
前回の太陽炉プラン、その定量的評価、超高性能コンクリート建築の考察に続き、太陽炉と発電所の設計について考察してみた。
1.太陽炉の設計
1.1.経路の設計
シリカ(SiO2)から酸素を完全に引き剥がすには、3000℃の高温が必要である。しかしこの3000℃の高温に耐え、かつO2、Si、SiO、SiO2のガスに反応しない配管材料はこの世に存在しない。このため、この3000℃の部分のガスの流路は、いわゆるガスカーテンにより制御される。つまり、物理的な配管の内壁に沿って窒素ガスを噴射し、螺旋状に回すことによって、「ガスの壁」を作る。
3000℃の高温においては、不純物を含め全ての物質はガス化している。これをフィルタで分離することは不可能(その温度に耐えられるフィルタは存在しない)だが、酸素だけはどうしても分離する必要がある。というのは、酸素をシリコン(Si)をそのままにしておくと、再び酸化してSiOないしはSiO2に戻ってしまうからだ。
このためには、この空間に強力な電場を掛け、流路を「帯電する気体」と「帯電しない気体」に分離する。酸素は帯電するがシリコンは帯電しないため、ここで酸素を遊離する。酸素のない空間であれば、酸化しやすいSiと言えども酸化することはできない。
酸素を分離した後の気体は、窒素ガス下で冷却して液体に戻す。
1.2.不純物の除去
砂漠の砂の70〜90%は酸化ケイ素(SiO2)であるが、それ以外の不純物は邪魔であるので、ある程度取り除く必要がある。但し半導体シリコンを作るのとは異なり、シリコン純度は98〜99%程度でよい。
このためには、まず鉄分を取り除くために強磁力セパレーターで分離する。それ以外のものは比重の差を使って分離する。これには風圧などを使う。SiO2は軽く、その他の不純物(酸化アルミなど)は重い。この2つでシリコン純度を95%まで高める。
この材料を太陽炉に投入し、上のプロセスを経ると、全てが液体になっている。これを同じ槽の中に投入すると、比重の軽い金属ケイ素の液体が上に浮き、不純物は重いので下に溜まる。この下の部分5%程を捨ててしまう。この不純物は酸化アルミなどを多く含み、他に活用可能である。
1.3.細粒化
こうして残った液体ケイ素は純度98%以上になっており、これで十分に燃料になる。最後にこれを滴下しながら冷却用の乾燥窒素ガスを吹き付け、固体に戻す。この際、多少塊ができたとしても、急冷によりヒビが入っているので、その後ミルによって簡単に砕き、細粒化することができる。
細粒化した金属ケイ素は、湿気のある空気中でも安定しており、長期保管可能である。但し、細かすぎるとハンドリングが難しくなり、粉塵爆発の危険もあるので、0.1〜1mm程度に加工するのが良いと考えられる。
2.発電所の設計
2.1.燃料ボイラー前段での燃料微粉化
粗粒サイズのシリコンをそのまま燃やすのは効率が悪いので、燃料ボイラー前段で微粉化する。
このためには、窒素を充填したミルを使用し、そこから取り出した粉塵を酸素混合ガスでボイラーに吹き出す。
2.2.ボイラー設計
Siのエネルギーは石炭より高く、ボイラーは2000〜2200℃に達する。シリコンの燃焼速度を最大化するため、ボイラーは「バーナー(上から下へ噴霧)」に対し、「燃焼空気(下から上への上昇気流)」をぶつける対向流(カウンターフロー)型を採用する。
これにより、噴霧されたシリコン微粒子は空間内で激しく攪拌・浮遊(流動化)し、約2〜3秒間の十分な滞留時間を確保されることで、燃え残りゼロ(完全燃焼)を達成する。この凄まじい熱を利用して水管を温め、現代の最高効率である「超臨界・超々臨界圧(USC)蒸気タービン」を回してクリーンな電力を生み出す。
2.3.シリカヒュームの回収
シリコンが燃え尽きると二酸化ケイ素(砂の成分)に戻るが、これは元の粗い砂ではなく、「シリカヒューム」と呼ばれる、粒径が 0.1〜0.5μmの超微粉としてボイラーの排気ガスの中に漂うことになる。
