2017年5月1日月曜日

スタートレックの時代は来るか


映画「スタートレック」で描かれる23世紀の未来は、貧困が撲滅されていて、貨幣が存在しない。人は皆、自分を高めることを究極の喜びとして生きている。本当にそんなことは可能なのか。
技術が発達することで、衣食住に必要な全てが無償で提供される事態はあり得るか、という問題でもある。これへの答えは「あり得る」だ。だがもちろん無条件と言うわけにはいかない。そして、その根本となるのは、人間が持つ「欲」の抑制である。
その一つは、争いの欲だ。どんなに進んだ文明でも、その文明に相応する破壊兵器は作り得るものだ。だから、考えの違う人たちと仲良くやっていくための抑制がなければ、何れは戦争になって死滅する。また、物欲もその一つだろう。どんなに多くのモノを持っても満たされない人種というのは居るものだし、金儲けにしても、使う目的を明確に持って儲けている人は皆無だろう。儲かること自体が楽しいのだ。他に重要なのは、子供を必要以上に欲しがらないことだ。人口には一定の制限を掛けるべきで、それは地球の資源と技術の進展具合から逆算して求める。
これらの欲を直接抑えるようなことは、対症療法に過ぎない。その根本原因は、精神的な安定(幸福感)である。例えば過度な物欲は、依存症の一種である。もちろん肉体的な病気からくる場合(分泌異常など)もあるだろうが、それには治療で対処すればよい。それ以外の、例えば社会的欲求を満たすことは、薬では難しいし、本質的ではない。
だからと言って、希望する人が希望する職種に全て収まるなどということはあり得ない。誰かが尊敬されるためには、他の多くの人は尊敬する側に廻らなければならないから、全員が尊敬されるなどということもナンセンスだ。人の全ての欲を満たすことは所詮無理だし、その不満が一定の水準を超えれば争いが生まれる。
だが、近未来において、このナンセンスを可能にする技術がある。それがAIだ。以前の投稿
で書いたような社会だ。人同士の付き合いの中にAIが自然な形で紛れ込むことで、人の欲求を適度に消化すると共に、危険な方向に進むことを抑制するものだ。こうすれば、たとえ全人類が誰一人働かずとも生きていける世の中になったとしても、依然として適当に問題は発生し、人が自らの力でそれを解決することで欲求を満たす、といった、精神的なエサまでも与えられる「新・籠の鳥」状態になれる。
これがもっと進むと、人は一人ひとりがホロデッキの中で過ごし、相対する人間が本物かAIかの区別すら付かないような社会が考えられる。自分が籠の鳥であることすら自覚できなくなれば、人は一生幸せに暮らせることだろう。
これでも知的好奇心を満たすための欲求は止まらないから、新たな知見や発明が途絶えることはないし、むしろ促進されるだろう。そのうち本当にワープエンジンが開発されるかも知れない。そうして宇宙に進出できるようになれば、鳥籠も不要になるかもしれない。

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