2026年2月25日水曜日

3Dプリンター木造建築工法3 脅威の性能とコスト

 3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良

の続き。

リグニンは、180~220℃でゾル状になり、3Dプリンタから射出できるようになる。この状態はまだ熱可塑性の状態にあり、いったん冷えると固まるが、再度この温度になると軟化する。そして、200℃以上で数十分~2時間程度保持すると「架橋化」し、完全に硬化する。こうなるともう熱を加えても軟化しなくなる。

これに対し、日本の住宅の耐火性能試験では、5分後に576℃、30分で842℃、60分で945℃になる。なのでリグニンは架橋化が必須である。そうしないと熱で軟化し、家が崩れてしまう。

だが、3Dプリンター印刷という特性上、200℃で2時間加熱をするのは不可能なので、触媒を用いる。触媒は低温下でも架橋化を促進するが、前回も説明した通り、3Dプリントにおける層間結合を強化するためには邪魔である(硬化した後は結合できない)ため、工夫が必要である。

そこで、架橋促進剤を、新たな層をプリントする直前に噴霧し、プリント後直ちに「ヘラの先端で押す」という操作を行う。これによって層がV字型に変形し、未硬化のリグニンの上下の層が混ざると共に架橋促進剤も混ざるため、層間結合と硬化が同時に完成する。架橋促進剤はその後、その他のところでも徐々に浸透し、硬化が完成する。これにより、前回提案した超音波過熱針及び注入ロッドは廃止する。

次に耐火性だが、20~30mmのリグニン層は廃止し、2mmの高リグニン防湿層+サイディング用の桟を3Dプリンタで形成し、サイディングは市販のものを使用する。これにより建築確認における耐火性の評価を既存の市販品のそれで代用できると共に、価格を大幅に落とすことができる。(リグニン層は高い。)

内装も、10mmのリグニン層は廃止し、防湿用高リグニン層2mmと石膏ボード用の桟までは3Dプリンタで加工し、石膏ボードは人手で貼ることにした。これでも透湿フィルムを貼る必要がないので通常より手間は減らせる。なお、外と中の高リグニン防湿層も、ヘラの先端で押して層間結合強化をする点は同じである。

なお、1層(高さ方向)の厚さは2mmとした。これはコンクリート3Dプリンタ住宅より遥かに薄いのだが、その理由は①即時(2層印刷後)で硬化が可能なのでコンクリートのように固まるのを長時間待つ必要がない、②硬化剤を層間に噴霧するので硬化剤が十分に浸透する薄さにする必要がある、という理由による。

また、断熱材は発泡剤により膨張するので、壁材のような精密な形状制御が困難である。このため、断熱材ヘッドだけはセンサで吐出先の状況を把握し、吐出量を自動調整する機能を追加する。

断熱材もリグニンを含んでいるので、充填すると壁(ハニカム材)に密着する。このハニカム材は構造材、即ち家の重さを支える材料である。一般的なウレタン吹付けでは断熱材は壁に張り付いているだけだが、この場合は六角柱の中に充填される。このため、断熱材はこのハニカム材の構造材としての性能を強化する。圧力耐性はさほど変わらないが、曲げ耐性が強まる。これを計算に入れた上で、ハニカムの厚さを薄くして材料費を節約することは可能になるだろう。結果として、ハニカム層の壁の厚さは2mmにした。ハニカム層全体としての(壁の)厚さは100mmにした。なお、断熱材にはホウ酸を添加して火災に備えるものとする。断熱材はハニカム構造の中に閉じ込められるため空気が動かず、つまり対流が起こらない。またビスや柱などの熱橋が原理的に存在しないため、壁の厚さが薄くても断熱性能は高くなる。

次に、全体として、木粉は止め、古紙パルプを使用することにした。こちらは価格が大幅に安く、繊維も長いためである。また、パルプの入手先(製紙工場など)は大量のリグニンを産業廃棄物として排出するので、リグニンの入手先としても有用と考えた。他、インクを除去していない低品質のパルプを断熱材用に使用し、ハニカム材と防湿層用には高品質のインク除去パルプを使用する。リグニンとインクの食いつきが違うそうだ。

リグニン自体も、無精製の安価なものを断熱用に、精製した高品質なものを防湿層とハニカム材に使用する。パルプと同様、適材適所にすることで価格を低減した。

溶剤を使わないので、いわゆるシックハウス症候群とは無縁になる。壁紙も塗装も当然対応可能である。ただ壁紙の場合、表面を均す必要はあるかもしれない。2mmとはいえヘラで押すこともあり、1mm以下の凹凸は多少あると思われる。

次に、基礎周りのプリントについて考える。通常、基礎には締結用のボルトが飛び出しているが、現在提案しているライン状のプリンタヘッドではボルトを避けられない。そこで、まず基礎にはボルトを埋め込むのではなく、ボルトを埋め込むための穴(ネジ切り)を埋めておく。そしてプリンタは、そのボルト穴の周りを避けるようにプリントするのだが、この際、C字型にしてプリントする。壁の内側に開口部を向ける形となる。もちろんその穴には断熱材は充填しない。そしてプリントが進んで想定ボルト高さを十分に超えたら、横に空いた穴からボルトを入れ、その隙間に高リグニン材(ハニカム材と同じモノ)を注入する。これは手動でも良いだろう。この方法での締結は、木造のホールダウン金物による締結と比べ、引き抜き耐力で倍以上の強度を出せると計算できた。

屋根周りであるが、最上部の防水層を高リグニン、その上の屋根材固定の桟までを3Dプリントで作り、屋根材はガルバリウム鋼板とし、人手で貼るものとする。防水層の下は当然ハニカム断熱層であり、ガルバリウム屋根固有の雨音を減衰することができる。屋根周りの強度設計も自在であり、必要なら太陽光発電パネルや太陽光温水器の設置も可能であり、配線用の穴やくぼみも3Dプリントできる。雨樋や排水路なども同様、一体成型可能だ。

これら変更を加えた後で、再度性能と坪単価を計算した結果が以下だ。

まず断熱性は、一条工務店の0.25W/(m2K)に対し0.20W/(m2K)と一条工務店超えを達成した。これは小さなエアコン1個で家中の冷暖房が可能なレベルである。またリグニンは保温性が高いので、深夜電力でそのエアコンを動かし、昼間は停止させる、といった使い方が可能である。

耐震性も鉄筋コンクリート(RC造)を上回り、耐震等級3を余裕でクリアする。RCは重量があるのでその分更にこちらが有利という結果が出た。これより、制震装置などは必要ない。むしろ家が丈夫すぎて地震のエネルギーを全て受け止め、家は壊れないが家具が飛ぶ可能性が高くなる。必要に応じ免震装置はつけるべきかもしれない。だとすると、免震装置の上に家をプリントすれば良いので、ここで建築を標準化できるかもしれない。耐風性もRC構造並みの剛性を持ち、気密維持も最高、飛来物耐性も高いことが確認できた。

防音性も完璧だ。壁も床もハニカム+断熱材で埋まっており、更に厚みも十分、隙間もないので、音が漏れない。計算によると、通常の木造の家がD-25~D-30、市販の防音室(ヤマハのアビテックスなど)がD-35~D-45なのに対し、D-45~D-55になるとの試算を得た。つまり家中が防音室と同じということだ。深夜に大音量で映画を見ていても、隣家には全く影響ない。(但し窓からは漏れるので要注意)

最後に経年劣化だが、これも木造や鉄筋コンクリート造を上回る性能が出るとの予想が出た。元々木材が持つ糖分・デンプン類が、3Dプリンタからの射出時の高熱で変性しているため、シロアリの好む餌ではなくなっていることに加え、防蟻材を「練り込む」ことが可能である。また、リグニンは架橋化するともうそれ以上劣化しない。木の化石を想像してもらうと良いのだそうだ。むしろ時間と共に未架橋の部分が徐々に架橋化し、強度は増すのだそうだ。

そして坪単価は、なんと25~35万円である。一般的な木造軸組み構造が60~80万円、一条工務店が80~100万円、RCが100~150万円、安さが売りのコンクリート3Dプリンタ住宅でも60~90万円とのことなので、あらゆる建築方式の中で最も安いという凄い結果が出た。

これは価格を追求した結果なのだが、当初の構想通り内壁層と外壁層をリグニンで作ることも可能だ。価格はRC並み(120万)になるが、圧倒的な速さで建築できる。養生と内装外装が大幅に減るためである。坪単価と自分の求める住宅性能を、それこそ指先一つで自在にコントロールできるのが、3Dプリンタ住宅の特徴とも言える。

何回も言っている気がするが、建築会社にこの案を拾ってもらい、具体的検証してほしいものだ。

2026年2月24日火曜日

3Dプリンター木造建築工法2 更なる改良


 参考:前回 SpockのHighTech夢想: 3Dプリンター木造建築工法

前回の続き。更に色々考え、実用に近づけた。

  1. 構造材の変更
    1. 前は柱材として玄武岩(バサルト)ファイバーと言っていたが、これを廃止し、壁全体をハニカム構造とする。柱材は無くす。
      1. 目的は、①コストの低減、②廃材の再利用性向上(マテリアルリサイクル及びサーマルリサイクル)、③繊維棒ロボットの廃止、④資源の有効活用(全部木で作る)、である。
      2. 材料として、リグニン、木粉(100~500μm)、長繊維木粉(500μm~2mm)を使用する。
        1. リグニンの配合を多くするほど硬くなり、その代わりに脆性が高くなる(割れ、ヒビ)。脆性を補うために長繊維木粉を配合する。木粉はフィラー(価格調整、かさ増し)で使用する。
        2. 壁全体をハニカム構造とすることで、壁全体で重量を支えることができる。
        3. 力が掛かる要所(角や玄関枠など)ではハニカム径を調整して強度を増す。壁材部分は40mm、要所は10mm、などだ。
        4. 横方向(根太、梁)にもハニカム構造を適用する。下側ほどハニカム径を小さくする。
      3. 単純にハニカムを積み上げ方向に形成すると層間結合が弱いため、これを補強する施策を追加する。
        1. ハニカム層は数層分の硬化遅延が起きる仕掛けを施しておく。(遅延剤添加など)
        2. ハニカムが1層をプリントする度に、上から超音波過熱針を差し込む。するとまず縦方向に繊維が通過し、更にその周囲が先に硬化し、縦方向の結合強度が高まる。
        3. あるいは数層分を貫通する細い射出ヘッドを差し込み、引き抜きながら長繊維木粉混合リグニンを射出する。
      4. ハニカムの中は断熱材(後述)で埋め、断熱する。但し要所で中空のハニカムを作り、これを配管用とする。
  2. 断熱材の変更
    1. 木質ファイバーを止め、木粉+リグニン+発泡剤とする。
      1. 木質ファイバーは3Dプリンタから吐出するのが困難で、また事前混合も困難であることより、素材の統一を優先する。
      2. これにより断熱性能は低下するので、壁の厚みを増すことで調整する。
        1. 壁材の想定は200mmである。外装面30mm(高リグニン 防湿・耐候)、ハニカム断熱層140mm、内装面30mm(高リグニン防湿・気密・難燃)となる。この厚さで十分、スウェーデンハウスに迫るくらいの断熱性能は確保できる。
        2. 合わせて気密性も極めて高く作れるので、高気密高断熱が実現する。
  3. これで素材は4種類で完結する。
    1. 外壁材:高リグニン+木粉+UV剤+耐候剤+難燃剤
    2. 構造材:高リグニン+長繊維木粉
    3. 断熱材:標準リグニン+木粉+発泡剤
    4. 内壁剤:高リグニン+木粉+難燃剤
    5. これらをペレットで供給し、3Dプリンタヘッドで加熱して吐出する。
  4. 専用の3Dプリンタとして、これら4種類のヘッドを合わせたマルチヘッドを設計する。
    1. 外壁用1、構造材用20、断熱材用1、内壁用1。構造材用だけ細く、紙にプリントするプリンタのように、マルチヘッドでハニカムを一度に形成する。
      1. 縦方向のハニカム結合強化用施策(2種)は、どちらかないしは両方のヘッドを追加する。
    2. これにより、200mmの外壁が一度で形成できる。

この構造について、やはり費用面や建築スピードの面などから検討してみたのだが、結果としては恐ろしく高効率低価格である。

コンクリート3Dプリンタ住宅は壁材しか作れないので、内外壁の作業が更に必要になる。内壁は断熱、防湿材、壁紙など、外壁は塗装などだが、こちらは一体で作ってしまうので必要ない。また壁を作る速度も圧倒的に早い。マルチヘッドを抜きにしても、即時に硬化するのでコンクリートのように固まるのを待つ必要がないからだ。

また床や梁も作ることができる。床の場合は、コンクリートベタ基礎の上にまずサポート材をプリントし、その上に根太に相当する横方向ハニカム構造をプリントする。根太の間には充填剤を入れ、最上部はまた壁材でプリントしてやる。天井の場合はサポート材を使うよりは人手で板を渡してやった方が良いだろう。その上にまた3Dプリンターで梁をプリントすれば良い。

コンクリート3Dプリンタ住宅の場合は、天井は別に作って運んで設置する必要があった。これに対し、こちらは支持材としての薄い板(例えばプラダン)を置くだけで、後はプリンタが作ってくれる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では不可能な、配管の穴を自在に空けることも可能で、電装や水回りの工程も大いに短縮できる。

また、コンクリート3Dプリンタ住宅では、窓枠部分はあらかじめ空けておいて、枠の上までプリントしたら人間が手で横長の棒を置き、またプリントを再開するのだが、木造3Dプリンタは窓の穴を空けず壁材を薄く積み上げることで印刷を続けることができる。木質なので完成後に穴を空けることは簡単で、薄く作っておけばそれこそパンチで空けられる。後はカッターで仕上げれば良い。そしてこの方法だと削り出しができる(コンクリートだとこれは難しい)ので、精度高く窓をはめ込むことができる。充填材も、通常ならシリコンシーラントを使うのだが、枠ぴったりにハメられるのならその量はごく少量でよい。ネジ止めも木ネジが使える。ドアも同様である。

他にも、室内壁を一緒にプリントできる、棚や押し入れなど簡単な造作も一緒に作れる、将来的には高精度プリンタを併用することで屋内ドアや窓枠(後はガラスをはめるだけ)のような可動部も一体でプリントできるだろう。これは後工程を大幅に短縮する。

