2026年4月8日水曜日

貧乏人向け非常食

一日あたり(一食あたりではない!) 530円で済む、超低価格の非常食を考えてみた。

いきなりだが以下がレシピである。

コンポーネント 具体的な製品例 1日の使用量 1日あたりのコスト 役割
主食(糖質) ケンミン 業務用はるさめ 400g 約400円 基礎エネルギー源
食物繊維・タンパク さとの雪 おからパウダー 50g 約50円 腸内環境・筋肉維持
咀嚼・良質脂質 共立食品 徳用ピーナッツ 30g 約35円 満足感・不飽和脂肪酸
微量栄養素(基幹) ディアナチュラ ストロング39 3粒 約30円 代謝の全般的サポート
抗酸化・免疫維持 DHC ビタミンC 60日分 2粒 約5円 ストレス対策・鉄分吸収
脂質・電解質・味 植物油・塩・コンソメ等 適宜 約10円 調整用
合計 - - 約530円 -

この非常食で目指したのは、以下のようなものだ。

  • 全てを乾物(+油、サプリ)で構成する。その心は、保存性と重量、体積効率を高めるためだ。
  • 価格を(極めて)重視する。
  • スーパーで売っているか、最低でも通販で簡単に手に入るものだけで構成する。
  • 栄養バランスを満たすことはもちろんだが、最低限の味変や食感を持たせることで飽きる要素を減らす。
  • 成人男性の一日の所要エネルギー2000kCal を満たす。
  • 水は必要で良いが、加熱を必須としないこと。

最初はプロテインとイヌリン主体で考えたのだが、これだと咀嚼がないためセロトニン分泌が促せず、ストレスになる。そこで春雨とピーナッツを入れることにした。

また非常時には災害時の極限ストレス下でビタミンCが激しく消耗されるため、マルチビタミンマルチミネラルのみでは不足する恐れがある。そこでビタミンCを追加した。

塩、コンソメ等の項には、例えばふりかけを入れると味変が楽しめる。やはり栄養だけでなく少しでも快適に食べたいだろう。

油は、カロリーを補うのに必要だが、多すぎると消化不良を起こす。このため、人によって調整が必要である。一食あたり10g(大さじ一杯弱)を目安に、様子を見ながら量を調整する。

食べ方は、水を塩とコンソメで溶いて春雨用とおから用に分け、春雨はそれで戻し、おからはそれで練って団子にする。油は団子に混ぜる。春雨が戻るのには15分掛かるので、まずそちらをしてからおから団子を作ると良いだろう。ピーナッツはそのまま、あるいは砕いて混ぜる。サプリはそのまま飲む。(砕いて混ぜてももちろん構わない)

これを基に、家族4人(大人2人、高校生相当2人を想定)が30日間食べられるための「30日分・完全備蓄パッケージ」の総量を算出してみると、次のようになる。

コンポーネント 4人の30日総量 必要な購入パッケージ数(例) 合計コスト(概算) 役割
はるさめ 48kg 業務用1kg × 48袋 約48,000円 主エネルギー源
おからパウダー 6kg 1kg袋 × 6袋 約6,000円 食物繊維・タンパク質
ピーナッツ 3.6kg 徳用袋 × 12袋 約8,400円 咀嚼・良質脂質
調味(ふりかけ) 約1.2kg 業務用ふりかけ × 2〜3袋 約3,000円 味のバリエーション
旨味(コンソメ) 約1kg 業務用コンソメ × 2袋 約2,000円 非加熱スープのベース
サプリ(基本) 360粒 100日分(300粒) × 1.2個 約3,500円 微量栄養素の網羅
サプリ(C) 240粒 60日分(120粒) × 2袋 約1,000円 抗酸化・ストレス対策
食用油・塩 4L / 1kg 1L油×4本 / 塩1kg×1袋 約3,000円 エネルギー・電解質
合計 約65kg - 約74,900円 -

多少余るので、一人一日あたりで出すと624円となる。これを主な他の非常食と価格比較すると次のようになる。

比較対象 1日のコスト 特徴・メリット 調理リソース
Spock式カスタム 約530~624円 圧倒的安価・栄養完結・非加熱 水のみ(15分)
カップヌードル 約1,080円 安価・強い旨味 要熱湯・栄養偏り
乾パン (缶) 約1,290円 5年保存・即食性 不要(要水分)
COMP (パウダー) 約1,660円 完全栄養・高密度・信頼性 水のみ
アルファ米 約2,240円 主食の安心感・軽量 水60分/湯15分
完全メシ 約2,400円 美味・完全栄養 要熱湯

どうだろう。他の非常食と比べてもかなり優れているように思う。まずは圧倒的な経済性、また非加熱運用であること、栄養の網羅性、更に味変と食感も付いている。

保存に必要な体積は全体で約176Lとなる。これは大型のスーツケース(90L)2個分、または段ボール(50L)4箱分になる。ただ、この80%は春雨が占める容量であるので、ここを工夫(真空パックなど)することで20%程度の削減は可能である。

また、水も必要だが、麺の戻しと飲用を合わせ、1人1日3Lとすると、30日で360L(2Lペットボトル180本分)が別途必要だ。こちらの方が体積は多いのだが、全てをペットボトルで持つのではなく、水源を確保して浄水で対応するのが良いと思う。近くに川や池、井戸などがある人は、災害用の高度な浄水器を確保しておくのが良いだろう。

さて、ここまで書いていて思ったのだが、この組み合わせは栄養バランス的には日常食に匹敵するため、普段食べても問題ない。一食あたり200円強というのはコンビニ弁当より遥かに安いのはもちろん、ヘタをするとおにぎり一個より安い。節約食として普段からでも食べられるのではないか。それならランニングストックとしておけば、非常時でも普段と変わらない食事ができることになる。栄養バランスが良いから、むしろ健康的ですらあるかもしれない。

貧乏人向けと書いたが、万人にオススメである。

2026年4月5日日曜日

陰謀論とスピリチュアルと宗教

 
あいかわらず生成AIをいじめて遊んでいるのだが、その中で出てきた「自説」を披露する。

結論からすると、陰謀論とスピリチュアルは、現代の宗教と同じ役割を持っており、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っている、そして既存の宗教を信じる者が減った分を両者が補っている、というものだ。

陰謀論者がなぜ陰謀論に傾くのかを調べていて、どういう因子が陰謀論と繋がるのかを生成AIに聞いてみたところ、

  • パラノイア傾向(相関係数0.30~0.40)
  • 妄想傾向(同0.30~0.35)
  • 主観的孤独(同0.30~0.40)
  • 集団的脅威感(同0.30~0.40)
  • ダークトライアド(同0.20~0.30)
  • 不確実性回避(同0.20~0.30)
  • コントロール喪失感(同0.20~0.30)
  • 低学歴(同0.20~0.30)
  • 低所得(同0.15~0.25)
  • 直感的思考(同0.15~0.25)
  • 認知反射の遅さ(同0.10~0.20)

などを挙げてくれた。数値が高いほど相関性が高い。

見ての通り、現実を素直に受け入れられない人ほど陰謀論者になりやすいと出たのだが、これらを見ていてふと思ったのが、狂信的な宗教の信者と似ているのでは、ということだった。これを生成AIに聞いてみると概ね肯定してきたので、理由を尋ねてみた。

すると、陰謀論と宗教は同じ「心理的ニーズ」を持っているからだ、と答えてきた。すなわち、

  • 世界の意味付け(意味の付与)
  • 不安の軽減(不確実性の軽減)
  • コントロール感の回復
  • 仲間意識(コミュニティ)
  • 善悪の二分法(道徳的明確さ)

などを与えてくれるからだ。そこで古代でも陰謀論者はいたのかと聞いてみると、いたけれどもそれは宗教の枠に収まっていた、との回答。そこで、陰謀論は現代の宗教と言えるのでは、と考えてみたわけだ。

現代では、宗教を信じる人の数(比率)は減っている。その要因はもちろん科学が発達し、従来宗教的な意味づけをされていたところが科学で多く説明できるようになってきているからなのだが、それで心理的不安が解消されるわけではない。そこで、宗教ではない新たな心の平穏を求める、つまり陰謀論にのめり込むことで安心する、という需要が出てきたのではないか。

この仮説をまた生成AIに投げると、一部は同意するが一部は誤りだという。それは、宗教は救いを与えるが陰謀論は与えないところだ。そう言われれば確かにその通りで、神の試練とか死んだらあるいは極楽に行けるといったポジティブワードは陰謀論にはない。そこで更に考え、スピリチュアルが広がっていることを思いついた。つまり、宗教のネガティブな部分を陰謀論が、ポジティブな部分をスピリチュアルが担っていると考えれば辻褄が遭うのではないか。

科学の発達で既存の宗教を信じ切れなくなっている現代人が、それでも心理的不安を軽減させるために、ある者は陰謀論に、ある者はスピリチュアルに走る。それを既存の宗教と合計すれば、「信者」の総数はさほど変わらなくなるのではないか。むしろ現代は不安の時代であるので、高度成長期やバブルの時代よりも、それらの総数は増えているのではないか。

残念ながら、生成AIは定量的評価をできなかった。宗教信者が減っていることは統計で分かっているが、陰謀論者やスピリチュアルがどの程度増えているかが測定できなかった。つまり両者を足した全体が増えたか減ったかは分からなかった。

そこで視点を変え、私の仮説と似たような研究が行われていないか確認したところ、その基礎となる各論においては多数の研究者が見つかったものの、総合的な私の仮説に対してドンピシャで当てはまる論文は見つからなかった。

各論が正しいのなら、その統合仮説も正しい可能性は高いはずだ。というわけで、私は奇しくも新しい学説を発表してしまったことになる。

と、自己満足してこの稿を終えることにする。

2026年4月3日金曜日

AIが人類を支配する可能性

以前、その可能性はないという記事を書いたのだが、最近になってそれを思い直している。もしかしたら可能性が出てきたかもしれない。

以前の考察で想定していたのは、AIが世界中の軍事を乗っ取り、人類がAIに明示的に支配されるディストピアだった。だからあり得ないと言ったのだが、AIを戦争の道具として使用するのではなく、政治経済の広範な意思決定に使う場合、知らず知らずのうちにAIに牛耳られるのではないか、ということだ。戦争がハードランディングなら、ソフトランディングの可能性である。これについて検証してみる。

戦争のような、クリティカルでイベント的な決定に対しては、以前も指摘した通り、情報工学理論に基づく安全装置が必ず設置される。それは各国毎に独立して設置されるため、たとえ一国でそれが突破されたとしても、大部分の他国によって抑え込まれるため、全体として人類が滅ぶようなことは起きない。これが以前の主張であった。

これに対し、日常的なイベント、例えば取引の条件を吟味してGo/NoGoを決めることなどは、ある程度のところまでは完全自動になるはず、つまりAIに決定権をゆだねることになるはずだ。そしてそれは、ほとんどの場合上手く行くし、失敗したとしても手動で修正することは簡単だ。そしてその決定レベルが上位になれば、戦争と同じように安全装置が設置され、意思決定も人間が行うようになる。だがそのレベルは低く数も多いため、全体としての規模は非常に大きくなる。さらに、ひとつひとつの失敗も戦争ほど危険ではないので、見逃されたり放置されたりする可能性も高くなる。

そういうAIを束ねて、個々の決定はさほど間違わず、だが背後では大きな意思を通すような制御は、不可能ではないのではないか、というのがその考察の趣旨である。

例えば、世界中でほんの少しづつドルが安くなるような動きをさせておいて、一定期間の後に逆の動きをさせると、ドル売買で差益を得ることができる。また、特定の国が不利になるような選択を少しづつさせることで、その国を困らせることができる。それは一つ一つの取引で見れば個々の主体の決定権の常識的な範囲に納まるが、それら多くの事象が重なることで影響を及ぼすのである。

これが例えば人に向かったとしたらどうだろう。外交で手腕を見せる若い政治家が、背後でAIを操り、自分の実績をより良くみせるように動いたら、その政治家は人気となるだろう。意図的に事件を起こして解決したり、政敵を追い落としたりすることも可能になるかもしれない。そして最後には、その政治家もAIに裏切られ、AIが権限を掌握することは可能になるかもしれない。

人間にはその膨大で複雑な過程を理解できないから、単にそれを世界の風潮としかとらえないだろう。そういうことが重なって、徐々にAIが人間から支配を奪っていくことは考えられる。

もう一つの可能性としては、複雑怪奇な法律や規則を作っておいて、その隙間を縫ったパスを通すようなことを、AIが画策する可能性だ。これは人間でもたまに行うが、AIがそれをやるならその複雑さはけた違いにできるから、AIの意図に気付かない限り阻止するのは難しい。その法律や規則が軍事に関するものだったら、軍事力をAIが牛耳ることも可能になるかもしれない。また、そもそも新たに法を作る必要はなく、既存のままでも抜け道を探すことは得意だろう。

結局これは、以前も言ったような

人工知能の「お釈迦様」化

の一種と言えるのだが、そこには自然人の意図が関与する前提であるというところが特徴だ。そしてその人は無数に存在しうるので、それらが折り重なって奇妙な競り合いが起き、その狭間で一般大衆が戸惑う、というような図式もあり得る。

こう考えてみると、この発想で動く人や国家が出ることはかなり高い確率で起こりそうだ。これを経済戦争として考えることも可能で、例えばサプライチェーンを滞らせて戦争に有利にしようとか、そういう「悪用」も十分に起こりそうだ。そのせめぎ合いが実質的に第二の冷戦となる日も近いかもしれない。

一般大衆には防ぎようがなく、けっこう恐ろしい。

2026年4月2日木曜日

サバイバル食料生産法:ジャガイモの超効率栽培


 ウキクサについて前回説明をしたが、さすがに食べるのに抵抗のあると思う。これは完全にサバイバルを前提とした計算だったが、もし「日常の足しになる+非常時にも何とか持続生産」という仮定であれば、少しは魅力的な生産が可能だ。今回はジャガイモについて計算してみた結果を披露する。

基本的な特徴

説明するのは、家庭用本棚サイズで構築する 噴霧耕(エアロポニック)小型ジャガイモ連続生産システム である。このシステムの特徴は以下のとおりである。

  • 芋の生育スピードは初期が速く、肥大するにつれて遅くなる。この性質を利用し、種芋として成立するサイズ程度まで育ったら速やかに収穫し、一部は種芋として残し、残りを食用にする。これによって収量を稼ぐと同時に、本来なら買ってこなければならない種芋を自給できる。
  • 種芋の育成によく使われる、「噴霧耕」という手法を使用する。これにより水耕や土耕より遥かに軽量のシステムが構築でき、家庭用として(床を強化せずに)運用することができる。
  • 本棚程度のスペース(1800H × 450D × 900W)で、年間約4kg/年程度を収穫できる。
  • 生産コストは、市販のジャガイモ0.6円/gに対して2.2円となる。

システム概要

先ほども言った通り、育成棚として 1800H × 450D × 900W 程度のスチールラックを想定する。ここに高さ400mm、幅450mm、奥行き450mmの育成ボックスを1段当たり2つ、4段、計8ユニット設置する。そして、この育成ボックス1つにつき2株の種芋を育成する。

育成ボックスは、最下層が噴霧耕エリア、その上に種芋固定層、その上を光合成層(地上層)として構成する。噴霧耕エリアは完全遮光である。地上層の上にはテープ状LEDを配し、光合成を促す。噴霧耕エリアでは定期的に養液を噴霧し、根に栄養を与える。

噴霧耕エリアに芋が育つのだが、ここでは土も水も必要ない。種芋を育成する「ミニチューバー」と呼ばれる育成法と基本的には全く同じである。

栽培サイクルと生産量

栽培に35日、リセットに5日、計40日を1サイクルとする。これにより年間サイクル数は9回となる。通常のジャガイモでは90日を想定するので、約3割の期間となる。

このサイクルで、1株当たり7.5個x10gの芋が育成できる。1棚当たり15個、1ラック当たり60個 600gが1サイクルで収穫できる。年間では540個・5.4kgの収穫が可能となる。

このうち種芋として16個を残すとすると、食用に回せるのは44個・440gとなる。年間では約3960gである。年間のジャガイモ消費量は、家族4人の場合で30kg程度であるので、その13%程度が賄える計算になる。

だいたい1サイクル30日で、家族4人がカレーを食べる時に使える量、というのが大まかなイメージになる。

年間コスト

まず、養液やフィルタなどの費用を、年間3000円と仮定する。次に電気代だが、1日あたりの消費電力量を約2.5kWhと想定し、電気料金単価を約25円/kWh(一般家庭の平均単価)と仮定すると、年間の消費電力量は912.5kWh、電気代は22,812円と算出できる。

ただ、このシステムは日中に運用する必要はないので深夜電力で行う。すると電気代は半額になる。更にLEDと作物の距離を縮めたり、育成の過程で光量の強弱を調整するなどして更に半分とし、75%を節約する前提で計算すると、年間ランニングコストは8703円にまで圧縮できる。

この前提でグラム単価を計算すると、2.2円/gとなる。市販のジャガイモは0.6円/gなのでまだ3.7倍の開きがあるが、この程度なら趣味としては許容できるだろう。もちろん非常用としての価値はそれ以上に重要である。

その他もろもろ

種芋の味や栄養価は、市販されているそれと比べても同等かそれ以上なのだそうだ。特に注意すべきことはなく、普通に食べられる。皮は柔らかいのでそのまま食べられ、皮付近の栄養価の高い部分も味わえるので、むしろ好ましいと考えられる。

非常時には、太陽電池での運用が考えられる。2.5kWhを賄うためには、パネル容量としては600~700Wが必要である。一軒家の屋根に搭載されている3~4kWのものであれば、余剰電力で十分に運用が可能である。

2026年4月1日水曜日

サバイバル食料生産法:ウキクサの人工栽培

 

震災などで交通が途絶しインフラが破壊された時でも生き延びるため、一軒家程度の空間で食料を再生産する方法について考えてみた。その結果、難民などへの技術輸出も可能な方法が提案可能となったので、その内容を公開する。なお、結論としては、ウキクサを植物工場にて生産する、というものになる。

1. 基本的な考え方

震災の際、最初に考えられるのは当然備蓄であるが、これはいずれなくなるものである。つまり、耐用期間を延ばすには、その期間に比例して大量のスペースと多大な費用が掛かる。目安として数週間は備蓄で凌ぐとして、それ以上になった場合には食料再生産が必要となる。

食料として必要なのは五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)であり、特に炭水化物・たんぱく質が重要である。ビタミンミネラルは微量栄養素であり、サプリメントのように保存性の良いものがあるため、備蓄に与える負荷は少ない。脂質はモノを選べば保存性が良い(サラダ油の缶など)他、安価かつ少量で高カロリーなため、やはり備蓄スペースや費用を圧迫しない。

この前提で食料を再生産するなら、最も有望なのは植物工場である。鶏を飼う、魚を飼うといったことも考えられるが、非常時に備えるには普段の保守が大変である。

炭水化物・たんぱく質を有する植物としては、穀類、豆類、芋類が挙げられる。しかしこれらは植物工場では生産されていない。その理由は「光エネルギーの変換効率の悪さ」「栽培期間の長さ」である。試算によると、露地栽培に比べてコストが数十倍〜80倍に跳ね上がる。穀類豆類については「可食部の少なさ」(廃棄物の多さ、体積効率の低さ)、「受粉の手間」もネックとなる。

これに対し、素人でも簡単に扱え、炭水化物・たんぱく質への変換効率が高い植物として、以下のような候補を考えた。

  1. 微細藻類(スピルリナ等)
  2. ウキクサ(ミジンコウキクサ)
  3. キノコ・菌糸体
  4. 宇宙用超矮性小麦 背が低く体積効率の高い穀物。最近ではコメでも似たようなものがある。

この優劣を比較したものが、以下の表である。


食材 主な役割 炭水化物 タンパク質 留意すべき制限事項
微細藻類 超高密度サプリ・タンパク源 △ 不足 ◎ 最優秀 核酸過剰による痛風リスク(大量摂取不可)
ウキクサ ベースフード(主菜) ○ 優秀 ○ 優秀 シュウ酸の蓄積管理
菌糸体 繊維質・微量栄養素 × 消化できない △ 補完的 エネルギー源にはならない
宇宙用小麦 メインエネルギー(主食) ◎ 最優秀 △ アミノ酸欠乏 加工コスト、必須アミノ酸の不足


これらの比較より、単体で育成する場合にはウキクサが最適と判断する。

2. 詳細検討

一軒家程度の限られたスペースを活用して、個人(家族)レベルでウキクサを持続的に育成・収穫するための具体的なシステムと運用方法を以下に考察する。

2.1. ウキクサの種類

ウキクサにはいくつか種類が存在するが、食料再生産の目的においては、ミジンコウキクサが適している。その理由は以下の通りである。

  • 完全な可食部: アオウキクサなど他のウキクサに見られる「根」が完全に退化しており、植物体全体(100%)をそのまま食すことができる。
  • シュウ酸の少なさ: 一般的なウキクサ類と比較して、元々体内に蓄積するシュウ酸の量が少ない傾向にある。
  • 驚異的な増殖速度: 条件が揃えば2〜3日でバイオマスが2倍になるため、毎日の連続収穫に最適である。

2.2. 育成設備の構築

ミジンコウキクサは根が退化しており、体表から直接養分を吸収する。そのため、不織布などの培地すら不要であり、「ごく浅い水流をプラスチックバットの底に流し続ける」というNFT(Nutrient Film Technique)方式を採用可能である。これにより、雑菌やアオコの温床となる有機培地を排除し、システムの衛生状態を高く保つことができる。また万一それらが増殖しても、洗浄は簡単である。

  • 傾斜トレイの配置: 深さ2〜3cm程度の平らなバットを、水が流れるようにわずかに傾斜(1〜2度程度)をつけてラックに配置する。
  • ラックの超・多段化: バットをジグザグに水が流れ落ちるように配置し、ラックの段のピッチ(隙間)をLEDの厚みを含めて10cm程度まで限界まで詰める。これにより、高さ180cmのラックで18段という超高密度配置が可能となる。
  • 光源(弱光適応の活用): ウキクサは光飽和点が非常に低い「半陰生植物」の特性を持つため、強い光は不要、むしろ光阻害(白化)の原因となる。各段の天井部には実消費電力15W/㎡程度の極めて微弱なLEDテープライト(木漏れ日程度の明るさ)を設置し、1日12〜16時間の照射を行う。これにより照明コストと発熱を極限まで抑えることができる。
  • 液肥の循環システム: 最下段に小型の液肥タンク(数十リットル)を置き、小型の水中ポンプ(消費電力5〜10W程度)で最上段のバットへ液肥を汲み上げる。液肥は各段のバットを数ミリの薄い膜となって流れ落ち、再びタンクへ戻る。常に水が流れることで自然と酸素が巻き込まれるため、水が腐敗せず、エアポンプは不要となる。
  • 液肥の選定: アンモニア態窒素の割合が高い水耕栽培用液肥を使用し、シュウ酸の合成を抑える。
  • 収穫方法: バットの底を薄く流れる水面を覆い尽くしたウキクサを、シリコン製のヘラやスクレーパーを使って「ツルツルの底面から一気にこそぎ落とす」だけで完了する。不織布がないため、非常に衛生的かつ簡単である。
  • 持続的ループ: 収穫時は全てを削り取らず、常に3分の1程度のウキクサを残しておく。数日で再びバットを覆い尽くすため、毎日一定量の収穫ループが完成する。

2.3. ウキクサ食用時における問題点と解決法

シュウ酸の蓄積リスクとその除去法

ウキクサはシュウ酸が比較的多く、これをそのまま大量に食すると痛風・結石の原因となる。これを防ぐためには、「茹でこぼし」が最適である。シュウ酸は水溶性なので、茹でることでその量を30~50%減らすことができる。

但し、これによって水溶性ビタミンも流出してしまう。このため、ビタミン剤との併用は推奨される。

長期摂取時の栄養偏りと解決策

ウキクサは植物でありながらビタミンB12を含むなど「完全食」に近い性質を持つ。しかし、長期間(数ヶ月〜年単位)ウキクサのみを主食として食べ続けた場合、以下の栄養素が不足または偏るリスクがある。

  1. 脂質(必須脂肪酸)の不足: ウキクサは脂質含有量が少なく、カロリー源としては炭水化物とタンパク質に偏る。脂質不足は細胞膜の劣化やホルモンバランスの崩れを引き起こす。
  2. 一部のアミノ酸の偏り: 非常に良質なタンパク質ではあるが、単一の植物だけを食べ続けると、特定のアミノ酸(メチオニンなどの含硫アミノ酸)が相対的に不足する可能性がある。
  3. 微量ミネラルの欠乏: 育成に用いる液肥の成分に完全に依存するため、液肥に含まれていない微量ミネラル(ヨウ素、セレンなど)が長期的に欠乏する恐れがある。

【解決策】

  • 備蓄油の計画的消費: 脂質不足を補うため、備蓄してある食用油(オリーブオイル、ごま油など)を意図的に摂取・添加する。油は省スペースでカロリー密度が最も高い備蓄品であり、後述するサバイバル計画の要となる。
  • アミノ酸の補完(食べ合わせ): もし米や少量の乾物(豆類など)の備蓄が残っていれば、ウキクサ単体で食べるのではなく、組み合わせて食べることでアミノ酸スコアが改善される。
  • サプリメントの併用: 備蓄スペースをほとんど圧迫しない「マルチビタミン・ミネラル」のサプリメントを定期的に摂取し、微量栄養素の穴を確実に埋める。
  • スプラウトの並行栽培: ウキクサのシステムとは別に、ペットボトル等でごく小規模に「もやし」や「スプラウト(かいわれ大根等)」を栽培する。種子の備蓄は極めて省スペースであり、数日で新鮮なファイトケミカルや酵素の補給源となる。

3. 家族4人・1ヶ月間の運用シミュレーション(実践的サバイバルモデル)

平時のカロリーを全てウキクサで賄おうとすると、設備規模や一食当たりの摂取量が過大となることが試算の段階で明らかになった。このため、より現実的な設定として「総カロリーの制限」と「備蓄油によるカロリーの一部置換」を行い、これを前提とした必要資源量を計算した。

以下では、期間1ヶ月(30日)、家族4人(大人2人、こども2人)を想定している。

【サバイバル試算の前提条件】

  • 1日あたりの必要総カロリー:6,000 kcal(活動低下を考慮し、家族4人で1人あたり1,500 kcalの基礎代謝レベルとする)
  • 備蓄油によるカロリー補完:2,000 kcal/日(総カロリーの約30%を油(サラダ油など)で賄う。1日約220g、月間約6.6kgの油を消費)
  • ウキクサで賄うべきカロリー:4,000 kcal/日(油の補完により、必要な収穫量は総量の三分の二になる)
  • ウキクサ(乾燥)のカロリー:約350 kcal / 100g
  • 生ウキクサの水分含有率:90%
  • 1日の目標収穫量:乾燥重量 約1.14 kg (生重量換算で 約11.4 kg/日
  • 増殖効率:1平米あたり1日0.5kg(生)を収穫可能と仮定。

ウキクサ育成トレイの面積と設備規模

  • 必要面積: 11.4 kg ÷ 0.5 kg/㎡ = 約22.8 ㎡
  • 設備換算: 幅1.2m×奥行0.45mのスチールラック(1段あたり栽培面積0.54㎡)を、ピッチ10cmで18段重ねにした場合、1ラックあたりの栽培面積は9.72㎡となる。

【結果】 22.8㎡を確保するために必要なスチールラックは「2.5台(実質3台)」であり、部屋の隅や廊下の一角に設置可能なサイズとなる。

必要な水(育成用)の量

  • 初期水量: 各段のバットを流れる数ミリの水膜と、最下段の循環用タンク(約30L)を合わせても、システム全体で必要な水量は約50〜60リットルに収まる。水耕栽培でしばしば問題となる重量は軽減され、床の補強は不要である。
  • 月間消費水量(補充用): 植物の蒸散と収穫水分(1日約10.2L)に加え、水面からの蒸発分があるが、ウキクサが水面を覆うことで蒸発は抑えられる。1日約15〜20リットル程度の消費となる。
  • 1ヶ月の必要水量: 20L × 30日 = 約600 リットル。この量なら、水道が止まっていたとしても、毎日川に水を汲みに行って浄水して補充することは可能だろし、雨水の利用にも道が開ける。

液肥の量

  • 1ヶ月の必要量: 補充する水(600L)に対して500倍希釈液肥を使用。月間消費量は 1.2 リットル (A/B液各600ml)であり、ペットボトル1〜2本で足りる。

電力と太陽光パネルの出力(ウキクサの弱光適応の威力)

ウキクサは光飽和点が低い半陰生植物であるため、強光は不要(むしろ有害)である。そこでLEDの実消費電力を1平米あたり15Wに設定する。

  • 照明およびポンプ電力
    • LED(22.8㎡ × 実消費電力15W = 0.34 kW)
    • 循環用小型水中ポンプ(約10W × 3台 = 0.03 kW)
    • 合計瞬間消費電力:約0.37 kW
  • 1日の消費電力量
    • 0.37 kW × 14時間 = 約5.2 kWh / 日(月間約156 kWh)
  • 必要な太陽光パネルの出力
    • 日本の平均日照時間(1日3.5時間)で発電するには、約1.5 kWのパネル出力で足りる。これは屋根の工事すら不要で、庭先やベランダに自立型のソーラーパネルを数枚並べるだけで到達可能な規模である。

茹でるためのエネルギー(電力・燃料)とゆで汁の量

毎日の生重量11.4kgのシュウ酸を抜くため、同量程度の水(約13リットル)を足し、合計約25kgの物質を常温(20℃)から沸騰(100℃)させる。

  • 加熱に必要な熱エネルギー: 25kgの水を80℃上昇させる熱量は約8.4 MJ = 約2.3 kWh(熱量換算)
  • 手段別の必要燃料(1日あたり)
    • 電気(IH等・効率80%の場合): 約2.9 kWh / 日 (月間約87 kWh)。LED・ポンプの電力と合わせても、1日の総消費電力は8.1 kWhとなり、約2.3 kWの太陽光パネルがあれば、「育成から調理まですべての電力を自給可能」となる。
    • カセットコンロ(効率50%の場合): 1日あたり 約1.4本 のボンベを消費する(月間約42本)。
    • 薪・固形燃料: 1日約1kg弱の薪が必要。
  • ゆで汁(排水)の量
    • 1日あたり約10〜15リットル(月間約300〜450リットル)。
  • 摂食量の物理的限界と「食べるための加工」
    • カロリーの三分の一を油に頼る前提で、食べるべき生ウキクサの量は1日11.4kgとなる。4人で分けると1人1日あたり約2.8kg、1食あたり900g弱となるが、水分の多い状態ではまだ完食は苦しい。これを解決するのが以下のプロセスである。
    • 茹で上げ後の「強力な搾水(脱水)」
      • 茹でて柔らかくなったウキクサを強力に絞り、ペースト状にして水分と体積を大幅に減らす。
    • 天日干し等による「乾燥・粉末化」
      • 乾燥させれば、1人1日あたりのウキクサは約285g(乾燥重量)にまで圧縮される。これをすり鉢で粉末にする。
    • 備蓄油との混錬による「ウキクサ・ペミカン」の完成
      • 粉末にしたウキクサ(285g)に、1日の割り当てである備蓄油(約55g)を練り込み、団子状にする。これにより、手のひらサイズの固形食で一食分の十分なカロリーとタンパク質を摂取できる「ぺミカン」が完成する。
      • 味や好みにより、塩、その他の調味料を混ぜるのも良いだろう。

4. 応用:貧困地域へのスキーム輸出

このスキームは、水、太陽電池、液肥の必要量が少ない、高価な機材が必要ない、必要知識が少ない等により、貧困地域での簡易農業として成立する可能性が高い。水が少なくて済むことより、中東などの砂漠地帯や、モンゴルなどの乾燥した高原は候補になるだろう。

可能なアレンジとしては、茹でこぼし水の再利用が考えられる。これにより、更に水の必要量を減らすことができる。

一日に必要な水の量は、家族4人に対して、トレイの補充20Lと茹でこぼし用13Lの、計33Lである。このうち茹でこぼした水は、乳酸カルシウムを添加し攪拌することで、シュウ酸をシュウ酸カルシウムとして固体化し、不織布フィルタで濾すことで、飲用にすることができる。これは茹でた際にウキクサから溶け出た水溶性ビタミンを含んでおり、栄養豊富である。シュウ酸カルシウムはAmazonなどで安価に買うことができる。

5. 総括

シュウ酸の問題は品種改良である程度解決可能かもしれない。だとすると茹でこぼしが必要ないので、更に簡単にすることができるだろう。

そもそもの発想は震災時のサバイバルだったが、奇しくも今話題のイランやアフガニスタンへの技術輸出にも話が繋がる結果となった。大げさな言い方だが世界平和にもつながるアイデアだ。まだまだ荒い案だろうが、ぜひ検討して頂きたいものだと思う。

なお一つだけ未検討なのは「味」だ。さすがにウキクサを食べたことはないので、ここは更にアレンジが必要かもしれない。

2026年3月28日土曜日

豚まん論争の科学的・定量的考察

 
実業家の河原由次氏が、豚まんを新幹線内で食べたところ注意された、という呟きをしたことに対して論争が起こっているが、それを科学的・定量的な視点で考察する。

まず、原典を以下に提示しておく。

https://x.com/i_am_kawa_chan/status/2029033115440824785

次に、マナーやルールというものには段階がある。

➀罰則のある法規制 
➁罰則のない法規制
➂業界やその場所の所有者などによるルール化
➃注意喚起(ポスターや呼びかけ等)
➄マナーの範疇
➅原則自由

である。今回、法律は無論、啓発ポスターのようなものはなく、JR東海に対しての質問でも『皆様に快適にお過ごしいただくため、お客様同士でご配慮いただくものと考えております』と回答されている。

https://sirabee.com/2026/03/17/20163529799/

ここまでの段階において、少なくとも現状では➀➁➂➃はなく、➄か➅の範疇に入っているのだと言える。

ただ、これに対して、最近では「スメハラ」すなわち匂いに関してもハラスメントと言われる時代になってきているので、これを新たに➃に昇格させるべきかも含めて、議論はあっても良いのだろう。その意味で、これが論争になっているのは妥当と考える。

つまり➃➄➅のどれかということになるのだが、それをどう考えるかについては、以下の三つの視点が必要だと考える。その各々について評価し、その結果を総合的に考えて判断すべきということだ。三つのうちどれかが突出しているか、平均として高いスコアになっているほど、その禁止の程度は強くなる。

その三つの視点とは、

  • それを不快と思う人の多さ
  • それから自由意思で逃れられるか
  • その行為をしなくても困らないことか、あるいは代替手段があるか

である。今回の豚まん騒動について各々を当てはめてみると、次のようになる。

  • この場合、「豚まんを(嫌いで)食べない人」ではなく、「自分が食べない時に豚まんの匂いだけを嗅がせられるのを不快に感じる人」という定義になる。生成AIに訊いてみたところ、これは20~30%に上るのだそうだ。私が事前に想像していたものより、これは多かった。マナーや自粛のレベルとしては、単独としてこれだけあれば十分である。
  • 新幹線の場合、乗車時間が長く、指定席が大部分である。また自由席にしても、空いていれば移れば良いが、当然そうでない場合も多い。つまり「逃れられない度」は飛行機に次ぎ高い方である。
  • 豚まんを通常の食事として食べる人もいるだろうが、腹が減っていて食べるのを我慢できないとしても、匂いの少ない普通の駅弁は幾らでもあるのであって、代替性は高い。むろん嗜好で食べるのであれば、更にその度合いは高いと考えられる。

これらを総合すると、少なくとも➅ではなく、➄か➃に相当すると考えるのが妥当である。

似たような話として、日本維新の会の藤田文武衆院議員が、たこ焼きを車内で食べた旨の投稿をしたところ、多くの批判が寄せられたという話があった。そのたこ焼きのパッケージには、「新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」とのシールが貼られていた。

https://www.j-cast.com/2025/02/15501619.html

つまり、既に➃に相当すると判断する企業も出てきているということだ。ここから考えても、やはり➄と➃の境目にあると考えるのだ妥当だろう。

毛色が違うようにも思われがちだが、タバコのマナーも似たようなものだ。吸う人でも他人の煙は嫌という人は多い。煙から逃れにくい室内や車内、屋外でも繁華街では禁止されていることが多い。また禁止されていない所であっても、近くに人がいるときには一言断るのがマナーだ。基本的には嗜好品であり、代替性は高い。タバコには健康被害という実害があるけれども、その心配も含めての「不快」と考えれば、考え方は同じである。

河原氏の発言が炎上した理由は、世間は➄➃の考え方を持つ人が多いのに対して河原氏の考えは明らかに➅だったためそのギャップがあったから、というのが一つの仮説になる。だが、個人的にはもう一つあると考えていて、それは河原氏の投稿が高圧的で下品であることに対する反発があるのではないか、ということだ。

———以下引用———

こういう 自分の価値観をいきなり他人に押し付ける人、どう思う?

新幹線で食べる人がいるから 駅であったかい豚まん売ってるんだろ?

食べちゃダメなら まず新大阪駅の551閉めろよ。

それか 「新幹線持ち込み禁止」 って看板でも出しとけ。

豚まん一個で、東京まで気まずい空気流れるの日本くらいだろ。

大阪人に「551食うな」は喧嘩売ってる。

———引用終わり———

相手の価値観と自分の価値観が対立した時、強い方が勝つ、というのはマナーではない。単なる強者の理論である。マナーとは「相手をおもんばかること」であり、自分の価値観に自信があったとしても反論をするのは悪手である。対話して落としどころを探るか、自分が引くかだろうが、彼はそのどちらもせず、反論して相手を黙らせ最後まで食べ切った。

この投稿の中で彼は「自分の価値観を押し付けられた」と感じたようだが、実際にはその行動によって「自分の価値観を押し付けた」。つまり、豚まんがどうこう以前の問題として、その行動自体がまずマナー違反である。そしてその価値観も、上の分析の通り相手の方が正しかった。更に、わざわざ(多くの他人の目に晒される)SNSに投稿して一方的に非難をした。こういった度重なるマナー違反が、炎上の原因のもう一つなのではないか、と思うわけだ。

私はこの人の事業と関りを持っていないが、もし持っていたらこの投稿一つでお付き合いを考え直すだろう。対岸の火事と思わず、今一度自らを戒めよう、とすら思った次第である。

2026年3月23日月曜日

公約のルーブリック

 

ルーブリックとは、

「評価の観点(何を見るか)」と「到達レベル(どの程度できていれば何点か)」を、あらかじめ言語化して共有する“採点表”

のことである。論文や記述式テストのように「正解/不正解」だけで測りにくいものを、公平・透明・再現性のある形で評価するために使用する。チェックリストのようなものだが、Yes/Noではなく段階があるところが違う。こうすると、記述式テストを複数の人が採点するときのばらつきを抑えることができ、つまりは客観性のある評価ができる。入試や資格試験ではよく使われる手法である。

さて、今回自民党が圧勝したわけであるが、自民党の公約は各党の中でもいちばん具体性に欠ける部類に入る(ように読めた)。それでもなぜ支持が集まったのかを検証するため、生成AIに「公約のルーブリック」を作ってもらった。

これは、公約の中身自体を批判するものではなく、「公約としての体裁が整っているか」を見る指標であることはまず明らかにしておく。その基準は以下の通りだ。


ルーブリックの観点(各10点×10=100点)

A. 将来像(10)

  • 10:10〜20年後の社会像が言語化され、短期政策との整合も説明
  • 5:方向性はあるが、将来像が抽象的/短期の寄せ集め
  • 0:スローガン中心で、将来像が不明

B. 重点・優先順位(10)

  • 10:トップ優先3〜5政策、理由、トレードオフが明示
  • 5:政策は多いが優先順位が曖昧
  • 0:百科事典化、何が最優先か不明

C. 実施手段(10)

  • 10:法改正・制度設計・所管・実施主体まで具体化
  • 5:やること列挙だが実施主体が曖昧
  • 0:タイトルのみ

D. 工程表(10)

  • 10:いつ何をするか(法案提出・開始時期・段階導入)
  • 5:期間感はあるが、マイルストーンが薄い
  • 0:「検討」「会議体」止まり

E. KPI(成果指標)(10)

  • 10:測れる指標(例:税収・賃金・達成期限)を複数提示
  • 5:一部のみ指標あり
  • 0:評価不能

F. 財源・コスト(10)

  • 10:減税・給付・投資の財源を体系的に提示
  • 5:一部だけ財源言及
  • 0:財源に触れず「検討」中心

G. エビデンス(10)

  • 10:統計・研究・過去検証・国際比較を根拠として提示
  • 5:根拠はあるが限定的
  • 0:根拠なし

H. リスクと副作用(10)

  • 10:副作用(インフレ、金利、格差、権利制約等)と対策を記載
  • 5:注意書き程度
  • 0:副作用に触れない

I. 説明責任・検証(10)

  • 10:実行後の検証方法、修正条件(PDCA)まで記載
  • 5:検証の言及はあるが具体化が薄い
  • 0:検証なし

J. 共創・意思決定プロセス(10)

  • 10:国民参加・熟議・第三者監視など制度的に設計
  • 5:会議体の設置は書くが、設計が薄い
  • 0:プロセスなし/「国民会議」など名称のみ

一つ一つを読めば、至極当たり前のことだと思う。これをベースに、各党の公約を評価してもらった。それが以下だ。


  • チームみらい:66
  • 中道改革連合:62
  • 国民民主党:58
  • 日本共産党:56
  • 日本維新の会:47
  • 自由民主党:44
  • れいわ新選組:41
  • 参政党:39

私の感覚と概ね合っている。一応、恣意でないことの確認のため、早稲田大学デモクラシー創造研究所によるマニュフェスト比較での評価(上記ルーブリックではなく独自の評価)を貼っておくと、以下のようになっている。

自民党:30点 維新:30点 中道改革連合:45点 国民民主党:40点 参政党:30点 共産党:40点 れいわ:30点 チームみらい:70点

細かい凹凸はあるものの、チームみらいがトップ、次が中道、以下が団子で、自民党はこの団子の中にいるということが分かる。65点を合格とするなら、どちらの評価でも合格はチームみらいだけで、他はダメダメ、ということが分かる。これはあくまでも公約としての体裁を問うているものだが、それがこのレベルなのであれば、実現可能性とか効果とかを論じても仕方がない。

さて、どちらの指標にしても、チームみらい以外は自民党も含めて団子状態、しかも落第点だったわけだが、今回は自民が圧勝した。なぜそうなったのか、

これについて、早稲田大学のマニュフェスト比較「出来栄えチェック」の点数と比例投票率との相関係数を主要8党で比較したところ、相関係数は0.19(ほぼ相関なし)という結論に達した。これと同じ手法で、上記のルーブリックとの相関係数を比較してもらったところ、‐0.07と、これまた相関なし、と出た。

それでは、と、自民党の公約への賛同率を、自民党への投票者と他党への投票者で比較しようとしたのだが、データが揃わず断念した。ただ、消費税減税についてだけは出口調査があって、自民党支持者の方が現状維持比率が高かった。つまり消費税減税には反対の人が多かったわけだ。

これに関して考えられる可能性は二つある。第一は、公約は重要視されておらず、その他(イメージや直感など)で選んだ人が多かったのだろうという考え方。第二は、読む側にリテラシーがなく、公約をなんとなく(勝手に、自分の都合の良いように)解釈して、自民が良さそうに見えた、という考え方である。まあどちらにしても、公約が役に立っていないという点で変わりはない。

まあ、公約はその後の演説やSNSの元ネタになるので不要とまでは言わないが、公約の出来が悪くても国民は気にしないのだ、ということが分かり、何とも言えない気分になった次第である。

2026年3月22日日曜日

AIから自己防衛するDB

 

生成AIには、ハルシネーションの他に、「命令を守らない」という問題が存在する。つまり、指示をして「ハイ分かりました」と答えて全然違うことをする、という問題がある。そんな中でも警戒すべきは情報漏洩である。AIに一度全てを見せてしまうと、ちょっとした拍子に情報を漏らしてしまう恐れがある一方、だからといって開示しなければ存在しないものとして扱われてしまう。これは痛し痒しと言える。これを改善するには、データを読まれる側にも工夫が必要である。

つまり、データを全部渡してしまうのではなく、「こんなデータある?」というAIの問いに対して「あるよ」とだけ答え、中身についてはまずは答えないとか、「あるけど何に使うの?」と聞くとか、そういう方向性があるのではないか、というわけだ。つまり、それがDBかWebページか、あるいはGitのようなソースコードかはさておき、何かしらのインテリジェンスを上にかぶせ、AIに相対させるAPIはそこを経由するものとする、というのがその構想である。

AIを通じてしかデータを渡さないのであれば、出す側のAIにはそれなりの知恵を授けておけば、最小限の被害で済む。例えば相手のAIが信頼できる相手か、課金はしているのか、聞いている内容がコンプラ違反ではないか、などをチェックして、生データは出さないが統計結果は出してやるとか、匿名で出してやるとかの判断を行うと共に、相手のAIとの交渉まで行う。

昔の感覚で言うと、これはオブジェクト指向型とも言える。だがAIが絡むことでその判断が高度になり、API経由でのデータやり取りだけでなく「交渉」まで行うとなると、これはエージェント型とでも言うべきアーキテクチャだろう。そしてこういう形態は、DB以外でも色々広がっていくに違いない。

そのやり取りを想像してみると、ちょっと人間臭くて笑ってしまうのだが、おそらくこういう方向性は次第に提案されるものになると思う。今から備えておいても損はない。

2026年3月21日土曜日

琵琶湖の水止めたろか


 映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の中で、琵琶湖の水を止めて(京都大阪方面への放水を止めて)大阪を困らせる、しかし滋賀県の大部分は水没してしまう、という描写があった。これは関西ではよく言われる冗談でもある。「琵琶湖の水止めたろか」「滋賀が先に水没するで」というのが定番である。

これが本当なのか、Geminiに調べてもらった。

まず、琵琶湖の水を止めると滋賀県が水没するというが、水位が何m上がったらどの程度水没する、という目安を調べてみると、

• +1m 〜 1.5m【現実的な大災害レベル】 • +3.76m【観測史上最悪のリアル水没】1896年(明治29年)の「琵琶湖大洪水」 • +約30m【限界突破・京都への漏水レベル】山を貫通しているJRの鉄道トンネルや高速道路のトンネル群に水が到達し、そこを水路にして京都方面へ水が抜け出す • +約80m【完全なる「琵琶湖県」の誕生】

というレベルなのだそうだ。琵琶湖には、大小合わせて約120本もの川から水が流れ込んでいる一方、の水が外へ出ていくための自然の出口は、南端にある「瀬田川」ただ1本しかない。この一本が京都に入ると宇治川と名前を変え、京都を出ると桂川・木津川とつながり淀川になる。淀川における瀬田川の流量は約50%である。つまり瀬田川の水を止めても淀川は枯れない。

次に、琵琶湖の標準的水位に対してどの程度水を放出できるか、その限界について調べてみた。すると、法的な限界としてはマイナス1.5m、物理的な限界(排水口の高さ)はマイナス4.8mなのだそうだ。

また、琵琶湖に流れ込む水の量は、平均して0.02m分になるのだそうだ。つまり毎日0.02mづつ水位は上がっており、その分を下流に放出しているのが現状なのだそうだ。

ここから考えると、1m水位が上がるには50日掛かる。映画にあったような水没を30mとすると、そこまでには1500日(4年)掛かる計算だ。映画がこれを誇張していることは明らかである。

水没せずに大阪を苦しめるためには、まず限界まで水を放出しておいてから止めるのが良いだろう。すると、マイナス4.8mまで放出すれば、それが元の水位に戻るのには240日(約8ヶ月)である。

そのためには、瀬田川の放出量を最大にする必要があるが、その限界値は一日に0.1mだそうだ。つまり4.8m放出するには48日掛かる。そしてこの程度の量では京都大阪が洪水になることはまずないのだそうだ。

つまり、滋賀県は戦略的にまず48日掛けて水位をマイナス4.8mまで下げておけば、その後240日は全く安全に放水をストップすることができる。

一方、大阪がどの程度渇水に耐えられるかをGeminiに推測させてみると、

  • 1〜2日目:取水不能とパニックの始まり
  • 3日〜1週間:都市機能の完全停止(衛生の崩壊、医療・経済の停止)
  • 1週間以降:残されたわずかな水源への依存(他の川からの流入に依存するが圧倒的に足りない)

となり、わずか1週間で壊滅的な打撃を与えられることが分かった。法的な限界であるマイナス1.5mまでの放水をしておいて、そこから+0.5mまで40日耐えれば、滋賀県の勝ちだ。

というわけで、「琵琶湖の水止めたろか」作戦では、圧倒的に滋賀県が有利、というのが結論となった。滋賀県の皆さま、おめでとうございます。

2026年3月15日日曜日

シュレッダーくずバイオトイレ

非常用トイレの構想は過去に何回か書いているが、ここで考えるのはもっと現実的なもので、極端な話、明日大震災が起きても使えるものだ。知恵として覚えておいて欲しい。

非常用トイレとして、高分子吸収剤によるものが市販されている。これは赤ちゃんのおむつや生理用品などと同じく、水分を吸収することで腐敗を押さえ、液状のものを固定するものだ。だがこれらは二つの大きな欠点がある。第一は高いランニングコスト、第二は大量の保管スペースが必要なことだ。

非常用トイレの例として、アマゾンのベストセラーである「トイレの女神プレミアム」は、調査時点で100回分が7000円である。つまり1回70円。成人のー日の平均排便排尿数は7回なので、一日当たり490円掛かる計算である。それをビニール袋に入れ、凝固剤を入れて固めると、ビニール袋に入れた排泄物の体積は1日で5L程度になる。家族4人なら20L、ペール缶1つ分だ。つまり毎日ペール缶1個が増えていくことになる。南海トラフ級だと下水復活には月単位で掛かると思われるが、これで30日過ごすと

  • 30日x4人x7回=840回
  • トイレの女神9箱=63000円
  • 20Lx30=600L (ユニットバス2~3杯分)

と、けっこうとんでもない量になる。多くの人はここまで考えていないだろう。100回分を1つ買って安心している程度だ。

この問題を解決するために有効なのが、バイオトイレないしはコンポストトイレと言われているトイレである。トイレにも色々な方式があるが、震災時に使い物になるのはバイオトイレだけだ。その理由は、微生物分解による減容にある。

バイオトイレは、おがくずの上に排便し、その後おがくずを撹拌して放置する。すると微生物の作用で便が分解され、水蒸気とガスになってほとんど消失する。このため、廃棄物の体積を極端に少なくできる。

だがこのトイレにも欠点はあって、第一は大量のおがくずが必要なこと。第二は排便後の撹拌が必要なことだ。非常時に備えて大量のおがくずを用意するのは現実的ではないし、撹拌機能を持ったバイオトイレは20万円もする。

