2026年5月24日日曜日

ナフサの現状

 

カルビーがポテトチップスなどのパッケージを白黒にしたことに対し、政府がヒアリングを行った話。これについて少し調べてみたところ、けっこうとんでもないことが分かった。

パッケージ問題の本質は(ナフサそのものではなく、ナフサから作られる)エチレンの減産であり、その規模は平常時の四割にも及んでいる。その理由は、政府がガソリンを優先し、エチレンの原料である「石化ナフサ」にしわ寄せをしたからだ。しかも政府はその事実をとうの昔に把握している。ウソとまでは行かずとも、政府は明らかなミスリーディングをしていると言える。

生成AIにレポートを作らせたので披露する。

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ナフサ・エチレン危機の現状分析と政策的影響に関する調査レポート

1. 基礎概念の整理:ナフサとガソリンの関係

本質的な需給問題を議論する前提として、原油から各種製品へ至る化学等プロセスと、それぞれの物質の位置づけを以下に整理する。

1.1 ナフサ(粗製ガソリン)とは

原油を蒸留分離する過程で、最初に留出してくる沸点範囲が約30℃〜180℃の炭化水素混合物。石油化学産業において、あらゆるプラスチック、合成ゴム、合成繊維、安定した自動車用ガソリンの基礎となる「最上流の原材料」である。

1.2 ガソリンとの違い

  • 粗製ガソリン(ナフサ): オクタン価が約40〜60と極めて低く、そのまま自動車エンジンに使用するとノッキング(異常燃焼)を引き起こす未加工品。
  • 自動車用ガソリン: ナフサに「接触改質」などの化学処理を施し、オクタン価をJIS規格(90以上)まで引き上げ、各種清浄剤や添加剤を配合した最終製品。

2. 2026年現在の需給危機(ナフサショック)の構造

2026年現在、日本の石油化学業界は「原料の需給緊迫(ナフサショック)」と呼ばれる深刻な原料不足に直面している。その構造は、外部的な「物流の不確実性」と、政府の価格抑制政策がもたらした「国内流通の偏り」という二重の影響によって形成されている。

2.1 外部要因:中東情勢の緊迫化と物流への影響

  • 輸入依存: 日本のナフサ消費量の約7割は海外からの輸入に依存しており、その多くを中東に依存している。
  • 物流の停滞: 2026年春の中東情勢緊迫化に伴い、ホルムズ海峡のタンカー航行が難航。輸入ルートの4割以上(月間約90万kl)の実質的な遅延・停止が生じた。
  • 代替調達コストの変動: 米国や中南米からの長距離代替調達を急遽実施しているが、輸送費高騰などにより、国内ナフサ価格は平時の約6.6万円/klから11万円/kl超(約70%増)へ上昇している。

2.2 内部要因:政府のガソリン補助金(激変緩和措置)が生む構造変化

日本政府は国民生活への影響を抑えるため、自動車用ガソリン等に対してのみ、1リットルあたり40円を超える補助金を投入し、店頭価格を170円程度に抑制・維持している。しかし、これが需給の偏りを生む要因となっている。

  • 製油所のインセンティブ: 原油の処理総量が全体で減少する中、製油事業者にとっては「補助金により適正な利益が保証されやすいガソリン向け」の生産を最優先し、「補助金の対象外であり、コスト高の転嫁が難しい石化ナフサ(化学原料用)」の生産割合を抑制するという経済行動が合理的となる。
  • その結果生じたナフサ需給モデル(月間):
ナフサの用途 平時の月間需要 現在の実際の供給量 需要に対する供給比率
用途A:石化ナフサ(エチレン用) 145万kL 120万kL 82.8% (17.2%の不足)
用途B:燃料用ナフサ(ガソリン調合) 80万kL 80万kL 100.0%
合計 225万kL 200万kL 88.9% (11.1%の不足)

総量では11.1%の不足に留まるように見えるが、ガソリン向けが100%維持された結果、不足分の影響の多くが石化ナフサ(17.2%の実質的不足)へ集中している。

3. 「エチレン大減産」が引き起こす現場の供給不足とそのメカニズム

3.1 政府見解「ナフサは確保されている」と「現場の不足」の乖離

政府(経済産業省)は「輸入代替の手配を完了し、国家備蓄もあるため、国内のナフサの物量は確保されている」との立場を示している。

しかし、実際の建築現場や医療現場、物流、小売の現場では、プラスチック容器、水道配管、包装資材、梱包用資材といった「ナフサ由来の製品」が深刻な品薄に陥り、新規受注停止や納期未定が相次いでいる。 この「統計上の安定」と「ミクロな現場の需給逼迫」の乖離の主な背景となっているのが、国内の主要エチレンプラントにおける「前年比38.8%もの大減産(稼働率67.3%への急落)」である。原料としてのナフサが国内のタンクに存在しているとしても、それを各種素材に加工する中流プロセスが稼働調整に入っているため、末端へ製品が届かない状況が生じている。

国が示す「不足0%(100%確保されている)」というマクロな見解の背景には、実際には全体で11.1%の物理的不足(化学用石化ナフサに絞ると17.2%の不足)が発生している現場との間で、以下の2つの実務上の乖離が生じている。

  1. 「足の速さ(貯蔵・融通の限界)」に対する時間軸の相違(タイムスパンの乖離)

    政府の「不足0%」という主張は、中長期の調達契約や半年単位での輸入見通しといった「長期調達」ベースの議論である。しかしナフサは、ガソリンと同様に極めて揮発性が高く、品質劣化や保安上のリスクから長期的な安全貯蔵が難しい「足の速い(貯蔵の効かない)」製品である。現場は日々入ってくる原料をただちに熱分解してエチレンにする、タイトなフローで動いている。政府の見解には、この日々のミクロな時間軸(11.1%不足のインパクト)への考慮が十分に反映されにくい構造となっている。

  2. 「ナフサ相当品」の活用と実務上の制約(スペックの乖離)

    政府が代替調達等によって確保したとするデータには、そのままエチレンプラントに投入することが困難な「ナフサ相当品」(軽質油、C3・C4留分、LPG等の混合原料など)も計上されている。 これらを実際のプラントでエチレン原料として使用するには、国内の製油所で事前の精製・ブレンド・組成調整といった「追加加工」が不可欠である。しかし、製油所は補助金対象となるガソリン生産を優先したスケジュールで動いており、相当品の加工プロセス自体が十分に機能していない。結果として、相当品は在庫データとして計上されているものの、現場にとっては「実質的な供給量として直ちに使用することが困難な物量」となっており、現場の実質的な不足(17.2%不足)を補うに至っていない。

3.2 なぜエチレンの大減産が国内サプライチェーンに影響を与えるのか

「エチレン」は、石油化学業界において「石化製品の王様」、あるいは「すべてのプラスチックの親」と呼ばれる、最重要の基礎有機化合物である。 原油から精製された石化ナフサを熱分解(クラッキング)して得られるエチレンは、以下のようにほぼすべての現代産業・生活用品の出発点となっている。

  • ポリエチレン(PE): レジ袋、ゴミ袋、食品トレイ、製品容器、梱包用ストレッチフィルム
  • 塩化ビニル樹脂(PVC): 水道配管(塩ビ管)、住宅用サッシ、壁紙、床材、輸血パック、点滴チューブ、使い捨てシリンジ(注射器)
  • 酸化エチレン・エチレングリコール: 衣類用のポリエステル繊維、ペットボトル、自動車の不凍液、合成洗剤の界面活性剤

日本のプラスチック生産(年間約1,000万トン)のうち実に約4割がこのエチレンを主原料としており、現在、国内のエチレン生産量は前年比38.8%減という大幅な減産に直面している。この代わりのきかない最重要基礎原料が4割近く減少することは、インフラや生活物資の供給網に多大な打撃を与える可能性がある。

【補足】残りの6割のプラスチックは何を原料としているのか

「エチレンが主原料なのは4割」であるが、残りの6割も、基本的にはすべて石化ナフサを熱分解した時に同時に生産される以下の「関連物質」を原料としている。

  1. プロピレン(国内生産の約20%〜25%をカバー): 主に自動車用バンパーや家電製品の内装、医療機器(輸液用ボトル)などに使われるポリプロピレン(PP)や、アクリル樹脂、防寒衣料用アクリル繊維の原料となる。
  2. 芳香族化合物(ベンゼン、キシレンなど)(約25%をカバー): 使い捨ての食品容器(ポリスチレン:PS)や、ペットボトルの主原料(キシレンから作られるテレフタル酸)、高強度のエンジニアリングプラスチック(ポリカーボネートなど)の原料になる。
  3. ブタジエン・その他(約10%〜15%をカバー): 自動車用タイヤなどの合成ゴムや、家電製品の筐体に使われるABS樹脂などの配合原料となる。

つまり、エチレン以外の6割も、実態はナフサ依存である。 ナフサの不足によるプラント全体の稼働低下(67.3%への急落)は、エチレンだけでなくこれら「プロピレン」や「芳香族化合物」の生産にも連動するため、日本のプラスチック全体の生産能力が根底から圧迫されているというのが、現在の需給緊迫の実態である。