屋根材も、最後にガルバリウムを貼る直前まではプリントできるはずだ。高リグニン材で形成すれば防水シートは不要だし、通気用の横木なども一体成型できる。その下の防音には断熱材が使える。

材質も全て木質系にしたし、高価なCNFなどは使わずに済んだので、坪40万円はやはり十分に狙えるとの試算が出た。

但し、建築確認の壁があるのはコンクリート3Dプリンタ住宅と同じである。ここまで考えるとさっさと試作したい(してほしい)」のだが、どこかの建築会社さん、拾ってくれないかなぁ。

2026年2月23日月曜日

ファミレス内簡易個室

 ファミレスの一角に、二重アクリルガラスで囲った簡易個室を作り、これを単位時間当たり幾らで貸し出す、というサービスを提案する。

アクリルガラスは半透明で、中に人がいることは分かるがプライバシーはある程度守られる。また二重にするので音は漏れにくい。アクリルガラスは天井まであり、あるいは天井が塞がれているため、音は漏れにくい。中の座席は一つから4つ程度まで色々ある。中では電源、またWiFiが提供される。また換気のためのファンがある。

この個室の目的は二つある。第一は、通常の「レストランの個室」としての機能。簡易個室なので室料は安くなり、気軽に利用できる。そしてもう一つは、駅や繁華街で見かけるようになったプライベートオフィスボックスの用途である。つまり中で仕事をするための空間である。

駅のオフィスボックスでなくここを使う理由は至極簡単で、そのファミレスの食事が提供されること、またファミレスのトイレが使用できることだ。オフィスボックスにはその機能がないため、長時間こもる際にはコンビニであらかじめ飲食物を買って持ち込む必要があったし、人の目がないのでトイレに行くのに機材を放置するのは不安があった。それらが解消できる。

ファミレスで長時間居座るのは迷惑行為だが、この場合は個室自体に課金がされるので、いくらでも居座ってもらって問題ない。しかも食事とトイレの問題が解決するから、通常のオフィスボックスより更に長く借りてくれる可能性が高い。店舗側としても文句はないだろう。

結構重要なのが昼休憩で、つまりは最初から個室に居座っていれば席は確保できているから、ランチの行列に並ぶ必要がない。また、同じく他の個室に籠もっている仕事仲間と通信でつながったまま会食ができる。離れた店舗でグループワークをしている仲間が、同じ時間に仕事を切り上げて昼休憩に入り、一緒に食事を楽しむことができるのだ。

これはけっこう新しいコミュニケーションの形態になるのではないだろうか。つまり、朝はまずこの個室に「出勤」し、テレビ会議でグループを全員つなげ、その後は各自で仕事をする。昼食も休憩も含めテレビ会議は繋げっぱなしにしておき、退勤すればすぐに自宅に戻れる、というものだ。

コロナ禍でリモート飲み会があったが、ああいうイレギュラーなものももちろん可能だし、毎日のランチならその頻度も多く、コミュニケーションも洗練されてくるはずだ。遠く離れていても気心が知れ、仕事の効率も上がるだろう。つまりこれは、会社としても都合が良いのだ。

本来、レストランの個室は特別感があったのだが、この場合は簡易個室である。特別感はいらないがただ他人の目が気になる一般人にとって、これは使い勝手が良い。そういう需要を喚起できるだろう。

このシステムが広く普及してくると、新しいオフィスの形として定着する可能性がある。地元の飲食店街がこぞって個室を導入し、ビジネスマンは会社ではなくそこに通うようになるだろう。これは移動距離を短くし、都心の高いオフィスを維持するコストを減らし、それでいてコミュニケーションは維持できる。地方活性化の起爆剤にもできるのではないか。

2026年2月21日土曜日

アカウントベースDRM

 今では誰も文句を言わなくなってしまったが、日本で地デジが導入されるに当たって、強力なコピーガードの機構(いわゆるダビ10)が導入され、物議があった。結局それは殆どそのままゴリ押しされた。

その不便さは、機器が故障した時に顕在化する。日本のDRMは、機器の故障に対して全く機能しない。つまり壊れてしまったら、録画済みの番組が何百あったとしても消えてしまうしかない。ダビングは10回までできることになっているが、ダビングしたものからの再ダビングはできないので、バックアップとしては機能しない。レコーダーの所有者は、機器を買い替えるたびにこの苦渋を味わってきたことになる。

これは世界で標準的かというとそうではなく、多くの国でもプロテクト自体はあるものの、特定のメディア(HDD)と強力に結びついたものにはなっていない。HDD間移動も可能だし、PC視聴もできる。レコーダーのHDDが壊れないかとびくびくする必要はないわけだ。HDDは壊れるものだから、これが普通ではないかと思う。この間、放送は衰退し、インターネット経由で見るVODが勢力を伸ばしてきたが、そんな背景もあるのではないかと疑ってしまう。

ちなみに、その強力なDRMで守られる権益は、数兆円に登るという。農協漁協のようないわゆる既得権益と見ることができるだろう。

これを解消するための仕掛けが、このアカウントベースDRMだ。話は簡単で、ユーザはサービス業者に対してアカウントを開設し、そこから暗号化キーを貰い、それを機器にセットする。それで暗号化されたコンテンツデータはコピー自由だが、サービス業者が保持している復号キーを使わないと視聴できない。機器にはそのユーザIDがセットされているので自動で復号して再生できる。一方、PCやスマホのアプリにもIDがセットされていて、再生ができる。同じIDのセットは機器毎に制限されていて、それ以上は移行処理が必要である。例えば機器が壊れたら機器からIDを引き上げ、新たな機器にセットするのである。

この仕掛けがあれば、正規ユーザは不便なく映像を再生できるし、自分の責任で定期的にバックアップをしておけば、機器が壊れても慌てる必要がない。一方、いくらコピーしてもID当たりで見られる数はごく少数であり、コピーガードの役割はダビ10よりも有効に働く。また不都合があり映像公開を止めたい時は、復号キーを無効にするという措置も可能だ。

ダビ10が始まったのは2008年とのことだが、これはまだWindows Vistaの時代で、インターネットが普及していたとは言い難い。だから当時この仕掛けを導入できなかったのは仕方ないとしても、今ならこれはできて当然である。またこれは他のVODにも適用可能だから、世界中でこれを標準化して広めてはどうかと思う。

2026年2月20日金曜日

3Dフードプリンタ応用デリバリー

前回、3Dフードプリンタの具体的設計を試みた際、カートリッジの数が多くなり過ぎること、また食材カートリッジの多くが冷蔵となり、都度のプリントで使われるカートリッジは少数であることより、賞味期限管理が問題となることを指摘した。これに対し出せる一つの回答は、「プリントする料理を限定する」ということになる。また、そうなると家庭用ではなく業務用、例えば和食専門店とか洋食デリバリー用とかへの展開が考えられる。

そこで、「洋食デリバリー用」のような形態を考えてみた。ハンバーガーとかラーメンとかで考える筋もあるのだが、これらは3Dフードプリンタのメリットが出にくいと考えられる。つまり、例えばハンバーガーならバンズと挟むもののバリエーションしかないから、それを個別に用意した方が簡単なのだ。ある程度メニューのバラエティ(特に形状のバラエティ)が必要である。

食材カートリッジとして肉系しか使わない、フレーバーも洋食系のみ、とすれば、一つ一つのカートリッジを大きくしても耐えられる。プリントする時間はせいぜい10分とか15分とかなので、作っている間にケータリング業者を呼び、渡せばよい。そして作成網を薄く広く募集する。極端な話、一般家庭に置いてもらってバイト感覚で運用する、なども考えられる。家庭では自分用にプリントする傍ら、注文が来ればそれをプリントして業者に渡すことで小遣いが貰える、という次第だ。もちろん保守はその家で行う。

和食デリバリーでも同じ展開をして、相互に融通できるようにしてやると、更にメニューは広がる。つまり和食用プリンタと洋食用プリンタは別の家にあり、和食が多い家では和食プリンタを、洋食が多い家では洋食プリンタを置く。双方を総合メニューとするチェーンにすれば、外からはバラエティ豊かなフードデリバリーに見える。

このデリバリーには従来と違う特徴が一つあって、それは冷蔵のまま配達するということだ。着いてから電子レンジで温める。そうすることで配達時間が短縮できるし、衛生上も好ましい状態にできる。すぐに食べないときは冷蔵ないしは冷凍することも可能だ。これであらかじめ注文しておいて食べたいときに食べる、という新しいデリバリーの形態を作ることができる。

2026年2月19日木曜日

3Dフードプリンタの具体的設計



もうずいぶん前だが、寿司を3Dプリンタで出力する、という試みが行われた。

https://www.open-meals.com/

その後音沙汰を聞かない。クッキーやチョコのようなものの3Dプリンタフードはたまに見かけるが、これを常食とすることはないだろうから、寿司には期待していたのだが。

ここで言う3Dプリンタフードとは、常食を前提としたものだ。寿司はその一つだが、例えば肉や魚、野菜、コメ、麺、などの日常で食べるものを、素材の投入とボタン一つだけで生成するというものになる。そしてその素材は、3Dプリンタのフィラメントのように、常温で保存ができる粉ないしは固体・半固体(ゾル状)などであって、複数の素材を混ぜることで汎用的な食材に変貌するものを意味する。

これを生成AIの助けで具体化してみたものがこちらだ。


  • 基本スペック
    • 料理のバラエティは家庭級(50~100)和洋中その他織り交ぜ
  • 3Dフードプリンタ概要
    • 1人用冷蔵庫と同程度の大きさ
    • 上段がカートリッジ格納ゾーン、中段が3Dフードプリンタ、下段が取り出し口
      • カートリッジ投入扉、清掃扉(ノズル等の洗浄)、取り出し扉(完成した食品の取り出し)
    • 出力後、水カートリッジでフラッシュ、エアブロー、乾燥 (半自動、排出した水の回収)
    • ノズル・インナーの清掃は週1回(清掃扉を開け、外して洗い、元に戻す)
    • カートリッジは必要に応じ補充(1個を使用、1個を交換用として保持、必要に応じアラームが出るので指示に従って交換)
    • スマホにて操作、レシピを選択して実行 完了するとスマホに通知
    • 完成品は冷たいので必要に応じてレンジ加熱
  • 食材カートリッジとフレーバーカートリッジ
    • 食材カートリッジは大容量、フレーバーカートリッジは小容量
    • 食材カートリッジの多くは冷蔵となる(補充用のカートリッジは別に冷蔵庫保管)
  • 食感カートリッジとして「方向性繊維」「水分保持ゲル」を備える
    • サラダやごぼう・根菜の食感を出せる

1) カートリッジ体系

  • 食材カートリッジ(12本):栄養・食感・主菜/主食の「骨格」を作る
  • フレーバーカートリッジ(14本+任意2本):料理カテゴリ(和/洋/中/その他)を確実に切り替える「世界線スイッチ」

2) 食材カートリッジ(12本)一覧

目的:“系列バレ”を防ぐため、タンパク・脂質は最低3系統、炭水化物は物性3系統に分ける

形式:家庭級の現実解として「冷蔵カートリッジ中心」(常温は粉末系・油系)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 主な役割(何を作るか) 推奨保管
タンパク P1 肉系(チキン/ビーフ系) 鶏/牛由来ペースト、または同等の肉様基材 肉の“密度・余韻”の土台(主菜) 冷蔵/冷凍
P2 魚系 白身魚/練り物様基材 魚の“軽さ・ほぐれ”の土台(主菜・和中) 冷蔵/冷凍
P3 植物系(大豆/エンドウ) 大豆/豆系ペースト 汎用・低コスト・副菜/つなぎ(主菜も可) 冷蔵
脂質 F1 高融点脂(肉・揚げ物) 牛脂/固形脂に相当 コク・揚げ物/肉の満足感 冷蔵
F2 低融点脂(魚・あっさり) 魚油/低融点油に相当 軽さ・魚介/冷菜のリアリティ 冷暗所
F3 中性脂(汎用) 植物油 和洋中のベース・乳化基材 冷暗所
炭水化物(物性) C1 粒状・崩壊型(ご飯系) 米粒様ゲル/粒状デンプン構造 “ご飯”カテゴリを成立 冷蔵
C2 連続体・弾性(麺/パン) グルテン/ゲル弾性生地 麺・パン・生地系 冷蔵
C3 マッシュ・粘性(芋/副菜) 芋・かぼちゃ等のピューレ 付け合わせ・和惣菜 冷蔵
食感/状態 T1 水分保持ゲル(サラダ基材) 高含水ゲル(葉物感) “サラダ/冷菜”の土台(生っぽさ) 冷蔵
T2 方向性繊維(ごぼう/根菜繊維) 繊維束構造基材 ごぼう等「裂ける食感」担当 冷蔵
栄養/繊維 N1 食物繊維・ミネラル 可溶/不溶繊維+ミネラル 腸・栄養の底上げ(常設) 常温/冷蔵
K1 色(ナチュラル) 野菜色素など 見た目のカテゴリ分け(和洋中) 常温

3) フレーバーカートリッジ(14本+任意2本)一覧

目的:家庭級のバラエティは “料理カテゴリ(世界線)” が切り替わることが最重要

3-1) 基本14本(家庭級50〜100の標準)

区分 ID カートリッジ名 中身(例) 世界線への効き方 使い方(配置)
味(Taste) T-S SALT 塩味溶液 和/中の輪郭・洋の下支え 全体に薄く
T-A ACID 酢/酸味 サラダ/酢の物/中華のキレ 表面〜浅層
T-W SWEET 甘味 照り焼き/煮物/洋ソース たれ層
T-B BITTER/AST 苦味/渋み ごぼう/山菜/緑系のリアルさ 局所(微量)
T-H HEAT 辛味 麻辣/エスニックの決め手 点在(微量)
旨味/発酵 U-G UMAMI-G 昆布/野菜旨味 和の基盤、洋の下地 中層
U-N UMAMI-N 核酸系旨味 肉/魚の“厚み”寄せ 中心〜奥
U-F FERMENT 味噌/麹/酵母 和の奥行き・デミ方向 中層
U-R ROAST 焼き/炒め香 洋の焼き香・中華の炒め 表面〜脂相
香り(Aroma) A-F AROMA-FRESH 青/柑橘 和の爽やか・冷菜 表面ミスト
A-L AROMA-ALLIUM 葱/生姜/にんにく 中華/和の炒め煮の核 中層
A-H AROMA-HERB/SP ハーブ/スパイス香 洋/エスニックの核 表面+中層
粒/刺激 P-P PEPPER/SANSHO 胡椒/山椒 和中の締まり・別物感 表面点在
P-C CURRY BASE カレー核 「その他1割」を確実化 全体

