2017年9月3日日曜日

CASコールドスリープ


CAS冷凍については何回か書いているのだが、いわゆる冷凍睡眠にこれを使えないだろうか、と考えた。

不治の病を未来の医療に託すとして冷凍睡眠(実際には死んでから凍っているのだが)している人は居るし、火星程度より遠くに行くとなると冷凍睡眠の実用化は必要になるだろう。「2001年宇宙の旅」では完全には凍っていなかったが、この「冷蔵睡眠」が積極的に研究されている様子は見られない。

冷凍睡眠が実現しない理由の一つは、氷が結晶化することによる細胞組織の破壊だ。CAS冷凍ではこれを防ぐことができる。CAS冷凍以外にも、細胞を破壊しない冷凍というのは幾つか存在しているようだ。その中でも過冷却を用いるものは有望と言えるだろう。

これらの手段により細胞が破壊されないことを前提とした場合、問題は、冷凍及び解凍の過程で死んでしまわないようにすることが可能なのか、というところになる。これは、単純には急速な冷凍解凍、という問題になるのだろう。また、均質な冷凍解凍も必要になると推定される。

均質な冷凍としては、上に述べた過冷却とCAS冷凍の組み合わせが考えられる。但しこれも予冷が必要なので、その過程で死んでしまうかもしれない。そこで二つの方法をとる。一つは全身麻酔で代謝活動を鈍くすること。もう一つは、人工心肺の原理で血液を一旦取り出し、限界まで冷やした上で戻す方法だ。

これにより、体は数分で10℃以下にまで冷却される。これは通常、遭難などで低体温になりその後蘇生した事例などより遥かに急速に冷えるため、相応の効果が期待できる。

均質な解凍には、ラジオ波スキャンという方法がある。複数の方向からラジオ波を当てて、その交点を高温にする方法だ。一般的には癌の治療などに使われる。一点ではなく高速にスキャンすることで、体内深部から暖めることができる。但しこれにも欠点はあり、丁度良い温度になったかどうかを測定する術がないのだ。

体表の温度測定は簡単だが、非侵襲での体内深部の温度測定は、今の技術では無理だ。現状で考えられるのは、照射エネルギーからの逆算くらいだが、この精度がどの程度になるかは未知数である。このため、体内の如何なる部位でも氷が出来ていない状態になる程度まではラジオ波で暖め、その後再び血液を35℃にして循環させ、体温を一気に上げる、という方法を併用することで精度不足をカバーできる。最後に心臓の鼓動を再開させて、完了となる。

ここまで考えられたら、動物実験くらいの段階までは直ぐに行けそうな気がする。但しこの方法では、大きな血管を切り開いたままの冷凍解凍となるため、その後直ぐに手術が必要になることや、麻酔がそのまま一緒に凍った状態であるのをどう評価すればよいのか、などは考えなければならない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿:

ダイナミック租税とその指標

今の法律では、税率は一定の計算式で表されるが、そのパラメータは固定である。需要と供給のバランスによって商品の価格を変えるダイナミックプライシングというのがあるが、あれを租税にも適用してはどうかと考えてみた。 納税者の声をベースにして様々な租税や補助金を自動調節して、どこか一箇所...

人気の投稿: