2019年11月19日火曜日

キャンドリア用特殊砲弾型ロウソク


以前も紹介した「キャンドリア」のロウソク。鞘に収まっていて、下からロウをバネで押し上げるようになっている。ロウが燃えて短くなるとその分せりあがるので、炎の位置が変わらない。

しかし、残念ながら連続供給はできない。例えば輪切りにしたキャンドリアを適宜補充する、というわけにはいかない。なぜなら芯があるからだ。切れたところで芯が落ちてしまう。これを防ぐには、芯は恒久的な芯として、押し上げるのは輪切りにしたロウのみとする必要がある。これを考えてみた。

砲弾型の鞘の出口付近から支持棒を出し、中央部に恒久的な芯を固定すれば、それは叶うはずだ。最初だけはすこしあぶってロウを溶かしてやり、芯とロウが接するようにすれば、それ以降はロウが溶け、消費されるに従って自動的に供給可能となる。

この恒久的な芯としては、以前紹介した「Lovinflame」の芯が使えるはずだ。

このタイプのロウソクの利点は、ロウの型を作っておけば、どんなロウソクでも溶かして再利用することができる点だろう。誕生日のケーキに付属するものや仏壇用、キャンドルサービス用などと色々あるが、全て纏めて溶かして再利用することができる。芯を入れる必要がないので手軽に作れる。ロウの融点は水より低いので、キャンドリア自体の天板で溶かすことも可能だろう。

問題点としては、ロウの気軽な交換はできない。本家キャンドリアには、明かり用の通常のモノと、シトロネラ配合の虫よけ兼用のロウソクがあるのだが、芯が鞘側に固定されているため、鞘ごと交換が必要である。

2019年11月18日月曜日

ドローン配送を前提とした宅配ボックス


汎用ロボット配送システム」では、電車内とホームに設置する配送システムを考えた。ここでは、宅配ボックスとその出し入れをするロボットについて考えてみる。

ドローン配送については、Amazonなどが実験を繰り返している。ヘリコプタータイプとロボットカータイプがあり、何れも最終配送、つまりラストワンマイルを目指しているように見える。しかし、汎用ロボット配送システムのアイデアと合わせて考えると、宅配拠点(例えばヤマト運輸の支店や郵便局)から宅配ボックスへの配送をまず考えた方が、簡単に思える。

ここで言う宅配ボックスは、あくまでもロボット配送に適したロッカーという意味で言っている。つまりある程度規格化されており、ロボットからのアクセスは容易で、人間は多少の不便を許容する。また、設置場所は多数で、例えば一拠点当たり何百、というものになる。ブロック毎に一つ、コンビニにもスーパーにも、ある程度のマンションなら郵便受けの隣に、大きな家なら玄関前に、というものだ。ロボットの配送はそこまで、そこから先は人が取りに行く。もちろんこれが全てではない。重いものや冷凍冷蔵品は、従来通り人が行ってよい。

荷物に一定の制限を課し、その前提で配送料を割り引く。宅配ボックスは認定済みのものを購入ないしはリースし、設置したら拠点に登録する。設置場所から道路への経路に関する制限は、緩くする。例えばSpotが自力で歩いていければ良しとする。

Spotにはジャッキとローラーコンベア付の荷台とアームを取り付け、アームでドアを開けてコンベアを寄せ、アームで押し込んで、ドアを閉める。荷物のサイズとしては50㎝立方以下、10㎏以下、と規定する。

一方で宅配ボックスも、このサイズの荷物が必ず納まること、ドアに指定の取っ手を付けること、横開き右蝶番、遠隔でロックオンオフが可能なこと、ドア前の一定のスペースが雨に濡れないこと、ロッカーが水平であること、等が必要となる。

Spotが空きロッカーを探し、通信でロックを解除し、荷物を入れ、再びロックする。これがお互いのネゴシエーションのみでできるようにする。Spotは自動運転車に荷物と共に乗って巡回する。もちろん帰ってきたら充電台に乗るわけだ。これでほぼ全ての作業がロボットで完結する。

自動運転車は、幅120㎝、長さ300㎝、高さ150㎝程度の4輪車を想定する。高さ方向に2段、長さ方向に4段、幅方向に2段、計16個までの荷物を積む。これにSpotの専用充電台が乗っている。基本的に車道を走る電気自動車とする。速度は一応40㎞/時くらいまでは出せるようにしておく。荷台は水平になるように、ジャッキが用意される。但し水平にするのは荷物の上げ下ろしの時だけとする。

ロボットへの荷物の搭載も、やはりロボットだけでできるようにしておく。あらかじめ指定の台に載せておけば、巡回して帰ってきたらまた積んで出かける、という算段だ。ここまですれば、宅配拠点の仕事は冷凍冷蔵品や重量物大型物だけになり、ずいぶん楽になるはずだ。

ユーザはあらかじめ宅配ボックスを指定して配達させ、到着したらメールやSNSで通知を受け取り、そこの情報でロックを解除し、持ち出すわけだ。これは今の宅配ボックスと同じである。

自動車では行けないところへの移動手段としてSpotを使用することで、宅配ボックスを駅やコンビニ等以外の歩いてしか行けないところにも設置できるようにした一方、手渡しに対する面倒は避けたというのがこの特徴だ。全てをロボットにしてラストワンマイルにするより、ほんのちょっと人間が我慢するだけで、よほど早い時代に便利が達成できる。

宅配ボックスが町中に広く散らばれば、エキナカに設置するときなどとは違って人は殆どいない。Spotが歩き回るにも支障は少ないだろう。同様に、ユーザが移動すべき距離も短くなる。多少重い荷物でも、自宅で受け取るために待機する負担を考えればこちらを選ぶ人は増えるだろう。これも狙いの一つである。

ただ、採算性は不明だ。Spotの方は恐らく人件費以上の働きをしてくれるだろうが、宅配ボックスの費用負担をどう考えるか。固定資産税や借り賃、電気代等がペイするのか。故障含め保守は大丈夫か。盗難リスクに対するコストをどう見積もるべきか。これらはじっくり考える必要はあるだろう。

尚、その問題とも絡むが、宅配ボックスに対する電子的機械的制約や規格を標準化すれば、宅配業界が共通に使える。今もエキナカに宅配ボックスが多数設置されているが、現状では宅配業者毎に異なっている。これはよくない。既存の宅配ボックスも含め、さっさと共通化すべきである。

2019年11月14日木曜日

MOOCsで決定的に欲しいもの


実際にMOOCsを使っていてもどかしいところは、分かっているところは早回ししたいし、分からないところは素早く巻き戻して再度聞きたいのだが、その操作が面倒であり、またもたつくことだ。多くのMOOCsはYouTubeのシステムをそのまま使っているようで、こういった素早く微妙な調整は全く持って出来ていない。

インターフェースとしてジョグダイヤルを使い、それをもってリアルタイムで速度調節できれば、MOOCsの利便性は飛躍的に高まるはずだ。しかし、ジョグダイヤルを買ってくることは出来ても、速度調節を思い通りにするにはそれなりの知恵とリソースが必要である。

恐らくは、市販のプロ用の映像編集ソフトと、大量メモリ・高速CPU・高速GPUを搭載したハイスペックPCが必要なのだろう。それは決して贅沢ではない。

MicrosoftがSurface Dialという製品を出しているが、実際の使い勝手はどうなのだろう。対応ソフトが少ないらしく、当然MOOCsには対応していないのだが、ぜひ検討して欲しいと思う。

2019年11月13日水曜日

肺を洗う


タバコのヤニで真っ黒になった肺を、よく禁煙キャンペーンなどで見かける。肺に入ったタバコの成分のうち、血管に移るものについてはいずれ腎臓で濾過され排出されるが、固形物については出ていく機構がないため、そのまま一生残るのだそうだ。考えてみれば、火山灰やアスベスト等にも同じ問題がある。一度入ってしまうと二度と出ていかないので、腫瘍化のきっかけになったりする。この問題に対処することについて考えてみた。

映画「アビス」をご存知の方も多いと思う。ジェームス・キャメロンの海洋SFモノだが、この中で出てくる技術に「液体呼吸」がある。肺の中に、酸素と二酸化炭素を豊富に溶かせる液体を満たして呼吸する技術だ。まだ人間に適用できるほど十分には進歩していないが、実験ではネズミを20時間、犬を2時間等と、液体中で生存させることに成功している。

将来的に、人間が安全に使えるようになった暁には、この液体で数時間呼吸するだけで、液体の交換と共に肺胞内の固形物が取り払われる可能性がある。

また、同様の考えとして、手術で人工心肺に切り替えた後、肺を液体で洗浄するという考え方もある。これなら今でも可能だろうが、さすがにそれだけの理由で人工心肺を使うのは難しい。やはり液体呼吸の実用化を待つのが正道だろうと思う。

健常者の肺も、洗ってみると結構汚いかもしれない。そう考えれば、積極的な健康増進策としても有効になる可能性がある。

2019年11月12日火曜日

AGIの階層化における冗長性の確保


以前、「常識のマイクロサービス」という投稿をした。細かいマイクロサービスを統合することを繰り返してやると、人間の常識が実現できるかもしれない、とするものだ。その欠点として、マイクロサービスがどれか一つでも止まってしまったら全体が機能しなくなる危険を指摘した。

これに対して、一つの機能を持つマイクロサービスを複数登録して、の多数決をとるようなことを基本形にしてはどうか、と考えた。

例えば、画像を提示して、その中に写っている人物の感情を推定するシステムがあったとする。その中にはA社、B社、C社のマイクロサービスが登録されていて、各々が各々のアルゴリズムで判定する。多数決によって判断し、残りは捨てる。あるいは信頼性を判断して、総合的に判断する。その取捨によって、マイクロサービスへの報酬も左右される。

こうすれば、個々のサービスが停止しても判定を継続できるし、サービス同士の切磋琢磨や淘汰がなされ、精度は上がっていくだろう。

また、これなら垂直統合は必ずしも必要ないし、まとめたサービスそのものがまた階層の一部になることが可能であり、ネットワーク上の「常識エンジン」が構築されることになるだろう。
このためには標準化が必要だが、当初はその「多数決システム」が差分を吸収できるので、標準化を待たずとも開発し始めることはできる。

2019年11月11日月曜日

災害用パラフィンオイル発電機


先日の台風の様子を見ていると、ガソリン式発電機が欲しくなる。しかし、現状の発電機は問題が多い。これを解消する発電機を考えてみる。

最初に問題になるのは、負荷変動だ。例えば、冷蔵庫を動かしたい場合、定格の6倍~10倍程度の突入電流がある。また、定常運転においても、コンプレッサーが動いているときと動いていない時では、数倍の電力差がある。エンジンは通常負荷変動に対応するが、そうすると効率は落ちるし、音も大きくなる。定常運転にしてバッテリに溜めるようにすれば、負荷変動は全てバッテリ側で吸収できるので、極めて小さい音で定常運転できるはずだ。

次に問題になるのは、長期保存性だ。単純に言えば、ガソリンは劣化する。このため、長期保存ができない。

次は安全性だ。ガソリンの引火点は極めて高く、腐食性もあり、揮発性も高いために扱い辛い。大量に保存するのにも不安がある。

次は保守性だ。エンジンオイルが必要であり、また定期的に交換する必要がある。また、長期間使わない時にはガソリンを抜く必要があり、その後始動するときにはまた手順が必要になる。

次は騒音だ。一番小さなもので48dB程度、通常なら60dBもの音が出る。これは結構うるさい。燃焼機関なので室内では使えないから、ベランダに出すなどすると、近所迷惑な大きさだ。

最後は、燃料やエンジンオイル等の入手性だ。当然震災時には色々なモノが手に入りにくくなるが、ガソリンはその筆頭だろう。そうであれば他のモノを、ということは考えられる。例えばハクキンカイロ用のベンジンの入手性は良かったそうだ。もちろん保存性が良い燃料であれば買い溜めしておける。

そういったものを色々と考えてみると、次のようなスペックになる。

  • パラフィンオイルを燃料とする、定格30Wのエンジン
  • 燃料タンク3L以上
  • 10kWh程度の蓄電池と制御装置
  • 蓄電池充電残量に応じた自動補充電機能
  • 100V50/60Hzのコンセント1つ、USB-A/Cコネクタ数個
  • 静音性。せめて45dB以下、できれば30dB台

これらを個々に解説してみる。

●30Wパラフィンオイルエンジン

パラフィンオイルは、オイルキャンドルやハーバリウム等に使われるオイルである。引火点が90℃前後であり、燃料用のオイルとしては最も高い部類に属する。
このオイルは燃焼しても殆ど煤や匂いが出ない。また長期保存可能であり、安全性も高い。これは非常用の燃料としてうってつけである。

しかし、パラフィンオイルを燃料とするエンジンは、知る限りでは存在しない。むしろこれはエンジンオイルに使われている。つまり、新しいエンジンを開発しなければならない。

パラフィンオイルは粘性が高く、発火点が高い。通常のガソリンエンジンやディーゼルエンジンには使用できないと思われ、専用のエンジンが必要になるだろう。

また、パラフィンオイルが燃料になるということは、エンジンオイルと兼用にできる可能性がある。もしできれば、これは保守性を若干上げるだろう。

また、パラフィンオイルは単価が高いので、あくまでも非常用になる。てんぷら油やサラダ油が使えるなら、まただいぶ安くできるかもしれない。業務スーパーで一斗缶で買っておけば、相当の期間使えるはずだ。もちろん被災時に買うのも良い。被災時には一斗缶のサラダ油など売れないだろうからだ。

