2024年12月13日金曜日

少量多品種植物工場

 植物工場で少量多品種栽培をしたいと思った時に困るのが、環境制御だ。植物の生育に最適な条件は植物によって異なり、しかも成長の過程でどんどん変わる。このため、既存の植物工場では複数の種類を並行して栽培することができない。環境のコントロールは皆一斉にやる必要があるからだ。これを解消するためのアイデアが、今回のテーマだ。

まず、密閉容器を多数用意する。イメージとしては、ドラム缶よりは小さいがペール缶よりは大きいものだ。ドラム缶は200L、ペール缶は20Lだが、50L〜100L程度が良いのではないかと思う。一般的な段ボールが50L、ミルク缶が100Lくらいなので、この程度のサイズ感だ。例えば、JEJアステージ NCボックス #45 (幅38×奥行54.5×高さ32cm) は66Lである。これを幅120、奥行45、高さ180cmのスチール棚に載せると、最上段1段を制御装置やリザーブタンクに充てる前提で、4段8箱を設置できる。

この容器の一つ一つについて、断熱し、環境制御装置を付けて、中の環境を制御する。具体的には、照明用LED、紫外線ランプ(殺菌)、温度センサ、ヒーター、換気ファン、ポンプとリザーブタンクと水位計(水と肥料水)、カメラ、ECセンサ(肥料濃度)、無線LAN、及びこれらを制御するワンボードコンピュータで構成する。また、全体を監視するサーバと繋がり、異常通知や収穫時期の通知を行う。

電源や水、液肥等の密閉容器への供給については、棚側に配管し、接続できるようにする。また、排水は行わず、給水のみで制御する。これによって、容器下部は穴あけ加工せずに済むので、水漏れの心配がなくなる。

人手の作業は、最初に土と種(苗)をセットしたら棚に載せるだけだ。後は育成が完了するまで放置する。収穫時には容器から通知が来るので、棚から下ろして収穫する。

棚は単一の規格、密閉容器も単一の規格で作り、環境だけプログラムを変えてやれば、幾らでも種類を増やすことができる。

小さい容器を多数使うことで、例えば葉物と根菜と芋を同時に育成したり、育成に長く掛かる作物でも時期をずらして作成することで通年栽培できるなど、メリットは色々と考えられる。

一方、このプランの弱点は無論コストである。密閉容器一つ一つはいわば小さな植物工場であり、単価は数万円といった程度だろう。これで寿命が10年だとしても、機械だけで消耗費が年間数千円になる。野菜を年に数サイクル作ったところで回収できるものではない。

なので、これが活躍できるところは、島嶼部や陸の孤島のような僻地、長期航行する大型船、宇宙船や宇宙ステーション、核シェルターなどの隔離される空間である。マーケットは大きくはない。

これが単価数千円にまで落ちれば、爆発的な需要が生じる可能性はあるだろう。このためには機構部分の集積化が必要である。つまりカメラ、センサ、CPU、照明部分がワンチップないしはせめてワンボードになることだが、可能性はないわけではない。今でもラズパイやM5のようなワンボードコンピュータはあり、数千円のものもある。そこに命を懸ける価値はあるだろう。

2024年12月11日水曜日

境界知能の人の教育と仕事

 知能指数にしてIQ70未満の人が知的障害、IQ70以上85未満人を境界知能と呼ぶ。知的障害者が2%、境界知能が14%で、合わせて人口の16%に当たる。

こういった人たちのための教育には、特別支援学級や特別支援学校が存在する。だが、これは知的障害だけでなく肉体的障害の子供も含まれる。これを統計的に見てみると、

  • 境界知能: 約14%
  • 知的障害: 約1~2%
  • 視覚障害: 約0.1%
  • 聴覚障害: 約0.1~0.2%
  • 肢体不自由: 約0.2%
  • 病弱・虚弱: 約1%

となるそうなので、境界知能が圧倒的に多いことが分かる。そして境界知能は立場的に中途半端なため、普通学級で劣等生として扱われ、自信をなくしてしまうようなことも多いと考えられる。障害者保護などにおいても、検討の対象から外れてしまうことが多い。だが彼らは人口の14%もいる。彼らが無視されるのは社会の損失である。

ここから考えるのは、特別支援学級や特別支援学校の対象として、境界知能はふさわしくないのではないか、独立させた方が良いのではないか、ということだ。14%の境界知能者向けの教育機関を新たに設け、特別支援学級や特別支援学校はその他の障害の子供に専念する方が効率が良いのではないだろうか。

境界知能の人は肉体的問題はないので、将来的には主に肉体労働(ないしは芸術的労働)についてもらうことを前提として、知能の部分をAIなどで補完するように社会を構成する。もちろん知的部分で騙されないように、信頼できるアドバイザとしてのAIである。騙そうとする輩から彼らを保護するための社会的仕掛けさえあれば、彼らは社会で活躍できる。

肉体労働とは言っても、筋肉が必要な訳ではない。現代では機械がサポートしてくれる。知的な部分で迷ったら、(AIの)指示通り動けば良い。そしてそういった系統の職業では境界知能を優先させ、健常者の就業を制限するようにする。例えば建築業界なら建築業界が全てそのようなAIをデフォルトとする。こうすると、平均知能以上の人は建築業界にはいなくなる(厳密には監督など指示系統には必要)。そういう人は知的労働に廻ってもらう。

