2017年5月17日水曜日

無筋コンクリートブロックドーム


高度成長期に作られた鉄筋コンクリートの建物や道路が軒並み寿命を迎え、2020年の東京オリンピックのときにどうなるのか、という議論があるそうだ。
鉄筋コンクリートの寿命は50年だという。見た目頑丈そうに見えるのに意外なことだ。調べてみると、中性化による強度低下や鉄筋のさびによる膨張などが問題だということらしい。そして、手抜きや無理解のままで作るとその寿命も大幅に縮まる。
古代ローマのコンクリート建築物が未だに残っているのに、なんと寿命の短いことか。そう思ってローマの方を調べてみると、これまた面白い。こちらは鉄筋は入っておらず、セメントの種類も違うそうだ。経年で劣化しないローマンコンクリートというもので作られている。
であれば日本でもそうすれば、と思うのだが、そう単純ではないそうだ。ローマンコンクリートは固まるのが速く作業がしにくいこと、配合が複雑でまだ充分な解析がされていないこと、そしてやはり普通のセメント(ポルトランドセメント)と同じく引っ張り強度は弱いので、鉄筋を排除できないこと。
コンクリートは圧縮強度は強いが引っ張り強度は弱い、だから引っ張り強度が強い鉄筋が必要、というのがその原理なのだが、そこから逆に考えると、引っ張り強度が必要ないのなら鉄筋はいらない、という理屈になる。そもそもローマの建築物が鉄筋なしで成り立っていたのは引っ張り強度が不要だったからだが、それは即ち地震や台風による建物の変形である。イタリアは結構な地震国だが、ローマ周辺は実は殆ど揺れないらしい。
そこで考えるのが、タイトルの通りだ。ローマンコンクリートでブロックを作り、これを積み重ねてドームを作れば、圧縮強度だけで構造物が作れる。揺れに対しては免震機構で対処し、またブロックの重みと隙間のズレを利用して吸収する。アーチ構造のように、ひとつひとつのブロックの形状を工夫して、ズレてもその重みで自然に元の形になるように作るのだ。
このためにはある程度の厚みが必要になる。例えば2階建て一軒家程度の場合でも20~30cmは必要ではないか。そうすると重量が問題になるので、中を中空にしたり柱構造にしたりして軽量化する。隙間に発泡スチロールでも吹き込めば断熱にも役立つ。
問題になりそうなのは、雨と窓だ。多数の隙間ができるから、幾ら表面を加工しようとも雨漏りはしやすいし、ドーム構造という性質上、窓は作りづらい。大きくすれば強度に影響があるし、構造が複雑になるためそこから雨漏りしやすくなる。通常の屋根防水と同じような仕方では、50年どころか10年ももたない。ただ、漏れたとしても木造と違って構造体が腐ることはないので、いっそのこと何もせず、室内側の造作で排水路を作ってぼた落ちしないようにする、ということも考えられる。
全部をローマンコンクリートにするのではなく、天井だけは普通に作って、壁だけをローマンコンクリートブロックにする、ということも考えられる。これなら隙間と雨漏りの問題は大きく緩和される。屋根だけは耐久性がないが、これも相対的なものであり、50年に1回葺き替えればよい。
ただ、こちらの場合は揺れが想定以上に大きいとバラバラになってしまう。これを防ぐためだけに、ブロックに通し穴を空けておいて、何らかの配筋をするのもよい。ブロックに密着する必要はなく、経年劣化を考慮するなら、鉄筋ではなくアルミやグラスファイバーなども考えられる。この問題はドームでも同じだが、その揺れの想定はずっと大きなものにできるはずだ。

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