2025年12月8日月曜日

ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル

近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕事に波及していくだろう。

ここであぶれた人間には、もはや働くところが無い。何をするにもロボットやAIに劣る人間には、今後もう労働市場自体が存在しないのだ。そんな彼らを救済するには社会保障しかない、と以前は考えていたのだが、ここで発想を転換し、ロボットを所有させれば良いのではないか、と考えてみた。つまりそういう人たちは、その(人間の代わりに働く)ロボットを所有して、労働需要に貸し出して働かせ、その借り賃を得るというものだ。もちろん人間が働くよりは安い額だが、その間自分は何もしない(から他のことができる)のだし、ロボットの台数を増やせばそれだけ額は伸びる。

ここから更に、所有せずともレンタルすれば同じことができるのではないかと考えた。カーシェアリングと同じようにまず自分が借りて、そこから他人に貸すのだ。そうすれば所有のリスクを抑えられる。

用途としては、マンション管理人、イベントや駐車場の誘導員、近所の食堂のホールスタッフ、介護の搬送補助、清掃員、宅配要員、ケータリング要員、などが考えられる。こういうものは、平均的には常に需要があるが時間までは揃わないので、人間よりロボットの方が向いている。

ただ、これだけでは不足だ。第一には、同じビジネスモデルを一般人が使うことは阻止できないので、参入されるとレッドオーシャンになってしまう。そこで、ロボットのジョブマッチングシステムを導入する。これと連動して自動でレンタルが開始されるようにしておけば、カネが自動で落ちてくるようにできる。そしてこのジョブマッチングを使えるのは、生活保護や境界知能など一定の要件を持つ人に限定する。一般人は自分でレンタル先を探さなければならない。ジョブマッチングでは「必ず儲かる」が、手動でマッチングする際には借りてから貸し出すまでのタイムラグがあり、必ずしも収支はプラスにならない。

第二に、借りたい側が直接シェアリングサービスからレンタルしてしまうとこのモデルは破綻するので、借りる側は一定比率でそのジョブマッチングシステムからレンタルしなければならない、と法で定める。個人が借りる場合は100%ジョブマッチング経由とするのも良いだろう。

このシェアリングロボットのプール(待機場所)は地域毎に細かく設定されるので、現実的には寡占状態に近くなり、この定めは大きな障害にはならないと考える。つまりジョブマッチングを通すか通さないかに関わらず、その地域のそのシェアリングサービスから借りることになるので、余計な課金を嫌って他を探すということはあまり発生しない。

このモデルは、社会保障モデルとしても望ましい点がある。従来、生活保護や障害者雇用は「バラマキ」的発想が強く、それ故に偏見も多くあった。だがこのモデルでは、彼らはロボットのオーナーであり、得られるのはそのレンタル料という普通の報酬である。ジョブマッチングが使えるという有利はあるが、同じことを手動することは一般人でも可能なので、ある意味一般人と同じビジネスモデルである。これにより偏見を受けにくくなると考えられるのだ。

ロボットは地域で運用されるので、仕事に限らず家事の補助や子守りなどでも使えるだろう。一家に一台がまだ遠い時代でもロボットを使えることは、地域にとっても望ましいことだ。例えば共稼ぎの夫婦の子供の保育園えの迎えに使うなどということも考えられる。そう考えると、弱者保護は置いておいてもロボットシェアリングには意味があると考える。それにジョブマッチングを加えれば、福祉も効いて一石二鳥になる。

後はビジネスモデルとして成立するかどうかだが、保護対象者(生活保護、境界知能など)の収支は一方的にプラスになるので問題ない。ロボットオーナーは地域の需要を鑑みて調整の必要があり、それなりのリスクを持つが、まあこれはシェアリング会社としては通常のリスクである。借りる側は一定比率の足かせがあり若干不満はあるだろうが、ここは世論に応じて法で調整してやる。つまり十分に低い負担率から始めて徐々に上げていけば、うまい落とし所が見つかるだろう。

2025年12月5日金曜日

努力は報われるのか

努力しても報われない場合はある、というのは一般論として正しいと思うが、成功者は「いや、それは努力が足りないだけだ」と反論する。この構図は昔から存在する。

有名なところでは王貞治の「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」というもので、同じようなことは孫正義や柳井正、稲盛和夫、ホリエモンなども言っている。あるいは、努力しても成功するとは限らないが、成功した者は必ず努力している、という言い方をしている人もいる。だがこれも、才能だけで生きてきたような人がいることを無視した発言だ。

ただ、少数の例外を挙げて反論するのも芸がないので、統計的な決着をつけようと、生成AIに聞いてみた。やり取りは色々あったのだが、最終的には次のような結論が出た。

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◎相関係数の考え方

  • 努力(学習時間)と学力成績 多くの教育調査で相関係数は 0.2〜0.4程度 と報告されています。 → 正の相関はあるが、中程度にとどまる。つまり「努力すれば成績は上がるが、必ずしも強い関係ではない」。
  • 資質(認知能力・IQ・基礎学力)と学力成績 相関係数は 0.5〜0.7程度 とされます。 → 資質の方が努力よりも強く成績に結びつく。特に数学や読解力では高い相関が確認されている。

◎研究例

  • PISA調査(OECD) 学習時間と成績の相関は弱〜中程度(0.2〜0.3)。 認知能力や基礎学力(資質)との相関は中〜強(0.5以上)。
  • NLSY(米国の長期追跡調査) AFQTスコア(認知能力)と所得・学力の相関は 0.6 前後。 学習時間や努力指標との相関は 0.3 前後。

◎まとめ

  • 努力(学習時間)と成績:r ≈ 0.2〜0.4
  • 資質(認知能力)と成績:r ≈ 0.5〜0.7
  • 結論:努力も資質も成績に寄与するが、資質の方が相関は強い。努力は資質を補完する形で効果を発揮する。

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つまり、努力よりも資質のほうが重要であり、努力しなくても資質があれば成功する。それは資質がなくて努力すれば成功する確率よりも倍程度高い、ということだ。

どうだろう。身も蓋もない結論ではないか。資質のないキミ、努力しても無駄だよ~ん。

2025年12月3日水曜日

量子対応暗号の普及時期と世界危機


 聞くところによれば、実用的な量子コンピュータの登場は2030年代半ばから後半(2035年〜2040年頃)が有力な予測とされているのだそうだ。これは、数百万qbit規模の量子コンピュータが開発される時期、という意味だ。

一方、従来の公開鍵暗号(RSAや楕円曲線暗号など)は量子攻撃に脆弱になるため、量子耐性を持つ暗号技術(ポスト量子暗号)の導入が必要である。こちらの普及時期の予測としては、2028年頃から始まり、政府機関や重要インフラについては2035年までに完了することが目標とされているようだ。

量子コンピュータより先に量子対応暗号が普及するのであれば安心、と思ってはいけない。というのは、OSの脆弱性などとは違い、暗号が破られるというのはとんでもないリスクになるからだ。

つまり、脆弱性の場合は脆弱性を突く必要があるのだが、暗号の場合は脆弱性を探す必要はなく、いきなり通信を解析してしまえば良いからだ。それでパスワードを盗まれてしまえば、正規のログインができてしまうので、そこからゆっくり乗っ取ればよいのだ。「脆弱性のある機器を探す」ではなく「古い暗号を使っている通信を探す」だけで良いのなら、その難易度は何百分の一、何万分の一に下がるであろうことは言うまでもない。そしてそもそも、量子暗号対応するにはOSのアップデートが必要だが、脆弱性すら対応できていない機器が多数あるのが現状なのだから、OS自体のアップデートができていない機器は更に多いことは容易に想像できる。つまり母数も多いのだ。

それが例えばプリンタやBluetoothイヤホンだとしても安心はできない。Bluetoothにはキーボードやストレージが繋げられるから、古い暗号を許していると、接続プロトコルを解析されてしまう。その結果、既存のペアリング済の機器のフリをして、別の機器が繋げられてしまうのだ。WiFiでも同様である。

これは企業間取引などでも同じであり、つまりは例えば銀行網なら世界中の銀行が全て対応していないと意味がないし、そこから先につながるスマホやPCなども全て対応していなければならない。どこか一箇所でも古い機器があれば、そこに入られて不正な送金を正規のルートで要求できてしまう。

大企業であっても、10年前の機器を1台も持っていないところなどないだろう。また、海底ケーブルのように交換が困難なものもあるし、個人持ちのWiFiルータや末端のPCなどを含めて全てを刷新するというのは、企業の規模が大きければ大きいほど困難になる。様々な使い方をしているPCには各々それなりの事情があり、容易にリプレースすることはできない。

だから、量子対応暗号の普及については、単に導入が始まる時期ではなく、端末、通信、ホストなど全ての機器が対応を完了し、量子攻撃に耐えうる状態になることが必要である。OSレベルでの対応が必要、場合によっては機器入れ替えも必要だ。そして現実にはそれは非常に困難だ。

従来の脆弱性パッチのような対策は不適切であり、完全総入れ替え+古い機器の完全なデータ抹消ないしは破壊廃棄といった徹底した対策が必要で、これに掛かる費用はとんでもないものになる。それが2028年から2035年の間の7年で完遂できるとはとても思えない。タダでさえ日本の企業はセキュリティ認識が甘いと言われている。ましてや4割が赤字と言われている中小企業の全てがそのためのセキュリティにカネを掛けるとは思えない。

さて、Lloyd's of Londonがケンブリッジ大学リスク研究センターと共同で作成した、サイバー攻撃の経済的影響を定量的に評価した研究がある。この研究におけるこのシナリオの発生確率は約3.3%(30年に1回程度)、被害規模は400兆円とされているのだそうだ。そこから類推するに、恐らくこの被害は千兆円規模になるのではないかと考える。世界のGDPを全部足すと1京4千兆円になるのだが、もう何%ではなく何割というレベルであり、当に世界が傾くようなとんでもない規模だ。

更には、Lloyd'sの研究の発生確率は3.3%だったが、このシナリオではこれよりも遥かに高く、数十%の高いリスクとして扱うべき段階に近づいていると推測されるのだそうだ。

さて、そうなるとどう自衛しようかという話になるのだけれど、このぐらいの規模になると、自衛ができたとしてもそれは無意味で、世界経済が壊れてしまうので、資産を守れても使う場がなくなる、食べ物がない、となって、その先は餓死か暴動に巻き込まれて死ぬか、という悲惨なものになりかねない。

それでも何とか対応しようとするなら、個人で使うIT機器は全部刷新するか、できないならその古い機器はクローズドネットの中に閉じ込めてしまうのが良いだろう。この場合、WiFiやBluetoothは使わず有線にすべきである。もちろんあまり現実的な回答ではない。

というわけで、よい解決策を思いつかないままくらい終わり方になってしまうのだが、国や技術者へのお願いとしては、量子対応暗号の普及に全力で邁進していただきたい。

2025年11月22日土曜日

高市氏の積極財政論と確証バイアス

高市首相は安倍氏と同じ積極財政論者で、就任直後からその方向に舵を切っている。プライマリバランスゼロ目標を事実上反故にし、戦争でもコロナでもないのにいきなり17兆円もの補正予算を組んだ。ちなみに安倍総理が初年度に打ち出した補正予算は10兆円であり、それと比べても突出している。

この方針は正しいのか。MMTのような極端な思想は問題外だが、高市氏の主張する「責任ある積極財政」の「責任ある」のところが十分に正しければ納得もできようものだが、 そのへんはどうなっているのだろう。

まず高市氏は、「PB黒字化目標」から「純債務残高対GDP比の安定化・削減」への転換を行った。これは、「借金(負債)をしても、それに見合う資産(知識・技術・インフラ)を形成すれば問題ない」というロジックである。もう一つは、17兆円の投資が、金利負担を上回るリターン(税収増)を確実に生み出すという定量的な主張である。この二つを検証してみよう。

第一の主張は、そもそも借金をするのは国(政府)であり、それに見合う資産が増えたとしてもそれら(知識・技術・インフラ)は何れもカネではなく(無形資産)、またそれは国(政府)の資産ではない。民間の資産である。このため、予算(カネ)上は返ってくるものがなく、ただ借金が増えるだけである。つまり、それに見合う資産が形成されても問題は解決しない。

また、それがもし第二の主張にあるように税収増をもたらすとしても、そこには二つの問題がある。まずもしGDPが増えたとしてもそれは翌年以降のことで、つまりタイムラグがあること。そしてその「確実」という主張が決定的にウソであることである。17兆円の借金が17兆円以上の税収増をもたらすためには、GDPはその数倍増やさなければならない。税率を20%と仮置きすると、必要なGDPはその5倍、つまり85兆円増えなければならないが、これは現在の日本のGDPの15%にも及ぶ。550兆円というGDPの母数に対し、たった17兆円の投資で85兆円もGDPが増えるとはとても思えない。一般的に、先進国における公共投資の乗数は、高く見積もっても1.1〜1.5が限度で、下手をすれば(しかも最近の日本はたいてい)1を切るというのが常識だ。高市氏の主張はこれが5になると言っているのだが、そんなことは奇跡でも起きなければ無理だ。

これに追い打ちを掛けるのが金利の上昇だ。この二十年あまりのゼロ金利のせいで忘れ去られているのかもしれないが、金利が上昇すればそれは公債費に反映せざるを得ない。借金が増えれば元本だけでなく利払いも増えるのだが、金利が上がれば借金が同じ額でも支払いは増えてしまう。

日本の公債残高における平均償還年限は9.7年(9年8ヶ月)だそうだ。つまり10年で一新され、新しい金利になる。そして現在の公債残高における平均利率は1%である。それを千兆円とすると、ざっと10兆円だ。そして現在の長期金利は10年もので1.835%、20年もので2.815%、40年もので3.705%。これを前提として生成AIにシミュレーションしてもらったところ、2035年時点の公債残高の平均利率は1.9%と出た。つまりもし借金が増えなくても(同額を借り換えるだけでも)、2035年には利払いが10兆円から19兆円になってしまうのだ。そして、過去の公債残高の推移を見れば、公債残高が増えないなどということはあり得ない。当に「金利地獄に陥ろうとしている」のが今の日本である。

ついでに言うと、この金利は現在の状態からの推測である。今、世界的に金利は上昇傾向にあり、そもそも日本はその中でも例外的に低金利だったのだが、それも動き始めている。欧米は4%程度だが、もし4%になると利払いは40兆円であり、今の(元本返済も含めた)返済額をも上回ってしまう。

ここまでの主張を最新のGemini3に投げかけると、私の主張に完全同意してきたので、ちょっと慌てて「高市氏になったつもりで反論して 多少屁理屈を捏ねても良いから」と指示すると、やっと反論してくれた。その調子でGeminiには高市氏になってもらい、しばらく会話を続けたのだが、まるで子供のケンカであり話にならない低レベルの屁理屈しか捏ねてくれない。最後はヒステリックな誹謗中傷に終わる、というとんでもない終わり方になってしまった。

ここでGemini君には冷静に戻ってもらって、その「高市氏になったつもりでの反論」を分析してもらった。まあ予想通り稚拙な反論であるとの結論が出された。これ以上続けても仕方がないので、別の方面から分析してみることにした。

まず、高市氏の言う新たな指標「純債務残高対GDP比」についての分析をする。これがその推移だ。

そもそもGDP比率というのは指標としておかしいと思う。GDPは国家予算ではない。GDPが増えても税収が増えないことはあり得るし、そもそもGDPは国家予算に対して遅効指標、つまり後から着いてくる数字なので、常に「やり逃げ、その結果としての手遅れ」が可能な状態になるからだ。

だがまあそれは置いておくとして、このグラフではこの数十年上がりっぱなしであることが分かる。高市氏はこの指標を打ち出した手前、このグラフに類似したものは見ているはずだが、最近景気が良いのでごまかせると考えたのかもしれない。だがマクロで見れば、まだそれ(低下)は誤差の範囲である。

さて、プライマリバランスを引っ込めて純債務残高対GDP比を打ち出した高市氏だが、具体的な数値は示していない(安定化と低減とは言ったが)。これが財務指標的にどう違うのかというと、つまりは「プライマリバランスはマイナスだが純債務残高対GDP比は減っている」という超微妙な線を目指していることになる。これが経済学上どのような状況かというと、「構造的な財政赤字を抱えながらも、経済成長の力によって債務の重みが希釈され、財政の持続可能性が保たれている」状態を意味する。そしてこれは、次のような状態が成り立っているときにのみ成立する。

第一は、名目成長率が金利を上回っていること。これは実際には下回っている。長期金利は既に1.7~1.8%になっているが、名目成長率は0.5%しかない。第二は、政府資産の増加分が負債の増加分を上回っていること。こちらも現在は成立しておらず、政府資産の増加分数兆円に対して負債の増加分は35兆円である。つまり、現在ではどちらも成立しておらず、しかも17兆円の投資程度で逆転するほどギリギリの数字でもなく、大幅に乖離している。

