2026年1月21日水曜日

業種SaaS

 日本の全企業数に占める中小企業の割合は99.7% であり、更に全労働者の約 70% が中小企業で働いている。にも関わらず、大企業と中小企業が生み出すGDPはほぼ同額である。なぜかというと、労働生産性が違うからである。

企業規模 労働生産性(年換算・1人あたり) 指数(大企業 = 100)
大企業 約 1,300万円 100
中堅企業 約 800万円 61
中小企業 約 550万円 42
小規模事業者 約 350万円 〜 400万円 27 〜 30

小規模ほど労働生産性が低い理由は、マスディスカウントのようなものもあるが、それよりも設備投資やバックヤードの非効率によるところが大きい。

まあ要するに、大企業では立派なIT部門や経理部門などが成立していてしっかり仕事ができるのに対し、中小では一人情シスや一人経理一人総務などのような状況が多く、多様な要求、有利になる工夫に十分対処しきれないのだ。設備投資にしても、一社で買うには高いとか遊び時間が多いとかが足かせとなって、なかなか思い切ったことができない。

だから、複数の中小企業が共同でこれらを運用すれば、ある程度の効率化は可能になる。だがそれを妨げているのが、それらのプロトコルが企業によって異なることだ。つまり、企業毎に独自の文化や不文律があって、各々の企業が寄り集まってそれらを統合しようとしても、それらをすり合わせるのが困難で、結局は物別れに終わってしまうのだ。

で、それらの微妙な仕様の違いは、各企業にとって本当に重要なのかというと、俯瞰的に見れば大したことではないことが多い。自治体などでもそうなのだが、効率が落ちるのを無視して「自治(独自仕様)」を主張したがるのが実態である。これは企業間取引にも悪影響を与えている。いわゆるコーペティション(協力すべきところは協力し、競争すべきところは競争する)の考え方ができていないのだ。

この中でも、IT化率が低いのは海外に対して大きなディスアドバンテージになっている。

企業規模 日本 (IT成熟度) 米国 (IT成熟度) 北欧/ドイツ (IT成熟度) 特徴
大企業 85 95 90 日本も追いつきつつあるが、レガシーが足枷
中堅企業 50 80 85 海外はプラットフォーム化が先行
小規模企業 25 65 90 日本の最大のボトルネック

これは企業のIT成熟度のリストであるが、中小のIT成熟度化が圧倒的に遅れているのが分かる。その理由として大きいのは、プロセスの標準化がなされていないことだと言われている。つまり、ソフトウェアを導入する際、ITベンダが提供する仕様に合わせるのではなく、自社の仕様に合わせてシステムをカスタマイズすることが普通になっているというところだ。だから、そのカスタマイズが高額で複雑になると分かると、IT化そのものを断念してしまう。自社のプロトコルをシステムに合わせるという発想をしないのが中小企業の特徴なのだ。

この発想を直させるには、ある程度強制するしかない。民間にそれはできないから、国が主導してそれをやらせることで、IT化が一気に進み、各企業の独自仕様も一掃できる。これが今回の提案である。

まあ強制とは言っても実際にはインセンティブだ。つまり減税や補助金で釣って、標準システムに誘導しようとするものになる。まずは経理や総務などをSaaS化して安価に提供すると共に、それを使う企業にはインセンティブを与え、使わない企業にはペナルティ(増税など)を与える。これで徐々に誘導していく。

そしてもう一つ、そのSaaSを使うことである程度自動的に、確定申告やIR資料が作成されるようにしてやる。こうすることで効率化が推進されるだけでなく、企業内の不正や粉飾を見抜きやすくなる。儲かっているかどうかはともかく、クリーンな会計をしていることが明らかなら融資も受けやすいし、事業承継も事業売却もやりやすいだろう。

減税や補助金などの特典も、このSaaS内で提供してやればよいので、事務コストの低減は国側にもある。更に、小規模と中小~大企業の取引も同じSaaSでやることで、取引の健全性チェックも大部分は自動化できる。これも企業間取引の健全性向上に貢献する。

