2019年11月8日金曜日

マイクロデータセンターアプライアンス


アプライアンス(中身はコンピュータであるが専用のソフトが入っていて、PCのように自由には操作できないもの)を買ってきて、自宅の光ファイバ回線に繋げる。ちょっと設定をして、後は放っておくだけで、それが自動的に儲けてくれる。そんなビジネスがあったとしたらどうだろう。

それは、このようなビジネスモデルになる。まずそれは、AWSのようなクラウドサービスである。即ち、ユーザに仮想的な計算機資源をネットワーク経由で提供し、ユーザを募り、その使用に対する対価を得る。しかし、その裏で動いている計算機資源の構成が異なる。それが先ほど言ったアプライアンスだ。

AWSでは、大量のサーバを並べた巨大なデータセンタが、世界中に作られている。これに対しこのサービスは、自前のデータセンタを持たず、アプライアンス同士が疎結合した計算機ネットワークを使う。アプライアンスはサービス側が開発し、一般個人などが購入する。あるところでは家庭の光ファイバ回線につながっており、別のところでは企業内の空きスペースにて専用回線でつながっている。

このクラウドサービスは、AWSの持つ様々なサービスモデルのうち、ごく一部だけをサポートする。それは、ストレージとファンクションである。いわゆる仮想PC、仮想サーバのようなモデルはない。データベース等のモデルは、当初はなくてよいと思う。可能であれば、この基本モデルを基に、順次拡大すればよい。

ここで、仮想PCの類がない理由は、個別のアプライアンスに固定的に資源を割り当てるという概念が存在しないためだ。これらのアプライアンスは、基本的に信頼できない。つまり、電源や通信がいつ落ちるか分からず、中には違法改造されて悪意を持った者が紛れているかもしれない。従って、ユーザが求める計算は、一台だけでは完結しない。ストレージでhadoopがあるように、計算も分散と集約をするわけだ。また、ストレージも計算も通信も、全て暗号化されている。

このため、アプライアンスのオーナーは、自分のアプライアンスでどんな計算がされているかを知ることはできない。しかし、何かしら使われたのであれば、それに応じた対価を得ることができる。これはもちろん、ユーザが支払った対価の何割かになるわけだ。
ユーザのポータル自体も、このアプライアンスネットワークに搭載されている。つまり、完全分散型である。

アプライアンスは分解分析困難なように、また分析されたことを検知するとシステムを無効化するように作る。このため、悪意ある第三者がネットに侵入しにくい。
もう一つの大きな特徴は、ユーザーの支払いは、アプライアンスによる稼ぎで相殺できるという点だ。つまり、使う量に合わせてアプライアンスを購入し動かしておけば、タダで使うことができる。もちろんアプライアンスの購入費と維持費(電気代や場所代)は必要だが。

このビジネスの特徴は、けっこう色々ある。

  • ビジネスオーナー(クラウドサービス側):
    • アプライアンスの設計はかなり大変だが、できてしまえばスケーラブルモデルになる。つまり、巨大な投資が不要であり、(アプライアンスのストックと保守くらい)ので、ビジネスが幾ら拡大しても固定費が増えない。これにより、AWSのような巨大なビジネスにも対抗可能である。
  • アプライアンスオーナー:
    • アプライアンスは基本的に買い取りであり、後のランニングコストは電気代と通信代程度である。使ってくれた分必ず儲かるのだから、リスクはない。投資を回収できないリスクは、ビジネス立ち上げ初期には発生するが、以降はそれもない。
    • UPSや耐震装置を買う必要はない。ソフトウェア上の仕掛けでDRは確保されているので、何時落ちても、何時故障しても問題ないからだ。
  • ビジネスのユーザ:
    • AWSでは、可用性を得るために、仮想サーバを複雑に構成する必要があった。しかしこれなら、何もせずとも可用性を確保できる。ビジネスロジックを素直にファンクションに記述するだけだ。スケーラビリティも、何も考えなくて問題ない。

実際の計算機資源が世界中のどこにあるか分からないから、どこの国の法律にも縛られない。コングロマリットなら、自国ビジネスのオーナーを他国に分散してしまえば、自国の法律からすら守られる。

サービスの継続性を疑う必要はない。自分で必要な台数のアプライアンスを買ってしまえばよいのだ。世界中のその他のアプライアンスオーナーが全て辞めても、そうすればサービスは継続される。

このモデルは、同じ計算をさせる場合には、必ずAWS等より遅くなる。そのため万能ではないが、可用性は上回る。金融取引や契約書の保存等、絶対に消えては困る情報の保管と処理には適していると思われる。

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