ではそうでない場合はどうなるのかというと、「プライマリバランスはマイナスで、純債務残高対GDP比も増えている」という状態になる。借金は膨らみ、国防や治安維持、社会福祉といったものにはカネが回らなくなり、返済ばかりに予算が取られる。金利は上がり続け、為替は暴落し、海外からモノ(主に食料や石油)が買えないため国内の経済が回らなくなる。治安も同時に悪化し、国全体がスラム化していくと共に、海外からの侵略の恐怖にも怯えることになる。当に「奈落の底に落ちる」という表現がふさわしいと言える。しかも、この状態への変化は、ほんの十年で起こり得る。

さて、高市氏の経歴を調べてみたのだが、松下政経塾出身であり、頭は良いはずだし、経済についても素人だとは思えない。なのになぜこれほど頓珍漢な主張をするのかと生成AIに聞いてみると、自己の政策への過大評価(成功確率が低いことを無視、失敗した場合の影響を考えない)、他人の意見の過小評価などを挙げた。

これは典型的な確証バイアスの症状であるため、それを確認したところ、Geminiは合意してくれた。そこで更に、彼女の過去の発言からそれを確認できるか聞いたところ、やはり成功への確信と失敗の可能性の過小評価、自身の主張への確執、他人の意見への否定などが山ほど出てきた。

念の為、彼女が確証バイアスに陥っていないと思われる発言も拾ってもらい、両者を比較しどちらが優位かを評価してもらった結果がこれだ。

評価項目 確証バイアス的発言の優位性 定量的な判断
政策的な重み 圧倒的優位 彼女の政策の**「柱(PB目標の否定)」はアクセル論で構成され、ブレーキ論は「添え物(出口戦略)」**に過ぎない。
主張の頻度と強度 圧倒的優位 「デフレの元凶」「ありえない」といった強い断定語で発言されるアクセル論に対し、ブレーキ論は「〜の場合には」「〜する必要がある」といった限定的な言及に留まる
定量的な具体性 優位 アクセル論はPB目標否定、名目成長率2.0%などの具体的な目標値に紐づく。ブレーキ論には、「金利何%」といった**具体的なトリガー(閾値)**が設定されていない。

最終的な結論をコピペすると、以下のようになる。

最終的な結論

高市氏はリスクの存在を言葉の上では認識(現実認識)していますが、その対処方法(ブレーキ論)が極めて曖昧で受動的であるのに対し、「デフレ脱却のためには財政規律を無視すべき」という信念(確証バイアス)は政策の中核をなす能動的な要素です。

どうだろう。特に高市氏擁護派の人にはよく読んでほしい。もちろん、確証バイアスは外して。

本ブログでは、繰り返し陰謀論や確証バイアスについては警告を発してきたが、ここまで来ると「確証バイアスは国を滅ぼす」とすら言えるのではないか、と思う。この手の心理学は義務教育必須にすることを強く推奨する。

2025年11月17日月曜日

総合医の復活


 そんなの前からいるよ、と言われればその通りなのだが、わざわさこう言うには意味がある。しばらく我慢してお聞き頂きたい。

総合医というのは、その名の通り総合的な診療を行う医者のことだ。端的に言えばかかりつけ医、主治医、のようなものなのだが、医療は時代とともに高度化しており、現代においてそれは、どちらかといえば「仕訳医」としての側面が強い。つまりある程度目利きをしたら各々は専門医に任せる。以後は主治医は個別の病気には関わらない。だから患者は複数の病院を渡り歩き、あるいは総合病院の複数の診察科を駆け回ることになる。

だが、その主治医が全ての専門科に精通していて、全てをワンストップで診てくれれば、患者としてもそれに越したことはないわけだ。そしてかつてはそうだった。ほとんどは町医者が診てくれて、手術などどうしても困難なものは大病院に紹介されたのだが、その閾値がどんどん低くなっている。今やさほど大きな街でなくとも総合病院はあって、町医者の守備範囲は狭くなっている。

これを打開する可能性があるのが、近年のテクノロジーの発達である。すなわち通信技術、高解像度映像伝送技術、そしてAI、ロボット、である。

つまり、これらIT機器で武装することによって、町医者で閉じる守備範囲を再び広げようというのが主旨である。

総合医の強みは、複数の病気を抱える患者で発揮される。薬の重複や副作用と症状の識別は代表的だが、精神的ケアや家族の意思の確認などにおいてもそれは有用で、更には入院や手術を近隣で行えることは大きなアドバンテージだ。

ただ、個々の病気の専門性が分からないと、これらの識別は困難だ。重複しているからと単純に薬を減らしてしまうのが正しいとは限らない。また、薬の作用を相殺するような組み合わせを発見したり、発見したときにどう対処するかの知見は、個々の専門医でも分かるとは限らず、総合医としての知見もまた求められる。そういった知見をカバーするのがAIである。

また、手術を遠隔で可能にする手術ロボットや、手術以外の処置も、AIやロボット、その他測定機器の高度化やカルテ連動などの技術を駆使して、町医者でできることを増やしてやる。多数の人間の専門家ではなく高度なAIがそれに置き換わり、町医者は最終判断をするだけで済むとなると、むしろ医療品質の安定化、更には高度化すら期待できる。

さて当然ながら、このスキームを確立するための鍵となるのは、診断用機器、手術・処置ロボット、そしてAIだ。以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2017/02/blog-post_20.html

のような提案をしたことがあるが、これは診断用機器だ。他に手術・処置ロボット、AIが必要だが、手術・処置ロボットは汎用である必要があり、これはアンドロイドすなわち人間のような形状(手が二本、脚が二本、頭が一つ、身長170cm前後、バッテリ駆動)で、人間と同じ器具(メス、鉗子など)を持てるロボットが望ましいと思う。そしてソフトウェアでどんどん機能を追加していくのだ。

AIの方はアイデアが漠としており申し訳ないのだが、多数の専門家AI(各々の病気のエキスパート)と総合診断AIからなるマルチエージェント型が基本になるのだろうと思う。それと人間のAIが自然言語で会話しながら進めていく、というようなイメージになる。

もちろん、このための投資はこのスキームにおける大きな弱点になる。数千万円単位の投資になると思われ、大型医療機器の導入と同じような出費になる。したがってこれの導入には医者により判断が分かれるだろうし、国の補助と言っても桁が大きいので一律にするのは困難だ。

だがこれは、離島など医療過疎地域へのモデルケースとなるため、スキーム自体の確立には国や自治体としても意義があり、その意味でも国の補助は重要である。まずはそういうところから始め、コストダウンを目指しながら町医者に広げていく、そんな構想をもって開発しても良いのではないかと思う。

2025年11月10日月曜日

こんなキュレーションメディアがほしい

 
SmartNewsやGunosyなど、いくつかのキュレーションメディアをインストールして使ってみて、やっぱりダメだと削除する、ということを、数カ月毎にやっている。なぜ数ヶ月毎にやっているかというと、進歩しているかもしれない、使えるようになっているかもしれない、と淡い期待を寄せているからだが、そのたびに裏切られている。何がダメなのかというと、新聞の代替として、まだまだお粗末だからである。ではどんな方向に進化してほしいのか。

まずそもそも、新聞はニュースメディア(だけ)ではない。新聞にはニュース以外にも、解説記事、社説、読者投稿、新聞小説、クイズ、四コマ漫画、川柳など、さまざまなコンテンツが掲載されている。新聞広告や折込チラシまで含めて総合的に、「その時代の情報を提供してくれている」のだ。

キュレーションメディアにも読み物記事は掲載されるが、新聞のそれとは異なり、Web記事のつまみ食いになってしまっている。浅い雑学にはなるが、新聞のような筋は通っていない。

次に困るのはフラットな構造だ。タブ毎にジャンルが分かれているが、このタブの重み付けが皆同じなので、政治・経済と芸能ニュースが同列の重み付けになってしまう。もちろんカスタマイズはあって良いのだけれど、新聞たるもの、基本はそこなのだから、重み付けはしっかりしてほしいのだ。

またこの重み付けは、ジャンル内の各記事の問題でもある。新聞記事の一面は重要ニュースであり、分量も充実している。軽い記事は扱いも軽い。キュレーションメディアでは皆フラットで、これができていない。

個々の記事を読むのにも、新聞ではできる「ページめくり」ができない。記事を選んで読んで、戻って、また記事を選んで読んで、今度はタブを切り替えてまた記事を選んで読んで、を繰り返す必要がある。ページめくりができるのはFlipboardくらいだが、1ページ1記事ベースなのでやはり重み付けが分かり辛いし、足りない記事はやはり足りない。

似たようなことだが、キュレーションメディアはカスタマイズが出来すぎてしまうので、社会人として最低限必要な知識すら読まずに済むことができてしまう。これがよく言われるフィルターバブルを生む。せめて見出しくらいは飛ばさず必ず目に入るような構造にすべきである。

つまり、以上のようなことを解消してくれるキュレーションメディアがあれば、新聞を止められる。それはこんなものになるのだろう。

  1. 基本的なUIはFlipboardに似ている。つまり、縦フリップによるページめくりが基本だ。
  2. 但し、トップニュース2枚、政治2枚、経済2枚、スポーツ1枚、芸能1枚、地域1枚といったようにページ数は決まっていて、各々の枚数内には重要度の強弱により記事の大きさが異なるレイアウトがされている。また、ページ位置(何ページ中何ページ目)がわかるように常に表記されている。当然、ページ数はカスタマイズされていてよいが、最低限のページ数は決まっている。逆に言うとタブはなく、前から順番に読んでいく必要がある。
  3. 気になる記事は詳細をタッチすると更なる解説が入っている。戻る時は左スワイプする。
  4. ニュース以外のコンテンツ(上記)も充実している。
  5. 特に、地域のチラシが含まれていて、そのチラシもスマホ画面サイズに最適化されている。
  6. 曜日により特別ページが増える。週末の特集記事など。

技術的に難しいところは何も無いと思う。ただ、チラシについてはShufoo!のような前例はあるものの、新聞に挟まっているもの全てが掲載されているわけではなく、まだ網羅性が圧倒的に足りていない。これはチラシがローカルで募集されているからでもあるので、チラシの集め方に更なる工夫は必要である。

2025年11月6日木曜日

外国人共生DX

 
クルド人と地元の人たちとのトラブルに見られるように、日本で外国人排斥運動が起きている。

世の中は近年、融和より対立を好んでいるように見える。その代表は右翼対左翼で、トランプや安倍のような対立を煽る風潮の流れを汲んでいる。生活保護者への批判、女性女系天皇、憲法改正などでも同様の構図が見られる。話し合いではなく拒絶と罵り合いで対応する、という方向だ。陰謀論の台頭さえ、この延長と感じる。外国人排斥もこの一つなのだろうが、これらが望ましくないことは言うまでもない。

もちろん、相手方(この場合はクルド人)に全く問題がないわけではないので、双方が双方を理解する努力は必要である。そしてそれにはコストが掛かるので、それをICTの力で省力化してやろう、というものが、タイトルの「外国人共生DX」である。

字面だけ見てイメージできることは、大きくは二つだろう。第一は、翻訳や解説などによって、日本における行動や手続きを「補助」するシステムだ。翻訳はすぐわかるだろうが、例えば、外国人が土葬をしようと手続きを調べても、そもそも日本の自治体には土葬をすることが頭にないため、「手続きが存在しないことが明示されていない」。ただ「手続きがない」と言うだけではなく、文化的背景の違いを補完して説明してやらないと、それが分からないし、更に「ではどうすればよいか」も補佐してやる必要がある。そういった、既存のシステムに対する「前段」を用意するものだ。

第二は、「異文化理解システム」である。これは広い意味でのEMS(Education Management System)であって、教育コンテンツが異文化理解やコミュニケーション、問題解決能力、調整力、日本語教育、等であるものだ。座学が大部分だろうが、VRやシミュレーションなども取り入れられるだろう。

第一は直ぐにでも着手できる。ここには生成AIが大いに活躍するだろう。つまり、きっちりした説明体系を作るよりは、生成AIに臨機応変に説明させる方が早いと思われる。

問題は第二の方で、単に教育コンテンツを揃えれば良いだろうというものでもない。そもそも何を教えるのか、その到達度や評価をどうするか、また宗教や思想信条の衝突に対してどう考えるか、など、難しい問題が山積している。

例えば、ゴミ出しルールを教えたとしても、それをどの程度律儀に守るべきかについての思想が違っていたら、あまり効果はないかもしれない。また、日本人の方が学ぶべきこともある。「ここは日本だから何から何まで日本のルールに従え」と言うのも違うと思うからだ。特に宗教観の違いは強烈であり、日本人の目から見ていくら非合理的であっても尊重すべきものはある。場合によっては国際問題に発展する危険すらあるものだ。

コンテンツの多くは、マナーや不文律、暗黙の了解といったものを明文化するものになるはずだ。だがこれは、日本人にとっても異論が続出する可能性がある。マナー警察のようなXX警察も、その逆もいるはずであり、バランスを取るのは難しい。それそのもの(過剰な指摘とその反発)も日本の文化であるかもしれない。

外国人共生のために日本人も学べ、と言われると、反発する人も多いだろう。それを説得し教育させるのも、このEMSの役割である。そのためにはもっと広く、国や人種を問わない「基礎的な人間力」という入り口を作った方が良いかもしれない。さらに言えば、これは義務教育とシームレスに連携したり(たとえば道徳教育の一部として取り入れるなど)、あるいは生涯教育として国が主導したりする方向性も考えられるのではないか。だがそうするとまた一部の左翼が「洗脳だ」「思想を強制するな」などと騒ぎ立てるかもしれない。というわけで、色々と難しいのだ。

そういった「中身」についての議論は百出だろうが、ICTを活用したシステムとして必要なものが何かは、これとは別に考えることができる。

  1. 単一の点数ではなく、複数の視点を持つ総合的なスコアを出すシステムであること
  2. 思想信条の違いや正解のない問題に対応したシステムであること
    1. 個々の問題に正解を出すのではなく、話し合いや協調、問題解決に向けた姿勢を問うものとすること
  3. 個々人の思想信条を類推できないようプライバシーに配慮したものであること
  4. ある程度公的なバックグラウンドを持つものであること
    1. 世界的にもそれなりに認められるものであること
    2. 公務員採用試験の条件やスコア加算に(将来的に)採用され得るものであること
    3. マイマンバーによるオンライン資格確認システムに(将来的に)対応すること
  5. 座学だけでなく、VRシミュレーションやロールプレイなど、ある程度総合的な視点を持ったコンテンツであること
  6. 外国人だけでなく、日本人も対象とすること
  7. 無料ないしは極めて安価に学習できること
  8. VC(Verifiable Credentials)、DIW(Digital Identify Wallet)への対応
  9. 日本人によるフィードバックと定期的な改正・改定、そのための大原則、更にはそれらの適正性を恣意的でなく監視するシステム
    1. 異論があるものについて、書くこと自体をタブーとするのではなく、個々のコンテンツへの合意度まで含めて明文化する
    2. 両論併記はもちろんだが、その温度差についても記述する

コンテンツ自体の評価を恣意なく行うために、世論を生成AIで評価して付け加えるというのは面白い試みだと思う。これも複数の指標をスコアにしてレーダーチャートを作り、総合スコアを出す、というものになる。指標の候補としては「制度的裏付け(法律など)」「社会的普及度(実際にどの程度守られているか)」「専門家の見解」「世論調査の結果」「地域格差」などが考えられる。特定のコンテンツ(道路へのポイ捨て)に対してこのスコアがこの程度、というものが広範囲に列挙されていたら、外国人の理解も進むだろう。そしてその外国についても同じ評価があれば、両国の違いが浮き彫りになるはずだ。そしてこれらは生成AIで簡単に作ることができる。

日本語は、翻訳アプリが発達しているため、実はあまり重要ではない。ICTで補完できるものは除き、本質的にコンテンツとして教えるべきものに厳選して、基礎・応用・高度(異論のあるもの、より良いマナーなど)とレベル分けして、スコアを出すようなアプリがあれば、外国人受け入れのハードルは大きく下げられるのではないかと思う。

2025年11月5日水曜日

スパイ防止法について

 
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。

まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われているのは、ウソ(不正確)である。そもそも他国においても、「スパイ防止法」という名の法律を冠している国は少ない。

まずはアメリカの「Espionage Act」、「Economic Espionage Act」だが、各々諜報活動取締法、経済(産業)諜報活動取締法と訳せる。これはスパイ防止法と言って差し支えないだろう。中国の「中华人民共和国反间谍法」も反諜報と書いてあるのでスパイ防止法と言ってよい。

だがイギリスの「National Security Act」は国家安全保障法とでも訳すべきであろうし、ロシアの場合はロシア連邦刑法典(Уголовный кодекс Российской Федерации、略称: УК РФ)の国家反逆罪およびスパイ活動に関する条項を指し、つまりは刑法の一部である。他にも色々調べてみると、スパイに特化した法律を持っている国は少ない。調べた限りでは、アメリカと中国だけだった。他の国では、刑法の一部として規定していたり、機密保持法の中に書かれている。その文脈で言うなら、日本にも特定機密保護法や重要経済安保情報保護法、不正競争防止法、刑法などに条文はある。個々の項目の過不足に対する議論はすべきだろうが、実際のところ「スパイ防止法がない国は多数ある」し、ロシアやイギリスのように明示的なスパイ防止法がなくても実質他の法律でカバーしているというのなら、「日本にもスパイ防止法はある」と言えるのだ。

