2019年12月16日月曜日

エッジAIによる著作権管理ビジネス


不透明との指摘をずっと言われ続けながらも、JASRACはその活動の中身をあまり公にしていない。真っ当な仕事であるならばもっと開かれていても良いのに、と思うのだが、まあその中身を追求することが本稿の提案ではない。JASRACに対抗する著作権管理ビジネスを展開するのが、本稿の主旨だ。

エッジコンピューティングというものが流行っている。今の時代、IoT機器であっても末端にはそれなりの計算能力があるので、これを活用しようというものだ。ここで考えるのは、店舗等から演奏権利料を得るに当たり、エッジコンピューティングを利用して、実際に演奏した曲目を自動収集する、というものになる。

JASRACのやり方は包括ビジネスだ。即ち、十把一絡げにして定額で支払ってもらい、分配の方はサンプリングを基にして行う。この方法は、手間は掛からない代わり、マイナーな曲に対しては著作権料の分配が起こらず、メジャーなものに集まりやすいという欠点がある。

今回の提案はこの逆で、手間が物凄く掛かる代わりに、演奏した曲が正確に分かるために、公平な分配ができるというものだ。そしてその手間を、エッジコンピューティングでやろうというのである。

ビジネスモデルはこうだ。店舗には、部屋ごとにマイクを設置する。このマイクがエッジコンピューティングを行い、演奏された曲を推定する。例えばメロディラインを抽出してDBマッチングをするわけだ。確度が一定以上に上がるまでサンプリングを続け、困難になればネットに助けを求める。

店舗は、この新著作権会社と契約を結ぶ。もちろんJASRACとの契約は破棄できないので、この新著作権会社はJASRACとも契約を結び、自社と契約した店舗に関しては、この新著作権会社が代理で支払うようにする。もちろんその額は包括ではなく個別支払いになり、包括よりはずっと安くしてもらうように交渉する。店舗はその額に手数料を上乗せした額を払うが、やはりJASRAC包括よりも安く済むように設定する。機器の設置、少々の電気代が発生する他は、店の手間はない。

著作権者(音楽家)は、従来通りJASRACから著作権料の支払いを受けるわけだが、契約店舗についてはピンポイントで演奏されたことが分かるため、その支払いは確実に受けられる。これで、マイナーな音楽家ほど得になる。マイナーな音楽家の方が人口は多いので、多くの音楽家は従来より潤うはずだ。そしてその分の割を食うのはメジャーな音楽家だが、それはそもそも貰い過ぎていたのだから、文句を言われる筋合いはない。

それでも、多くの音楽家はJASRACとの契約を破棄できない。この機械を設置している店舗は、当初は少ないであろうと思われるからだ。そしてこれが徐々に増えていき、一定の閾値を超えた時、JASRACでなくこちらの会社と直接契約したい、とする人が出てくるだろう。

それは、例えば地元密着の歌手等から始まる。歌われる場所の範囲が狭いので、そこに機械を密集させれば収益も上がるだろうからだ。店舗としても、安く上がり且つ地元に貢献できるので、協力しやすいだろう。するとその音楽家は生活が楽になり、ますます音楽活動にも身が入る。これは正のフィードバックを生む。これが広がっていけば、更に閾値は有利に動いていく。そしてある時点でそれは逆転し、JASRACとの契約を打ち切る人が続出するだろう。

JASRACがこれに対抗する手段は一つしかない。それは、全く同じ仕掛けをJASRACでも始めることだ。そして包括契約と出来高契約の二種を選べるようにする。従来より売り上げは落ちるが、これは仕方がない。

そしてこのアイデアの凄いところは、最初からその会社は機器の売上を目的とする会社であり、JASRACへの売り込みが最終目標であるところだ。著作権会社は、最初からJASRACへの吸収合併をExitとしている。もちろんJASRACが逃げられないように、ビジネスアイデアは全て特許等の知的所有権でガチガチに固めておく。

このアイデアは、JASRACにとってはLoseだが、音楽業界全体としてみればWin-Winではないか、と思う。

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