駅ナカなどに、15分幾らで借りられる、サテライトというかパーソナルオフィススペースが多く登場してきた。個人的にはちょっと息が詰まるのでもう少し広く作ってほしいとは思うが、外から見ればそれなりのスペースを割いていることは分かるので、設置させる側の気持ちも分からんではない。
今のサテライトには、目立ったICT設備はない。PCを持ち込んでそこで仕事をする、それだけを想定しているのだろうと思う。その一方、VRゴーグルで仕事をしている人は現実に存在する。
例えばこの人は、3年前に既に週40時間もメタバース上で仕事をしている。VRゴーグルならサテライトは必要ないと思うのだが、それでも一日8時間もゴーグルを装着しているのは不快だろう。そこで思い出すのが、Googleが開発している、極めて臨場感の高いテレビ電話システム、Project Starlineだ。
これは、ユーザの目の位置を検知して追従する、ゴーグルやメガネが不要な立体映像表示装置である。このディスプレイをこのパーソナルオフィススペースの全面に広く貼り付けることができれば、と考えてみれば、私の意図は直ぐに分かるだろう。つまり、そのパーソナルオフィススペースに入って電源を入れたら、もはやそこは狭いスペースではなく、ディスプレイの向こうに広がる広大な空間を覗くことが可能になるわけだ。
ディスプレイに映すのは話し相手ではなく、メタバース空間である。広大なオフィス空間、会議室、大自然、何でもよい。VRでオフィス空間を提供している会社は既に存在するが、そういったオフィス空間を会社として借りておけば、皆そこに「出社」して、会議もそこですることができる。映っている同僚はアバターだが、相当にリアルに作ることもできる。今までのサテライトだと、狭い空間に押し込められているという心理的圧迫感があるが、このサテライトならそこが大いに緩和されるはずだ。
自宅ではこのような高級ディスプレイは用意できないので、サテライトの存在意義はある。逆に言えば、自宅でこのディスプレイが設置できるのなら、そこは立派なサテライトになりうる。感覚的には、眼の前1mに40インチ、左右に同じ高さで長さが半分のディスプレイがU字上に囲う空間があれば、かなりの開放感をもって仕事ができるはずだ。
開放感だけではなく、コミュニケーションもバッチリだ。本人映像の修正は可能だから、起き抜けのパジャマに寝癖頭でも、とりあえず仕事を開始することはできる。立体映像だし、物理的な距離感の演出も可能だから、その点でも臨場感は高い。
このサテライトであれば、全員が在宅勤務でも問題なくコミュニケーションできるだろう。なお、この空間での移動はやはり車椅子式である。車椅子メタバースについては以前から紹介している通りだが、ここにも話は繋がってくる。
このサテライトでは、大画面ディスプレイを何台も表示できるなどのVR空間としてのメリットもあるし、RPGに出てくるステータスウィンドウのようなことも可能なので、アイボールだけでなくメールや音声でのコミュニケーションも未来的な使い方が可能になる。またもちろんプライベートでも活用可能で、今のVRChatのコミュニケーションに準ずるような空間での使用も楽にできるだろう。
このサテライトの実現性だが、視線追跡3Dディスプレイの技術は既にあるので、後はひたすらメタバースの作り込みだけで良い。技術的困難というよりは手間の問題で、後は採算性が悪そうだというのが不安材料になる。だから最初はエグゼクティブ向けに作るのが良いと思う。相当に高いものになるとは思うが、米国の大企業なら使いこなすだろう。
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