ではそのカバー範囲が日本は極端に狭いのかというと、そうとも言えない。スパイとは当然、秘密にしておきたいモノや情報を盗むことだが、これは単純に窃盗・情報窃盗であり、こんなものは当たり前に犯罪として規定されている。また、外国が関与する場合は更に罰則が厳しくなっている。

ただ、他国と比べた場合、準備罪・予備罪・未遂罪に対する規定が弱いようだ。「日本はスパイ天国だ」とよく言われるが、このことを根拠として言及されることが多い。だがこれも、実際に日本がスパイ行為が多いことを意味しているわけではない。やはり調べてみたのだが、スパイ行為の件数が他国に対して多いとか少ないとかいう統計はない。

また、仮に多いとして、それが法整備のせいだとも限らない。例えば、国民のセキュリティ意識の低さが原因ではないかとも考えられる。そちらについて調べてみたところ、確かに日本はセキュリティ意識が低いことが調査で明らかになっている。例えば組織としてのセキュリティ体制の整備が弱い、セキュリティ対策への投資額が少ない、ISMSなどの認証取得率が低い、といったことが分かっている。俗に日本のスパイ機関と言われている内閣調査室の権限の弱さ、予算の少なさでも、それを垣間見ることができる。つまり、法律が整備されていないことが問題なのではなく、国民の意識が低いことが問題なのかもしれないのだ。ここを履き違えて法律を整備しても、意味がない可能性がある。

更に、準備罪・予備罪・未遂罪は恣意的な運用に対する懸念がある。実際、アメリカ、ロシア、中国などでは、明らかに恣意的な運用であろうと見られるような事件が多発している。独裁国家だけでなく自由主義国家でも起きていることであるので、決して杞憂とは言えない。過去の高市氏の発言(NHKに対するものなど)を聞いていると、非現実的な話ではない。

ロシア中国はともかく、自由主義国家の未遂罪などには、恣意的な運用を防ぐための仕掛けが備わっている。が、巷ではそういう議論もないし、実際アメリカではそれは機能していない。安倍総理の強引な政治手法を見ていると、日本でもそれは可能だろうと思うし、ましてや安倍氏の後継者たる高市氏である。その懸念は十分にあると考えるのが妥当だ。どこで線引きをして、どんな安全装置をつけるのかは、しっかり議論すべきだ。ただ法律を作れば良いというような単純なものではない。

まあ、統括法として「スパイ防止法」なる法律を作ること自体には、今のところ特段賛成も反対もする気はない。法案が出た時点でその内容を読み、判断することになる。そこでのチェックポイントは上に書いた通り、準備罪・予備罪・未遂罪の適用範囲と、恣意的な運用を防ぐための仕掛けについて、どの程度しっかり考えられているか、である。

さて、ここまでの議論は、例によって生成AIとの議論によって得られたものを、旧来の検索によって確認した結果を整理したものだ。その生成AIだが、やはり最初には「スパイ防止法がないのは日本だけ」「日本はスパイ天国」というのを鵜呑みにした回答をしていた。「なぜそう言えるのか」「原典を出せ」「その根拠はおかしいのでは」「検索結果ではそうなっていない」などとツッコミを入れていくと、答えがどんどん変わっていくのが面白かった。複数の生成AIで回答の傾向が違うのも楽しめた。おもちゃとして遊ぶのは楽しいが、まだ仕事で使うには弱い。

2025年10月20日月曜日

ベジファーストと三角食べ


 書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。

その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。

まずベジファーストとは何かをおさらいしておくと、食事をするとき、野菜を先に食べる、というものだ。だが実際には野菜、肉魚、最後にご飯・パンを食べるというものなので、カーボラスト、つまり糖質炭水化物を最後に食べることも定義に含んでいる。

これに対しこれらの本では、ベジファーストが重要なのではなくカーボラストが重要なのだ、という主張をしている。つまりカーボラストであればミートファーストでも良い、というわけだ。

生成AIでベジファーストの効能について聞いてみると、その目的は血糖値の急上昇を抑えることらしい。そうすることによってインスリン分泌を穏やかにし、脂肪蓄積の抑制や糖尿病リスクの軽減が期待できるとのこと。

だが実際、食事において野菜を先に食べご飯を最後に食べたとしても、その時間差はせいぜい5分10分といった程度だろう。胃の滞留時間が2~4時間だそうだから、何を先に食べても大した違いにはならないのではないか。

そう聞いてみたところ、生成AIはあっさり非を認めた。いくつかの実験において、食後血糖値上昇が有意に抑制された例はあったものの、「主食を先に食べた場合との比較」であったり「野菜を食べた後10分間を開ける」といった非現実的な設定であった。いわゆる三角食べ(主食、副食(おかず)、汁)をまんべんなく食べる方法と比較してどうなのか、と調べてもらったところ、そこを厳密に測った研究はないとのことだった。

極めつけは、2024年の糖尿病診療ガイドラインからはベジファーストの記述が削除されていた、ということが分かったことだ。これでベジファーストは息の根を止められた。

では本の主張するカーボラストはどうかというと、「3パターンの食べ方(パン→野菜・肉、野菜・肉→パン、サンドイッチ)で血糖値を比較」という実験において、カーボファーストに対してはもちろんだがサンドイッチに対しても有意な結果が得られている。

新常識:ベジファーストより、カーボラスト|血糖値コントロールの8ルール ④

だがこれも、前述の胃の滞留時間の理論と矛盾する。そこでよく読んでみると、肉野菜とパンの間では10分休憩する、という方法が取られていた。そう考えると、通常の食べ方では大差ないと考えるのが妥当だろう。

ここにたどり着くまでの間、生成AIは散々根拠のない反論を繰り返してきた。だが「実験的に確かめられたのか」「定量的に示せ」といった(いわば当たり前の)質問を繰り返すだけで、生成AIは自滅してくれた。やはり生成AIの使い方にはまだしばらく注意が必要だ。

つまり、結論からするとベジファーストもカーボラストも大した効果は期待できないので、気にせず好きな順で食べてよい。ただしカーボファーストだけはダメだ。というのも、カーボファーストにしてしまうと最短20分で胃から排出され始める可能性があり、先ほどの胃の滞留理論が通じないからだ。

さて、では食事順序以外に有用な方法があるのかというと、実は先ほどの糖尿病診療ガイドラインではプレート法というのが提案されているらしい。食事の量を野菜が半分、肉魚が四分の一、ご飯が四分の一にする、というもの。まあ糖質制限食の一種だが、野菜がだいぶ多い。これは確かに効果があるだろうが、辛い方法でもある。

2025年8月25日月曜日

富士山噴火への備え・再考


 以前にも

https://spockshightech.blogspot.com/2017/10/blog-post_2.html

という投稿をしたことがあるのだが、もう少し状況を詳しく知ることができないか、調べてみた。

首都圏の対策としては、『首都圏における広域降灰対策検討会』というものがある。

https://www.bousai.go.jp/kazan/shutokenkouhai/index.html

この内容を大雑把に伝えると、

降灰30cmまでは自宅などで生活を継続、30cm以上で原則避難

というものになっている。ただ、なぜこうすることにしたのかについては詳しくは書いていない。

実際の降灰量予想としては、令和3年に発表された「富士山ハザードマップ」

https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/kazanfunka/fujisankazan/1030190.html

の中にある

https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/190/21_kouhai.pdf

が参考になる。東京23区、千葉県西部、埼玉県南部は2〜10cm積もると予想されている。

以前の自分の考察では、交通網が全て遮断される、全てのインフラは数カ月回復不能で救援物資も来ない、というものだったが、いくらなんでも100%ということはないだろう。まずここから精査していく。

まず概略から抑えておくと、首都圏の人口は3700万人である。これは1都3県の人口だ。

インフラとして一番重要なのは上水道と物流である。人は水が飲めなければ3日で死ぬ。水道が止まっても物流が大丈夫なら水は飲めるが、この両方が止まれば死ぬ。個人にしても自治体にしても、備蓄はせいぜい数日程度だろうが、この間にどちらかが復旧しなければ死ぬ。つまり、水道と物流が止まり、備蓄が尽きてから3日で死ぬ。

そこでまず水道だが、この資料によると、上水道施設の83%で機能停止ないしは機能低下があると予測されている。また浄水場の機能停止による断水が4%あるとのことで、つまりは87%が止まる可能性がある。

備蓄があると答えた人は、あるアンケートによると60%だったそうだ。だが水をどの程度備蓄しているかについては正確な情報がなかった。そこでこの60%の人が平均3日分の水を保存しているとすると、1週間以内に水道か物流が復旧しなければ87%(3200万人)が渇水死する、という計算になる。

給水車があるじゃないかと考える人がいるかもしれないが、首都圏に給水車は250台しかない。15万人に1台だ。これが雀の涙であることは明らかだ。地方から救援が来たとしてもせいぜいこの数倍が限度だろうから、ほとんど状況は改善しない。被災者が多過ぎるのだ。また、そもそも道路が火山灰で覆われているので、末端まで届けることは最初から不可能だ。自衛隊の支援も同様である。

もう一方の物流だが、これは報告書にもはっきり書いていない。鉄道と飛行機は全面ストップだが、自動車の通行がどこまでできるかは曖昧である。一応、乾燥時10cm、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が走行不能とある。また30cmで四輪駆動車が走行不能になる。ここではトラックを想定しているので二輪駆動車が該当する。また、タイヤ走行という意味では走行可能でも、実際にはエンジンに火山灰が入り込んで焼付き、数時間でダメになってしまう。現実的にはほとんど動けないと見るべきだ。

ただこれには例外がある。EVだ。EVにはエンジンがないため、降灰の中でも走行可能である。もちろん換気フィルタも火山灰には対応していないので換気なし、中途充電できないので脱出のみとなる。万一往復を想定して途中で頓挫してしまうと、道路を塞いでかえって迷惑だからだ。これは前回の考察からの更新点だ。

停電の予想だが、碍子への降灰の影響は配電線100箇所、送電線35箇所、変電所2箇所だそうだ。変電所は首都圏に1600箇所、配電線と送電線は数えるのが困難なほどだそうなので、意外にも影響は小さい。また火力発電所は、噴火15日後に最大42%の供給力低下が見込まれているが、もちろん発電には他の方法もあるため、総合的に見ると80%程度の発電が可能とのことだ。これは前回の予想よりも大幅に良い。電力さえあれば、例えば自治体備蓄として持っている大型浄水器は稼働可能となる可能性があるし、何よりも明かりが確保できることは治安面からも心理面からも大きなメリットになる。降灰中はどうせ工場などは動かないだろうから、電力は意外にも足りる可能性が高い。

さて再度物流だが、復旧の速度が気になるところだ。資料によれば、10cm程度の降灰にはホイールローダーと散水車を使うとある。だが水は貴重なのでとりあえず無視し、ホイールローダーに注目する。

ホイールローダーは全国に10万台以上あるとされている。首都圏に何台あるかは不明だが、仮に4万台として、どれくらいの速度で火山灰が撤去できるのだろうか。

その前に、ホイールローダーはやはりエンジンを積んでいるので、数時間で焼き付いて動かなくなるのではないか、と考えられる。これを是としてしまうと道路の復旧は全く望めないことになってしまうので、ここではフィルタを十分に用意し頻繁に交換することで稼働可能、と仮定する。(この仮定は大甘である。)

次に火山灰を撤去するに当たってその灰をどうするかなのだが、これは2車線以上ある場合には外側の1車線を通して中央に寄せるのだそうだ。これを前提として、どの程度の速度で復旧できるのか考えてみる。

首都圏の道路の総延長は、24万3千キロメートルだそうだ。これを前提に、生成AIに対して

「10cmの火山灰が降り積もった24万3千キロメートルの道路を4万台のホイールローダーで清掃するとして、また高速道路と幹線道路から始めて徐々に支線に取り掛かるという前提、つまり初期には全台数は稼働できず徐々に稼働台数が増えていくという前提で、灰の除去に何日掛かるかを推定せよ」

と指示してやると、結論としては最低3ヶ月、現実的には半年以上という結論が出た。つまり、少なくとも最初の1ヶ月、物流による水の確保は不可能である。

これらを合わせて考えると、水道が87%能力低下、電力は20%能力低下、物流は100%ダウンの状態が1ヶ月続く、ということになる。水の備蓄の量は、個人と自治体合わせても2週間がせいぜいだろうから、そこから先はバタバタと人が死んでいくことになる。3700万人中3200万人が死ぬ、というとんでもない結論だ。

であれば、早期に脱出するのが正解である。残念ながらこの結論は前回の考察と変わらなかった。東京都の指示は誤っているが、1千万人を数時間で脱出させることなど最初から不可能だからこういう結論になったのだろうと推察する。

脱出方法として考えられるのは、徒歩、自転車、バイク、自動車、電車、船などだ。また前提として、安全な移動距離は100kmを想定する。

まず徒歩だが、1日8時間、時速4kmで進んだとしても32kmなので、100km動くには4日掛かる。4日分の水と食料を持って移動するのはほぼ不可能だ。食料はともかく、4日分の水となると12L、2Lのペットボトル6本入りの箱を丸ごと背負っていくというレベルになるからだ。ここで、火山噴火と同時に脱出したとしても、灰は2〜3時間で降り始めるので、初日で周囲の水道が止まる可能性があり、水を途中で補給しながら歩くというのは厳しいだろう。

自転車は、初動としてはあり得るが、やはり2、3時間で移動できる距離では降灰に追いつかれてしまう。バイクなら可能性はあるが、降灰に追いつかれるとスリップしてまともに走れなくなるので、噴火から即時に動け、かつ運転に自信のある人限定である。

電車は0.1cmの降灰でストップするため、本当に初期の1、2時間程度しか動かないだろう。都市部での電車の平均速度(営業平均速度)は30〜40km毎時であるため、目標の半分しか進めない。もし2時間動くなら何とか、というレベルである。だが、電車が律儀にこの通り動いてくれるとは限らない。噴火と同時に止まるかもしれないし、降灰が確認されたら直ちに止まるかもしれない。その意味では電車を生命線とするのは危険だろう。

自動車の場合、数時間で焼き付いて動けなくなるが、その数時間内に逃げ切るという可能性はある。一方で渋滞に巻き込まれる可能性を考えると、乗り捨てる(エンジンが焼き付くまで走る)覚悟が必要だろう。それでも渇水死よりはマシだ。EVでも充電切れで乗り捨てる覚悟はやはり必要だと思う。

そして、新たな可能性として、水路を提案する。これは川沿い、しかも江戸川に限られるという制約があるのだが、江戸川を日光・宇都宮方面に遡上すれば、おそらく脱出可能である。手漕ぎではなくエンジンであることは必須だが、川なら渋滞がないので降灰前に逃げ切ることができるだろう。時速40kmほどが必要だが、これは一般的なレジャーボートや釣り用のボートでも出せる速度だ。燃料だけがちょっと心配だが、そこはあらかじめ計算しておくのが良いだろう。

ただ、東京湾を出て房総半島を回って太平洋を北上するというルートは取るべきではない。こちらだと走破距離が2〜3倍になり、燃料の準備がおぼつかなくなると思われる。

なお、これらの脱出方法は、噴火と同時という前提である。降灰後籠城して我慢できなくなって脱出する、というシナリオだと、状況は違ってくる。

例えば噴火2週間後、幹線道路と高速道路の灰が一応1車線分除去できたという想定で脱出する場合、まず除去されたと言っても灰は舞っているので自動車は使えない。但しEVなら可能なので、渋滞さえ起こらなければEVで脱出するというのはアリになる。

残りは自転車か徒歩だが、どちらにしても灰は舞っているのでN95マスクとゴーグルは必須である。それで100km移動するのはやはり厳しい。人は水がないと3日で死ぬが、その3日間元気で時速4kmで8時間歩くなんてことはあり得ない。徐々に弱っていくはずだ。せめて2日分、6Lくらいは持ち歩かないと、ゴール前に死んでしまう。だがまあ、この場合は水が尽きて命がけの脱出という覚悟だろうから、マイナスの選択としてはアリだろう。もしかしたら60kmくらいで水にありつけるかもしれないが、もはやそれは時の運である。

さて、脱出のためのEVだが、車高の高い、タイヤもそれなりのものを使うなら、30cmでも何とか走行可能らしい。そんな視点で車を選ぶなら、

https://www.subaru.jp/solterra/

がオススメである。ハマーのような極端なものは別格として、普段も乗り回せる割に車高が高いEVである。ソルテラの航続距離は500kmあるから、フル充電しておけば十分に降灰圏を脱出することは可能であろう。

また、火山の場合は地震と違って1ヶ月前程度には予兆が現れるので、全く予知不可能というわけではない。その時点で車を買う、避難する、備蓄をする、ということは考えられるだろう。

2025年8月5日火曜日

労働生産性向上策私案


 https://www.newprinet.co.jp/日本生産性本部 「労働生産性の国際比較2024」を

こちらの統計によると、日本の一人当たりの労働生産性は、1990年頃には13位だったところ、その後落ち込み、1998年から20位前後で推移していた。だが2018年から急速に落ち始め、2023年には32位と急激な下落を起こした。そもそも20位でも不名誉だとは思うが、今や30位というのは情けない限りである。