家庭用冷蔵庫は100Wが定格だから、30Wというと少なすぎると感じるかもしれない。しかしこれは、冷蔵庫の中身を腐らせずに消費しきることを目標としている。つまり、日常と同じように使うのではなく、その時点で補充はなし。使うだけなので、数日掛けて中身は減っていく。これにより消費電力は徐々に下がる。恐らく1週間以内にカラになり、その時点でこの発電機の使命は終わるわけだ。それ以降は、スマホなど少電力機器の充電に使われる。それには30Wは十分に大きい発電量だ。

●燃料タンク

市販のパラフィンオイルは、2L・1500円前後で売られている。ガソリンや灯油と比べれば10倍~15倍もあり、相当に高価であるので、あまり大きなタンクにはできない。パラフィンオイルは運転中に継ぎ足ししても問題ないので、一晩持てば十分である。万一夜中に燃料を使い果たしたとしても、朝継ぎ足せばなんとかなる。但し燃費の計算をしていないので、効率が悪ければもっと必要かもしれない。

●蓄電池と自動補充電

ポータブルとは言え重量には余裕があるので、必ずしもリチウムイオン等である必要はない。例えばUPSに使われているような、密閉型鉛電池でも良いかもしれない。また、普段から全てエンジン補充電である必要はもちろんなくて、普段はコンセントからの補充電でよい。

AC電源がない場合、例えば充電池が残り50%になったら90%まで自動補充電する、等と言った設定をしておくことができるようにする。基本的に定格運転しかしないので、充電はON/OFFの制御しかない。これによってエンジンを最も効率の良い状態に保ち、騒音対策などもそれに合わせて行うことで効率化する。

●出力

メイン出力は、AC100V50/60Hzである。別に冷蔵庫向けなら正弦波でなくても良いだろうが、今の時代はインバーターがあるのでそんなにカネを掛けずとも正弦波に近い波は作れる。そしてこれは当分冷蔵庫に専有されるため、USBは別に必要になる。AC二つだと、制御が面倒になりそうなので、一つにした。

出力しながらの充電は可能とする。この際でも、負荷変動は充電池側が制御する。発電側はあくまで定格運転である。

いわゆるUPS機能、即ち瞬停への対処は、必ずしも必要ない。主目的は冷蔵庫の維持であるため、少々停電しても問題ない。

●静音性

マンションのベランダで使っても問題ないくらいでないと困る。調べた限りでは、ガソリン発電機で48dBというのが最少だったが、これではまだ不安だ。もう少し静音性が欲しい。

既存のエンジン発電機と違い、充電前提で定格出力のみとする前提で考えれば、それを進めることができるだろう。また、パラフィンオイルを使う前提なので、スパークプラグやディーゼル機構では点火できないかもしれない。スターリングエンジンのように、穏やかに燃やし続けることで回すものになるのではないだろうか。

ダ・ビンチが開発しているロータリー熱エンジンが使えないだろうか、と考えている。


使い方としては、普段は目立たないところでACコンセントに繋ぎっぱなしにしておく。そして停電したら、冷蔵庫の所に持ってきて、コンセントをつなぎ替える。この際、屋内では換気が必要になるので、延長ケーブル等で引っ張って、発電機はベランダに出すようにする。このためにも、発電機は防水が必要になる。コンセントも防水コンセントが必要だ。

排気をパイプ等で屋外に誘導するか、あるいは換気を十分にすることとして屋内で使うことも考えられるが、やはり基本は屋外と思われる。

2019年11月8日金曜日

マイクロデータセンターアプライアンス


アプライアンス(中身はコンピュータであるが専用のソフトが入っていて、PCのように自由には操作できないもの)を買ってきて、自宅の光ファイバ回線に繋げる。ちょっと設定をして、後は放っておくだけで、それが自動的に儲けてくれる。そんなビジネスがあったとしたらどうだろう。

それは、このようなビジネスモデルになる。まずそれは、AWSのようなクラウドサービスである。即ち、ユーザに仮想的な計算機資源をネットワーク経由で提供し、ユーザを募り、その使用に対する対価を得る。しかし、その裏で動いている計算機資源の構成が異なる。それが先ほど言ったアプライアンスだ。

AWSでは、大量のサーバを並べた巨大なデータセンタが、世界中に作られている。これに対しこのサービスは、自前のデータセンタを持たず、アプライアンス同士が疎結合した計算機ネットワークを使う。アプライアンスはサービス側が開発し、一般個人などが購入する。あるところでは家庭の光ファイバ回線につながっており、別のところでは企業内の空きスペースにて専用回線でつながっている。

このクラウドサービスは、AWSの持つ様々なサービスモデルのうち、ごく一部だけをサポートする。それは、ストレージとファンクションである。いわゆる仮想PC、仮想サーバのようなモデルはない。データベース等のモデルは、当初はなくてよいと思う。可能であれば、この基本モデルを基に、順次拡大すればよい。

ここで、仮想PCの類がない理由は、個別のアプライアンスに固定的に資源を割り当てるという概念が存在しないためだ。これらのアプライアンスは、基本的に信頼できない。つまり、電源や通信がいつ落ちるか分からず、中には違法改造されて悪意を持った者が紛れているかもしれない。従って、ユーザが求める計算は、一台だけでは完結しない。ストレージでhadoopがあるように、計算も分散と集約をするわけだ。また、ストレージも計算も通信も、全て暗号化されている。

このため、アプライアンスのオーナーは、自分のアプライアンスでどんな計算がされているかを知ることはできない。しかし、何かしら使われたのであれば、それに応じた対価を得ることができる。これはもちろん、ユーザが支払った対価の何割かになるわけだ。
ユーザのポータル自体も、このアプライアンスネットワークに搭載されている。つまり、完全分散型である。

アプライアンスは分解分析困難なように、また分析されたことを検知するとシステムを無効化するように作る。このため、悪意ある第三者がネットに侵入しにくい。
もう一つの大きな特徴は、ユーザーの支払いは、アプライアンスによる稼ぎで相殺できるという点だ。つまり、使う量に合わせてアプライアンスを購入し動かしておけば、タダで使うことができる。もちろんアプライアンスの購入費と維持費(電気代や場所代)は必要だが。

このビジネスの特徴は、けっこう色々ある。

  • ビジネスオーナー(クラウドサービス側):
    • アプライアンスの設計はかなり大変だが、できてしまえばスケーラブルモデルになる。つまり、巨大な投資が不要であり、(アプライアンスのストックと保守くらい)ので、ビジネスが幾ら拡大しても固定費が増えない。これにより、AWSのような巨大なビジネスにも対抗可能である。
  • アプライアンスオーナー:
    • アプライアンスは基本的に買い取りであり、後のランニングコストは電気代と通信代程度である。使ってくれた分必ず儲かるのだから、リスクはない。投資を回収できないリスクは、ビジネス立ち上げ初期には発生するが、以降はそれもない。
    • UPSや耐震装置を買う必要はない。ソフトウェア上の仕掛けでDRは確保されているので、何時落ちても、何時故障しても問題ないからだ。
  • ビジネスのユーザ:
    • AWSでは、可用性を得るために、仮想サーバを複雑に構成する必要があった。しかしこれなら、何もせずとも可用性を確保できる。ビジネスロジックを素直にファンクションに記述するだけだ。スケーラビリティも、何も考えなくて問題ない。

実際の計算機資源が世界中のどこにあるか分からないから、どこの国の法律にも縛られない。コングロマリットなら、自国ビジネスのオーナーを他国に分散してしまえば、自国の法律からすら守られる。

サービスの継続性を疑う必要はない。自分で必要な台数のアプライアンスを買ってしまえばよいのだ。世界中のその他のアプライアンスオーナーが全て辞めても、そうすればサービスは継続される。

このモデルは、同じ計算をさせる場合には、必ずAWS等より遅くなる。そのため万能ではないが、可用性は上回る。金融取引や契約書の保存等、絶対に消えては困る情報の保管と処理には適していると思われる。

2019年11月7日木曜日

UCOキャンドリア専用熱発電機


UCO社が発売している「キャンドリア」は、キャンドルランタンである。

通常のロウソクとは違い、専用の鞘に納め、下からバネで突き上げるようになった砲弾型のロウソクを使うため、炎の位置が常に一定の位置にあり、しかも長時間点灯させておくことができる。また、ロウソクは1本から3本まで、必要な明るさに応じて調節できる。
この天板は、コップの水程度なら沸かすことができるらしい。これを知って、以前購入を検討して結局断念した発電機のことを思い出した。

Robens Woodsman Stove And Charger
FlameStower Fire Charger
PowerPot V Battery Bundle

これらは何れも、ペルチェ素子を使ったゼーベック発電を原理とする発電機だ。ただ、何れも熱源が満足できるものではなかった。Robens Woodsman Stove And Chargerは、燃えるものなら燃料は何でも良いのだが、逆に言えば燃焼の制御ができないので、つきっきりで面倒を見なければならない。また、煤が出るし、火が漏れるので、屋外向けである。FlameStower Fire ChargerPowerPot V Battery Bundleは熱源は何でも良いのだが、登山用ガスストーブ(コンロ)を想定しているようだった。ガスではせいぜい1時間しか発電できない。また、ガスボンベが大量に必要なようでは、災害時には使えない。

