2019年12月13日金曜日
UWBを何に使おう
新しいiPhoneがUWBを搭載している、そしてそれを何にも使っていない、というのが話題になった。検討する間に仕様が変わってしまえば使えない代物だから、ある程度具体的な話があり、間に合わなかった、と考えるのが自然だろう。ではこれを何に使おうというのだろう。
UWBの性質を考えてみると、近距離では通信速度が非常に速く、またセンチメートル単位で位置を測定できる。スマホ自体の位置を測るのか、あるいは他のタグなり基地局なりとの相対的位置を測るのかは分からないが、とにかくそういう使い方はある。
また、単純に計測するのではなく、特定の位置にいることを検知してどうこう、という話はあるのだろう。例えば自動改札で、ポケットにスマホを入れたまま通過することでチェックする、というものだ。これなら㎝単位の位置精度が確かに必要だが、決まった範囲内をどちらの向きで通ること、ということだけが条件であり、位置を測定することは最終目的ではない。
これと同様のことは、全ての乗り物や、セキュリティゲート、玄関の鍵、映画館・球場・イベント会場等で使い物になる。買い物でも、レジの前に立つだけでよい。自動車の鍵にこれを使った場合、ドアの前に立てばドアが開き、運転席に座ればエンジンロックが解除になる、といったことが可能だ。最近、電子鍵の電波を増幅して鍵を開ける手口の車泥棒がいるが、これなら位置情報が加わるのでこの手は使えなくなる。PCのロックにしても、前からいなくなればロックするということが可能になる。Bluetoothや無線で、離れるとロックするという製品はあるが、それより精度が高くなる。
ATMの操作、コピー機やコンビニ端末の操作といった機械の操作でも、目の前に立っている人が操作をしているのだから、パーソナライズや課金が確実に行える。共有プリンタの前に立つだけで、自分がネット経由で印刷したものが出てくる、ということもできるだろう。
他に思いつくのは、VRで使うコントローラーだろう。例えばリストバンドや手袋とVRゴーグルに各々仕込めば良い。指輪でも良いかもしれない。もっと言えば、服の各部に仕込んでおけば姿勢が分かるし、可動部のある機械なら、その動きが分かる。
二人のiPhoneユーザが近づくことで何かが起こる、と言えば、AirDropが思いつく。アプリを起動するタイミングとしてこれを使えば、より簡単に情報交換ができるはずだ。これと同じ原理で、特定の何かに近づけると情報がコピーされる、といった使い方は可能になるだろう。バス停の時刻表に近づけると時刻表が、イベントのポスターに近づけると開催日がカレンダーに自動で入る、レストランなら営業日営業時間とメニューと特売と今日のお勧め、等だ。満員電車や繁華街ではオフにする、というのも、GPSと連動で可能になるかもしれない。他にも、機械に近づけるとマニュアルや保証書と消耗品リストが出る、というのはうれしいだろう。
情報や機器の種類によって起動距離を変えるというのも面白そうだ。AirDropなら5㎝以内、ポスターなら30㎝、等だ。これも特許が取れるかもしれない。
また、例えば家に帰ると、玄関前30㎝で鍵が開き、入って30㎝でまたロックされ、玄関の照明が点き、エアコンが入り、リビングに入るとテレビが点き、(夜に)寝室に行けばお休みモードに…というシーケンスは実現可能なはずだ。一人暮らしに限るが、留守番モードも同様の仕掛けでできるだろう。
これを突き詰めると、人がどこか(きわめて狭い範囲)に行くと、その行動を予想して先回りで何かをする、ということが、多くできるようになる。
似たようなことは、監視カメラと画像解析でも可能だ。しかしこの場合はプライバシーと認識精度の懸念がある。UWBの方が直観的で使いやすそうに思える。Appleは、このような未来を描こうとしているのではないか、と思うのだが、どうだろう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
総合医の復活
そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。 総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代に...
人気の投稿:
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。 まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われて...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。 世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提...
-
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...
-
免震構造については過去いくつか提案しているが、これの新しい版である。 以前、難燃性の油の上に浮かべた船の構造を提案したことがある。あれの砂版である。つまり、砂のプールを作っておいて、その上に浮かべるというものだ。砂が抵抗となって振動を軽減する。 ただし、油や水と違って砂の...

0 件のコメント:
コメントを投稿