2018年はコロナ前であり、コロナのせいではない。2011年の東日本大震災前後でも落ち込まなかったものが急激に落ちたのには、何か理由があるに違いない。そう思って少し調べてみた。生成AIの助けを経て得られた結論は、以下のようなものだ。

順位 要因 相対的影響スコア 解説
1位 マークアップ率 -0.179 日本は停滞、米独は上昇 → 価格転嫁力の差が拡大
2位 為替レート(円安) +0.164 PPP換算での見かけの生産性が大きく低下
3位 DX投資額 -0.080 日本は緩やか、米独は急増 → 効率化の差が拡大
4位 高齢者就業率 +0.066 日本の増加幅が大きいが、影響度は相対的に小

マークアップ率とは、コストを価格に転嫁できているかどうか、である。物価は上がっているのだから、同じものを作るのにも原価は上昇している。これを価格に転嫁できないと、労働生産性は下がる。他国は順調にアークアップ率を上げているのに、日本は停滞したままだ。

為替は円安だ。日本は加工貿易で儲けている国なので、基本的に円安はダメージになる。DX投資はその名の通りで、DXによって生産性は著しく向上するが、日本はこれが停滞している。また、高齢者は一般的に労働生産性が低いため、労働者全体における高齢者の割合が増えると平均値は下がる。

これらを影響度順にランキングすると、見ての通り、DXや高齢者の影響は意外に小さく、マークアップ率と為替レートがその主要因である。

次に、マークアップ率が低い理由をAIに尋ねたところ、

指標 日本 米国 ドイツ
平均マークアップ率(製造業) 約1.13 約1.45 約1.38
無形資産投資比率(対売上) 約3〜5% 約10〜15% 約8〜12%
上位10%企業のマークアップ率 約1.31 約1.80 約1.65

無形資産投資比率が低いことが挙げられた。無形資産とは、例えばブランドイメージ、研究投資、人材開発などだ。つまり、ブランドイメージが高ければマークアップ率も高くなるのだが、日本はそれが低いのだ。特にGAFAのような強力なブランドイメージを持つ企業がトップにいるアメリカでは、それらが平均を引き上げる効果があるのだという。

日本は不景気だから、景気が悪ければ無形資産への投資が減るのは当たり前だろう、とAIに聞いてみると、そうではなく、世界ではむしろ増える傾向すらあるのだという。その理由として、国内では短期投資が重視される傾向があるのだそうだ。つまり銀行や株主が短期的視点になっているわけだ。これには研究による裏付けもあるらしい。また、日本は機関投資家の比率が高く、これも短期的視点を重視する傾向に拍車を掛けているのだそうだ。

これらから考えられる政治的施策は、要するに「株主が長期的視点で企業を評価してくれるように誘導すること」だ。AIの推奨を基に、以下四つを提案する。

  1. 長期的インセンティブ制度への優遇
    1. 例えば、5年以上株主であると、株主優待の額が向上する、といったものだ。この制度を利用する株主は、目先の利益よりも長期的な視点を重視してくれる。
  2. 株主との対話頻度向上に対する優遇
    1. 海外では年10回も対話があるというのが普通なのだそうだ。これにより会社からの情報開示が増え、株主はより会社を詳しく知った上で投資することができるようになる。それは必然的に、目に見えない投資=無形資産投資への情報開示が増やすので、その視点で見る投資家の比率が増える、というわけだ。
  3. 無形資産投資比率向上に対する優遇
    1. 例えば研究等に利益の15%以上を投資することで法人税が割り引かれる、といったものだ。
  4. 個人投資家の増大に対する優遇
    1. 個人投資家は機関投資家のような頻繁な売買は行わない傾向があり、必然的に長期的な投資が増えることになる。ただ、これはNISAで既に行われているので、別の視点での優遇が必要かもしれない。例えば個人投資家比率が高い企業が優遇される、あるいはクラウドファンディングへの優遇、などだ。

これらには何れも短期的効果はないが、長期と言ってもせいぜい5年程度である。これらの施策によって欧米並みに無形資産投資が高まれば、マークアップ率は向上し、労働生産性も向上するはずだ。

さて、これらの政策案は、無料版のCopilotを使って1時間程度で作成できた。自民党はおろか、弱小政党であっても簡単に立案できるばかりでなく、全て税優遇だけで実現できるので実現性も高い。細部を詰め、さっさと提案してほしいものである。

AIによる政策立案という話題性からすると、「チームみらい」が良いかもしれない。だがもちろん本稿は公開されているので、他党でも構わない。早い者勝ちでもない。好きにアレンジして使ってほしい。

2025年8月1日金曜日

津波の高さと遡上高

 2025年7月30日、ロシアのカムチャツカ半島沖で地震が発生し、日本の太平洋側の広い範囲で津波警報、津波注意報が発令された。最大予測は警報地域で3m、注意報地域で1mだった。

電車は止まったところもそうでなかったところもあったが、都心で避難した人は皆無だった。警報が出てから半日経っても海岸で遊んでいた人もいたし、海岸の道路の交通も普通にあった。

実際にはほとんどの地域で0.3〜0.6m程度、最大でも1.3mに留まった。そして自分としても、海抜3m以上の場所にいたため、特に警戒はしなかったのだが、その後調べていて肝を冷やした。その判断は間違っていたのだ。

その間違いとは、津波の高さと遡上高との違いだ。つまり、津波の高さが1mであれば標高2mのところには届かない、と思い込んでいたのだが、それは誤りであり、津波の高さ以上のところにまで津波は到達するのだ。それを遡上高と言う。そして実際に過去どの程度の遡上高があったのかを調べてみて、肝が冷えたのだ。以下は生成AIに聞いて得た、過去の遡上高の例である。

1. 東日本大震災(2011年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 岩手県大船渡市で観測された津波の高さは、3.8mでした。
    • 宮城県石巻市鮎川で観測された津波の高さは、3.2mでした。
    • 気象庁は、最大で10m以上の津波が予想されると発表しました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、30.9mの遡上高が確認されました。
    • 岩手県宮古市田老地区では、40.1mという、観測史上最大級の遡上高が記録されました。
    • 宮城県女川町でも、34.7mの遡上高が確認されました。

この事例が示すように、発表された津波の高さが3m程度であっても、遡上高はそれを10倍以上も上回る地域がありました。


2. 日本海中部地震(1983年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 秋田県男鹿市で観測された津波の高さは、1mでした。
  • 実際の最大遡上高:
    • 男鹿市加茂青砂地区では、観測値の1mをはるかに上回る14.9mの遡上高が記録されました。
    • この津波により、秋田県や青森県などで、多くの死者・行方不明者が出ました。

3. チリ地震津波(1960年)

  • 発表された津波の高さ:
    • 日本の太平洋沿岸各地で、津波の高さは1mから数メートルで観測されました。
  • 実際の最大遡上高:
    • 岩手県大船渡市では、観測された津波の高さが数メートルであったのに対し、最大で5.5mの遡上高が記録されました。
    • 特にリアス式海岸の地形が、津波のエネルギーを集約させ、被害を拡大させました。

どうだろう。実際の津波の高さの10から15倍の遡上高が、実績としてあったということだ。予想高から考えても数倍の差があったのだ。

ここから得られる教訓は、至極簡単だ。最大高さ予測の15倍まで見込んで避難すべき、というものだ。今回の場合、東京23区は湾岸の注意報が1mだったわけだが、この計算によると標高15m以下のところは避難すべきとなる。その面積は、おそらく23区の三分の一から二分の一という広大な面積になる。ここに住む人は200から300万人に上ると思われ、数時間で避難するのは困難な数である。

となれば選択肢は一つで、標高と高さを合わせて15m以上のビルに避難するしかない。幸いにも都心にはこの程度のビルは無数にあるので、そこに数時間退避させてもらえば良い。住民全体としては無理でも、個人としてその知識を持っていれば、次からは対処できる。

それにつけても、この情報は当然気象庁は知っていたはずなのに、なぜ発表されなかったのだろう。大いに疑問であり、かつ不満である。下手をすれば、今回300万人死んでもおかしくなかったほどの重大情報なのに。無知は命をも左右する。次からはぜひ発表してほしいと思う。もちろんこの記事を読んだ諸氏におかれては、ぜひ周りにこの知識を拡散して、命を守ってほしい。

2025年7月25日金曜日

国民生活補償制度


年金の制度を調べていて、なんと複雑で面倒なことかと辟易した。今ちょうど年金改革がされているけれども、現行のシステムを複雑にしているだけだ。年金に限らず、様々な社会保障制度が別の名前で呼ばれ、申請方法も異なり、審査も給付も別。ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士などが必要な届け出というのは、国民を馬鹿にしている。

給付の条件を細かく決めるのは構わないのだが、そういうものは一覧で見られるようにすべきだし、届け出は一箇所にしてほしい。

そこで、以下のような改革を提案する。

  1. 全ての社会保障制度は一つに統合する。新た制度の名称は、とりあえず「国民生活補償制度」(生補)とする。
  2. 生補の財源は、税金とする。即ち、この制度によって既存の社会保険料は廃止され、税金が増額される。
  3. 過去、各々の特性について個別支給していた制度は廃止し、生補ではその事情を「点数制」にて加算する形式とする。
  4. 支給額は点数のみに依存する。たとえば既存の年金では、支払い済み年数に支給額が依存するが、新制度では財源が税金になるのでこの制度は廃止になる。(その代わり、税金滞納や税金支払い免除の状況などを点数に入れるというのはアリだろう。)
  5. 支給方法は、定期払い方式と一時金方式、控除方式の三種類とする。
    1. 定期払い方式は、マイナポータルに登録された公金受取口座への毎月の支払いを受ける形式であり、これは主に生活費補助目的に使う。
    2. 一時金方式は、イベントに合わせて支払いを受ける方式であり、これは主に出産などの一時的に発生する高額な費用の補助目的に使う。
    3. 控除方式は、掛かる費用を一定の割合で控除し、医療機関に残りの費用をこの制度から直接支給するものである。健康保険のように、不定期に使うが金額が高いものに適用する。
      1. 控除方式のバリエーションとして、疑似免税が考えられる。つまり、生活困窮者などで設定されていた免税の制度は、免税ではなく相殺的な支給として点数換算する。
  6. 自治体は、国の点数に加え、自治体独自の点数を付与できる。
  7. 点数表(元帳)は国と自治体が各々の部分を管理し、毎年更新する。
  8. 点数は、支払い方式毎に加算され、それを標準額にかけ合わせて算出される。またその標準額は、国が全国標準を決め、都道府県が各県の事情に合わせて調整する。
    1. 当然ながら、標準額は物価指数に合わせるのが妥当である。
  9. マイナポータルから自分の「点数」「標準額」「結果としての支払い額」が確認でき、異議がある場合はそこから問い合わせができる。

この仕掛けの特徴は、以下の通りである。

  1. この仕掛けを作ってしまえば、後は点数をどう配分するかの問題に集約できる。新たな視点で補助をすることを思いついたとしても、いちいち個別に法律を作る必要はない。
    1. 点数に年齢を入れれば年金、障害を入れれば障害年金、死別した家族を入れると遺族年金、医療を受けたことを入れれば健康保険、生活困窮の程度を入れれば生活保護、就学状況を入れれば児童手当・学業手当、リカレント教育を入れれば教育訓練給付制度、妊娠や出産の履歴を入れれば出産一時金、等など。
  2. 点数を弄ることによってベーシックインカムにもなる。直ぐに始める必要はないが、その布石としてシステムを作っておくことができる。
  3. 臨時の給付金(コロナや自然災害など)でも使える。
  4. 点数に年収や資産状況を含めれば、そのまま確定申告の情報として使える。
  5. 所得だけでなく現有資産の把握により点数計算できるため、高額所得者だけでなく資産家(不労所得者)を配慮した点数計算ができ、不公平感をなくすことができる。
  6. 会社負担の概念がなくなるため、特に中小企業には有利に働く。これは金額というよりは、手間が無くなる点が大きい。
  7. 制度がシンプルになることは、国民にとっても監督省庁にとっても自治体にとっても、省資源省コストになる。
    1. 特に自治体の恩恵は大きいと思われる。新たに定額給付金を作って配布事務は自治体に任せるといったような、いわゆる「末端への丸投げ」が無くなるからである。
  8. 給付の形式に控除式を加えることによって、たとえば生活保護世帯において水道光熱費を事実上無償にするといった施策が可能になる。従来は年金を貰ってそこから水道光熱費を払っていたが、先に控除することで確実に支払いができる。これは、水道光熱費の分までギャンブルに使ってしまう、あるいは借金返済を優先してしまう、といったトラブルを未然に防ぐものになる。

社会保険料28兆円がそのまま税金になるため、これには消費税と所得税・法人税に割り振って増やすのが良いだろう。これは結構大幅な上げ幅になる。消費税10%を15%にする、所得税法人税も5%づつ上げる、くらいの勢いである。だが社会保険料はゼロになるので、受け入れられるだろう。

また、公金受取口座への振込ではなく、マイナポイントとして振り込むことも考えられる。これはそこから電子マネー(SuicaやPayPayなど)に移行できるので、銀行口座を持っていない人でも使える便がある他、食料限定とするとフードチケットに早変わりするし、期限を付けることで消費を促すことも可能になる。これらは将来の拡張の布石として使える。

この用に処するためには、マイナンバーの概念は多少拡張しなければならない。つまり、マイナンバーは「日本に住民票がある人」が対象なので、ホームレスや無国籍者、違法滞在者などには支給されない。違法滞在者はまあ除くとしても、ホームレスを救えないのでは生活保護の代わりにはならないし、無国籍者も自分で望んだ人はほぼいないだろうから、対象から外すのは好ましいとは言えない。そういう人にとりあえずでも発行できるように、制度を改善する必要があるだろう。また日本国籍の海外滞在者にも現状では支給されないが、これも不公平感があるので発行すべきだろう。

また、これは膨大なシステムなので、一気に入れ替えることはできないだろう。まずは年金から始めて少しづつ移行するのが良いと思われる。

2025年7月15日火曜日

新社会民主主義構想


先日、舛添要一氏と佐藤優さんの対談を読んだのだが、なかなかに面白かった。それは現在の中国とロシアの街中の話なのだが、両国とも監視カメラが大量にある。さぞ窮屈だろうと思いきや、街は安全になり清潔になり、あるいは交通渋滞が解消されるなど、市民の生活はずいぶんと良くなっているのだそうだ。

つまり、監視カメラによって犯罪が起これば速やかに犯人が捕まるため、犯罪が起こしにくくなっているのだ。清潔になったのも同じで、ポイ捨て等もカメラで見られているからだ。そして交通渋滞が解消したのは、交通の状態をAI解析することで、いわゆる全体最適化がされたためだ。

もちろん思想監視のようなものはあるのでそこについては窮屈だが、大部分の市民は恩恵の方を多く感じ取っているのだそうだ。

一方で自由主義の国はどうかというと、監視カメラはあるにはあるが、欲しいところにあるとは限らないし、カメラの持ち主にいちいち交渉しなければならず、断られても文句が言えない。交通の状態は解析できても相互連携はできていない。経済成長率では中国に大きく劣り、貧富の差は開き、経済が低迷し、右傾化・国粋主義がはびこっている。移民を含め外国人排斥運動なども起きている。これはいったい何がいけないのだろう。

自由主義ではプライバシーも尊重するので、誰が何をしているかを当局は把握できない。これは、単純には犯罪を未然に防ぐことができないばかりか、犯罪が起こっても証拠を取れず捜査がやりにくい。また、経済においても、つまらないところで競争してしまい効率が落ちる、例えば情報流通の規格が百花繚乱になってしまう。また、その状態を把握しようにも、プライバシーやら企業秘密やらがネックとなって把握できない。把握できなければ分析もできず、改善もできない、というわけだ。このため、社会主義国では可能な全体最適化が、自由主義国ではできなくなってしまう。それが情報化社会、AI全盛の世の中において、顕著な差を生み出しつつあるのだと言える。

思想というのは何時の時代でも極端なものから揺り戻しが来るのが常であり、その意味でも、またこの社会主義国の躍進を見ても、新自由主義もそろそろ揺り戻しの時期が来ているのではないだろうか。

それはもちろん、プライバシーや自由主義を完全に断ち切るものではない。かつての社会民主主義の焼き直しともいえるが、どちらかというと思想や思想統制の話ではなく、物流や治安の全体最適化という視点のみで社会主義・全体主義を取り入れる、というものだ。

もちろん新事業などでは競争すべき時期もあるので、何でもかんでも全体最適化すれば良いというものではない。ある程度普及率が高いものに対してそれを利かせる一方、成長著しい領域ではむしろ統一させず競争に任せることが必要だ。そのバランスをのは難しいだろうが、AIのような技術を前提にしてそれを素早く(可能ならリアルタイムで)調整することは可能だろう。そういった技術との結合も、新しい社会民主主義では重要な特徴になる。

