2017年6月7日水曜日

ソーラールーフ普及による電力会社の変化


このシステムは、従来のシステムと違って発電量が2、3倍になり、買電売電なしでオール電化を実現できるようなものになる。このため、太陽電池だけでなく、ガスコジェネレーション関連(エコウィル、エネファームなど)などにも影響がある。様々な方式があった中、系統から切断するテスラ方式のみが生き残る可能性がある。(もちろん「方式」が生き残るのであって、他ベンダも各自努力して新製品を出すだろう)
この中には、遊休地を利用して発電し近所に売電するような業者の出現も予想される。特に、従来は活用不可能だった崖地や水が出る地盤の悪い土地が、日が当たるというだけの理由で資産に変わるのだから、これを使わない手はない。極端な話、崖地とマンションをセットにして分譲販売するようなことだって出来るだろう。
この方向に世の中が進むなら、電力会社としての電力需要は徐々に下がっていく。現在では詳細な損得はまだ計算されていないと思うが、小規模な事業者から徐々に侵食されていくことになる。
元々、3.11を契機にして、世間は継続的な節電意識が定着している。世帯収入も下がり、人口も減っている現在、テスラ方式が必要電力の低下に拍車を掛ける方向にしか働かないのは確かだ。
日本の電力消費は、鉱工業・サービス業・家庭で大体各々1/3くらいだそうだ。鉱工業は比較的電力会社に配慮した電力消費をするのに対し、サービス業と家庭では基本的に日中の消費が高くなり、夜間は低くなる。季節変動も大きい。そしてテスラ方式は正にここがターゲットとなるため、普及につれてピーク電力の比率も低くなり、電力会社にとってはややり易い状況になるはずだ。
上の電力消費比率が徐々に変化し、鉱工業が60%、サービス業・家庭が各々20%、全体の消費電力が30%減、などという状況が、20年程度で実現するかもしれない。
現在の電力会社における家庭と鉱工業の利益率は不明であるが、常識的に考えて、家庭での利益率は高く、鉱工業では低いはずだ。電力会社は需要減の分を企業努力で吸収したいところだが、そもそも利益率の高いサービス業・家庭の需要が減るために、全体としての利益率が悪くなるのは避けられない。
有権者の多くが自分で電力を作れるようになれば、自分の生活に関係ない原発に賛成する理由がなくなる。そういった人が推進派から徐々に離脱していき、原発の立ち位置は悪くなるだろう。
一方、太陽電池や家庭用レベルのバッテリが量産効果で安くなったとしても、大規模工場で使う電力を全てこれで置き換えるというわけには簡単には行かない。ただ、自力で発電しようとする企業も増えてくるだろう。この場合でも系統電力への影響は避ける必要があるから、NAS電池やレドックスフロー電池などの需要が高まるだろう。
その時代は、一部の原発は一旦再稼動し、それでも多くの原発は老朽化して引退を迫られる時期だが、新たな原発を建設する強いモチベーションは働かないはずだ。電力会社自身も大規模太陽電池発電所の研究を余儀なくされる。そこには必ず蓄電技術や電力均質化の研究が含まれるはずだ。そしてそれは、更に原発の必然性を下げることになる。
数十ある原発の半分が引退したとしても新たな原発は数箇所しかできない、となると、核廃棄物の処理方法やコストの問題が改めて浮上することになる。このときに舵の取り方を誤ると、電力会社にとっては負のスパイラルが生じる。即ち、太陽電池の普及加速>電力需要減>核廃棄物処理費用の捻出困難>電力料金への転嫁、電力の割高化>更なる電力需要減、となる。核廃棄物が長期間放置されることは避けたいことだが、これでは研究も進まない。
但し、電力会社がなくなるということは考えにくい。というのは、雪国では太陽電池の普及率は低いだろうと予想するからだ。ただこれも状況次第で、雪国ではコジェネレーションの潜在需要が高いから、電力会社の弱体化に付け込んでガス会社がコジェネを普及させると、雪国でも電力会社の立場はぐっと弱くなる。分社化、一部整理、くらいは覚悟した方がよいだろう。
液体燃料やガスの需要がゼロになることは考えられないから、分社化した電力会社の一部がガス会社に吸収合併される、などということも起こるかもしれない。

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