現状でも、freeeや勘定奉行などのSaaSサービスはあるのだが、これら自体、既存の会計システムを無条件で肯定する「オプションだらけ」の仕様になっていて、横串を刺すのはかなり困難だ。そうではなく、個別企業の多少の有利不利には目を瞑り、シンプルな仕様にする。民間SaaSの差別化要素はまずここにあり、つまり国のSaaSは基本的な機能しかないが減税や自動書類作成などのインセンティブがあり、民間SaaSはインセンティブがない代わりに既存の細かい仕様の違いに対応できる、とする。一応民間が生き残る道を残しつつも、インセンティブが妥当な額であれば、徐々に国SaaSにまとまっていくだろう。

経理や総務だけでなく、業種固有の業務をSaaS化することも重要である。例えば介護や保育では記録の負荷が高いが、これを国SaaSで補助してやることで軽減できる。電子カルテや医療会計なども同様である。もちろん国SaaS間での情報連携はできるので、いちいちデータ転送をしたり一度印刷してスキャンするといった詰まらない事務作業は発生しない。

この国SaaSの普及によって、中小企業のIT化率が75%を超えると、日本のGDPは41兆円上がるという試算が出ている。これは日本のGDPの7%に相当する。ではそのための費用はいくらかというと、初期投資1.5兆円、年間運用費1兆円である。5年で200兆円のGDP増に対して費用は6.5兆円、これは近年稀に見るとんでもない高効率だ。

高市氏がやろうとしていうIT施策の額も兆円単位だが、その内訳を見ると半導体、インフラ、AI・データセンター、サイバーセキュリティと、何れも大企業に利する最先端のものばかりで、レッドオーシャンだ。しかもボトムアップのものが多く、アプリがない。個人的には次世代インフラと半導体を削ってこちらに投資したほうが遥かに筋が良いと思うのだが、どうだろう。

2026年1月20日火曜日

5Hz基幹送電線構想

知っての通り、日本の電力線は東西で50Hz地域と60Hz地域で別れており、東西間の電力融通は殆ど不可能である。このため、例えば東北大震災でフクイチ原発で事故が起き、計画停電が起こったが、もし関西以西との電力融通が十分なら、これも何とかなったかもしれない。

ヨーロッパは全土に渡って電力融通が可能であるが、これもフクイチ事故の時に勉強して羨ましいと思った。なぜこれが日本でも出来ないのかというと、ヨーロッパは周波数が50Hzに統一されているからなのだそうだ。一方で国内の送電線は、最上位の高圧線でも50Hz/60Hzで東西が揃っており、直接繋ぐことができない。

周波数が違っても融通は可能だが、そのための専用の施設が必要になってしまい、電力会社が消極的なため、なかなか容量がアップしないのだそうだ。これを解決する手段を考えてみた。

このためには、既に直流高圧送電(HVDC)という手法が確立している。だが、これは設備が専用になる、高額で大型になるという点以外にも、一度発生したアークが消えにくいというデメリットがある。

アークとは、要するに「接続していない銅線の間で電流が流れ続ける」、つまり空気を経由して電流が流れてしまう現象のことである。空気は最高の絶縁物質だが、HVDCは電圧が高いため、銅線を近づけすぎるとここで電流が流れてしまうのだ。イメージとしては雷が適当だろうか。

交流であれば電圧がゼロになる瞬間が一秒の間に何回もあるため、ここでいったん絶縁は復活する。だが直流ではそれがないため、これを止めるには根本の電気を遮断するしかない。しかし高圧直流を遮断するのは非常に難しく、ここでも高価な遮断器が必要である。

直流で送電するのは効率を高めるためであるが、それが目的なら、低周波の交流にしてしまえば、交流の技術を使った設備費用の低減ができるため、良い妥協点を見つけられるのではないか。そこで表題の「5Hzという低周波での高圧送電」を提案するわけだ。これを仮に「HVLF」(High Voltage Low Frequency」と名付ける。