3-2) 任意追加2本(おすすめ)

ID カートリッジ名 中身(例) 追加すると増えるメニュー
A-M MARINE(海) 海苔/磯/魚介香 魚介・和の幅が増える
A-D DAIRY(乳) バター/クリーム香 洋(クリーム系/チーズ系)が増える

4)これで作れる「具体メニュー50個」案

和食(20)

  1. だし醤油チキン(照りは弱め)
  2. だし白身魚(煮付け風)
  3. 味噌つくね(鶏)
  4. 味噌豆腐ハンバーグ(植物)
  5. 照り焼きチキン
  6. 照り焼き魚風パテ
  7. 生姜焼き(豚風)
  8. 肉じゃが風(肉+芋マッシュ)
  9. 鯖味噌風(魚系)
  10. きんぴらごぼう
  11. ごぼうサラダ(マヨ風)
  12. 酢の物(きゅうり・わかめ風)
  13. 南蛮漬け風(酸甘)チキン
  14. 和風おろし(さっぱり)ハンバーグ
  15. 塩焼き(焼き魚風)
  16. 鶏そぼろ丼風
  17. だし巻き卵風
  18. 茶漬け風(だし+塩)
  19. 和風カレーうどん風
  20. 胡麻和え風(青菜)(胡麻は“その他粒”で代替可)

洋食(15)

  1. トマトハーブチキン
  2. ミートソース風(肉パテ+トマト)
  3. デミ風ハンバーグ
  4. ハーブグリル(魚)
  5. ガーリックバター風チキン
  6. クリームシチュー風(拡張)
  7. チーズ風リゾット(拡張)
  8. オムレツ風(拡張すると強い)
  9. バジルジェノベーゼ風(緑)
  10. ローストオニオンスープ風
  11. ビターカカオ風(デザート寄り)
  12. フィッシュ&チップス風
  13. ハーブレモン風サラダ
  14. ミネストローネ風
  15. ペッパーステーキ風

中華(10)

  1. 生姜葱チキン(中華蒸し鶏風)
  2. 回鍋肉風(甘辛炒め)
  3. 麻婆“豆腐”風(植物)
  4. 麻辣チキン(花椒風)
  5. 青椒肉絲風(歯ごたえ寄せ)
  6. エビチリ風(魚系+酸甘)
  7. 酢豚風(酸甘)
  8. 担々麺風(ごま無でも成立する版)
  9. 中華スープ(葱・生姜)
  10. 炒飯風(香り重視)

その他(5)

  1. カレー(基本)
  2. グリーンカレー風(ハーブ強)
  3. タコライス風(酸+香草)
  4. ナンプラー系エスニック“風”(海があると強い)
  5. スパイス焼き(BBQ寄せ)

どうだろう。ここまで設計すると具体的に想像ができる。これなら少々不味いものしかできないとしても一定の需要はあるはずだ。例えば自炊が困難だが外食やコンビニ弁当を毎回買いに出るのが辛いという層、また極端な面倒くさがり層などである。例えば一人暮らし、乳幼児の多い家庭、足が悪い高齢者、暑がり寒がり、精神疾患・未病不具合の人、などだ。

また、レシピを調整することによって、離乳食や糖質制限食など、様々な食のニーズに対応できる可能性がある。ここには菓子類が書いていないが当然それも検討の遡上に載る。宇宙船や船舶、離島などでの需要もあるだろう。

細かいところでは色々ツッコミはある。例えばカートリッジ数が予想を超えて多くなり、管理が大変そうだ。フレーバー系はともかく、メイン(食材)カートリッジはもう少し減らしたいところだ。

メインカートリッジの容量は、初期設計では300mLだったのだが、これが12本+予備12本と考えると24本、合計で7.2Lになる。これだけでも結構な重量で、筐体の上部にこれがくるため、重量バランスが悪い。

しかも例えばハンバーグ一つに100mLの肉系カートリッジを使えば、3人前で交換しなければならない。プリント途中での人手によるカートリッジ交換は使い勝手を損ねるし、全自動にするとしたらこのサイズには収まらないだろう。

また、カートリッジのほとんどはその1回では使われないので、計画的に食材のローテーションをしてやらないと賞味期限が来て廃棄するカートリッジが多くなってしまうだろう。冷蔵ではなく常温保存可能なカートリッジの模索が必要かもしれない。

だが、これをベースに追加で設計していけば、本当に何かができそうな気がする。

2026年2月18日水曜日

日本と世界の右傾化とその理由

 「日本は右傾化している」マスコミのそういう指摘に対して、「いや今までが左だったのが正常に戻っているだけだ」というコメントをしている人が、SNSに限らず議員などでも見かける(高市氏本人ですらそう言っている)。だがこれは、結局右傾化を認めたということである。右傾化とは文字通り「右に傾く」つまり向きとしてどちら方向に動いているかを示すもので、原点がどこにあるかは関係ない。また右派から見ればそう考えるとしても、左派には左派の考える「正常(原点)」があり、つまりは所詮水掛け論に過ぎない。だからこれは屁理屈であり、なんだか与党議員までがネトウヨ発言をするなあ、と思いながら見ていた。

そこで、右傾化の根拠について生成AIに調べてもらった。ステップとしてまず、右左と一言で言っても様々な軸があるので、その軸について定義してもらった。その定義による評価軸で定量化可能なアンケート等のデータを探し、更に正規化(-1~1。1が右、-1が左)してもらった。最後にそれをグラフに表示した。なお、各軸の定義は以下の通りである。

  1. 経済的右派軸:市場自由主義の浸透と保護主義的右派の台頭
  2. 社会・文化的右派軸:伝統的・排他的価値観への回帰
  3. 制度的権威主義軸:自由民主主義の質の後退(V-Dem指数を反転)
  4. ポピュリズム軸:反エリート・反多元主義的言説の拡大

まずは世界のデータを見てみる。

経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的権威主義軸 ポピュリズム軸
2000年 -0.12 -0.35 -0.65 -0.50
2005年 -0.05 -0.28 -0.60 -0.42
2010年 0.08 -0.15 -0.52 -0.20
2015年 0.22 0.12 -0.30 0.15
2020年 0.38 0.35 0.25 0.48
2025年 0.45 0.52 0.40 0.65

どの軸も一律に右上がりになっている。全ての指標がゼロを超え、反対側に行ってしまった。正に思想の大逆転である。

次に日本だけについて再調査してもらうと、以下のようになった。

経済的右派軸 社会・文化的右派軸 制度的安保軸 ポピュリズム軸
2000年 0.05 -0.65 -0.20 -0.70
2005年 0.25 -0.60 -0.15 -0.55
2010年 -0.15 -0.58 -0.18 -0.40
2015年 0.30 -0.50 0.10 -0.20
2020年 0.35 -0.42 0.25 0.15
2025年 0.40 -0.35 0.65 0.45

こちらは世界ほど極端ではないが、やはりベクトルとして明確に右傾化している。それでも絶対値としてはまだ「社会・文化的右派軸」が0より下にある。

「社会・文化的右派軸」は、右が伝統的価値観、左が世俗的・合理的を表しているが、これについてAIに聞いたところ、日本には宗教的権威が存在せず現世利益的な宗教観があるからだ、ということらしい。そのため、宗教的項目を重視する国際指標では日本の保守性は捕捉されにくく、一方で防衛費や憲法改正といった「制度的安保軸」においてその右傾化傾向が顕著に表れるという構造になっているのだそうだ。そして確かに制度的安保軸はしっかり上昇している。

これらの右派傾向の理由について、生活苦や不当な圧力などへの不満の裏返しではないかと思い、そう聞いてみたところ、


『ご指摘の通り、近年の右傾化や権威主義化、そしてポピュリズムの台頭は、単なる思想の変容ではなく、生活環境の悪化や既成秩序への強い不満、あるいは「自分たちが不当に扱われている」という被害意識の裏返しであるという分析が、多くの政治学・社会学的調査で支持されています。』

中略

『グラフで示した右傾化の数値上昇は、単に人々が思想的に保守化したというよりも、「今のシステムでは自分たちの生活や安全が守られない」という切実な危機感と、それをもたらしている(と見なされる)内外の要因に対する拒絶反応であると解釈するのが妥当です。特に2025年におけるポピュリズム軸や安保軸の突出は、戦後長く続いた「安定した中間層」の崩壊と、地政学的な平穏の終焉がもたらした、社会の構造的な摩擦の結果であると言えます。』


とのことだそうだ。

右傾化というのは二次的現象であって、真に憂うべきは貧困や社会不安なのかもしれない。だからといって右傾化が良いと言うことではない。更に続けて「では右傾化によってそれは緩和するのか」と訊いたところ、


『結論から申し上げれば、専門家の分析や統計データは、右傾化の進展が必ずしも生活苦や不満を根本的に解決するわけではなく、むしろ新たな社会的・経済的リスクを生じさせる可能性が高いことを示唆しています。』

中略

『右傾化は、現状への強い不満に対する「心理的な防衛反応」としては機能しますが、生活苦という構造的病理に対する「治療薬」というよりは、痛みを一時的に麻痺させ、かつ副作用(増税、福祉削減、社会の分断)を伴う「強い鎮痛剤」に近いと言えます。2025年から2030年に向けて、右派政権がこの「副作用」をどう制御し、実質的な生活改善に繋げられるかが、社会の安定を左右する大きな焦点となります。』


とのことだった。私の感覚とこれは合致する。先の消費税減税についての分析もそうだったし、移民政策の分析も、積極財政の議論もそうだった。冷静に考えれば中長期的に全部自分に返ってくるのに、目の前のニンジンに尻尾を振っているのが今の右傾化の実態なのだ。

人々は感情に任せて右傾化するのではなく、冷静に論理的に判断をすべきである。


2026年2月17日火曜日

3Dプリンター木造建築工法

3Dプリンターを使った建築は、いくつか実用化し始めている。だがこれらはコンクリート前提であり、重く、建築確認も難しい。木造でこれをできないかと考えてみた。これをご紹介する。

まずは構成から。


壁はリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで形成する。この壁は構造材ではなく、後で示す断熱材充填の器として、また同じく後で示す構造材の器として形成する。

構造材は、バサルト(玄武岩)ファイバーコイルとリグニン配合木粉エンジニアリングウッドで構成する。壁を3Dプリンターで作る際、構造材となる部分は縦穴となるように隙間を開けておいて、ここに上からバサルトファイバーを差し込み、隙間をエンジニアリングウッドで埋める。この隙間を埋めるエンジニアリングウッドは、壁材と違ってリグニンを高配合した硬い素材である。

また、このリグニン高配合素材は、内壁のごく薄い部分にも使用する。これは防湿材として機能する。一方、最外壁には微細な穴を開けて放湿する。

バサルトファイバーは単体では自立できないので、あらかじめエンジニアリングウッドに浸漬し、薄くコーティングした棒材として作っておく。これは50cmサイズで、数本を束ねて性能確保するものとし、縦方向には少しづつずらして配置する。

縦穴にバサルトファイバーと高リグニン木粉エンジニアリングウッドを充填すると、これが固まって構造材としての性能を出す。

断熱材としては、木質ファイバーと発泡リグニンの混合材を使用する。壁材はあらかじめ中空で作り、その隙間にこの断熱材を注入する。

3Dプリンタは、3種の素材、すなわち壁材用、構造材用、断熱材のノズルを持ち、またこれとは別にバサルトファイバー棒を自動供給するロボットから構成される。


これらを作るに当たって検討したことは、次のとおりだ。

  • コンクリート3Dプリンタは今でも鉄筋の補充が必要で、自動化の程度が低い。途中で人の手が多く掛かるようではダメ。できるだけロボットが自動で作れる必要がある。
  • コンクリートは断熱性が低く、自重も重いため、地盤が弱いところでは使いづらい。木質系で考えたい。
  • 木粉エンジニアリングウッドは構造材(柱)として認可されていないが、これは引張強度が足りないため。だから鉄筋のような引張耐性のある素材が必要。
  • 鉄筋は錆びるが、コンクリートが強アルカリのため使える。エンジニアリングウッドは中性だからこの手は使えない。
  • エンジニアリングウッドと鉄筋の熱膨張率は違い過ぎるので、使うには色々工夫が必要。熱膨張率が近い素材を使った方が楽。
  • バサルトファイバーは鉄筋より熱膨張率が木に近いが、まだ少し差があるので、コイル状に加工して使う。また自動で配置するには繊維のままでは扱いづらいので、後に充填する素材と同じエンジニアリングウッドに浸漬し、棒状にする。
  • 3Dプリンタでファイバー棒を扱うには長いと都合が悪いので、50cm長とする。するとそのつなぎ目は当然引張強度がないため、複数を束ねて使い、少しづつずらすことで対処する。
  • 断熱材も自動充填したいが、発泡ウレタンは熱膨張率が高く、また透湿性がないこともエンジニアリングウッドと相性が悪い。
  • 木質ファイバーだけだと射出困難なので、発泡リグニンとの混合材として使用。発泡リグニンが木質ファイバーの位置固定に役立ち、自重で沈むなどの経年劣化を押さえてくれる。
  • 構造材の品質を安定して出せるので、建築確認を取得しやすいことが期待できる。
    • 3Dプリンター建築は縦方向の引張強度が出せないので、日本では建築確認が難しい。これを避けるために鉄筋や鉄骨をわざわざ入れて、3Dプリンター建築の良さを台無しにする設計がまかり通っている。

この建築法には興味深いところがいくつもある。総じて言うと、3Dプリンター建築と言っても全てができるわけではないのだが、コンクリート住宅の場合はできなかった手間のいくつかを省くことができる。


