2024年9月26日木曜日

ベーシックサービスとベーシックサブシディ

一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。

世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提案においても財源の問題は厳しく、素人が期待するようなものには絶対になり得ないことは明らかだ。

ベーシックインカムの定義が曖昧で、賛成をしている殆どの人は、自分に都合の良い解釈をしている。今ある他の社会保障は全部そのままで、更にベーシックインカムが増えるなどというあり得ない幻想を持っている人も多い。だからそもそも単純に「ベーシックインカムに賛成、反対」などとは言えないハズなのだ。「誰それの定義によるベーシックインカムに賛成、反対」であるべきだ。

さて自分は、ベーシックインカムの根本である「カネによる解決」に反対なので、全てのベーシックインカムに反対である。カネをばらまくのではなく、必要なサービスを無償化する方向に使うべきだと思う。つまり、例えば医療費をばらまくのではなく、診療費を無料にするのだ。なぜか。

生活保護でもそうだが、カネのばらまきでは、ばらまく側は当然その用途を想定する。食費に幾ら、衣服に幾ら、…というものだ。しかしいったんばらまかれてしまえば用途を問うことはできないので、実際には食事ではなく酒やギャンブルに使ってしまうかもしれない。それを止めようとして越権行為をする自治体は後を絶たない。

だが、フードチケットを配れば、それは食事にしか使えない。想定した通りの用途に使ってくれるのだ。フードチケットを売り飛ばしてギャンブルに行こうとするのは止められないが、そもそも買う人もフードチケットは持っている。そして人が一人で食べられる量はそんなに変わらない。だからもし不正があったとしても、大規模にはなり得ない。

カネをばらまくのではなくサービスを無償化することを、ベーシックサービスと言う。上の医療や食料(フードチケット)の他には、住居や高齢者施設の提供などがある。

例えば生活保護は、地域によって支給額が若干異なる。このため、支給額の高い地域に住んでいる人が安い地域に行ってカネを使えば、儲かってしまう。しかしベーシックサービスならその心配はない。どこに行っても無償なら、わざわざ遠くに行く必要はない。

また、ベーシックサービスがある場合、例えば医療に関して言うと、保険外医療のような問題はあるが、原則として保険に入る必要はない。これは健康保険、後期高齢者医療制度、民間の医療保険、傷害保険、全てが不要ということを意味している。いざという時のための余分なプール分が不要になり、保険会社の利ざやも不要になる。トータルで考えれば、これは国民の無駄を省くことになっている。

ホームレスの問題もそうだ。住居が無償なら、ホームレスの数は激減するはずだ。家を与えられ、食べ物もタダなら、公園で寝泊まりして凍死する危険もないし、食料店のゴミを漁る必要もないし、不良に絡まれて怪我をする心配もない。

そして、ベーシックサービス化に伴う税の負担増について、企業はそのまま給料減として対応して良い。無償化の分安くなるだけであれば文句も少ないだろう。

ベーシックサービスの具体化だが、医療、介護、義務教育、住居、衣食の5つは完全無償とする。但し医療に標準治療、義務教育には公立学校があるように、残りの3つについても標準のレベルを設定して、それ以上の差額は自己負担にする。

もちろん、普通に稼げる人は、差額を払って更に良い生活をすることができる。そしてそういう人の割合が適切になるように、ベーシックサービスの「標準の程度」を調節すれば、ベーシックインカムでよく心配されるような「労働意欲の低下」もないだろう。

そして、そういったサービスを提供する業者に対して負担金を支払う仕掛けが、ベーシックサブシディだ。国ないしは自治体が直接業者に経費を払うわけだが、ここにこそ不正の芽があるわけで、提供するサービスの質とサブシディの額が釣り合っているかどうかはしっかり見なければならない。

ベーシックサブシディのメリットはここにもあり、もしベーシックインカムの用途を確認しようと思ったら1億人のチェックが必要だが、ベーシックサブシディなら数百万で済む。またサブシディを受けるのは個人ではなく業者なので、フォーマットの整備なども個人より厳しく指導できる。不合格ならサブシディから外れるだけで、それは国民を取りこぼすのとは違うからだ。なのでコンピュータ化もしやすいだろう。

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