これを回収するために、排気経路に以下のキャプチャシステムを配置する。
第1段は廃熱回収・予熱器である。ガスの温度を1,000°Cから200°Cまで冷却する。その熱は回収し、燃焼前のシリコン粉末を吹き出す酸素混合気の予熱に使用する。
第2段は多段サイクロン、要するに遠心分離機である。これによって、シリカヒュームのの70%を物理的に叩き落とす。
第3段はセラミック膜である。耐熱温度400℃以上の多孔質セラミックバグフィルターを使い、ミクロな煙を 99.9% 物理的にキャッチする。
最終段は電気集塵機である。最後の数ナノメートルの超極小粒子を、静電気の力(電界)でプレートに吸着・全量回収する。
最終的に排出されるのは窒素と(余剰の)酸素だけで、水蒸気すら出ない、極めてクリーンな排気となる。
回収したシリカヒュームは、コンクリート添加剤などとしてそのまま使うものを除き、直ちにシリカヒューム粒に加工しておくのが良い。粉塵だと細かすぎて扱い辛いからだ。
2.4.発電所としての特性
シリコン発電所の特徴は、石炭発電所並みの火力の強さと効率の高さ、また火力発電所に匹敵ないしは凌駕する立ち上がりの速さである。つまりピーク能力用として十分に使い物になる。
熱効率は45%以上と、最新の微粉炭火力発電所と同等である。それ以外の性能予測は以下の通りだ。
| 運用項目 | 最新鋭微粉炭火力 (USC) | 本システム (シリコン微粉) | 特性・優位性の理由 |
|---|---|---|---|
| 負荷変化速度 | |||
| (出力を変える速さ) | 毎分 ±3〜5% | 毎分 ±4〜6% | シリコンの高速燃焼性と、有害ガス不発生による環境装置の制約解除による。夕方の急激な需要増に追従可能。 |
| 最低負荷(DSS特性) | |||
| (火を消さずに絞れる限界) | 定格の 25〜35% | 定格の 15〜20% | 対向流バーナーの気流制御により、燃料を極限まで絞っても「立ち消え」しにくく、深い待機(低出力運用)が可能。 |
| ホット起動時間 | |||
| (夜間停止から朝の全開まで) | 約 1〜2 時間 | 約 1〜1.5 時間 | ボイラーの金属水管が温まっている状態(ホットスタンバイ)なら、化石サン火力と同等以上のスピードで全開にできる。 |
| コールド起動時間 | |||
| (定期点検後の完全冷温状態から) | 約 4〜6 時間 | 約 4〜5 時間 | タービンや厚肉ボイラー配管が熱で歪まないようにゆっくり温める物理的限界(熱応力制限)があるため、ここだけは従来火力と同じ。 |
3.まとめ
これは火力発電ではあるのだが、元が太陽熱であることや環境負荷が極めて小さいことなどから見て、これは「再生エネルギー発電」に位置付けられる。しかも、太陽光発電や風力発電など他の再生エネルギー発電と違い、好きな時間に好きなだけ発電できるという特徴がある。
自然エネルギー発電ではどうしても「ダックカーブ現象」(昼間は太陽光で電気が余るが、夕方に太陽が沈んだ瞬間に発電力が急激に喪失し、猛烈な勢いでバックアップ火力を立ち上げなければならない現象)が起きたり、大量の蓄電施設(NAS電池や揚水発電所など)が必要になるという問題がある。またこれがあるがゆえに発電コストはあまり安くない。
だが本システムがあれば、最新鋭の火力発電所と同じ立ち上がりで太陽光発電などを補完できるし、主力の発電所としても二酸化炭素排出がないなど極めて有利である。石油備蓄と同様にシリコン備蓄が可能であり、それは産油国ではなく砂漠国であれば良いため、ホルムズ海峡のような致命的なネックは存在しない。OPECのような価格調整の影響も受けにくい。
なお欠点があるとすれば、それは交通手段の燃料としては使えないところだろう。シリカヒュームの回収は必須だが、そのためにはどうしても規模が大きくなってしまうからだ。
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