  • 防湿材を貼る必要がない。内側から外側に向けて透湿性が順に上がる設計である。また防湿材の隙間や貼り忘れの心配がない。
  • コンクリートと違って木材用の加工が可能であり、細かい調整が現場レベルで可能である。
  • ベッドや棚など簡単な構造のものは一緒に作ることができる。
  • 配管の穴などもあらかじめ作っておける。
  • 支持材は必要だが、床材や天井材も一体成型できる。(さすがに屋根は無理)
  • 隙間無く作れるから、高断熱だけでなく高気密が期待できる。
  • 施工にミスや手抜きがあり得ないので、コンピュータシミュレーションの結果と現物の差は小さくなる。
  • 材料のバリエーションが極めて少ないので調達が容易である他、解体でも廃材の整理がしやすい。
  • 人間の手を煩わせるところが極めて少なく、一般の建築はもちろん、3D プリンタコンクリート住宅と比べても、建築スピードを速くすることが期待できる。
  • 材料の大部分は木粉とリグニンであり、難燃性ではあるが高熱で処理すれば燃える。つまりサーマルリサイクルは可能である。また一度硬化したリグニンは回収困難だが、コンクリート同様骨材としてのリサイクルは可能である。
  • リグニンは熱硬化性樹脂である。つまり吐出と共に熱処理すれば直ぐに硬化するので、コンクリートと比べて高速に建築が可能である。

この仕様でのコストを生成AIに見積もってもらったところ、木造や3Dプリンターコンクリート住宅よりは高く、鉄筋コンクリート住宅よりは安くなるという微妙な結果になった。だが、その高価格の主な要因であるバサルトファイバーとリグニンの価格は、今後5年で劇的に下がる見込みがあるとのことであり、もしそうなれば木造住宅も3Dプリンターコンクリート住宅もぶっ千切って、最低の坪単価となる。試算によると、坪単価は40万円だ。つまり100平米(30坪)でも1200万円でできる。今の時代、ちょっととんでもない低価格である。

これは見込みがあるのではないか。どこかの建築会社で検討してもらえないだろうか。

2026年2月16日月曜日

メタバースが世界を救う

非常に大雑把な一般論だが、ハイテクは上手く使えば格差是正になる

その良い例は音楽制作だ。かつて音楽は大金持ちや貴族のたしなみで、庶民は縁遠かったが、今やYouTubeでボカロ曲が普通にヒットする時代になった。これは作曲家や演奏家の大衆化と言える。裾野が広がったことで大量の音楽家ができ、世の中には音楽が溢れるようになった。高度な学習も高価な楽器も必要ない。パソコン一つでプロ並みの音楽を作れるようになった。

もっと生臭い例を言うと、ロシア・ウクライナ戦争においてドローンが大活躍している。ロシアとウクライナの戦力差は本来なら致命的なもののはずだが、ウクライナがドローンを上手く活用しており、その戦力差は縮まっている。鳥取県と同程度の経済規模しかない北朝鮮が米国と渡り合っているのは、核兵器があるからだ。

これに準じて、もし全ての国でメタバースが本格的に普及したら、どんな格差が是正されて世界は平和になるのだろうか、と考えてみた。

単なるインターネットとメタバースが異なるのは、視覚情報をフルに使って、また体を使って表現ができることだ。プログラミングなどの技巧的なものがなくとも、例えば幼児でも、簡単に国際交流ができる。この、より直感的な交流は、一つの重要な鍵になるだろう。自動翻訳がこれを更に助長する。

そしてもう一つは、ワールドの設計である。お互いがお互いを無視するワールドも、共存するワールドも、敵対するワールドも作ることができ、それらは独立に動かせる。つまり無視したい人は無視ワールドに、共存したい人は共存ワールドに、と棲み分けができるのだ。これは、例えば宗教対立のような問題に、一定の切り分けをすることが可能になる。例えば、キリスト教用とイスラム教用と共存用の三種のワールドに各々総本山(メッカ)を作り、どれが正でどれが副ということはない、と定義できる。(もちろん対立用ワールドを作って中でつかみ合いの喧嘩をすることも可能だが、バーチャルである限り無害である。)

ただ、メタバースによる格差是正は、あくまでもオンラインに乗るものだけだ。人はメタバースだけで生きるに非ず。現実には毎日食事をしなければならないし、風呂やトイレも必要だ。物価も住んでいる所によって違う。電気ガス水道通信、医療もリアルな世界では必要だ。

現実の生活において、バーチャルに移行できるものが何割あるかによって、その格差是正の程度は変わってくる。概ね、今のインターネットで出来ていることはそのままメタバースでも使えるだろが、メタバースでプラスアルファでできるようになること、メタバースで使い勝手が良くなり利用者が増えるであろうこと、がどのくらいあるか。

まず教育。移行できないのは走り回るスポーツ、柔道のように相手と接触するスポーツ、水泳、などが考えられる。卓球は既にできるし、体操や太極拳などもアプリがある。だがホームルームや学園祭など、バーチャルでも可能ではあるがリアルでやりたい、という需要も一定量あるはずで、特にその傾向は低学年ほど多いだろう。

次に仕事だが、リアルな生活に関わるところは不可能だ。例えば配達・運送、クリーニング、販売、農業漁業工業、食堂、インフラ(水道など)の保守、建設、介護・看護・医療、消防警察軍事、ゴミ回収や清掃などが考えられる。その各々の事務処理など部分的にはバーチャル移行が可能だが、その割合は多くないはずだ。プロスポーツを除くエンタテイメントの多くはバーチャルに移行可能だろうが、リアルに見たいという需要も一定数あるはずだ。

事務作業やプログラミング等は、国際的に分散する方が有利である。いわゆるIPであるが、メタバースにより従来より敷居は低くなるだろう。世界中が休みなくつながりAIアバターも使える状況においては、仕事のチームはむしろ世界に分散している方が有利である。つまり時間差で仕事を引き継いで行う形態が日常化するため、時間帯ごとにメンバーを募集するようなことが起きるだろう。

また、メタバースで完結する仕事については国際的なコスト(賃金)格差が縮小するだろう。端的な話、日本のような先進国では海外に仕事を持っていかれる率が高くなり、相対的に単価は下がる。ただ、持っていかれる先である海外(インド、フィリピン、ベトナムなど)でメタバース上の仕事を請け負う人たちは、安い給料の中でメタバース機材を揃え先進国並みの仕事ができるエリートである。

こういったものを経て、人生の何%がメタバース上に移行することになるのだろう、と色々計算を続けてみた結果、先進国の中間~上位層では30~60%が(低所得者層・新興国では10~30%が)メタバース上に移行する、との結論を得た。これは今後10~20年で起きる。分野によって移行化度は異なる。日本の場合、今の電子化率と比較して解説すると、以下のようになる。

領域 現状の電子化率 メタバース化の将来推計 根拠
行政 30〜40% 60〜80% 窓口業務の大半がオンライン化可能(高齢化で対面維持困難)
教育 20〜30% 40〜70% 教員不足・地域格差、XR授業の普及
医療 10〜20% 30〜50% 遠隔診療の拡大、医師不足
仕事 20〜30% 30〜50% 例外処理は残るが、会議・研修・一部作業がXR化
消費・娯楽 30〜40% 40〜60% EC+XRショッピング、XRライブ

ただこれは日本の平均であり、上位所得車窓では当然割合が上がり、低所得者層では低くなる。

また、これはここ10~20年の数字であり、遠い将来には80~90%がメタバース化可能になる。実用的には、先進国で70~85%程度がメタバース上で過ごすことになると予想する。

ここまで調べた上で考えると、結論としては


メタバースの普及は国際格差(国同士の富の差)を減らす


ということが言える。但し「先進国では国内格差が縮小するが、新興国では広がる」ことになる。

なぜかというと、新興国の上位10~20%の層は、先進国の事務作業をIPで奪うことになるだろうからだ。従来だと大規模開発の特定モジュールといったやり方しかなかったが、メタバース普及後はちょっとした例外処理を含む事務作業のレベルで発注が可能になる。すると結果としては先進国から仕事を奪うことになる。

一方、下位80%の層はこの恩恵に預かれない。従来より仕事が減る訳ではないが、上位層がリッチになるので結果として格差は広がってしまうのだ。だから新興国は、その上位層からの納税増を基に教育を充実させ、インターネットを普及させ、先進国から仕事を奪う層を広げていく必要があるだろう。

また、メタバースの普及は必然的に人の移動を減らす。オンライン会議がより普及するからだ。一方で物流は増えるだろう。ケータリングや宅配などだ。そして後者は前者より環境負荷が小さくなると考えられ、これは燃料たる石油消費を抑える方向に動くだろう。つまり環境変動(地球温暖化)阻止にも貢献する。

また先に示したように宗教紛争は抑える方向に動く。これをもっと広く捉えると、


メタバースの普及は戦争紛争テロといった暴力を減らす方向にも働く


のではないか。

ここには大きく二つの根拠がある。第一は、メタバース空間はインターネット以上に統制が取りづらく、またアバターがデフォルトなので、市民レベルでの国際交流は増えるのではないかと考えるからだ。紛争は相互理解が増えると減る傾向にある、というのは心理学上からも実績からも誰もが認めるところだろう。

第二は、メタバース空間で過ごす時間が大部分になれば、戦争紛争の大きな争点である民族対立や領土問題の価値は相対的に低減するからだ。従来のイメージでは

領土=生活空間+文化空間+経済空間+資源空間

だったのに対し、メタバースが普及することでその意識が

領土=資源空間

だけになる(他の要素がゼロになるわけではないが、重要度が下がる)。石油や稲作は必要だから完全にはなくならないものの、その価値が低下すれば争う意味も低下するだろう、と考えるのだ。

そして、第一第二をあわせて考えると、いわゆるナショナリズムは低下するし、国のプロパガンダの効力も低下する。そうなれば恣意的な戦争は国としても起こしにくいだろうし、大義名分があってもその支持率は相対的に低下する。

エストニアは積極的に電子政府化を進め、これが世界的知名度と地位を上げる結果となった。メタバースでも同じだ。メタバースに積極的に展開する国は、世界から知名度を集め、交流が広がり、結果として国を守ることにもつながる。

日本ではあまり効かないかもしれないが、小国はこの方向性を積極的に取り入れてはどうかと考える。

2026年2月14日土曜日

労働生産性向上策2:雇用と賃金

以前も

https://spockshightech.blogspot.com/2025/08/blog-post_05.html

のようなことを考えてみたが、また別の視点から労働生産性について考えてみた。

日本の労働生産性はOECDの中でも低位にある。何が労働生産性向上の足を引っ張っているかといろいろ考えてみると、例えばIT化の遅れや既得権益などと候補は山ほど出てくるのだが、そういうものを羅列してひっくるめて抽象化して、と試みた結果、最終的に出てきた答えはこうだ。

過剰な安定志向

つまり、雇用の安定を求める余り、それ以外のもの(多くの場合は新たなチャレンジの機会)を逸し、成長や効率向上にストップが掛かっている、というものである。この例を挙げてみると、

  • 正規社員の解雇に対する条件が異常に厳しい
    • これにより正規雇用の人数を控えて非正規社員を多くする
    • 余剰人員の仕事を作るためにわざと仕事を非効率にする
    • 中間管理職を多く作って合議制にするなど無駄な会議を多く行う
    • 飼い殺しの費用が新規投資の費用を食い潰す
    • 儲かっている時に設備投資ではなく内部留保にカネが向きがち
    • 多層下請構造を構成し中間マージンが過剰になる
    • 新規採用の正社員の求人が異常に少ないため解雇を極端に恐れる
      • 組合員が雇用の安定を重視するため、労働組合が賃上げ交渉に消極的になる
      • 雇用保険が労使折半(海外では全額雇用側のところも多い)
      • サービス残業、ブラック企業がはびこる原因になっている
  • 電子化、ICT化、業務再編などの遅れ
    • 取引相手の顔色を伺い過ぎてお見合いになる
    • (短期的な)費用対効果を過剰に気にして導入に躊躇する
    • 日頃の業務手順が変わるのを嫌い、全体最適化に反対する
  • 既得権益の見直しに消極的
    • むしろ参入障壁を作って安泰にしたがる
    • 土地の所有権や賃貸住宅の居住権が強すぎる
    • いつまでも見直されないパチンコの例外
  • 中小企業に対する手厚すぎる保護
    • ゾンビ企業(3年以上利益を出していない)の割合が多い
    • 会社が倒産しそうになると国や銀行がすぐ助けてくれる
    • それでいて経営アドバイスはしない(金銭補助だけ)
    • 企業の負債はオーナーの無限責任という場合が多く、倒産したら即地獄(だから倒産を恐れる)
  • 再雇用の道が閉ざされている
    • リカレント教育が弱い
    • 正社員市場が狭い
    • 契約社員から正社員への雇用義務(5年)がかえって正社員採用を阻んでいる(4年で切る)
    • 同一労働同一賃金(むしろ契約社員の方が高い)が徹底されていない
  • 小規模自治体への過剰な保護
    • まだ1700もの自治体がある そのうち3割は人口1万以下 殆どの自治体が赤字
    • 地方交付税交付金(16兆円前後)
  • 2、3年で次々に代わる管理職
    • 長期的な計画を立てても自分の成果にならないので、何もせず穏便に過ごそうとする
  • 合議制
    • 責任の所在を曖昧にし失敗しても誰も責任を取らない
  • 複雑化する一方の税制や社会保障費
    • 整理し一本化することへの労力が甚大

まだまだあるだろうが、大筋は押さえていると思う。つまり、日本人は正社員からはみ出ることに対して他国よりもずっと怖がりで、その不安を解消するために様々な策を弄している。その中には我慢も多くある。そのため言いたいことが言えず、社会が萎縮しているのである。

とここまでくれば、解決策は実は非常に簡単で、法律をいくつか変えるだけで済む。それは、

  • 正社員の解雇条件を海外並みに緩めること
  • 契約社員やバイトの賃金を、正社員より有意に高くすること(例えば10%以上)

たったこれだけである。正社員は安定している代わりに安い、契約社員やバイトは不安定な代わりに高い、そして正社員はクビになっても契約社員になれれば所得は向上する、という図式である。

安定の対価が安い給料なら、不安定の対価は高い給料であるべきだ。これは当たり前のことだが、現実社会では逆になっている。これが過剰な安定志向を生むのである。

これが実現すると、会社は従来よりも正社員を解雇しやすくなるが、これは業務の再編に有利である。浮いたカネで新規投資もできるようになる。また、無駄に管理職を増やすよりも少数精鋭で決定権をもたせる方が安く上がるので、無能な中間管理職はいなくなる。それは同時に意思決定のスピードも上げる。また、業績が悪くなれば解雇が可能になるので、防衛のための内部留保は少なくて良いから安心して設備投資ができる。管理職が少なく実働者が増えれば生産性は向上する。ゾンビ企業からは人が逃げ出すのでさっさと倒産するから、それを生き永らえさせる銀行や国の負担も少なくなる。会社に我慢しないからブラック企業も減るだろう。

