2018年8月27日月曜日
月は無慈悲な夜の女王
https://www.excite.co.jp/News/odd/Tocana_201807_post_17550.html
AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス氏が、「地球上の工場を全部月に移す」という発言をしたそうだ。これを聞いて思い出したのが、タイトルの有名なSF。地球の植民地となって、農産品などの輸出を行っていた月が独立運動を起こす、というお話だ。
工場を月に移すといっても、そう簡単な話ではない。輸送費だけでもとんでもないことになるし、だいいち月には資源がない。人もいない。だが、ここには非常に面白い示唆がある。
元々ベゾス氏がそう言っている背景は、地球環境を守ることだ。つまり、無人の月なら幾らでも汚していいから、その分地球を守ろう、というわけだ。今までは地球とせいぜい人工衛星程度だった発想を、月にまで広げて考え直そう、ということは評価できる。
今までは植民ばかりが話題になり、「メリットがない」で締めくくられていたように思うが、今となってはロボットによる「植ロボット」を前提として考えてみてもよいように思う。つまり、人間の量は最低限にして、殆どをロボットが行うのだ。
題記の小説では穀物などが作られていたが、そのためには大量の有機物や酸素などの気体を地球から送る必要があり、それが漏れれば純粋に(宇宙規模での)損失であるから、あまり良い策とは思えない。ベゾス氏は、「重工業」を移そうとしているそうだが、これは正解だと思う。
基本的に、真空でも稼動する工場(もっと積極的には真空を活用できる工場)であって、月資源を活用でき、あるいは地球でやると汚染が酷い(環境対策が厳しい)ものを持ってこよう、と思うだろう。その筆頭は恐らく発電と材料精製だ。また、核廃棄物など汚染物質の投棄を行うことも考えられる。月の裏側に投棄すれば、地球からは安全になる。
この、「真空でも稼動する工場」「真空を積極的に活用できる工場」というのが、今までにはなかった発想であるので、ここを積極的に技術開発する必要がある。もちろん人間がほとんど居ない前提で動かなければならないから、造りもそれなりの配慮が必要である。
従来の真空蒸留や真空蒸着は、始めから真空である性質を使ったものではないため、上の条件とは少し違ってくる。例えば真空だから燃える心配がないとか、沸騰しやすいとかいう性質を利用するのが望ましいのだろう。
月の地質はまだ分かっていない部分が多いが、月の石の分析では、アルミニウム、マグネシウム、鉄が多く見つかっている。これらを採掘し、精製して地球に送る、というのは「アリ」だろう。
太陽光を集光して高温を作り、そこに月の石を溶かして温度を調節することで蒸留する。このくらい簡単なら、ロボットでもできそうだ。
月からモノを送るのには、マスドライバー(射出機)が使われる。このため、高温や衝撃振動でダメになるような精密機械は向いていない(無論断熱し緩衝材を使えば良いのだが、そうすれば高コストになってしまう)。作った材料をそのまま投下するような使い方は単純で受け入れられやすいだろう。
月の北極なら、マスドライバーの設置には適しているし、太陽光も十分に得られる。そこから定期的に打ち落とされる花火も一緒に月見をする、そんな光景も見られるかもしれない。
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