こうなると、少ない人口の中で各々得意分野に棲み分けができるので、社会全体の効率は良くなるし、今まで活用できていなかった境界知能の人が生き生きと働けるようになる。効率化の程度は10〜20%くらいは行けるのではないかと思う。今でも境界知能の人は社会に出ているが、この仕掛けが回ればもっと活躍できるだろうし、所得も上がるだろう。AIを用意するコストは、当初は大きいだろうが、これは国が補助をしてやればよい。

社会的仕掛けとしては、境界知能認定を行う必要がある。免許のようなものだ。この認定を受けると上記のような職業に優先的に就業できるようになる。また法律で、認定者に対して直接あらゆる契約をすることは禁止として、AIないしは担当カウンセラー経由で行うことが義務付けられる。

これは買い物のようなものも同じで、例えばコンビニで買い物をするにもAIの確認が必要である。ただ、その内容をいちいちチェックするのではなく、金額や頻度などから怪しいと思えば分析する、くらいの介入になる。一方で高額な契約や継続的な契約は一切認められない。このためにも、当人の現金やクレジットカード・電子マネー等は全てAIが把握するようにする。AIの手に余るものは、担当カウンセラーないしは専用コールセンターが24h365dで待機しており、音声での相談が受けられる。

雇う企業の側にはライセンスが必要であり、定期的な審査もある。認定者への作業要求が過大でないこと、適切な支払いがあることの確認が必要である。その代わり、対応のための費用は国の補助が出る。

このようなAIが出てくるのはまだ数年掛かるだろうし、その信頼性が確認されるのにも更に数年掛かるだろう。5〜10年後くらいを目処に、こういった社会制度の整備を検討してはどうかと思う。

また、これは知的障害以外にも同様のことが考えられる。例えば四肢障害において、ロボット義手やBMIのサポートを前提とした知的労働への参加を補助するようなものだ。外国人なら自動翻訳など、事情に応じた機械やAIの補助とその資格認定、国の補助を組み合わせる。

境界知能の人は人口の14%もいる。この数は無視できない。彼らの有効活用は、社会の効率化になっているし、彼らの尊厳も維持向上できる。少子高齢化への対策としても有効である。

2024年12月9日月曜日

ダークパターン規制法

 
ダークパターンとは、一般的に言うと、WebサイトやアプリなどのUIにおいて、ユーザを(合法的に)騙して、自分に有利な方向へ導こうとする手法のことを指す。

代表的には、以下のようなものがある。

  1. 契約は簡単なのに、一度契約すると解約手段がなかなか見つからない
  2. 電話で問い合わせをしたいのに、FAQやチャットばかりに誘導され、なかなか電話番号が見つからない
  3. ボタンの上に突然ポップアップを出してクリックさせようとする広告
  4. ボタンを押そうとすると、ボタンの上に広告が出てきて表示全体が下がり、誤って広告をクリックしてしまう
  5. 有償契約であることをはっきりと書かない誘導
  6. 殆ど有償でないと使い物にならないのに無償と表記されインストールできるアプリ
  7. やたらと文字が小さく大量に文章がある使用前契約書
  8. 同意しないと先に進めない使用前契約ボタン
  9. オプションの有償契約チェックボックスにおいて、最初からチェックが入っている
  10. 「売り切れ間近」などの表記や、カウントダウンタイマーを表示し、いかにも時間がないかのように思わせる広告
  11. ルーレットにおける当たりの面積比やサイコロの目などのように、見た目の当選確率が想像できるのに、実際にはそれより遥かに低い確率でしか当選しない

ある程度以上明白なものは既存の法律でも対応できるが、こういったものの殆どは現在のところ合法であり、大手企業ですら堂々と採用している。

これを何とかしてほしい、というのが本稿の主旨だ。おそらくここまでは誰でも賛同してくれるだろう。問題はその先で、どのような法律にするかである。

個人的には、これはプライバシーマークなどと同様、ダークパターン追放マークを作るのが良いのではないかと思う。つまり、そういったダークパターンがないことを確認したら、経産省辺りが認定マークを発行して、その表記を許される、というものだ。

プライバシーマークでもそうだが、そういったものは大手はこぞって参加し、中小企業はケースバイケース、となるのだろう。これによって自然と、ダークパターンを認める企業は収益が落ち、これを排除するモチベーションとなって、社会全体からダークパターンは減っていくものと考える。

もちろん悪質業者は止めないだろうが、彼らは更に悪質な方向に向き、既存の法に引っかかる確率が高くなっていくだろう。そして既存の法律も少しづつ規制を強めていって、上流(マーク)と下流(法規制)で挟み撃ちにして行くのが良いと考える。

注目の投稿:

AIがあるから勉強は不要?

  自動翻訳があるのだから英語の勉強はいらない、というのは、英語の勉強が苦手な学生がよく思いつく疑問だ。これと同じように、AIが発達すれば何でもAIに聞けば良いのだから勉強全般が不要になる、という人もいる。もちろんどちらも(少なくとも当面の間は)間違いである。 その理由は二つあ...

人気の投稿: