2025年8月5日火曜日

労働生産性向上策私案


 https://www.newprinet.co.jp/日本生産性本部 「労働生産性の国際比較2024」を

こちらの統計によると、日本の一人当たりの労働生産性は、1990年頃には13位だったところ、その後落ち込み、1998年から20位前後で推移していた。だが2018年から急速に落ち始め、2023年には32位と急激な下落を起こした。そもそも20位でも不名誉だとは思うが、今や30位というのは情けない限りである。

2018年はコロナ前であり、コロナのせいではない。2011年の東日本大震災前後でも落ち込まなかったものが急激に落ちたのには、何か理由があるに違いない。そう思って少し調べてみた。生成AIの助けを経て得られた結論は、以下のようなものだ。

順位 要因 相対的影響スコア 解説
1位 マークアップ率 -0.179 日本は停滞、米独は上昇 → 価格転嫁力の差が拡大
2位 為替レート(円安) +0.164 PPP換算での見かけの生産性が大きく低下
3位 DX投資額 -0.080 日本は緩やか、米独は急増 → 効率化の差が拡大
4位 高齢者就業率 +0.066 日本の増加幅が大きいが、影響度は相対的に小

マークアップ率とは、コストを価格に転嫁できているかどうか、である。物価は上がっているのだから、同じものを作るのにも原価は上昇している。これを価格に転嫁できないと、労働生産性は下がる。他国は順調にアークアップ率を上げているのに、日本は停滞したままだ。

為替は円安だ。日本は加工貿易で儲けている国なので、基本的に円安はダメージになる。DX投資はその名の通りで、DXによって生産性は著しく向上するが、日本はこれが停滞している。また、高齢者は一般的に労働生産性が低いため、労働者全体における高齢者の割合が増えると平均値は下がる。

これらを影響度順にランキングすると、見ての通り、DXや高齢者の影響は意外に小さく、マークアップ率と為替レートがその主要因である。

次に、マークアップ率が低い理由をAIに尋ねたところ、

指標 日本 米国 ドイツ
平均マークアップ率(製造業) 約1.13 約1.45 約1.38
無形資産投資比率(対売上) 約3〜5% 約10〜15% 約8〜12%
上位10%企業のマークアップ率 約1.31 約1.80 約1.65

無形資産投資比率が低いことが挙げられた。無形資産とは、例えばブランドイメージ、研究投資、人材開発などだ。つまり、ブランドイメージが高ければマークアップ率も高くなるのだが、日本はそれが低いのだ。特にGAFAのような強力なブランドイメージを持つ企業がトップにいるアメリカでは、それらが平均を引き上げる効果があるのだという。

日本は不景気だから、景気が悪ければ無形資産への投資が減るのは当たり前だろう、とAIに聞いてみると、そうではなく、世界ではむしろ増える傾向すらあるのだという。その理由として、国内では短期投資が重視される傾向があるのだそうだ。つまり銀行や株主が短期的視点になっているわけだ。これには研究による裏付けもあるらしい。また、日本は機関投資家の比率が高く、これも短期的視点を重視する傾向に拍車を掛けているのだそうだ。

これらから考えられる政治的施策は、要するに「株主が長期的視点で企業を評価してくれるように誘導すること」だ。AIの推奨を基に、以下四つを提案する。

  1. 長期的インセンティブ制度への優遇
    1. 例えば、5年以上株主であると、株主優待の額が向上する、といったものだ。この制度を利用する株主は、目先の利益よりも長期的な視点を重視してくれる。
  2. 株主との対話頻度向上に対する優遇
    1. 海外では年10回も対話があるというのが普通なのだそうだ。これにより会社からの情報開示が増え、株主はより会社を詳しく知った上で投資することができるようになる。それは必然的に、目に見えない投資=無形資産投資への情報開示が増やすので、その視点で見る投資家の比率が増える、というわけだ。
  3. 無形資産投資比率向上に対する優遇
    1. 例えば研究等に利益の15%以上を投資することで法人税が割り引かれる、といったものだ。
  4. 個人投資家の増大に対する優遇
    1. 個人投資家は機関投資家のような頻繁な売買は行わない傾向があり、必然的に長期的な投資が増えることになる。ただ、これはNISAで既に行われているので、別の視点での優遇が必要かもしれない。例えば個人投資家比率が高い企業が優遇される、あるいはクラウドファンディングへの優遇、などだ。

これらには何れも短期的効果はないが、長期と言ってもせいぜい5年程度である。これらの施策によって欧米並みに無形資産投資が高まれば、マークアップ率は向上し、労働生産性も向上するはずだ。

さて、これらの政策案は、無料版のCopilotを使って1時間程度で作成できた。自民党はおろか、弱小政党であっても簡単に立案できるばかりでなく、全て税優遇だけで実現できるので実現性も高い。細部を詰め、さっさと提案してほしいものである。

AIによる政策立案という話題性からすると、「チームみらい」が良いかもしれない。だがもちろん本稿は公開されているので、他党でも構わない。早い者勝ちでもない。好きにアレンジして使ってほしい。

2025年8月1日金曜日

津波の高さと遡上高

 2025年7月30日、ロシアのカムチャツカ半島沖で地震が発生し、日本の太平洋側の広い範囲で津波警報、津波注意報が発令された。最大予測は警報地域で3m、注意報地域で1mだった。

電車は止まったところもそうでなかったところもあったが、都心で避難した人は皆無だった。警報が出てから半日経っても海岸で遊んでいた人もいたし、海岸の道路の交通も普通にあった。

実際にはほとんどの地域で0.3〜0.6m程度、最大でも1.3mに留まった。そして自分としても、海抜3m以上の場所にいたため、特に警戒はしなかったのだが、その後調べていて肝を冷やした。その判断は間違っていたのだ。

その間違いとは、津波の高さと遡上高との違いだ。つまり、津波の高さが1mであれば標高2mのところには届かない、と思い込んでいたのだが、それは誤りであり、津波の高さ以上のところにまで津波は到達するのだ。それを遡上高と言う。そして実際に過去どの程度の遡上高があったのかを調べてみて、肝が冷えたのだ。以下は生成AIに聞いて得た、過去の遡上高の例である。

1. 東日本大震災(2011年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 岩手県大船渡市で観測された津波の高さは、3.8mでした。
    • 宮城県石巻市鮎川で観測された津波の高さは、3.2mでした。
    • 気象庁は、最大で10m以上の津波が予想されると発表しました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、30.9mの遡上高が確認されました。
    • 岩手県宮古市田老地区では、40.1mという、観測史上最大級の遡上高が記録されました。
    • 宮城県女川町でも、34.7mの遡上高が確認されました。

この事例が示すように、発表された津波の高さが3m程度であっても、遡上高はそれを10倍以上も上回る地域がありました。


2. 日本海中部地震(1983年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 秋田県男鹿市で観測された津波の高さは、1mでした。
  • 実際の最大遡上高:
    • 男鹿市加茂青砂地区では、観測値の1mをはるかに上回る14.9mの遡上高が記録されました。
    • この津波により、秋田県や青森県などで、多くの死者・行方不明者が出ました。

3. チリ地震津波(1960年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 日本の太平洋沿岸各地で、津波の高さは1mから数メートルで観測されました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、観測された津波の高さが数メートルであったのに対し、最大で5.5mの遡上高が記録されました。
    • 特にリアス式海岸の地形が、津波のエネルギーを集約させ、被害を拡大させました。

どうだろう。実際の津波の高さの10から15倍の遡上高が、実績としてあったということだ。予想高から考えても数倍の差があったのだ。

ここから得られる教訓は、至極簡単だ。最大高さ予測の15倍まで見込んで避難すべき、というものだ。今回の場合、東京23区は湾岸の注意報が1mだったわけだが、この計算によると標高15m以下のところは避難すべきとなる。その面積は、おそらく23区の三分の一から二分の一という広大な面積になる。ここに住む人は200から300万人に上ると思われ、数時間で避難するのは困難な数である。

となれば選択肢は一つで、標高と高さを合わせて15m以上のビルに避難するしかない。幸いにも都心にはこの程度のビルは無数にあるので、そこに数時間退避させてもらえば良い。住民全体としては無理でも、個人としてその知識を持っていれば、次からは対処できる。

それにつけても、この情報は当然気象庁は知っていたはずなのに、なぜ発表されなかったのだろう。大いに疑問であり、かつ不満である。下手をすれば、今回300万人死んでもおかしくなかったほどの重大情報なのに。無知は命をも左右する。次からはぜひ発表してほしいと思う。もちろんこの記事を読んだ諸氏におかれては、ぜひ周りにこの知識を拡散して、命を守ってほしい。

2025年7月25日金曜日

国民生活補償制度


年金の制度を調べていて、なんと複雑で面倒なことかと辟易した。今ちょうど年金改革がされているけれども、現行のシステムを複雑にしているだけだ。年金に限らず、様々な社会保障制度が別の名前で呼ばれ、申請方法も異なり、審査も給付も別。ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士などが必要な届け出というのは、国民を馬鹿にしている。

給付の条件を細かく決めるのは構わないのだが、そういうものは一覧で見られるようにすべきだし、届け出は一箇所にしてほしい。

そこで、以下のような改革を提案する。

  1. 全ての社会保障制度は一つに統合する。新た制度の名称は、とりあえず「国民生活補償制度」(生補)とする。
  2. 生補の財源は、税金とする。即ち、この制度によって既存の社会保険料は廃止され、税金が増額される。
  3. 過去、各々の特性について個別支給していた制度は廃止し、生補ではその事情を「点数制」にて加算する形式とする。
  4. 支給額は点数のみに依存する。たとえば既存の年金では、支払い済み年数に支給額が依存するが、新制度では財源が税金になるのでこの制度は廃止になる。(その代わり、税金滞納や税金支払い免除の状況などを点数に入れるというのはアリだろう。)
  5. 支給方法は、定期払い方式と一時金方式、控除方式の三種類とする。
    1. 定期払い方式は、マイナポータルに登録された公金受取口座への毎月の支払いを受ける形式であり、これは主に生活費補助目的に使う。
    2. 一時金方式は、イベントに合わせて支払いを受ける方式であり、これは主に出産などの一時的に発生する高額な費用の補助目的に使う。
    3. 控除方式は、掛かる費用を一定の割合で控除し、医療機関に残りの費用をこの制度から直接支給するものである。健康保険のように、不定期に使うが金額が高いものに適用する。
      1. 控除方式のバリエーションとして、疑似免税が考えられる。つまり、生活困窮者などで設定されていた免税の制度は、免税ではなく相殺的な支給として点数換算する。
  6. 自治体は、国の点数に加え、自治体独自の点数を付与できる。
  7. 点数表(元帳)は国と自治体が各々の部分を管理し、毎年更新する。
  8. 点数は、支払い方式毎に加算され、それを標準額にかけ合わせて算出される。またその標準額は、国が全国標準を決め、都道府県が各県の事情に合わせて調整する。
    1. 当然ながら、標準額は物価指数に合わせるのが妥当である。
  9. マイナポータルから自分の「点数」「標準額」「結果としての支払い額」が確認でき、異議がある場合はそこから問い合わせができる。

この仕掛けの特徴は、以下の通りである。

  1. この仕掛けを作ってしまえば、後は点数をどう配分するかの問題に集約できる。新たな視点で補助をすることを思いついたとしても、いちいち個別に法律を作る必要はない。
    1. 点数に年齢を入れれば年金、障害を入れれば障害年金、死別した家族を入れると遺族年金、医療を受けたことを入れれば健康保険、生活困窮の程度を入れれば生活保護、就学状況を入れれば児童手当・学業手当、リカレント教育を入れれば教育訓練給付制度、妊娠や出産の履歴を入れれば出産一時金、等など。
  2. 点数を弄ることによってベーシックインカムにもなる。直ぐに始める必要はないが、その布石としてシステムを作っておくことができる。
  3. 臨時の給付金(コロナや自然災害など)でも使える。
  4. 点数に年収や資産状況を含めれば、そのまま確定申告の情報として使える。
  5. 所得だけでなく現有資産の把握により点数計算できるため、高額所得者だけでなく資産家(不労所得者)を配慮した点数計算ができ、不公平感をなくすことができる。
  6. 会社負担の概念がなくなるため、特に中小企業には有利に働く。これは金額というよりは、手間が無くなる点が大きい。
  7. 制度がシンプルになることは、国民にとっても監督省庁にとっても自治体にとっても、省資源省コストになる。
    1. 特に自治体の恩恵は大きいと思われる。新たに定額給付金を作って配布事務は自治体に任せるといったような、いわゆる「末端への丸投げ」が無くなるからである。
  8. 給付の形式に控除式を加えることによって、たとえば生活保護世帯において水道光熱費を事実上無償にするといった施策が可能になる。従来は年金を貰ってそこから水道光熱費を払っていたが、先に控除することで確実に支払いができる。これは、水道光熱費の分までギャンブルに使ってしまう、あるいは借金返済を優先してしまう、といったトラブルを未然に防ぐものになる。

社会保険料28兆円がそのまま税金になるため、これには消費税と所得税・法人税に割り振って増やすのが良いだろう。これは結構大幅な上げ幅になる。消費税10%を15%にする、所得税法人税も5%づつ上げる、くらいの勢いである。だが社会保険料はゼロになるので、受け入れられるだろう。

また、公金受取口座への振込ではなく、マイナポイントとして振り込むことも考えられる。これはそこから電子マネー(SuicaやPayPayなど)に移行できるので、銀行口座を持っていない人でも使える便がある他、食料限定とするとフードチケットに早変わりするし、期限を付けることで消費を促すことも可能になる。これらは将来の拡張の布石として使える。

この用に処するためには、マイナンバーの概念は多少拡張しなければならない。つまり、マイナンバーは「日本に住民票がある人」が対象なので、ホームレスや無国籍者、違法滞在者などには支給されない。違法滞在者はまあ除くとしても、ホームレスを救えないのでは生活保護の代わりにはならないし、無国籍者も自分で望んだ人はほぼいないだろうから、対象から外すのは好ましいとは言えない。そういう人にとりあえずでも発行できるように、制度を改善する必要があるだろう。また日本国籍の海外滞在者にも現状では支給されないが、これも不公平感があるので発行すべきだろう。

また、これは膨大なシステムなので、一気に入れ替えることはできないだろう。まずは年金から始めて少しづつ移行するのが良いと思われる。

2025年7月15日火曜日

新社会民主主義構想


先日、舛添要一氏と佐藤優さんの対談を読んだのだが、なかなかに面白かった。それは現在の中国とロシアの街中の話なのだが、両国とも監視カメラが大量にある。さぞ窮屈だろうと思いきや、街は安全になり清潔になり、あるいは交通渋滞が解消されるなど、市民の生活はずいぶんと良くなっているのだそうだ。

つまり、監視カメラによって犯罪が起これば速やかに犯人が捕まるため、犯罪が起こしにくくなっているのだ。清潔になったのも同じで、ポイ捨て等もカメラで見られているからだ。そして交通渋滞が解消したのは、交通の状態をAI解析することで、いわゆる全体最適化がされたためだ。

もちろん思想監視のようなものはあるのでそこについては窮屈だが、大部分の市民は恩恵の方を多く感じ取っているのだそうだ。

一方で自由主義の国はどうかというと、監視カメラはあるにはあるが、欲しいところにあるとは限らないし、カメラの持ち主にいちいち交渉しなければならず、断られても文句が言えない。交通の状態は解析できても相互連携はできていない。経済成長率では中国に大きく劣り、貧富の差は開き、経済が低迷し、右傾化・国粋主義がはびこっている。移民を含め外国人排斥運動なども起きている。これはいったい何がいけないのだろう。

自由主義ではプライバシーも尊重するので、誰が何をしているかを当局は把握できない。これは、単純には犯罪を未然に防ぐことができないばかりか、犯罪が起こっても証拠を取れず捜査がやりにくい。また、経済においても、つまらないところで競争してしまい効率が落ちる、例えば情報流通の規格が百花繚乱になってしまう。また、その状態を把握しようにも、プライバシーやら企業秘密やらがネックとなって把握できない。把握できなければ分析もできず、改善もできない、というわけだ。このため、社会主義国では可能な全体最適化が、自由主義国ではできなくなってしまう。それが情報化社会、AI全盛の世の中において、顕著な差を生み出しつつあるのだと言える。

思想というのは何時の時代でも極端なものから揺り戻しが来るのが常であり、その意味でも、またこの社会主義国の躍進を見ても、新自由主義もそろそろ揺り戻しの時期が来ているのではないだろうか。

それはもちろん、プライバシーや自由主義を完全に断ち切るものではない。かつての社会民主主義の焼き直しともいえるが、どちらかというと思想や思想統制の話ではなく、物流や治安の全体最適化という視点のみで社会主義・全体主義を取り入れる、というものだ。

もちろん新事業などでは競争すべき時期もあるので、何でもかんでも全体最適化すれば良いというものではない。ある程度普及率が高いものに対してそれを利かせる一方、成長著しい領域ではむしろ統一させず競争に任せることが必要だ。そのバランスをのは難しいだろうが、AIのような技術を前提にしてそれを素早く(可能ならリアルタイムで)調整することは可能だろう。そういった技術との結合も、新しい社会民主主義では重要な特徴になる。

つまり、社会の効率に関する部分では過度な競争をせず、仕様はある程度統一しましょう、といった、テクニカルな部分に関しては社会主義を重視するが、それでもプライバシーは保護しましょう、といった、新しい社会民主主義の提案である。

この発想は、民間で流行っている「コーペティション」と基本的には同じものだ。これはcooperation(協調)とcompetition(競争)をつなげた用語で、何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する考え方のことだ。

どういうものを協調領域にするかというと、たとえば交通系はいわゆるMaaSを行うことにある。このためには交通機関の位置情報、料金体系、支払い手段、渋滞情報、運行(事故等)情報、天気予報(注意報警報等含)、といった情報を統一的に扱わねばならず、また全体の指示には従わなければならない。例えば電車の遅延に合わせてバスタクシーの運用を修正する、等だ。物流も同様で、通函のサイズや規格の統一、パレットやカートのID規格統一など、MaaSのような全体最適化物流システムの構築の助けになる情報は共通化しなければならない。

防災に関していうと、監視カメラ映像の取得や解析に関する統一的なルールとプロトコルが必要だろう。使用の許可や申請の判断などを電子化して素早く進めるシステム、またプライバシーを考慮しつつも犯罪や事故事件の発生を自動検知するAIシステムなどが考えられる。

個人情報も同様で、マイナンバーに紐づけた個人のプロパティ(属性)情報を、必要に応じて瞬時にアクセスできるシステムとその権限管理システムが必要になる。端的な例では、今実証実験されている、マイナンバーと紐づけた医療記録の参照である。意識不明で搬送された患者の病歴や投薬歴を、マイナンバーと紐づけて迅速に提供できる。

これらに対する当然の懸念は、主に二つあるだろう。第一はもちろんプライバシーへの懸念であるが、これは相応する監視・権限管理の仕掛けが必要で、あとはその仕掛けがどれだけ正しく動くかに依存する。つまり例えば犯罪には使うが犯罪抑止には使えない、等といった線引きと、その線引きが正しくできていることの監査である。ここが信用できないと拒否すれば、その社会は社会主義国には永遠に追いつけないだろう。

第二は、どこからを協調領域にすべきかの判断である。今の自由主義社会が一方の極端にあり、社会主義国が他方の極端にあるのだろうというのは間違いないだろうが、その最適な位置はどう探れば良いのかということだ。上の例で言うと、発生した犯罪には適用できるとして、犯罪抑止が全面的にダメというのはどうなのだろう。例えば大規模テロを未然に防ぐためなら許されるのではないか。だが空振りもあるだろうし、その名目で不正をする輩も出てくるはずだ。また、あまり明示的でない線引きは、体制側に有利なようにじりじりと引っ張られるのが世の常である。

新社会民主主義構想では、これらの懸念に対する線引き自体を、AIのような技術に任せてしまおうと考えている。そしてその根拠は、大衆心理だ。つまり、明確なルールは設けない代わり、色々な事例に対して社会が肯定的な反応をするかどうかを基に、リアルタイムに仕切りを修正するのだ。

これなら常に社会が納得する線引きが得られるので、自由主義・民主主義を貫いていることの証左にもなるし、実際、大衆の多くは納得するだろう。

そしてこの仕掛けが導入されれば、いわゆる「技術的には可能だがXXがネックでダメ」の類のシステムが多く実現する。上の例も含めてあげるならば、以下のようなものが考えられる。

  1. 犯罪、事故事件、自然災害、火災などの自動検出と通報
  2. 犯罪以前の迷惑行為や事故事件自然災害火災などの予兆検出と通報
  3. 要注意人物のリアルタイム検出と自動追跡
  4. 犯罪予備行為の自動検出と通報(予備罪があるもの)
  5. 大規模災害時の避難誘導経路の最適化
  6. 物流・人流の最適化(平時)
  7. 非常時の物流・人流のう回路確保
  8. 規格の乱立の抑止による社会の効率化
  9. 電子商取引規格の統一、電子商取引の必須化
  10. 完全な電子政府の実現(紙書類の全廃)
  11. 自治体システムの統一
    1. 現在自治体が使っている情報システム(住民情報、納税、福祉など)は、ベンダが多数ありバラバラに開発されている
  12. 電子マネー・コード決済の規格の乱立の抑止、CBDCの強制
  13. マイナンバーに基づく個人匿名認証システム使用の強制
    1. あらゆるシステムへのログインにマイナンバー認証が使える、使わせる
  14. マイナンバーに基づくウォレットシステム使用の強制
    1. 会員カード、ポイントカードは全てマイナンバー認証に統一
    2. 電子チケットの類もマイナンバー認証に統一
  15. 電子契約の強制とマイナンバー認証の強制
  16. 公的書類はマイナンバー認証に紐づけて保管を強制させる
  17. スケジューラやカレンダーなど、主要なアプリケーションのAPIの統一
  18. テレビ会議システムやSNS、SMSなどのプロトコルの統一
  19. PCやスマホなどのローミング手段の統一

たとえば、電話とメールとテレビ会議システムを全て同じマイナンバーでログインして、アプリを気にせず相互に通話ができる。AndroidとiPhoneで同じアプリが使える。ヤマトと佐川で同じ伝票、同じ追跡システムが使える。コンビニでの支払手段がブランドによらず同じ。引っ越しても役所の手続き画面はほとんど違わない。コンサートのチケットも新幹線の乗車券も、同じスマホのウォレットで扱える。スマホを買い替えてもログインし直しだけで継続して使える。引っ越しワンストップで使える業者をいちいち調べる必要がない(全て使える)。ブランド毎に電子書籍管理アプリが違う必要がない。

これらが通ると、一つ一つでも十分に効率化ができるが、多数が相まって相乗効果を生み、数十倍数百倍といった恩恵が得られるだろう。

こういったものが今まで夢物語でしかなかった理由は、大本で考えてみれば新自由主義だったからである。競争領域と協調領域を分けることができる「新社会民主主義」なら、中国やロシアに十分対抗できるはずだ。

2025年7月13日日曜日

たつき諒の予言は外れた


実は前日に書いているのでたぶん、だけれども、「たつき諒の予言は外れる、という私の予言」は当たった。

ただこの間、トカラ列島で群発地震が起こり、最大震度6弱が1回、5強・5弱も複数回発生した。

トカラ列島で最大震度6弱含む1700回超の群発地震 収束見通せず今後も警戒が必要(Science Portal) - Yahoo!ニュース

私の予言を改めて書くと、

2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。

というものになるのだが、ここで6強と6弱は1段階しか違わないから当たらずとも遠からずだったのでは、という人もいるかも知れない。だが、前も書いた通り、地震予知の3原則では規模をしっかり規定することが必要だ。震度6弱と6強では揺れ方に雲泥の差があり、もちろん地震エネルギーも天地ほど違う。

また、私の予言の文言には書いていないが、たつき氏の予言は「東北大震災の3倍以上の津波」とされているところ、トカラ列島の地震では津波警報すら出なかった。

改めて書くと、地震予知の3原則は①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満たしている必要がある。そもそもたつき氏の予言は①は広すぎ、②だけ正確、③も曖昧、と、最初から予言の体をなしていないのだ。それを最大限に拾って定義したのが私の予言で、それすらも外したのだから、もう言い訳はできない。明確にハズレである。

そして、曖昧な言い方をするのは自称(ウソツキ)預言者の常套手段である。地震に限らず、たとえばノストラダムスの大予言でもそうなのだが、1999年7月に降ってくるのは「恐怖の大王」であって、隕石とか核爆弾とかとは明記していない。曖昧な表現だと、それを様々に解釈して、たとえば単なる酸性雨でもアタリと主張する輩が出てくる。曖昧な表現は、予言の「アタリ確率」を上げる手段なので、預言者はこれを常用するわけだ。

そしてその程度(量的視点)なのだが、たとえば震度を曖昧にすると、その「アタリ確率」は大幅に上昇する。

以下は、生成AIに作らせた、1926年(昭和元年)から2024年までの約99年間を対象に概算した、震度別の年平均発生件数である。

 震度7        約0.1回/年
震度6強    約0.4回/年
震度6弱    約0.8回/年
震度5強    約5〜7回/年
震度5弱    約10〜15回/年
震度4        約150〜200回/年

ここは各々の震度で計算しているので、たとえば震度6強以上の地震は0.5回/年、というように足して考える。

私の予言は「震度6強以上」だったが、これは0.5回。もしこれを「6弱以上」とすると、1.3回となる。つまり震度が1段階違えば「アタリ確率」は3倍弱になるのだ。地域も同じように掛け合わせると、曖昧さによる「アタリ確率」は大きく増大する。たとえば海域別に発生件数を調べてみると(これも生成AI)、

太平洋沖(東日本〜南海トラフ)   約500〜600件/年
日本海沖                                                    約100〜150件/年
東シナ海・南西諸島海域                     約150〜200件/年

となる。今回起こった悪石島は「東シナ海・南西諸島海域」になるのだが、南海トラフは当然ながら太平洋沖に分類される。私は「太平洋岸」と書いたが、普通は「太平洋沖」を想像するだろう。この意味でも今回はハズレていたわけだ。

自称預言者はこのこと(発言を曖昧にすればするほどアタリと思ってくれる)をわかっているから曖昧にするのだ。

また、「これは予言ではない」などと予防線を張るのも自称預言者がよくやる手段だ。たつき氏も「夢で見たもの」などと言って予言と明言していないが、これはあらかじめ逃げ道を作るためのものであって、件の本の中を読んでいれば、それが予言であることは明らかである。もちろん当たればそれを声高に主張するのも、自称預言者の常套手段である。

当たると評判の預言者も、よく調べてみるとこれらの法則に当てはまることが多い。というか、当てはまらない人を見たことがない。それでも(その緩い)「アタリ確率」が高い人はいるのだろうけど、そこまで調べるほど興味もないし、ヒマでもない。

結局、この手の(曖昧な)予言に振り回されるのは止めようよ、と思うのだけれども、今回は中国などで旅行が取り止めになるなど国際的な事態にも発展してしまった。そしてこれは心理学で説明できてしまう。

曖昧な表現を予言と結びつけてしまう心理学的効果として、「後知恵バイアス」というものがある。


他にも確証バイアスなどいろいろあるが、こういうものを知った上で、その予言が聞くに値するものなのかを個々の人が判断すべきだ。

以前にも情報リテラシーをもっと勉強すべきだと主張したことがあったが、その多くにはこういった心理学的要素があるのだ。人はもっと心理学を勉強すべきだろう。

2025年6月20日金曜日

ASIの発達と決定論

 世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。

2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士であり、これを「2045年問題」と言っている。だが現実にはもっと早く、2035年とか2030年とかに起きてもおかしくないと思い始めている。

ASIが実用化された際には何が起きるのだろうか、とAIに尋ねてみると、ASIが神様か悪魔かといった二元論的な結論しか出てこないので閉口した。まあ要するにディストピアとユートピアが結論になってしまうのだが、現実はそんなに単純ではないはずだ。

なぜそんな結論になってしまうのかと考えるに、ASIの知恵は人知が及ばないのだから何だってできてしまう、という至極単純な、脊髄反射的な思考に陥っているからだ。それはAIが悪いのではなく、世の中の多くの人もまた、その程度しか想像力が働いていないだからだろうと思う。そこで、AIを含め、ASIを買いかぶっている人たちが考えそうな未来について、現実的な側面から少し検証しておこうと思う。

まず、ASIはAGIの上位概念だが、明確な線引があるわけではない。また、ASIは世界に一つではなく、今でもCopilotとGeminiとPerprexity AIと・・・が並列に存在しているように、世界中に無数に発生し、相互に切磋琢磨して競い合うものだ。国家が機密として囲い、一般には触れさせないようなものでもない。今でも無料と有料では賢さが異なるが、これがそのまま並行して進んでいくものと思って良い。最上位のASIでも、数か月程度で一般人も触れるようになるだろう。その間に最上位は更に賢くなり、そのサイクルを繰り返していく。

次に、AGIよりASIが優れているであろう機能性能についてだが、同じ質問をしてもより深く高度に考えて結論を出してくれる点であろう。これは二通りほど考えられ、一つの方向性は、その予測や推測が正確になっていくところだ。地震予知が可能になるとか天気予報が確実になるとかだ。また、新たな政策の効果予測や受験の結果予測、あるいは物流の最適化なども考えられる。もちろん事実確認(ファクトチェック)のようなことは朝飯前だ。

AGIは、世論をそのまま鵜呑みにするのではなく、その論理構造や量的側面を分析して、専門家のように冷静な議論をすることができるだろう。そうすると、たとえば政策論議におけるウソが簡単にバレてしまうようなことも起きる。備蓄米の問題で言うと、最初に農水省が「コメは不足していない」と言ったら直ちにウソと断じ理由も付け加える、というようなことができる。国会中継をテレビで見て秒速で分析するような事態になれば、仇や疎かな発言はできなくなる。もっと言うと、ポジショントークを喝破したり、個人の発言の積み重ねから本人の思想信条を分析して、ウソを言うタイミングまで予想してしまうかもしれない。

もう一つは、人知では追えないほど大量の施策を積み上げて目的を達成することが可能になることだ。たとえば会社の業績を上げるために、大量の人事異動を一斉に行い、各人の仕事をこと細かく指示し、フォローもAIが担当する、などが考えられる。戦争で言うなら、戦士一人ひとりのインカムに、各々異なる指示を直接、秒速で出し続けることで、少数の戦力で最大限の成果を得る、というようなものだ。

この二つを組み合わせると、組織の意思決定とその実行をAIに完全に任せることで、飛躍的な成績を上げることができるだろう。ただしその際の前提をしっかり作っておかないと、特定のところに極端なしわ寄せを作る場合があるので、事前の検証は十分に必要だ。

またこれは、個人の成長や成功にも結びつけることができる。星新一のショートショート「はい」にあったように、人間一人ひとりにインカムをつけさせてその指示通りに動かす、ということも考えられるだろう。

これらを非常に大雑把にまとめると、それは「最適化」である。目標は個々に定めるとしても、やっていることは目標に対する最適化に他ならない。だがもちろん、ASIは世界中に多数あるため、企業同士国同士などではASI同士の競争が起こり、勝ったり負けたりするだろう。企業と国、国同士などでも同じ葛藤があり、初期にはその歯車が噛み合わずに物価が高騰したり戦争が起きたりと不具合も生じるかもしれない。ただそれも適宜修正され、収束していくものと考える。

