自分の知る限りでは、VRChatのワールドで青空文庫が読める図書館があったのと、N高の教室メタバースくらいしかマトモな例がないのが、メタバース内で本を読む方法だ。本や書類がメタバース内で苦も無く読めるようになれば、電子書籍も含めて全部メタバース内に落としてしまいたい、とすら思っているのだが、現実はなかなか難しいようだ。
何が難しいのだろうと考えてみると、①UIの問題、②画面の解像度の問題、③権利(著作権など)と互換性、くらいに分けられるのだろうと思う。これを順番に考えてみる。
まずUIの問題だ。Meta Quest 3など、殆どのVRゴーグルは、コントローラを両手に持つ方式だが、これだと握るトリガーが2つしかなく、細かい操作ができない。また、コントローラの位置を把握する精度も不十分で、ジェスチャーでのページめくりのような細かいことはできないので、ポインターとボタンでめくっているのが現状だ。このため、本の途中から開くとか、パラパラめくるとかいう操作ができない。もしやるならそれに専用のジェスチャーなりボタンなりを割り当てる必要があり、それは自然なメタファーではない。
画面の解像度について考えると、Meta Quest 3では、視野角が110°、角解像度(1°当たりの画素数)が25PPDだそうだ。一般人の視野角は180°、また視力1.0に相当するのが55PPDだそうなので、全然足りていない。25PPDを50PPDにするには、単純計算で画素数が4倍必要だが、流石にそれは難しいだろう。さっさとレーザー式にするべきだ。だがレーザー式はまだ研究段階で、市販されているものはたぶん殆ど無い。
権利問題は、例えばAmazonで買った電子書籍をMetaのHorizon Worldsで読めるか、あるいはそれとKoboで買った電子書籍を両方持ち歩けるか、同じ操作で読めるか、というものだ。電子書籍をメタバースに持ち込むこと自体にまた新たな許諾が必要だし、ましてや他社の書籍となれば同じには扱えないだろうというのは、素人でも想像がつく。スマホやタブレットでもAmazonとKoboは別アプリだ。ちょっと大人げないとは思う。
これらの問題は、一気に解決することはない。このため、最終形態としての理想は語るにしても、その中間形態を考える必要がある。例えばコントローラの完全撤廃は今後数年では実現しないだろうから、コントローラ前提にするならUIを統一すべきである。また画像の解像度が上がらないなら本の方を大きくすべきだろう。
権利問題に関しては、複数のVRリーダーを搭載する方向になるだろう。だがもう一つ裏技はあって、Webブラウザで読むようにすれば、ある程度は解決できるはずだ。今でもWebブラウザはあるのだが、本のように手で持ってというレベルにはなく、視界を防ぐ巨大スクリーンになっている。壁の掲示板を読むようなもので、またURLを指定するなど決して使い勝手は良くないが、まあ当面はこれで凌ぐことになるのかもしれない。
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