HVLFの良いところは、現在の基幹高圧線をそのまま流用できる点だ。現在も交流なので、新たに大規模な設備投資をする必要がない。そして周波数が低くなることから、送電線のリアクタンスが小さくなり、より多くの電力を送ることができる。現在が50Hzだとすると、5Hzにすればリアクタンスは十分の一、そして直流より効率は悪いが、その差は10%である。一方で設備は、さすがに既存のものそのままでは使えないが、技術はACのものが流用できるため、安くできる。トータルで考えれば、こちらの方が安くなる可能性があるわけだ。

これを新たな「全国区の電力融通用」と位置付け、既存の高圧線の一部をこれに割り当て、東西を繋ぐ。すると、少数の電線を転換するだけでも大容量の電力融通ができ、既存の周波数変換による融通は不要になる。その代わり、既存の発電所からHVLFへのアップ及びダウンのための変電所は必要になるが、これは従来の変電所に併設できるだろう。

HVLFは、海底ケーブルによる電力輸送にも適している。このため、離島への電力供給でも細い線で大量の電力輸送ができるし、海外との電力融通すら視野に入れられるだろう。

なお、更にその先、電柱までを5Hzで送ることも検討可能である。従来より大電力の供給ができるため、例えばEVの急速な普及にも送電線を増やすことなく対応できたり、50Hz/60Hzを自宅単位で切り替えたりすることもできるかもしれない。ただ、電柱の変圧器はインバーターに変える必要があり、インバーターの寿命は変圧器より短いため、コストが低減できるかどうかは検討が必要である。

2026年1月19日月曜日

Modern Standard Global Inglish (MSGI)


 世界共通語を強制しようとすると、英語圏の人は英語を主張するだろうが、英語にも方言があるし、文法にも例外が多く、英語圏以外の人は苦労も多い。また、英語圏以外からの反発も多いと思う。そこで、英語圏以外の人から見ても納得するであろう、新しい英語を考えてみた。タイトルのModern Standard Global Inglish (MSGI)がそれである。(EnglishではなくInglishで正しい。理由はこの後に説明する。)そのルールは以下の通りである。

  1. 基本的には英語である。つまりSVO語順を持ち、単語と単語の間はスペースで空け、表音文字であり、単語の発音と意味は大体英語と同じである。
  2. 文字はアルファベット26文字、大文字と小文字とする。記号は別として、文字はこれ以外認めない。
  3. 大文字はアルファベット自体を読ませるため(EPA:イーピーエーなど)、また強調する目的(HELP!など)には使用するが、文頭や I(私)などでは使用しない。
  4. 発音と表記を一致させる。例えば have は hav とする。go は gou とする。sh,th,wh,chを除き、全ては文字の発音をそのまま使用する。of > ov, phone > fon など。促音としてのppやttなどは使用可。長音は母音を重ねて表記する。 uu, aaなど。kはcに統合し、kは廃止する。ae(アとエ中間の発音)はaかeに統一する。Englishはinglishとなる。
  5. 文法における例外をできる限り排除する
    1. 過去形・過去分詞形は全て d とする。例えば went は廃止し、 goud とする。
    2. be動詞は全てbii に統一する。
    3. have動詞も全てhavに統一する。doもduuに統一する。
    4. 比較級は er / est で統一する。
    5. 冠詞は廃止する。(a, the)
    6. 複数形、女性形・男性形は廃止する。例えば he, she は hii に統一され、they は廃止される。 hii bii docter. はその医者が複数いるのかどうか、男か女かは分からない。
  6. 疑問文における倒置は使用しない。疑問符と語尾を上げて発音することで行う。また、5W1Hも倒置せず、本来の位置で行う。When did she wake up? は shi weikd app when?
  7. 命令文における倒置は使用する。giv ai chocoreeto.
  8. 一つの単語に複数の意味を持たせることはできるだけ避ける。
  9. 新語はハイフンで繋いだ合成語とする。普及に伴いハイフンを外し、また省略形を認める。例えば smart-fon, smartfon, smafo。