つまり、社会の効率に関する部分では過度な競争をせず、仕様はある程度統一しましょう、といった、テクニカルな部分に関しては社会主義を重視するが、それでもプライバシーは保護しましょう、といった、新しい社会民主主義の提案である。

この発想は、民間で流行っている「コーペティション」と基本的には同じものだ。これはcooperation(協調)とcompetition(競争)をつなげた用語で、何でも競争するのではなく、協調もすることで、全体として市場を拡大し利益を促進する考え方のことだ。

どういうものを協調領域にするかというと、たとえば交通系はいわゆるMaaSを行うことにある。このためには交通機関の位置情報、料金体系、支払い手段、渋滞情報、運行(事故等)情報、天気予報(注意報警報等含)、といった情報を統一的に扱わねばならず、また全体の指示には従わなければならない。例えば電車の遅延に合わせてバスタクシーの運用を修正する、等だ。物流も同様で、通函のサイズや規格の統一、パレットやカートのID規格統一など、MaaSのような全体最適化物流システムの構築の助けになる情報は共通化しなければならない。

防災に関していうと、監視カメラ映像の取得や解析に関する統一的なルールとプロトコルが必要だろう。使用の許可や申請の判断などを電子化して素早く進めるシステム、またプライバシーを考慮しつつも犯罪や事故事件の発生を自動検知するAIシステムなどが考えられる。

個人情報も同様で、マイナンバーに紐づけた個人のプロパティ(属性)情報を、必要に応じて瞬時にアクセスできるシステムとその権限管理システムが必要になる。端的な例では、今実証実験されている、マイナンバーと紐づけた医療記録の参照である。意識不明で搬送された患者の病歴や投薬歴を、マイナンバーと紐づけて迅速に提供できる。

これらに対する当然の懸念は、主に二つあるだろう。第一はもちろんプライバシーへの懸念であるが、これは相応する監視・権限管理の仕掛けが必要で、あとはその仕掛けがどれだけ正しく動くかに依存する。つまり例えば犯罪には使うが犯罪抑止には使えない、等といった線引きと、その線引きが正しくできていることの監査である。ここが信用できないと拒否すれば、その社会は社会主義国には永遠に追いつけないだろう。

第二は、どこからを協調領域にすべきかの判断である。今の自由主義社会が一方の極端にあり、社会主義国が他方の極端にあるのだろうというのは間違いないだろうが、その最適な位置はどう探れば良いのかということだ。上の例で言うと、発生した犯罪には適用できるとして、犯罪抑止が全面的にダメというのはどうなのだろう。例えば大規模テロを未然に防ぐためなら許されるのではないか。だが空振りもあるだろうし、その名目で不正をする輩も出てくるはずだ。また、あまり明示的でない線引きは、体制側に有利なようにじりじりと引っ張られるのが世の常である。

新社会民主主義構想では、これらの懸念に対する線引き自体を、AIのような技術に任せてしまおうと考えている。そしてその根拠は、大衆心理だ。つまり、明確なルールは設けない代わり、色々な事例に対して社会が肯定的な反応をするかどうかを基に、リアルタイムに仕切りを修正するのだ。

これなら常に社会が納得する線引きが得られるので、自由主義・民主主義を貫いていることの証左にもなるし、実際、大衆の多くは納得するだろう。

そしてこの仕掛けが導入されれば、いわゆる「技術的には可能だがXXがネックでダメ」の類のシステムが多く実現する。上の例も含めてあげるならば、以下のようなものが考えられる。

  1. 犯罪、事故事件、自然災害、火災などの自動検出と通報
  2. 犯罪以前の迷惑行為や事故事件自然災害火災などの予兆検出と通報
  3. 要注意人物のリアルタイム検出と自動追跡
  4. 犯罪予備行為の自動検出と通報(予備罪があるもの)
  5. 大規模災害時の避難誘導経路の最適化
  6. 物流・人流の最適化(平時)
  7. 非常時の物流・人流のう回路確保
  8. 規格の乱立の抑止による社会の効率化
  9. 電子商取引規格の統一、電子商取引の必須化
  10. 完全な電子政府の実現(紙書類の全廃)
  11. 自治体システムの統一
    1. 現在自治体が使っている情報システム(住民情報、納税、福祉など)は、ベンダが多数ありバラバラに開発されている
  12. 電子マネー・コード決済の規格の乱立の抑止、CBDCの強制
  13. マイナンバーに基づく個人匿名認証システム使用の強制
    1. あらゆるシステムへのログインにマイナンバー認証が使える、使わせる
  14. マイナンバーに基づくウォレットシステム使用の強制
    1. 会員カード、ポイントカードは全てマイナンバー認証に統一
    2. 電子チケットの類もマイナンバー認証に統一
  15. 電子契約の強制とマイナンバー認証の強制
  16. 公的書類はマイナンバー認証に紐づけて保管を強制させる
  17. スケジューラやカレンダーなど、主要なアプリケーションのAPIの統一
  18. テレビ会議システムやSNS、SMSなどのプロトコルの統一
  19. PCやスマホなどのローミング手段の統一

たとえば、電話とメールとテレビ会議システムを全て同じマイナンバーでログインして、アプリを気にせず相互に通話ができる。AndroidとiPhoneで同じアプリが使える。ヤマトと佐川で同じ伝票、同じ追跡システムが使える。コンビニでの支払手段がブランドによらず同じ。引っ越しても役所の手続き画面はほとんど違わない。コンサートのチケットも新幹線の乗車券も、同じスマホのウォレットで扱える。スマホを買い替えてもログインし直しだけで継続して使える。引っ越しワンストップで使える業者をいちいち調べる必要がない(全て使える)。ブランド毎に電子書籍管理アプリが違う必要がない。

これらが通ると、一つ一つでも十分に効率化ができるが、多数が相まって相乗効果を生み、数十倍数百倍といった恩恵が得られるだろう。

こういったものが今まで夢物語でしかなかった理由は、大本で考えてみれば新自由主義だったからである。競争領域と協調領域を分けることができる「新社会民主主義」なら、中国やロシアに十分対抗できるはずだ。

2025年7月13日日曜日

たつき諒の予言は外れた


実は前日に書いているのでたぶん、だけれども、「たつき諒の予言は外れる、という私の予言」は当たった。

ただこの間、トカラ列島で群発地震が起こり、最大震度6弱が1回、5強・5弱も複数回発生した。

トカラ列島で最大震度6弱含む1700回超の群発地震 収束見通せず今後も警戒が必要(Science Portal) - Yahoo!ニュース

私の予言を改めて書くと、

2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。

というものになるのだが、ここで6強と6弱は1段階しか違わないから当たらずとも遠からずだったのでは、という人もいるかも知れない。だが、前も書いた通り、地震予知の3原則では規模をしっかり規定することが必要だ。震度6弱と6強では揺れ方に雲泥の差があり、もちろん地震エネルギーも天地ほど違う。

また、私の予言の文言には書いていないが、たつき氏の予言は「東北大震災の3倍以上の津波」とされているところ、トカラ列島の地震では津波警報すら出なかった。

改めて書くと、地震予知の3原則は①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満たしている必要がある。そもそもたつき氏の予言は①は広すぎ、②だけ正確、③も曖昧、と、最初から予言の体をなしていないのだ。それを最大限に拾って定義したのが私の予言で、それすらも外したのだから、もう言い訳はできない。明確にハズレである。

そして、曖昧な言い方をするのは自称(ウソツキ)預言者の常套手段である。地震に限らず、たとえばノストラダムスの大予言でもそうなのだが、1999年7月に降ってくるのは「恐怖の大王」であって、隕石とか核爆弾とかとは明記していない。曖昧な表現だと、それを様々に解釈して、たとえば単なる酸性雨でもアタリと主張する輩が出てくる。曖昧な表現は、予言の「アタリ確率」を上げる手段なので、預言者はこれを常用するわけだ。

そしてその程度(量的視点)なのだが、たとえば震度を曖昧にすると、その「アタリ確率」は大幅に上昇する。

以下は、生成AIに作らせた、1926年(昭和元年)から2024年までの約99年間を対象に概算した、震度別の年平均発生件数である。

 震度7        約0.1回/年
震度6強    約0.4回/年
震度6弱    約0.8回/年
震度5強    約5〜7回/年
震度5弱    約10〜15回/年
震度4        約150〜200回/年

ここは各々の震度で計算しているので、たとえば震度6強以上の地震は0.5回/年、というように足して考える。

私の予言は「震度6強以上」だったが、これは0.5回。もしこれを「6弱以上」とすると、1.3回となる。つまり震度が1段階違えば「アタリ確率」は3倍弱になるのだ。地域も同じように掛け合わせると、曖昧さによる「アタリ確率」は大きく増大する。たとえば海域別に発生件数を調べてみると(これも生成AI)、

太平洋沖(東日本〜南海トラフ)   約500〜600件/年
日本海沖                                                    約100〜150件/年
東シナ海・南西諸島海域                     約150〜200件/年

となる。今回起こった悪石島は「東シナ海・南西諸島海域」になるのだが、南海トラフは当然ながら太平洋沖に分類される。私は「太平洋岸」と書いたが、普通は「太平洋沖」を想像するだろう。この意味でも今回はハズレていたわけだ。

自称預言者はこのこと(発言を曖昧にすればするほどアタリと思ってくれる)をわかっているから曖昧にするのだ。

また、「これは予言ではない」などと予防線を張るのも自称預言者がよくやる手段だ。たつき氏も「夢で見たもの」などと言って予言と明言していないが、これはあらかじめ逃げ道を作るためのものであって、件の本の中を読んでいれば、それが予言であることは明らかである。もちろん当たればそれを声高に主張するのも、自称預言者の常套手段である。

当たると評判の預言者も、よく調べてみるとこれらの法則に当てはまることが多い。というか、当てはまらない人を見たことがない。それでも(その緩い)「アタリ確率」が高い人はいるのだろうけど、そこまで調べるほど興味もないし、ヒマでもない。

結局、この手の(曖昧な)予言に振り回されるのは止めようよ、と思うのだけれども、今回は中国などで旅行が取り止めになるなど国際的な事態にも発展してしまった。そしてこれは心理学で説明できてしまう。

曖昧な表現を予言と結びつけてしまう心理学的効果として、「後知恵バイアス」というものがある。


他にも確証バイアスなどいろいろあるが、こういうものを知った上で、その予言が聞くに値するものなのかを個々の人が判断すべきだ。

以前にも情報リテラシーをもっと勉強すべきだと主張したことがあったが、その多くにはこういった心理学的要素があるのだ。人はもっと心理学を勉強すべきだろう。

2025年6月20日金曜日

ASIの発達と決定論

 世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。

2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士であり、これを「2045年問題」と言っている。だが現実にはもっと早く、2035年とか2030年とかに起きてもおかしくないと思い始めている。

ASIが実用化された際には何が起きるのだろうか、とAIに尋ねてみると、ASIが神様か悪魔かといった二元論的な結論しか出てこないので閉口した。まあ要するにディストピアとユートピアが結論になってしまうのだが、現実はそんなに単純ではないはずだ。

なぜそんな結論になってしまうのかと考えるに、ASIの知恵は人知が及ばないのだから何だってできてしまう、という至極単純な、脊髄反射的な思考に陥っているからだ。それはAIが悪いのではなく、世の中の多くの人もまた、その程度しか想像力が働いていないだからだろうと思う。そこで、AIを含め、ASIを買いかぶっている人たちが考えそうな未来について、現実的な側面から少し検証しておこうと思う。

まず、ASIはAGIの上位概念だが、明確な線引があるわけではない。また、ASIは世界に一つではなく、今でもCopilotとGeminiとPerprexity AIと・・・が並列に存在しているように、世界中に無数に発生し、相互に切磋琢磨して競い合うものだ。国家が機密として囲い、一般には触れさせないようなものでもない。今でも無料と有料では賢さが異なるが、これがそのまま並行して進んでいくものと思って良い。最上位のASIでも、数か月程度で一般人も触れるようになるだろう。その間に最上位は更に賢くなり、そのサイクルを繰り返していく。

次に、AGIよりASIが優れているであろう機能性能についてだが、同じ質問をしてもより深く高度に考えて結論を出してくれる点であろう。これは二通りほど考えられ、一つの方向性は、その予測や推測が正確になっていくところだ。地震予知が可能になるとか天気予報が確実になるとかだ。また、新たな政策の効果予測や受験の結果予測、あるいは物流の最適化なども考えられる。もちろん事実確認(ファクトチェック)のようなことは朝飯前だ。

AGIは、世論をそのまま鵜呑みにするのではなく、その論理構造や量的側面を分析して、専門家のように冷静な議論をすることができるだろう。そうすると、たとえば政策論議におけるウソが簡単にバレてしまうようなことも起きる。備蓄米の問題で言うと、最初に農水省が「コメは不足していない」と言ったら直ちにウソと断じ理由も付け加える、というようなことができる。国会中継をテレビで見て秒速で分析するような事態になれば、仇や疎かな発言はできなくなる。もっと言うと、ポジショントークを喝破したり、個人の発言の積み重ねから本人の思想信条を分析して、ウソを言うタイミングまで予想してしまうかもしれない。

もう一つは、人知では追えないほど大量の施策を積み上げて目的を達成することが可能になることだ。たとえば会社の業績を上げるために、大量の人事異動を一斉に行い、各人の仕事をこと細かく指示し、フォローもAIが担当する、などが考えられる。戦争で言うなら、戦士一人ひとりのインカムに、各々異なる指示を直接、秒速で出し続けることで、少数の戦力で最大限の成果を得る、というようなものだ。

この二つを組み合わせると、組織の意思決定とその実行をAIに完全に任せることで、飛躍的な成績を上げることができるだろう。ただしその際の前提をしっかり作っておかないと、特定のところに極端なしわ寄せを作る場合があるので、事前の検証は十分に必要だ。

またこれは、個人の成長や成功にも結びつけることができる。星新一のショートショート「はい」にあったように、人間一人ひとりにインカムをつけさせてその指示通りに動かす、ということも考えられるだろう。

これらを非常に大雑把にまとめると、それは「最適化」である。目標は個々に定めるとしても、やっていることは目標に対する最適化に他ならない。だがもちろん、ASIは世界中に多数あるため、企業同士国同士などではASI同士の競争が起こり、勝ったり負けたりするだろう。企業と国、国同士などでも同じ葛藤があり、初期にはその歯車が噛み合わずに物価が高騰したり戦争が起きたりと不具合も生じるかもしれない。ただそれも適宜修正され、収束していくものと考える。

次に、巷で言われている予想への反論、ないしは指摘をしておきたい。

  1. ASIには無限の可能性がある
    1. 子供には無限の可能性がある。それと同じく象徴的な言葉としては良いのだが、現実にはASIとて限界がある。たとえば、いくら頭が良くても無限の資源を提供することはできないし、一定以上の社会の効率化だってできるはずはないのだ。つまり、ASI以外のファクターが足かせになって、進化はどこかで鈍化ないしは停止する。その「どこか」も、想像できないほど離れた地点ではない。
  2. 地球環境保護のために人類を絶滅させる等といった極端に走る可能性
    1. ASIはAGIの延長として作られるし、AGIは今のAIの延長として考えられている。その過程でそういった基本倫理や安全装置は当然組み込まれるはずである。映画でよくあるような完全自動にするなど、ありえない話だ。また、その安全装置をAIが回避するという描写もあるが、そんな回避はできないように作るのが安全装置である。
  3. 一部の国が倫理を抑えた極端なASIを使って世界制覇を企む、戦争の自動化によって些細なきっかけから世界大戦が起こり、世界が破滅する
    1. ASIは他国も当然開発している。だから一部の国が暴走したとしても、そういうときは他国が抑えてくれるはずだ。圧倒的に他国のほうが資源は多いのだから、その世界制覇は成功しないだろう。
    2. また当然、戦争の無制限な自動化などあり得ないことだ。そういう危険があるからこそ、安全装置は必ず組み込まれる。そして一部の国でそれが突破されたとしても、独立した他の国のASIまで含めて皆突破されるということはあり得ない。
  4. ASIを擁する国が栄え、世界的な経済格差が拡大する
    1. 初期の格差が圧倒的で素早かったら、そういうシナリオは考えられる。それが独裁国家であればなおのことだ。先進国と新興国の差は近年縮まってきたが、ASIをきっかけに再びそれが拡大する可能性はあると言える。ただそれすらも一時的なことで、やがて格差拡大は収束していく。むしろ現在よりも縮小する可能性がある。
    2. 先進国はASIで社会を最適化するだろうが、最適化が完了してしまえばそれ以上の最適化はできなくなる。そして新興国もやはりASIを使って社会を最適化してくるだろう。そうすれば新興国は先進国と変わらない効率化ができる。
    3. なぜこう言えるかというと、無限の最適化などは所詮不可能だからだ。ある程度以上の知恵は、あっても応用の場が無いのである。例えば、セールスマン巡回問題において、どんなASIであっても最適解以上の解は絶対に出せない一方、漸次最適解と最適解の差はほとんど無い。だから、新興国のASIがある程度以上賢くなれば、先進国の超絶ASIと土俵は同じになってしまうのである。
  5. 人間は労働しなくてよくなる、全てAI(ロボット)がやってくれる
    1. これも誤りである。まずAIができる仕事はオンラインで完結する仕事のみであり、これは先進国でもせいぜい全人口の30%程度しかない。農業漁業はもちろんだが、サービス業でも人間による対面が要求される業務は多くあるからだ。
    2. ではこれがロボットに成り代わるかというと、業種的には7割8割ということは可能だろうが、今度は資源の問題が出てくる。つまり、ロボットを作るには、大量のコンピュータや鉄、銅、プラスチック、またバッテリ材料となる希少金属などが必要であり、地球環境の中で全人類に奉仕できるだけの数のロボットを作るのはそもそも不可能なのだ。計算にもよるだろうが、全人類の数%が限度、という試算もある。ほとんどの人類にとって、労働がロボットに成り代わるというのは永遠の夢でしかない。
  6. 「幼年期の終わり」が起きる
    1. 「幼年期の終わり」とは、SF作家のアーサー・C・クラーク氏が1953年に発表したSF小説だ。人類が超人類に進化していく過程を描いたものだが、その過程で超人類は人類には理解しがたい行動を取り始める。つまり、ASI及びそれを駆使する極端に頭の良い人類が、そうではない普通の人類にとっては理解できない行動を取り始める、という予測である。
    2. 前に論じた通り、ASIの本領は最適化であり、現在レベルの最適化とASIの最適化が何百倍も違うというのは考えにくい。そしてそのやり方が少々奇妙に思える場面もあるだろうが、理解しがたい行動というところまで奇異なものにはならないはずだ。