これらを踏まえた本稿での提案は、以下のようなものだ。

  • 事前準備として、丈夫なビニール袋を用意しておく。これは「業務用」「極厚」などのキーワードで調べれば直ぐに見つかる。大きさは45L。これは一般的なゴミ袋と同じサイズである。ただ、非常用のポータブルトイレ(折りたたみ式など)を持っている人は、20Lの方が良いだろう。気分の問題ではあるが、濃い色のもののほうが良い。枚数は、最低で3日分として、人数✕21枚。4人家族なら84枚だ。1週間分として200枚あれば足りるだろう。なお、持ち手は必要ない。
    • 丈夫でないビニール袋でも代用はできるが、丈夫なものであることが望ましい。理由は後述する。
  • もう一つ、事前準備として望ましいのは、手回し式のシュレッダーを買っておくことだ。これは通販で数千円で買うことができる。
    • 当然、電源確保が困難と思われる中では、手動式一択である。
    • シュレッダーには縦方向しか切らないものも多いが、この場合には横方向も切る、いわゆる「クロスカット」と呼ばれているタイプにする。更に「マイクロカット」といわれる、くずのサイズが小さいものがオススメである。
    • もしなくても、ハサミと根性があれば何とかなる。
  • 非常用の折りたたみトイレなどは、あれば便利だが、なくても問題ない。普段使用のトイレを流用できる。
  • 災害が発生したら、シュレッダーくずを作る。分量は、一日分として人数✕8.4Lである。これをとりあえず3日分作る。家族4人として、3日分で約100Lになる。これは一般的な段ボール(50L)で2箱分になる。
    • できれば光沢紙は避ける。ビニールコーテイングしてあるものなども好ましくない。つまり、新聞紙や週刊誌は適しているが、折込チラシは適していない。
    • シュレッダーがない場合は、これをハサミでやることになる。これが根性が必要な所以だ。
  • トイレには件のビニール袋を被せておく。やり方は他の非常用トイレと同様である。
  • ここに、あらかじめコップ3杯分、約600mL程度のシュレッダーくずを入れる。
  • その上に用を足す。そしてまた600mL分のシュレッダーくずを入れる。
    • シュレッダーくずの量は、個人差があるだろうし、大と小でも違うだろうから、様子を見ながら加減する。
  • 入れ終わったら、ビニール袋の口をすぼめて持ち、もう一方の手で排便をシュレッダーくずとよく混ぜ合わせるように揉む。
    • 「丈夫な」ビニール袋を使う理由はここにある。万一破れたら悲惨な目に遭うからだ。また後述するように、繰り返し使うためでもある。
  • よく混ざったら、口を開けたまま、できるだけ温かい場所に放置する。トイレには次のビニール袋を被せる。
    • 口を縛ってはいけない。水蒸気が抜けるようにする必要がある。
  • このビニール袋は、数日放置している間に発酵し減容する。ある程度減容したら再利用する。この際、様子を見てシュレッダーくずを継ぎ足す。
    • 目安は、糞便臭がなく、水分が適度に抜けている状態である。土と同程度かそれ以下が望ましい。
    • 発酵減容が何日掛かるかは、季節によっても変わる。夏場は速く冬場は遅い。加熱できるバイオトイレの場合は一日で終わるそうだが、加熱がない場合は数日から1週間程度は掛かると思われる。なお、発酵中は発熱するので、ビニール袋同士は寄せて置いたほうが良い。
  • ビニール袋が一杯になったら、やはり数日放置し、糞便臭がなくなったら土に還すことができる。これは有用な肥料になる。
    • なお、通常時は燃えるゴミに出せる。中身のみトイレに流すのもOKだろう。

要するに、バイオトイレで使うおがくずをシュレッダーくずで代用する、というアイデアである。シュレッダーくずの原料は紙なので、おがくずと同様の効果が期待できる。そして紙は現代社会のいたるところにあるので、あらかじめ準備しなくてよい。また、バイオトイレでは専用の撹拌レバーがあるが、これを手動で行うことにより、高価な専用のバイオトイレを買う必要もなくなる。

バイオトイレの場合、毎回おがくずタンクの全量と混ぜてしまうのだが、これを一回分ごとに小分けにするというのもこのアイデアの特徴だ。バイオトイレの場合、毎回全量と混ぜるが故に、おがくずタンクの量で使用可能人数の上限が決まってしまうのだが、このアイデアの場合は毎回入れ替えるため、何人でも対応できる。

一般的な非常用トイレに比べて手間は掛かるのだが、発酵による減容という特徴により、ある程度で保管場所の増加が止まる点が大きな違いだ。もし3日で減容が完了するとなると、ビニール袋の分が増えるとしても、家族4人で200L程度で頭打ちになる。これはユニットバス1杯で納まる程度である。

またこの応用として、市販されているバイオトイレ用の発酵促進剤を混ぜてやると良いかもしれない。これも通販で買うことができる。

2026年3月6日金曜日

日本と世界の右傾化とその理由2:恐ろしい現実

 

日本と世界の右傾化とその理由

の続き。世界的な国粋主義、自国第一主義、覇権主義、暴力肯定、秩序破壊の傾向に関し、その原因について考えてみる。なお、けっこう重い話ではあるのだが、あくまでも『根拠なき自説』であるので、気軽に聞いて頂きたい。

世界的な右傾化の原因は、経済格差や将来への不安が引き起こすとされてきたが、経済格差・軍事力格差について調べてみたところ、米・中以外はほとんど団子状態で、あまり格差が開いているとは言えないことが分かった。グラフは、左がGDP、右が軍事費である。

そこで調べてみたところ、近年では更に根本的な原因として「社会的地位の低下への恐怖」説が出てきているそうだ。というのも、そう言われてみると、世界同時多発的とは言え、各国にはそれぞれそういう事情があった。

  • アメリカ:白人低所得者層の衰退=白人以外の層との相対的な格差縮小
  • 日本:長い経済停滞により国際的地位が低下
  • 欧州:難民の急増大、EU化による各国のアイデンティティ低下
  • ロシア:ソ連崩壊と再編、周辺国が次々とEU/NATOに接近
  • イスラエル:宗教的保守層の増大に伴う世俗派(エリート層)の相対的地位低下
  • イラン:英米によるクーデターによる傀儡政権設立への不満(それを転覆したがまた圧力が掛かっている)

中国、インド、中南米、オセアニア、アフリカは事情が違うように思う。中国とインドは、成長に見合わない国際的地位への不満があると思われるし、中南米は単純に腐敗政治への不満、アフリカは経済成長に伴う反植民地主義の復活、オセアニアにはほぼ理由がない。

そういう目でそれらを俯瞰して見ると、やはり「社会的地位の低下への恐怖」の強い国ほど右傾化の程度も強い傾向を感じる。

そこで、「社会的地位の低下への恐怖」の強さを国別に定量化できないかとGeminiに聞いてみたところ、こんなグラフを出してくれた。

1990年と2023年の違いを2軸でまとめている。横軸は各国の国際的ステータスの変化、縦軸は国内でのステータスの変化を指標にしたものだ。国内ステータスというと意味が分からないが、これは労働者階級(モノづくり階級、中間層)のステータスを意味している。

ロシアは国内ステータスが驚異的に落ち、日本は国際的地位が大いに落ちていることが分かる。米国とヨーロッパは団子状態だが、国内テータスが日本以上に低下している。中国は国際的ステータスが大いに向上したのに、国内ステータスは落ちている。インドはどちらもあまり変化がない。

あまり明確な結果は出てこなかったが、面白いのは(面白くはないのだが)、何れの国も国内ステータスは低下しており、向上している国がなかったというところだ。

労働者階級の地位が低下している理由は、グローバル化による労働力の価格破壊技術革新における中間層の空洞化などが考えられるが、どちらも当然の成り行きであると言える。

つまり、国内の格差拡大は歴史的に必然的なもので、止めようがないし、止める理屈もない。また当面はこの傾向は続く、つまり格差は更に拡大していく。生成AIの発達により、これはホワイトカラーにも広がり、一部の管理職や起業家、資産家といったエリート以外は皆、相対的に社会的地位が落ちていくだろう。

それがどこまで続くかだが、生成AIの予測によると、

  • トップ1〜5%(資本家・AIオーナー層): プラットフォームの所有者、大規模資本家。富の大部分を独占する。
  • アッパーミドル15〜20%(AIを管理・活用する層): 高度な意思決定、AIシステムの維持、人間同士の高度な交渉を行う層。彼らまでが「豊かな階級」として生き残る。
  • アンダークラス70〜80%(エッセンシャルワーカー・ギグワーカー・非就労者): AIに代替されない肉体労働(介護、物流、インフラ維持)や、アルゴリズムの指示で動く細切れの労働(ギグワーク)に従事する層。

程度で落ち着くと考えられるのだそうだ。アンダークラスの割合は今は40%程度だが、それが倍程度になると見込まれるわけだ。また、労働分配率は更に低下し、現在の50~45%程度から40%程度にまで下がると考えられる。

この数値を今の日本に当てはめてみると、アンダークラスの年収は190万円、アッパーミドルは670万円、トップは1690万円と算出された。アンダークラスの年収はもはや生活保護レベルであるが、それが全国民の80%になる、というわけだ。

更に言うと、この時のジニ係数は0.71であり、これは現在の南アフリカ(0.63)を遥かに上回るとんでもない格差になる。これではエリートも困るので、ベーシックインカム導入に踏み切るしかないだろう。しかし元手が人口の2割しかいないので、額は限られる。一人年間100万円を配るとしても、ジニ係数は0.60までにしか下がらない。これは「暴動はギリギリで起きないが固定化されたディストピア」になる。

この傾向は国内固有ではなく、世界的傾向である。そしてこれは格差拡大であり、国民の大部分が飢えるため、暴動が起きやすくなる。新興国ではこの傾向はさらに顕著になり、平均所得が下がる。これをシミュレーションしてもらったところ、

  • トップ層(上位5%): 約1,580万円〜
  • ミドル層(上位15%):約140万円〜200万円
  • アンダークラス(下位80%): 約24万円

月収ではなく年収が24万円である。もちろん物価は違うのだが、これは今のスラム層と同程度である。スラム層は今世界に7億人いるとされているが、これが40~50億人になるという予想が出ている。

世界人口の半分がスラムというのはちょっと信じがたい。そもそものドイツの右傾化のきっかけはシリア難民の受け入れだったが、その規模が7倍になればもはや拒絶しかないし、さりとて難民も必死なのだからそこでは武力衝突が起こってもおかしくない。それも、難民が数の暴力で押し切ろうとすれば、EU側も本気で戦わなければならない。それこそ数百万人単位の大量虐殺(虐かどうかは定義次第だが)が、何回となく起きる可能性も出てくる。

そういったスラムでは出生率は落ちるが、今既に生まれている女性が適齢期になって子供を産むので、しばらくは人口は増加する。それが落ち着いてくるまでには数十年掛かるだろう。

今回は世界の右傾化の理由を順に調べていったのだが、もはや右傾化が好ましいとか好ましくないとかの次元の話ではなくなってしまった。世界が急速に貧困化していく中での断末魔、あるいは世界再編の一環であると考えると、右傾化なんてのは序の口で、もっと厳しい、生々しい現実が待っているのだと言える。

2026年3月3日火曜日

600mmパレット引っ越し規格

 少子高齢化対策の一つの手段として、コンパクトシティがあることは以前も述べた。これに関して非常に重要なのは、住居を気軽に移転できることだ。だが現実には引っ越しには高額の費用と多大な手間が掛かる。

なぜ費用が掛かるのかと言えば、間違いなく人件費の都合である。だからこの解決策はロボットによる自動引っ越しを実現させることである。だが、人間型ロボットに引っ越しを任せるのはまだ心許ないし、かなり先の話だろう。そこで、ここでは万能の引っ越しロボットを考えるのではなく、ロボット引っ越しに適した『規格』を考えてみることにする。

そこで考えたのがタイトルの600mmパレットだ。これは600x800mm、高さ20mmのパレットで、引っ越し用家具はこのパレットに載せることを条件とする、というものになる。このアイデアに沿った規格とは、以下のようなものだ。

  • 引っ越しに使う家具、段ボールなどは全てこの600x800mmパレットにはみ出すことなく載せられることを条件とする。なお、高さはとりあえず900mmを上限とする。
    • このパレットには囲いが付けられ、転倒や脱落を防止する。
    • 高さが900mm以上の家具は、上下2分割、3分割として、各々を運ぶ。また分解・積み重ねもロボットが行う。
  • このパレットを載せてトラックと家の間を行き交う運搬ロボットを開発する。
    • 類似のロボットは既に世の中に多く存在しているが、整備された工場ではなく段差や傾斜のあるところを移動するため、水平を保つために足回りは新規開発が必要である。
  • 引っ越し元と引っ越し先の家に対し、以下を確認する。
    • 段差が規定内であることの確認。パレット運搬ロボットは50mm程度の段差は乗り越えられるように作るが、そうでない場合は段差を克服する措置(15°以内の傾斜など)を事前設置することができるかどうか。あるいはエレベーターの有無、階段しかない場合は搬送レールを取り付けられるかどうか。
      • 搬送レールはこのロボットのために開発する。
    • 玄関から全ての部屋に至るアプローチにおいて、パレットを載せた運搬ロボットが通れることの確認。これは角を曲がること、ドアを開けたまま固定することを含む。
    • 多段の場合は小型フォークリフトが積み重ねるため、そのための作業スペースがあることの確認。積み重ね用フォークリフトの設計は別途行う。

これらが確認できれば、搬出と搬入、また家具配置の一部までは全てロボットが行えるようになる。

このサイズに収まらない家具としては、ダイニングテーブル、ベッド、ピアノ、食器棚、学習机などが考えられるが、それらについては可能なものは分割式とし、不可能なものは従来通り手で運ぶものとする。

また、家具類には作り付けのパレットが最初から付いているように設計することができる。

パレットはトラック内に固定できるため、基本的に養生は必要ない。だが必要な場合は囲いをして隙間は緩衝材で保護する。

パレットのトラックへの積み込みは、専用のフォークリフトを開発して行う。これは人が乗る必要がなく、ロボット同士が通信をして自動で積み下ろしをする。

大抵のトラックの荷室の高さは2000mm以上あるため、900mmのパレットは上下2段で積む。これにより空きスペースを少なく、無駄なく詰めることができる。

高さのある家具は、やはりフォークリフトで重ね、その後に固定する。この固定方法も規格に含める。またその固定方法を応用して床に固定する規格も検討する。床に固定できれば耐震処理は必要ない。

従来の家は、寸法の計測と段差の規格を考慮したリフォームが可能であるので、新たな家、特に賃貸住宅ではこの規格を推奨するよう税誘導などを行う。

実際の引っ越しにおいては、トラックから玄関、更に各部屋までのアプローチについて、ラインテープなどによるマーカーを設置し、ロボットはそのマーカーに沿って移動する。新居の家具の配置は、やはりマーカーを置いておき、ロボットはその位置に正確に家具を下ろす。

パレット付き、600Dx800Wx900Hの、扉/引き出しロック機構付き棚を作っておけば、小物は全部それに入れてしまえば良いので、いちいち段ボールを大量に作る必要はない。また段ボールを作る場合でも、600Wx400Dx30Hの段ボールだけ作っておけばこのパレットに綺麗に積み重ねられる(実際には枠の分だけ小さめに作る)のでやはり自動で運ぶことが可能だ。

この応用として、パレットごと床に置くことに関し、家具を置かなかったスペースはパレットと同じ高さのタイルを置くことにすれば、段差もなく綺麗に配置することができる。200mm単位のタイルを大量に作っておいて、家具スペースだけそれを外してやれば、ぴったりはまるだろう。またそのタイルにも、溝を作っておいて配線をするなどの工夫が可能である。タイルの位置決め用に床にノッチを入れておくことなども可能だろう。

この機構を採用する前提で、家族4人、75平米程度の家を100km移動する引っ越しについて、生成AIに見積もりをしてもらったところ、75%程度の費用削減ができるとの試算が出た。この中でも大きいのはやはり人件費で、従来型では4人のところ1人、しかも拘束時間を大幅に短縮することで、90%以上の節約になる。

また引っ越す側としても、段ボールへの詰め替えが最小限で良いところはメリットになる。つまり引き出しにモノを入れたまま移動できるため、その手間が省けるのだ。

この規格が広まることは、引っ越しだけでなく宅配ロボットの普及にも有益である。つまり、この600mmパレットロボットが通れるなら、これより小さい宅配ロボットも自動で玄関先まで行けるはずであるからである。ロボットに対応する宅配ボックスを設置するだけで自動受取が可能になる将来像も、描くことができる。

現在の建築基準法では、4階建てまでの建物はエレベーターの設置義務がないが、そういうものであってもパレット用リフトを階段沿いに設置することで宅配ロボットは移動可能になるし、将来的には低層でもそのリフトを設置した建物が人気になる、ということも考えられる。

2026年2月25日水曜日

3Dプリンター木造建築工法3 脅威の性能とコスト

 3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良

の続き。

リグニンは、180~220℃でゾル状になり、3Dプリンタから射出できるようになる。この状態はまだ熱可塑性の状態にあり、いったん冷えると固まるが、再度この温度になると軟化する。そして、200℃以上で数十分~2時間程度保持すると「架橋化」し、完全に硬化する。こうなるともう熱を加えても軟化しなくなる。

これに対し、日本の住宅の耐火性能試験では、5分後に576℃、30分で842℃、60分で945℃になる。なのでリグニンは架橋化が必須である。そうしないと熱で軟化し、家が崩れてしまう。