3.3 なぜ「17.2%の物理的不足」から「38.8%のエチレン大減産」が起きるのか

ナフサ全体の調達不足割合は「11.1%」、ガソリン優先へのシフトを差し引いた化学用ナフサの物理的な流通量の不足割合は「17.2%」である。しかし、なぜエチレンの生産量はその倍以上の「38.8%」もの大減産を記録しているのか。その理由は、単なる物理的なナフサの枯渇を超えた、化学メーカーによる「経済的合理性に基づく稼働調整(計画的な減産)」にある。

  1. 価格転嫁の課題(逆ザヤ): 化学メーカーは11万円/kl超に上昇した代替ナフサを仕入れてエチレンを製造しても、そのコストを川下の製品(プラスチックや資材)へ即座に転嫁することが難しい。製造すればするほど赤字が拡大する懸念があるため、メーカーはプラントをフル稼働させる経済的合理性を見出しにくい状況にある。
  2. 引き取りと「在庫滞留」の発生: メーカーは、契約上引き取らざるを得ない高価格ナフサを自社の備蓄タンクに保有しつつ(これが流通・在庫データ上は「存在する」とされる)、プラントの稼働率を調整している(買い控え)。
  3. 代替原料(LPG等)への切り替え: ナフサの使用を抑制するため、より割安なブタンやプロパンなどを炉に混ぜる比率を高めたことで、ナフサの消費とそれに対するエチレンの生産効率(得率)が変化している。

4. エチレン大減産が日本経済と国民生活に与える影響

「エチレン」はすべてのプラスチック・有機化学品の基本素材であり、その大幅な減少は、多大な打撃を社会に与える。

  1. 物流・インフラへの負荷: 商品を運ぶためのプラスチック製パレット、梱包用のストレッチフィルム、粘着テープの流通が停滞し、配送業務全般に遅延などの影響が生じるおそれがある。
  2. 食料品・日用品の包材不足: 食品トレイ、ペットボトル、マヨネーズや調味料の容器、ラミネート包装、シャンプーボトルなど、生活必需品をパッケージングするための資材が不足し、製品の供給遅延を招く。
  3. 医療・衛生分野への影響: 使い捨て注射器(シリンジ)、点滴用チューブ、輸血パック、人工透析回路、防護服など、医療現場の製品原料(ポリエチレン、塩ビ等)の調達が困難となり、医療体制の維持に課題が生じる。
  4. 建設サッシ・配管の停滞: 樹脂サッシ、塩化ビニル管(水道配管)、ウレタン断熱材などの出荷が遅れ、新築やリフォームの工期に遅延が発生する。

5. 本来政府が検討すべきであった危機管理対策

現在の政府見解である「国家備蓄等によりナフサは確保されている(不足0%)」は、ミクロな市場での流通の目詰まりを十分に考慮していない側面がある。需給バランスの改善とリスク回避のために有効と考えらえる対策は以下の通りである。

5.1 対策①:補助金の一括「上流化」によるフラット化

  • 内容: ガソリンなどの特定製品の出荷段階に対する個別補助金を見直し、原油およびナフサの「輸入・調達段階(上流)」に対して補助を一括して投入する。
  • 効果: 特定製品(ガソリン)のみに偏る経済的優位性を抑え、製油所の生産比率を市場の実需割合(適切なバランス)へと回復させる。

5.2 対策②:ガソリン価格の「シグナル」の復元と直接支援への切り替え

  • 内容: ガソリン価格を一律170円に抑える水準を緩和し、価格を緩やかに上昇させて効率的な利用(需要の抑制)を促す。これにより、得られた原油・ナフサ成分を化学原料へ振り向ける余力をつくる。
  • 補填: 特に経済的影響を受ける地方世帯や営業用トラック(緑ナンバー)に対しては、一律の価格値引きではなく、直接の給付・還付措置などでピンポイントに支援する。

5.3 対策③:有事統制法の検討

1973年の石油危機を契機に制定された緊急事態法について、適用の可能性を検討する。

  • 石油需給適正化法: 石油元売り各社に対し、ガソリン生産を一時抑制し、化学原料用ナフサを本来の必要量(月間145万kl)まで調整して出荷するよう促す措置などを検討する。
  • 国民生活安定緊急措置法: 医療用プラスチック、塩ビ水道管、物流パレットなどの重要物資を指定し、適正な価格監視や流通の調整を実施することで、過度な価格高騰や流通の目詰まりを防ぐ。

