2017年6月16日金曜日

家庭用フリーズドライ機再び


以前の投稿「家庭用フリーズドライ機」の続きである。

読者の方からのコメントで、家庭用フリーズドライ機は存在していることが分かった。

https://harvestright.com/product/small-freeze-dryer/

これがそうだ。現在のレートで25万円、サイズは電子レンジ2段重ねといったところだ。調べてみると、電子レンジが登場した当時は100万円なんてのもあったようだ。今は1万円を切る価格でも買えるから、今後の進展次第で家庭でもなんとか買えるようになる可能性はある。

低価格化を実現するには、1ガロン(約3.8リットル)という製造容量を1.5~2リットルにして、筐体を半分にするのがよい。ちょうど電子レンジと同じサイズになって、価格が10万円スタートなら何とか受け入れられそうだ。冷凍装置には以前も紹介したFPSCを使い、モーターを兼用して真空ポンプにしてはどうかと思う。

作った食べ物をどう保管するのか色々考えてみたのだが、家庭用真空パック器 真空パックん plusエージレスを組み合わせることが適切だと分かった。その理由は以下の通りだ。
フリーズドライしたものを長期保存するためには、酸素と湿気から守る必要がある。これにはただ袋に入れたり容器に保存するだけではダメで、密閉しなければならない。これには、真空パックをするのが最も簡単だ。だがこれにも考えるべきことがある。

まず、その袋自体に「ガスバリア性」が必要だ。ポリエチレンやビニールではこの「ガスバリア」性が弱く、たとえ口をしっかり閉じていても、袋自体を通じて徐々に酸素が侵入してくるため、例えば有名なジップロックは使えないらしい。ナイロンやアルミ蒸着がよいらしいのだが、アルミは逆にシーリングが難しく、家庭で使われるような安価な機器では使えない。結論としてはナイロン一択になる。

この手の真空パック用の袋はナイロンが使われているが、100%ナイロンではなく、多層の一部がそうなっているものが多い。このため、市販のものを何も見ずに使うのではなく、素材の表示を見て、ナイロンがしっかり使われているものを選べばよい。

もう一つの問題は、真空パックをすることは元々フリーズドライには向いていない、ということだ。食材自体に多数の空隙があるから、真空パックすると食材が潰れてしまうからだ。また、当然その空隙には空気(酸素)が入っているから、これが酸化の原因になってしまう。

そこで、緩く潰さないでシールするものとして、中の酸素を脱酸素剤で吸収するのが良いということになる。脱酸素剤として有名なエージレスの場合、Z-PKCのような「自力反応型」「低水分用」のものが必要になる。また、酸素吸収量は、隙間の空気の量を目分量で計算して、それを5で割り(酸素の量は空気の1/5)、更に数倍(余裕分)を掛けた量があればよい。多くの場合は最低のもので充分だろう。

除湿剤の必要性は微妙なところだ。あった方が良いが、長期保存に限る、といったところだろうか。脱酸素によって中の気体の量は20%減るので、その余裕を持ったシールが必要になる。

他に考えられる手法としては、中の空気を窒素ガスで置換することが考えられる。窒素ガススプレーは数百円で買える。簡易的にはコンマ何秒の噴出で充分だ。但し食材の空隙内までは瞬時に置換できるわけではないから、やはり脱酸素剤は必要だと思う。そう考えれば窒素ガススプレーの方が無駄だ。

真空パックんには、真空にせずにシールするモードもあるし、また、水戻しに対しても役に立つ。「マリネボタン」というものがあり、正にこれが水戻しにピッタリなのだ。これは、プラスチック容器に酢を満たして素材を入れ、蓋をして、蓋にホースを繋げて減圧するという仕掛けだ。素材がフリーズドライで周りが水なら、減圧と共に素材の空隙から気体が抜け、水が入る。これで水戻しの時間を大幅に短縮できる。

Small Freeze Dryerと真空パックんの組み合わせ、これは結構現実的な使い方だ。問題は、どれだけそれを魅力と感じるか、だ。

これはひとえにその利用シーンを想像し、また創造するに尽きる。電子レンジには「奥まで火を通す」「火を使わないので安全」「タイマーと出力などで管理でき簡単」などのメリットがある。だがフリーズドライ機は調理器具ではなく保存器具なので、冷蔵庫の代用ないしは補完を考えなければならない。また、フリーズドライすると、食品はかなり変容してしまう。これをどう扱うかを考えなければならない。以前にも色々提案しているが、肝になるのはどれだろうか。大まかに分類すると、
  1. 非常食として、あるいはランニングストックとして使用する。ある程度の長期保存を想定して、主に使うのは非常時。ランニングストックはあくまで入替をルーチン化してやりやすくするもの。
  2. 備蓄食材として使用する。ランニングストックと違い、副菜として例えば週末に多めに作っておいて、常に消費し続ける。
  3. 冷蔵庫、冷凍庫の補完として使用する。恐らく代替は無理。例えば多めに買ってしまい余った食材を保存する。あるいは、冷蔵庫を小さめにしておいて、その分を補完する。
  4. フリーズドライを応用した新しい料理や菓子のレシピを提案し、それを作るために使用する。ないしは、従来は買うしかなかった素材、例えば高野豆腐などを自宅で作れるようにする。
  5. キャンプや山登りでの食事に使用する。レトルトカレーではなく、フリーズドライ+お湯で作るなど。
  6. 同じく、日々の弁当に使用する。液だれがなく、軽い。
  7. 地球環境保護に貢献する。電力消費が冷蔵庫に対して少ない、期限切れの食料を無駄にしない、など。
この中で有効なのは2.と3.だろう。例えば味噌汁の具材だ。市販のものもあるけれども、家の好みもあるし、自分で下ごしらえすればいわゆる「手抜きの呵責」から逃れられる。また、生ものを大量に買うと痛んで無駄になるが、これを防ぐことができる。

また、3.の発展系として、積極的に使用することで買い物の間隔ないしは時間を広げ、余暇を別に活用する、ということが考えられる。日本ではまだ週末にドカ買いという習慣はあまり定着していないように思うが、その理由は家が小さいから巨大な冷凍冷蔵庫を置けない点にある。

今でも、惣菜一品を大量に作って小分けするというのを実践している人はいるが、その規模を拡大したり、時間軸を長くしたりすることができる。まとめ買い、まとめて作り小分けする、これは費用と時間の両方の節約になる。また、常温保管できるため、例えば期限順に並べ替える(「超」整理法的整理)ことができて無駄がおきない、棚からはみ出しても捨てなくてよい、などの利点もある。

問題なのは4.のレシピの少なさだ。楽天市場のフリーズドライ店舗を見ていると、どうもレパートリーは狭く、主菜として使いづらい。肉や魚がないからだ。自宅でできるのならこの問題は解決するので、まずはここを充実させてほしい。

2 件のコメント:

  1. こんにちは先日HarvestRightを書き込んだものです。
    あのサイトではフリーズドライにすれば25年保存可能だと書いてありましたが、特殊な別売りの袋の保存と共に無造作にタッパウエアに入れてありました。湿気すわないのかしら? アメリカやヨーロッパのような国では乾燥してるから大丈夫なんでしょうか?

    HarvestRightが欲しいのですが、オイル交換などが面倒くさそうです。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      アメリカには25年保存可能なフリーズドライの非常食が多数販売されていて、いくつかはAmazon.comから個人輸入することもできますが、何れもアルミ封ないしは特殊缶(内側をコーティングしてあるらしい)と窒素置換、脱酸素剤を併用しています。その袋が湿気と酸素を通さないものだとしても、脱酸素剤は必要だと思いますよ。

      削除

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