だが、3Dプリンター印刷という特性上、200℃で2時間加熱をするのは不可能なので、触媒を用いる。触媒は低温下でも架橋化を促進するが、前回も説明した通り、3Dプリントにおける層間結合を強化するためには邪魔である(硬化した後は結合できない)ため、工夫が必要である。

そこで、架橋促進剤を、新たな層をプリントする直前に噴霧し、プリント後直ちに「ヘラの先端で押す」という操作を行う。これによって層がV字型に変形し、未硬化のリグニンの上下の層が混ざると共に架橋促進剤も混ざるため、層間結合と硬化が同時に完成する。架橋促進剤はその後、その他のところでも徐々に浸透し、硬化が完成する。これにより、前回提案した超音波過熱針及び注入ロッドは廃止する。

次に耐火性だが、20~30mmのリグニン層は廃止し、2mmの高リグニン防湿層+サイディング用の桟を3Dプリンタで形成し、サイディングは市販のものを使用する。これにより建築確認における耐火性の評価を既存の市販品のそれで代用できると共に、価格を大幅に落とすことができる。(リグニン層は高い。)

内装も、10mmのリグニン層は廃止し、防湿用高リグニン層2mmと石膏ボード用の桟までは3Dプリンタで加工し、石膏ボードは人手で貼ることにした。これでも透湿フィルムを貼る必要がないので通常より手間は減らせる。なお、外と中の高リグニン防湿層も、ヘラの先端で押して層間結合強化をする点は同じである。

なお、1層(高さ方向)の厚さは2mmとした。これはコンクリート3Dプリンタ住宅より遥かに薄いのだが、その理由は①即時(2層印刷後)で硬化が可能なのでコンクリートのように固まるのを長時間待つ必要がない、②硬化剤を層間に噴霧するので硬化剤が十分に浸透する薄さにする必要がある、という理由による。

また、断熱材は発泡剤により膨張するので、壁材のような精密な形状制御が困難である。このため、断熱材ヘッドだけはセンサで吐出先の状況を把握し、吐出量を自動調整する機能を追加する。

断熱材もリグニンを含んでいるので、充填すると壁(ハニカム材)に密着する。このハニカム材は構造材、即ち家の重さを支える材料である。一般的なウレタン吹付けでは断熱材は壁に張り付いているだけだが、この場合は六角柱の中に充填される。このため、断熱材はこのハニカム材の構造材としての性能を強化する。圧力耐性はさほど変わらないが、曲げ耐性が強まる。これを計算に入れた上で、ハニカムの厚さを薄くして材料費を節約することは可能になるだろう。結果として、ハニカム層の壁の厚さは2mmにした。ハニカム層全体としての(壁の)厚さは100mmにした。なお、断熱材にはホウ酸を添加して火災に備えるものとする。断熱材はハニカム構造の中に閉じ込められるため空気が動かず、つまり対流が起こらない。またビスや柱などの熱橋が原理的に存在しないため、壁の厚さが薄くても断熱性能は高くなる。

次に、全体として、木粉は止め、古紙パルプを使用することにした。こちらは価格が大幅に安く、繊維も長いためである。また、パルプの入手先(製紙工場など)は大量のリグニンを産業廃棄物として排出するので、リグニンの入手先としても有用と考えた。他、インクを除去していない低品質のパルプを断熱材用に使用し、ハニカム材と防湿層用には高品質のインク除去パルプを使用する。リグニンとインクの食いつきが違うそうだ。

リグニン自体も、無精製の安価なものを断熱用に、精製した高品質なものを防湿層とハニカム材に使用する。パルプと同様、適材適所にすることで価格を低減した。

溶剤を使わないので、いわゆるシックハウス症候群とは無縁になる。壁紙も塗装も当然対応可能である。ただ壁紙の場合、表面を均す必要はあるかもしれない。2mmとはいえヘラで押すこともあり、1mm以下の凹凸は多少あると思われる。

次に、基礎周りのプリントについて考える。通常、基礎には締結用のボルトが飛び出しているが、現在提案しているライン状のプリンタヘッドではボルトを避けられない。そこで、まず基礎にはボルトを埋め込むのではなく、ボルトを埋め込むための穴(ネジ切り)を埋めておく。そしてプリンタは、そのボルト穴の周りを避けるようにプリントするのだが、この際、C字型にしてプリントする。壁の内側に開口部を向ける形となる。もちろんその穴には断熱材は充填しない。そしてプリントが進んで想定ボルト高さを十分に超えたら、横に空いた穴からボルトを入れ、その隙間に高リグニン材(ハニカム材と同じモノ)を注入する。これは手動でも良いだろう。この方法での締結は、木造のホールダウン金物による締結と比べ、引き抜き耐力で倍以上の強度を出せると計算できた。

屋根周りであるが、最上部の防水層を高リグニン、その上の屋根材固定の桟までを3Dプリントで作り、屋根材はガルバリウム鋼板とし、人手で貼るものとする。防水層の下は当然ハニカム断熱層であり、ガルバリウム屋根固有の雨音を減衰することができる。屋根周りの強度設計も自在であり、必要なら太陽光発電パネルや太陽光温水器の設置も可能であり、配線用の穴やくぼみも3Dプリントできる。雨樋や排水路なども同様、一体成型可能だ。

これら変更を加えた後で、再度性能と坪単価を計算した結果が以下だ。

まず断熱性は、一条工務店の0.25W/(m2K)に対し0.20W/(m2K)と一条工務店超えを達成した。これは小さなエアコン1個で家中の冷暖房が可能なレベルである。またリグニンは保温性が高いので、深夜電力でそのエアコンを動かし、昼間は停止させる、といった使い方が可能である。

耐震性も鉄筋コンクリート(RC造)を上回り、耐震等級3を余裕でクリアする。RCは重量があるのでその分更にこちらが有利という結果が出た。これより、制震装置などは必要ない。むしろ家が丈夫すぎて地震のエネルギーを全て受け止め、家は壊れないが家具が飛ぶ可能性が高くなる。必要に応じ免震装置はつけるべきかもしれない。だとすると、免震装置の上に家をプリントすれば良いので、ここで建築を標準化できるかもしれない。耐風性もRC構造並みの剛性を持ち、気密維持も最高、飛来物耐性も高いことが確認できた。

防音性も完璧だ。壁も床もハニカム+断熱材で埋まっており、更に厚みも十分、隙間もないので、音が漏れない。計算によると、通常の木造の家がD-25~D-30、市販の防音室(ヤマハのアビテックスなど)がD-35~D-45なのに対し、D-45~D-55になるとの試算を得た。つまり家中が防音室と同じということだ。深夜に大音量で映画を見ていても、隣家には全く影響ない。(但し窓からは漏れるので要注意)

最後に経年劣化だが、これも木造や鉄筋コンクリート造を上回る性能が出るとの予想が出た。元々木材が持つ糖分・デンプン類が、3Dプリンタからの射出時の高熱で変性しているため、シロアリの好む餌ではなくなっていることに加え、防蟻材を「練り込む」ことが可能である。また、リグニンは架橋化するともうそれ以上劣化しない。木の化石を想像してもらうと良いのだそうだ。むしろ時間と共に未架橋の部分が徐々に架橋化し、強度は増すのだそうだ。

そして坪単価は、なんと25~35万円である。一般的な木造軸組み構造が60~80万円、一条工務店が80~100万円、RCが100~150万円、安さが売りのコンクリート3Dプリンタ住宅でも60~90万円とのことなので、あらゆる建築方式の中で最も安いという凄い結果が出た。

これは価格を追求した結果なのだが、当初の構想通り内壁層と外壁層をリグニンで作ることも可能だ。価格はRC並み(120万)になるが、圧倒的な速さで建築できる。養生と内装外装が大幅に減るためである。坪単価と自分の求める住宅性能を、それこそ指先一つで自在にコントロールできるのが、3Dプリンタ住宅の特徴とも言える。

何回も言っている気がするが、建築会社にこの案を拾ってもらい、具体的検証してほしいものだ。

2026年2月24日火曜日

3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良


 参考:前回 SpockのHighTech夢想: 3Dプリンター木造建築工法

前回の続き。更に色々考え、実用に近づけた。

  1. 構造材の変更
    1. 前は柱材として玄武岩(バサルト)ファイバーと言っていたが、これを廃止し、壁全体をハニカム構造とする。柱材は無くす。
      1. 目的は、①コストの低減、②廃材の再利用性向上(マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクル)、③繊維棒ロボットの廃止、④資源の有効活用(全部木で作る)、である。
      2. 材料として、リグニン、木粉(100~500μm)、長繊維木粉(500μm~2mm)を使用する。
        1. リグニンの配合を多くするほど硬くなり、その代わりに脆性が高くなる(割れ、ヒビ)。脆性を補うために長繊維木粉を配合する。木粉はフィラー(価格調整、かさ増し)で使用する。
        2. 壁全体をハニカム構造とすることで、壁全体で重量を支えることができる。
        3. 力が掛かる要所(角や玄関枠など)ではハニカム径を調整して強度を増す。壁材部分は40mm、要所は10mm、などだ。
        4. 横方向(根太、梁)にもハニカム構造を適用する。下側ほどハニカム径を小さくする。
      3. 単純にハニカムを積み上げ方向に形成すると層間結合が弱いため、これを補強する施策を追加する。
        1. ハニカム層は数層分の硬化遅延が起きる仕掛けを施しておく。(遅延剤添加など)
        2. ハニカムが1層をプリントする度に、上から超音波過熱針を差し込む。するとまず縦方向に繊維が通過し、更にその周囲が先に硬化し、縦方向の結合強度が高まる。
        3. あるいは数層分を貫通する細い射出ヘッドを差し込み、引き抜きながら長繊維木粉混合リグニンを射出する。
      4. ハニカムの中は断熱材(後述)で埋め、断熱する。但し要所で中空のハニカムを作り、これを配管用とする。
  2. 断熱材の変更
    1. 木質ファイバーを止め、木粉+リグニン+発泡剤とする。
      1. 木質ファイバーは3Dプリンタから吐出するのが困難で、また事前混合も困難であることより、素材の統一を優先する。
      2. これにより断熱性能は低下するので、壁の厚みを増すことで調整する。
        1. 壁材の想定は200mmである。外装面30mm(高リグニン 防湿・耐候)、ハニカム断熱層140mm、内装面30mm(高リグニン防湿・気密・難燃)となる。この厚さで十分、スウェーデンハウスに迫るくらいの断熱性能は確保できる。
        2. 合わせて気密性も極めて高く作れるので、高気密高断熱が実現する。
  3. これで素材は4種類で完結する。
    1. 外壁材:高リグニン+木粉+UV剤+耐候剤+難燃剤
    2. 構造材:高リグニン+長繊維木粉
    3. 断熱材:標準リグニン+木粉+発泡剤
    4. 内壁剤:高リグニン+木粉+難燃剤
    5. これらをペレットで供給し、3Dプリンタヘッドで加熱して吐出する。
  4. 専用の3Dプリンタとして、これら4種類のヘッドを合わせたマルチヘッドを設計する。
    1. 外壁用1、構造材用20、断熱材用1、内壁用1。構造材用だけ細く、紙にプリントするプリンタのように、マルチヘッドでハニカムを一度に形成する。
      1. 縦方向のハニカム結合強化用施策(2種)は、どちらかないしは両方のヘッドを追加する。
    2. これにより、200mmの外壁が一度で形成できる。

この構造について、やはり費用面や建築スピードの面などから検討してみたのだが、結果としては恐ろしく高効率低価格である。

コンクリート3Dプリンタ住宅は壁材しか作れないので、内外壁の作業が更に必要になる。内壁は断熱、防湿材、壁紙など、外壁は塗装などだが、こちらは一体で作ってしまうので必要ない。また壁を作る速度も圧倒的に早い。マルチヘッドを抜きにしても、即時に硬化するのでコンクリートのように固まるのを待つ必要がないからだ。

また床や梁も作ることができる。床の場合は、コンクリートベタ基礎の上にまずサポート材をプリントし、その上に根太に相当する横方向ハニカム構造をプリントする。根太の間には充填剤を入れ、最上部はまた壁材でプリントしてやる。天井の場合はサポート材を使うよりは人手で板を渡してやった方が良いだろう。その上にまた3Dプリンターで梁をプリントすれば良い。

コンクリート3Dプリンタ住宅の場合は、天井は別に作って運んで設置する必要があった。これに対し、こちらは支持材としての薄い板(例えばプラダン)を置くだけで、後はプリンタが作ってくれる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では不可能な、配管の穴を自在に空けることも可能で、電装や水回りの工程も大いに短縮できる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では、窓枠部分はあらかじめ空けておいて、枠の上までプリントしたら人間が手で横長の棒を置き、またプリントを再開するのだが、木造3Dプリンタは窓の穴を空けず壁材を薄く積み上げることで印刷を続けることができる。木質なので完成後に穴を空けることは簡単で、薄く作っておけばそれこそパンチで空けられる。後はカッターで仕上げれば良い。そしてこの方法だと削り出しができる(コンクリートだとこれは難しい)ので、精度高く窓をはめ込むことができる。充填材も、通常ならシリコンシーラントを使うのだが、枠ぴったりにハメられるのならその量はごく少量でよい。ネジ止めも木ネジが使える。ドアも同様である。

他にも、室内壁を一緒にプリントできる、棚や押し入れなど簡単な造作も一緒に作れる、将来的には高精度プリンタを併用することで屋内ドアや窓枠(後はガラスをはめるだけ)のような可動部も一体でプリントできるだろう。これは後工程を大幅に短縮する。

屋根材も、最後にガルバリウムを貼る直前まではプリントできるはずだ。高リグニン材で形成すれば防水シートは不要だし、通気用の横木なども一体成型できる。その下の防音には断熱材が使える。

材質も全て木質系にしたし、高価なCNFなどは使わずに済んだので、坪40万円はやはり十分に狙えるとの試算が出た。

但し、建築確認の壁があるのはコンクリート3Dプリンタ住宅と同じである。ここまで考えるとさっさと試作したい(してほしい)」のだが、どこかの建築会社さん、拾ってくれないかなぁ。

2026年2月23日月曜日

ファミレス内簡易個室

 ファミレスの一角に、二重アクリルガラスで囲った簡易個室を作り、これを単位時間当たり幾らで貸し出す、というサービスを提案する。

アクリルガラスは半透明で、中に人がいることは分かるがプライバシーはある程度守られる。また二重にするので音は漏れにくい。アクリルガラスは天井まであり、あるいは天井が塞がれているため、音は漏れにくい。中の座席は一つから4つ程度まで色々ある。中では電源、またWiFiが提供される。また換気のためのファンがある。

この個室の目的は二つある。第一は、通常の「レストランの個室」としての機能。簡易個室なので室料は安くなり、気軽に利用できる。そしてもう一つは、駅や繁華街で見かけるようになったプライベートオフィスボックスの用途である。つまり中で仕事をするための空間である。

駅のオフィスボックスでなくここを使う理由は至極簡単で、そのファミレスの食事が提供されること、またファミレスのトイレが使用できることだ。オフィスボックスにはその機能がないため、長時間こもる際にはコンビニであらかじめ飲食物を買って持ち込む必要があったし、人の目がないのでトイレに行くのに機材を放置するのは不安があった。それらが解消できる。

ファミレスで長時間居座るのは迷惑行為だが、この場合は個室自体に課金がされるので、いくらでも居座ってもらって問題ない。しかも食事とトイレの問題が解決するから、通常のオフィスボックスより更に長く借りてくれる可能性が高い。店舗側としても文句はないだろう。

結構重要なのが昼休憩で、つまりは最初から個室に居座っていれば席は確保できているから、ランチの行列に並ぶ必要がない。また、同じく他の個室に籠もっている仕事仲間と通信でつながったまま会食ができる。離れた店舗でグループワークをしている仲間が、同じ時間に仕事を切り上げて昼休憩に入り、一緒に食事を楽しむことができるのだ。

これはけっこう新しいコミュニケーションの形態になるのではないだろうか。つまり、朝はまずこの個室に「出勤」し、テレビ会議でグループを全員つなげ、その後は各自で仕事をする。昼食も休憩も含めテレビ会議は繋げっぱなしにしておき、退勤すればすぐに自宅に戻れる、というものだ。

コロナ禍でリモート飲み会があったが、ああいうイレギュラーなものももちろん可能だし、毎日のランチならその頻度も多く、コミュニケーションも洗練されてくるはずだ。遠く離れていても気心が知れ、仕事の効率も上がるだろう。つまりこれは、会社としても都合が良いのだ。

本来、レストランの個室は特別感があったのだが、この場合は簡易個室である。特別感はいらないがただ他人の目が気になる一般人にとって、これは使い勝手が良い。そういう需要を喚起できるだろう。

このシステムが広く普及してくると、新しいオフィスの形として定着する可能性がある。地元の飲食店街がこぞって個室を導入し、ビジネスマンは会社ではなくそこに通うようになるだろう。これは移動距離を短くし、都心の高いオフィスを維持するコストを減らし、それでいてコミュニケーションは維持できる。地方活性化の起爆剤にもできるのではないか。