全てが良い方に回り始める。細かい調整(労働条件や経過措置など)の詰めは必要だろうが、これくらいなら走りながら考えられるから、すぐにでも着手してほしい。

2026年2月8日日曜日

頭の良さと成功の確率

 
高須クリニックの高須幹弥氏がYoutubeで大量の動画をアップしているのだが、その動画の中に「頭の良い人の特徴」というものがあった。曰く、頭の良い人は論理的思考能力が高く、長期思考で、忍耐力が強いのだそうだ。また、「足るを知る」傾向が強く、どん欲に幸せや快楽を求めないのだという。

まあそこそこ納得したのであるが、そこでふと「では頭の良い人は大金持ちにはなれないのでは?」と考えた。貪欲さがなければ会社を大きくしようとするモチベーションは起きないからだ。さらに言えば、バフェット、マスク、ゲイツ、ジョブズ、あるいは柳井、孫、三木谷、前澤といった人たちが頭がよくなかったかというとそうではない。みな頭が良い。またしゃべりっぷりを見ている限り、高須氏自身もかなり頭がよく、かつ金持ちである。

うーん、これはどういうことだろう。また、では逆に、頭が悪い人が社会的に成功しているかというと、やっぱりしていると思う。与沢翼は一度成功したが浮気して離婚してクスリにハマった過去があるし、スポーツや役者で当たって大金持ちになった人の多くはその後堕落している。

そう考えて少し調べてみたところ(生成AIに感謝!)、そういう学術的研究は既に存在しているそうで、「Talent vs Luck」モデルという有名な定量モデルがあるのだそうだ。

才能(実力)は人口に正規分布で広がるのに対し、成功(富)はべき乗分布(パレート分布)になる。その理由は「運」のモデルである。

このモデルではコンピュータシミュレーションを行って結果を検証した。つまり、正規分布で広がる「才能」と、長期間に渡ってランダムに発生する「幸運」を掛け合わせ、成功者がどう分布するかをシミュレーションで追跡調査する、というものだ。そこで得られた結論は「そこそこの才能と多くの幸運」、つまり運の方が成功を左右する要因である、ということだ。

以前、

https://spockshightech.blogspot.com/2025/12/blog-post_05.html

という投稿をして、身もふたもない結論になったのだけれど、それと同じような結論になった。才能を磨くこと自体は成功の確率を上げるが、運にはかなわない、ということだ。

だが、こちらは身もふたもない話ではない。というのは、「運を上げる」ことは努力で可能だからである。これを端的に言うと「大数の法則」ということになる。

大数の法則とは、「確率的に起きる現象は、その試行回数が増えるほど発生数が多くなる」という現象のことだ。考えてみれば当たり前のことだが、これはつまり「外に出よ、機会を増やせ」という結論につながる。

例えば、あなたの欲求が「恋人がほしい」だとする。それにこの法則を当てはめるなら「出会いを増やせ」ということになる。部屋に引きこもってスマホを弄っていては「機会」は発生しない。しかし渋谷のスクランブル交差点に行って、気になる人を探しては道を尋ねる、ということを繰り返す、あるいは趣味のサークルに加入してみる。ネットのサロンで発言してみる、まあ何でも良いのだが、そうして「出会い」を増やせば、幸運の確率はそれに比例して上がるのだ。

そんなことしたって奇特に思われるだけだよ、嫌がられるよ、という気持ちは分かるのだが、それでもそれを千回繰り返せば、中には親切に道を教えてくれる人もいるかもしれない。それは部屋にこもっていては絶対に起きることのない「機会」である。千人に嫌がられても、千一人目に出会いがあれば、それで成功なのだ。

起業で融資を受けるのに銀行に何回も断られてようやく最後の一行に融資を受けられた、というのも同じで、「機会」を増やしたからできたことだ。このように「運」を能動的に得ることは可能なのであり、そして成功した人の多くはそれをやっている。それを「努力の賜物」と表現する人もいるだろうし、その何割かは確かに努力なのかもしれないが、これは実際には数学モデル的に正しい「運を上げる行為」である、ということが言えるのだ。

2026年2月7日土曜日

日本の移民社会化について

 
日本の人口減少率は、韓国などまだ上がいるとはいうものの、相当に激しい。日本の合計特殊出生率は2023年で1.20であり、これは2.07を下回ると人口減少という数字を遥かに下回っている。これを補うためには移民が必要だという議論がある一方、外国人の急激な増加に対する反発や不安が強いのが現状である。

現実問題として外国人は増え続けており、このままで推移すれば、2030年には外国人比率は3.5〜4.0%程度になると予想されている。2020年の実績が2.2%であることを考えれば、確かに急だ。ただ、イギリスは現在でも14%、2030年には15%だそうなので、全然深刻さは異なる。アメリカでも14.5%が15.5%になると予想されている。そう思えば、今の日本はまだまだ移民に慣れていないし、移民の数にしてもこの程度で留まるはずもなく、もっともっと増える。それも、何倍というレベルで増える。だから、先輩たる欧米に習った制度改革・意識改革が必要だ。

話は簡単である。受け入れに当たっての軋轢に関しては、日本人もある程度覚悟をすべきだし、受け入れた移民への教育の充実や資格認定などといった制度を整備すべきである。受け入れ側に(広い意味での)コストが掛からないなどということはあり得ないのだ。

この「覚悟」の具体的中身とは、文化的な摩擦が起きること、犯罪が増えること、教育にコストが掛かること、などだ。ある程度こちらから働きかけることは当然するとしても、今の生活を全く変えずに移民が一方的に日本に馴染め、というのは、現実として無理なのだ。もちろん全面的に我慢せよという意味ではないが、逆に言えば100%我慢せずに済むなどとは思わないことだ。

少し考えてみれば分かる。日本語がネイティブ並みに話せなければ受け入れられない、現地の文化習慣を完璧に理解しなければダメ、と言われたらどうだろう。これだけで、そのハードルは飛躍的に上がり、ごくわずかしか受け入れられないだろう。結果として、ごく少数の、地元には馴染むが仕事のできない移民が来るだけで、何のための移民なのか分からなくなる。日本が欲しいのは「働いてくれる若者」であって、日本の文化に馴染む者ではないのだ。技術を持ち、仕事をこなし、GDP向上に貢献してくれる人が欲しいのだ。評価基準が間違っている。

クルド人ヘイトや参政党の日本人ファーストは、イギリスでは鼻で嗤われるレベルの「ワガママ」に過ぎない。既に移民は多く日本に入ってきており、建築現場やコンビニなどでは日常的に見かけるようになってきている。中小企業にとって特に、移民はもう無くてはならない存在にまでなってきているのだ。そういう現実を無視していくら吠えたところで、何の解決にもならない。移民はもっと必要だ。その現実が分かっていない。

さて、ある調査によると、日本という国の外国人受け入れの文化的障壁は、欧米に比べて高いのだそうだ。それは単に制度の問題ではなく、社会慣習が違うからだ。その代表的なものは、規範意識の高さだ。社会のルールは、それが明文化されていようが不文律だろうが、また重要なものだろうがよくわからないものだろうが、とりあえず守るべき、と考えられている。これは逆に、ルールを守らないものに対する不寛容につながっている。外国人との摩擦の第一は、だいたいこれだ。

また、日本人は時間感覚に対してタイトだ。電車が5分遅れただけで社内アナウンスがあり、いちいち謝るのは日本くらいだろう。他にも、待ち合わせの時間にも敏感だ。友人レベルはともかく、社会人では5分の遅刻は致命的である。これも広い意味では「ルールを守ることへの固執」と言えるだろう。

日本語教室とか職能訓練とかは、それはそれでやってもらえば良い話である。だがこういった社会規範への固執は、外国人に「受け入れよ」と言うだけではなく、日本人全体に向かって「もう少し寛容になれ」とメッセージを発する(教育を行う)必要があるのではないか。

簡単な話である。2030年に外国人比率が4%になってそれが止まるかと言えば、あり得ない。2040年には10%とか15%とかになっている可能性はあるのだし、そうなれば海外との人の入れ替わりも頻繁になり、間違いなく教育は追いつかない。そういう移民が多い街では必然的に、社会のルールに対する意識はルーズになり、時間感覚も緩くならざるを得ない。受け入れ側たる日本人はそれを甘んじて受けなければならないのだ。

いやダメだ、厳格に管理し教育もするのだ、そうでない人は排除するのだ、と鼻息荒くイキがってみたところで、現実問題としてそれは無理だ。それができるものなら、アメリカでもイギリスでもそうしている。局所的にできることはあるかもしれないが、国レベルではハナから不可能である。

それは単純に規模の問題だ。1万人ならなんとか教育できても、百万人に対して厳格な教育を完遂するのは無理だ。日本語と生活習慣指導まで含めた一人あたりの教育コストを百万円として、年間30万人に教育を施すとなると、その予算は3千億円である。更に教育以外の費用、すなわち奨学金や就職支援、技術実習なども上乗せすれば、おそらく3千5百億円程度は必要だろう。これに対し、現在の外国人対応費はせいぜい数十〜数百億円程度であり、規模が一桁二桁少ない。

つまり、今の百倍の費用を捻出して教育に掛けなければ、その手法は不可能だ。そして、そこまでして教育を施したとしても、やはり数の暴力は生きている。つまり漏れはどうしても一定比率で生じ、外国人が増えるほど人数は増えていく。どうせダメと分かっているのだから、抵抗するのは無駄な努力である。

それよりも、そういう社会になっても回せるように、今から準備すべきである。そちらのほうがよほど建設的だ。それは単純に「時間にルーズになることを受け入れよ」ということではない。例えば、5分の遅刻は許しても20分の遅刻は許されない、といった、「実際の影響の程度を重視する」という発想に切り替えることだ。いつも主張している「量的議論」の一種である。

ルールを守らないことについても、些細なものなら許容し、重要なものは許さない。罰則も一律ではなく、段階的ないしはアナログ的に定める。そのルールは名言し、阿吽とか空気読めとかにはしない。そして最初から、その発想を前提に世の中を構築する。端的に言えば、時間に余裕を持って、あるいはルール違反者がある程度出ることを最初から想定して、計画を立てるのだ。

ルールを厳密に守ることは、その流れ自体を最適にする効果はある。例えば電車の運転時間を厳密に管理すれば、利用者は計画通りに物事を進めることができる。だが、そのルールを守るためのコストは膨大で、効率は極端に悪い。また、ルールを守ることが至上命題になってしまい、目的が疎かになる「手段の目的化」が起きやすい。こういうものはおしなべて「程度問題」であり、片方の極端に行くと効率は悪くなるが、日本はその「片方の極端」にいるのではないかと思う。

例えば、私が子供の頃には停電は結構あったが、現代ではよほどのことがない限り停電しない。停電対策の品質は世界トップクラスだと思うが、電気代は高い。少々の停電ならUPSや発電機などで対応は可能だから、本当にその品質が欲しい人はそういう備えをすることとして、大部分の人は年数回の停電は許容する代わりに電気代が3割安くなる、という世界のほうが幸せかもしれない。

常に「そのルールは何のためにあるのか」を考え、ルール自体よりもそちらを優先する考え方の方が、全体の効率は良くなるし、結果も良くなるのだ。そしてそれらはそんなに難しいことではないはずだ。実際、海外ではそれで回っていて、しかも日本より効率は良いのだ(一人あたりのGDP)。

また、せっかくICTが発達した世の中なのだから、ルールの遵守やその監視についてある程度自動化してしまい、ペナルティも自動で掛かってしまうような仕掛けを考えても良いと思う。性善説ではなく性悪説でシステムを組むことで、簡単にそれは実行可能だろう。例えばゴミのポイ捨ては監視カメラとAIで監視し、顔認識で自動的に罰金を引き落としてしまう、といったものだ。

外国人はそんなもの回避するだろうというなら、日本人だけ回避可能な仕掛けを作るのもよい。例えば医療費は全額支払い、後からデポジットで戻すためにはマイナンバーカードが必要、といったものだ。それはそれでコストだが、一度作ってしまえば後のコストは掛からないと思う。それでも仕掛けをかいくぐってくる外国人は、明確に悪質と認定できるので、追い出してしまえばよい。

これらはほんの一例であるが、ルールの明文化とその程度で問題にするという方法は、日本人にとってもメリットがあるはずだ。ルールにないことを強要してきたらそれ自体がルール違反にできるのだから、裏金やら不文律やら既得権益やらを追放できる。そうした方が、世の中住みやすい。

2026年2月6日金曜日

国は若者に厳しいのか

よく高齢者優遇などと批判されるが、調べてみると実態は逆であった、という話。

高齢者が実際に優遇されているかどうかを冷静に評価するに当たって、相対的貧困率を調べてみた。すると、

という結果が出た。実際には、高齢者の方が貧困率が高い。

更に調べてみると、若者でも高齢者でも、単身/ひとり親、非正規・無業・低賃金(現役)、低年金・無年金、の要因がある世帯では貧困度が特に大きい、ということが分かった。この要因別に貧困率を調べたが、そこまで解像度のあるデータは見つからなかったので、生成AIに無理やり算出させたところ、次のような結果が出た。

  • ① 要因あり若者:26%(推計)
  • ② 要因なし若者:6%(推計)
  • ③ 要因あり中間層:25.4%(推計)
  • ④ 要因なし中間層:7%(推計)
  • ⑤ 要因あり高齢者:30%(推計)
  • ⑥ 要因なし高齢者:10%(推計)

ここでもやはり高齢者の方が貧困である。世の中で言われている高齢者優遇は、少なくとも貧困率の視点からはウソであるということが分かる。

これに対する冷静でない反論(だって保険料が多い、私は実際に貧困、など)は無視するとして、冷静な反論があるとすれば、社会保障費の多くは高齢者に渡っていること、というのがあるだろう。しかし少子高齢化時代で高齢者に多く渡るのは当たり前である。また高齢者ほど病気である可能性は高く、健康寿命などという言葉すらあるから、年齢構成比以上に高齢者に費用が掛かるのは当然である。その最終結果としての貧困率なのだから、相対的に若者より高齢者の方が困窮しているのだという事実は変わらない。

一応、若者の貧困率が上昇しているのではないか、と仮説を立てて調べてみたのだが、結果は


ご覧の通り。若者の貧困率はむしろ低下している一方で、高齢者ほとんど変わっていない。高齢者の方が貧困化していることが分かる。

それでは、と生活水準そのもののレベルが違うのではと仮説を立て、可処分所得を比較してみた。しかし、結果は以下の通りだ。


高齢者がいちばん低い。しかもその差は開いているし、高齢者は1985年の水準より下がっているのに対し、若年者は上がっている。相対的に見ても、絶対的に見ても、高齢者は若者より貧困だったし、その差は開いていることが分かる。