同じ原理で、この「キャンドリア」の上に固定できる発電機があれば、上手くいくのではないだろうか、と考えてみた。

ランタンを使ってゼーベック発電をするというのはそれほど奇特なアイデアではなく、ネットを検索すれば様々なチャレンジャーがこれを行っている。しかし、使っているのは皆ガスストーブだ。その点、キャンドリアであれば、一度セットしてしまえば9時間安定して環境を保てるし、つきっきりになる必要はない。屋内でも使える。

ただ、問題は発電能力だ。この手の自作では、LEDが点いたとかモーターが回ったとかいう話しか聞かない。モバイルバッテリーが、スマホが、まともに充電できるのだろうか。これを考えてみる。

市販されているUSBの規格は、5V500mA、つまり2.5Wである。これに対し、市販のスマホのバッテリ容量は、4000mAhくらいある。電圧が書いていないが、3.6Vだとすると、14.4Whだ。単純計算では、6時間弱の充電が必要ということになる。一方、

https://www.lec21.com/report-seebeck-effect2/

の実験で2.5Wが出たのは、ロウソクではなくガスストーブ、ペルチェ素子3段4組=12素子、水冷式だった。キャンドリアではこの面積は確保できないし、火力も相当に落ちるだろう。この結果からだけ見ると、キャンドリアにペルチェ素子一つだけの装置で十分な発電ができるようには思えない。

そんなことを考えていたら、こんな記事を見つけた。

https://newswitch.jp/p/19514
https://eetimes.jp/ee/articles/1910/04/news028.html

今の10倍ということであれば、ペルチェ素子1枚でも2.5Wが出る可能性が出てきた。これが量産された折には、この発電機構は再度注目されるはずだ。その時には少々高くても購入したいと思う。

2019年11月6日水曜日

分散ストレージと個人SaaS


以前、「分散VOD」という投稿をした。この時点ではVODをイメージしていたのだが、同じような仕掛けは汎用でも良いのでは、と考えるようになった。つまりはタダのコンピュータストレージだ。

これはNASのようなアプライアンスに仕立て、原則として24時間無停止にする。それはネットワークドライブのように動くが、実体は分散している。但しブロックチェーンのように全ノードに分散しているのではなく、自分を含め最低3ノード(上限なし)に分散しているに過ぎない。そしてそのバックアップ(多重化)は全て自動で行われ、ユーザからは見えない。

分散は、同様のアプリやアプライアンス間が通信を取り合い、自動で行う。例えば一つのノードの接続が切れたら、そこに入っていたデータは自動的に他のノードから生きている別のノードに分散され、多重度は同じに保たれる。逆に、新たなノードが増えたら、多くのデータを抱えていたノードからそのノードにデータが分散される。

従来のネットワークドライブと比べて、見た目からも異なるところがひとつあって、それは公開と課金が可能である点だ。BitTorrentのようなCDNライクの機能を備えており、細かいアクセス制御と課金オプションを可能にしておく。これは汎用に作っておき、個々の努力によってSaaS化等が可能とする。但し相応のプログラミング能力は必要である。

公開と課金が可能になると、いわゆるPaaS/SaaSが可能になる。しかも、このシステムのスゴいところは、どんなにユーザが増えても性能は変わらないということだ。 もし相手が同じネットワーク上のシステムであれば、コンテンツ自体も、それを再生するプログラムも、相手のローカルにコピーされる。もし違うシステムであっても、最も近いノードにCDN配信される。これによって、ユーザは自動的に分散する。ユーザが幾ら増えても、その分コンテンツも分散するから、性能が落ちることはない、というわけだ。

例えば、ミュージシャンがJASRACに委託することなく自らが音楽を販売するとか、イラストレーターが絵を売るとかいった用途には、これは最適と思われる。ノード同士は対等であり、どこか中央への課金は発生しないので、効率の良い儲けができるはずだ。

CDNと分散バックアップは、技術的には殆ど変わりがない。これを兼用することによって個人ベースでの商売が可能になること、この発想は面白そうだ。上に乗せるアプリの進展によっては、既存の大規模ソフトウェアサービスを乗っ取る可能性すら考えられる。

2019年11月5日火曜日

スマートコントラクトとエッジコンピューティング


エッジコンピューティング。多数のセンサや監視カメラなどのデバイスがばらまかれている現代において、そのエッジ、即ち正にそのデバイス内で、ある程度高度な計算を行う。例えば監視カメラなら、画像をそのままネットに流すのではなく、AIで顔解析をするなどして、監視対象が来た時のみアラームを上げる。これがエッジコンピューティングだ。

近年のエッジコンピューティングで大いに懸念があるのは、マルウェアの混入である。というのは、エッジと言えども相当にコンピューティングパワーがあるのに、セキュリティが甘いと指摘されているからだ。

また、エッジと言えどもソフトのアップデートはあるため、ROMに焼いて固定というわけにもいかない。通常のPCやサーバと違ってファイアウォールがない、個々のデバイスに直接触れるなど、むしろ危険がいっぱいだ。