2026年2月21日土曜日

アカウントベースDRM

 今では誰も文句を言わなくなってしまったが、日本で地デジが導入されるに当たって、強力なコピーガードの機構(いわゆるダビ10)が導入され、物議があった。結局それは殆どそのままゴリ押しされた。

その不便さは、機器が故障した時に顕在化する。日本のDRMは、機器の故障に対して全く機能しない。つまり壊れてしまったら、録画済みの番組が何百あったとしても消えてしまうしかない。ダビングは10回までできることになっているが、ダビングしたものからの再ダビングはできないので、バックアップとしては機能しない。レコーダーの所有者は、機器を買い替えるたびにこの苦渋を味わってきたことになる。

これは世界で標準的かというとそうではなく、多くの国でもプロテクト自体はあるものの、特定のメディア(HDD)と強力に結びついたものにはなっていない。HDD間移動も可能だし、PC視聴もできる。レコーダーのHDDが壊れないかとびくびくする必要はないわけだ。HDDは壊れるものだから、これが普通ではないかと思う。この間、放送は衰退し、インターネット経由で見るVODが勢力を伸ばしてきたが、そんな背景もあるのではないかと疑ってしまう。

ちなみに、その強力なDRMで守られる権益は、数兆円に登るという。農協漁協のようないわゆる既得権益と見ることができるだろう。

これを解消するための仕掛けが、このアカウントベースDRMだ。話は簡単で、ユーザはサービス業者に対してアカウントを開設し、そこから暗号化キーを貰い、それを機器にセットする。それで暗号化されたコンテンツデータはコピー自由だが、サービス業者が保持している復号キーを使わないと視聴できない。機器にはそのユーザIDがセットされているので自動で復号して再生できる。一方、PCやスマホのアプリにもIDがセットされていて、再生ができる。同じIDのセットは機器毎に制限されていて、それ以上は移行処理が必要である。例えば機器が壊れたら機器からIDを引き上げ、新たな機器にセットするのである。

この仕掛けがあれば、正規ユーザは不便なく映像を再生できるし、自分の責任で定期的にバックアップをしておけば、機器が壊れても慌てる必要がない。一方、いくらコピーしてもID当たりで見られる数はごく少数であり、コピーガードの役割はダビ10よりも有効に働く。また不都合があり映像公開を止めたい時は、復号キーを無効にするという措置も可能だ。

ダビ10が始まったのは2008年とのことだが、これはまだWindows Vistaの時代で、インターネットが普及していたとは言い難い。だから当時この仕掛けを導入できなかったのは仕方ないとしても、今ならこれはできて当然である。またこれは他のVODにも適用可能だから、世界中でこれを標準化して広めてはどうかと思う。

2026年2月20日金曜日

3Dフードプリンタ応用デリバリー

前回、3Dフードプリンタの具体的設計を試みた際、カートリッジの数が多くなり過ぎること、また食材カートリッジの多くが冷蔵となり、都度のプリントで使われるカートリッジは少数であることより、賞味期限管理が問題となることを指摘した。これに対し出せる一つの回答は、「プリントする料理を限定する」ということになる。また、そうなると家庭用ではなく業務用、例えば和食専門店とか洋食デリバリー用とかへの展開が考えられる。

そこで、「洋食デリバリー用」のような形態を考えてみた。ハンバーガーとかラーメンとかで考える筋もあるのだが、これらは3Dフードプリンタのメリットが出にくいと考えられる。つまり、例えばハンバーガーならバンズと挟むもののバリエーションしかないから、それを個別に用意した方が簡単なのだ。ある程度メニューのバラエティ(特に形状のバラエティ)が必要である。

食材カートリッジとして肉系しか使わない、フレーバーも洋食系のみ、とすれば、一つ一つのカートリッジを大きくしても耐えられる。プリントする時間はせいぜい10分とか15分とかなので、作っている間にケータリング業者を呼び、渡せばよい。そして作成網を薄く広く募集する。極端な話、一般家庭に置いてもらってバイト感覚で運用する、なども考えられる。家庭では自分用にプリントする傍ら、注文が来ればそれをプリントして業者に渡すことで小遣いが貰える、という次第だ。もちろん保守はその家で行う。

和食デリバリーでも同じ展開をして、相互に融通できるようにしてやると、更にメニューは広がる。つまり和食用プリンタと洋食用プリンタは別の家にあり、和食が多い家では和食プリンタを、洋食が多い家では洋食プリンタを置く。双方を総合メニューとするチェーンにすれば、外からはバラエティ豊かなフードデリバリーに見える。

このデリバリーには従来と違う特徴が一つあって、それは冷蔵のまま配達するということだ。着いてから電子レンジで温める。そうすることで配達時間が短縮できるし、衛生上も好ましい状態にできる。すぐに食べないときは冷蔵ないしは冷凍することも可能だ。これであらかじめ注文しておいて食べたいときに食べる、という新しいデリバリーの形態を作ることができる。

2026年2月19日木曜日

3Dフードプリンタの具体的設計



もうずいぶん前だが、寿司を3Dプリンタで出力する、という試みが行われた。

https://www.open-meals.com/

その後音沙汰を聞かない。クッキーやチョコのようなものの3Dプリンタフードはたまに見かけるが、これを常食とすることはないだろうから、寿司には期待していたのだが。

ここで言う3Dプリンタフードとは、常食を前提としたものだ。寿司はその一つだが、例えば肉や魚、野菜、コメ、麺、などの日常で食べるものを、素材の投入とボタン一つだけで生成するというものになる。そしてその素材は、3Dプリンタのフィラメントのように、常温で保存ができる粉ないしは固体・半固体(ゾル状)などであって、複数の素材を混ぜることで汎用的な食材に変貌するものを意味する。

これを生成AIの助けで具体化してみたものがこちらだ。


  • 基本スペック
    • 料理のバラエティは家庭級(50~100)和洋中その他織り交ぜ
  • 3Dフードプリンタ概要
    • 1人用冷蔵庫と同程度の大きさ
    • 上段がカートリッジ格納ゾーン、中段が3Dフードプリンタ、下段が取り出し口
      • カートリッジ投入扉、清掃扉(ノズル等の洗浄)、取り出し扉(完成した食品の取り出し)
    • 出力後、水カートリッジでフラッシュ、エアブロー、乾燥 (半自動、排出した水の回収)
    • ノズル・インナーの清掃は週1回(清掃扉を開け、外して洗い、元に戻す)
    • カートリッジは必要に応じ補充(1個を使用、1個を交換用として保持、必要に応じアラームが出るので指示に従って交換)
    • スマホにて操作、レシピを選択して実行 完了するとスマホに通知
    • 完成品は冷たいので必要に応じてレンジ加熱
  • 食材カートリッジとフレーバーカートリッジ
    • 食材カートリッジは大容量、フレーバーカートリッジは小容量
    • 食材カートリッジの多くは冷蔵となる(補充用のカートリッジは別に冷蔵庫保管)
  • 食感カートリッジとして「方向性繊維」「水分保持ゲル」を備える
    • サラダやごぼう・根菜の食感を出せる

1) カートリッジ体系

  • 食材カートリッジ(12本):栄養・食感・主菜/主食の「骨格」を作る
  • フレーバーカートリッジ(14本+任意2本):料理カテゴリ(和/洋/中/その他)を確実に切り替える「世界線スイッチ」

2) 食材カートリッジ(12本)一覧

目的:“系列バレ”を防ぐため、タンパク・脂質は最低3系統、炭水化物は物性3系統に分ける

形式:家庭級の現実解として「冷蔵カートリッジ中心」(常温は粉末系・油系)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 主な役割(何を作るか) 推奨保管
タンパク P1 肉系(チキン/ビーフ系) 鶏/牛由来ペースト、または同等の肉様基材 肉の“密度・余韻”の土台(主菜) 冷蔵/冷凍
P2 魚系 白身魚/練り物様基材 魚の“軽さ・ほぐれ”の土台(主菜・和中) 冷蔵/冷凍
P3 植物系(大豆/エンドウ) 大豆/豆系ペースト 汎用・低コスト・副菜/つなぎ(主菜も可) 冷蔵
脂質 F1 高融点脂(肉・揚げ物) 牛脂/固形脂に相当 コク・揚げ物/肉の満足感 冷蔵
F2 低融点脂(魚・あっさり) 魚油/低融点油に相当 軽さ・魚介/冷菜のリアリティ 冷暗所
F3 中性脂(汎用) 植物油 和洋中のベース・乳化基材 冷暗所
炭水化物(物性) C1 粒状・崩壊型(ご飯系) 米粒様ゲル/粒状デンプン構造 “ご飯”カテゴリを成立 冷蔵
C2 連続体・弾性(麺/パン) グルテン/ゲル弾性生地 麺・パン・生地系 冷蔵
C3 マッシュ・粘性(芋/副菜) 芋・かぼちゃ等のピューレ 付け合わせ・和惣菜 冷蔵
食感/状態 T1 水分保持ゲル(サラダ基材) 高含水ゲル(葉物感) “サラダ/冷菜”の土台(生っぽさ) 冷蔵
T2 方向性繊維(ごぼう/根菜繊維) 繊維束構造基材 ごぼう等「裂ける食感」担当 冷蔵
栄養/繊維 N1 食物繊維・ミネラル 可溶/不溶繊維+ミネラル 腸・栄養の底上げ(常設) 常温/冷蔵
K1 色(ナチュラル) 野菜色素など 見た目のカテゴリ分け(和洋中) 常温

3) フレーバーカートリッジ(14本+任意2本)一覧

目的:家庭級のバラエティは “料理カテゴリ(世界線)” が切り替わることが最重要

3-1) 基本14本(家庭級50〜100の標準)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 世界線への効き方 使い方(配置)
味(Taste) T-S SALT 塩味溶液 和/中の輪郭・洋の下支え 全体に薄く
T-A ACID 酢/酸味 サラダ/酢の物/中華のキレ 表面〜浅層
T-W SWEET 甘味 照り焼き/煮物/洋ソース たれ層
T-B BITTER/AST 苦味/渋み ごぼう/山菜/緑系のリアルさ 局所(微量)
T-H HEAT 辛味 麻辣/エスニックの決め手 点在(微量)
旨味/発酵 U-G UMAMI-G 昆布/野菜旨味 和の基盤、洋の下地 中層
U-N UMAMI-N 核酸系旨味 肉/魚の“厚み”寄せ 中心〜奥
U-F FERMENT 味噌/麹/酵母 和の奥行き・デミ方向 中層
U-R ROAST 焼き/炒め香 洋の焼き香・中華の炒め 表面〜脂相
香り(Aroma) A-F AROMA-FRESH 青/柑橘 和の爽やか・冷菜 表面ミスト
A-L AROMA-ALLIUM 葱/生姜/にんにく 中華/和の炒め煮の核 中層
A-H AROMA-HERB/SP ハーブ/スパイス香 洋/エスニックの核 表面+中層
粒/刺激 P-P PEPPER/SANSHO 胡椒/山椒 和中の締まり・別物感 表面点在
P-C CURRY BASE カレー核 「その他1割」を確実化 全体

3-2) 任意追加2本(おすすめ)

ID カートリッジ名 中身(例) 追加すると増えるメニュー
A-M MARINE(海) 海苔/磯/魚介香 魚介・和の幅が増える
A-D DAIRY(乳) バター/クリーム香 洋(クリーム系/チーズ系)が増える

4)これで作れる「具体メニュー50個」案

和食(20)

  1. だし醤油チキン(照りは弱め)
  2. だし白身魚(煮付け風)
  3. 味噌つくね(鶏)
  4. 味噌豆腐ハンバーグ(植物)
  5. 照り焼きチキン
  6. 照り焼き魚風パテ
  7. 生姜焼き(豚風)
  8. 肉じゃが風(肉+芋マッシュ)
  9. 鯖味噌風(魚系)
  10. きんぴらごぼう
  11. ごぼうサラダ(マヨ風)
  12. 酢の物(きゅうり・わかめ風)
  13. 南蛮漬け風(酸甘)チキン
  14. 和風おろし(さっぱり)ハンバーグ
  15. 塩焼き(焼き魚風)
  16. 鶏そぼろ丼風
  17. だし巻き卵風
  18. 茶漬け風(だし+塩)
  19. 和風カレーうどん風
  20. 胡麻和え風(青菜)(胡麻は“その他粒”で代替可)

洋食(15)

  1. トマトハーブチキン
  2. ミートソース風(肉パテ+トマト)
  3. デミ風ハンバーグ
  4. ハーブグリル(魚)
  5. ガーリックバター風チキン
  6. クリームシチュー風(拡張)
  7. チーズ風リゾット(拡張)
  8. オムレツ風(拡張すると強い)
  9. バジルジェノベーゼ風(緑)
  10. ローストオニオンスープ風
  11. ビターカカオ風(デザート寄り)
  12. フィッシュ&チップス風
  13. ハーブレモン風サラダ
  14. ミネストローネ風
  15. ペッパーステーキ風

中華(10)

  1. 生姜葱チキン(中華蒸し鶏風)
  2. 回鍋肉風(甘辛炒め)
  3. 麻婆“豆腐”風(植物)
  4. 麻辣チキン(花椒風)
  5. 青椒肉絲風(歯ごたえ寄せ)
  6. エビチリ風(魚系+酸甘)
  7. 酢豚風(酸甘)
  8. 担々麺風(ごま無でも成立する版)
  9. 中華スープ(葱・生姜)
  10. 炒飯風(香り重視)

その他(5)

  1. カレー(基本)
  2. グリーンカレー風(ハーブ強)
  3. タコライス風(酸+香草)
  4. ナンプラー系エスニック“風”(海があると強い)
  5. スパイス焼き(BBQ寄せ)

どうだろう。ここまで設計すると具体的に想像ができる。これなら少々不味いものしかできないとしても一定の需要はあるはずだ。例えば自炊が困難だが外食やコンビニ弁当を毎回買いに出るのが辛いという層、また極端な面倒くさがり層などである。例えば一人暮らし、乳幼児の多い家庭、足が悪い高齢者、暑がり寒がり、精神疾患・未病不具合の人、などだ。

また、レシピを調整することによって、離乳食や糖質制限食など、様々な食のニーズに対応できる可能性がある。ここには菓子類が書いていないが当然それも検討の遡上に載る。宇宙船や船舶、離島などでの需要もあるだろう。

細かいところでは色々ツッコミはある。例えばカートリッジ数が予想を超えて多くなり、管理が大変そうだ。フレーバー系はともかく、メイン(食材)カートリッジはもう少し減らしたいところだ。

メインカートリッジの容量は、初期設計では300mLだったのだが、これが12本+予備12本と考えると24本、合計で7.2Lになる。これだけでも結構な重量で、筐体の上部にこれがくるため、重量バランスが悪い。

しかも例えばハンバーグ一つに100mLの肉系カートリッジを使えば、3人前で交換しなければならない。プリント途中での人手によるカートリッジ交換は使い勝手を損ねるし、全自動にするとしたらこのサイズには収まらないだろう。

また、カートリッジのほとんどはその1回では使われないので、計画的に食材のローテーションをしてやらないと賞味期限が来て廃棄するカートリッジが多くなってしまうだろう。冷蔵ではなく常温保存可能なカートリッジの模索が必要かもしれない。

だが、これをベースに追加で設計していけば、本当に何かができそうな気がする。

2026年2月18日水曜日

日本と世界の右傾化とその理由

 「日本は右傾化している」マスコミのそういう指摘に対して、「いや今までが左だったのが正常に戻っているだけだ」というコメントをしている人が、SNSに限らず議員などでも見かける(高市氏本人ですらそう言っている)。だがこれは、結局右傾化を認めたということである。右傾化とは文字通り「右に傾く」つまり向きとしてどちら方向に動いているかを示すもので、原点がどこにあるかは関係ない。また右派から見ればそう考えるとしても、左派には左派の考える「正常(原点)」があり、つまりは所詮水掛け論に過ぎない。だからこれは屁理屈であり、なんだか与党議員までがネトウヨ発言をするなあ、と思いながら見ていた。

そこで、右傾化の根拠について生成AIに調べてもらった。ステップとしてまず、右左と一言で言っても様々な軸があるので、その軸について定義してもらった。その定義による評価軸で定量化可能なアンケート等のデータを探し、更に正規化(-1~1。1が右、-1が左)してもらった。最後にそれをグラフに表示した。なお、各軸の定義は以下の通りである。

  1. 経済的右派軸:市場自由主義の浸透と保護主義的右派の台頭
  2. 社会・文化的右派軸:伝統的・排他的価値観への回帰
  3. 制度的権威主義軸:自由民主主義の質の後退(V-Dem指数を反転)
  4. ポピュリズム軸:反エリート・反多元主義的言説の拡大

まずは世界のデータを見てみる。

経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的権威主義軸 ポピュリズム軸
2000年 -0.12 -0.35 -0.65 -0.50
2005年 -0.05 -0.28 -0.60 -0.42
2010年 0.08 -0.15 -0.52 -0.20
2015年 0.22 0.12 -0.30 0.15
2020年 0.38 0.35 0.25 0.48
2025年 0.45 0.52 0.40 0.65