6. 現状の政府の対応(第5章との対比)

経済産業省は毎週、石油元売り各社や石油化学工業協会から、製油所の稼働状況、ガソリンの生産シフト、エチレンプラントの稼働率などの一次データを直接集計し、把握している。すなわち、政府は燃料油激変緩和補助金政策が化学原料用ナフサの流通に及ぼす影響を認識しつつも、消費者や生活者への直接的な影響を重視し、現在の対応を優先して継続している。

以下に、第5章で提示した「想定される危機管理」と対比し、2026年現在の政府の実際の対応を整理する。

6.1 現状の対応①:ガソリン限定の「下流・製品ごと」の激変緩和補助

  • 対比(5.1): 補助金の一括「上流化(原油段階一律)」を採用せず。
  • 現状: 政府はガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料に限定した「燃料油価格激変緩和措置(補助金)」を適用。店頭のレギュラーガソリン価格を「全国平均170円程度」に収めるよう、石油元売り企業に対して補助金を支給している。
  • 結果: この仕組みは事業者に対して「補助金対象となるガソリン」の生産を優先するインセンティブを与えることになり、結果として補助金対象外である石化ナフサの供給量が相対的に抑制される要因となっている。

6.2 現状の対応②:価格シグナルの「抑制」と生活者支援の維持

  • 対比(5.2): 需要抑制を促す価格シグナルの活用、および特定層へのピンポイント給付への完全移行は見送り。
  • 現状: 国民生活や地方経済への急激な負担増(物価高による支持低下等も含む)を懸念し、店頭ガソリン価格を170円前後に抑える仕組みを維持。予備費などの追加予算を充てて財政的な補填を継続している。
  • 結果: ガソリン需要の大幅な抑制が働きにくいため、原油の配分がガソリン側に偏りやすい構造が維持されている。

6.3 現状の対応③:有事統制法の不適用とマクロデータの強調

  • 対比(5.3): 「石油需給適正化法」および「国民生活安定緊急措置法」の活用は行わず。
  • 現状: 市場経済への急激な直接介入は避けるべきとの考えから、有事統制法の適用は見送られている。代わりに経済産業省は「十分な備蓄の確保」や「代替調達ルートの構築」の実績を公表し、「物量自体は確保されている」との説明を続けている。
  • 結果: マクロ的な需給データの安定(在庫の存在)を強調する一方で、補助金政策によって化学用ナフサの価格が上昇し、結果として実務上は「流通の偏り」が継続する事態となっている。

7. 今後の予測:2つのアプローチの分岐シナリオ

第5章で提唱した「政策の見直し」に移行した場合と、第6章の「現状の対応」をこのまま継続した場合、日本経済が辿る今後半年〜1年の予測シナリオを示す。

7.1 シナリオA:現状の対応(第6章)を継続した場合(現状維持における課題深化シナリオ)

ガソリン優先の補助金とナフサの市場委ねを継続した場合、日本経済はサプライチェーンの構造的打撃という課題に直面する。

① サプライチェーンの滞留と物不足の表面化(1〜3ヶ月後)

  • 物流・食料: 梱包用のストレッチフィルムやプラスチックパレットの流通量が減少し、倉庫での出荷業務に遅れが生じるおそれがある。「燃料は確保されているものの、積載・梱包資材の不足によって配送が停滞する」という状況が想定される。また、容器製造の限界により、食料品や日用品のパッケージ供給に滞りが出る。
  • 住宅・医療: 水道用塩ビ管、窓の樹脂サッシ、断熱材の調達難が長期化し、建築工事の工期が停滞する。医療現場では、使い捨て注射器や点滴用チューブなど、医療提供に不可欠なディスポーザブル製品の原料(ポリエチレン、塩ビ等)の確保が厳しくなる。

② 素材産業の基盤揺らぎと空洞化の懸念(3〜6ヶ月後)

  • 主要化学メーカーはエチレンプラント(稼働率60%台)の不採算に耐えかね、一部設備の休止や見直しに踏み切らざるを得なくなる可能性がある。これにより、国内の最先端素材の生産力が長期的に低下する懸念が生じる。
  • 川下の製造業(自動車、電機等)は、国内での基礎素材の調達不確実性を避けるため、サプライチェーンの再編(海外調達や拠点の移転)を進める動きを強め、産業の空洞化が進むリスクがある。

③ 財政負担の継続

  • 原油高が長期化した場合、ガソリン補助金の支給額が膨らみ続け、財政負担が継続する。結果として、価格抑制と基盤産業の維持を両立させることが難しくなる。

7.2 シナリオB:本来の対策(第5章)に移行・継続した場合(政策転換による安定化シナリオ)