ここまでくると、高齢者優遇というのは大げさどころかデマに近いのではないかと思えてくる。SNSの戯言はともかくとして、こういう主張をしている著名人には、玉木雄一郎、成田悠輔、ひろゆき、岩田規久男などがいるが、上記のような事実から目を背けていないだろうか。彼らは何れも上級市民で老後の心配なんかしていないだろうが、こういう主張が通って高齢者保護が劣化したら、高齢者の貧困率は更に上がる。孤独死や生活保護の増加など、良いことはないと思うのだが。

2026年2月5日木曜日

南海トラフ地震の(リアルな)被害予測

2026年1月16日、国交省は、南海トラフ地震の対策計画を改定した。

https://www.mlit.go.jp/river/bousai/earthquake/nankai/index.html

それによると、死者数は最大で32.3万人、経済的被害は220兆円、上水道3400万人が断水、2700万軒で停電、などが予測されている。

直感的に死者予測が少なすぎると感じたので、その妥当性についてGeminiに聞いてみたところ、原発の被害は想定していないこと、また二次被害(物流寸断によって国際的サプライチェーンが破壊される、救援物資が届かずに渇死・餓死する、輸出入の寸断により日本が国際的地位を失うことなど)が想定されていないこと、を指摘してきた。またこの220兆円はわずか1年の被害想定であり、長期被害はそもそも見積もっていないことが分かった。

なぜそうなってしまうのかとGeminiに問うと、国交省の予想は国交省の管轄でしか予想しないからだそうだ。つまり国交省は道路や建物などが管轄だが、原発は経産省の管轄なので、勝手に予想すると文句が出るからだ。逆に、原発の過酷事故予測は地震を想定していない、という妙なことになってしまっている。

そこで、これらを全て織り込んで、Geminiに被害を概算してもらったところ、死者は数千万人、被害額は千兆円、という予想が出た。

これを少し解説すると、まず死者だが、3400万人が断水となっていて、この断水は数週間程度では復帰できない。一方で水を備蓄している人でもせいぜい三日が限度であり、数週間の断水には耐えられない。川沿いや井戸があるところは若干マシと言えるのだが、もし原発事故があるとこれらは放射能汚染されてしまうため、やはり使えないのだ。なお、並みの浄水器では放射能は除去できない。人は水が無ければ3日で死んでしまうため、3400万人の何割という人数が渇死、ということになるのだ。

サプライチェーンについて言うと、南海トラフ地震の震域は東海道であるため、鉄道・道路・港が寸断されてしまう。原発事故があれば放射能汚染され、復興どころか立ち入り禁止地域があちこちで生まれるだろう。またこの地域は、自動車や機械などの生産拠点である。日本のGDPの何10%という規模のカネを生み出しているところだ。それが何か月という単位で機能しなくなれば、世界は「日本抜き」でサプライチェーンを再構築してしまうだろう。すると日本は外貨を稼げなくなり、復興どころか国民を生き永らえさせることすらできなくなる。そしてこれは地方にも必ず波及する。これらを10年で加算すると千兆円になるのだ、ということだった。

さて、死者数千万人、被害額千兆円というのがあまりにもデカ過ぎて想像もできないと思うのだが、死者2千万人、被害額千兆円と仮置きして、震災から10年後の日本についてGeminiに推測してもらったのがこれだ。

指標 震災前(現在) 10年後(2036年予測)
実質GDP 約550兆円 約350兆円(30%以上の縮小)
一人当たりGDP 世界30位前後 世界60〜80位(発展途上国水準)
食料自給率(カロリーベース) 約38% 約20%以下(外貨不足による輸入難)
居住可能面積 国土の約30% 約20%(汚染・インフラ放棄による減少)

当然ながら円の信用は失墜しているので、この額は現在の価値相当である。現実にはジンバブエドル化していてもおかしくないし、そうでなくとも1ドル250~300ドルというのが妥当だろう。またGDPは「1人当たり」なので、生活レベルは昭和30年代相当、エンゲル係数50%以上、電気代ガス代は10倍になり庶民は冷暖房不可、となっているだろう。肉は食べられず外食もほぼ無理、コンビニもなくなり、家庭菜園が流行っているだろう。

他国からの侵略もあるだろう。但し軍事的侵略は必要ない。経済支援とセットで無理難題を押し付けられても受け入れざるを得ない状況になっているはずだ。特許など知的所有権の押収、優秀な人材の本国スカウト、漁業権や経済水域での活動許諾、港の使用権などが次々と売られていくだろう。

また、死ぬ2千万人の多くは高齢者であると推測でき、これによっていわゆる高齢者比率は一時的に若返る。Geminiの推測によると、30%から22%になる。しかし合計特殊出生率は0.5~0.7に落ちるとも予測しており、10年後には35~40%と急速に老いた国になるとも予測した。

これにより、社会保障は崩壊、また熟練の知恵の類も断絶するため、文化的な伝統も生産技術の知見も失われ、国民の知的レベルも一気に低下してしまうと予想される。

資源小国は知恵で外貨を稼ぐしかないのだが、その知恵も失われるため、日本は本当に売るものがなくなってしまう。もはや地方都市を維持することはできず、コンパクトシティ化は必須であるが、そのレベルは従来の構想を大きく超える。人口10万クラスの都市でも消滅し、100万都市すら幾つかは消える懸念がある。円は更に安くなり、20年後には300~500円辺りで落ち着く。また出生率は1.5程度まで回復するが、人口維持レベルの2.1までは到達しない。また当然、金持ちは日本を出ていくだろうが、これも20年後には1千万人のレベルに達しているだろう。これには当然前途を憂う若者も含まれ、このために高齢化比率は45%に達すると予想されている。

次に治安だが、犯罪検挙率が落ちるのは当然の予想として、現在40~50%のところ、20%にまで落ち込むと予想される。また、ディストピア的な世界、すなわちゲーテッドシティ(柵に囲まれ、出入りには許可が必要な、金持ち向けの安全地帯)とスラム、場合によりその中間的な存在が地域により分かれ、スラムの治安は大いに低下、中間的地域でも現在よりは大幅低下、という予想もされた。中間的存在は、自警団と村八分による地域毎の独自の治安が形成される。スラムはそれすら作られない。

おそらく芦屋や田園調布のようなところはゲーテッドシティになり、都心の多くは中間的存在、その周辺から地方に掛けてはスラム化するのだろう。また、相互の行き来は困難になると予想される。つまり市民階級が自然形成され、それが定着する。ゲーテッドシティでの悪質犯罪者は中間地域に「追放」され、中間地域での外れ者はスラムに追放されることで治安を保つことになる。そしてスラムでの犯罪は統計に表れない。

最後に、海外に対する影響について予測する。日本には、半導体製造装置、特殊化学素材、超精密ベアリングといった、「日本でしか作れない」製品の供給がストップする。このため、スマホから航空機製造まで、世界中のハイテク産業が連鎖的にストップする危険がある。

また、日本政府が持っている外貨準備金、民間も持っている大量の米国債などが、震災被害の補填のために市場で叩き売りとなることは明白である。すると、 米国の長期金利が急騰し、米国内の住宅ローンや企業融資が破綻、米ドル自体の信用低下が起こり、これが全世界に波及することになる。

一方民間も、世界最大の対外資産(約400兆円強)を保有している。これらも世界各国で叩き売られ、米国以外でも経済混乱が起きることは間違いない。ここぞとばかり買いを入れる人も多いだろうが、今回ばかりはその規模が違う。あまりにも巨大な売りを前にすると、買った後の下落が恐ろしくてなかなか買い手が現れないし、現れても再び上昇するには十年単位で時間が掛かるだろう。

軍事面で見ても、日本にある主な米国基地は、たとえ無事でも日本からの供給が断たれるため、それなりの非常事態になる。日本の支援ばかりに気を取られると、特に中国ロシアからの侵略に対応できない。日本近海は軍事的にもきな臭くなることになる。場合によっては台湾進攻を含め、周辺国との戦争が起きるかもしれない。そしてそうなれば、日本への海路での支援は困難になり、復興を遅らせることになる。

戦火が起きればそれは他の地域に飛び火し、世界各地で紛争が起きたり、あるいは第三次世界大戦に発展する危険も考えられる。

また、放射能汚染が海に広まれば、それは黒潮に乗って太平洋を渡り、ハワイからアメリカ、チリにまで及ぶことになる。すると太平洋の海産物が多く汚染され、あるいは汚染されずとも風評被害が広がり、食糧難になる危険がある。

これらから考えると、海外に移住しても安泰とは言えない。行った先の治安や経済は低下するし、ヘイトの対象となる危険もある。手に職をつけておくと共に、当然円や日本の銀行の口座は紙くず化するので、外貨を海外の口座にかなり積んでおく必要があると思われる。

と、ここまでをGeminiと共に推測してきたわけだが、当初の国交省の予測(30万人、200兆円)と比べると全くの別次元であることがお分かりいただけると思う。決して恐怖を煽っているわけではないが、最悪の場合はこのくらいの規模になることがあり得るのだ、ということは覚えておいてほしい。

2026年2月4日水曜日

チームみらいが唯一マトモだった

 衆議院議員選挙に際しての各党の公約をAI分析してみる。消費税については

https://spockshightech.blogspot.com/2026/01/blog-post_23.html

で書いたが、チームみらいは消費税減税を公約としておらず、一覧としても総合的な視点が無かったため、改めて全政党の公約を経済効果の視点から分析させた。AIにはGeminiを使用した。

使ったプロンプトを公開しておく。

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衆議院選挙に当たって各党が出している公約を全て経済効果と掛かるコストの点で定量的に評価して表にしてください。フォーマットは以下の通りです。

➀政党名➁公約概略➂歳入減予想(2年、10年)③GDPへの影響予想(2年、10年)➃政策の実現自体に掛かるコスト(制度の改定費用、社会混乱、買い控え、便乗値上げ、詐欺、増税された企業の減収など:2年、10年)➄差し引きでの経済効果(2年、10年)➅政策自体の実現性(パーセント表記)⑦総合評価(〇×)⑧その他コメント

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ただ、Geminiといえど一発で答えは出してくれず、チームみらいを無視したり立民がリストに入っていたりとかなりあちこちで間違っていたので修正は行った。そして実を言うと、何回も修正したが収束しなかった(どこまでも突っ込みを入れられる)ため、最終的にはあきらめた(妥協した)ことも申し添えておく。フォーマットもその過程で変わってしまった。

そしてその結果はこうだ。

➀政党名 ➁公約概略 ➂歳入減・投資 (10年累計) ④GDP影響予想 (10年累計・実装コスト込) ⑤差し引き10年累計 (経済的純益) ➅実現性 ⑦総合評価 ⑧コメント
チームみらい 社保減免・行政DX・AI投資 85兆 128兆 +43.0兆 45% POS改修負担ゼロ。DXによる生産性向上が歳入減を上回る唯一のモデル。
国民民主党 178万の壁・消費税5% (暫定) 215兆 182兆 -33.0兆 55% × 労働供給増の効果は大きいが、200兆円超の減税分を回収するには至らない。
中道改革連合 食料0% (恒久)・給付付き控除 82兆 54兆 -28.0兆 65% × 恒久化で事務コストを抑えるが、分配によるGDP成長は歳入減に届かず。
日本維新の会 消費税5% (恒久)・解雇規制緩和 240兆 198兆 -42.0兆 60% × 大胆な規制緩和による成長を見込むも、巨額減税による累積赤字が残る。
自由民主党 食料0% (2年時限)・防衛強化 12.5兆 5.5兆 -7.0兆 85% × 往復の事務コスト(約4兆円)がGDP押し上げを大幅に相殺し、赤字化。
日本共産党 消費税5%・法人増税 155兆 72兆 -83.0兆 15% × 増税による投資減退が深刻。消費刺激分を上回る供給側の収縮が発生。
参政党 消費税・インボイス廃止 280兆 162兆 -118.0兆 20% × 急激な減税によるインフレと金利上昇の副作用がGDPを毀損。
社会民主党 消費税0%・社保半額 360兆 202兆 -158.0兆 5% × 通貨信任低下による円安コストが、名目上の成長を大きく上回る。
れいわ新選組 消費税廃止・一律現金給付 450兆 265兆 -185.0兆 10% × 需要は増えるが、供給が追いつかず物価高を招く。累積欠損は最大。

実はどの党も、施策の原資について定量的な数字は出していない。このため多くは推測になることを申し添えておく。また、以前からの主張の通り、政策自体の実現コストを加味しているところがこの分析の特徴である。消費税率を変えると全国の会計システム・税務システム・POSなどを全て改造する必要があり、制度変更に伴う役所のコストや社会混乱、便乗値上げなども生じるからだ。また、10年で見ているので、2年限定の措置に関しては税率が戻る際のインパクトも織り込んでいる。これは全ての党がやっていないことだが、評価には必要だ。

見ての通り、10年でGDPが純粋にプラスになるのはチームみらいだけ、という結果になった。この〇×判断も色々注文したのだが、差引効果がマイナスなのは一律×、と指示したところ、各党見事にこれに引っかかってしまったため、他の細かい指示は無駄になってしまった。

チームみらいは消費税減税を謳っていないが、実は社会保障費で自民を上回る負担減を提唱している。またここはAIやDX投資を謳っているが、効率化の観点でマトモな政策を言っているのもチームみらいだけである。これにより投資対効果がダントツに高く、結果として10年後の大幅プラスを生み出している。

世間では一番人気の自民は、実はGDPへのインパクトは一番小さく、財政負担も一番少ない。大山鳴動して鼠一匹、ではないが、大きく出ている割には中身はこじんまりしている。(だけど赤字)ここら辺は老練というところだろうか。

中堅とも言える中道、国民、維新は、政策的にも「自民の次」と評価できるが、しょせんはマイナス、しかも自民よりかなり悪いマイナスである。特に自民と維新が連合を組むと維新に引っ張られる可能性があり、自民でもマイナス幅は大きくなるかもしれない。また、参政・れいわ・社民は100兆以上のマイナス予測であり、初っ端から話にならない。