ここで、一つの疑問が出てくる。SFの一派あるいは科学者の仮説の一派として、「決定論」がある。つまり、「世の中は偶然が重なって進んでいくので予測は不可能」という非決定論に対し、「世の中で将来に起こることは現時点での状態によって決まるのであって、つまりは事前に完璧な予測が可能」というものだ。ASIはこの仮説に、ある程度の回答を出してくれるかもしれない。

決定論に対する反論としてよく挙げられるのは、ハイゼンベルグの不確定性原理だ。だがこれはあくまでも素粒子レベルの話であって、よく考えてみれば社会の動きの不確定性に直接結びつくものではない。経済学は学問といえるのか(あまりにもハズレが多い)という疑問もあるのだが、それはあまりにも社会が複雑だからであって、つまり人間の頭が追いついていないだけだ、とも考えられる。ASIはその仮説を検証してくれるのだ。

つまり、ASIによる予測の精度がどんどん高度で精密になっていくに連れ、「決定論は正しい」という結論が出るかもしれない。逆に、ASIが高度になっても予測の精度があまり上がらなければ、非決定論ないしはカオス理論が正しいと言えるかもしれない。ただ、当面は精度が上がる方向に推移することは間違いないので、精度がどこで止まるか、がその判定のカギになる。

実際のところ、この結果を予測するのは困難だが、個人的には後者、すなわち「限度あり」を推したい。天気予報は正確になるが、戦争はなくならず、国際的な貧富の差も、縮みこそすれ、無くなることはないと考える。

ASIは自国の最適化は行うだろうが、世界の最適化は行えない。なぜなら国同士の協力には(人間の)為政者と国民感情の限度があるからだ。たとえばサウジアラビアの砂漠に太陽電池を敷き詰めると世界中の電力が供給可能なのだが、それに掛かる費用の分担をどうするか、戦争になったときの補償は、ということをいくらASIが考えても、それを承認するのは人間だ。人間同士のエゴがあるかぎり、人間に支配されているASIはそれに従うしかない。その点、検証が最後までできない、という可能性もある。

また、ASIを戦争に使うためには、どうしても「自国の国民・資産>想定敵国の国民・資産」、また「世界全体の益>自国の益」といった優先度を設定する必要があるだろう。だがASIはそれを是とするだろうか。またその程度をどう考えるべきか。これも興味ある課題だ。

2025年6月19日木曜日

ヒューマノイド家事用ロボットの普及と少子化対策

https://www.1x.tech/neo

以前も紹介したヒューマノイド家事ロボットだが、量産化で8万ドルを目指しているらしい。他にもテスラのOptimusやFigure 02など多くのヒューマノイドロボットが開発中で、2030年代中盤くらいには、こういったヒューマノイドロボットは量産化されていると予想されている。中国のもので250万円、ヨーロッパやアメリカのもので400から1000万円くらい。サラリーマンでも何とか買えなくもない、という値段だ。

これで何ができるのかというと、家の片付け、掃除、洗濯物の折りたたみ、荷物の受け取り、などだという。調理はさすがに難しいだろうし、買い物も困難だろう。掃除と言っても掃除機をかけるくらいで、ベランダの掃除や草刈りなどは無理だろう。数百万かける割には大したことはできないように思える。

ただ、もし家事全般すなわち買い物や炊事、食器洗い、子育てまで含めて家事全般ができるようになったとしたらどうだろう。そんなロボットが一家ないしは一人に一台あれば、どうなるか。

一家4人(共稼ぎ夫婦と未就学児、小学3年生)を想定した場合、平均的な家事育児時間は1日当り5~7時間、余暇時間は1日当り2~3時間と推定される。これにロボットを導入することで家事を70%任せられるとすると、夫婦の家事育児時間は1~2時間、余暇時間は5~6時間に増えると計算される。

これだけあれば、夫婦が子育てを負担に感じることはないだろう。ゆとりを持って生活できるし、余暇で更に副職をすることも可能になるはずだ。

だが一方で、ロボット自体のコストは増える。それを例えば500万円で10年と考えるなら、年間の追加コストは50万円で、年収500万円をすると1割になる。これは結構なコストだ。

家事育児の負担を減らすためにロボットを買う、そのロボットのコスト増加のために仕事を頑張る、というのは、本末転倒とまでは言わないが、プラスとマイナスの側面があるマッチポンプのようなもので、どちらが幸せか分からない。ただ、1割というのは結構微妙なところで、やろうと思えばできなくはないところがエグい。個人的には新しいモノ好きなのでぜひ導入してみたいとは思うが。

また、もしこれが本当に実用的なら、国や企業がその費用を補助することも考えられる。そうすれば従業員のQOLは向上するし、上手く行けば少子化対策にもなるかもしれない。

子供を持つことのコストは経済的なものだけではなく、親の時間を取られること、親の考え事や悩みが増えること、という側面もある。そこにロボットをあてがうことで、子供を持つことへの抵抗が薄れるというわけだ。

なお、その弊害はもちろん、子育てをロボットに委ねることの是非だろう。今のヒューマノイドロボットはあまり喋らず表情機能がなく目もないため、特に幼児期の精神の発達には悪影響があると予想される。このため、初期のロボットではそういった精神発達が歪んだ子供ができる可能性はある。だがそれは技術によって次第に克服できるだろう。

2025年6月18日水曜日

たつき諒の予言は必ず外れる

 たつき諒氏の予言が話題になっているので、私も一つ予言をしてやろうかと思う。

2025年7月5日を中心とした前後1週間(計2週間+1日)の間に、日本の太平洋岸を震源とする、最大震度6強以上の地震は、起きない。

地震予知三原則である①地域の特定②時期の特定③強度の特定、何れも満たしているため、予言の条件は満たしている。だが、「起きる」ではなく「起きない」と予言しているところがミソだ。

さて、この予言は9割9分当たると思うが、その理由もしっかり存在している。たつき氏の予言は、東北大震災の3倍以上の津波、などと記述しており、少なくとも震度6強以上と想定されるのだが、その震度6強以上の地震は、ここ30年で15回しか起きていない。また、たつき氏の予言は明らかに「太平洋」と記述されているのだが、その15回とは全国の総計であり、太平洋岸と限定すると更に減り5回、しかもそのうちの3回は東北大震災近辺に集中している。ここから確率論で計算すると、(7月5日に限らず)特定の15日の間にその規模の地震が太平洋岸で発生する確率は、1%未満なのだ。

元々たつき氏の予言は科学的見地に基づくものではなく予知夢によるものなので、こんなことを言っても仕方のないことなのだが、そもそも予言者というものは過去の実績でその信ぴょう性が確認できるものだ。彼女の場合、その漫画の中で幾つか過去の予言(予知夢)が当たったことを主張しているが、実際に検証できたのは東北大震災(あたり)と富士山噴火(はずれ)だけで、それ以外の予言は(あたった)実績として既に書かれている(検証不能)。つまり母数が少な過ぎて検証不可能なのだ。今回1回程度外れたところで、その検証ができるわけではない。

外れたからといって彼女を罵る行為は止めて頂きたい。

2025年6月14日土曜日

特定小型原付キャリーカート


わざわざ法を改定してまで取り入れらてた新しい区分、特定小型原付。免許不要で歩道が走れるという点で注目されたものだが、あまり普及しているように見えない。なぜかと考えるに、それに合う駐輪場が無いからではないかと考える。1台十万円を超えるようなものなのでやはり盗まれたくはないが、駐輪場が整備されていなければ持ち歩くしかなく、持ち歩きには邪魔だからだ。個人的にも、買うのに躊躇した理由はそこだった。

そこで考えるのが、降りた後も持ち歩くことを前提として設計することだ。そのためには、今の代表的な機種はキックボード型だと思うが、ここから変形してキャリーカートになるようにするのが良いと思う。

つまり、足を置くステップ部分の真ん中を切断し、蝶番を使って前後2輪だったのを左右の2輪になるように変形させる。つまり後ろ半分を横向きに折りたたんで車輪を前に持ってくるのだ。そしてハンドルの角度を調整して、前に若干倒れるようにする。すると、ステップ部分に荷物を載せて、キャリーカートのように引っ張って歩くことができる。なお、荷物は運転中はリュックとして背負うようにする。

これなら家から駅までキックボードで進んでそのまま電車に乗ることも可能だし、スーパーに買い物に行ってそのまま持ち込んでも違和感がない。個人的にも、これならちょっと遠目のショッピングモールくらいならこれに乗って行って見ようかと思う。

2025年6月13日金曜日

外国人犯罪者を取り締まれ

 


度々著名人が不用意に発言しては炎上するこの問題だが、それが正しいのか(真っ当な主張なのか)。またそれ以前の問題として、そもそも外国人犯罪者は本当に多いのか。今回はこれを調べてみた。これも生成AIを使ったのだが、なかなか面白い結果が出た。

まず単純に犯罪率を比較してみると、

  • 外国人の犯罪率:0.330%
  • 日本人の犯罪率:0.140%

と、2.4倍の開きが出ることが分かった。やっぱそうじゃん、と思いがちだが、この後分析してみると実はそうでもないことが分かったので順に解説する。またこの時点で見ても、その絶対値は小さく、大した差ではないであるとも言える。

次に年齢層別で比較してみた。

年齢層 日本人犯罪率(%) 外国人犯罪率(%)
20~29歳 約0.20 約0.30
30~39歳 約0.17 約0.25
40~49歳 約0.12 約0.12
50~59歳 約0.07 約0.06
60歳以上 約0.03 約0.02

こう見てみると、20~30代では差が出るが、それ以外の年齢層では大差がない、と言える。そしてその20~30代で犯罪率が高い理由だが、これは直ぐには答えが出ずしつこく生成AIに詰めていったのだが、結果としてはその年齢層における貧困の度合いが日本人より高いということだった。

そうなると、根本は外国人差別である(から年収が少ない)、という可能性も出てくる。これを聞いてみると、

  • 労働政策研究・研修機構や内閣府の分析では、年齢・学歴・勤続年数・雇用形態・職種・企業規模などの個人属性・企業属性を統計的にコントロールした上で、日本人労働者と外国人労働者の賃金格差を推計しています。
  • その結果、属性をコントロールしてもなお7~10%程度の賃金格差が残ることが明らかになっています。
  • (中略)
  • しかし、この残余格差のうち「差別」による部分を厳密に数値化することは、現時点の日本の統計・研究ではできません。
  • よって、「外国人差別の結果である」と断定的に定量評価することはできませんが、差別的要素が一定程度含まれていることは定量的に示唆されています

ということだった。

また、年齢層ではなく国籍によって分析してみると、

年齢層 日本人(%) 中国(%) ベトナム(%) フィリピン(%) ブラジル(%)
20~29歳 0.20 0.35 0.45 0.22 0.18
30~39歳 0.17 0.28 0.37 0.19 0.15
40~49歳 0.12 0.14 0.15 0.10 0.09
50歳以上 0.05 0.05 0.05 0.03 0.03
  • 20~30代では、ベトナム・中国国籍の犯罪率が日本人より高い傾向が明確です。特にベトナム国籍は突出しています。
  • フィリピンやブラジルは日本人と同等かやや低い水準です。
  • 40代以降は、日本人と外国人の犯罪率の差は縮小し、50歳以上ではほぼ同水準となります。
  • いずれの国籍でも、年齢が上がるにつれて犯罪率は低下します。

となった。そこで、これにさらに所得を掛け合わせることを試みた。以下は年齢層と所得(単位:万円/年)のリストである。

年齢層 日本人 中国人 ベトナム人 フィリピン人 ブラジル人
20~29歳 330 260 200 210 220
30~39歳 450 320 240 260 270
40~49歳 510 350 260 290 300
50歳以上 570 370 280 310 320

こう見ると、外国人は押しなべて日本人より年収が低いものの、中国人とベトナム人が特に低いということはないことが分かる。つまり、中国人とベトナム人は、他国に比べて年収の低さが犯罪に結びつく可能性が高い、と分析できる。ただこれは、生成AIに

  • 「年収が特に低いわけではないのに犯罪率が高い」という事実は、年収以外の要因が犯罪率に大きく影響していることを示唆する根拠にはなります。
  • しかし、それが「両国の特性」や「人種的傾向」を示す根拠とはなりません。犯罪率の差異は、主に社会的・制度的要因の複合的な影響によるものと考えられます。

というふうに諫められた。単純に国(ないしは民族)の特性と決めつけるのは早計だ、ということだ。では他に何が考えられるか、その寄与率は、と聞いてみると、

主な社会的・制度的要因

  • 来日前の借金・斡旋料負担
  • 在留資格の制約・技能実習・留学制度の問題
  • 低賃金・天引き・不安定雇用
  • 社会的孤立・情報弱者性
  • 組織的犯罪への巻き込まれ
  • 不法滞在・在留資格喪失

寄与率(推定)

現時点の公的統計や学術研究では、各要因の寄与率を厳密に数値化したデータは存在しません。ただし、以下のような傾向が示唆されています。

  • ベトナム人の犯罪のうち、留学生・技能実習生が約64%(留学生41%、技能実習生23%)を占めており、この層が経済的困難・在留資格制約・借金返済負担など複数要因の影響を強く受けている。
  • 窃盗など経済的動機による犯罪が大半(ベトナム人の万引きが全体の40%、中国人も窃盗比率が高い)。
  • 経済的困難・借金返済・在留資格の制約が、全体の犯罪の過半数(50~70%程度)に直接的な影響を与えていると推定されます。

まとめ

  • 主な社会的・制度的要因は「来日前の借金」「在留資格・制度の制約」「低賃金・搾取」「社会的孤立」「組織的犯罪への巻き込まれ」「不法滞在」などです。
  • これらの要因が複合的に作用し、特に経済的困難・制度的制約が犯罪率上昇に大きく寄与していると考えられます。
  • 寄与率の正確な数値はありませんが、犯罪統計の属性分布から、経済的・制度的要因が全体の50~70%程度を占める可能性が高いと推定されます。

となった。このうち、渡航前の借金などは経済的要因であり、年収の問題とも相関する。そこで中国ベトナムが特に渡航前の借金や斡旋料が高いという事実は確認できるか聞いてみると、

まとめ

  • ベトナム・中国は他国と比べても技能実習生の渡航前の借金・斡旋料が突出して高いことが、法務省や学術研究の調査で明確に示されています。
  • この高額な初期費用・借金負担が、来日後の経済的困難や失踪、犯罪リスクの増大に直結していると分析されています。

ということなので、結局は経済的要因という線が濃厚になってきた。つまり人は、年齢層に応じた貧困への許容度があって、それが度を超えると犯罪を犯すようになる。そしてその割合は国籍に関わらず、(恐らく住んでいる国における相対的な)貧困度に相関する、ということだ。

今回炎上したのは、林原めぐみ氏の「不良外国人をちゃんと取り締まれ」発言だった。

https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1749447038/

これに対して「炎上する意味が分からない」(肯定)とか「ヘイトだ」(否定)とか言っている人はいるのだが、そのどちらにおいても、ほとんど脊髄反射的な言動を取っていて、上のような定量的評価をしていない人ばかりであることは注目すべきだ。要するにどちらも、冷静な議論ができていないのだ。

また、例えばベトナム人や中国人の渡航許可を審査する際、こういった斡旋ブローカーの関与や現状での借金額を調べることによって、その犯罪率を劇的に下げることは可能かもしれない。(人間の本質的な)犯罪率が国によって劇的には違わないのだと分かれば、排除ではなくむしろ援助の方が、結果的には外国人犯罪率を低減させることにつながる、というのは、十分に検討に値することだと考える。