次に、巷で言われている予想への反論、ないしは指摘をしておきたい。

  1. ASIには無限の可能性がある
    1. 子供には無限の可能性がある。それと同じく象徴的な言葉としては良いのだが、現実にはASIとて限界がある。たとえば、いくら頭が良くても無限の資源を提供することはできないし、一定以上の社会の効率化だってできるはずはないのだ。つまり、ASI以外のファクターが足かせになって、進化はどこかで鈍化ないしは停止する。その「どこか」も、想像できないほど離れた地点ではない。
  2. 地球環境保護のために人類を絶滅させる等といった極端に走る可能性
    1. ASIはAGIの延長として作られるし、AGIは今のAIの延長として考えられている。その過程でそういった基本倫理や安全装置は当然組み込まれるはずである。映画でよくあるような完全自動にするなど、ありえない話だ。また、その安全装置をAIが回避するという描写もあるが、そんな回避はできないように作るのが安全装置である。
  3. 一部の国が倫理を抑えた極端なASIを使って世界制覇を企む、戦争の自動化によって些細なきっかけから世界大戦が起こり、世界が破滅する
    1. ASIは他国も当然開発している。だから一部の国が暴走したとしても、そういうときは他国が抑えてくれるはずだ。圧倒的に他国のほうが資源は多いのだから、その世界制覇は成功しないだろう。
    2. また当然、戦争の無制限な自動化などあり得ないことだ。そういう危険があるからこそ、安全装置は必ず組み込まれる。そして一部の国でそれが突破されたとしても、独立した他の国のASIまで含めて皆突破されるということはあり得ない。
  4. ASIを擁する国が栄え、世界的な経済格差が拡大する
    1. 初期の格差が圧倒的で素早かったら、そういうシナリオは考えられる。それが独裁国家であればなおのことだ。先進国と新興国の差は近年縮まってきたが、ASIをきっかけに再びそれが拡大する可能性はあると言える。ただそれすらも一時的なことで、やがて格差拡大は収束していく。むしろ現在よりも縮小する可能性がある。
    2. 先進国はASIで社会を最適化するだろうが、最適化が完了してしまえばそれ以上の最適化はできなくなる。そして新興国もやはりASIを使って社会を最適化してくるだろう。そうすれば新興国は先進国と変わらない効率化ができる。
    3. なぜこう言えるかというと、無限の最適化などは所詮不可能だからだ。ある程度以上の知恵は、あっても応用の場が無いのである。例えば、セールスマン巡回問題において、どんなASIであっても最適解以上の解は絶対に出せない一方、漸次最適解と最適解の差はほとんど無い。だから、新興国のASIがある程度以上賢くなれば、先進国の超絶ASIと土俵は同じになってしまうのである。
  5. 人間は労働しなくてよくなる、全てAI(ロボット)がやってくれる
    1. これも誤りである。まずAIができる仕事はオンラインで完結する仕事のみであり、これは先進国でもせいぜい全人口の30%程度しかない。農業漁業はもちろんだが、サービス業でも人間による対面が要求される業務は多くあるからだ。
    2. ではこれがロボットに成り代わるかというと、業種的には7割8割ということは可能だろうが、今度は資源の問題が出てくる。つまり、ロボットを作るには、大量のコンピュータや鉄、銅、プラスチック、またバッテリ材料となる希少金属などが必要であり、地球環境の中で全人類に奉仕できるだけの数のロボットを作るのはそもそも不可能なのだ。計算にもよるだろうが、全人類の数%が限度、という試算もある。ほとんどの人類にとって、労働がロボットに成り代わるというのは永遠の夢でしかない。
  6. 「幼年期の終わり」が起きる
    1. 「幼年期の終わり」とは、SF作家のアーサー・C・クラーク氏が1953年に発表したSF小説だ。人類が超人類に進化していく過程を描いたものだが、その過程で超人類は人類には理解しがたい行動を取り始める。つまり、ASI及びそれを駆使する極端に頭の良い人類が、そうではない普通の人類にとっては理解できない行動を取り始める、という予測である。
    2. 前に論じた通り、ASIの本領は最適化であり、現在レベルの最適化とASIの最適化が何百倍も違うというのは考えにくい。そしてそのやり方が少々奇妙に思える場面もあるだろうが、理解しがたい行動というところまで奇異なものにはならないはずだ。

ここで、一つの疑問が出てくる。SFの一派あるいは科学者の仮説の一派として、「決定論」がある。つまり、「世の中は偶然が重なって進んでいくので予測は不可能」という非決定論に対し、「世の中で将来に起こることは現時点での状態によって決まるのであって、つまりは事前に完璧な予測が可能」というものだ。ASIはこの仮説に、ある程度の回答を出してくれるかもしれない。

決定論に対する反論としてよく挙げられるのは、ハイゼンベルグの不確定性原理だ。だがこれはあくまでも素粒子レベルの話であって、よく考えてみれば社会の動きの不確定性に直接結びつくものではない。経済学は学問といえるのか(あまりにもハズレが多い)という疑問もあるのだが、それはあまりにも社会が複雑だからであって、つまり人間の頭が追いついていないだけだ、とも考えられる。ASIはその仮説を検証してくれるのだ。

つまり、ASIによる予測の精度がどんどん高度で精密になっていくに連れ、「決定論は正しい」という結論が出るかもしれない。逆に、ASIが高度になっても予測の精度があまり上がらなければ、非決定論ないしはカオス理論が正しいと言えるかもしれない。ただ、当面は精度が上がる方向に推移することは間違いないので、精度がどこで止まるか、がその判定のカギになる。

実際のところ、この結果を予測するのは困難だが、個人的には後者、すなわち「限度あり」を推したい。天気予報は正確になるが、戦争はなくならず、国際的な貧富の差も、縮みこそすれ、無くなることはないと考える。

ASIは自国の最適化は行うだろうが、世界の最適化は行えない。なぜなら国同士の協力には(人間の)為政者と国民感情の限度があるからだ。たとえばサウジアラビアの砂漠に太陽電池を敷き詰めると世界中の電力が供給可能なのだが、それに掛かる費用の分担をどうするか、戦争になったときの補償は、ということをいくらASIが考えても、それを承認するのは人間だ。人間同士のエゴがあるかぎり、人間に支配されているASIはそれに従うしかない。その点、検証が最後までできない、という可能性もある。

また、ASIを戦争に使うためには、どうしても「自国の国民・資産>想定敵国の国民・資産」、また「世界全体の益>自国の益」といった優先度を設定する必要があるだろう。だがASIはそれを是とするだろうか。またその程度をどう考えるべきか。これも興味ある課題だ。

2025年6月19日木曜日

ヒューマノイド家事用ロボットの普及と少子化対策

https://www.1x.tech/neo

以前も紹介したヒューマノイド家事ロボットだが、量産化で8万ドルを目指しているらしい。他にもテスラのOptimusやFigure 02など多くのヒューマノイドロボットが開発中で、2030年代中盤くらいには、こういったヒューマノイドロボットは量産化されていると予想されている。中国のもので250万円、ヨーロッパやアメリカのもので400から1000万円くらい。サラリーマンでも何とか買えなくもない、という値段だ。

これで何ができるのかというと、家の片付け、掃除、洗濯物の折りたたみ、荷物の受け取り、などだという。調理はさすがに難しいだろうし、買い物も困難だろう。掃除と言っても掃除機をかけるくらいで、ベランダの掃除や草刈りなどは無理だろう。数百万かける割には大したことはできないように思える。

ただ、もし家事全般すなわち買い物や炊事、食器洗い、子育てまで含めて家事全般ができるようになったとしたらどうだろう。そんなロボットが一家ないしは一人に一台あれば、どうなるか。

一家4人(共稼ぎ夫婦と未就学児、小学3年生)を想定した場合、平均的な家事育児時間は1日当り5~7時間、余暇時間は1日当り2~3時間と推定される。これにロボットを導入することで家事を70%任せられるとすると、夫婦の家事育児時間は1~2時間、余暇時間は5~6時間に増えると計算される。

これだけあれば、夫婦が子育てを負担に感じることはないだろう。ゆとりを持って生活できるし、余暇で更に副職をすることも可能になるはずだ。

だが一方で、ロボット自体のコストは増える。それを例えば500万円で10年と考えるなら、年間の追加コストは50万円で、年収500万円をすると1割になる。これは結構なコストだ。

家事育児の負担を減らすためにロボットを買う、そのロボットのコスト増加のために仕事を頑張る、というのは、本末転倒とまでは言わないが、プラスとマイナスの側面があるマッチポンプのようなもので、どちらが幸せか分からない。ただ、1割というのは結構微妙なところで、やろうと思えばできなくはないところがエグい。個人的には新しいモノ好きなのでぜひ導入してみたいとは思うが。

また、もしこれが本当に実用的なら、国や企業がその費用を補助することも考えられる。そうすれば従業員のQOLは向上するし、上手く行けば少子化対策にもなるかもしれない。

子供を持つことのコストは経済的なものだけではなく、親の時間を取られること、親の考え事や悩みが増えること、という側面もある。そこにロボットをあてがうことで、子供を持つことへの抵抗が薄れるというわけだ。

なお、その弊害はもちろん、子育てをロボットに委ねることの是非だろう。今のヒューマノイドロボットはあまり喋らず表情機能がなく目もないため、特に幼児期の精神の発達には悪影響があると予想される。このため、初期のロボットではそういった精神発達が歪んだ子供ができる可能性はある。だがそれは技術によって次第に克服できるだろう。

2025年6月18日水曜日

たつき諒の予言は必ず外れる

 たつき諒氏の予言が話題になっているので、私も一つ予言をしてやろうかと思う。

2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。

地震予知三原則である①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満たしているため、予言の条件は満たしている。だが、「起きる」ではなく「起きない」と予言しているところがミソだ。

さて、この予言は9割9分当たると思うが、その理由もしっかり存在している。たつき氏の予言は、東北大震災の3倍以上の津波、などと記述しており、少なくとも震度6強以上と想定されるのだが、その震度6強以上の地震は、ここ30年で15回しか起きていない。また、たつき氏の予言は明らかに「太平洋」と記述されているのだが、その15回とは全国の総計であり、太平洋岸と限定すると更に減り5回、しかもそのうちの3回は東北大震災近辺に集中している。ここから確率論で計算すると、(7月5日に限らず)特定の15日の間にその規模の地震が太平洋岸で発生する確率は、1%未満なのだ。

元々たつき氏の予言は科学的見地に基づくものではなく予知夢によるものなので、こんなことを言っても仕方のないことなのだが、そもそも予言者というものは過去の実績でその信ぴょう性が確認できるものだ。彼女の場合、その漫画の中で幾つか過去の予言(予知夢)が当たったことを主張しているが、実際に検証できたのは東北大震災(あたり)と富士山噴火(はずれ)だけで、それ以外の予言は(あたった)実績として既に書かれている(検証不能)。つまり母数が少な過ぎて検証不可能なのだ。今回1回程度外れたところで、その検証ができるわけではない。

外れたからといって彼女を罵る行為は止めて頂きたい。

2025年6月14日土曜日

特定小型原付キャリーカート


わざわざ法を改定してまで取り入れらてた新しい区分、特定小型原付。免許不要で歩道が走れるという点で注目されたものだが、あまり普及しているように見えない。なぜかと考えるに、それに合う駐輪場が無いからではないかと考える。1台十万円を超えるようなものなのでやはり盗まれたくはないが、駐輪場が整備されていなければ持ち歩くしかなく、持ち歩きには邪魔だからだ。個人的にも、買うのに躊躇した理由はそこだった。

そこで考えるのが、降りた後も持ち歩くことを前提として設計することだ。そのためには、今の代表的な機種はキックボード型だと思うが、ここから変形してキャリーカートになるようにするのが良いと思う。

つまり、足を置くステップ部分の真ん中を切断し、蝶番を使って前後2輪だったのを左右の2輪になるように変形させる。つまり後ろ半分を横向きに折りたたんで車輪を前に持ってくるのだ。そしてハンドルの角度を調整して、前に若干倒れるようにする。すると、ステップ部分に荷物を載せて、キャリーカートのように引っ張って歩くことができる。なお、荷物は運転中はリュックとして背負うようにする。

これなら家から駅までキックボードで進んでそのまま電車に乗ることも可能だし、スーパーに買い物に行ってそのまま持ち込んでも違和感がない。個人的にも、これならちょっと遠目のショッピングモールくらいならこれに乗って行って見ようかと思う。

2025年6月13日金曜日

外国人犯罪者を取り締まれ

 


度々著名人が不用意に発言しては炎上するこの問題だが、それが正しいのか(真っ当な主張なのか)。またそれ以前の問題として、そもそも外国人犯罪者は本当に多いのか。今回はこれを調べてみた。これも生成AIを使ったのだが、なかなか面白い結果が出た。

まず単純に犯罪率を比較してみると、

  • 外国人の犯罪率:0.330%
  • 日本人の犯罪率:0.140%

と、2.4倍の開きが出ることが分かった。やっぱそうじゃん、と思いがちだが、この後分析してみると実はそうでもないことが分かったので順に解説する。またこの時点で見ても、その絶対値は小さく、大した差ではないであるとも言える。

次に年齢層別で比較してみた。

年齢層 日本人犯罪率(%) 外国人犯罪率(%)
20~29歳 約0.20 約0.30
30~39歳 約0.17 約0.25
40~49歳 約0.12 約0.12
50~59歳 約0.07 約0.06
60歳以上 約0.03 約0.02