これらを纏めると、第一グループはみらい、第二グループは中道・自民・維新・国民が団子状態で、共産・参政・社民・れいわは問題外、という結論になる。

まああくまでも生成AIによる分析であり、党の公式見解ではない。この分析も人によって色々変わるだろう。その前提で、投票の参考にして頂きたい。

2026年2月3日火曜日

分散下水処理モデル

 下水道が腐食し、道路で穴が空くという事例が全国で頻発している。それに落ちて人が死ぬという悲惨な事故も起きた。下水道の復旧にも多大なコストが掛かるということも分かってきた。

下水道の多くは高度成長期に敷設され、寿命を迎えている。この保守コストが酷く嵩み、自治体の予算を圧迫していることもよく知られている。予算がなくても下水道は壊れ、道路には穴が空くので、補修せざるを得ない。これが更に自治体の予算を圧迫する。人口減少下で、自治体の収入は減少傾向にあり、これはもう破綻へのスパイラルと言える状況にある。

これを何とかするための施策を色々考えていて、有望だと思ったのが、この「分散下水処理モデル」である。これを以下に説明する。

人口1万人程度に対し、地域下水処理場を一つ作る、その処理場で処理した水は下水道を通らず、川などに放出する。地域下水処理場の規模は小学校の校庭程度だが、沈殿槽型を採用するので地下に作ることが可能で、地上は公園などにできる。

この沈殿槽型浄化槽は、従来の下水処理場や、あるいは家庭で使われる合併浄化槽に比べ、極めてローテクで運用できる。基本的に機械装置類など可動部はゼロであり、重力を利用してただ流すだけで浄化できる。このため管理も簡単で騒音も出ない。地下に作ることで臭気も閉じ込められる。

ただし、汚泥は出るため、これを定期的にくみ出し、トラックで高度処理場に運び、最終処理をする。この高度処理場は従来の下水処理場の敷地を利用する。おそらく機材のいくばくかは流用できるだろう。

このモデルの特徴は、次のとおりである。

  • トータルで見ると、必要な人材のレベルは低くてよくなり、人数も少なくてよい。各地域の処理場は基本的には無人であり、保守は基本的にセンサ監視と汚泥汲み上げだけである。もちろん汲み上げに必要な人材の技術レベルは低いので、外国人でもアルバイトでも十分可能である。一方で高度処理場にはもちろん高度な技術が必要だが、従来の下水処理場の人員が流用できる程度の技術であるし、処理対象はぐっと少なくなるので人員そのものは減らせる。つまり人材不足の現代に適している。
  • 地域処理場の面積の合計は、従来の下水処理場よりは広くなる。だが、従来の下水処理場はまとまった面積が必要である一方、地域処理場は隙間に当てはめられる。「くず地」の活用と考えれば、土地効率はむしろ高くなる。
  • 地域処理場はローテクであるため保守がほとんど不要であり、当然不具合の発生もほとんど考えられない。
  • 地域を延々と走る大型下水道管は不要になるので、そのための保守が必要ないし、腐食して道路に大穴を空ける心配もない。一方で各家から地域処理場への下水管は当然無くならないが、それらは細く、処理までの時間も短いので、腐食しにくいし、腐食しても大穴にはなりにくい。

というわけでいいことづくめに思えるのだが、幾つか欠点もある。まず、このモデルは大都会では成り立ちにくいということだ。つまりは人口密度が高すぎるので、地域処理場を確保するのが困難なのだ。また地価が高いとトータルコストで従来型の方が有利になってしまう可能性がある。

また、山間部でも成立しにくい。重力による下水処理という性質上、高低差があり過ぎる地域ではポンプが必要になるからだ。ただしこれは従来の下水でも条件は同じだ。

というわけで、郊外や地方都市などに適しているモデルである。そういうところはコストパフォーマンスの低い過疎地のインフラ保守に苦労しているところだから、十分に検討に値すると思う。

このモデルは、必要人材の量・質の低減ができるという点、少子高齢化の時代にマッチしている。このため、コスト低減ができず従来型より少々値が張っても、採用する意義がある自治体というのは出てくるだろう。人材不足が致命的な超過疎地域では、補助金を国に求めてでもこのモデルに移行する方法を模索するのではないだろうか。

なお、このモデルでは大雨や台風などにおける「洪水」を考慮していない。従来型の下水道は排水も雨水も分離せず皆流していたが、このモデルでは雨水の対応を別に考える必要がある。

2026年2月2日月曜日

日本の借金返済モデル

 日本は世界トップクラスの放蕩財政国家だ。赤字国債の残高が、物価上昇を遥かに超えるスピードで増え続けている。その規模は国家予算の十倍もある。収入に見合った支出をするというごく当たり前の原則を無視し、欲しいだけの予算を積み上げ、足りない分を借金で賄っている、という状態が、何十年も続いている。

国債は借金であり金利があるので、借りる以上に返さなければならない。2026年度の国債費(返済額)31.3兆円のうち、利払い費は13兆円もある。日本は毎年このくらいの規模の額を、国民のためではなく債権者に支払っているのだ。(このうち半分程度は日銀を通して国庫に戻って来るが、残りは民間に放出されるのだし、その日銀とて必要経費を差し引いている。何れも借金がなければ必要ないカネだ。)

ここ数十年は低金利だったからまだ良かったが、それでもこの額だった。そしてその金利が近年急上昇している。すると、同じ額を借りるのにも多く返さなければならなくなる。国債は毎年少しづつ借り換えられているから明日困るわけではないが、今後日本の財政はゆっくりと、しかし確実に悪化していく。たとえば十年後には、その利払い額は更に十兆円増えているかもしれない。これは国家予算に対して十分なインパクトのある額だ。本来は教育や福祉に向かうはずだった20兆円が、どこかに消えている。これはあまりにもバカバカしくないか。

だからこそ借金は早く返さなければならない。とはいっても千兆円もの巨額を一気に返すことは不可能であり、50年100年といったレンジで返すしかない。50年として年間20兆円だが、プライマリバランスはゼロ付近ではなく、このくらいのプラスで計算すべきである。

そんなカネがどこにあるのか、とよく言われる。政府や政党がよく減税を主張するとすぐ財源を問われるけれども、そういった眼の前の予算の重箱の隅を突くような視点では、この額を恒久的に捻出することはできない。もっと鷹の眼をもって、日本の財政構造を分析する必要がある。

よく「甘い汁を吸っている奴がいる」と言うけれども、日本を俯瞰して見た場合、その甘い汁を吸っている奴とは、実は国民自身である。官僚や上級国民にもそういう奴はいるけれども、それは俯瞰した目から見れば実は少数であり、金額も微々たるものなのだ。本当の悪は国民である。

意外に思うかもしれない。あるいはウソだと思いたいかもしれない。しかし、毎年の赤字国債の元凶は、防衛費や文教科学振興ではない。社会保障費や地方交付税交付金なのだ。これらが「身の丈に合った額」になっていないから、予算が嵩むのである。

色々と分析してみた結果として、その放蕩の中身を大雑把に三つ、主張したいと思う。第一は社会保障費、第二は地方交付税交付金、第三はゾンビ企業の生き残りである。以下、これらの詳細を解説しつつ、改善案を提示する。

第一の社会保障費だが、健康保険、(老齢)年金、介護保険、生活保護、その他各種補償・控除補助などがある。このうち大きいのは健康保険と年金である。現在の健康保険や年金の問題は、大きく分けて以下の三点である。第一に、富裕層でも一律に支給されていること。第二に、補償の範囲が広すぎること。第三に、個人ベースで規定され、積み上げ式に制度が決まっていることだ。

富裕層でも一律に支給されていることは説明しなくても分かるだろうから飛ばすとして、次に補償の範囲だが、これは海外に比べて広すぎる。例えば、市販薬と殆ど変わらないような薬が保険適用で入手可能である。風邪薬、痛み止め、湿布などに対しては、医者で処方するのではなく、ドラッグストアで自費で買え、というのが海外のスタンスである。また、リハビリやマッサージの類でも幅広く保険適用になるが、これも海外は厳しい。だが一番の問題は、総額制限をしていないことだ。要するに、総額で見て赤字であることに対してのフィードバックがないことだ。

これより考えられる社会保障費の改善案は、まず原則として個人の資産と所得を考慮した応能負担とすることである。要するに金持ちは高く払え、ということだ。次に保険適用の範囲を欧米並みに狭めること。第三に総額規制を行い、自己負担率は変動制とすることだ。

例えば、健康保険の自己負担率を一律20%にするのではなく、毎年総額から再計算して「今年の自己負担率」を発表する、といったものにする。もちろん応能負担なので、平均的所得の人を中心として上は高く、下は少なくしてやる。年金も同様で、資産と所得の平均像を中心として、上は少なく、下は厚くしてやる。但し当然、下限が生活保護以下に落ちてしまうと生きていけないので、そこは考慮する。必然的にその分、上の負担は重くなる。

少し脱線するが、現状の生活保護は線引きが分厚く、資産のほとんどを吐き出す必要があるなどと適用が難しいが、このような「なだらかな保護」であれば抵抗も少ないと思う。生活保護制度は廃止して、「困窮度に合わせた全年齢年金」にする方が良いのではないか。ベーシックインカムと言っても良いが、通常のベーシックインカムは一律同額支給なので、ここは異なる。

次の地方交付税交付金だが、ここでの問題は主にインフラ整備である。電気ガス上下水や道路などインフラは、自治体には全市民に提供をする義務があるのだが、その対価が過疎地と都市であまり変わらない。近年では水道料の高騰などが地方でニュースになったりしているが、それでもまだ応益負担にはほど遠い状況にある。そして全体として赤字になっている。これを税金で補填しているのだ。

インフラのコストパフォーマンスは、人口過疎地では極端に悪くなる。だから、過疎地ほどそういったインフラのコストは多く負担すべきだ。それは例えば上下水道の料金が十倍になるなど極端な事態を生むだろうが、実際にその費用は掛かっているのだ。

それをなだらかにしようとするのは分かるが、それは自治体の判断だとしても、総額としての費用と徴収額は一致させるべきであろう。そもそもその「なだらかにする」という行為は、都心で必要以上に徴収し、それを過疎地にバラまいているという意味なのだから、都心の住民はそれを受忍すべきである。それもイヤというから借金に逃げる、その積み重ねが今の状態なのだ。

地方交付税交付金は、県をまたいで「都心の受忍により地方を支える」という制度である。しかし、現状では東京都を除く全ての道府県が赤字であり、明らかにバランスを欠いている。総量規制が効いていないので、地方が身の丈以上に贅沢をし、それを都心が支えている状況になってしまっている。

「いや、贅沢だなんてとんでもない」と地方の人は思うだろう。実際に生活は苦しいし、都心よりも所得は少ない。だが、その感覚がこの総量規制の発想を捻じ曲げているのだ。実際には、過疎地に住む人にはもっと覚悟が必要なのに、「なだらかなインフラコスト負担」のお陰でその覚悟が弱くて済む、それが今の状態なのだ。これはいわば茹でガエル状態である。現実はもっと厳しいのに、視野が狭いのでそれが見えていないのだ。

これを解決する手段として、コンパクトシティという発想は既に存在している。要するに「都会へ住みましょう」ということだ。都会はインフラのコストパフォーマンスが高い。すなわち、同じ額でより多くの人にサービスを提供できる。だが日本では住居の自由が法律で定まっており、あくまでも「誘導」であり強制ではない。そして結果としてコンパクトシティ化は成功していないのだから、その誘導は弱すぎると言える。

だから、地方はまずコンパクトシティ化を強力に推進すべきである。これは単に、きちんと応益負担、総量規制で計算すればよいだけである。つまり、相対的に都心のインフラ負担(水道料金など)は今より安くなり、過疎地のそれは極端に高くなる。それらを全て足した額は、コストと徴収額で一致する。そうであれば、結果として住民が居座ったとしても、きちんと負担はしてもらっているので赤字にはならない。

第三のゾンビ企業だが、世界では日本とイタリアでゾンビ企業の割合が突出して高いそうだ。ゾンビ企業は利益を生み出していないので、そこで働いている人は国や自治体の補助や銀行からの借金で生き永らえている。つまり国から見れば一方的なコストになっている。だがそこで倒産すれば、一旦は失業者になるが、他に人材を募集している新しい企業に就職し、そこで利益を生み出すことができる。人材を募集している企業はそもそも人手が足りないから募集しているのであって、その理由はもちろん仕事があるからである。つまり、マクロに見ればこれは新陳代謝である。日本はこの新陳代謝が上手く行っていないのだ。

なぜ日本は新陳代謝が上手くいかないのかというと、日本では、中小では特に、オーナーが会社の借金の補償をしている(無限責任)というケースが多く、会社が潰れると即オーナー一族は地獄に落ちてしまう構造になっているからだ。だからオーナーは倒産を極端に恐れる。そこで金策に走ってとりあえず凌ごうとする。それに呼応して国や自治体も補助をするし、銀行も追加融資で生き永らえさせる。しかしそれで事業が好転するわけでもなく、結局は首が回らなくなって倒産する。その時、金策によって借金は更に嵩んでおり、オーナーの地獄「度合い」はもっと酷くなる。

こういう形態は世界でも珍しく、このためになかなか事業を整理できないのだ。ゾンビ企業を生きながらえさせるためのコストは国家予算ベースで1~2兆円だが、再就職による新たなGDP創出の機会を失っているという観点で見ると、5~10兆円規模の損失になっている。

鷹の視点で見れば、倒産は新陳代謝になるため、悪いことではない。それを阻んでいる悪しき慣習を破壊し、倒産しやすくさせてやるべきである。

ただ、倒産によって職を失う人の全てが、すぐに次の職に就けるわけではない。大まかには10%くらいがすぐに再就職できるが、残りはいわゆるリカレント教育が必要である。海外ではここも充実しているのだが、日本は弱い。だからこれを充実させることはセットで提供する。もちろん失業保険や生活保護(ないしは全年齢年金)も活用することは大前提である。

大雑把に、第一(社会保障)で10兆円、第二(地方交付税交付金)と第三(ゾンビ企業の整理)で5兆円づつ、合わせて20兆円を目標にする。こうすれば毎年の新たな国債発行は10兆円に抑えられ、10年程度掛けて国債費(返済額)を現状の30兆円から20兆円程度に減らすことができると推測できる。この時期には新規国債発行がゼロにできるだろう。これを50年続ければ、国債残高を200〜400兆円程度まで減らすことができる。

