2018年6月11日月曜日
調理言語とAI状態認識
https://jp.techcrunch.com/2018/05/08/cookpad-oicy/
https://info.cookpad.com/pr/news/press_2018_0508
クックパッドのレシピを機械可読形式に変換して提供するサービスだそうだ。これは興味深い。同時に発表された「Oicy Taste」も気になる。
調理家電に関しては、過去何回か言及している。だがレシピの標準化に関しては特に指摘していなかったように記憶している。そこへこれだ。
これは一種の「調理言語」と言える。このフォーマットは気になるところだ。料理のレシピといえば、従来の技術では、形式化可能か不可能か、ぎりぎりのところにあったと言える。
例えば材料のサイズ、重量のバラエティに対する対応だ。たまねぎ一個と言っても、小と大では体積がぜんぜん違うし、中半分と言われた場合に大の半分が残っていたらどうしよう、全部使い切ってしまうか微妙に残すかの判断は人それぞれだ。
また、家庭にある調理家電・器具の能力は異なる。同じ電子レンジでも、最大出力が異なったり精度が悪かったり、自動調節機能が違っていたり。なべ一つ、フライパン一つとっても、同じ火力でも温まり方が異なったりする。
また、調理の仕方も曖昧だ。「よく混ぜる」「角が立つまで」「きつね色になったら」「つまようじを刺して・・・」という一つ一つの言葉の解釈が、機械には困難だ。
クックパッドが提唱するこの「機械で読み取れる形式」たる「MRR」(Machine Readable Recipe)だが、本家ニュースリリースを見ても全く情報がない。心配なのは、これらを見据えた高度な拡張性を考慮したものになっているのかどうかだが、まああまり期待し過ぎるのは可愛そうだ。まずは第一歩として評価すべきだろう。
もし、従来型の言語、例えば計量をきっちりして温度を調節しながら何分混ぜる、といった方式であると、失敗する。従来でも、例えば電子レンジのレシピをそのまま実行すると失敗することの方が多い。自分で微妙な試行錯誤が必要だ。
料理の言語は本来、「~の状態になったら次に移行」という形式をとるべきだ。そしてその状態は、従来は記述はできても機械での実行はほぼ不可能だった。
しかし、もし調理家電に各種センサがあって、これらを認識するAIがあれば、そういった記述があっても調理が可能になる。「きつね色」「角が立つ」「爪楊枝を刺して赤みがなくなる」「沸騰する」「吹きこぼれそうになる」「しんなりする」「煮汁が半分くらいになる」などが機械に分かるようになれば、全自動調理も夢ではない。
クックパッドにここまで求めるのは酷だが、逆にこれは調理家電メーカーにとって大きなチャンスでもある。材料の量によって調理時間を微妙に調節する必要がある、という、従来の調理家電における根本的な欠点を、一気に解決することができるからだ。
本来ならパナソニックやシャープにがんばって欲しいところだが、今で言うなら韓国、中国勢の方が望みがあるかもしれない。いずれにしても自社で閉じることなく、世界標準を目指して考えて欲しいところだ。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
注目の投稿:
超音波モーターの原理によるVR用トレッドミル
VRにおけるリアリティ問題の一つに、その場で動くのではなく移動する場合、つまり歩いたり走ったりすることが挙げられる。実際にはその場にいるので、歩いたかのように足場を調節してやる必要がある。 これを実現する方法として、すり鉢状の滑りやすい足場を作っておく方法と、トレッドミルを使...
人気の投稿:
-
性善説と性悪説、どちらを取るかと言えば、やや性善説、だろうか。 子供の成長を見ていると分かるのだが、基本的に子供は善だ。だが、同時に自分勝手なところもある。人の持っているものを欲しがり、場合によっては喧嘩してでも奪おうとする。だがこれは「悪」と言えるほどのものではない。 ...
-
http://techon.nikkeibp.co.jp/real/project/025.html 水と混ぜるだけでできるセラミックスで、圧縮強度、曲げ強度、引っ張り強度、接着強度、耐食性、とあらゆる面で優れているのだそうだ。また、混ぜ物ができるので、その特性をさらに...
-
CAS冷凍 については何回か書いているのだが、いわゆる冷凍睡眠にこれを使えないだろうか、と考えた。 不治の病を未来の医療に託すとして冷凍睡眠(実際には死んでから凍っているのだが)している人は居るし、火星程度より遠くに行くとなると冷凍睡眠の実用化は必要になるだろう。「20...
-
骨梁とは、骨の内部に存在する網の目ないしはスポンジのような構造のことだ。この構造によって、骨は頑丈なのに軽量でいられる。類似の構造としてはアルミ発泡材があるが、あれはどちらかと言えば消音や軽量化が目的であり、骨のような(建築用語で言うところの)構造材としての用途とは少し違う...
-
ハクキンカイロの発熱原理を調べていて、これを防災用(キャンプ用でも良いのだが)の湯沸しに使えないかと考えた。 普通、キャンプではガスコンロを持っていく。だがあれは裸火を使うから、熱効率は悪い。これに対してハクキンカイロの仕掛けは、白金触媒を適切な場所に配することで、極...
-
フリーズドライには、戻したときに食材の食感が変わってしまう欠点があった。代表的には、豆腐が高野豆腐になってしまう。じゃがいもがスカスカになってしまう。葉物野菜はしなしなになってしまう。これらの欠点を、「 CAS冷凍 」によって補うことはできないか、と考えた。つまり、冷凍には...
-
http://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180409160607.html 復興庁が出した、東日本大震災における復興支援の報告書だ。 ざっと読んだが、よくある役所の成果報告書という感じで、タイトルからして「事例...
-
http://japanese.engadget.com/2017/03/28/ai/ これは、上の記事への反論である。 記事の流れについては先のリンクを読んで頂ければと思うが、大きくはその結論として①AIには想像力がない(苦手)、②日本人には世界に稀に見る想像力...
-
ソフトによっては機能が多すぎて、メニューの中を探すだけで一苦労、ということが増えてきた。画像編集、CADなどは特にそうだが、ワープロ程度であっても既に充分に多い。一度も使ったことのない機能も多々ある。 ソフトによってはメニューがカスタマイズできるものもあるが、その範囲は...
-
電線の地中化が遅々として進まないそうだ。 電線を地中化できない最大の要因はコストだろう。よく「予算が無い」などと言われるが、その本質は「それだけの予算を掛ける価値が見出せない」ということだ。地中化の主目的は防災だが、普段のメリットがせいぜい景観くらいしかないことが、...
0 件のコメント:
コメントを投稿