この問題に対処する方法はもちろんあるのだが、むしろその仕掛けを標準化、定型化、そして何よりも簡素化することが重要である。その一つとして挙げられるのが、Chromebookのようなシンクライアント化である。OSをシンプルにすること、また上のアプリケーションをサンドボックス化するというのがその基本だ。ただ、ChromeOSを直接使うのは多少問題がある。Chromebookに遠隔ログインするという、ちょっと意味不明のシーケンスを辿ってしまうからだ。やはりエッジコンピューティング用のOSを作るべきだろう。

そのための仕掛けとして、スマートコントラクトを提案したいと思う。但し、このこのスマートコントラクトは通常のそれと違う。まず、実行するエッジを指定できる。次に、ここでのスマートコントラクトには報酬の概念はなく、トークンとしての役割のみを与えるのみとする。第三に、実行された上でエッジに溜まったトークンは、定期的に回収される。つまりネット内でぐるぐる回るだけだ。

そうする理由は二つある。まず、実行コードは作成者のIDを種に暗号化されているので、横から覗き見することはできず、作成者も必ず特定できるという点。怪しいソフトが侵入してくる余地がない。そして、エッジにいくら計算能力があっても、トークンを与えなければ実行してくれない点だ。万一怪しいソフトが紛れ込んでも、トークンを与えなければ実行できない。ブロックチェーンにはマイニングができない種類のモノもあるので、管理者が管理しているトークンのみがそのネット上に存在でき、実行のたびにトークンを配布してその後回収すれば、どのノードも好き勝手なプログラム実行はできない、という次第である。

こういう仕掛けをベースにすることによって、それがセンサであろうが監視カメラであろうが信号機であろうがドローンであろうが、共通のOSを使うことができる。管理はWebコンソールでできる。また、そのOSはスマートコントラクト実行のみしかできない専用のOSであるから、軽く、バグも少なく、更新も自動化できる。

更に、IDとトークンを管理すれば、ファイアウォールやらIDSやらを一切使わずにエッジを安全に管理できる。実行の記録も、自動的にブロックチェーンに溜まるので、不具合の監視もしやすいだろう。他にも、ローカルに溜まるものがないので、万一デバイスを盗難されても情報は盗まれないし、怪しいものと交換されてもそのデバイスは機能しない、といったメリットもある。

個人的にはブロックチェーンという仕掛けには懐疑的なのだが、こういう使い方もできる、という事例だ。

2019年11月4日月曜日

防災用ロウストーブ


電気が止まった時、明かりや暖を取る、あるいは調理のために必要なのが、火だ。カセットコンロを持っている家も多いと思うが、カセットガスを大量に保存するのは躊躇する人も多いのではないか。ガソリンも灯油も同様だ。また、単に漏れるのも心配だが、これらは何れも経年劣化するから、大量に持って保存することができない。

これに対してロウソクは、何年でも保存することができる。これはとても有利だと思うのだが、反面、ローテクに過ぎる。非常用のものなのに裸火で、転倒に弱い。火力の調節もできない。明かりとしては暗すぎるし、調理には弱すぎる。芯は未だに綿だったりする。消耗品だ。もっと自在に使えないだろうか。 これに一番近いと思われるものが、UCO社の「キャンドリア」だ。

 砲弾型のロウソクを3本使うのだが、つまり1本から3本まで火力を調節できて、天板で湯を沸かすことができる。また、この砲弾型ロウソクは、モールドに入っていて、下からバネで押し上げられるようになっている。このため、炎の位置が変わらない。更に、この砲弾型ロウソクは、当然ながら型さえあれば自作できる。ロウソクは9時間使えるそうなので、これも十分だ。

ただ、ロウソクの炎は一般的には弱く、このキャンドリアにしても、3本フルに使ってもコップ一杯の湯を沸かすことすら困難である。燃料の追加供給も継ぎ足しもできない。明かりとしてはイケても、調理にはまだ足りない。

これに対し、サラダオイルストーブというものがある。こちらは芯が9本あるので、火力は十分だそうだ。サラダオイルは当然液体燃料なので、継ぎ足しは可能である。また、サラダオイルは灯油やガソリンと比べても発火点が高く、安全なのだそうだ。

これと同様のもので、シリコンオイルがある。アロマオイルキャンドルやハーバリウム等に使われている油で、ほぼ同様のものだそうだ。最近、このシリコンオイルを使った新たな暖炉「Lovinflame」が開発された。

