先日の台風の様子を見ていると、ガソリン式発電機が欲しくなる。しかし、現状の発電機は問題が多い。これを解消する発電機を考えてみる。
最初に問題になるのは、負荷変動だ。例えば、冷蔵庫を動かしたい場合、定格の6倍~10倍程度の突入電流がある。また、定常運転においても、コンプレッサーが動いているときと動いていない時では、数倍の電力差がある。エンジンは通常負荷変動に対応するが、そうすると効率は落ちるし、音も大きくなる。定常運転にしてバッテリに溜めるようにすれば、負荷変動は全てバッテリ側で吸収できるので、極めて小さい音で定常運転できるはずだ。
次に問題になるのは、長期保存性だ。単純に言えば、ガソリンは劣化する。このため、長期保存ができない。
次は安全性だ。ガソリンの引火点は極めて高く、腐食性もあり、揮発性も高いために扱い辛い。大量に保存するのにも不安がある。
次は保守性だ。エンジンオイルが必要であり、また定期的に交換する必要がある。また、長期間使わない時にはガソリンを抜く必要があり、その後始動するときにはまた手順が必要になる。
次は騒音だ。一番小さなもので48dB程度、通常なら60dBもの音が出る。これは結構うるさい。燃焼機関なので室内では使えないから、ベランダに出すなどすると、近所迷惑な大きさだ。
最後は、燃料やエンジンオイル等の入手性だ。当然震災時には色々なモノが手に入りにくくなるが、ガソリンはその筆頭だろう。そうであれば他のモノを、ということは考えられる。例えばハクキンカイロ用のベンジンの入手性は良かったそうだ。もちろん保存性が良い燃料であれば買い溜めしておける。
そういったものを色々と考えてみると、次のようなスペックになる。
- パラフィンオイルを燃料とする、定格30Wのエンジン
- 燃料タンク3L以上
- 10kWh程度の蓄電池と制御装置
- 蓄電池充電残量に応じた自動補充電機能
- 100V50/60Hzのコンセント1つ、USB-A/Cコネクタ数個
- 静音性。せめて45dB以下、できれば30dB台
これらを個々に解説してみる。
●30Wパラフィンオイルエンジン
パラフィンオイルは、オイルキャンドルやハーバリウム等に使われるオイルである。引火点が90℃前後であり、燃料用のオイルとしては最も高い部類に属する。
このオイルは燃焼しても殆ど煤や匂いが出ない。また長期保存可能であり、安全性も高い。これは非常用の燃料としてうってつけである。
しかし、パラフィンオイルを燃料とするエンジンは、知る限りでは存在しない。むしろこれはエンジンオイルに使われている。つまり、新しいエンジンを開発しなければならない。
パラフィンオイルは粘性が高く、発火点が高い。通常のガソリンエンジンやディーゼルエンジンには使用できないと思われ、専用のエンジンが必要になるだろう。
また、パラフィンオイルが燃料になるということは、エンジンオイルと兼用にできる可能性がある。もしできれば、これは保守性を若干上げるだろう。
また、パラフィンオイルは単価が高いので、あくまでも非常用になる。てんぷら油やサラダ油が使えるなら、まただいぶ安くできるかもしれない。業務スーパーで一斗缶で買っておけば、相当の期間使えるはずだ。もちろん被災時に買うのも良い。被災時には一斗缶のサラダ油など売れないだろうからだ。
家庭用冷蔵庫は100Wが定格だから、30Wというと少なすぎると感じるかもしれない。しかしこれは、冷蔵庫の中身を腐らせずに消費しきることを目標としている。つまり、日常と同じように使うのではなく、その時点で補充はなし。使うだけなので、数日掛けて中身は減っていく。これにより消費電力は徐々に下がる。恐らく1週間以内にカラになり、その時点でこの発電機の使命は終わるわけだ。それ以降は、スマホなど少電力機器の充電に使われる。それには30Wは十分に大きい発電量だ。
●燃料タンク
市販のパラフィンオイルは、2L・1500円前後で売られている。ガソリンや灯油と比べれば10倍~15倍もあり、相当に高価であるので、あまり大きなタンクにはできない。パラフィンオイルは運転中に継ぎ足ししても問題ないので、一晩持てば十分である。万一夜中に燃料を使い果たしたとしても、朝継ぎ足せばなんとかなる。但し燃費の計算をしていないので、効率が悪ければもっと必要かもしれない。
●蓄電池と自動補充電
ポータブルとは言え重量には余裕があるので、必ずしもリチウムイオン等である必要はない。例えばUPSに使われているような、密閉型鉛電池でも良いかもしれない。また、普段から全てエンジン補充電である必要はもちろんなくて、普段はコンセントからの補充電でよい。
AC電源がない場合、例えば充電池が残り50%になったら90%まで自動補充電する、等と言った設定をしておくことができるようにする。基本的に定格運転しかしないので、充電はON/OFFの制御しかない。これによってエンジンを最も効率の良い状態に保ち、騒音対策などもそれに合わせて行うことで効率化する。
●出力
メイン出力は、AC100V50/60Hzである。別に冷蔵庫向けなら正弦波でなくても良いだろうが、今の時代はインバーターがあるのでそんなにカネを掛けずとも正弦波に近い波は作れる。そしてこれは当分冷蔵庫に専有されるため、USBは別に必要になる。AC二つだと、制御が面倒になりそうなので、一つにした。
出力しながらの充電は可能とする。この際でも、負荷変動は充電池側が制御する。発電側はあくまで定格運転である。
いわゆるUPS機能、即ち瞬停への対処は、必ずしも必要ない。主目的は冷蔵庫の維持であるため、少々停電しても問題ない。
●静音性
マンションのベランダで使っても問題ないくらいでないと困る。調べた限りでは、ガソリン発電機で48dBというのが最少だったが、これではまだ不安だ。もう少し静音性が欲しい。
既存のエンジン発電機と違い、充電前提で定格出力のみとする前提で考えれば、それを進めることができるだろう。また、パラフィンオイルを使う前提なので、スパークプラグやディーゼル機構では点火できないかもしれない。スターリングエンジンのように、穏やかに燃やし続けることで回すものになるのではないだろうか。
ダ・ビンチが開発しているロータリー熱エンジンが使えないだろうか、と考えている。
使い方としては、普段は目立たないところでACコンセントに繋ぎっぱなしにしておく。そして停電したら、冷蔵庫の所に持ってきて、コンセントをつなぎ替える。この際、屋内では換気が必要になるので、延長ケーブル等で引っ張って、発電機はベランダに出すようにする。このためにも、発電機は防水が必要になる。コンセントも防水コンセントが必要だ。
排気をパイプ等で屋外に誘導するか、あるいは換気を十分にすることとして屋内で使うことも考えられるが、やはり基本は屋外と思われる。
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