こう見てみると、20~30代では差が出るが、それ以外の年齢層では大差がない、と言える。そしてその20~30代で犯罪率が高い理由だが、これは直ぐには答えが出ずしつこく生成AIに詰めていったのだが、結果としてはその年齢層における貧困の度合いが日本人より高いということだった。

そうなると、根本は外国人差別である(から年収が少ない)、という可能性も出てくる。これを聞いてみると、

  • 労働政策研究・研修機構や内閣府の分析では、年齢・学歴・勤続年数・雇用形態・職種・企業規模などの個人属性・企業属性を統計的にコントロールした上で、日本人労働者と外国人労働者の賃金格差を推計しています。
  • その結果、属性をコントロールしてもなお7~10%程度の賃金格差が残ることが明らかになっています。
  • (中略)
  • しかし、この残余格差のうち「差別」による部分を厳密に数値化することは、現時点の日本の統計・研究ではできません。
  • よって、「外国人差別の結果である」と断定的に定量評価することはできませんが、差別的要素が一定程度含まれていることは定量的に示唆されています

ということだった。

また、年齢層ではなく国籍によって分析してみると、

年齢層 日本人(%) 中国(%) ベトナム(%) フィリピン(%) ブラジル(%)
20~29歳 0.20 0.35 0.45 0.22 0.18
30~39歳 0.17 0.28 0.37 0.19 0.15
40~49歳 0.12 0.14 0.15 0.10 0.09
50歳以上 0.05 0.05 0.05 0.03 0.03
  • 20~30代では、ベトナム・中国国籍の犯罪率が日本人より高い傾向が明確です。特にベトナム国籍は突出しています。
  • フィリピンやブラジルは日本人と同等かやや低い水準です。
  • 40代以降は、日本人と外国人の犯罪率の差は縮小し、50歳以上ではほぼ同水準となります。
  • いずれの国籍でも、年齢が上がるにつれて犯罪率は低下します。

となった。そこで、これにさらに所得を掛け合わせることを試みた。以下は年齢層と所得(単位:万円/年)のリストである。

年齢層 日本人 中国人 ベトナム人 フィリピン人 ブラジル人
20~29歳 330 260 200 210 220
30~39歳 450 320 240 260 270
40~49歳 510 350 260 290 300
50歳以上 570 370 280 310 320

こう見ると、外国人は押しなべて日本人より年収が低いものの、中国人とベトナム人が特に低いということはないことが分かる。つまり、中国人とベトナム人は、他国に比べて年収の低さが犯罪に結びつく可能性が高い、と分析できる。ただこれは、生成AIに

  • 「年収が特に低いわけではないのに犯罪率が高い」という事実は、年収以外の要因が犯罪率に大きく影響していることを示唆する根拠にはなります。
  • しかし、それが「両国の特性」や「人種的傾向」を示す根拠とはなりません。犯罪率の差異は、主に社会的・制度的要因の複合的な影響によるものと考えられます。

というふうに諫められた。単純に国(ないしは民族)の特性と決めつけるのは早計だ、ということだ。では他に何が考えられるか、その寄与率は、と聞いてみると、

主な社会的・制度的要因

  • 来日前の借金・斡旋料負担
  • 在留資格の制約・技能実習・留学制度の問題
  • 低賃金・天引き・不安定雇用
  • 社会的孤立・情報弱者性
  • 組織的犯罪への巻き込まれ
  • 不法滞在・在留資格喪失

寄与率(推定)

現時点の公的統計や学術研究では、各要因の寄与率を厳密に数値化したデータは存在しません。ただし、以下のような傾向が示唆されています。

  • ベトナム人の犯罪のうち、留学生・技能実習生が約64%(留学生41%、技能実習生23%)を占めており、この層が経済的困難・在留資格制約・借金返済負担など複数要因の影響を強く受けている。
  • 窃盗など経済的動機による犯罪が大半(ベトナム人の万引きが全体の40%、中国人も窃盗比率が高い)。
  • 経済的困難・借金返済・在留資格の制約が、全体の犯罪の過半数(50~70%程度)に直接的な影響を与えていると推定されます。

まとめ

  • 主な社会的・制度的要因は「来日前の借金」「在留資格・制度の制約」「低賃金・搾取」「社会的孤立」「組織的犯罪への巻き込まれ」「不法滞在」などです。
  • これらの要因が複合的に作用し、特に経済的困難・制度的制約が犯罪率上昇に大きく寄与していると考えられます。
  • 寄与率の正確な数値はありませんが、犯罪統計の属性分布から、経済的・制度的要因が全体の50~70%程度を占める可能性が高いと推定されます。

となった。このうち、渡航前の借金などは経済的要因であり、年収の問題とも相関する。そこで中国ベトナムが特に渡航前の借金や斡旋料が高いという事実は確認できるか聞いてみると、

まとめ

  • ベトナム・中国は他国と比べても技能実習生の渡航前の借金・斡旋料が突出して高いことが、法務省や学術研究の調査で明確に示されています。
  • この高額な初期費用・借金負担が、来日後の経済的困難や失踪、犯罪リスクの増大に直結していると分析されています。

ということなので、結局は経済的要因という線が濃厚になってきた。つまり人は、年齢層に応じた貧困への許容度があって、それが度を超えると犯罪を犯すようになる。そしてその割合は国籍に関わらず、(恐らく住んでいる国における相対的な)貧困度に相関する、ということだ。

今回炎上したのは、林原めぐみ氏の「不良外国人をちゃんと取り締まれ」発言だった。

https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1749447038/

これに対して「炎上する意味が分からない」(肯定)とか「ヘイトだ」(否定)とか言っている人はいるのだが、そのどちらにおいても、ほとんど脊髄反射的な言動を取っていて、上のような定量的評価をしていない人ばかりであることは注目すべきだ。要するにどちらも、冷静な議論ができていないのだ。

また、例えばベトナム人や中国人の渡航許可を審査する際、こういった斡旋ブローカーの関与や現状での借金額を調べることによって、その犯罪率を劇的に下げることは可能かもしれない。(人間の本質的な)犯罪率が国によって劇的には違わないのだと分かれば、排除ではなくむしろ援助の方が、結果的には外国人犯罪率を低減させることにつながる、というのは、十分に検討に値することだと考える。

なお、林原氏の発言は川口市のクルド人を念頭に置いていると推定されるが、ここまでの分析でクルド人は登場しない。そこで改めてクルド人について聞いてみると、

結論(定量的評価)

  • 犯罪率:埼玉県内のトルコ国籍者(クルド人)は、日本人の約30倍の犯罪率との推計がある。ただし、公式な全国統計や精緻な属性別データはない。
  • 年齢層別・年収別:クルド人について日本人との年齢層別・年収別犯罪率の比較が可能な公的データは現時点で存在しません。
  • 全体的傾向:クルド人は若年層が多く、経済的困難・就労資格の不安定さが犯罪リスクに影響していると考えられますが、定量的な比較は不可能です。

ということだった。なお、最初の「30倍」だが、その根拠はクルド人ヘイトのサイトからの引用であるため、信頼性は低い。それを指摘すると、生成AIは素直にそれを認めた。

この時に、公的データにクルド人統計がない理由として「クルド人という括りがないため」という回答が出たため、クルド人ではなくトルコ人で聞いてみると、また面白い結果が出た。

公的データによる比較

  • 川口市の「発生刑法犯検挙状況」では、日本人の人口当たり犯罪率は0.20%、トルコ国籍者は1.52%(2023年時点)とされています。
    • 1.52% ÷ 0.20% = 7.6倍
  • 仮放免者など住民登録外のクルド人を加えた場合でも、1.05%程度となり、依然として日本人の5倍以上です。
  • 別の年や統計でも、トルコ国籍者の検挙人員44人/在留者1,149人=3.8%という値が出ており、これを日本人の全国平均(0.15~0.20%)と比べても20倍近い差となります。

となった。但し、川口市という狭い地域でのことであるため、そもそも母数が少なく、統計的には誤差が大きいというところは割り引く必要がある。また、クルド人ではないトルコ人もいるし、トルコ人ではないクルド人もいるのだが、地域によってこの比率は大きく変わるらしいので、クルド人としての統計が取れない、ないしは誤差が大きくて使えない、ということは変わらず、要するに「データ不足」である。ただ上の場合(中国人やベトナム人)と違って言いがかりに近いとは言えず、それなりに注目すべき数字は出ていると言える。なお、ここでも所得や年齢層での分析を試みたが、データがないということでこれ以上分析できなかった。

今回の分析はここまでである。面白かったのは、結論が二転三転するところだ。ある結論が出たとき、それをそのまま鷲掴みするのか、更に疑問をもって分析をするのかによって、全く逆の結論が出てくる。今回の場合は、ヘイトが犯罪を生み、それがヘイトにつながる、というマッチポンプ的な結果すら出た。一方で確定しないながら怪しい結論も出たのだが、これも細かく調べないと分からないことだった。確定していないこの段階でヘイトにつなげるのは時期尚早であるということも分かる。

ここまでの分析は、無料の生成AI(Perprexity AI)を使って一時間も掛けないで完了した。つまり、この程度の分析は誰にでも可能だ。だから、こういう分析がどんどん出てきて、量的根拠をもった冷静な議論が活性化することを望む。もっと言うと、これだけ簡単にできることすら調査せずにしたり顔で話すコメンテーターや評論家、インフルエンサーやYoutuberは要らないので、早々に世論から退場して頂きたい。

2025年6月5日木曜日

転売に対する社会的許容度の考察


古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。

最初は万博場ビリオンについて議論したのだが、生成AIは最初、あいまいな倫理観を振りかざして反対した。だが法的根拠や他の(社会的に認められている)転売の例を挙げて反論すると、論理的整合性を欠く反論をしてきた。これは「~だからといって正当とは限らない」というものだが、これは論理的に簡単に反論できる。「でも、不当とも限らないよね」で済んでしまう。

そこで生成AIは規約を振りかざしてきたのだが、実はパビリオンの時間チケットには明確な転売禁止条項が書いていないものが多く、一部にしか適用可能性がないことが分かった。また、規約違反をしたとしてもそれは民事なので、刑法などで裁くことはできないし、むろん非親告罪でもないので警察は動けない。また、損害賠償請求をすることは可能だが賠償見込み額は僅か、慰謝料もほぼ無理だろうとの結論だった。

ただし、チケット不正転売禁止法という法律はあって、その一部のチケット(明確な転売禁止条項がある)はこの法律における「特定興業入場券」に該当する可能性があり、その場合は罰金または懲役刑がある。

この法律は、いわゆるダフ屋を取り締まるもので、展示会やコンサート等を想定している。そこで、なぜそういうところは転売が禁止され、株式やちいかわは禁止されないのかと議論を進めていった。この例には他にもコロナ下のマスクやアルコール、期間限定商品や数量限定商品、ヨドバシカメラの福袋(福箱)、医薬品や酒などがある。人はどういうものの転売を嫌うのだろうか、と推測をさせた。

その結果として、人が転売を嫌うための抽象的な「軸」を抽出することができた。それがこれだ。


こちらが、転売(再販)における「違法性・社会的非難の可能性」を5つの軸で評価したレーダーチャートです:

 各軸の意味と評価(0〜5)

内容 評価(例)
① 商品属性 医薬品・チケットなど規制対象か 4(高リスク)
② 取引形態 業として反復継続しているか 3(中リスク)
③ 供給状況 社会的に逼迫しているか 5(非常に高リスク)
④ 契約・制度 転売禁止の明示があるか 2(やや低リスク)
⑤ 商品と付属物の一体性 本体とおまけの切り離しが問題か 4(高リスク)

いちばん大きなファクターを占めているのは供給状況で、すなわち社会的にひっ迫しているかどうか。次に商品と付属物の一体性。これはライダースナックやビックリマンチョコなどで、おまけ目的で購入し、お菓子の方を捨ててしまうという行為にあたる。これと同等のファクターを占めるのが商品属性で、医薬品、チケットなど特定の商品であること。転売禁止の明示は以外にもファクターとして少なかった。

メルカリなどで転売されているものの多くは社会的にひっ迫していないし、商品と付属品の一体性は見えてこないので、あまり問題にはなっていない。万博のチケットはひっ迫性があり、商品属性としてチケットであるので目立ったわけだ。橋下徹にハイヒールモモコが嚙みついた理由もチケットだからであり、なるほど、なかなか的を射た意見ではないか。

なお、万博の時間チケットの転売対策だが、チケットの規約として転売を明確に禁止し、違約金の金額も明記しておく、という方法が推奨された。これによって違約金訴訟は単に違約した事実だけで可能になるし、金額が明記されることは抑止力として有効であるとのことだ。

2025年6月4日水曜日

生成AIをいじめて遊ぶ

 

「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。

どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあまり変わらないことに気付いた。つまり、

  1. 定義や前提が誤っていることを指摘する
  2. 世間で既にウソと分かっていることを主張していることを指摘する
  3. 定性的議論に終始し、定量的議論ができていないことを指摘する
  4. 視点が一方的であることを指摘する
  5. 批判的思考ができていないことを指摘する

などである。

最初に入力するのは、時事だったり自分のアイデアだったりと色々だ。先日は、鉄筋コンクリートに代わるグラスファイバー筋コンクリートの可能性について質問した。すると生成AIは困難と言い、色々と問題点を指摘してくるので、それら一つ一つについて反論をしていく。そうすると次第に生成AIは追い詰められ、その可能性を認め始める。その過程が興味深い。

この場合、初期状態では延性や熱膨張率、剛性、座屈といった弱点を指摘してくる。だがそれらは鉄筋コンクリートに対する弱点であって、建材として認められるかどうかは別だ、と指摘したり、形状や材質の工夫を考慮していない、と言ってみたり、定性的議論に陥っているから定量的に示せ、と言ってみたりする。

陰謀論者と違うのは、それらの指摘を真摯に受け止めて議論をちゃんと修正するところだ。そうすると、鉄筋コンクリートには劣るが建材としては基準を満たす可能性や、形状や材質の工夫で延性剛性を強化する可能性を探ってくれたりして、その可能性を認める。それでも研究されていないことなどを理由に反論してくるので、今度はなぜ研究されていないことが難しい理由になるのか論理的に説明せよ、と聞いてやる。すると論理的な理由はなく一般論として、研究されていないことは難しいからである場合が多い、と言ってくる。するとこちらは、ただ興味がなくて研究していないだけかもしれない、と突っ込む。すると研究されていない理由を探し、途中で断念した例が見つからないことから、そうかもしれない、と返してくる。

これが陰謀論者だと、屁理屈を返してきたり無視してきたりする。だから話が進まない。そこで、もし自分が陰謀論者だったら、と考えてみると、逆にAIにやり込められるのではないか、と思いたち、生成AIに対し「自分が陰謀論者になるので、貴方は論理的に事実に基づいた論破をしてくれ」と頼んでやって見たのだが、どうも上手く行かない。暖簾に腕押しで、論破してくれないのだ。

どうも生成AIは、質問者に対して厳しく間違いを指摘することを避ける制限が掛かっているようであり、またコロナワクチン陰謀論などのように医療や政治などに対する議論は特に避けるような別の制限が掛かっている。陰謀論というのはこういったクリティカルな話題で特に多いので、せっかくの性能も宝の持ち腐れだ。

実は、この手のモラルが比較的緩いとされているGrok3でも試みたのだが、論理的・量的理論に基づく反論はどうも苦手らしく、幾らでも(陰謀論者的な)反論ができてしまい、最終的には千日手のように、論破されても同じ主張を繰り返す、というヘンな構図ができてしまった。これでは(陰謀論を論破する側が)陰謀論者のロジックで話していると変わらない。

これらから総合すると、生成AIはまだまだ陰謀論者に騙されるだろうし、生成AIによる説明や説得にも陰謀論者的な(不完全な)ロジックがまかり通っている、と考えざるを得ない。生成AIの答えは鵜呑みにするなとはよく言われるが、生成AI自体が陰謀論を吐く可能性はまだ(かなり)残っている、と言えるだろう。

2025年6月3日火曜日

令和のコメ騒動の量的分析


 以前チラっと書いた、表題の分析の結果を披露しておく。

まず全体像について生成AIと議論した。結果として、その大まかなシナリオとは、

  1. いわゆる減反政策によって、市場におけるゆとり分が減り、ここ数年は需給バランスがタイトになっていた。
    1. 農水省は減反政策は止めたと言っているが、その他の手段を使って事実上の減反政策を続けていた。
  2. そこに来て、2023年の高温障害により、米の収量及び品質が大きく悪化した。このため需給バランスが崩れ、品薄と高騰が同時に発生した。
    1. 米は価格弾力性が低い商品であり、つまりは価格が高くなっても需要はあまり減らない。これによって、僅かな乱れが高騰につながる性質を持っている。
  3. 農水省は当初「コメは不足していない」「新米が出れば回復する」等と主張し対策しなかったため、需給バランスは回復せず、新米が出ても価格高騰が続いた。
  4. 国民の不満を受け、農水省は、最終的には備蓄米を放出した。しかしその放出量は少なく、入札方式にしたため価格は高止まりし、タイミングも遅かったため、高値を解消するに至らなかった。
  5. 2024年の収量は回復したが、まだ2022年レベルには至っていない。需給バランスが回復しないため、価格は高止まりが予想される。

という感じになる。その原因について生成AIに聞いてみたところ、以下のような答えが返ってきた。(見やすさのために若干編集してある。)


令和の米騒動の「複合的な原因」を分解し、各要素の量的な寄与度を推定すると、以下のようになります(現時点で公的に定量化されたデータは限定的なため、各種報道・統計・専門家分析をもとに相対的な比重を示します)。

要因 推定寄与度(目安) 主な内容・根拠
気候変動・天候不順 30~35% 猛暑や異常気象による収穫量減少が直接的な供給不足を引き起こした。
減反政策・生産調整の影響 20~25% 長年の減反政策による生産力低下、廃止後も生産回復が遅れた。
農業従事者の高齢化・労働力不足 10~15% 生産現場の担い手減少が供給力をさらに押し下げた。
需要増(インバウンド等) 10~15% 観光客増加や経済正常化で需要が急増。
消費者心理(買いだめ) 5~10% 地震報道や将来不安による買いだめ・備蓄需要の急増。
流通構造・在庫管理の問題 10~15% 流通経路の多様化、在庫管理の不備、投機的な買い占めや売り渋り。
投機的行動・市場心理 5~10% 流通業者や一部関係者による投機的動き、価格吊り上げ。

解説

  • *最大の要因は「気候変動・天候不順」で、2023年の猛暑や異常気象による収穫減が直接的な引き金となっています。
  • 減反政策・生産調整の長期的影響も大きく、需給の弾力性が失われていたことが供給ショック時の価格高騰を招きました。
  • 流通・在庫管理の問題や投機的行動も無視できず、流通業者や関係者による売り渋りや投機買いが市場混乱を増幅させました。
  • 需要面ではインバウンドや消費者の買いだめが一時的な需給ひっ迫に拍車をかけたと見られます。

(中略)

JA(農協)による令和の米騒動への「原因」を量的に評価するには、JAの行動や影響力がどの程度今回の米価高騰・品薄に寄与したかを、主な要素ごとに分解して考察する必要があります。現時点での報道・専門家分析をもとに、JAの関与が強いとされる要素を以下のように整理できます。

JAによる要因 推定寄与度(目安) 根拠・解説
減反政策・生産調整の強化 20~25% 農水省とJAが連携し、3年前から減反を強化。2023年産米は作付け前から前年比10万トン減少。
備蓄米放出への反対・流通制限 10~15% JAが備蓄米放出に反対し、放出された米もJA経由で市場供給量が制限された。
市場への供給調整・在庫管理 10~15% JA農協の在庫は前年同月比で21万トン減少。供給調整により米価高騰を招いた。
政策決定・価格維持への影響力 10~15% 農水省・自民党農林族と「農政トライアングル」を形成し、高米価政策を主導。
情報の不透明さ・責任分散 5~10% 流通・在庫・販売の情報が外部から見えにくく、責任が曖昧化。

解説

  • 減反政策・生産調整の強化(20~25%)

    JAは農水省とともに減反政策を強化し、米価維持を図ってきました。2023年産米では作付け前から減反が進み、供給力を大きく削減しました。

  • 備蓄米放出への反対・流通制限(10~15%)

    JAは備蓄米の市場放出に反対し、放出された米もJA経由で流通量が制限され、市場供給が十分に増えませんでした。

  • 市場への供給調整・在庫管理(10~15%)

    JAの在庫は大幅に減少し、供給調整による価格高騰を招いたとされています。

  • 政策決定・価格維持への影響力(10~15%)

    JAは農水省や自民党農林族と連携し、高米価政策を維持する強い影響力を持っています。

  • 情報の不透明さ・責任分散(5~10%)

    JAによる流通や在庫の情報が外部から見えにくく、責任の所在が曖昧になりやすい構造です。

まとめ

JAによる直接的・間接的な要因は、全体の40~60%程度の寄与度があると推定されます。とくに減反政策の強化、備蓄米流通の制限、供給調整、政策決定への影響力が大きな要素です。

ただし、天候不順など他の要因も無視できないため、「全てがJAの責任」とは言えませんが、今回の米騒動の構造的な主因の一つであることは明白です


いかがだろう。結論としてはJAが主要因になっているということになった。国ばかりが責められているが、その背後にいるJAへの非難は、報道にはほとんど現れていない。SNSには若干JA非難の声があるが、こういった定量的根拠を持って叩いている人はいない。

以前も言っているが、こういった社会現象の解析には定量的評価が重要である。それを重視しない傾向についても以前書いたが、世間も政府も相変わらずのようだ。「生成AIはミーハーである」の回でも書いた通り、上の答えにしても最初の回答ではなく、定量的評価をしつこく迫った上でようやく出てきたものである。

どうか結論だけを掴んで短絡的にJA叩きに廻るのは止めて頂きたいのだが、JAにもっと注目して良い、ということだけは言えるのだろう。

2025年6月2日月曜日

全ては教育だ!