英語をベースとした派生言語は、Simplified English、Gorbish、Basic Englishなど多数あるが、これらとこのMSGIが大きく異なる点は、「ひと目でこれは英語ではないと分かること」である。発音と表記を一致させるという原則により、綴りが大きく変わるからだ。例えば I love you. は ai lav yuu. となる。この特徴により、英語話者であってもオリジナルの英語に引っ張られて同一化してしまう危険を減らすことができる。これはつまり、英語圏の人でも若干の勉強は必要であり、これが非英語圏の人の不満を少しは和らげられる。

日付や単位の違いと同じく、言語が世界で複数あることは大いなるロスであることは言うまでもない。世界標準語としてMSGIを普及させることは、このロス低減の一助になるはずだ。

2026年1月14日水曜日

サンタクロース波動論


 https://gigazine.net/news/20251223-santa-quantum-physics/

こちらで紹介されていた、サンタクロースの量子論的解釈が面白かった。

量子とは、電子やクォークなどを差す。これら量子は、物質としての側面と波動としての側面を持っており、通常の物質とは異なる振る舞いをする。その一つは、ハイゼンベルグの不確定性原理だ。

量子はこの世で最も小さな物質であるので、その物質を観測しようとすると、その行為そのものが観測対象たる量子に影響を与えてしまうので、正確な観測ができない。例えば、顕微鏡で見るという行為は、実際には光子を当てて、その反射なり屈折なりを見ることになるのだが、その光子と同程度のサイズがある量子に光子を当てれば、当然ながらそのエネルギーを受けてしまう。だから正確な観測ができない。だから、本当の状態=観測されていない状態に対し、観測されることによって見える状態は一致しない。

これを積極的に応用しているのが量子コンピュータである。量子ビットは0と1が重ね合わせの状態になっている。この「重ね合わせの状態」とは、先ほど言った「観測されていない状態」のことを指す。有名なシュレディンガーの猫の思考実験は、この重ね合わせの状態の説明をしている。

箱の中には毒が入ったガラス瓶が入っていて、ガラス瓶は一定の確率で割れることになっている。この中に猫を入れ、蓋を閉める。一定時間の後、再び蓋を開けたとき、猫は生きているか死んでいるかのどちらかであるが、蓋を閉めている間、「(観測できていないので分からないが)猫は生きているか死んでいるかのどちらか」ではなくて、「生きている状態と死んでいる状態の重ね合わせ状態」である、というのがこの説明である。

そして、量子ビット同士を接続して論理回路を作ることが可能であるが、当然ながら観測しない状態では出力も確定しない。そして観測した時点で量子ビットの0か1は決まるのだが、それは観測するたびにランダムに変わる。一方、論理回路の出力はそのランダムな入力に対して一意に決まるのだが、何回か観測を続けてその出力の「傾向」を見て、それを既存のコンピュータに入力して計算を続けるのだ。

もう一つ、「量子もつれ」という面白い現象がある。二つの量子を量子もつれの状態にしておいて、量子同士を引き離す。するとどんなに遠くに離れていても、その量子のうちの一つを観測することで確定すると、もう一方も自動的に確定する。その確定の速度は瞬時であり、これで光速を超えた情報伝達ができると期待されている。

さて、これをサンタに適用するとどうなるのか。元々、サンタが世界中の子供にプレゼントを配るには、超高速で移動しなければならないのではないか、という議論が昔からあった。地球の大きさと子供の数から考えると、サンタは光速の0.5~0.8%程度の速度で移動する必要がある。これはトナカイの鼻のところで赤方偏移が起きる速度であり、当然ながらそんな速度で地表付近を移動すれば大爆発が起き、サンタどころか子供も地表も無事では済まない。サンタは多数いるのだ、と解釈することも可能だが、百や千いたところで大した違いはない。

