2026年5月15日金曜日

性別を二つにするのはなぜいけないのか

 だいぶ古い話だが、第二次トランプ政権で、多様性政策撤廃の大統領令が発せられた。

https://jp.reuters.com/world/us/IOISYYZHL5IRVEUVZAFA4DAACY-2025-01-20/

パスポートなど政府発行の身分証明書について「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」に基づくことを義務付ける、というものだ。今の多様性の風潮に真っ向から反対する施策である。

個人的にはこの風潮には反対である。本稿ではその理由を述べる。

まず、「男性または女性という個人の変更不可能な生物学的分類」であるが、多くの人が考えるLGBTQとは関係なく、男性でも女性でもない(男性でも女性でもある)という生物学的な分類は、現実問題として「存在する」というのが事実である。もちろん人間の場合である。

染色体におけるXXとXYという話はよく聞くが、これらに属さない染色体、例えばXXY、XO、XX/XYモザイクといった染色体を持つ人は実際に存在する。また性腺に関しても、精巣と卵巣の両方を持つ人、片方の性腺が未発達ないしは欠損しているという人、性ホルモンに関してもその程度が一般的な男性女性とは異なる特徴を有する、などもあるそうだ。また、そういう特徴が成長とともに変わることもある。またもちろん、性転換手術をすれば、それらも変わる。

だから、生物学的分類はそもそも男性と女性だけではないし、変更不可能でもないのだ。つまり、最初の定義の時点で既に自己矛盾している。生物学的分類に沿うことを定義とするならば、それは変更可能にすべきであり、またまた種類も最初から二つであってはならない。

次に、LGBTQの問題は、生物学的な性と性自認(自分が自分の性を何だと自認しているか)、性指向(恋愛や性愛の対象)と、主に三つの軸で論じるべきものである。しかも、性自認と性指向に関しては、二元論(男か女か)ではなく様々なグラデーションが存在している。例えば男40%女60%と認識している人、バイセクシャルでも嗜好に偏りがありその程度も様々、逆に性指向がほとんどない人、などである。そういう人を全部ひっくるめると、調査にもよるが全人口の8〜15%は性的マイノリティと推定されているそうだ。

一方、日本の障害者(精神障害者、身体障害者、知的障害者)の割合は、全人口の7.6%で、一千万人弱いると言われている。性的マイノリティより少ない数だ。その障害者に対して、全国的に点字ブロックや車椅子対応トイレを用意している一方で、性的マイノリティを無視するというのは公平性を欠く行為だ。それは、性的マイノリティに対する差別だと言われても仕方がない。障害者差別と同じく、それは為政者としてはあるまじき行為である。

障害と性自認は別だ? そりゃそうだ。だが、違うのは良いとして、それは無視するに値する違いなのだろうか。例えば、障害者のためのケアには、教育や社会インフラの整備、法律での対応などと、莫大なコストが掛かる。点字ブロック一つとっても、障害者雇用支援法にしても、あるいは支援学級にしても、その対応には兆円単位でのコストがかかっている。一方で性の多様性を認めることに、差してコストは掛からない。もちろんゼロではないしそれなりには掛かるが、障害者対応に比べれば微々たるものである。なぜコストの掛かることはできるのに、コストの少ない方を無視するのか。そこにはやはり差別しか理由が考えられない。

至極単純な話、人口の10%程度も特定の集団がいるのなら、その集団の存在を認めよ、差別するな、というだけのことなのだ。障害者だけでなく、15歳未満の子供も10%程度だし、ひとり親世帯も、貧困層も、75歳以上の高齢者も、10%前後の割合を占めており、それらは皆ケアされている。性的マイノリティだけが冷遇される理由は見つからない。

それは主にトイレと公衆浴場の問題、パスポートや住民票などにおける表記の問題、同性婚など婚姻と相続の問題、スポーツ大会などへの参加資格の問題などであると思われる。トイレに関しては多目的トイレがすでに普及してきているのでこれを更に発展させればよい。公衆浴場に関しては更衣室と浴場に個室を作ること、公的書類の表記や婚姻相続については法改正とシステム修正、となるだろう。

浴場だけが厄介だが、他はすぐにでも着手可能であり、それほど費用は掛からない。抵抗して屁理屈をこねている暇があったらさっさと進めてしまえばよいだけの話だと思うのだが。

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