「上流一括のフラット支援」や「適切な需給の調整」へ舵を切った場合、経済全体でバランスの取れた安定化が期待される。

① 化学原料の流通改善と価格安定(1ヶ月後)

  • 補助金を原油輸入段階にフラット化したことで、製油所における特定製品への偏りが解消。市場の実需に応じた割合で石化ナフサが生産され始める。
  • 化学用ナフサの流通量は回復に向かい、調達価格が落ち着くことで、化学メーカーの稼働抑制が緩和される。エチレンプラントの稼働率は安全圏(85%以上)へ向けて回復し、減産幅は急速に縮小する。

② 需要の最適化と重点支援の確立

  • ガソリン店頭価格が市場の実勢を緩やかに反映(190〜200円程度)することで、効率的な利用が進み、需要が抑制される。ここで抑制された原油成分が、化学原料(ナフサ)側へスムーズに融通される。
  • 浮いた資金を、配送用トラックや生活困窮世帯などの本当に死活的なセクターへ直接給付(還付)することで、ガソリン上昇に伴う影響を最小限に抑え込む。

③ サプライチェーンの安定化と信頼維持

  • 需給調整措置や価格監視の実施により、流通パニックが回避される。医療・建築・食品包装における素材不足は一時的な混乱にとどまり、サプライチェーンは維持される。
  • 「有事にあっても産業資材を安定供給できる国」としての信頼が保たれ、川下産業の国内留まりや製造業の安定化を強力に後押しする。

8. 結論:本報告の要約(まとめ)

本報告書が明らかにした「2026年ナフサ・エチレン危機」の核心的な要点は以下の通りである。

  1. 二重の危機構造(物理的寸断と政策的要因) 危機の契機はホルムズ海峡の緊迫化に伴う「輸入減少」という外部要因であるが、それを国内市場で偏らせる結果となっているのは、政府によるガソリン等への「価格抑制措置(補助金)」に伴う構造的インセンティブ(内部要因)である。
  2. 「不足0%」の統計と「17.2%の偏り」「38.8%の大減産」のギャップ 政府は十分な調達実績や国家備蓄のデータを背景に「ナフサは確保されている(不足0%)」と主張する。しかしその前提には、貯蔵の難しさ(時間軸の無視)や、追加加工が必要な「ナフサ相当品」の計上(スペックの乖離)といった実務的な盲点がある。実際には全体の11.1%が不足し、ガソリン向け(80万kl)が優先された結果、化学用の石化ナフサは「17.2%の実質的不足(145万kl→120万kl)」に晒されている。
  3. 「経済的合理性の追求」によるサプライチェーンへの影響 化学メーカーは、高騰した代替ナフサを調達してエチレンを製造しても、製品価格への即時転嫁が難しいため、稼働調整を選択せざるを得ない。この防衛策(引き取り調整と在庫滞留)の結果、エチレンの生産量は「前年比38.8%減」という極めて厳しい減産となっており、プラスチック全体の生産能力が根底から圧迫されている。
  4. 全産業に波及する広範な影響 エチレンの大幅な減少は、社会のインフラに広く影響を及ぼす。物流用パレットやストレッチフィルムの不足による「物流の停滞」、食品パッケージの減少による「流通への支障」、注射器や点滴パック等の調達難による「医療への負荷」、塩ビ管や断熱材不足による「建設工期の遅延」など、広範な影響が表面化しつつある。
  5. 政策の優先順位の見直しと危機の構造的解決 生活者保護を目的とした「目立つガソリン価格の抑制」を重視するあまり、産業の基盤素材であるエチレンのサプライチェーンが圧迫されている現状は、長期的な経済成長への大きな課題である。今すぐ検討すべき対策は、補助金を「原油段階の一括化」に移行してガソリンとナフサの公平性を担保すること、ガソリン価格のシグナルを復元して需要抑制を促すこと、有事に備えた法制(「石油需給適正化法」や「国民生活安定緊急措置法」)の適用を視野に入れ、産業と国民生活の土台である「基礎化学原料」の安定供給を確保することである。
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さて、どうだろう。4割もの原料減産がある中で、パッケージの色を変えるだけで済んでいる(袋だってナフサを使うのだ)のは、むしろ褒められても良いのではないかとすら思う。
政府は、「石油需給適正化法」「国民生活安定緊急措置法」という飛び道具も持っている。やろうと思えばすぐにでもできるのだから、いつまでも詰まらない意地を張っていないで、政府はさっさと対策を打ち出すべきだろう。

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