ではどう解釈するのか。サンタは観測されていない(子供に見つかっていない)状態の間、多くの子供の部屋に同時に存在する。これが重ね合わせの状態である。しかし、どこか一つの家で目撃されてしまうと、それでサンタの存在が確定してしまう=他の家のサンタは消えてしまう。そして子供がサンタから目を離すと、再びサンタは重ね合わせの状態に戻り、仕事を続ける、というのだ。

サンタが訪問すべき家の数を2.4億軒、時間を36時間と想定し、1軒当たり30秒で訪問すると考えると、サンタはだいたい5.5万人ほど同時に存在することになる。子供に見つかる可能性を考えると、この数倍から十数倍はいた方が良いだろうが、それでも十万人の単位であり、これが世界(の同じ時間帯)にバラけているのなら、まあ見つからなくても納得ではある。そしてこの理論なら、サンタは爆速で移動する必要がない。そもそもサンタは妖精の類であるから、消えてしまうことにも不自然さはない。十万人単位で大量に居るはずなのに二人以上が同時に見つかることのない理由としても完璧だ。

これは新しいサンタの存在の根拠になるだろう。

2026年1月13日火曜日

法律のAIによる運用

 
と、ひとことに言っても色々あるのだが、ここでは「新規事業における法への適合性審査」について考えてみる。

よく聞く話だが、日本は新しいことに対する許認可が通りづらいとされている。例えば、日本では新建材(3Dプリンタ建築など)に対する認可やAIを使った医療機器の認可などが進んでいない。この手の話はいくらでもある。ただ個別事例を上げるのではなく、もっと冷静に数字を見てみると、

https://ja.wikipedia.org/wiki/ビジネス環境改善指数

という指標がある。これは順位が高い(=数値が低い)国ほど、企業に対する規制がより適切で、通常はより単純であり、財産権の保護が強化されていることを示す。この指標で、2020年の日本のスコアは29位だった。世界的に見ればまだ上位ではあるものの、OECDの中では下位に位置づけられる。また、

https://www.imd.org/news/imdが世界競争力ランキング2025年版を発表/

ここで日本の競争力は35位。改善はしているものの、政府の効率性は更に悪く、38位だった。

ただ、全てにおいて日本が悪いかというとそうでもなく、定型処理のスループットは迅速であることも、数字で示されている。

手続き項目 日本 フランス 米国
会社設立登記(最短) 1〜3日 2〜7日 1〜5日
パスポート発行 約6日 約14〜28日 約42〜70日
特許審査(一次審査) 約10ヶ月 約18ヶ月 約15ヶ月

つまり、一律に遅いのではなくて、新しいことに対する対応が遅いのだ。

なぜ遅いかと調べてみると、日本の法体系の構造がそれに関与していることに気付いた。まず、例えば米国では法に書いていなければ即実行が可能だが、日本では役所への許認可や審査のところで長く止まってしまい、先に進まない。法律に禁止と書いていなければやっても良いはずだ、とはならないのだ。法には許認可が必要、審査が必要、とだけ書いてあり、何をクリアすれば良いのかは書いていない。審査が進まなければ事業は始められない。審査の基本的な考え方とそのスピードがネックになっている。

だからといって役所がことさら新しいことを拒絶しているわけではなく、審査自体は粛々と進められている。その審査の基準はというと、日本の場合は法律ではなく、通達やガイドラインがそれに相当している。つまり、なぜ審査が進まないかというと、新しいことには当然通達なりガイドラインなりが整備されていないから、まず基準(=通達)をつくるところから始めるからだ。

実は、日本の法体系は、法律自体には詳しいことは書いておらず、実態は通達やガイドラインに記述する「現場依存型」であるということが分かっている。以下の表は、日本の法律のボリューム(文字数)を1とした場合の、委任立法や通達・ガイドラインのボリュームを各国で比較したものである。