 近年の世界的な右傾化、自国第一主義化について、その原因を生成AIと討論しながら考えた結果、そういう結論に達した、というお話。

まずトランプが未だに支持されている理由について議論したのだが、その理由はアメリカ白人低学歴層の貧困化だという。この白人貧困層は、人数的には数千万人と規模は大きいものの、人数的には増加しておらず、むしろ微減中だという。だがその貧困の程度は厳しくなっており、これが直接の原因と考えられる、のだそうだ。

次に、なぜその白人貧民層がトランプを支持するのかというと、貧困の理由として移民の増加が挙げられている。白人でも低学歴の者が移民に仕事を奪われているというのだが、これは感覚であって必ずしも正しくない。実際には、低学歴層でもできる仕事=単純労働が、いわゆる産業の空洞化によって海外に行ってしまい、彼らでもできる仕事が減っているのが原因だ。

一方で移民は何をしているのかというと、空洞化していない単純労働を白人低学歴層よりも低い賃金で担っている。だから白人がその気になれば彼らの仕事を奪えるのだが、それには安い賃金を我慢しなければならない。ここにジレンマが生じているわけだ。

ではなぜ移民が増えているのかというと、彼らの主な出身国である中南米の政情が近年不安定で経済も落ち込んでいるからだ。なぜ不安定かというと、近年彼らの国では左翼政権が興り、労働者向けのバラマキ政策をしてしまったからだという。つまり左翼政権の政策の失敗が原因なのだが、当然それを支持したのは国民である。左翼政権は労働者に甘く、必要以上に賃上げをしたりバラマキをしたりするのだが、財源がないので借金に頼り、すぐ破綻する。これによって職を失う者がアメリカに渡っているのだ。アメリカだって職が豊富にあるわけではないが、彼らの祖国での平均年収はそれでもアメリカの十分の一だったりするので、低賃金でも十分に喜んで働くのだ。

なぜ左翼政権が次々に誕生したかというと、当然国民がそれを選んだからだ。左翼政権になればそうなるということは、ちょっと考えれば分かりそうなものだが、国民の多くがそれに思い至らず支持した。ではなぜ思い至らなかったかというと、一言で言うなら知恵が回っていなかった(頭が悪かった)からなのだが、その原因は教育を満足に受けていないからだ。そしてその満足でない教育の原因は、その左翼政権ができる前の右翼政権の時代、教育を軽視する政策が取られたことだ、という。

アメリカに戻ると、トランプ政権は必ずしも左翼ではないが、移民に対する強硬策で支持を集めた。しかし移民を排斥したところで、支持層たる白人貧困層が豊かになるわけではない。相互関税にしても同じことで、関税を高くして国内に製造業が回帰するかといえばそんなに簡単ではない。もしそれが高度な製品なら白人貧困層には作れないし、低レベルの製品なら作成コストは高く、輸入品よりも高くしか作れない。低賃金で彼らが働けるかと言えば、物価が高いので無理だ。つまり相互関税も、白人貧困層には利益をもたらさない。

こんなことは少し考えれば分かることだが、白人貧困層にはそれが分からない。なぜ分からないかといえばやはり教育ができていないからであり、その教育を怠ってきたのはバイデン及びそれ以前の政権である。具体的には教育の自由化により教育格差が広がり、貧困層の知識レベルが低下した。これは中南米と全く同じ構造である。

教育の低下は、自国第一主義や強権国家をもたらす。今の国際社会において、自国第一主義は長期的に世界を貧困にするということは、少し考えれば分かることだ。何でも自国でやろうとすれば、すなわち不得意なものも自分でやらざるを得ず、高コスト低品質になってしまう。一方それを貿易でやり取りすれば、お互いに得意分野で仕事ができるから、両国にメリットがある。この程度のことは秒速で分かりそうなものだが、頭の悪い人は近視眼的・短絡的に考え、その選択ができないのだ。そして自国第一主義は当然ながら他国の反発を買うが、これをはねのけるためには強権的にならざるを得ず、これに伴ってフェイクニュースや嘘つきが正当化される。まさにトランプが今やっていることだ。

これらをまとめると、①教育の軽視、②国民の知識レベルが低下、③貧困化が加速、④現実的・長期的な政策を取る政党が敗れ、見掛け倒し・近視眼的・非現実的・感情的な政権が誕生する、⑤その政権の政策は当然功を奏せず、国民はますます貧乏になる、という負のスパイラルが完成するわけだ。

翻って日本はどうかというと、左翼政権の担当期間は極めて短く、大部分は自民党政権である。しかしその自民党の政策によって、ここ何十年もの間、国が教育に掛けるコストは低下していて、OECD加盟国では下から何番目というレベルになってしまっている。バブル以降、経済はどんどん低迷しており、現在に至るまで経済成長率は世界平均にもOECD平均にも大きく劣ったままだ。結果としてGDPは中国に抜かれ、ドイツに抜かれ、とどんどん落ち続けている。

つまり、右翼だろうが左翼だろうが、政権が教育を軽視すると、国は衰退する。中南米やアメリカですらそうなのだから、それに輪をかけて教育を軽視している日本が、彼らより更に衰退するというのは自明の理なのだ。

2025年5月18日日曜日

生成AIはミーハーである

 色々と生成AIと議論しているが、それに関して最近気付いたことがある。

最初の応答については、あまり深く考えずに世間の評判を基に答えるのだが、それには往々にしてウソ大げさが混じっている。それに対して指摘をし、更にそれを繰り返すことによって、だんだんとそのウソ大げさを理解し、マトモな解釈ができるようになる。

これは、近年のコメ価格高騰の要因について問い合わせた際に気付いた。最初は、新聞で見るような「流通の目詰まり」「訪日外国人による需要増加」「買い占め」などと答えていたのだが、その各々について分析を指示したところ、これらについてはファクターとして弱く、主要因ではないと答えるようになった。では主役は誰かと問うと、「減反政策」「JAや全農の影響」と答えるAIと、「需要側の問題」と答えるAIに分かれた。これらの質問をする際、各々に対して定量的根拠を求めると、答えにもきちんと定量的評価が入り、答えが論理的になった。

Grok3の最終的な結論は減反政策とJAの前払金制度だったが、前払金制度は以前からあった施策であり、その意味では説明がつかない。それを突っ込むところで回答数制限が来て、お預けになってしまった。

これは他のAIについても同じで、回答を分析して突っ込んで質問すると答えを翻す場面は多かった。それに気付いて以前からのAIとのやり取りを思い出してみると、確かに思い当たることがある。最初の答えは表面的、ミーハー的で、突っ込んでいくと段々と専門家らしくなってくる。同じ知識を持っていても、質問の仕方次第では180度異なる回答をすることもあるのだ、と思った。

最近のAIはDeep Searchのようなオプションも無償で(回数制限はあるが)使えるようになっているが、それをONにして訊いても、やはり最初の回答は定性的・テキトーなことが多く、こちらが突っ込んで聞かないとマトモな答えは得られないことが多い。そう考えると、AIに安易に回答を求めることは危険で、陰謀論者を増やすことにもなりかねない。

逆に言えば、その「ツッコミ」をできる技量が質問する側にも必要だし、その技量によっては回答がブレることにもなる、と言える。そこに思想や偏見が交じる可能性は当然否定できないから、質問する側もその分慎重になるべきである。

最近では、わざと誤ったツッコミをしてミスリーディングをして、AIがそれに耐えられるかなどといったことをして遊んでいる。

2025年5月7日水曜日

景気施策のコスト3:日本共産党とれいわ新選組の消費税減税/廃止案


日本共産党が消費税減税案についてのサンデーモーニングの批判的なコメント(財源を示せ)に対し「財源を示した上で提言している」という反論をしている。そこで同じく、Grok3に計算してもらった。

日本共産党の提言は、2025年4月16日のものの他、幾つか出ている。そのおおよその方向性は、消費税を期間限定で5%に減らし、財源は主に大企業や富裕層への課税、というものになっている。他にもインボイスの廃止、困難な状況にある企業への事業支援(税免除)などが挙がっている。そしてやはり、制度変更に伴うシステム修正コストや社会混乱には言及していない。また、大企業や富裕層への課税が強化されれば、それ自体も景気に影響するが、これも考慮されていない。それらを考えるとどうなるか。

中途は省くとして、Grok3の結論はこうなった。


富裕層や大企業への課税強化による税収増加(約3.5兆円)は、景気悪化による税収減少(約0.36兆円)を上回り、ネットで約3.14兆円の税収増加が見込まれます。しかし、制度変更のコスト(約8.65兆円)がこれを大きく上回るため、短期的な収支は約-5.51兆円の赤字となります。長期的に見ても、景気悪化の持続的な影響と累積コストにより、収支はマイナスとなる可能性が高いです。 したがって、制度変更を実施する際は、景気悪化のリスクを慎重に評価し、コストを抑える対策や景気刺激策を組み合わせることが必要です。


つまり、やはりやった方が悪いという結論になった。

また、れいわ新選組もやはり消費税廃止を訴えており、財源は大企業や富裕層への課税であるが、細かいところは共産党とかなり違っていて、もっと過激だ。結論も過激になるだろう、と同じくGrok3に訊いてみると、こうなった。


れいわ新選組の提案による収支を総合すると:

  • 支出増加(48兆円)と税収減少(28兆円)で、合計約76兆円の赤字が発生。
  • 消費刺激による税収増加や、課税強化による景気悪化の影響を考慮しても、これを補填する財源や経済効果は不十分。

したがって、最終的な収支は大幅な赤字となる見込みです。具体的な数値が不足している部分や経済効果の不確実性があるため正確な予測は困難ですが、少なくとも数十兆円規模の財政赤字が避けられないと考えられます。


76兆円って、ちょっとスゴい。国家予算が百兆円強だから、6割くらいか。トンデモなくダメダメな案だ。

景気対策で消費税を弄れというのはやはり筋が悪いようだ。同じバラマキなら、自民党が進めているように、マイナポイントをばらまく方が良いというのはだんだん確信に変わってきた。

消費税を弄るのなら、景気対策のような短期的な施策ではなく、長期的な直間比率の見直しのような、正統派で考えるべきだろう。そして以前からの主張の通り、これからバブルが起きる可能性は極めて低いのだから、税は間接税(つまり消費税やガソリン税など)を中心に考えるべきである。今後も所得税や法人税は減り、消費税が上がっていく構図は変わらないだろうが、それは正しいのだ。

2025年5月5日月曜日

人は死んだらどこへ行くのか

 以前、「魂とは情報である」という仮説

https://spockshightech.blogspot.com/2017/01/blog-post_19.html

を書いたことがある。そこから演繹していくことによって、この問題に挑んでみる。

魂とは、大雑把に言うと、脳というコンピュータに書き込まれたプログラム、及びデータのことである。ただ最近では、脳だけでなく、全身の臓器にも記憶が埋め込まれていることが分かっていて、それはいわゆるメッセージ物質の出易さや出る条件が人によって異なることだ。そういう「癖」も含め、情報は人間を形作っている。

その情報は、新しく取り込まれ消化されるとともに、体外にも出ていっている。例えば本人が揃えた本のコレクションは、その本人の個性を反映している。ブログやSNSでの発言、メールの文面、写真や動画などもそうだ。あの人ならこう言うよね、というのが他の人にも伝わっている、これも情報であり魂の一部と言える。つまり、他人にも自分の魂の一部があり、自分にも他人の魂の一部があると言える。