なお、林原氏の発言は川口市のクルド人を念頭に置いていると推定されるが、ここまでの分析でクルド人は登場しない。そこで改めてクルド人について聞いてみると、

結論(定量的評価)

  • 犯罪率:埼玉県内のトルコ国籍者(クルド人)は、日本人の約30倍の犯罪率との推計がある。ただし、公式な全国統計や精緻な属性別データはない。
  • 年齢層別・年収別:クルド人について日本人との年齢層別・年収別犯罪率の比較が可能な公的データは現時点で存在しません。
  • 全体的傾向:クルド人は若年層が多く、経済的困難・就労資格の不安定さが犯罪リスクに影響していると考えられますが、定量的な比較は不可能です。

ということだった。なお、最初の「30倍」だが、その根拠はクルド人ヘイトのサイトからの引用であるため、信頼性は低い。それを指摘すると、生成AIは素直にそれを認めた。

この時に、公的データにクルド人統計がない理由として「クルド人という括りがないため」という回答が出たため、クルド人ではなくトルコ人で聞いてみると、また面白い結果が出た。

公的データによる比較

  • 川口市の「発生刑法犯検挙状況」では、日本人の人口当たり犯罪率は0.20%、トルコ国籍者は1.52%(2023年時点)とされています。
    • 1.52% ÷ 0.20% = 7.6倍
  • 仮放免者など住民登録外のクルド人を加えた場合でも、1.05%程度となり、依然として日本人の5倍以上です。
  • 別の年や統計でも、トルコ国籍者の検挙人員44人/在留者1,149人=3.8%という値が出ており、これを日本人の全国平均(0.15~0.20%)と比べても20倍近い差となります。

となった。但し、川口市という狭い地域でのことであるため、そもそも母数が少なく、統計的には誤差が大きいというところは割り引く必要がある。また、クルド人ではないトルコ人もいるし、トルコ人ではないクルド人もいるのだが、地域によってこの比率は大きく変わるらしいので、クルド人としての統計が取れない、ないしは誤差が大きくて使えない、ということは変わらず、要するに「データ不足」である。ただ上の場合(中国人やベトナム人)と違って言いがかりに近いとは言えず、それなりに注目すべき数字は出ていると言える。なお、ここでも所得や年齢層での分析を試みたが、データがないということでこれ以上分析できなかった。

今回の分析はここまでである。面白かったのは、結論が二転三転するところだ。ある結論が出たとき、それをそのまま鷲掴みするのか、更に疑問をもって分析をするのかによって、全く逆の結論が出てくる。今回の場合は、ヘイトが犯罪を生み、それがヘイトにつながる、というマッチポンプ的な結果すら出た。一方で確定しないながら怪しい結論も出たのだが、これも細かく調べないと分からないことだった。確定していないこの段階でヘイトにつなげるのは時期尚早であるということも分かる。

ここまでの分析は、無料の生成AI(Perprexity AI)を使って一時間も掛けないで完了した。つまり、この程度の分析は誰にでも可能だ。だから、こういう分析がどんどん出てきて、量的根拠をもった冷静な議論が活性化することを望む。もっと言うと、これだけ簡単にできることすら調査せずにしたり顔で話すコメンテーターや評論家、インフルエンサーやYoutuberは要らないので、早々に世論から退場して頂きたい。

2025年6月5日木曜日

転売に対する社会的許容度の考察


古くは仮面ライダースナックやビックリマンチョコ、最近では万博パビリオンの時間指定チケットやマクドナルドのちいかわグッズなど、何かと話題になっている転売の是非について考察してみた。これももちろん生成AIを使って、なかなか面白い結論が出た。

最初は万博場ビリオンについて議論したのだが、生成AIは最初、あいまいな倫理観を振りかざして反対した。だが法的根拠や他の(社会的に認められている)転売の例を挙げて反論すると、論理的整合性を欠く反論をしてきた。これは「~だからといって正当とは限らない」というものだが、これは論理的に簡単に反論できる。「でも、不当とも限らないよね」で済んでしまう。

そこで生成AIは規約を振りかざしてきたのだが、実はパビリオンの時間チケットには明確な転売禁止条項が書いていないものが多く、一部にしか適用可能性がないことが分かった。また、規約違反をしたとしてもそれは民事なので、刑法などで裁くことはできないし、むろん非親告罪でもないので警察は動けない。また、損害賠償請求をすることは可能だが賠償見込み額は僅か、慰謝料もほぼ無理だろうとの結論だった。

ただし、チケット不正転売禁止法という法律はあって、その一部のチケット(明確な転売禁止条項がある)はこの法律における「特定興業入場券」に該当する可能性があり、その場合は罰金または懲役刑がある。

この法律は、いわゆるダフ屋を取り締まるもので、展示会やコンサート等を想定している。そこで、なぜそういうところは転売が禁止され、株式やちいかわは禁止されないのかと議論を進めていった。この例には他にもコロナ下のマスクやアルコール、期間限定商品や数量限定商品、ヨドバシカメラの福袋(福箱)、医薬品や酒などがある。人はどういうものの転売を嫌うのだろうか、と推測をさせた。

その結果として、人が転売を嫌うための抽象的な「軸」を抽出することができた。それがこれだ。


こちらが、転売(再販)における「違法性・社会的非難の可能性」を5つの軸で評価したレーダーチャートです:

 各軸の意味と評価(0〜5)

内容 評価(例)
① 商品属性 医薬品・チケットなど規制対象か 4(高リスク)
② 取引形態 業として反復継続しているか 3(中リスク)
③ 供給状況 社会的に逼迫しているか 5(非常に高リスク)
④ 契約・制度 転売禁止の明示があるか 2(やや低リスク)
⑤ 商品と付属物の一体性 本体とおまけの切り離しが問題か 4(高リスク)

いちばん大きなファクターを占めているのは供給状況で、すなわち社会的にひっ迫しているかどうか。次に商品と付属物の一体性。これはライダースナックやビックリマンチョコなどで、おまけ目的で購入し、お菓子の方を捨ててしまうという行為にあたる。これと同等のファクターを占めるのが商品属性で、医薬品、チケットなど特定の商品であること。転売禁止の明示は以外にもファクターとして少なかった。

メルカリなどで転売されているものの多くは社会的にひっ迫していないし、商品と付属品の一体性は見えてこないので、あまり問題にはなっていない。万博のチケットはひっ迫性があり、商品属性としてチケットであるので目立ったわけだ。橋下徹にハイヒールモモコが嚙みついた理由もチケットだからであり、なるほど、なかなか的を射た意見ではないか。

なお、万博の時間チケットの転売対策だが、チケットの規約として転売を明確に禁止し、違約金の金額も明記しておく、という方法が推奨された。これによって違約金訴訟は単に違約した事実だけで可能になるし、金額が明記されることは抑止力として有効であるとのことだ。

2025年6月4日水曜日

生成AIをいじめて遊ぶ

 

「生成AIはミーハーである」の回でも少し触れたのだが、生成AIの回答は一次的には誤っていることが多い。それを指摘してAIが回答を修正していく様を見て楽しむ、というのが最近のマイブームだ。

どういう指摘をしているのか、と自己分析してみると、興味深いことに陰謀論者との議論とあまり変わらないことに気付いた。つまり、

  1. 定義や前提が誤っていることを指摘する
  2. 世間で既にウソと分かっていることを主張していることを指摘する
  3. 定性的議論に終始し、定量的議論ができていないことを指摘する
  4. 視点が一方的であることを指摘する
  5. 批判的思考ができていないことを指摘する

などである。

最初に入力するのは、時事だったり自分のアイデアだったりと色々だ。先日は、鉄筋コンクリートに代わるグラスファイバー筋コンクリートの可能性について質問した。すると生成AIは困難と言い、色々と問題点を指摘してくるので、それら一つ一つについて反論をしていく。そうすると次第に生成AIは追い詰められ、その可能性を認め始める。その過程が興味深い。

この場合、初期状態では延性や熱膨張率、剛性、座屈といった弱点を指摘してくる。だがそれらは鉄筋コンクリートに対する弱点であって、建材として認められるかどうかは別だ、と指摘したり、形状や材質の工夫を考慮していない、と言ってみたり、定性的議論に陥っているから定量的に示せ、と言ってみたりする。

陰謀論者と違うのは、それらの指摘を真摯に受け止めて議論をちゃんと修正するところだ。そうすると、鉄筋コンクリートには劣るが建材としては基準を満たす可能性や、形状や材質の工夫で延性剛性を強化する可能性を探ってくれたりして、その可能性を認める。それでも研究されていないことなどを理由に反論してくるので、今度はなぜ研究されていないことが難しい理由になるのか論理的に説明せよ、と聞いてやる。すると論理的な理由はなく一般論として、研究されていないことは難しいからである場合が多い、と言ってくる。するとこちらは、ただ興味がなくて研究していないだけかもしれない、と突っ込む。すると研究されていない理由を探し、途中で断念した例が見つからないことから、そうかもしれない、と返してくる。

これが陰謀論者だと、屁理屈を返してきたり無視してきたりする。だから話が進まない。そこで、もし自分が陰謀論者だったら、と考えてみると、逆にAIにやり込められるのではないか、と思いたち、生成AIに対し「自分が陰謀論者になるので、貴方は論理的に事実に基づいた論破をしてくれ」と頼んでやって見たのだが、どうも上手く行かない。暖簾に腕押しで、論破してくれないのだ。

どうも生成AIは、質問者に対して厳しく間違いを指摘することを避ける制限が掛かっているようであり、またコロナワクチン陰謀論などのように医療や政治などに対する議論は特に避けるような別の制限が掛かっている。陰謀論というのはこういったクリティカルな話題で特に多いので、せっかくの性能も宝の持ち腐れだ。

実は、この手のモラルが比較的緩いとされているGrok3でも試みたのだが、論理的・量的理論に基づく反論はどうも苦手らしく、幾らでも(陰謀論者的な)反論ができてしまい、最終的には千日手のように、論破されても同じ主張を繰り返す、というヘンな構図ができてしまった。これでは(陰謀論を論破する側が)陰謀論者のロジックで話していると変わらない。

これらから総合すると、生成AIはまだまだ陰謀論者に騙されるだろうし、生成AIによる説明や説得にも陰謀論者的な(不完全な)ロジックがまかり通っている、と考えざるを得ない。生成AIの答えは鵜呑みにするなとはよく言われるが、生成AI自体が陰謀論を吐く可能性はまだ(かなり)残っている、と言えるだろう。

2025年6月3日火曜日

令和のコメ騒動の量的分析


 以前チラっと書いた、表題の分析の結果を披露しておく。

まず全体像について生成AIと議論した。結果として、その大まかなシナリオとは、

  1. いわゆる減反政策によって、市場におけるゆとり分が減り、ここ数年は需給バランスがタイトになっていた。
    1. 農水省は減反政策は止めたと言っているが、その他の手段を使って事実上の減反政策を続けていた。
  2. そこに来て、2023年の高温障害により、米の収量及び品質が大きく悪化した。このため需給バランスが崩れ、品薄と高騰が同時に発生した。
    1. 米は価格弾力性が低い商品であり、つまりは価格が高くなっても需要はあまり減らない。これによって、僅かな乱れが高騰につながる性質を持っている。
  3. 農水省は当初「コメは不足していない」「新米が出れば回復する」等と主張し対策しなかったため、需給バランスは回復せず、新米が出ても価格高騰が続いた。
  4. 国民の不満を受け、農水省は、最終的には備蓄米を放出した。しかしその放出量は少なく、入札方式にしたため価格は高止まりし、タイミングも遅かったため、高値を解消するに至らなかった。
  5. 2024年の収量は回復したが、まだ2022年レベルには至っていない。需給バランスが回復しないため、価格は高止まりが予想される。

という感じになる。その原因について生成AIに聞いてみたところ、以下のような答えが返ってきた。(見やすさのために若干編集してある。)


令和の米騒動の「複合的な原因」を分解し、各要素の量的な寄与度を推定すると、以下のようになります(現時点で公的に定量化されたデータは限定的なため、各種報道・統計・専門家分析をもとに相対的な比重を示します)。

要因 推定寄与度(目安) 主な内容・根拠
気候変動・天候不順 30~35% 猛暑や異常気象による収穫量減少が直接的な供給不足を引き起こした。
減反政策・生産調整の影響 20~25% 長年の減反政策による生産力低下、廃止後も生産回復が遅れた。
農業従事者の高齢化・労働力不足 10~15% 生産現場の担い手減少が供給力をさらに押し下げた。
需要増(インバウンド等) 10~15% 観光客増加や経済正常化で需要が急増。
消費者心理(買いだめ) 5~10% 地震報道や将来不安による買いだめ・備蓄需要の急増。
流通構造・在庫管理の問題 10~15% 流通経路の多様化、在庫管理の不備、投機的な買い占めや売り渋り。
投機的行動・市場心理 5~10% 流通業者や一部関係者による投機的動き、価格吊り上げ。

解説

  • *最大の要因は「気候変動・天候不順」で、2023年の猛暑や異常気象による収穫減が直接的な引き金となっています。
  • 減反政策・生産調整の長期的影響も大きく、需給の弾力性が失われていたことが供給ショック時の価格高騰を招きました。
  • 流通・在庫管理の問題や投機的行動も無視できず、流通業者や関係者による売り渋りや投機買いが市場混乱を増幅させました。
  • 需要面ではインバウンドや消費者の買いだめが一時的な需給ひっ迫に拍車をかけたと見られます。

(中略)

JA(農協)による令和の米騒動への「原因」を量的に評価するには、JAの行動や影響力がどの程度今回の米価高騰・品薄に寄与したかを、主な要素ごとに分解して考察する必要があります。現時点での報道・専門家分析をもとに、JAの関与が強いとされる要素を以下のように整理できます。

JAによる要因 推定寄与度(目安) 根拠・解説
減反政策・生産調整の強化 20~25% 農水省とJAが連携し、3年前から減反を強化。2023年産米は作付け前から前年比10万トン減少。
備蓄米放出への反対・流通制限 10~15% JAが備蓄米放出に反対し、放出された米もJA経由で市場供給量が制限された。
市場への供給調整・在庫管理 10~15% JA農協の在庫は前年同月比で21万トン減少。供給調整により米価高騰を招いた。
政策決定・価格維持への影響力 10~15% 農水省・自民党農林族と「農政トライアングル」を形成し、高米価政策を主導。
情報の不透明さ・責任分散 5~10% 流通・在庫・販売の情報が外部から見えにくく、責任が曖昧化。

解説

  • 減反政策・生産調整の強化(20~25%)

    JAは農水省とともに減反政策を強化し、米価維持を図ってきました。2023年産米では作付け前から減反が進み、供給力を大きく削減しました。

  • 備蓄米放出への反対・流通制限(10~15%)

    JAは備蓄米の市場放出に反対し、放出された米もJA経由で流通量が制限され、市場供給が十分に増えませんでした。

  • 市場への供給調整・在庫管理(10~15%)

    JAの在庫は大幅に減少し、供給調整による価格高騰を招いたとされています。

  • 政策決定・価格維持への影響力(10~15%)

    JAは農水省や自民党農林族と連携し、高米価政策を維持する強い影響力を持っています。

  • 情報の不透明さ・責任分散(5~10%)

    JAによる流通や在庫の情報が外部から見えにくく、責任の所在が曖昧になりやすい構造です。

まとめ

JAによる直接的・間接的な要因は、全体の40~60%程度の寄与度があると推定されます。とくに減反政策の強化、備蓄米流通の制限、供給調整、政策決定への影響力が大きな要素です。

ただし、天候不順など他の要因も無視できないため、「全てがJAの責任」とは言えませんが、今回の米騒動の構造的な主因の一つであることは明白です


いかがだろう。結論としてはJAが主要因になっているということになった。国ばかりが責められているが、その背後にいるJAへの非難は、報道にはほとんど現れていない。SNSには若干JA非難の声があるが、こういった定量的根拠を持って叩いている人はいない。

以前も言っているが、こういった社会現象の解析には定量的評価が重要である。それを重視しない傾向についても以前書いたが、世間も政府も相変わらずのようだ。「生成AIはミーハーである」の回でも書いた通り、上の答えにしても最初の回答ではなく、定量的評価をしつこく迫った上でようやく出てきたものである。

どうか結論だけを掴んで短絡的にJA叩きに廻るのは止めて頂きたいのだが、JAにもっと注目して良い、ということだけは言えるのだろう。

2025年6月2日月曜日

全ては教育だ!