どの軸も一律に右上がりになっている。全ての指標がゼロを超え、反対側に行ってしまった。正に思想の大逆転である。

次に日本だけについて再調査してもらうと、以下のようになった。

経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的安保軸 ポピュリズム軸
2000年 0.05 -0.65 -0.20 -0.70
2005年 0.25 -0.60 -0.15 -0.55
2010年 -0.15 -0.58 -0.18 -0.40
2015年 0.30 -0.50 0.10 -0.20
2020年 0.35 -0.42 0.25 0.15
2025年 0.40 -0.35 0.65 0.45

こちらは世界ほど極端ではないが、やはりベクトルとして明確に右傾化している。それでも絶対値としてはまだ「社会・文化的右派軸」が0より下にある。

「社会・文化的右派軸」は、右が伝統的価値観、左が世俗的・合理的を表しているが、これについてAIに聞いたところ、日本には宗教的権威が存在せず現世利益的な宗教観があるからだ、ということらしい。そのため、宗教的項目を重視する国際指標では日本の保守性は捕捉されにくく、一方で防衛費や憲法改正といった「制度的安保軸」においてその右傾化傾向が顕著に表れるという構造になっているのだそうだ。そして確かに制度的安保軸はしっかり上昇している。

これらの右派傾向の理由について、生活苦や不当な圧力などへの不満の裏返しではないかと思い、そう聞いてみたところ、


『ご指摘の通り、近年の右傾化や権威主義化、そしてポピュリズムの台頭は、単なる思想の変容ではなく、生活環境の悪化や既成秩序への強い不満、あるいは「自分たちが不当に扱われている」という被害意識の裏返しであるという分析が、多くの政治学・社会学的調査で支持されています。』

中略

『グラフで示した右傾化の数値上昇は、単に人々が思想的に保守化したというよりも、「今のシステムでは自分たちの生活や安全が守られない」という切実な危機感と、それをもたらしている(と見なされる)内外の要因に対する拒絶反応であると解釈するのが妥当です。特に2025年におけるポピュリズム軸や安保軸の突出は、戦後長く続いた「安定した中間層」の崩壊と、地政学的な平穏の終焉がもたらした、社会の構造的な摩擦の結果であると言えます。』


とのことだそうだ。

右傾化というのは二次的現象であって、真に憂うべきは貧困や社会不安なのかもしれない。だからといって右傾化が良いと言うことではない。更に続けて「では右傾化によってそれは緩和するのか」と訊いたところ、


『結論から申し上げれば、専門家の分析や統計データは、右傾化の進展が必ずしも生活苦や不満を根本的に解決するわけではなく、むしろ新たな社会的・経済的リスクを生じさせる可能性が高いことを示唆しています。』

中略

『右傾化は、現状への強い不満に対する「心理的な防衛反応」としては機能しますが、生活苦という構造的病理に対する「治療薬」というよりは、痛みを一時的に麻痺させ、かつ副作用(増税、福祉削減、社会の分断)を伴う「強い鎮痛剤」に近いと言えます。2025年から2030年に向けて、右派政権がこの「副作用」をどう制御し、実質的な生活改善に繋げられるかが、社会の安定を左右する大きな焦点となります。』


とのことだった。私の感覚とこれは合致する。先の消費税減税についての分析もそうだったし、移民政策の分析も、積極財政の議論もそうだった。冷静に考えれば中長期的に全部自分に返ってくるのに、目の前のニンジンに尻尾を振っているのが今の右傾化の実態なのだ。

人々は感情に任せて右傾化するのではなく、冷静に論理的に判断をすべきである。


2026年2月17日火曜日

3Dプリンター木造建築工法

3Dプリンターを使った建築は、いくつか実用化し始めている。だがこれらはコンクリート前提であり、重く、建築確認も難しい。木造でこれをできないかと考えてみた。これをご紹介する。

まずは構成から。


壁はリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで形成する。この壁は構造材ではなく、後で示す断熱材充填の器として、また同じく後で示す構造材の器として形成する。

構造材は、バサルト(玄武岩)ファイバーコイルとリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで構成する。壁を3Dプリンターで作る際、構造材となる部分は縦穴となるように隙間を開けておいて、ここに上からバサルトファイバーを差し込み、隙間をエンジニアリングウッドで埋める。この隙間を埋めるエンジニアリングウッドは、壁材と違ってリグニンを高配合した硬い素材である。

また、このリグニン高配合素材は、内壁のごく薄い部分にも使用する。これは防湿材として機能する。一方、最外壁には微細な穴を開けて放湿する。

バサルトファイバーは単体では自立できないので、あらかじめエンジニアリングウッドに浸漬し、薄くコーティングした棒材として作っておく。これは50cmサイズで、数本を束ねて性能確保するものとし、縦方向には少しづつずらして配置する。

縦穴にバサルトファイバーと高リグニン木粉エンジニアリングウッドを充填すると、これが固まって構造材としての性能を出す。

断熱材としては、木質ファイバーと発泡リグニンの混合材を使用する。壁材はあらかじめ中空で作り、その隙間にこの断熱材を注入する。

3Dプリンタは、3種の素材、すなわち壁材用、構造材用、断熱材のノズルを持ち、またこれとは別にバサルトファイバー棒を自動供給するロボットから構成される。


これらを作るに当たって検討したことは、次のとおりだ。

  • コンクリート3Dプリンタは今でも鉄筋の補充が必要で、自動化の程度が低い。途中で人の手が多く掛かるようではダメ。できるだけロボットが自動で作れる必要がある。
  • コンクリートは断熱性が低く、自重も重いため、地盤が弱いところでは使いづらい。木質系で考えたい。
  • 木粉エンジニアリングウッドは構造材(柱)として認可されていないが、これは引張強度が足りないため。だから鉄筋のような引張耐性のある素材が必要。
  • 鉄筋は錆びるが、コンクリートが強アルカリのため使える。エンジニアリングウッドは中性だからこの手は使えない。
  • エンジニアリングウッドと鉄筋の熱膨張率は違い過ぎるので、使うには色々工夫が必要。熱膨張率が近い素材を使った方が楽。
  • バサルトファイバーは鉄筋より熱膨張率が木に近いが、まだ少し差があるので、コイル状に加工して使う。また自動で配置するには繊維のままでは扱いづらいので、後に充填する素材と同じエンジニアリングウッドに浸漬し、棒状にする。
  • 3Dプリンタでファイバー棒を扱うには長いと都合が悪いので、50cm長とする。するとそのつなぎ目は当然引張強度がないため、複数を束ねて使い、少しづつずらすことで対処する。
  • 断熱材も自動充填したいが、発泡ウレタンは熱膨張率が高く、また透湿性がないこともエンジニアリングウッドと相性が悪い。
  • 木質ファイバーだけだと射出困難なので、発泡リグニンとの混合材として使用。発泡リグニンが木質ファイバーの位置固定に役立ち、自重で沈むなどの経年劣化を押さえてくれる。
  • 構造材の品質を安定して出せるので、建築確認を取得しやすいことが期待できる。
    • 3Dプリンター建築は縦方向の引張強度が出せないので、日本では建築確認が難しい。これを避けるために鉄筋や鉄骨をわざわざ入れて、3Dプリンター建築の良さを台無しにする設計がまかり通っている。

この建築法には興味深いところがいくつもある。総じて言うと、3Dプリンター建築と言っても全てができるわけではないのだが、コンクリート住宅の場合はできなかった手間のいくつかを省くことができる。


  • 防湿材を貼る必要がない。内側から外側に向けて透湿性が順に上がる設計である。また防湿材の隙間や貼り忘れの心配がない。
  • コンクリートと違って木材用の加工が可能であり、細かい調整が現場レベルで可能である。
  • ベッドや棚など簡単な構造のものは一緒に作ることができる。
  • 配管の穴などもあらかじめ作っておける。
  • 支持材は必要だが、床材や天井材も一体成型できる。(さすがに屋根は無理)
  • 隙間無く作れるから、高断熱だけでなく高気密が期待できる。
  • 施工にミスや手抜きがあり得ないので、コンピュータシミュレーションの結果と現物の差は小さくなる。
  • 材料のバリエーションが極めて少ないので調達が容易である他、解体でも廃材の整理がしやすい。
  • 人間の手を煩わせるところが極めて少なく、一般の建築はもちろん、3D プリンタコンクリート住宅と比べても、建築スピードを速くすることが期待できる。
  • 材料の大部分は木粉とリグニンであり、難燃性ではあるが高熱で処理すれば燃える。つまりサーマルリサイクルは可能である。また一度硬化したリグニンは回収困難だが、コンクリート同様骨材としてのリサイクルは可能である。
  • リグニンは熱硬化性樹脂である。つまり吐出と共に熱処理すれば直ぐに硬化するので、コンクリートと比べて高速に建築が可能である。

この仕様でのコストを生成AIに見積もってもらったところ、木造や3Dプリンターコンクリート住宅よりは高く、鉄筋コンクリート住宅よりは安くなるという微妙な結果になった。だが、その高価格の主な要因であるバサルトファイバーとリグニンの価格は、今後5年で劇的に下がる見込みがあるとのことであり、もしそうなれば木造住宅も3Dプリンターコンクリート住宅もぶっ千切って、最低の坪単価となる。試算によると、坪単価は40万円だ。つまり100平米(30坪)でも1200万円でできる。今の時代、ちょっととんでもない低価格である。

これは見込みがあるのではないか。どこかの建築会社で検討してもらえないだろうか。

2026年2月16日月曜日

メタバースが世界を救う

非常に大雑把な一般論だが、ハイテクは上手く使えば格差是正になる

その良い例は音楽制作だ。かつて音楽は大金持ちや貴族のたしなみで、庶民は縁遠かったが、今やYouTubeでボカロ曲が普通にヒットする時代になった。これは作曲家や演奏家の大衆化と言える。裾野が広がったことで大量の音楽家ができ、世の中には音楽が溢れるようになった。高度な学習も高価な楽器も必要ない。パソコン一つでプロ並みの音楽を作れるようになった。

もっと生臭い例を言うと、ロシア・ウクライナ戦争においてドローンが大活躍している。ロシアとウクライナの戦力差は本来なら致命的なもののはずだが、ウクライナがドローンを上手く活用しており、その戦力差は縮まっている。鳥取県と同程度の経済規模しかない北朝鮮が米国と渡り合っているのは、核兵器があるからだ。

これに準じて、もし全ての国でメタバースが本格的に普及したら、どんな格差が是正されて世界は平和になるのだろうか、と考えてみた。

単なるインターネットとメタバースが異なるのは、視覚情報をフルに使って、また体を使って表現ができることだ。プログラミングなどの技巧的なものがなくとも、例えば幼児でも、簡単に国際交流ができる。この、より直感的な交流は、一つの重要な鍵になるだろう。自動翻訳がこれを更に助長する。

そしてもう一つは、ワールドの設計である。お互いがお互いを無視するワールドも、共存するワールドも、敵対するワールドも作ることができ、それらは独立に動かせる。つまり無視したい人は無視ワールドに、共存したい人は共存ワールドに、と棲み分けができるのだ。これは、例えば宗教対立のような問題に、一定の切り分けをすることが可能になる。例えば、キリスト教用とイスラム教用と共存用の三種のワールドに各々総本山(メッカ)を作り、どれが正でどれが副ということはない、と定義できる。(もちろん対立用ワールドを作って中でつかみ合いの喧嘩をすることも可能だが、バーチャルである限り無害である。)

ただ、メタバースによる格差是正は、あくまでもオンラインに乗るものだけだ。人はメタバースだけで生きるに非ず。現実には毎日食事をしなければならないし、風呂やトイレも必要だ。物価も住んでいる所によって違う。電気ガス水道通信、医療もリアルな世界では必要だ。

現実の生活において、バーチャルに移行できるものが何割あるかによって、その格差是正の程度は変わってくる。概ね、今のインターネットで出来ていることはそのままメタバースでも使えるだろが、メタバースでプラスアルファでできるようになること、メタバースで使い勝手が良くなり利用者が増えるであろうこと、がどのくらいあるか。

まず教育。移行できないのは走り回るスポーツ、柔道のように相手と接触するスポーツ、水泳、などが考えられる。卓球は既にできるし、体操や太極拳などもアプリがある。だがホームルームや学園祭など、バーチャルでも可能ではあるがリアルでやりたい、という需要も一定量あるはずで、特にその傾向は低学年ほど多いだろう。

次に仕事だが、リアルな生活に関わるところは不可能だ。例えば配達・運送、クリーニング、販売、農業漁業工業、食堂、インフラ(水道など)の保守、建設、介護・看護・医療、消防警察軍事、ゴミ回収や清掃などが考えられる。その各々の事務処理など部分的にはバーチャル移行が可能だが、その割合は多くないはずだ。プロスポーツを除くエンタテイメントの多くはバーチャルに移行可能だろうが、リアルに見たいという需要も一定数あるはずだ。

事務作業やプログラミング等は、国際的に分散する方が有利である。いわゆるIPであるが、メタバースにより従来より敷居は低くなるだろう。世界中が休みなくつながりAIアバターも使える状況においては、仕事のチームはむしろ世界に分散している方が有利である。つまり時間差で仕事を引き継いで行う形態が日常化するため、時間帯ごとにメンバーを募集するようなことが起きるだろう。

また、メタバースで完結する仕事については国際的なコスト(賃金)格差が縮小するだろう。端的な話、日本のような先進国では海外に仕事を持っていかれる率が高くなり、相対的に単価は下がる。ただ、持っていかれる先である海外(インド、フィリピン、ベトナムなど)でメタバース上の仕事を請け負う人たちは、安い給料の中でメタバース機材を揃え先進国並みの仕事ができるエリートである。

こういったものを経て、人生の何%がメタバース上に移行することになるのだろう、と色々計算を続けてみた結果、先進国の中間~上位層では30~60%が(低所得者層・新興国では10~30%が)メタバース上に移行する、との結論を得た。これは今後10~20年で起きる。分野によって移行化度は異なる。日本の場合、今の電子化率と比較して解説すると、以下のようになる。

領域 現状の電子化率 メタバース化の将来推計 根拠
行政 30〜40% 60〜80% 窓口業務の大半がオンライン化可能(高齢化で対面維持困難)
教育 20〜30% 40〜70% 教員不足・地域格差、XR授業の普及
医療 10〜20% 30〜50% 遠隔診療の拡大、医師不足
仕事 20〜30% 30〜50% 例外処理は残るが、会議・研修・一部作業がXR化
消費・娯楽 30〜40% 40〜60% EC+XRショッピング、XRライブ

ただこれは日本の平均であり、上位所得車窓では当然割合が上がり、低所得者層では低くなる。

また、これはここ10~20年の数字であり、遠い将来には80~90%がメタバース化可能になる。実用的には、先進国で70~85%程度がメタバース上で過ごすことになると予想する。

ここまで調べた上で考えると、結論としては


メタバースの普及は国際格差(国同士の富の差)を減らす


ということが言える。但し「先進国では国内格差が縮小するが、新興国では広がる」ことになる。

なぜかというと、新興国の上位10~20%の層は、先進国の事務作業をIPで奪うことになるだろうからだ。従来だと大規模開発の特定モジュールといったやり方しかなかったが、メタバース普及後はちょっとした例外処理を含む事務作業のレベルで発注が可能になる。すると結果としては先進国から仕事を奪うことになる。

一方、下位80%の層はこの恩恵に預かれない。従来より仕事が減る訳ではないが、上位層がリッチになるので結果として格差は広がってしまうのだ。だから新興国は、その上位層からの納税増を基に教育を充実させ、インターネットを普及させ、先進国から仕事を奪う層を広げていく必要があるだろう。

また、メタバースの普及は必然的に人の移動を減らす。オンライン会議がより普及するからだ。一方で物流は増えるだろう。ケータリングや宅配などだ。そして後者は前者より環境負荷が小さくなると考えられ、これは燃料たる石油消費を抑える方向に動くだろう。つまり環境変動(地球温暖化)阻止にも貢献する。

また先に示したように宗教紛争は抑える方向に動く。これをもっと広く捉えると、


メタバースの普及は戦争紛争テロといった暴力を減らす方向にも働く


のではないか。

ここには大きく二つの根拠がある。第一は、メタバース空間はインターネット以上に統制が取りづらく、またアバターがデフォルトなので、市民レベルでの国際交流は増えるのではないかと考えるからだ。紛争は相互理解が増えると減る傾向にある、というのは心理学上からも実績からも誰もが認めるところだろう。

第二は、メタバース空間で過ごす時間が大部分になれば、戦争紛争の大きな争点である民族対立や領土問題の価値は相対的に低減するからだ。従来のイメージでは

領土=生活空間+文化空間+経済空間+資源空間

だったのに対し、メタバースが普及することでその意識が

領土=資源空間

だけになる(他の要素がゼロになるわけではないが、重要度が下がる)。石油や稲作は必要だから完全にはなくならないものの、その価値が低下すれば争う意味も低下するだろう、と考えるのだ。

そして、第一第二をあわせて考えると、いわゆるナショナリズムは低下するし、国のプロパガンダの効力も低下する。そうなれば恣意的な戦争は国としても起こしにくいだろうし、大義名分があってもその支持率は相対的に低下する。

エストニアは積極的に電子政府化を進め、これが世界的知名度と地位を上げる結果となった。メタバースでも同じだ。メタバースに積極的に展開する国は、世界から知名度を集め、交流が広がり、結果として国を守ることにもつながる。