階層 日本 フランス 米国 イギリス 中国
法律 (Statutes/Codes) 1.0 2.5 15.0 8.0 4.5
委任立法 (Regulations) 7.5 6.2 600.0 30.0 25.0
通達・ガイドライン 42.0 3.8 60.0 12.0 150.0以上
合計ボリューム 50.5 12.5 675.0 50.0 179.5以上

これによれば、日本は法律から通達に向けてきれいに末広がりになっている。これはすなわち「細かいことは現場に任せる」という現場依存の体質を如実に表している。中国も同じく末広がり型だが、こちらは法律を事実上「上書き」する強制力を持つケースが多く、「仕様書よりパッチの方が強い」という極めて動的な(かつ恣意性が入り込みやすい)構造なのだそうだ。

これに対し、欧米は通達が少なく中間(委任立法)が多い。法律自体も日本よりは多いが、委任立法のところはまだ法律の範囲なので、省庁による恣意的な策定はできない。ここで細かい抜け道を抑える構造であると共に、足かせとしての機能がある。ここに書いていなければ、基本的にはOKというわけだ。

一方、世界司法プロジェクト(WJP)は、「政府の権限の抑制」「基本的権利」「秩序と安全」「民事・刑事司法」などの項目を0〜1でスコアリングしている(1に近いほど良い)。そのうちの幾つかを紹介すると、以下のようになる。

指標(2025年版推計) 日本 フランス イギリス 米国 中国
総合スコア 0.79 0.73 0.78 0.70 0.47
政府の権限への制約 0.71 0.74 0.81 0.68 0.25
汚職の欠如(公権力の私的利用) 0.86 0.79 0.82 0.74 0.51
規制の執行(公平・迅速な執行) 0.81 0.72 0.79 0.71 0.54

これはつまり、法の恣意的な適用や意図的な遅延、あるいは賄賂といった問題は、日本は少ないのだということを意味している。

ここまでの検証で分かることは、日本の法の運用は実際には世界的にも上手くいっている方であるが、新しいことへの適用が弱い。その理由は通達に依存する「前例主義」だ。前例主義はよく非難されるが、既存のものについては迅速に進むという良い面もある。一方、新しいことにはからきしダメになる。だから、ここを改善すれば、日本の法の運用は世界最強になれる。

その改善とはすなわち、先例のない新しいことへの審査を迅速化するということだ。そのためには、ノーアクションレター制度とかグレーゾーン解消制度というものが既に存在しているのだが、特に迅速に動いているわけではない。その「通達を作るまで待って」の部分が手続き化されただけであり、新しい通達を作るところ自体が迅速化されているわけではないからだ。

つまり、そこをAIにさせようというのが本稿の趣旨である。

新しいことに対して審査をするためには、以前の通達やその根拠法をつぶさに見て、既存の通達が通用するかどうかを判断し、もしダメなら新たに基準を作る必要がある。そして上のようにそのボリュームは膨大なので、人間が読み込むには相当の時間が掛かる。これをAIに任せれば、数十倍(事前の試算によれば40倍程度)の速度で確認ができる。更には新しい「通達案」すら作成できるだろう。それこそ数分から数時間のレベルで作成できる。

もちろん、最終的に「ハンコを押す」(ボタンを押す)のは人間である。AI出力の精度の問題は役所の中に帰結し、外に出すものとしての品質は変わらない。それでもなお、迅速に出すのに不安があるなら、暫定認可とすれば良い。例えば2年後に正式通達を出す前提で、その際には再度認可を求めるようにする。こうすればとりあえずの商売は始められるし、2年後の再認可においても致命的な改変が起きる危険は少ない。

当面の間は、グレーゾーン解消制度のバックオフィスとしてAIを使用することを目標とするのが良いだろうと思う。だが、その先の構想はもっと野心的だ。つまり、通達・ガイドラインの類に相当するところを全てAIに任せてしまってはどうか。