さてこの情報は、コンピュータの情報と違って明確に線引ができない。つまりこの情報は自分のもの、この情報は貴方のもの、という区別が難しいのだ。ファジー理論ではないが、自分90%、他人10%といったように、情報は交差している。だからよく、親しい人が死んだ時に「貴方の心の中に生きている」みたいなことが言われるのだが、これはその意味で本当と言える。

そして、人が死ぬと、体内の情報はほぼ失われるが、体外に出ている情報はまだ残っていて、それが魂である。だが例えば、体内の情報が9割だとすると、体外に出た情報は1割しかない。つまり、人が死ねば、魂のほとんどは失われるが、全部ではない。ただ、その1割が散逸していて、また自分の中にあるその人の魂の一部は感じられるが、それはその1割の、更にその何十分の1に過ぎない。だからほとんどその人を感じられず、悲しくなるわけだ。

最近中国で流行っている、SNSの発言などを基に死んだ人の仮想人格を作り出す作業は、この1割を再構成して人に分かりやすく見せているものだと言える。なのである意味、これは本物の魂であると言える。1割だけど。

体外に出している情報が多い人ほど、その再現性は高まる。だからもし、24時間365日その人を監視して、映像と音声を撮りまくり、更にその再構成を精密に行うならば、魂の4割とか6割とかを再構築することは、将来的には可能になるかもしれない。

またそもそも、人の魂の形成とは、外部からの情報の取り込みによるものである。本を読み、他人と会話し、運動や経験をするというのは全て、外部から情報を取り込んでいるのである。それを体内で咀嚼し自分なりに構成したものが魂なのであって、であれば(本人が接する)外部情報だけ取り込んだとしても、魂の再現はある程度可能になるはずなのだ。ここらへんの考え方は、やはり以前に書いた「中国語の部屋」

https://spockshightech.blogspot.com/2017/05/blog-post_26.html

と同じである。

ここで表題の「人は死んだらどこへ行くのか」を改めて考察してみると、次のようになる。

まず肉体的には消滅する。日本の場合はほとんど火葬なので骨しか残らないが、魂(情報)はその残った骨にはほとんど残っていない。手術をした関節ジョイントの跡とか歯型とか、全くないわけではないが、多くの場合それは魂と言えるようなレベルではない。そして、その他の方法で体外に出ていた情報を統合することは可能だが、その再現性はおそらく1割以下で、高くない。また、その再現性を高める工夫をすることは可能であり、それは本人が体外に出していた情報をできるだけ多く集めることだ。その統合にはAIを使うことになるのだろう。元々情報なのだから、肉体のように単一のものではなく、その集め方や分析の仕方次第で幾らでもバリエーションが生じることは考えられるし、コピーも資放題だ。

この場合「どこへ行くのか」とは、「コンピュータ上の情報になる、それ以外は散逸して何れはノイズ(雑音)に埋もれて消えてしまう」ということになる。

2025年4月30日水曜日

3Dサテライト

 
駅ナカなどに、15分幾らで借りられる、サテライトというかパーソナルオフィススペースが多く登場してきた。個人的にはちょっと息が詰まるのでもう少し広く作ってほしいとは思うが、外から見ればそれなりのスペースを割いていることは分かるので、設置させる側の気持ちも分からんではない。

今のサテライトには、目立ったICT設備はない。PCを持ち込んでそこで仕事をする、それだけを想定しているのだろうと思う。その一方、VRゴーグルで仕事をしている人は現実に存在する。

https://www.zdnet.com/home-and-office/work-life/inside-an-infinite-workspace-what-its-like-to-do-your-job-completely-in-vr/

例えばこの人は、3年前に既に週40時間もメタバース上で仕事をしている。VRゴーグルならサテライトは必要ないと思うのだが、それでも一日8時間もゴーグルを装着しているのは不快だろう。そこで思い出すのが、Googleが開発している、極めて臨場感の高いテレビ電話システム、Project Starlineだ。

https://starline.google/

これは、ユーザの目の位置を検知して追従する、ゴーグルやメガネが不要な立体映像表示装置である。このディスプレイをこのパーソナルオフィススペースの全面に広く貼り付けることができれば、と考えてみれば、私の意図は直ぐに分かるだろう。つまり、そのパーソナルオフィススペースに入って電源を入れたら、もはやそこは狭いスペースではなく、ディスプレイの向こうに広がる広大な空間を覗くことが可能になるわけだ。

ディスプレイに映すのは話し相手ではなく、メタバース空間である。広大なオフィス空間、会議室、大自然、何でもよい。VRでオフィス空間を提供している会社は既に存在するが、そういったオフィス空間を会社として借りておけば、皆そこに「出社」して、会議もそこですることができる。映っている同僚はアバターだが、相当にリアルに作ることもできる。今までのサテライトだと、狭い空間に押し込められているという心理的圧迫感があるが、このサテライトならそこが大いに緩和されるはずだ。

自宅ではこのような高級ディスプレイは用意できないので、サテライトの存在意義はある。逆に言えば、自宅でこのディスプレイが設置できるのなら、そこは立派なサテライトになりうる。感覚的には、眼の前1mに40インチ、左右に同じ高さで長さが半分のディスプレイがU字上に囲う空間があれば、かなりの開放感をもって仕事ができるはずだ。

開放感だけではなく、コミュニケーションもバッチリだ。本人映像の修正は可能だから、起き抜けのパジャマに寝癖頭でも、とりあえず仕事を開始することはできる。立体映像だし、物理的な距離感の演出も可能だから、その点でも臨場感は高い。

このサテライトであれば、全員が在宅勤務でも問題なくコミュニケーションできるだろう。なお、この空間での移動はやはり車椅子式である。車椅子メタバースについては以前から紹介している通りだが、ここにも話は繋がってくる。

このサテライトでは、大画面ディスプレイを何台も表示できるなどのVR空間としてのメリットもあるし、RPGに出てくるステータスウィンドウのようなことも可能なので、アイボールだけでなくメールや音声でのコミュニケーションも未来的な使い方が可能になる。またもちろんプライベートでも活用可能で、今のVRChatのコミュニケーションに準ずるような空間での使用も楽にできるだろう。

このサテライトの実現性だが、視線追跡3Dディスプレイの技術は既にあるので、後はひたすらメタバースの作り込みだけで良い。技術的困難というよりは手間の問題で、後は採算性が悪そうだというのが不安材料になる。だから最初はエグゼクティブ向けに作るのが良いと思う。相当に高いものになるとは思うが、米国の大企業なら使いこなすだろう。

2025年4月26日土曜日

景気施策のコスト2:立憲民主党の消費税減税案について

前回に続き、4月24日時点で立憲民主党が出している消費税減税案についてGrok3(Beta)に試算してもらった。もちろん細かいところは報道されていないため、分からないところは 推測で補足している。

まずはその前提。

  • 内容:食料品の消費税を現行8%から0%に2年間限定で減税(全品目10%→5%は過去案のため、食料品特化と仮定)。
  • 期間:2年間(2025年10月~2027年9月)。
  • 総額(歳入減):後述の試算に基づき、2年間で約5兆円。
  • 資金調達:国債発行または他の税収(例:富裕層増税、優遇税制廃止)で補填。
  • 背景:物価高対策、トランプ米大統領の高関税政策への対応、2025年夏の参院選向けの国民支持獲得。
  • 物価上昇予測:2025~2027年の日本の物価上昇率を年2~3%と仮定(日銀のインフレ目標2%を基に、トランプ関税の影響でやや高め)。

  • 次にその量的な試算内容。

  • 歳入減(バラマキ額)
  • 減税自体の景気刺激効果
  • 国民の心象向上による景気効果
  • 制度変更に伴うシステム変更コスト
  • 一時的混乱、便乗値上げ、詐欺のコスト
  • 時限施策に伴う再変更コストと心象低下による景気減退
  • 補填策によるプラス・マイナス効果
  • 差し引き効果

  • そして結果。

    • プラスの効果
      • 減税の景気刺激効果:+3兆円。
      • 心象向上の景気効果:+0.5兆円。
      • 合計:3兆円 + 0.5兆円 = 3.5兆円
    • マイナスの効果
      • システム変更コスト:-2兆円。
      • 混乱・便乗値上げ・詐欺:-3兆円。
      • 心象低下による景気減退:-0.8兆円。
      • 補填策の影響:-2.4兆円。
      • 合計:2兆円 + 3兆円 + 0.8兆円 + 2.4兆円 = -8.2兆円
    • 差し引き
      • 3.5兆円 - 8.2兆円 = -4.7兆円
    結果:差し引きは -4.7兆円(大幅なマイナス)。

    この中で面白いのは、混乱・便乗値上げ・詐欺の予測額が、減税の景気刺激効果を見事に相殺する額になっているところだ。この三つの中で一番大きいのは便乗値上げで、混乱や詐欺はほとんどない。また、補填策について国民民主党も立憲民主党も明確にしていないが、減税効果に迫る額が計算されている。またこの計算では2年間の物価上昇も加味しているが、それも便乗値上げの影響と言えることになる。

    他、心象向上による景気刺激効果よりも、制度を戻した際の景気減退効果の方が大きいというのも注目だ。そこで試しに、「食料品に限って消費税を16%に上げ、2年後に8%に戻す」で試算してもらうと、次のようになった。

    • プラスの効果
      • 心象向上:+0.5兆円。
      • 歳入使途:+2.7兆円。
      • 合計:0.5兆円 + 2.7兆円 = 3.2兆円
    • マイナスの効果
      • 増税の景気抑制:-4.1兆円。
      • 心象低下:-1.2兆円。
      • システム変更コスト:-2兆円。
      • 混乱・便乗値上げ・詐欺:-2.9兆円。
      • 合計:4.1兆円 + 1.2兆円 + 2兆円 + 2.9兆円 = -10.2兆円
    • 差し引き
      • 3.2兆円 - 10.2兆円 = -7.0兆円
    結果:差し引きは -7.0兆円(大幅なマイナス)。

    まあマイナス幅が広まるのは当然として、ここでも心象向上より低下の方が額が大きいというのは面白い。つまり最初に下げてから上げるのと、上げてから下げるのと、どちらをやっても差し引きはマイナスになるのである。

    最初の試算でGrokは改善案を出していたのだが、そこでも言われていたのは「期間限定にするくらいなら恒久策にすべき」というものだった。そうすればシステム変更コストも混乱や便乗値上げも一回で済むからだ。ただし当然補填策も恒久策に変更する必要がある。その試算も行ってもらったら、以下のようになった。

    • プラスの効果
      • 減税の景気刺激:+3兆円。
      • 心象向上:+0.7兆円。
      • 合計:3兆円 + 0.7兆円 = 3.7兆円
    • マイナスの効果
      • システム変更コスト:-1兆円。
      • 混乱・便乗値上げ・詐欺:-1.6兆円。
      • 補填策:-2兆円。
      • 合計:1兆円 + 1.6兆円 + 2兆円 = -4.6兆円
    • 差し引き
      • 3.7兆円 - 4.6兆円 = -0.9兆円
    結果:差し引きは -0.9兆円(マイナス)。

    どうだろう。結果としてはやはりマイナスだが、期間限定策よりも遥かに改善した。もう少し工夫すれば何とかプラスになりそうである。

    これらの計算は、入力文の思案も含め、各々1分も掛かっていない。AI様々だ。そしてその試算内容を読むと色々気付きがある。Grok3は無償で使えるから、ぜひ自分の視点で色々と試してみて欲しい。

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