日本ではあまり効かないかもしれないが、小国はこの方向性を積極的に取り入れてはどうかと考える。

2026年2月14日土曜日

労働生産性向上策2:雇用と賃金

以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2025/08/blog-post_05.html

のようなことを考えてみたが、また別の視点から労働生産性について考えてみた。

日本の労働生産性はOECDの中でも低位にある。何が労働生産性向上の足を引っ張っているかといろいろ考えてみると、例えばIT化の遅れや既得権益などと候補は山ほど出てくるのだが、そういうものを羅列してひっくるめて抽象化して、と試みた結果、最終的に出てきた答えはこうだ。

過剰な安定志向

つまり、雇用の安定を求める余り、それ以外のもの(多くの場合は新たなチャレンジの機会)を逸し、成長や効率向上にストップが掛かっている、というものである。この例を挙げてみると、

  • 正規社員の解雇に対する条件が異常に厳しい
    • これにより正規雇用の人数を控えて非正規社員を多くする
    • 余剰人員の仕事を作るためにわざと仕事を非効率にする
    • 中間管理職を多く作って合議制にするなど無駄な会議を多く行う
    • 飼い殺しの費用が新規投資の費用を食い潰す
    • 儲かっている時に設備投資ではなく内部留保にカネが向きがち
    • 多層下請構造を構成し中間マージンが過剰になる
    • 新規採用の正社員の求人が異常に少ないため解雇を極端に恐れる
      • 組合員が雇用の安定を重視するため、労働組合が賃上げ交渉に消極的になる
      • 雇用保険が労使折半(海外では全額雇用側のところも多い)
      • サービス残業、ブラック企業がはびこる原因になっている
  • 電子化、ICT化、業務再編などの遅れ
    • 取引相手の顔色を伺い過ぎてお見合いになる
    • (短期的な)費用対効果を過剰に気にして導入に躊躇する
    • 日頃の業務手順が変わるのを嫌い、全体最適化に反対する
  • 既得権益の見直しに消極的
    • むしろ参入障壁を作って安泰にしたがる
    • 土地の所有権や賃貸住宅の居住権が強すぎる
    • いつまでも見直されないパチンコの例外
  • 中小企業に対する手厚すぎる保護
    • ゾンビ企業(3年以上利益を出していない)の割合が多い
    • 会社が倒産しそうになると国や銀行がすぐ助けてくれる
    • それでいて経営アドバイスはしない(金銭補助だけ)
    • 企業の負債はオーナーの無限責任という場合が多く、倒産したら即地獄(だから倒産を恐れる)
  • 再雇用の道が閉ざされている
    • リカレント教育が弱い
    • 正社員市場が狭い
    • 契約社員から正社員への雇用義務(5年)がかえって正社員採用を阻んでいる(4年で切る)
    • 同一労働同一賃金(むしろ契約社員の方が高い)が徹底されていない
  • 小規模自治体への過剰な保護
    • まだ1700もの自治体がある そのうち3割は人口1万以下 殆どの自治体が赤字
    • 地方交付税交付金(16兆円前後)
  • 2、3年で次々に代わる管理職
    • 長期的な計画を立てても自分の成果にならないので、何もせず穏便に過ごそうとする
  • 合議制
    • 責任の所在を曖昧にし失敗しても誰も責任を取らない
  • 複雑化する一方の税制や社会保障費
    • 整理し一本化することへの労力が甚大

まだまだあるだろうが、大筋は押さえていると思う。つまり、日本人は正社員からはみ出ることに対して他国よりもずっと怖がりで、その不安を解消するために様々な策を弄している。その中には我慢も多くある。そのため言いたいことが言えず、社会が萎縮しているのである。

とここまでくれば、解決策は実は非常に簡単で、法律をいくつか変えるだけで済む。それは、

  • 正社員の解雇条件を海外並みに緩めること
  • 契約社員やバイトの賃金を、正社員より有意に高くすること(例えば10%以上)

たったこれだけである。正社員は安定している代わりに安い、契約社員やバイトは不安定な代わりに高い、そして正社員はクビになっても契約社員になれれば所得は向上する、という図式である。

安定の対価が安い給料なら、不安定の対価は高い給料であるべきだ。これは当たり前のことだが、現実社会では逆になっている。これが過剰な安定志向を生むのである。

これが実現すると、会社は従来よりも正社員を解雇しやすくなるが、これは業務の再編に有利である。浮いたカネで新規投資もできるようになる。また、無駄に管理職を増やすよりも少数精鋭で決定権をもたせる方が安く上がるので、無能な中間管理職はいなくなる。それは同時に意思決定のスピードも上げる。また、業績が悪くなれば解雇が可能になるので、防衛のための内部留保は少なくて良いから安心して設備投資ができる。管理職が少なく実働者が増えれば生産性は向上する。ゾンビ企業からは人が逃げ出すのでさっさと倒産するから、それを生き永らえさせる銀行や国の負担も少なくなる。会社に我慢しないからブラック企業も減るだろう。

全てが良い方に回り始める。細かい調整(労働条件や経過措置など)の詰めは必要だろうが、これくらいなら走りながら考えられるから、すぐにでも着手してほしい。

2026年2月8日日曜日

頭の良さと成功の確率

 
高須クリニックの高須幹弥氏がYoutubeで大量の動画をアップしているのだが、その動画の中に「頭の良い人の特徴」というものがあった。曰く、頭の良い人は論理的思考能力が高く、長期思考で、忍耐力が強いのだそうだ。また、「足るを知る」傾向が強く、どん欲に幸せや快楽を求めないのだという。

まあそこそこ納得したのであるが、そこでふと「では頭の良い人は大金持ちにはなれないのでは?」と考えた。貪欲さがなければ会社を大きくしようとするモチベーションは起きないからだ。さらに言えば、バフェット、マスク、ゲイツ、ジョブズ、あるいは柳井、孫、三木谷、前澤といった人たちが頭がよくなかったかというとそうではない。みな頭が良い。またしゃべりっぷりを見ている限り、高須氏自身もかなり頭がよく、かつ金持ちである。

うーん、これはどういうことだろう。また、では逆に、頭が悪い人が社会的に成功しているかというと、やっぱりしていると思う。与沢翼は一度成功したが浮気して離婚してクスリにハマった過去があるし、スポーツや役者で当たって大金持ちになった人の多くはその後堕落している。

そう考えて少し調べてみたところ(生成AIに感謝!)、そういう学術的研究は既に存在しているそうで、「Talent vs Luck」モデルという有名な定量モデルがあるのだそうだ。

才能(実力)は人口に正規分布で広がるのに対し、成功(富)はべき乗分布(パレート分布)になる。その理由は「運」のモデルである。

このモデルではコンピュータシミュレーションを行って結果を検証した。つまり、正規分布で広がる「才能」と、長期間に渡ってランダムに発生する「幸運」を掛け合わせ、成功者がどう分布するかをシミュレーションで追跡調査する、というものだ。そこで得られた結論は「そこそこの才能と多くの幸運」、つまり運の方が成功を左右する要因である、ということだ。

以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2025/12/blog-post_05.html

という投稿をして、身もふたもない結論になったのだけれど、それと同じような結論になった。才能を磨くこと自体は成功の確率を上げるが、運にはかなわない、ということだ。

だが、こちらは身もふたもない話ではない。というのは、「運を上げる」ことは努力で可能だからである。これを端的に言うと「大数の法則」ということになる。

大数の法則とは、「確率的に起きる現象は、その試行回数が増えるほど発生数が多くなる」という現象のことだ。考えてみれば当たり前のことだが、これはつまり「外に出よ、機会を増やせ」という結論につながる。

例えば、あなたの欲求が「恋人がほしい」だとする。それにこの法則を当てはめるなら「出会いを増やせ」ということになる。部屋に引きこもってスマホを弄っていては「機会」は発生しない。しかし渋谷のスクランブル交差点に行って、気になる人を探しては道を尋ねる、ということを繰り返す、あるいは趣味のサークルに加入してみる。ネットのサロンで発言してみる、まあ何でも良いのだが、そうして「出会い」を増やせば、幸運の確率はそれに比例して上がるのだ。

そんなことしたって奇特に思われるだけだよ、嫌がられるよ、という気持ちは分かるのだが、それでもそれを千回繰り返せば、中には親切に道を教えてくれる人もいるかもしれない。それは部屋にこもっていては絶対に起きることのない「機会」である。千人に嫌がられても、千一人目に出会いがあれば、それで成功なのだ。

起業で融資を受けるのに銀行に何回も断られてようやく最後の一行に融資を受けられた、というのも同じで、「機会」を増やしたからできたことだ。このように「運」を能動的に得ることは可能なのであり、そして成功した人の多くはそれをやっている。それを「努力の賜物」と表現する人もいるだろうし、その何割かは確かに努力なのかもしれないが、これは実際には数学モデル的に正しい「運を上げる行為」である、ということが言えるのだ。

2026年2月7日土曜日

日本の移民社会化について

 
日本の人口減少率は、韓国などまだ上がいるとはいうものの、相当に激しい。日本の合計特殊出生率は2023年で1.20であり、これは2.07を下回ると人口減少という数字を遥かに下回っている。これを補うためには移民が必要だという議論がある一方、外国人の急激な増加に対する反発や不安が強いのが現状である。

現実問題として外国人は増え続けており、このままで推移すれば、2030年には外国人比率は3.5〜4.0%程度になると予想されている。2020年の実績が2.2%であることを考えれば、確かに急だ。ただ、イギリスは現在でも14%、2030年には15%だそうなので、全然深刻さは異なる。アメリカでも14.5%が15.5%になると予想されている。そう思えば、今の日本はまだまだ移民に慣れていないし、移民の数にしてもこの程度で留まるはずもなく、もっともっと増える。それも、何倍というレベルで増える。だから、先輩たる欧米に習った制度改革・意識改革が必要だ。

話は簡単である。受け入れに当たっての軋轢に関しては、日本人もある程度覚悟をすべきだし、受け入れた移民への教育の充実や資格認定などといった制度を整備すべきである。受け入れ側に(広い意味での)コストが掛からないなどということはあり得ないのだ。

この「覚悟」の具体的中身とは、文化的な摩擦が起きること、犯罪が増えること、教育にコストが掛かること、などだ。ある程度こちらから働きかけることは当然するとしても、今の生活を全く変えずに移民が一方的に日本に馴染め、というのは、現実として無理なのだ。もちろん全面的に我慢せよという意味ではないが、逆に言えば100%我慢せずに済むなどとは思わないことだ。

少し考えてみれば分かる。日本語がネイティブ並みに話せなければ受け入れられない、現地の文化習慣を完璧に理解しなければダメ、と言われたらどうだろう。これだけで、そのハードルは飛躍的に上がり、ごくわずかしか受け入れられないだろう。結果として、ごく少数の、地元には馴染むが仕事のできない移民が来るだけで、何のための移民なのか分からなくなる。日本が欲しいのは「働いてくれる若者」であって、日本の文化に馴染む者ではないのだ。技術を持ち、仕事をこなし、GDP向上に貢献してくれる人が欲しいのだ。評価基準が間違っている。

クルド人ヘイトや参政党の日本人ファーストは、イギリスでは鼻で嗤われるレベルの「ワガママ」に過ぎない。既に移民は多く日本に入ってきており、建築現場やコンビニなどでは日常的に見かけるようになってきている。中小企業にとって特に、移民はもう無くてはならない存在にまでなってきているのだ。そういう現実を無視していくら吠えたところで、何の解決にもならない。移民はもっと必要だ。その現実が分かっていない。

さて、ある調査によると、日本という国の外国人受け入れの文化的障壁は、欧米に比べて高いのだそうだ。それは単に制度の問題ではなく、社会慣習が違うからだ。その代表的なものは、規範意識の高さだ。社会のルールは、それが明文化されていようが不文律だろうが、また重要なものだろうがよくわからないものだろうが、とりあえず守るべき、と考えられている。これは逆に、ルールを守らないものに対する不寛容につながっている。外国人との摩擦の第一は、だいたいこれだ。

また、日本人は時間感覚に対してタイトだ。電車が5分遅れただけで社内アナウンスがあり、いちいち謝るのは日本くらいだろう。他にも、待ち合わせの時間にも敏感だ。友人レベルはともかく、社会人では5分の遅刻は致命的である。これも広い意味では「ルールを守ることへの固執」と言えるだろう。

日本語教室とか職能訓練とかは、それはそれでやってもらえば良い話である。だがこういった社会規範への固執は、外国人に「受け入れよ」と言うだけではなく、日本人全体に向かって「もう少し寛容になれ」とメッセージを発する(教育を行う)必要があるのではないか。

簡単な話である。2030年に外国人比率が4%になってそれが止まるかと言えば、あり得ない。2040年には10%とか15%とかになっている可能性はあるのだし、そうなれば海外との人の入れ替わりも頻繁になり、間違いなく教育は追いつかない。そういう移民が多い街では必然的に、社会のルールに対する意識はルーズになり、時間感覚も緩くならざるを得ない。受け入れ側たる日本人はそれを甘んじて受けなければならないのだ。

いやダメだ、厳格に管理し教育もするのだ、そうでない人は排除するのだ、と鼻息荒くイキがってみたところで、現実問題としてそれは無理だ。それができるものなら、アメリカでもイギリスでもそうしている。局所的にできることはあるかもしれないが、国レベルではハナから不可能である。

それは単純に規模の問題だ。1万人ならなんとか教育できても、百万人に対して厳格な教育を完遂するのは無理だ。日本語と生活習慣指導まで含めた一人あたりの教育コストを百万円として、年間30万人に教育を施すとなると、その予算は3千億円である。更に教育以外の費用、すなわち奨学金や就職支援、技術実習なども上乗せすれば、おそらく3千5百億円程度は必要だろう。これに対し、現在の外国人対応費はせいぜい数十〜数百億円程度であり、規模が一桁二桁少ない。

つまり、今の百倍の費用を捻出して教育に掛けなければ、その手法は不可能だ。そして、そこまでして教育を施したとしても、やはり数の暴力は生きている。つまり漏れはどうしても一定比率で生じ、外国人が増えるほど人数は増えていく。どうせダメと分かっているのだから、抵抗するのは無駄な努力である。

それよりも、そういう社会になっても回せるように、今から準備すべきである。そちらのほうがよほど建設的だ。それは単純に「時間にルーズになることを受け入れよ」ということではない。例えば、5分の遅刻は許しても20分の遅刻は許されない、といった、「実際の影響の程度を重視する」という発想に切り替えることだ。いつも主張している「量的議論」の一種である。

ルールを守らないことについても、些細なものなら許容し、重要なものは許さない。罰則も一律ではなく、段階的ないしはアナログ的に定める。そのルールは名言し、阿吽とか空気読めとかにはしない。そして最初から、その発想を前提に世の中を構築する。端的に言えば、時間に余裕を持って、あるいはルール違反者がある程度出ることを最初から想定して、計画を立てるのだ。

ルールを厳密に守ることは、その流れ自体を最適にする効果はある。例えば電車の運転時間を厳密に管理すれば、利用者は計画通りに物事を進めることができる。だが、そのルールを守るためのコストは膨大で、効率は極端に悪い。また、ルールを守ることが至上命題になってしまい、目的が疎かになる「手段の目的化」が起きやすい。こういうものはおしなべて「程度問題」であり、片方の極端に行くと効率は悪くなるが、日本はその「片方の極端」にいるのではないかと思う。

例えば、私が子供の頃には停電は結構あったが、現代ではよほどのことがない限り停電しない。停電対策の品質は世界トップクラスだと思うが、電気代は高い。少々の停電ならUPSや発電機などで対応は可能だから、本当にその品質が欲しい人はそういう備えをすることとして、大部分の人は年数回の停電は許容する代わりに電気代が3割安くなる、という世界のほうが幸せかもしれない。

常に「そのルールは何のためにあるのか」を考え、ルール自体よりもそちらを優先する考え方の方が、全体の効率は良くなるし、結果も良くなるのだ。そしてそれらはそんなに難しいことではないはずだ。実際、海外ではそれで回っていて、しかも日本より効率は良いのだ(一人あたりのGDP)。

また、せっかくICTが発達した世の中なのだから、ルールの遵守やその監視についてある程度自動化してしまい、ペナルティも自動で掛かってしまうような仕掛けを考えても良いと思う。性善説ではなく性悪説でシステムを組むことで、簡単にそれは実行可能だろう。例えばゴミのポイ捨ては監視カメラとAIで監視し、顔認識で自動的に罰金を引き落としてしまう、といったものだ。

外国人はそんなもの回避するだろうというなら、日本人だけ回避可能な仕掛けを作るのもよい。例えば医療費は全額支払い、後からデポジットで戻すためにはマイナンバーカードが必要、といったものだ。それはそれでコストだが、一度作ってしまえば後のコストは掛からないと思う。それでも仕掛けをかいくぐってくる外国人は、明確に悪質と認定できるので、追い出してしまえばよい。

これらはほんの一例であるが、ルールの明文化とその程度で問題にするという方法は、日本人にとってもメリットがあるはずだ。ルールにないことを強要してきたらそれ自体がルール違反にできるのだから、裏金やら不文律やら既得権益やらを追放できる。そうした方が、世の中住みやすい。

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