この程度までくれば必ずしもゼロを目指す必要はなく、プライマリバランスを再びゼロ近辺にしつつ、余った予算を大胆に投資に回すことができる。

2026年1月27日火曜日

本並みの映像と再生機器

 意味不明と思われるかもしれないが、ちょっと我慢して聞いてほしい。

Youtubeの膨大な動画の中には、書籍を解説したコンテンツが多くある。15~30分程度の要約で、人にもよるが、わかりやすく解説してくれているものも多い。

また、教育コンテンツも多くある。とある男とかカーンアカデミーとか、小中学生向けのものが多いが高校大学向けのもの、企業向けや社会人学習に向けたものなども多数ある。

これらがあれば本は不要なのではないかと思う人も多いと思うが、個人的にはまだまだ本の出番が多くある。それには主に3つの理由がある。

第一は、コンテンツの「深さ」が足りないことだ。つまり、本を読めば書いてあることでも映像になると省略されてしまい、(コンテンツ制作者が考える)要点のみしか出てこないことだ。これには2つの欠点があり、一つはコンテンツ制作者のフィルターが掛かってしまい解釈がネジ曲がったり強調点がズレる、つまりは本の言っていることとは違ってしまう可能性があること(そして事実違っている映像も多い)。二つ目は省略された説明が故に納得感が得にくいとうことだ。

第二に、映像ではペースが変えられないことだ。つまり、本は興味がなかったり既に知っていたりするところは飛ばして読むが、映像はずっとおなじペースで続くので、時間効率が悪いのである。いや再生速度は変えられるとはいっても、Youtubeの場合はせいぜい2倍、有料版でも4倍である。しかもその操作はページめくりと違って非常に面倒だ。本は5倍10倍の速度で読み飛ばすことは可能だし、速読を身につければもっと高速に読める。しかし映像を5倍速にするとまず聞き取れない。

つまり欲しいのは、①簡単な操作で読み飛ばしができる、②省略されていない詳しい映像、である。②はオリジナルの作り方を変えれば何とかなるが、同じ作りだと①が実現できないので、ここには工夫が必要である。

実はこの実現方法は簡単で、画面の一部を固定にして「目次と現在位置」を常に表示してやればよいのだ。映像の中に織り込んでも良いが、ビュワーでこの「目次と現在位置」専用の表示スペースを作ってやるというのも一案だ。

映像の飛ばし見にはもう少し工夫してもらう。再生スピードは2倍が上限で、それ以上早くするときは自動的に飛ばし見になる。それも0.5秒は2倍速で再生し途中を飛ばす、といった再生にする。映像もそれに合わせる。つまり手を離していると1倍速再生、ちょっと動かすと2倍速、更に動かすと0.5秒毎に2倍速で1秒分を喋り5秒飛ばす、などとする。

またその調節は、できればスクロールバーではなく、ダイヤルやジョイスティックのようなハプティックデバイスを使いたい。Kindleのような専用端末にこれをつけてやるのがよい。

さて、3つ目の理由だが、これは単純に圧倒的にコンテンツの量が少ないことだ。Youtubeの動画数は50億本程度、本の数は2億冊ということらしいが、Youtubeの動画の半分は5分以下、40分以上のものは3%しかない。本にも色々あるが、一般的な書籍は250ページ以上あり、これを読むのには5時間は掛かる。それを映像化しようと思ったら、5時間では済まないだろう。簡単な試算だが、8時間は掛かる。まあ要するに、Youtubeの動画の殆どはゴミであり、書籍に匹敵するような良質なコンテンツは非常に少なく、本には遠く及ばないということだ。ただこれは、映像コンテンツの充実を待つしかない。これは鶏と卵の関係かもしれない。

映像コンテンツの使い勝手が本と同等以上になり、こういう専用デバイスとコンテンツが十分にあれば、本を捨てても良い。以後「本棚」は歴史に埋もれていくことになるだろう。

2026年1月26日月曜日

政治停滞のコスト


高市氏が、通常国会招集冒頭に解散することを決め、世間が混乱している。

現在、高市氏の支持率は高く、今解散すれば自民党が単独過半数を獲ることができるだろう、という読みなのだろう。だが解散により予算案を始めとする法案は全て廃案となる決まりなので、政治停滞に対する非難が起きている。

ではその停滞による損失はどのくらいなのだろう。こういうものは従来、プロが綿密に調査するしかなかったので曖昧だったが、近年は生成AIの進歩によってあっという間に概算できる。そこで分かったのは、この損失は結構大きい、ということだ。なお、この推測にはGeminiを使用した。

選挙費用や政党交付金の変動は合わせて千億円程度とのことだが、これはまだ小さい方である。大きいのはGDP押し下げ効果で、これは6千億から1.8兆円になるとのことだ。株価の時価総額は一時的に10兆円規模で下落するが、これはある程度戻るだろう。全体では、数兆から十数兆円が一時的に毀損し、戻った後でも最終的には1.2兆円ほどの損失になると出た。

では逆にメリットは有るのかというと、これは政治がその後スムーズに行くだろう、という予測になる。与党単独で過半数を取れればもちろんそうはなるだろう。だがそれが必ずしも日本の国益になるかは分からない。つまり、誤った政策がスムーズに進めば、それはマイナスに効いてくるからだ。以前、高市氏の「確証バイアス」について議論したが、どうも高市氏は歴代総理の中でも確証バイアスが突出しているようで、つまりは行くと決めたら突き進んでしまうため、ブレーキが効かず、危険だ。

公約の消費税時限撤廃もそうなのだが、高市氏はどうもマクロでの数字を見ていないように思う。じゃあ歴代総理が見ていたか、野党は見ていたか、というとそうでもないのだが、だから良いというわけではもちろんない。これも以前から言っていることだが、量的議論は大事だ。特に国のように大きな存在は、それを避けるべきではない。

今からでも遅くはないので、高市氏と閣僚には、全ての政策・全ての行動に対し、この考えを取り入れてほしいものだ。

2026年1月24日土曜日

ジャパンファンドとしばき忍者部隊


 中道改革連合が提案しているジャパンファンドについて調べてみた。

これを大雑把に言うと、政府が色々なところで細かく持っている資産を、一つの「バケツ」に集約し、それをGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用ノウハウをもって運用しようというものだ。資産総額は500兆円、目標は年1%ということなので毎年5兆円の利益になる。その「細かく持っている資産」を具体的に言うと、外貨準備金200兆円、日銀保有のETF80兆円、財政投融資の剰余金・基金220兆円、ということらしい。

さて、これをどう評価するかだが、実現性のところを除けば大変興味深い。しかも、1%というのはかなり控えめな数字で、一般的には6%くらいは(年平均として)」イケると思う。6%とすると30兆円だが、これは消費税を全廃してもお釣りがくる規模になる。国家予算に対しても四分の一程度と相当の割合になるので、かなりの助けになる。

但し、これは消費税を全廃するのに使うのではなく、千兆円の借金返済に使うべきである。年6%として30兆円、このうち20兆円を返済に当てるとしても50年以上掛かる計算だが、これで公債費は少しづつ減っていくはずだし、何よりも高金利時代に向けた貴重な防衛策になる。残り10兆円はその時々の緊急事態に使えば良いし、それがないなら全額返済すればよい。また、公債費はこれで毎年徐々に減っていくが、その差分をこのファンドに組み込むことで、ファンドを大きくし、年間利益も増やしていくのがよい。

一方で実現性は期待薄である。単純に、その資産を持っている部署が賛同するとは思えないからだ。もし賛同しても、大量の法律の書き換えが必要になるなど手間は大きく、年単位で時間が掛かるだろう。中道の公約というのも大きく、自民が表に裏に妨害するだろう。

また、本来の目的にすぐに使えなくなるという懸念もあるだろう。だがこれはファンドの一部を現金等価物で保持しておくことである程度回避可能である。

そして、一度実現したとしても、それを長期に渡って当初の目的通りに運用するのは困難だろう。つまり、目先の利益にそれを使おうとする輩は必ず現れ、それが国民を先導して世論を作り、実現してしまうだろうからだ。そして元本は徐々に削られ、ファンドの規模はなし崩しに縮小していくだろう。

これには前例がある。山田宏区長(当時)が1999年から2010年にかけて断行した「杉並改革」がそれだ。当時杉並区は1000億円もの借金(区債)を抱えていた。これに対し、山田区長は徹底した歳出削減と資産売却を行い、借金を400億円台まで劇的に減らし、公債費を抑制した。そして借金返済に充てていた資金を「減税基金」として積み立て、その運用益で将来の減税を目指したのだ。

だが、山田氏が退任した後、後任の区長たちによって、積み立てられた「減税基金」は、結局「減税」ではなく「一般財源(教育や福祉のハコモノ建設)」に流用されるようになった。現在では「公共サービスの拡充」という、全く別の用途に使われいる。そして借金は再び増え、600億円前後になっている。

大衆は眼の前のカネにどうしても目が行ってしまう。これを我慢して当初の目的を継続するのは、極めて困難だ。ましてや500兆ものカネにはそれなりのツワモノがぶら下がりたがるだろうから、その圧力は極めて大きい。極めて強い力で守り抜かないと、この目的は達成できない。そして中道にその力はない。

さて、個人的には、このファンドはぜひとも成功してほしいと思う。そこで考えるのは、このファンドが当初の目的通り、国債残高を減らし続けるための強力な仕掛けだ。そして、50年に渡って不変の原則を保つというのは、法律を作ったとしてもなかなか難しい。安倍やトランプのように、法を蔑ろにする輩は必ず出てくるものである。

そこで考えるのが「沈黙の艦隊」のようなシステムである。つまり、政府から完全に独立した攻撃部隊を創り、明示的なルールを定め、それを破ったら暴力による報復がある、またその報復は忍者のように誰がどこからしてくるかわからない、とするのである。ファンドの一部にこの財源を充て、その組織を運営する。つまり、このルールを破ろうと画策する者が現れたら、闇から忍者が現れてしばき倒すのである。これを仮にしばき忍者隊と命名する。

もちろん平時は何もしないので、誰が忍者かは分からない。政府要人、省庁の官僚、あるいはトイレ掃除人かもしれない。そしてそれは一人ではない。一人を倒しても、いくらでも代わりが現れ、しばきに来る。もちろんしばかれたことは公になるし、このしばきは合法なので再報復は許されない。

しばいてもしばいても我を曲げないようなら、忍者はその人物を政界から「排除」する。ある日突然行方不明になったり、重症を負い議員を続けられなくなったり。そうやってルールを守らせる。

かなり過激な案であるし実現性もゼロではあるが、このくらいはやらないとファンドの精神は3年も保たないだろう。

2026年1月23日金曜日

衆議院議員選挙の争点:消費税減税のコスト一覧

 

過去、

https://spockshightech.blogspot.com/2025/04/blog-post.html

https://spockshightech.blogspot.com/2025/04/blog-post_26.html

https://spockshightech.blogspot.com/2025/05/3.html

という検証をしていたわけであるが、高市政権が解散総選挙をすることになって、今までそれを否定していた自民党も消費税減税を公約に掲げる公算となってきた。1月22日時点での各党の主張を基に、その効果を定量的に分析してみたので披露する。なお、試算にはGeminiを使用した。

2026年衆院選:消費税減税公約の定量的比較表

政党・連合公約の内容2年間の歳入減(国・地方)2年間のGDP収支予想(正味)工学的・経済的リスクの所在
自民党(高市政権)食料品0%(2年時限)約 9.6兆円約 -2.5兆円 〜 -3.5兆円最悪の効率。 復路の増税ショックと2度のシステム改修コストがプラス分を完全に食いつぶす。
中道改革連合(立民+公明)食料品0%(恒久)約 10.0兆円約 +0.4兆円 〜 +0.8兆円復路のショックはないが、財源(ファンド運用)の不確実性が高く、将来の社会保険料増を招く懸念。
日本維新の会一律5%(2年時限)約 28.0兆円約 -8.0兆円 〜 -12.0兆円減税規模が大きすぎて、2年後の「5%増税」の反動が日本経済を恐慌レベルに冷え込ませるリスク。
国民民主党一律5%(実質賃金連動)約 28.0兆円約 -5.0兆円 〜 -9.0兆円期間が「実質賃金」次第で不透明。企業の価格戦略やシステム改修のタイミングが読めず現場が混乱。
共産党・れいわ5%以下・廃止(恒久)約 30兆 〜 50兆円推計不能(要・大幅増税)法人税・所得税の急激な増税をセットとするため、資本逃避や投資意欲減退によるGDP下押しが甚大。
意外にも、というか、中道改革連合の提案である「食料品0%(恒久)」のみが経済効果でプラスだった。自民案(2年時限)はその次にマシだが既にマイナス、維新・国民民主はダメダメ、共産党・れいわは問題外という結論になった。

以前にも話したことであるが、消費税全般を一律減税する維新・国民民主・共産党・れいわは財源の問題が大きすぎ、また自民党の案がダメなのは時限であるところだ。ただこれは2年間の比較であり、10年で見るとまた違った結果が出ると思われる。

一般大衆にはこういう計算は分からないから、(この政策に関しては)自民と中道で迷うのではないかと思う。中道の方が魅力的だが自民もそれほど悪くない、と見えるだろうし、なにせ自民は与党であるから実現可能性は高い。

そこで考えるのは、とりあえず時限ということで始めて、時期が来たらズルズル引き延ばせば良い。だから自民に投票しよう、というものになるのではないか。中道が勝っても自民が勝っても似たような結果になるのだし、どうせこの二党が上位二党になるのだろうから、どちらに投票しても大して違いはない。

なお、財源の10兆円だが、GDPの増加で対応できるとは考えないほうがよい。10兆円の財源を得るためにはGDPが10兆円増えれば良いのではなく、その数倍のGDP増が必要である。所得税の場合で平均6.5%程度だとされており、消費税では9.6%程度なので、逆算すると、10兆円税収を上げるためにはGDPを80~90兆円上げる必要がある。これは現在のGDP600兆円に対して15%ほどの増額になる。

GDPを15%、2年以内に上げる、しかも恒久的に、というのが財源確保の条件なわけだが、現在の日本の潜在成長率は0.5%である。つまりそれを10倍の5%にしたとしても2年ではまだ足りないわけだ。全くもって不可能であり、試算するのもアホらしい。

だがこういうアホな試算すらしないのが現在の日本の政府であり、日本国民なのだ。借金が千兆円を超えているのもそれが理由であることは言うまでもない。国民一人ひとりはそんなに無謀な借金はしないのに、なぜ国はそれをして平気だと思うのか、理解しがたい。

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