2019年2月24日日曜日
組み立て工場コンテナ
世の中に大規模な物流が発生する大きな理由は、完成品を運ぼうとするからではないか。部品と組み立てレシピを配送するだけなら、物流はもっと簡単になるのではないか。そう考えてみた。
例えば、世の中の家具が全てIKEA方式になり、組み立てロボット工場が各地にあればどうだろうか。更には材料は現地で、CADで切り出し、塗装までがレシピとして流通すれば。
この結果得られるのは、輸送コストが大きく減ること。また、無駄に作るもの(見込み生産)が減り、そのコストも低減できる。カスタム生産も容易になる。これも見込み生産の減少に貢献する他、品切れもしにくくなる。
服や靴もそうだ。気に入るデザインがあっても足に、体に合わなくて悔しい思いをする、欲しい色がなくて別の色で我慢する、売り切れに落胆することがなくなる。(その代わりバーゲンや福袋の楽しみは減るだろうが)
今の生産方式がこうなっていない理由は、人だ。モノの輸送費は、もう大したことがないというレベルになってきているが、生産にはどうしても人が大量に必要になる。それも、モノによってそのスキルは異なり、高度なものも求められる。優秀な人材が安く手に入るよう、企業は世界中を探し回るわけだ。
だが、今後AIが進歩してロボットの制御が自在にできるようになれば、複雑な組み立てが自動で、同じ品質で、低コストでできるようになる可能性は高い。更にオンデマンドに近い生産ができれば、材料の無駄、作り過ぎ、不足による機会損失を避けられ、原価は大きく削減できる。
このためには、現地の人間に必要なスキルを最小化することだ。生産計画、調達、配送まで全てをロボットが行うものとして、現地の人間は基本的に監視、トラブル対応だけにする。これも全世界共通で教育できる。世界中どこに派遣しても同じ仕事ができるし、それこそVRで遠隔教育することもできるだろう。
その代わり、工場のコストは並みの工場よりずっと高くなる。そのほとんどは設備費で、後は電気代だ。生産量当たりの減価償却費は、通常で作る場合の何倍も高くなる。ただそれは従来の人件費を含んでいることには注意が必要だ。
また、工場の設計は皆同じでよい。もしそれなりに小さければ、海運コンテナにしつらえてしまえば、工場を工場で生産できる。設置も撤去も簡単なので、流行に合わせて数を増減させたり、撤退することも簡単だ。海外進出も難しくない。バージョンアップも、新しいのを送り込んで古いのを回収することでできる。従来の固定費の概念を大きく覆すものだ。
ここでの懸念は、まず工場自身のスペックだ。製品自体はどんどん新しくしていかなければならないが、その新しい設計にロボットが耐えられなければならない。このためには柔軟なロボットが必要だ。
次の懸念は、現地で調達できる原材料の品質である。受け入れ検査をロボットでやり、ダメなら弾くというような仕掛けが必要だが、この分野はまだ殆ど研究されていないように思う。
後は高度な設計技術であるが、ま、これは企業自体の魅力と言えよう。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
高市氏の積極財政論と確証バイアス
高市首相は安倍氏と同じ積極財政論者で、就任直後からその方向に舵を切っている。プライマリバランスゼロ目標を事実上反故にし、戦争でもコロナでもないのにいきなり17兆円もの補正予算を組んだ。ちなみに安倍総理が初年度に打ち出した補正予算は10兆円であり、それと比べても突出している。 こ...
人気の投稿:
-
高市新総理がかつて主張していた「スパイ防止法」。巷でもスパイ防止法の制定を望む声は強いのだが、調べてみるとそんなに単純な話ではない。特に、世間のイメージと実態はかなり異なっていることが分かったので、ここでメモしておく。 まず、「スパイ防止法がないのは日本だけ」とよく言われて...
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
書籍「糖質疲労」「脂質起動」がベストセラーになっているらしいというので、少し読んでみた。そこに書いてあったことでいくつか気になったことがあったので、これをネタに生成AIをイジメてみようと思い、会話してみた。 その疑問とは、いわゆるベジファーストへの反論である。 まずベジファー...
-
生成AIを使って作成されたイラストに対する極端な非難が相次いでいる。そのどれもが、ちょっと行き過ぎに思える。例えば、事前にAIであることを知らせているもの、絵を描いている本人が確認し承諾したものまでも非難されている。なぜこんなに過剰な反応をするのだろう。単にノイジーマイノリティの...
-
屋根に超音波振動装置を取り付けておく。これによって屋根と雪の間の結合が破壊され、雪が滑り落ちやすくなる。これが題記装置の原理だ。角度によっては放っておいても落ちるだろうし、そうでなくても楽に雪下ろしができる。 まあ超音波でなくて低周波でも良いのだろうが、超音波の方が簡単...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
世の中の話題はAGIを通り過ぎてASIに進んでいる。AGIがGeneral IntelligenceならASIはSuper Intelligence、即ち人類を遥かに超えた知性ということらしい。 2045年にシンギュラリティが起きると予測したのは、人工知能研究の世界的権威であ...
-
一時期流行したベーシックインカムもいったん廃れたが、完全に潰れた訳ではなく、一部の市民や政治家は諦めていない。また何度も復活するだろう。そしてまた萎むだろう。 世間がベーシックインカムに反対する理由は主に財源と配分であろう。MMT信者のおバカ提案は論外だが、そうではない真面目な提...
-
免震構造については過去いくつか提案しているが、これの新しい版である。 以前、難燃性の油の上に浮かべた船の構造を提案したことがある。あれの砂版である。つまり、砂のプールを作っておいて、その上に浮かべるというものだ。砂が抵抗となって振動を軽減する。 ただし、油や水と違って砂の...
-
ディーン・ケーメン氏が発明した浄水器「 スリングショット 」の原理は、いわゆる蒸留である。つまり水を沸騰させて水蒸気にした後、冷やして水に戻す。汚水と蒸留水の間で熱交換を行うことで効率を上げている。 日本では、防災用の浄水器としては中空糸膜や逆浸透膜が殆どだ。これと蒸留式には...

0 件のコメント:
コメントを投稿