そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。
総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代においてそれは、どちらかといえば「仕訳医」としての側面が強い。つまりある程度目利きをしたら各々は専門医に任せる。以後は主治医は個別の病気には関わらない。だから患者は複数の病院を渡り歩き、あるいは総合病院の複数の診察科を駆け回ることになる。
だが、その主治医が全ての専門科に精通していて、全てをワンストップで診てくれれば、患者としてもそれに越したことはないわけだ。そしてかつてはそうだった。ほとんどは町医者が診てくれて、手術などどうしても困難なものは大病院に紹介されたのだが、その閾値がどんどん低くなっている。今やさほど大きな街でなくとも総合病院はあって、町医者の守備範囲は狭くなっている。
これを打開する可能性があるのが、近年のテクノロジーの発達である。すなわち通信技術、高解像度映像伝送技術、そしてAI、ロボット、である。
つまり、これらIT機器で武装することによって、町医者で閉じる守備範囲を再び広げようというのが主旨である。
総合医の強みは、複数の病気を抱える患者で発揮される。薬の重複や副作用と症状の識別は代表的だが、精神的ケアや家族の意思の確認などにおいてもそれは有用で、更には入院や手術を近隣で行えることは大きなアドバンテージだ。
ただ、個々の病気の専門性が分からないと、これらの識別は困難だ。重複しているからと単純に薬を減らしてしまうのが正しいとは限らない。また、薬の作用を相殺するような組み合わせを発見したり、発見したときにどう対処するかの知見は、個々の専門医でも分かるとは限らず、総合医としての知見もまた求められる。そういった知見をカバーするのがAIである。
また、手術を遠隔で可能にする手術ロボットや、手術以外の処置も、AIやロボット、その他測定機器の高度化やカルテ連動などの技術を駆使して、町医者でできることを増やしてやる。多数の人間の専門家ではなく高度なAIがそれに置き換わり、町医者は最終判断をするだけで済むとなると、むしろ医療品質の安定化、更には高度化すら期待できる。
さて当然ながら、このスキームを確立するための鍵となるのは、診断用機器、手術・処置ロボット、そしてAIだ。以前も
https://spockshightech.blogspot.com/2017/02/blog-post_20.html
のような提案をしたことがあるが、これは診断用機器だ。他に手術・処置ロボット、AIが必要だが、手術・処置ロボットは汎用である必要があり、これはアンドロイドすなわち人間のような形状(手が二本、脚が二本、頭が一つ、身長170cm前後、バッテリ駆動)で、人間と同じ器具(メス、鉗子など)を持てるロボットが望ましいと思う。そしてソフトウェアでどんどん機能を追加していくのだ。
AIの方はアイデアが漠としており申し訳ないのだが、多数の専門家AI(各々の病気のエキスパート)と総合診断AIからなるマルチエージェント型が基本になるのだろうと思う。それと人間のAIが自然言語で会話しながら進めていく、というようなイメージになる。
もちろん、このための投資はこのスキームにおける大きな弱点になる。数千万円単位の投資になると思われ、大型医療機器の導入と同じような出費になる。したがってこれの導入には医者により判断が分かれるだろうし、国の補助と言っても桁が大きいので一律にするのは困難だ。
だがこれは、離島など医療過疎地域へのモデルケースとなるため、スキーム自体の確立には国や自治体としても意義があり、その意味でも国の補助は重要である。まずはそういうところから始め、コストダウンを目指しながら町医者に広げていく、そんな構想をもって開発しても良いのではないかと思う。

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