これはあくまでも暖炉なのだがそのままは使えないが、一つ注目しているのは、芯だ。通常のロウソクや、上のサラダオイルストーブにしてもそうなのだが、芯は綿編みの紐であり、消耗品だ。しかしこのシリコンオイル暖炉の芯は金属製で、調整が不要であり、永久に使える。

この芯を9個使って、サラダオイルストーブのように、シリコンオイルのプールの上に固定したコンロを作ることはできそうな気がする。しかも、最初はシリコンオイルで良いが、ロウソクを削って投入することもできるのではないか。

そのためには、一部のポータブルガスコンロでされているように、芯の上を通す金属線を使って熱を伝え、ここに接するロウが溶けるようにしておく。この熱伝導線を、オイルプールの中に均等に張り巡らせておくと、ロウは均等に溶け、明かりがついている間は全体が液体になる。これにより、大きなロウソクでよくある、周辺が盛り上がったまま真ん中が低くなってしまうことを防ぐ。

また、この脇から、ロウペレットを投入するための滑り台が付けておくと、ロウペレットを途中から追加投入することもできるだろう。しかしオイルプールが十分に大きければ、調理終了後に投入して溶かしてから火を消せば十分だ。

シリコンオイルだけで運用することは無論可能であり、シリコンオイルは日持ちもするのだが、高価だ。一方でロウソクは、百均で巨大ロウソクを売っていたりするのでこれを削って投入することができる。ロウソクを使った方が良いと思う。

2019年11月1日金曜日

多対多のAI解析と量子コンピューター


がんゲノム情報管理センター  という組織がある。がんゲノム医療、即ち本人の遺伝子を解析して、その情報を基にして治療法や薬を選択あるいは創薬することにより、効果的な効果を上げる、つまり個別化医療を行うものだ。

当然ながらそこには膨大なゲノム情報が蓄積されているのだが、全てのがん、全国民の全ゲノム情報が入っているわけではない。 ゲノム解析といってもレベルは様々で、単一遺伝子解析、マルチパネル解析、全エキソン解析、全ゲノム解析と進み、進むほどに難しく、データ量も多くなる。最終的には全国民・全ゲノム解析が望ましいわけだが、それには膨大な費用と長い時間、何よりも国民の同意が必要である。

将来的に「全国民全ゲノム解析完」をなし得たとしても、そこで終わりではなく、その先には「全国民がん(及びあらゆる遺伝病)予防」が待ち受けているわけだ。それがどれほど膨大な計算量になるのか、想像すらつかないが、もしそうなれば、偶然に掛かる風邪や怪我を除けば、遺伝的に発症しやすいあらゆる病気の駆逐も可能になるかもしれない。

まあ最初は全国民ではなく希望者になるのだろうが、そのたびに膨大な計算をすることになるのは避けたいと思うのは人情だろう。いくら技術的に可能だからといって、膨大なコストを掛ける、例えば人が稼ぐ生涯賃金を上回る計算機コストを掛けるというのは意味が薄いだろう。そこには当然、計算量を減らす工夫が必要になる。例えば初期コストで数百万円、最終的には数万円まで抑えたい。 そこには、個別に計算するのではなく、多くの人に関して一気に計算した方が安くなる、という仕掛けが働くのだろう。これがタイトルにも示した「多対多のAI解析」だ。

必ずしもAIが関わる必要はないのだが、逆に言えば精緻な計算も必要ない。完璧な計算ができなくても、例えば8割がOKになれば十分、という考え方だ。もちろん金持ちは別払いで精緻な結果を望むことはできる。 従来のAIは、入力は多数でも、出力が多数あるということは想定されていなかった。「これは何ですか」と聞かれて「犬の確率50%、猫20%、キツネ10%、。。。」などというのとは違う。全ゲノム情報をブチ込まれたAIに対し、同時に「AさんにはXX、Bさんには△△、。。。」という答えを期待するのが、この多対多のAI解析である。

多対多で解析をした場合、多対一で解析をするよりも効率が良いこと、例えば多対一と多対二で計算した場合、多対二の計算コストが多対一の計算コストの二倍未満になることが実現できれば良いわけだ。これを例えばニューラルネットワークで実現したとして、それができるかと言えば無理だろう。個々のノードは単一の外部事象にしか対応していないからだ。

しかし、もし、個々のノードが重畳に対応していたらどうだろう。これ即ち、量子ビットである。これこそが、計算量縮小のカギになるのではないだろうか。 もちろん、今のDNNを単純に量子ビットで置き換えるというような単純なモノにはならないなずだ。具体的なアーキテクチャも、にわかには思いつかない。量子ビット自体も開発途上である。このため実現は遠い将来となるだろう。しかしこの場合、例えば量子ビットの正確性はそれほど出なくて良い。本来の(正確性を要する)計算よりも、ずっと早い段階で実用可能になるかもしれない。

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