2024年9月30日月曜日

AIは人の仕事を奪うか

 


間違いなく奪う、というのが私の考えだ。

たまに、これに反論がある。曰く、AIで仕事が無くなっても、別の新しい仕事が生まれる。だが、この論理には量的視点が欠けている。

まず第一に、無くなる仕事と増える仕事、仕事の数はともかくとして、それに従事する人の数は同じだろうか、ということだ。例えば今、中国では、アニメーターやイラストレーターといった絵を描く人の需要がAIに取って替わられ、大量の失業者が出ている。この人たちを救う新たな仕事として考えられるのは、AIを使って絵を描くオペレーターであろうが、イラストレーターよりオペレーターの方が数が少なくて済むのは自明である。イラストレーターがイラスト一つ描く間に、オペレーターは百枚描くことができるのだ。

また、絵を描く需要そのものが増えるから他で雇ってもらえるだろう、とも考えられるが、その需要とはアニメーターではなくオペレーターだ。どちらもできる人材なら対応できるが、そうではない人材の数の方が圧倒的に多いだろう。また当然、その需要が百倍か(オペレーターの生産効率を上回る需要が起きるか)という問題もある。つまりここでも数合わせはできないのだ。

次に、その新しい仕事の大部分は、元の仕事より遥かに難しいものないしは異質なものであるということである。上でもアニメーターとオペレーターの問題があったが、ではアニメーターがオペレーターになればいいじゃない、とは単純にはいかないよ、勉強が必要だよ、脱落者も出るはずだろ、ということだ。そして底辺の、そして数の多い失業者の大部分は、その脱落者になる。つまり、その人がどんなに再教育を受けても、幾つ技能を身につけても、その結果としてできる仕事はどれもAI未満、そういう人がこれからどんどん出てくるだろうということだ。

労働意欲がいくらあっても、その人ができる仕事は全てAIがやった方が安い。これでは雇ってくれない。経営者は人ではなく機械を導入する。世の中で仕事が幾ら増えても、その人達に仕事は回ってこないのだ。

そして、求人がないから仕事ができない、というのは、失業保険の対象にはなるが、生活保護の対象にはならない。なので失業保険が切れた後は、公的支援が何も無くなってしまう。

今の国の制度は、この事実を無視している。大量失業+公的支援なし状態を避けるためには、政策が必要だ。早急に対応すべきである。

その対応策としては、大きくは二つ考えられる。一つ目は、ビル・ゲイツ氏が提案しているようなロボット税(ないしはAI税)だ。人を雇う代わりにロボットやAIを使う企業に対して税金を掛け、人を雇う方が金銭的に有利になる状況を作り出す、というものだ。但しこれは線引が難しい。どこからが課税対象なのかは恣意的に決める必要があり、企業の納得感は低いものになるだろう。

もう一つは、生活保護の対象を拡大することだ。つまり「持てる能力の全てがAI以下であるために求人がない」という人を対象にする、というものだ。こちらは多分に屈辱的だし、やはり線引は極めて難しいだろう。

つまりどちらも難しいのだが、第三の方法が見つかるまでは、これらを無理やりでも通さなければ、大量の餓死ないしは暴動などが起きる。さっさと考えるべきだ。

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