通達やガイドラインを作ること自体にも、大量の専門家が雁首揃えて長時間議論するので、数カ月から年単位で掛かることもザラだ。これが一瞬でできれば、定型業務への落とし込みも含め、法の執行が極めて迅速にできるようになる。更には、新しいことかどうかに限らず、このAIに尋ねれば、何をクリアすればよいのか教えてくれる、そのようなサイトを国が運用する。こうすれば、既存でも新規でも、許認可のスピードを大幅にアップすることが可能だ。

付随効果として、これに伴って、独法などの必要性は大いに低下するから、スピード以外にもトータルコストとしての効率は大いに向上するはずだ。

ここで問題になるであろうことは、そのようなAIの生成が本当に可能なのか、出力の信頼性が十分なのかどうかである。だがここについてはあまり心配していない。現在でも8割はOKだと思うし、5年後なら人間の判断基準を十分に超えているだろう。当面は人間の判断の補助に使い、エラーは都度修正しながら使っていけば、すぐに使い物になるだろう。

2025年12月8日月曜日

ロボットシェアリング&困窮者向けジョブマッチングモデル

近い将来、AIやロボットが発達することで、労働者の仕事が奪われる事態が起きる。頭脳労働では一部業界に既に起きている(イラスト、音楽等)が、これが肉体労働にまで進んでいく。例えばレストランのフロアスタッフは既にタッチパネル注文や配膳ロボットにより侵食されており、他にも徐々に複雑な仕事に波及していくだろう。

ここであぶれた人間には、もはや働くところが無い。何をするにもロボットやAIに劣る人間には、今後もう労働市場自体が存在しないのだ。そんな彼らを救済するには社会保障しかない、と以前は考えていたのだが、ここで発想を転換し、ロボットを所有させれば良いのではないか、と考えてみた。つまりそういう人たちは、その(人間の代わりに働く)ロボットを所有して、労働需要に貸し出して働かせ、その借り賃を得るというものだ。もちろん人間が働くよりは安い額だが、その間自分は何もしない(から他のことができる)のだし、ロボットの台数を増やせばそれだけ額は伸びる。

ここから更に、所有せずともレンタルすれば同じことができるのではないかと考えた。カーシェアリングと同じようにまず自分が借りて、そこから他人に貸すのだ。そうすれば所有のリスクを抑えられる。

用途としては、マンション管理人、イベントや駐車場の誘導員、近所の食堂のホールスタッフ、介護の搬送補助、清掃員、宅配要員、ケータリング要員、などが考えられる。こういうものは、平均的には常に需要があるが時間までは揃わないので、人間よりロボットの方が向いている。

ただ、これだけでは不足だ。第一には、同じビジネスモデルを一般人が使うことは阻止できないので、参入されるとレッドオーシャンになってしまう。そこで、ロボットのジョブマッチングシステムを導入する。これと連動して自動でレンタルが開始されるようにしておけば、カネが自動で落ちてくるようにできる。そしてこのジョブマッチングを使えるのは、生活保護や境界知能など一定の要件を持つ人に限定する。一般人は自分でレンタル先を探さなければならない。ジョブマッチングでは「必ず儲かる」が、手動でマッチングする際には借りてから貸し出すまでのタイムラグがあり、必ずしも収支はプラスにならない。

第二に、借りたい側が直接シェアリングサービスからレンタルしてしまうとこのモデルは破綻するので、借りる側は一定比率でそのジョブマッチングシステムからレンタルしなければならない、と法で定める。個人が借りる場合は100%ジョブマッチング経由とするのも良いだろう。

このシェアリングロボットのプール(待機場所)は地域毎に細かく設定されるので、現実的には寡占状態に近くなり、この定めは大きな障害にはならないと考える。つまりジョブマッチングを通すか通さないかに関わらず、その地域のそのシェアリングサービスから借りることになるので、余計な課金を嫌って他を探すということはあまり発生しない。