 近年の世界的な右傾化、自国第一主義化について、その原因を生成AIと討論しながら考えた結果、そういう結論に達した、というお話。

まずトランプが未だに支持されている理由について議論したのだが、その理由はアメリカ白人低学歴層の貧困化だという。この白人貧困層は、人数的には数千万人と規模は大きいものの、人数的には増加しておらず、むしろ微減中だという。だがその貧困の程度は厳しくなっており、これが直接の原因と考えられる、のだそうだ。

次に、なぜその白人貧民層がトランプを支持するのかというと、貧困の理由として移民の増加が挙げられている。白人でも低学歴の者が移民に仕事を奪われているというのだが、これは感覚であって必ずしも正しくない。実際には、低学歴層でもできる仕事=単純労働が、いわゆる産業の空洞化によって海外に行ってしまい、彼らでもできる仕事が減っているのが原因だ。

一方で移民は何をしているのかというと、空洞化していない単純労働を白人低学歴層よりも低い賃金で担っている。だから白人がその気になれば彼らの仕事を奪えるのだが、それには安い賃金を我慢しなければならない。ここにジレンマが生じているわけだ。

ではなぜ移民が増えているのかというと、彼らの主な出身国である中南米の政情が近年不安定で経済も落ち込んでいるからだ。なぜ不安定かというと、近年彼らの国では左翼政権が興り、労働者向けのバラマキ政策をしてしまったからだという。つまり左翼政権の政策の失敗が原因なのだが、当然それを支持したのは国民である。左翼政権は労働者に甘く、必要以上に賃上げをしたりバラマキをしたりするのだが、財源がないので借金に頼り、すぐ破綻する。これによって職を失う者がアメリカに渡っているのだ。アメリカだって職が豊富にあるわけではないが、彼らの祖国での平均年収はそれでもアメリカの十分の一だったりするので、低賃金でも十分に喜んで働くのだ。

なぜ左翼政権が次々に誕生したかというと、当然国民がそれを選んだからだ。左翼政権になればそうなるということは、ちょっと考えれば分かりそうなものだが、国民の多くがそれに思い至らず支持した。ではなぜ思い至らなかったかというと、一言で言うなら知恵が回っていなかった(頭が悪かった)からなのだが、その原因は教育を満足に受けていないからだ。そしてその満足でない教育の原因は、その左翼政権ができる前の右翼政権の時代、教育を軽視する政策が取られたことだ、という。

アメリカに戻ると、トランプ政権は必ずしも左翼ではないが、移民に対する強硬策で支持を集めた。しかし移民を排斥したところで、支持層たる白人貧困層が豊かになるわけではない。相互関税にしても同じことで、関税を高くして国内に製造業が回帰するかといえばそんなに簡単ではない。もしそれが高度な製品なら白人貧困層には作れないし、低レベルの製品なら作成コストは高く、輸入品よりも高くしか作れない。低賃金で彼らが働けるかと言えば、物価が高いので無理だ。つまり相互関税も、白人貧困層には利益をもたらさない。

こんなことは少し考えれば分かることだが、白人貧困層にはそれが分からない。なぜ分からないかといえばやはり教育ができていないからであり、その教育を怠ってきたのはバイデン及びそれ以前の政権である。具体的には教育の自由化により教育格差が広がり、貧困層の知識レベルが低下した。これは中南米と全く同じ構造である。

教育の低下は、自国第一主義や強権国家をもたらす。今の国際社会において、自国第一主義は長期的に世界を貧困にするということは、少し考えれば分かることだ。何でも自国でやろうとすれば、すなわち不得意なものも自分でやらざるを得ず、高コスト低品質になってしまう。一方それを貿易でやり取りすれば、お互いに得意分野で仕事ができるから、両国にメリットがある。この程度のことは秒速で分かりそうなものだが、頭の悪い人は近視眼的・短絡的に考え、その選択ができないのだ。そして自国第一主義は当然ながら他国の反発を買うが、これをはねのけるためには強権的にならざるを得ず、これに伴ってフェイクニュースや嘘つきが正当化される。まさにトランプが今やっていることだ。

これらをまとめると、①教育の軽視、②国民の知識レベルが低下、③貧困化が加速、④現実的・長期的な政策を取る政党が敗れ、見掛け倒し・近視眼的・非現実的・感情的な政権が誕生する、⑤その政権の政策は当然功を奏せず、国民はますます貧乏になる、という負のスパイラルが完成するわけだ。

翻って日本はどうかというと、左翼政権の担当期間は極めて短く、大部分は自民党政権である。しかしその自民党の政策によって、ここ何十年もの間、国が教育に掛けるコストは低下していて、OECD加盟国では下から何番目というレベルになってしまっている。バブル以降、経済はどんどん低迷しており、現在に至るまで経済成長率は世界平均にもOECD平均にも大きく劣ったままだ。結果としてGDPは中国に抜かれ、ドイツに抜かれ、とどんどん落ち続けている。

つまり、右翼だろうが左翼だろうが、政権が教育を軽視すると、国は衰退する。中南米やアメリカですらそうなのだから、それに輪をかけて教育を軽視している日本が、彼らより更に衰退するというのは自明の理なのだ。

2025年5月18日日曜日

生成AIはミーハーである

 色々と生成AIと議論しているが、それに関して最近気付いたことがある。

最初の応答については、あまり深く考えずに世間の評判を基に答えるのだが、それには往々にしてウソ大げさが混じっている。それに対して指摘をし、更にそれを繰り返すことによって、だんだんとそのウソ大げさを理解し、マトモな解釈ができるようになる。

これは、近年のコメ価格高騰の要因について問い合わせた際に気付いた。最初は、新聞で見るような「流通の目詰まり」「訪日外国人による需要増加」「買い占め」などと答えていたのだが、その各々について分析を指示したところ、これらについてはファクターとして弱く、主要因ではないと答えるようになった。では主役は誰かと問うと、「減反政策」「JAや全農の影響」と答えるAIと、「需要側の問題」と答えるAIに分かれた。これらの質問をする際、各々に対して定量的根拠を求めると、答えにもきちんと定量的評価が入り、答えが論理的になった。

Grok3の最終的な結論は減反政策とJAの前払金制度だったが、前払金制度は以前からあった施策であり、その意味では説明がつかない。それを突っ込むところで回答数制限が来て、お預けになってしまった。

これは他のAIについても同じで、回答を分析して突っ込んで質問すると答えを翻す場面は多かった。それに気付いて以前からのAIとのやり取りを思い出してみると、確かに思い当たることがある。最初の答えは表面的、ミーハー的で、突っ込んでいくと段々と専門家らしくなってくる。同じ知識を持っていても、質問の仕方次第では180度異なる回答をすることもあるのだ、と思った。

最近のAIはDeep Searchのようなオプションも無償で(回数制限はあるが)使えるようになっているが、それをONにして訊いても、やはり最初の回答は定性的・テキトーなことが多く、こちらが突っ込んで聞かないとマトモな答えは得られないことが多い。そう考えると、AIに安易に回答を求めることは危険で、陰謀論者を増やすことにもなりかねない。

逆に言えば、その「ツッコミ」をできる技量が質問する側にも必要だし、その技量によっては回答がブレることにもなる、と言える。そこに思想や偏見が交じる可能性は当然否定できないから、質問する側もその分慎重になるべきである。

最近では、わざと誤ったツッコミをしてミスリーディングをして、AIがそれに耐えられるかなどといったことをして遊んでいる。

2025年5月7日水曜日

景気施策のコスト3:日本共産党とれいわ新選組の消費税減税/廃止案


日本共産党が消費税減税案についてのサンデーモーニングの批判的なコメント(財源を示せ)に対し「財源を示した上で提言している」という反論をしている。そこで同じく、Grok3に計算してもらった。

日本共産党の提言は、2025年4月16日のものの他、幾つか出ている。そのおおよその方向性は、消費税を期間限定で5%に減らし、財源は主に大企業や富裕層への課税、というものになっている。他にもインボイスの廃止、困難な状況にある企業への事業支援(税免除)などが挙がっている。そしてやはり、制度変更に伴うシステム修正コストや社会混乱には言及していない。また、大企業や富裕層への課税が強化されれば、それ自体も景気に影響するが、これも考慮されていない。それらを考えるとどうなるか。

中途は省くとして、Grok3の結論はこうなった。


富裕層や大企業への課税強化による税収増加(約3.5兆円)は、景気悪化による税収減少(約0.36兆円)を上回り、ネットで約3.14兆円の税収増加が見込まれます。しかし、制度変更のコスト(約8.65兆円)がこれを大きく上回るため、短期的な収支は約-5.51兆円の赤字となります。長期的に見ても、景気悪化の持続的な影響と累積コストにより、収支はマイナスとなる可能性が高いです。 したがって、制度変更を実施する際は、景気悪化のリスクを慎重に評価し、コストを抑える対策や景気刺激策を組み合わせることが必要です。


つまり、やはりやった方が悪いという結論になった。

また、れいわ新選組もやはり消費税廃止を訴えており、財源は大企業や富裕層への課税であるが、細かいところは共産党とかなり違っていて、もっと過激だ。結論も過激になるだろう、と同じくGrok3に訊いてみると、こうなった。


れいわ新選組の提案による収支を総合すると:

  • 支出増加(48兆円)と税収減少(28兆円)で、合計約76兆円の赤字が発生。
  • 消費刺激による税収増加や、課税強化による景気悪化の影響を考慮しても、これを補填する財源や経済効果は不十分。

したがって、最終的な収支は大幅な赤字となる見込みです。具体的な数値が不足している部分や経済効果の不確実性があるため正確な予測は困難ですが、少なくとも数十兆円規模の財政赤字が避けられないと考えられます。


76兆円って、ちょっとスゴい。国家予算が百兆円強だから、6割くらいか。トンデモなくダメダメな案だ。

景気対策で消費税を弄れというのはやはり筋が悪いようだ。同じバラマキなら、自民党が進めているように、マイナポイントをばらまく方が良いというのはだんだん確信に変わってきた。

消費税を弄るのなら、景気対策のような短期的な施策ではなく、長期的な直間比率の見直しのような、正統派で考えるべきだろう。そして以前からの主張の通り、これからバブルが起きる可能性は極めて低いのだから、税は間接税(つまり消費税やガソリン税など)を中心に考えるべきである。今後も所得税や法人税は減り、消費税が上がっていく構図は変わらないだろうが、それは正しいのだ。

2025年5月5日月曜日

人は死んだらどこへ行くのか

 以前、「魂とは情報である」という仮説

https://spockshightech.blogspot.com/2017/01/blog-post_19.html

を書いたことがある。そこから演繹していくことによって、この問題に挑んでみる。

魂とは、大雑把に言うと、脳というコンピュータに書き込まれたプログラム、及びデータのことである。ただ最近では、脳だけでなく、全身の臓器にも記憶が埋め込まれていることが分かっていて、それはいわゆるメッセージ物質の出易さや出る条件が人によって異なることだ。そういう「癖」も含め、情報は人間を形作っている。

その情報は、新しく取り込まれ消化されるとともに、体外にも出ていっている。例えば本人が揃えた本のコレクションは、その本人の個性を反映している。ブログやSNSでの発言、メールの文面、写真や動画などもそうだ。あの人ならこう言うよね、というのが他の人にも伝わっている、これも情報であり魂の一部と言える。つまり、他人にも自分の魂の一部があり、自分にも他人の魂の一部があると言える。

さてこの情報は、コンピュータの情報と違って明確に線引ができない。つまりこの情報は自分のもの、この情報は貴方のもの、という区別が難しいのだ。ファジー理論ではないが、自分90%、他人10%といったように、情報は交差している。だからよく、親しい人が死んだ時に「貴方の心の中に生きている」みたいなことが言われるのだが、これはその意味で本当と言える。

そして、人が死ぬと、体内の情報はほぼ失われるが、体外に出ている情報はまだ残っていて、それが魂である。だが例えば、体内の情報が9割だとすると、体外に出た情報は1割しかない。つまり、人が死ねば、魂のほとんどは失われるが、全部ではない。ただ、その1割が散逸していて、また自分の中にあるその人の魂の一部は感じられるが、それはその1割の、更にその何十分の1に過ぎない。だからほとんどその人を感じられず、悲しくなるわけだ。

最近中国で流行っている、SNSの発言などを基に死んだ人の仮想人格を作り出す作業は、この1割を再構成して人に分かりやすく見せているものだと言える。なのである意味、これは本物の魂であると言える。1割だけど。

体外に出している情報が多い人ほど、その再現性は高まる。だからもし、24時間365日その人を監視して、映像と音声を撮りまくり、更にその再構成を精密に行うならば、魂の4割とか6割とかを再構築することは、将来的には可能になるかもしれない。

またそもそも、人の魂の形成とは、外部からの情報の取り込みによるものである。本を読み、他人と会話し、運動や経験をするというのは全て、外部から情報を取り込んでいるのである。それを体内で咀嚼し自分なりに構成したものが魂なのであって、であれば(本人が接する)外部情報だけ取り込んだとしても、魂の再現はある程度可能になるはずなのだ。ここらへんの考え方は、やはり以前に書いた「中国語の部屋」

https://spockshightech.blogspot.com/2017/05/blog-post_26.html

と同じである。

ここで表題の「人は死んだらどこへ行くのか」を改めて考察してみると、次のようになる。

まず肉体的には消滅する。日本の場合はほとんど火葬なので骨しか残らないが、魂(情報)はその残った骨にはほとんど残っていない。手術をした関節ジョイントの跡とか歯型とか、全くないわけではないが、多くの場合それは魂と言えるようなレベルではない。そして、その他の方法で体外に出ていた情報を統合することは可能だが、その再現性はおそらく1割以下で、高くない。また、その再現性を高める工夫をすることは可能であり、それは本人が体外に出していた情報をできるだけ多く集めることだ。その統合にはAIを使うことになるのだろう。元々情報なのだから、肉体のように単一のものではなく、その集め方や分析の仕方次第で幾らでもバリエーションが生じることは考えられるし、コピーも資放題だ。

この場合「どこへ行くのか」とは、「コンピュータ上の情報になる、それ以外は散逸して何れはノイズ(雑音)に埋もれて消えてしまう」ということになる。

2025年4月30日水曜日

3Dサテライト

 
駅ナカなどに、15分幾らで借りられる、サテライトというかパーソナルオフィススペースが多く登場してきた。個人的にはちょっと息が詰まるのでもう少し広く作ってほしいとは思うが、外から見ればそれなりのスペースを割いていることは分かるので、設置させる側の気持ちも分からんではない。

今のサテライトには、目立ったICT設備はない。PCを持ち込んでそこで仕事をする、それだけを想定しているのだろうと思う。その一方、VRゴーグルで仕事をしている人は現実に存在する。

https://www.zdnet.com/home-and-office/work-life/inside-an-infinite-workspace-what-its-like-to-do-your-job-completely-in-vr/

例えばこの人は、3年前に既に週40時間もメタバース上で仕事をしている。VRゴーグルならサテライトは必要ないと思うのだが、それでも一日8時間もゴーグルを装着しているのは不快だろう。そこで思い出すのが、Googleが開発している、極めて臨場感の高いテレビ電話システム、Project Starlineだ。

https://starline.google/

これは、ユーザの目の位置を検知して追従する、ゴーグルやメガネが不要な立体映像表示装置である。このディスプレイをこのパーソナルオフィススペースの全面に広く貼り付けることができれば、と考えてみれば、私の意図は直ぐに分かるだろう。つまり、そのパーソナルオフィススペースに入って電源を入れたら、もはやそこは狭いスペースではなく、ディスプレイの向こうに広がる広大な空間を覗くことが可能になるわけだ。

ディスプレイに映すのは話し相手ではなく、メタバース空間である。広大なオフィス空間、会議室、大自然、何でもよい。VRでオフィス空間を提供している会社は既に存在するが、そういったオフィス空間を会社として借りておけば、皆そこに「出社」して、会議もそこですることができる。映っている同僚はアバターだが、相当にリアルに作ることもできる。今までのサテライトだと、狭い空間に押し込められているという心理的圧迫感があるが、このサテライトならそこが大いに緩和されるはずだ。

自宅ではこのような高級ディスプレイは用意できないので、サテライトの存在意義はある。逆に言えば、自宅でこのディスプレイが設置できるのなら、そこは立派なサテライトになりうる。感覚的には、眼の前1mに40インチ、左右に同じ高さで長さが半分のディスプレイがU字上に囲う空間があれば、かなりの開放感をもって仕事ができるはずだ。

開放感だけではなく、コミュニケーションもバッチリだ。本人映像の修正は可能だから、起き抜けのパジャマに寝癖頭でも、とりあえず仕事を開始することはできる。立体映像だし、物理的な距離感の演出も可能だから、その点でも臨場感は高い。

このサテライトであれば、全員が在宅勤務でも問題なくコミュニケーションできるだろう。なお、この空間での移動はやはり車椅子式である。車椅子メタバースについては以前から紹介している通りだが、ここにも話は繋がってくる。

このサテライトでは、大画面ディスプレイを何台も表示できるなどのVR空間としてのメリットもあるし、RPGに出てくるステータスウィンドウのようなことも可能なので、アイボールだけでなくメールや音声でのコミュニケーションも未来的な使い方が可能になる。またもちろんプライベートでも活用可能で、今のVRChatのコミュニケーションに準ずるような空間での使用も楽にできるだろう。

このサテライトの実現性だが、視線追跡3Dディスプレイの技術は既にあるので、後はひたすらメタバースの作り込みだけで良い。技術的困難というよりは手間の問題で、後は採算性が悪そうだというのが不安材料になる。だから最初はエグゼクティブ向けに作るのが良いと思う。相当に高いものになるとは思うが、米国の大企業なら使いこなすだろう。

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