2018年1月24日水曜日
ロボットによる直接生活支援
ロボットが人の労働を奪う問題について、その最大の問題とは、ロボットに代替される程度の仕事しかできない人の割合が増えていくことである。つまり、その人に幾ら労働意欲があろうとも、能力がロボットに劣るために働くことができない、という問題だ。
現在でも、生活保護水準以下の給料で働いている人は多くいるが、例えば生活保護が月20万なら18万、16万というレベルだ。これが5万になってしまうと、さすがに生きて行けない。それも、国民の半数がそういう状態になってしまう、という危険にさらされているわけだ。
この5万という数字は、ロボットならそのくらいのコストでできる、という意味であり、ロボットが進化すれば数字はどんどん下がっていく。その下がり具合は単純な予測が困難だ。今、大丈夫であったとしても、3年後に失業することが考え得る世界になる。
さすがにここまでくると、保護せざるを得なくなるはずだ。生活保護水準との差分を支給する生活支援制度として設計される。ここで問題なのは、現行の生活保護対象の捕捉率は日本の場合で20%程度なのだそうだ。この制度が発足するような時代では、先ほどの19万、18万という世代は軒並み5万になるので、捕捉されない≒死であるため、捕捉率自体も急激に上がることになる。
現状を確認しておくと、社会保障費全体で32兆円、生活保護費はそのうち3兆円、対象者は200万人。生活保護捕捉率を4倍として12兆円、新たな生活支援制度の対象者を10倍の2000万人として支給額を生活保護の7割とすると21兆円、合わせて33兆円。予算は10倍、30兆円増となり、社会保障費全体では62兆円となる。これは現行の国家予算100兆円の6割に当たる。
100兆円が130兆円になって、そのうち62兆円が社会保障費、現状でも42兆円を国債に頼っているところ、72兆円が国債になる。これでは国家も破綻してしまう。これを何とかする手段の第一は高額所得者(企業含む)への増税だが、これは反発も大きいだろうし、海外へ逃げられる危険がある。何よりも絶対額として足りない。少なくともこれだけでは収まらない。
他にも色々選択肢はある。その中で、ロボットによる直接生活支援というのは考えてほしいところだ。
従来の生活支援は「カネ」で行われてきた。行政が生活支援に掛けられる人的資源は限られているから、カネに頼るしかなかった。しかし監視ができなければ利権や搾取が生まれる。AIやロボットの発達は、直接支援としつつも人的資源を割かずに済む希望だ。
これは、一言で言えばロボットメイドである。ロボットが一家に一台、ないしは巡回で支給される。ロボットにできることは何でも頼んでよい。多くの場合は介護介助や買い物、話し相手遊び相手、家事に使われる。また、一定量の公的支給品があり、それには衣類と食料、家電製品が含まれる。ロボットは食料を調理し、衣類を洗濯する。
生活支援から(自由に使える)カネが無くなることはないが、カネと合わせてとりあえずは困窮せずに生きることができる。給与が一定以上になれば、これらは段階的に有料になるが、使えなくなることはない。
今まで現物支給ができなかった理由は、現金化や不正受給、あるいは食料を支給されても調理できない(有効活用できない)、といった問題があったからだが、そこに(公的機関直轄の)ロボットがいれば、有効に使用し且つ不正使用を監視することができる。今までは「カネだけ」という大雑把な支援だったものがきめ細かくなり、結果として効率は向上する。
もちろん、高度な(高額な)ロボットを大量に支給することは現状では無理だ。だからロボット自体も安く作れるようにしなければならない。これに関しては別に議論することとする。
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