るため、これを定期的にくみ出し、トラックで高度処理場に運び、最終処理をする。この高度処理場は従来の下水処理場の敷地を利用する。おそらく機材のいくばくかは流用できるだろう。

このモデルの特徴は、次のとおりである。

  • トータルで見ると、必要な人材のレベルは低くてよくなり、人数も少なくてよい。各地域の処理場は基本的には無人であり、保守は基本的にセンサ監視と汚泥汲み上げだけである。もちろん汲み上げに必要な人材の技術レベルは低いので、外国人でもアルバイトでも十分可能である。一方で高度処理場にはもちろん高度な技術が必要だが、従来の下水処理場の人員が流用できる程度の技術であるし、処理対象はぐっと少なくなるので人員そのものは減らせる。つまり人材不足の現代に適している。
  • 地域処理場の面積の合計は、従来の下水処理場よりは広くなる。だが、従来の下水処理場はまとまった面積が必要である一方、地域処理場は隙間に当てはめられる。「くず地」の活用と考えれば、土地効率はむしろ高くなる。
  • 地域処理場はローテクであるため保守がほとんど不要であり、当然不具合の発生もほとんど考えられない。
  • 地域を延々と走る大型下水道管は不要になるので、そのための保守が必要ないし、腐食して道路に大穴を空ける心配もない。一方で各家から地域処理場への下水管は当然無くならないが、それらは細く、処理までの時間も短いので、腐食しにくいし、腐食しても大穴にはなりにくい。

というわけでいいことづくめに思えるのだが、幾つか欠点もある。まず、このモデルは大都会では成り立ちにくいということだ。つまりは人口密度が高すぎるので、地域処理場を確保するのが困難なのだ。また地価が高いとトータルコストで従来型の方が有利になってしまう可能性がある。

また、山間部でも成立しにくい。重力による下水処理という性質上、高低差があり過ぎる地域ではポンプが必要になるからだ。ただしこれは従来の下水でも条件は同じだ。

というわけで、郊外や地方都市などに適しているモデルである。そういうところはコストパフォーマンスの低い過疎地のインフラ保守に苦労しているところだから、十分に検討に値すると思う。

このモデルは、必要人材の量・質の低減ができるという点、少子高齢化の時代にマッチしている。このため、コスト低減ができず従来型より少々値が張っても、採用する意義がある自治体というのは出てくるだろう。人材不足が致命的な超過疎地域では、補助金を国に求めてでもこのモデルに移行する方法を模索するのではないだろうか。

なお、このモデルでは大雨や台風などにおける「洪水」を考慮していない。従来型の下水道は排水も雨水も分離せず皆流していたが、このモデルでは雨水の対応を別に考える必要がある。

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