このモデルは、社会保障モデルとしても望ましい点がある。従来、生活保護や障害者雇用は「バラマキ」的発想が強く、それ故に偏見も多くあった。だがこのモデルでは、彼らはロボットのオーナーであり、得られるのはそのレンタル料という普通の報酬である。ジョブマッチングが使えるという有利はあるが、同じことを手動することは一般人でも可能なので、ある意味一般人と同じビジネスモデルである。これにより偏見を受けにくくなると考えられるのだ。

ロボットは地域で運用されるので、仕事に限らず家事の補助や子守りなどでも使えるだろう。一家に一台がまだ遠い時代でもロボットを使えることは、地域にとっても望ましいことだ。例えば共稼ぎの夫婦の子供の保育園えの迎えに使うなどということも考えられる。そう考えると、弱者保護は置いておいてもロボットシェアリングには意味があると考える。それにジョブマッチングを加えれば、福祉も効いて一石二鳥になる。

後はビジネスモデルとして成立するかどうかだが、保護対象者(生活保護、境界知能など)の収支は一方的にプラスになるので問題ない。ロボットオーナーは地域の需要を鑑みて調整の必要があり、それなりのリスクを持つが、まあこれはシェアリング会社としては通常のリスクである。借りる側は一定比率の足かせがあり若干不満はあるだろうが、ここは世論に応じて法で調整してやる。つまり十分に低い負担率から始めて徐々に上げていけば、うまい落とし所が見つかるだろう。

2025年12月5日金曜日

努力は報われるのか

努力しても報われない場合はある、というのは一般論として正しいと思うが、成功者は「いや、それは努力が足りないだけだ」と反論する。この構図は昔から存在する。

有名なところでは王貞治の「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」というもので、同じようなことは孫正義や柳井正、稲盛和夫、ホリエモンなども言っている。あるいは、努力しても成功するとは限らないが、成功した者は必ず努力している、という言い方をしている人もいる。だがこれも、才能だけで生きてきたような人がいることを無視した発言だ。

ただ、少数の例外を挙げて反論するのも芸がないので、統計的な決着をつけようと、生成AIに聞いてみた。やり取りは色々あったのだが、最終的には次のような結論が出た。

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◎相関係数の考え方

  • 努力(学習時間)と学力成績 多くの教育調査で相関係数は 0.2〜0.4程度 と報告されています。 → 正の相関はあるが、中程度にとどまる。つまり「努力すれば成績は上がるが、必ずしも強い関係ではない」。
  • 資質(認知能力・IQ・基礎学力)と学力成績 相関係数は 0.5〜0.7程度 とされます。 → 資質の方が努力よりも強く成績に結びつく。特に数学や読解力では高い相関が確認されている。

◎研究例

  • PISA調査(OECD) 学習時間と成績の相関は弱〜中程度(0.2〜0.3)。 認知能力や基礎学力(資質)との相関は中〜強(0.5以上)。
  • NLSY(米国の長期追跡調査) AFQTスコア(認知能力)と所得・学力の相関は 0.6 前後。 学習時間や努力指標との相関は 0.3 前後。

◎まとめ

  • 努力(学習時間)と成績:r ≈ 0.2〜0.4
  • 資質(認知能力)と成績:r ≈ 0.5〜0.7
  • 結論:努力も資質も成績に寄与するが、資質の方が相関は強い。努力は資質を補完する形で効果を発揮する。

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つまり、努力よりも資質のほうが重要であり、努力しなくても資質があれば成功する。それは資質がなくて努力すれば成功する確率よりも倍程度高い、ということだ。

どうだろう。身も蓋もない結論ではないか。資質のないキミ、努力しても無駄だよ~ん。

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バスとタクシーの融合(バクシー)構想

  一日千人の利用があるのに廃止する路線バスのニュースがあった。理由は運転手不足だという。 中期的にはこれは自動運転で置き換わっていくのだろうが、そうすると今のバスでは都合が悪いように思う。自動運転の時代には、「大型バスで定期運行」という形態そのものを見直すべきだろうと思う。 ...

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